(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】外用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20221201BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20221201BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20221201BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K31/165
A61K47/22
A61P29/00
(21)【出願番号】P 2018122060
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】井上 喬允
【審査官】福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098469(JP,A)
【文献】特許第5450910(JP,B1)
【文献】国際公開第2014/002599(WO,A1)
【文献】特開2008-163017(JP,A)
【文献】特開2002-029993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 36/00-36/9068
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩、(B)カプサイシノイド、(C)N-メチル-2-ピロリドン、及び(D)水を含む、外用医薬組成物
(但し、[I]下記一般式(1)で表される化合物:
【化1】
[式(1)中、Xは単結合又は酸素原子を示し、Yはメチン基又は窒素原子を示し、R
1
は水素原子、水酸基又はアルキル基を示し、R
2
は置換基を有してもよい環状アミノ基、又は置換基を有してもよいアミノアルキル基を示し、R
3
は水素原子又はハロゲン原子を示す。]又はその塩及び多価アルコールからなる群より選ばれる1種以上を含む場合と、[II]ケイ酸化合物を含む場合と、を除く)。
【請求項2】
前記(B)成分がノナン酸バニリルアミドである、請求項1に記載の外用医薬組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が0.1~20重量%含まれる、請求項1又は2に記載の外用医薬組成物。
【請求項4】
前記(C)成分が、前記(B)成分1重量部当たり20~1000重量部含まれる、請求項1~3のいずれかに記載の外用医薬組成物。
【請求項5】
外用医薬組成物
(但し、[I]下記一般式(1)で表される化合物:
【化1】
[式(1)中、Xは単結合又は酸素原子を示し、Yはメチン基又は窒素原子を示し、R
1
は水素原子、水酸基又はアルキル基を示し、R
2
は置換基を有してもよい環状アミノ基、又は置換基を有してもよいアミノアルキル基を示し、R
3
は水素原子又はハロゲン原子を示す。]又はその塩及び多価アルコールからなる群より選ばれる1種以上を含む場合と、[II]ケイ酸化合物を含む場合と、を除く)中で、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と、(B)カプサイシノイド及び(D)水とともに、(C)N-メチル-2-ピロリドンを共存させる、外用医薬組成物において不溶物の生成を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩と共にカプサイシノイドを含みながらも、不溶物の生成が抑制された外用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンナトリウムに代表されるロキソプロフェン類(ロキソプロフェン及び/又はその塩)は、優れた鎮痛・消炎作用を有する薬剤として知られており、外用医薬組成物としても使用されている。また、ロキソプロフェン類は水及びエタノールに溶けることが知られている。
【0003】
ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイド(N-アシルワニリルアミド)は、血行促進作用を有する薬剤として知られており、外用医薬組成物としても使用されている。また、カプサイシノイドは水にほとんど溶けず、エタノールと混和することが知られている。
【0004】
ロキソプロフェン類を含む外用組成物においては、ロキソプロフェン類による鎮痛・消炎作用に血行促進作用を付与するため、ノナン酸バニリルアミド等のカプサイシノイドが配合される場合がある。このような場合、両方の成分を水中で溶解させるために、エタノールを基剤として含ませることが一般的である。例えば特許文献1には、ロキソプロフェンナトリウムとノニル酸ワニリルアミド(ノナン酸バニリルアミド)を、エタノールと共に含む液剤及びゲル剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エタノールを多量に含むロキソプロフェン類の製剤処方では、エタノールによる皮膚刺激が懸念される。そこで本発明は、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩とカプサイシノイドとを含む外用組成物において、エタノールを多量に用いずとも、不溶物の生成を抑制することが可能な製剤処方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討の結果、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩とともにカプサイシノイドを含む外用医薬組成物において、N-メチル-2-ピロリドンを用いることによって、不溶物の生成を抑制し得ることを見出した。本発明は、この知見に基づいてさらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ロキソプロフェン及び/又はその塩、(B)カプサイシノイド、(C)N-メチル-2-ピロリドン、及び(D)水を含む、外用医薬組成物。
項2. 前記(B)成分がノナン酸バニリルアミドである、項1に記載の外用医薬組成物。
項3. 前記(C)成分が0.1~20重量%含まれる、項1又は2に記載の外用医薬組成物。
項4. 前記(C)成分が、前記(B)成分1重量部当たり20~1000重量部含まれる、項1~3のいずれかに記載の外用医薬組成物。
項5. 外用医薬組成物中で、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩と、(B)カプサイシノイド及び(D)水とともに、(C)N-メチル-2-ピロリドンを共存させる、外用医薬組成物において不溶物の生成を抑制する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩ととともにカプサイシノイドを含む外用医薬組成物において、N-メチル-2-ピロリドンを用いることによって、不溶物の生成を抑制させ得る製剤処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.外用医薬組成物
本発明の外用医薬組成物は、(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩(以下、「(A)成分」と表記することもある)、(B)カプサイシノイド(以下、「(B)成分」と表記することもある)、(C)N-メチル-2-ピロリドン(以下、「(C)成分」と表記することもある)、及び(D)水(以下、「(D)成分」と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用医薬組成物について詳述する。
【0011】
(A)ロキソプロフェン及び/又はその塩
本発明の外用医薬組成物は、(A)成分としてロキソプロフェン及び/又はその塩を含有する。ロキソプロフェン及び/又はその塩は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種として公知の成分である。ロキソプロフェンは、2-[パラ-(2-オキソシクロペンチルメチル)フェニル]プロピオン酸である。ロキソプロフェンの塩としては、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩であれば特に制限されず、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。また、ロキソプロフェンの塩は、水和物であってもよい。
【0012】
本発明の外用医薬組成物において、(A)成分として、ロキソプロフェン及び/又はその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。(A)成分の中でも、好ましくはロキソプロフェンの塩、より好ましくはロキソプロフェンナトリウム、さらに好ましくはロキソプロフェンナトリウム水和物が挙げられる。
【0013】
本発明の外用医薬組成物における(A)成分の含有量は、外用医薬組成物に備えさせるべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.1~10重量%、好ましくは0.5~3重量%が挙げられる。
【0014】
(B)カプサイシノイド
本発明の外用医薬組成物は、(B)成分としてカプサイシノイドを含有する。カプサイシノイドとは、N-アシルワニリルアミドであり、血行促進作用等が知られている公知の成分である。カプサイシノイドは油溶性であるため、外用医薬組成物においてロキソプロフェン及び/又はその塩とともに水中に含まれる場合、エタノールを配合しなければ不溶物を生じるが、本発明の外用医薬組成物ではエタノールを多量に用いなくともカプサイシノイドを溶解させることができる。
【0015】
カプサイシノイドにおけるアシル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。また、カプサイシノイドにおけるアシル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば5~15、好ましくは6~11が挙げられる。
【0016】
カプサイシノイドとして、具体的には、ノナン酸バニリルアミド;及びカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン等のカプサイシン類等が挙げられ、好ましくはノナン酸バニリルアミドが挙げられる。
【0017】
また、本発明の外用医薬組成物において、カプサイシノイドは、精製品を使用してもよいが、カプサイシノイド以外に他の成分が含まれている混合物を使用してもよい。このようなカプサイシノイドを含む混合物としては、具体的には、カプサイシノイドとして、トウガラシエキス、トウガラシチンキ、トウガラシ末等のトウガラシ類が挙げられる。
【0018】
本発明の外用医薬組成物において、(B)成分として、1種のカプサイシノイドを単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の外用医薬組成物における(B)成分の含有量は、外用医薬組成物に備えさせるべき薬効等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.001~0.1重量%、好ましくは0.003~0.05重量%、より好ましくは0.005~0.02重量%が挙げられる。
【0020】
(C)N-メチル-2-ピロリドン
本発明の外用医薬組成物は、(C)成分としてN-メチル-2-ピロリドンを含有する。水中でロキソプロフェン及び/又はその塩とともにカプサイシノイドを含む外用組成物においては、エタノールを配合しなければ不溶物を生じるが、本発明の外用医薬組成物では、N-メチル-2-ピロリドンを含むことによって、エタノールを多量に用いなくともカプサイシノイドを溶解させることができる。
【0021】
本発明の外用医薬組成物における(C)成分の含有量については、使用する(B)成分の含有量等に応じて適宜設定すればよいが、例えば0.01~20重量%、好ましくは0.2~10重量%、より好ましくは0.5~6重量%が挙げられる。本発明においては、(C)成分が、水中でロキソプロフェン及び/又はその塩とともに配合されたカプサイシノイドに対してエタノールよりもはるかに溶解力に優れているため、エタノールでは可溶化できないような少量であっても、不溶物の発生を効果的に抑制することができる。従って、本発明の外用医薬組成物では、エタノール等により懸念される皮膚刺激を抑制することもできる。
【0022】
また、本発明の医薬組成物において、(B)成分と(C)成分との比率については、前述する各含有量に応じて定まるが、不溶物の発生をより効果的に抑制する観点から、(B)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、20~1000重量部、好ましくは90~600重量部が挙げられる。
【0023】
(D)水
本発明の外用医薬組成物は、(D)成分として水を含有する。水としては特に制限されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、滅菌水などが挙げられ、好ましくは精製水が挙げられる。本発明の外用医薬組成物における(D)成分の含有量については、製剤形態に応じて適宜設定すればよい。本発明では、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩とともにカプサイシノイドを含む外用医薬組成物における不溶物の発生を抑制することができるため、水の量が多くても不溶物の発生を効果的に抑制することができる。このような観点から、本発明の外用医薬組成物における(D)成分の量としては、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、一層好ましくは80重量%以上が挙げられる。(D)成分の量の範囲の上限としては特に限定されないが、例えば99重量%以下、好ましくは98重量%以下が挙げられる。このように、本発明の外用医薬組成物では、水の含有量を多くすることができるため、エタノール等により懸念される皮膚刺激を抑制することもできる。
【0024】
また、本発明の医薬組成物において、(B)成分と(D)成分との比率については、前述する各含有量に応じて定まる。本発明では、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩とともにカプサイシノイドを含む外用医薬組成物における不溶物の発生を抑制することができるため、(B)成分に対する水の量が多くても不溶物の発生を効果的に抑制することができる。このような観点から、(B)成分1重量部当たりの(D)成分の含有量として、好ましくは1000重量部以上、より好ましくは3000重量部以上、さらに好ましくは6000重量部以上、一層好ましくは8000重量部以上が挙げられる。(B)成分1重量部当たりの(D)成分の量の範囲の上限としては特に限定されないが、例えば9900重量部以下、好ましくは9800重量部以下が挙げられる。このように、本発明の外用医薬組成物では、水の含有量を多くすることができるため、エタノール等により懸念される皮膚刺激を抑制することもできる。
【0025】
その他の成分
本発明の外用医薬組成物には、本発明の効果を妨げない限り、前述する成分の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。本発明の外用医薬組成物に配合可能な他の薬理成分については、特に制限されないが、例えば、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルリチン酸ステアリル等の抗炎症剤;ジフェニルイミダゾール、ジフェンヒドラミン及びその薬学的に許容される塩、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤;リドカイン及びその薬学的に許容される塩、ジブカイン及びその薬学的に許容される塩、アミノ安息香酸エチル等の局所麻酔剤;ニコチン酸のエステル誘導体(具体的には、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、ニコチン酸メチルエステル等)、酢酸トコフェロール等の血行促進剤(上記(B)成分以外);アルニカチンキ、オウバクエキス、サンシシエキス、セイヨウトチノキエキス、ロートエキス、ベラドンナエキス、トウキエキス、シコンエキス、サンショウエキス等の生薬等が挙げられる。
【0026】
更に、本発明の外用医薬組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、外用医薬組成物に通常使用される溶剤や他の添加剤が含まれていてもよい。このような溶剤としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール等の炭素数1~5の一価低級アルコール;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の炭素数2~8の二価アルコールが挙げられる。本発明では、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩とともにカプサイシノイドを含む外用医薬組成物における不溶物の発生を抑制することができるため、一価低級アルコールの含有量が少量であっても、あるいは含まれていなくても、不溶物の発生を効果的に抑制することができる。このような観点から、本発明の外用医薬組成物における一価低級アルコールの含有量は、0~70重量%、好ましくは0~55重量%、より好ましくは0~40重量%、さらに好ましくは0~20重量%、一層好ましくは0~5重量%が挙げられる。これによって、皮膚刺激を良好に抑制することができる。本発明の外用医薬組成物に二価アルコールを含む場合、二価アルコールの配合量としては、例えば0.01~20重量%、好ましくは0.3~10重量%、より好ましくは0.5~8重量%が挙げられる。また、添加剤としては、例えば、pH調節剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、増粘剤、香料、着色料等が挙げられる。
【0027】
製剤形態
本発明の外用医薬組成物の製剤形態については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、例えば、液剤(ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、及び乳液剤を含む)、フォーム剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは液剤又はゲル剤が挙げられ、特に好ましくは液剤が挙げられる。これらの製剤形態への調製は、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、製剤形態に応じた添加剤を用いて製剤化することにより行うことができる。
【0028】
容器
本発明の外用医薬組成物が収容される容器としては特に限定されず、製剤形態に応じて適宜決定することができる。本発明の外用医薬組成物がとして調製される場合は、多孔質部材又はボール部材が取り付けられた塗布部を有する塗布容器に収容されることができる。特に本発明においては、多孔質部材が取り付けられた塗布部を有する塗布容器に収容されていることが好ましい。本発明の外用医薬組成物は不溶物の発生が抑制されているため、塗布時に有効成分が多孔質部材にせき止められて容器内にとどまることで多孔質部材を介して適用される液剤が奏する効果の減弱を抑制することができ、また、多孔質部材への不溶物の詰まりも抑制することができる。
【0029】
塗布容器の塗布部に取り付けられている多孔質部材としては、微細な連続孔を有することで多孔質性を呈する部材であればよい。また、多孔質部材としては、塗布を容易とする観点から、可撓性部材であることが好ましい。このような多孔質部材としては、スポンジ部材及びメッシュ部材等が挙げられ、好ましくはスポンジ部材が挙げられる。多孔質部材の材料としても特に限定されないが、ウレタン、ラバー等の合成樹脂材料、及びセルロースなどの天然材料が挙げられ、好ましくはウレタン、ラバー等の合成樹脂材料が挙げられる。特に好ましい多孔質部材の例としては、ラバースポンジ部材が挙げられる。
【0030】
使用態様
発明の外用医薬組成物は、消炎鎮痛が求められる局所(皮膚)に外用投与することにより使用される。本発明の外用医薬組成物は、外用消炎鎮痛剤として、肩こりに伴う肩の痛み、関節痛、腰痛、筋肉痛、腱鞘炎(手・手首の痛み)、肘の痛み(テニス肘等)、打撲痛、ねんざ痛、骨折痛、神経痛、変形性関節症、関節炎等に対する治療目的で使用することができる。
【0031】
2.不溶物の生成を抑制する方法
前述するように、N-メチル-2-ピロリドンは、水中にロキソプロフェン及び/又はその塩をカプサイシノイドとともに含む外用医薬組成物において、不溶物の発生を抑制することができる。従って、本発明は、更に、外用医薬組成物中で、(A)成分であるロキソプロフェン及び/又はその塩と、(B)成分であるカプサイシノイド及び(D)成分である水とともに、(C)成分であるN-メチル-2-ピロリドンを共存させる、外用医薬組成物において不溶物の生成を抑制する方法を提供する。
【0032】
なお、本発明において、不溶物の生成を抑制するとは、外用医薬組成物の外観が、透明性を有すること、具体的には透明(澄明)又は半透明、より好ましくは透明(澄明)とすることをいう。
【0033】
前記不溶物の生成を抑制する方法において、使用する成分の種類や使用量、外用医薬組成物の形態等については、前記「1.外用医薬組成物」の欄に示す通りである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
試験例1
[外用医薬組成物の調製]
表1に示す組成の外用医薬組成物を調製した。具体的には、以下の手順で調製した。まず、精製水とロキソプロフェンNa水和物(ロキソプロフェンナトリウム水和物)とを混合し、均一になるまで撹拌した。得られた溶液に、カプサイシノイド(ノナン酸バニリルアミド)とN-メチル-2-ピロリドンとの混合溶液を混合し、均一になるまで攪拌した。最後に、合計量が100gとなるように精製水を添加し、均一になるまで撹拌した。
【0036】
[不溶物の生成抑制の評価]
調製した外用医薬組成物100gを、胴径40mmの透明スクリュー管に入れ、外観を目視し、以下の基準で不溶物の生成抑制を評価した。
◎:透明、澄明(不溶物の生成が極めて良好に抑制されている)
○:半透明(不溶物の生成が抑制されている)
△:不溶物が分散し不透明(析出した不溶物が浮遊)
×:不溶物が分離(析出した不溶物が沈殿)
【0037】
得られた結果を表1に示す。表1から明らかなように、水中にロキソプロフェンナトリウム水和物をノナン酸バニリルアミドとともに含む外用医薬組成物(比較例1)では、不溶物の分離が生じた。また、ノナン酸バニリルアミドを75重量%エタノールとともに水中に含む外用医薬組成物(参考例2)では不溶物の生成が極めて良好に抑制されたが、エタノール量が30重量%になると(参考例1)、不溶物の分離が生じた。さらに、水中にロキソプロフェンナトリウム水和物及びノナン酸バニリルアミドと共に、グリセリン、D-ソルビトール及びポリビニルアルコールといった多価アルコールを含む外用医薬組成物(比較例2~4)でも、不溶物の分離が生じた。これに対して、水中にロキソプロフェンナトリウム水和物及びノナン酸バニリルアミドと共に、N-メチル-2-ピロリドンを含む外用医薬組成物(実施例1、2)では、N-メチル-2-ピロリドンの配合量が僅か5重量%又は1重量%で、不溶物の生成が極めて良好に抑制された。
【0038】