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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】格子体及び鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/73 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01M4/73 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020520934
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2018019852
(87)【国際公開番号】W WO2019224946
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸和
(72)【発明者】
【氏名】寺田 正幸
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/073588(WO,A1)
【文献】特許第4892651(JP,B1)
【文献】特開平04-162358(JP,A)
【文献】特開2002-075379(JP,A)
【文献】特開平10-275618(JP,A)
【文献】特開平08-315826(JP,A)
【文献】特開2001-266895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池の極板に用いられて鉛を含み全体の厚みが同じ格子体であって、
互いに平行な第一表面及び第二表面と、
前記第一表面及び前記第二表面を貫通する複数の貫通孔と、を備え、
前記複数の貫通孔の少なくとも二つにおいて、前記第一表面における開口面積と前記第二表面における開口面積とが異なり、
前記複数の貫通孔の少なくとも二つは、広がりながら前記第一表面に至る第一テーパ部と、広がりながら前記第二表面に至る第二テーパ部と、を有する、
格子体。
【請求項2】
鉛蓄電池の極板に用いられて鉛を含む格子体であって、
互いに平行な第一表面及び第二表面と、
前記第一表面及び前記第二表面を貫通する複数の貫通孔と、を備え、
前記複数の貫通孔の少なくとも一つにおいて、前記第一表面における開口面積と前記第二表面における開口面積とが異なり、
前記複数の貫通孔は、前記第一表面における開口面積が前記第二表面における開口面積よりも大きくなっている貫通孔と、前記第一表面における開口面積が前記第二表面における開口面積よりも小さくなっている貫通孔と、を含む、
格子体。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の少なくとも一つは、広がりながら前記第一表面に至る第一テーパ部と、広がりながら前記第二表面に至る第二テーパ部と、を有する、
請求項に記載の格子体。
【請求項4】
正極板及び負極板の少なくとも一方の格子体として、請求項1~の何れか一項に記載された格子体が用いられている、
鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格子体及び鉛蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池は、信頼性、価格の安さから産業用、民生用に広く用いられており、特に自動車用鉛蓄電池(いわゆるバッテリー)の需要が多い。
【0003】
特許文献1には、正極板及び負極板を備えた鉛蓄電池が記載されている。この鉛蓄電池では、正極板及び負極板のそれぞれは、鉛合金の格子体に活物質が充填されて構成されている。そして、正極板と負極板とがセパレータを介して交互に積層され、正極板及び負極板の集電部が極性毎にストラップに集合溶接され、ストラップにセル間接続部又は極柱が接続されて、極板群が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-230838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の自動車は、電装品が増加していることから、電池への負荷が大きくなっている。その結果、電池の放電量が多くなっている。電池の放電量の指標として、放電深度DOD(Depth of Discharge)がある。放電深度DODは、値が大きくなるほど、放電量が多くなることを示している。DODが大きい状況下で電池を充放電すると、正極板において活物質同士の結びつきが弱くなる泥状化(軟化現象)が進行し、徐々に格子体から活物質が脱落していく。しかも、自動車に搭載される鉛蓄電池では、長時間にわたって大きな振動に曝されるため、格子体からの活物質の脱落が顕著となる。格子体から活物質が脱落すると、極板(特に正極板)の寿命が短くなるという問題が発生する。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、活物質の脱落を抑制することができる格子体及び鉛蓄電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る格子体は、鉛蓄電池の極板に用いられて鉛を含む格子体であって、互いに平行な第一表面及び第二表面と、第一表面及び第二表面を貫通する複数の貫通孔と、を備え、複数の貫通孔の少なくとも一つにおいて、第一表面における開口面積と第二表面における開口面積とが異なる。
【0008】
この格子体では、鉛蓄電池の極板に用いられる際は、第一表面、第二表面、及び複数の貫通孔において活物質が保持されるが、第一表面及び第二表面が互いに平行であるため、活物質は第一表面及び第二表面から脱落しやすい。しかしながら、第一表面及び第二表面を貫通する複数の貫通孔の少なくとも一つにおいて、第一表面における開口面積と第二表面における開口面積とが異なるため、活物質は貫通孔から脱落し難くなる。これにより、活物質の脱落を抑制することができる。
【0009】
複数の貫通孔の全てにおいて、第一表面における開口面積と第二表面における開口面積とが異なっていてもよい。この格子体では、複数の貫通孔の全てにおいて、第一表面における開口面積と第二表面における開口面積とが異なるため、活物質の脱落を更に抑制することができる。
【0010】
複数の貫通孔の全てにおいて、第一表面における開口面積が第二表面における開口面積よりも大きくてもよい。この格子体では、複数の貫通孔の全てにおいて、第一表面における開口面積が第二表面における開口面積よりも大きいため、格子体を容易に形成することができるとともに、第一表面側から活物質を充填することで格子体に対する活物質の充填性がよくなる。
【0011】
第一表面における複数の貫通孔の総開口面積が、第二表面における複数の貫通孔の総開口面積よりも大きくてもよい。この格子体では、第一表面における複数の貫通孔の総開口面積が第二表面における複数の貫通孔の総開口面積よりも大きいため、全体として活物質が貫通孔から脱落し難くなる。
【0012】
複数の貫通孔の少なくとも一つの内壁面に、凹部が形成されていてもよい。この格子体では、複数の貫通孔の少なくとも一つの内壁面に凹部が形成されているため、活物質が当該凹部に入り込む。これにより、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0013】
複数の貫通孔の全ての内壁面に、凹部が形成されていてもよい。この格子体では、複数の貫通孔の全ての内壁面に凹部が形成されているため、活物質が当該凹部に入り込む。これにより、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0014】
複数の貫通孔の少なくとも一つは、広がりながら第一表面に至る第一テーパ部と、広がりながら第二表面に至る第二テーパ部と、を有してもよい。この格子体では、複数の貫通孔のそれぞれが第一テーパ部及び第二テーパ部を有するため、貫通孔に充填された活物質が、第一表面及び第二表面の両側において広がる形状となる。つまり、活物質が、第一表面及び第二表面の両側から格子体を挟み込む形状となる。このため、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0015】
複数の貫通孔のそれぞれは、広がりながら第一表面に至る第一テーパ部と、広がりながら第二表面に至る第二テーパ部と、を有してもよい。この格子体では、複数の貫通孔のそれぞれが第一テーパ部及び第二テーパ部を有するため、貫通孔に充填された活物質が、第一表面及び第二表面の両側において広がる形状となる。つまり、活物質が、第一表面及び第二表面の両側から格子体を挟み込む形状となる。このため、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0016】
本発明の一側面に係る鉛蓄電池は、正極板及び負極板の少なくとも一方の格子体として、上記の何れかの格子体が用いられていている。この鉛蓄電池では、正極板及び負極板の少なくとも一方の格子体として上記の何れかの格子体が用いられるため、活物質が脱落するのを抑制することができる。
【0017】
ところで、正極格子体では、充放電を繰り返していくことで活物質同士の結びつきが弱くなる泥状化(軟化現象)が進行していく。このため、格子体は、正極板に用いられる正極格子体であってもよい。これにより、活物質が脱落するのを効率的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、活物質の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る鉛蓄電池の全体構造及び内部構造を示す斜視図である。
図2図1に示した鉛蓄電池の電極群を示す斜視図である。
図3】正極板(負極板)を示す正面図である。
図4図3のIV-IV線における断面図である。
図5】一実施形態に係る格子体を示す正面図である。
図6図5に示した格子体の一部を示す模式断面図である。
図7】変形例の格子体の一部を示す模式断面図である。
図8】変形例の格子体の一部を示す模式断面図である。
図9】変形例の格子体の一部を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一側面に係る鉛蓄電池の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、全図中、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0021】
<鉛蓄電池>
図1は、一実施形態に係る鉛蓄電池1の全体構成及び内部構造を示す斜視図である。図1に示すように、鉛蓄電池1は、上面が開口している電槽2と、電槽2の開口を閉じる蓋3とを備えている。電槽2及び蓋3は、例えばポリプロピレンで形成されている。蓋3には、正極端子4と、負極端子5と、蓋3に設けられた注液口を閉塞する液口栓6と、が設けられている。
【0022】
電槽2の内部には、電極群7と、電極群7を正極端子4に接続する正極柱8と、電極群7を負極端子5に接続する負極柱(図示せず)と、希硫酸等の電解液とが収容されている。
【0023】
図2は、電極群7を示す斜視図である。図2に示すように、電極群7は、正極板9と、負極板10と、正極板9と負極板10との間に配置されたセパレータ11と、を備えている。
【0024】
図3は、正極板9(負極板10)を示す正面図であり、図4は、図3のIV-IV線における断面図である。図3及び図4に示すように、正極板9は、正極格子体(正極集電体)12と、正極活物質(正極材)13と、を有している。正極格子体12は、正極板9の格子体であり、格子部12aと、格子部12aと一体で構成され、格子部12aの一端から突出した耳部12bと、を有している。正極活物質13は、正極板9の活物質であり、正極格子体12に保持されている。負極板10は、負極格子体(負極集電体)14と、負極活物質(負極材)15と、を有している。負極格子体14は、負極板10の格子体であり、格子部14aと、格子部14aと一体で構成され、格子部14aの一端から突出した耳部14bと、を有している。負極活物質15は、負極板10の活物質であり、負極格子体14に保持されている。正極格子体12及び負極格子体14は、鉛合金で形成されている。鉛合金は、鉛に加えて、スズ、カルシウム、アンチモン、セレン、銀、ビスマス等を含有する合金であってよく、具体的には、例えば、鉛、スズ及びカルシウムを含有する合金(Pb-Sn-Ca系合金)である。
【0025】
電極群7は、複数の正極板9と負極板10とが、セパレータ11を介して、電槽2の開口面と略平行方向に交互に積層された構造を有している。すなわち、正極板9及び負極板10は、それらの主面が電槽2の開口面と垂直方向に広がるように配置されている。電極群7において、複数の正極板9における各正極格子体12が有する耳部12b同士は、正極側ストラップ16で集合溶接されている。同様に、複数の負極板10における各負極格子体14が有する耳部14b同士は、負極側ストラップ17で集合溶接されている。正極側ストラップ16及び負極側ストラップ17は、それぞれ、正極柱8及び負極柱を介して正極端子4及び負極端子5に接続されている。
【0026】
続いて、鉛蓄電池1の製造方法について説明する。鉛蓄電池1の製造方法は、電極板(正極板9及び負極板10)を得る電極板製造工程と、電極板を含む構成部材を組み立てて鉛蓄電池1を得る組立工程とを備えている。
【0027】
電極板製造工程では、例えば、正極板9及び負極板10のそれぞれについて、電極材ペースト(負極材ペースト及び正極材ペースト)を格子体(正極格子体12及び負極格子体14)に保持させた(充填した)後に、熟成及び乾燥を行うことにより未化成の電極板を得る。
【0028】
正極材ペーストは、例えば、正極活物質の原料(鉛粉、鉛丹(Pb3O4)等)に添加剤(補強用短繊維等)及び水を加え、次いで、希硫酸を加えて混練することにより得られる。この正極材ペーストを正極格子体12に保持させた(充填した)後に、例えば、温度35~85℃、湿度50~98RH%の雰囲気で15~60時間熟成し、温度45~80℃で15~30時間乾燥することにより、未化成の正極板が得られる。
【0029】
負極材ペーストは、例えば、負極活物質の原料(鉛粉等)に添加剤(炭素材料、硫酸バリウム、補強用短繊維、スルホン基及び/又はスルホン酸塩基を有する樹脂等)を添加して乾式混合することにより混合物を得た後、希硫酸及び水を加えて混練することにより得られる。この負極材ペーストを集電体に保持させた(充填した)後に、例えば、温度45~65℃、湿度70~98RH%の雰囲気で15~30時間熟成し、温度45~60℃で15~30時間乾燥することにより、未化成の負極板が得られる。
【0030】
組立工程では、例えば、未化成の負極板及び未化成の正極板を、セパレータ11を介して交互に積層し、正極格子体12の耳部12b同士を正極側ストラップ16で連結(溶接等)させるとともに、負極格子体14の耳部14b同士を負極側ストラップ17で連結(溶接等)させて、電極群7を得る。この電極群7を電槽2内に配置して未化成の電池を作製する。次に、未化成の電池に電解液(希硫酸等)を注入した後、直流電流を通電して電槽化成する。化成後の電解液の比重を適切な比重に調整して鉛蓄電池1が得られる。
【0031】
化成条件及び硫酸の比重は、電極活物質の性状に応じて調整することができる。化成処理は、組立工程後に実施される代わりに、電極板製造工程における熟成及び乾燥後の多数の電極板をまとめて化成槽に浸漬して実施されてもよい(タンク化成)。
【0032】
<格子体>
続いて、上述した鉛蓄電池1の正極板9及び負極板10に用いられる正極格子体12及び負極格子体14について、より詳細に説明する。なお、本実施形態において、正極格子体12と負極格子体14とは基本的に同じ形状であるため、以下では、正極格子体12及び負極格子体14を格子体21として併せて説明する。
【0033】
図5は、一実施形態に係る格子体を示す正面図である。図6は、図5に示した格子体の一部を示す概略断面図である。図3図6に示すように、格子体21(正極格子体12及び負極格子体14)は、格子部22(格子部12a及び格子部14a)と、格子部22と一体で形成され、格子部22の一端から突出した耳部23(耳部12b及び耳部14b)とを有している。なお、格子体21は、正極格子体12及び負極格子体14のそれぞれに対応し、格子部22は、格子部12a及び格子部14aのそれぞれに対応し、耳部23は、耳部12b及び耳部14bのそれぞれに対応する。
【0034】
格子部22は、略矩形の薄板状に形成されており、互いに平行な第一表面22a及び第二表面22bと、第一表面22a及び第二表面22bを貫通する複数の貫通孔22cと、を備えている。このため、格子部22が鉛蓄電池1の極板(正極板9及び負極板10)に用いられる際は、活物質(正極活物質13及び負極活物質15)は、格子部22の第一表面22a、第二表面22b、及び複数の貫通孔22cに保持される。なお、格子部22の上部(第一表面22a及び第二表面22bの上部)には、活物質が保持されない。第一表面22aと第二表面22bとの区別はなく、格子部22のどちらの面が第一表面22aであってもよく第二表面22bであってもよい。格子部22に形成される貫通孔22cの数、形状、大きさ等は、特に限定されるものではなく、活物質を適切に保持できる範囲で、適宜設定される。
【0035】
格子部22では、複数の貫通孔22cの少なくとも一つにおいて、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが異なっている。この場合、格子部22には、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが同じになる貫通孔22cが形成されていてもよい。また、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とは、何れが大きくてもよく、何れが小さくてもよい。
【0036】
ここで、第一表面22aにおける開口面積及び第二表面22bにおける開口面積は、以下のように規定される。第一表面22aの面を第一基準面とし、第二表面22bの面を第二基準面とする。第一表面22aと第二表面22bとは互いに平行であることから、第一基準面と第二基準面とも互いに平行となる。なお、製造誤差等により第一表面22a及び第二表面22bに多少の凹凸が形成されている場合は、当該凹凸を除いた面を第一基準面及び第二基準面とする。そして、第一基準面及び第二基準面における貫通孔22cの開口を、第一表面22a及び第二表面22bにおける貫通孔22cの開口とし、この開口面積を、第一表面22a及び第二表面22bにおける開口面積とする。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る格子体21では、鉛蓄電池1の極板に用いられる際は、第一表面22a、第二表面22b、及び複数の貫通孔22cにおいて活物質が保持されるが、第一表面22a及び第二表面22bが互いに平行であるため、活物質は第一表面22a及び第二表面22bから脱落しやすい。しかしながら、第一表面22a及び第二表面22bを貫通する複数の貫通孔22cの少なくとも一つにおいて、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが異なるため、活物質は貫通孔22cから脱落し難くなる。これにより、活物質の脱落を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る鉛蓄電池1では、正極格子体12及び負極格子体14として格子体21が用いられるため、正極活物質13及び負極活物質15が脱落するのを抑制することができる。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0040】
例えば、複数の貫通孔22cの全てにおいて、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが異なっていてもよい。この場合、格子部22には、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが同じとなる貫通孔22cは形成されない。また、図7に示す変形例の格子体21Aの格子部22Bのように、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも大きくなっている貫通孔22cと、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも小さくなっている貫通孔22cと、が混在していてもよい。このように、複数の貫通孔22cの全てにおいて、第一表面22aにおける開口面積と第二表面22bにおける開口面積とが異なるものとすることで、活物質の脱落を更に抑制することができる。
【0041】
また、複数の貫通孔22cの全てにおいて、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも大きくてもよい。この場合、格子部22には、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも小さくなる貫通孔22cは形成されない。このように、複数の貫通孔22cの全てにおいて、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも大きいものとすることで、格子体21を容易に形成することができるとともに、第一表面22a側から活物質を充填することで格子体21に対する活物質の充填性がよくなる。
【0042】
また、第一表面22aにおける複数の貫通孔22cの総開口面積は、第二表面22bにおける複数の貫通孔22cの総開口面積よりも大きくてもよい。第一表面22aにおける複数の貫通孔22cの総開口面積とは、各貫通孔22cの第一表面22aにおける開口面積の総和であり、第二表面22bにおける複数の貫通孔22cの総開口面積とは、各貫通孔22cの第二表面22bにおける開口面積の総和である。この場合、図7に示す格子体21Aの格子部22Aのように、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも大きくなっている貫通孔22cと、第一表面22aにおける開口面積が第二表面22bにおける開口面積よりも小さくなっている貫通孔22cと、が混在していてもよい。このように、第一表面22aにおける複数の貫通孔22cの総開口面積が第二表面22bにおける複数の貫通孔22cの総開口面積よりも大きいものとすることで、全体として活物質が貫通孔22cから脱落し難くなる。
【0043】
また、第一表面22a及び第二表面22bと直交する方向の断面において、複数の貫通孔22cのそれぞれの内壁面は、直線状に形成されていてもよいが、図8に示す変形例の格子体21Bの格子部22Bのように、複数の貫通孔22cの少なくとも一つの内壁面に、活物質が入り込む凹部22dが形成されていてもよい。この場合、複数の貫通孔22cの全ての内壁面に、凹部22dが形成されていてもよい。また、凹部22dだけでなく、凸部も形成されることで、全体として凹凸に形成されていてもよい。凹部22dの数、形状、大きさ等は、特に限定されるものではなく、活物質が入り込むことができる範囲で、適宜設定することができる。このように、複数の貫通孔22cの少なくとも一つの内壁面に凹部22dが形成されているものとすることで、更には、複数の貫通孔22cの全ての内壁面に、凹部22dが形成されていているものとすることで、活物質が当該凹部22dに入り込む。これにより、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0044】
また、第一表面22a及び第二表面22bと直交する方向の断面において、複数の貫通孔22cのそれぞれの内壁面は、直線状に形成されていてもよいが、図9に示す変形例の格子体21Cの格子部22Cのように、複数の貫通孔22cの少なくとも一つは、広がりながら第一表面22aに至る第一テーパ部22eと、広がりながら第二表面22bに至る第二テーパ部22fと、を有するものとしてもよい。なお、第一表面22aにおける開口面積及び第二表面22bにおける開口面積は、第一テーパ部22eの傾斜角度θ1及び第二テーパ部22fの傾斜角度θ2を大きくするほど、又は、第一テーパ部22e及び第二テーパ部22fを大きくするほど、大きくなる。
【0045】
この場合、複数の貫通孔22cのそれぞれが、つまり、複数の貫通孔22cの全てが、第一テーパ部22e及び第二テーパ部22fを有するものとしてもよい。第一テーパ部22eでは、貫通孔22cは、第一表面22aと直交する断面において、第一表面22aに対して広がる方向に傾斜して第一表面22aに至っている。同様に、第二テーパ部22fでは、貫通孔22cは、第二表面22bと直交する断面において、第二表面22bに対して広がる方向に傾斜して第二表面22bに至っている。また、第一表面22a及び第二表面22bと直交する方向の断面において、第一テーパ部22e及び第二テーパ部22fは、全体としてテーパ形状になっていれば、必ずしも直線状である必要はなく、曲線状であってもよく、凹凸状であってもよい。このように、複数の貫通孔22cの少なくとも一つが第一テーパ部22e及び第二テーパ部22fを有するものとすることで、貫通孔22cに充填された活物質が、第一表面22a及び第二表面22bの両側において広がる形状となる。つまり、活物質が、第一表面22a及び第二表面22bの両側から格子体21Cの格子部22Cを挟み込む形状となる。このため、活物質が脱落するのを更に抑制することができる。
【0046】
ところで、正極格子体では、充放電を繰り返していくことで活物質同士の結びつきが弱くなる泥状化(軟化現象)が進行していくが、負極格子体14では、このような泥状化が発生しない。このため、正極格子体12としてのみ格子体21が用いられるものとしてもよい。これにより、活物質が脱落するのを効率的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…鉛蓄電池、2…電槽、3…蓋、4…正極端子、5…負極端子、6…液口栓、7…電極群、8…正極柱、9…正極板、10…負極板、11…セパレータ、12…正極格子体、12a…格子部、12b…耳部、13…正極活物質、14…負極格子体、14a…格子部、14b…耳部、15…負極活物質、16…正極側ストラップ、17…負極側ストラップ、21,21A,21B,21C…格子体、22,22A,22B,22C…格子部、22a…第一表面、22b…第二表面、22c…貫通孔、22d…凹部、22e…第一テーパ部、22f…第二テーパ部、23…耳部、θ1…第一テーパ部の傾斜角度、θ2…第二テーパ部の傾斜角度。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9