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特許7186234堆積装置、フレキシブル基板をコーティングする方法、及びコーティングを有するフレキシブル基板
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  • 特許-堆積装置、フレキシブル基板をコーティングする方法、及びコーティングを有するフレキシブル基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】堆積装置、フレキシブル基板をコーティングする方法、及びコーティングを有するフレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/56 20060101AFI20221201BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20221201BHJP
   C23C 14/58 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C23C14/56
C23C14/02
C23C14/58
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020542270
(86)(22)【出願日】2018-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2018053075
(87)【国際公開番号】W WO2019154490
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】M/S 1269,3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デピッシュ, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クルンチ, ピーター
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-223788(JP,A)
【文献】特開2009-170355(JP,A)
【文献】特開平02-265150(JP,A)
【文献】特表2006-500740(JP,A)
【文献】国際公開第2013/035634(WO,A1)
【文献】特開2006-210425(JP,A)
【文献】特開2016-084494(JP,A)
【文献】特開2007-052941(JP,A)
【文献】特開2010-053447(JP,A)
【文献】特表2017-525853(JP,A)
【文献】特開昭63-301455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01J 27/00-27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板(10)上に層を堆積させるための堆積装置(100)であって:
フレキシブル基板(10)を提供するためのストレージスプール(112)を格納する第1のスプールチャンバ(110)と、第1のスプールチャンバ(110)の下流に配置された堆積チャンバ(120)と、堆積チャンバ(120)の下流に配置されて、堆積後にフレキシブル基板(10)を巻くための巻き取りスプール(152)を格納する第2のスプールチャンバ(150)とを備え、
堆積チャンバ(120)が:
- 少なくとも一つの堆積ユニットを通過するようにフレキシブル基板を誘導するためのコーティングドラム(122)、及び
- 少なくとも一つの堆積ユニットの上流又は下流でフレキシブル基板を処理するように構成された処理デバイス(160)
を含み、処理デバイス(160)が線形イオン源(161)を含み、
線形イオン源(161)が:
- プラズマ生成ユニット(166)を含み且つ抽出電極(168)の一部として第1の線形スリット(170)を有する抽出ボックス(164)であって、前記スリットが、抽出ボックス(164)のフレキシブル基板(10)と対向する一側面上に設けられたイオン出口である、抽出ボックス(164)、
- 抽出ボックスに隣接して且つイオンの経路において第1の線形スリット(170)の下流に設けられた、第2の線形スリット(174)を有する外側電極(172)、
- 抽出ボックス(164)、外側電極(172)及び大地電位に電気的に接続された電源(176)であって、約1kHzから約500kHzの範囲の周波数での動作に適合された電源(176)
を含み、
電源(176)の出口と抽出ボックス(164)との間に阻止コンデンサ(178)が設けられている、堆積装置。
【請求項2】
電源(176)が、随意で約500V(pp)から約2000V(pp)の電圧範囲の、正弦波AC電圧を提供するように適合されている、請求項1に記載の堆積装置。
【請求項3】
電源(176)の出力電圧は、AC出力電圧がピークツーピークAC電圧の約半分のDCオフセットを有するように適合されている、請求項1又は2に記載の堆積装置。
【請求項4】
電源(176)の出力電圧は、AC出力電圧が、抽出ボックス(164)内のプラズマからの電子抽出を最小化するために、約100V未満の負のピーク電位をもたらすDCオフセットを有するように適合されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の堆積装置。
【請求項5】
電源(176)の出力電圧は、抽出電極(168)に接続されたAC出力電圧が、AC周波数で正イオン及び電子を断続的に抽出するように適合されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の堆積装置。
【請求項6】
電源(176)が、随意で約500Vから約2000Vの電圧範囲の、パルスDC電圧を提供するように適合されている、請求項1に記載の堆積装置。
【請求項7】
外側電極(172)と抽出電極(168)とが、外側電極(172)と抽出電極(168)のダイオード構成を形成する、請求項1から6のいずれか一項に記載の堆積装置。
【請求項8】
フレキシブル基板(10)を層でコーティングする方法であって:
第1のスプールチャンバ(110)内に設けられたストレージスプール(112)からフレキシブル基板(10)を繰り出すこと;
堆積チャンバ(120)内に設けられたコーティングドラム(122)を使用してフレキシブル基板を誘導しながら、少なくとも一つの堆積ユニット(121)を用いてフレキシブル基板(10)上に層を堆積させること;
少なくとも一つの堆積ユニット(121)の上流又は下流において、線形イオン源(161)を有する処理デバイス(160a、160b、160c)からのイオンビームでフレキシブル基板を処理すること、
堆積後、第2のスプールチャンバ(150)内に設けられた巻き取りスプール(152)上にフレキシブル基板を巻くこと
を含み、
処理デバイス(160a、160b、160c)が、イオンのパルスビームで基板(10)を処理するように構成され、処理デバイス(160a、160b、160c)の電源(176)の出口と抽出ボックス(164)との間に阻止コンデンサ(178)が設けられ、処理デバイス(160a、160b、160c)が、抽出ボックス(164)に隣接し且つイオンの経路において下流に、外側電極(172)を備え、電源(176)が、抽出電極(168)を備える抽出ボックス(164)と外側電極(172)とに接続され、電源(176)が、抽出電極(168)と外側電極(172)の間に正弦波AC電圧又はパルスDC電圧を提供するように適合される、方法。
【請求項9】
パルスビームが、約0Vと処理デバイス(160a、160b、160c)の抽出電極(168)に接続された電源(176)のAC(pp)電圧との間の電圧に等しいエネルギースペクトルを有するイオンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ビームが、正イオンに対して断続的なパルス電子をさらに含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
抽出電極(168)に接続された抽出電圧は、AC出力電圧がピークツーピークAC電圧の約半分のDCオフセットを有するように構成される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
電源の出力電圧は、プラズマからの電子抽出を最小化するために、AC出力電圧が抽出電極において約100V未満の負のピーク電位をもたらすDCオフセットを有するように提供される、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
電源(176)の出力電圧は、抽出電極に接続されたAC出力電圧が、AC周波数を用いて正イオン及び電子を断続的に抽出するように提供され、且つ、イオン及び電子は、分散されたエネルギースペクトルを有するか、又は電源(176)の電圧はパルスDC出力電圧として提供される、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基板(10b)上に層を堆積させるための堆積装置(101)であって:
- 少なくとも一つの堆積ユニット(121)の上流又は下流で基板(10b)を処理するように構成された処理デバイス(160a、160b、160c)を備え、処理デバイス(160a、160b、160c)が線形イオン源(161)を含み:
線形イオン源(161)が:
- プラズマ生成ユニット(166)を含み且つ抽出電極(168)の一部として第1の線形スリット(170)を有する抽出ボックス(164)であって、前記スリットが、抽出ボックス(164)の基板(10b)と対向する一側面上に設けられたイオン出口である、抽出ボックス(164)、
- 抽出ボックスに隣接して且つイオンの経路において第1の線形スリット(170)の下流に設けられた、第2の線形スリット(174)を有する外側電極(172)、
- 抽出ボックス(164)、外側電極(172)及び大地電位に電気的に接続された電源(176)であって、約1kHzから約500kHzの範囲の周波数での動作に適合された電源(176)
を含み、
電源(176)の出口と抽出ボックス(164)との間に阻止コンデンサ(178)が設けられている、堆積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は薄膜堆積装置及び方法に関し、特に、薄層でフレキシブル基板をコーティングするための装置及び方法に関する。特に、本開示の実施態様は、フレキシブル基板をコーティングするためのロールツーロール(R2R)堆積装置及びコーティング方法に関する。具体的には、本開示の実施態様は、例えば、薄膜太陽電池製造、薄膜バッテリ製造、及びフレキシブルディスプレイ製造のために、層のスタックでフレキシブル基板をコーティングするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック膜又は箔などのフレキシブル基板の処理は、パッケージング業界、半導体業界及びその他の業界で需要が高い。処理は、金属、半導体、及び誘電体材料などの材料によるフレキシブル基板のコーティング、エッチング及び各用途のために基板上で行われるその他の処理作業からなりうる。このタスクを実行するシステムは、一般に、基板を搬送するためのローラアセンブリを有する処理システムに結合されたコーティングドラム、例えば、円筒形ローラを含み、このコーティングドラムの上で基板の少なくとも一部分が処理される。
【0003】
例えば、CVDプロセス又はPVDプロセスなどのコーティングプロセス、特にスパッタプロセスが、フレキシブル基板上に薄層を堆積するために利用されうる。ロールツーロール堆積装置とは、例えば1キロメートル以上というかなりの長さのフレキシブル基板が、ストレージスプールから送り出され、薄層のスタックでコーティングされて、巻き取りスプールに再び巻き取られることと解される。特に、薄膜バッテリの製造、ディスプレイ業界及び光電池(PV)業界において、ロールツーロール堆積システムは極めて重要である。例えば、フレキシブルタッチパネル素子、フレキシブルディスプレイ、及びフレキシブルPVモジュールに対する需要の高まりにより、R2Rコーターで適切な層を堆積させる需要が高まる結果となっている。
【0004】
さらに、高品質の層及び高品質の層スタックシステムを製造することのできるフレキシブル基板のコーティング装置の改良及びコーティング方法の改良に対する需要は途切れることがない。層又は層スタックシステムに対する改良は、例えば、均一性の改善、製品寿命の改善、及び単位表面積当たりの不具合の数の減少である。
【0005】
例えば、線形イオン源からのイオンビームを用いたコーティング基板の前処理又は後処理により、全体的なコーティング品質の改良が試みられた。しかしながら、このような線形イオン源の動作には通常、数kVのDC電圧の供給が必要であり、それは多数の技術点課題をもたらす。上記及びその他の理由から、本発明が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
上記に照らして、独立請求項による、フレキシブル基板をコーティングする堆積装置及び方法が提供される。さらなる態様、利点及び特徴は、従属請求項、明細書、及び添付図面から明らかである。
【0007】
本開示の一態様によれば、フレキシブル基板上に層を堆積するための堆積装置が提供される。堆積装置は、フレキシブル基板を提供するためのストレージスプールを格納する第1のスプールチャンバ、第1のスプールチャンバの下流に配置された堆積チャンバ、及び堆積チャンバの下流に配置されて堆積後にフレキシブル基板を巻くための巻き取りスプールを格納する第2のスプールチャンバを含む。堆積チャンバは、フレキシブル基板を、少なくとも一つの堆積ユニットを通過するように誘導するためのコーティングドラムを含む。さらに、堆積装置は処理デバイスを含む。処理デバイスは、少なくとも一つの堆積ユニットの上流又は下流でフレキシブル基板を処理するように構成されており、この処理デバイスは:プラズマ生成ユニットを含み且つ抽出電極の一部として第1の線形スリットを有する抽出ボックスを含む線形イオン源であって、スリットがフレキシブル基板の方向に向く抽出ボックスの側面に設けられたイオン出口である、線形イオン源と、抽出ボックスに隣接して且つイオンの経路において第1の線形スリットの下流に設けられた、第2の線形スリットを有する外側電極と、抽出電極及び大地電位に電気的に接続された電源であって、約1kHzから約500kHzの範囲の周波数での動作に適合された電源とを備える。
【0008】
本開示のさらなる態様によれば、フレキシブル基板を層でコーティングする方法が提供される。この方法は、第1のスプールチャンバに設けられたストレージスプールからフレキシブル基板を繰り出すこと;堆積チャンバに設けられたコーティングドラムを使用してフレキシブル基板を誘導しながら、少なくとも一つの堆積ユニットを用いてフレキシブル基板上に層を堆積させること;少なくとも一つの堆積ユニットの上流又は下流において、線形イオン源を有する処理デバイスからのイオンビームでフレキシブル基板を処理すること;堆積後、第2のスプールチャンバに設けられた巻き取りスプール上にフレキシブル基板を巻くことを含み、処理デバイスは、基板をイオンのパルスビームで処理するように構成される。
【0009】
さらなる態様によれば、層を基板上に堆積させるための堆積装置が提供される。この装置は、少なくとも一つの堆積ユニットの上流又は下流で基板を処理するように構成された処理デバイスを含み、この処理デバイスは:プラズマ生成ユニットを含む抽出ボックスを含み且つ抽出電極の一部として第1の線形スリットを有する線形イオン源であって、スリットが、抽出ボックスの基板と対向する側面に設けられたイオン出口である、線形イオン源と、抽出ボックスに隣接して且つイオンの経路において第1の線形スリットの下流に設けられた、第2の線形スリットを有する外側電極と、抽出ボックス及び大地電位に電気的に接続された電源であって、約1kHzから約500kHzの範囲の周波数での動作に適合された電源とを備える。実施態様は、開示の方法を実施するための装置も対象としており、それぞれ記載されている方法態様を実行するための装置部品を含む。これらの方法態様は、ハードウエア構成要素を用いてか、適切なソフトウエアによってプログラミングされたコンピュータを用いてか、これら二つの任意の組合せによってか、又はそれ以外の任意の態様で、実行されてよい。さらに、本開示による実施態様は、記載の装置を動作させるための方法も対象としている。記載の装置を動作させるための方法は、装置のあらゆる機能を実施するための方法態様を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に概説した本開示のより具体的な説明が、実施態様を参照して行われる。添付図面は本開示の実施態様に関連し、以下に記載される。
【0011】
図1】ここに記載される実施態様による堆積装置の概略断面図と、処理デバイスを強調する概略図とを示す。
図2】ここに記載されるさらなる実施態様による、堆積装置の概略断面図を示す。
図3】ここに記載される実施態様のいくつかで使用されうる堆積チャンバの一部の概略拡大図を示す。
図4】ここに記載される実施態様のいくつかで使用されうるACスパッタ源の概略図を示す。
図5】ここに記載される実施態様のいくつかで使用されうるDCスパッタ源の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本開示の様々な実施態様を詳細に参照する。それらの一又は複数の実施例は図面に示されている。図面に関する以下の説明の中で、同じ参照番号は同じ構成要素を指している。個別の実施態様に関する相違のみが記載される。各実施例は、本開示の説明のために提示されているのであって、本開示の限定を意図していない。さらに、一実施態様の一部として図示または記載されている特徴は、他の実施態様に用いることができるか又はさらに別の実施態様を生み出すために他の実施態様と併用して用いることができる。本明細書は、このような修正形態及び変形形態を含むことが意図されている。
【0013】
図1を例示的に参照して、本開示によるフレキシブル基板10をコーティングするための堆積装置100が記載される。ここに記載される他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、堆積装置100は、フレキシブル基板10を提供するためのストレージスプール112を格納する第1のスプールチャンバ110を含む。さらに、堆積装置100は、第1のスプールチャンバ110の下流に配置される堆積チャンバ120を含む。加えて、堆積装置100は、堆積チャンバ120の下流に配置され、堆積後にフレキシブル基板10を巻くための巻き取りスプール152を格納する第2のスプールチャンバ150を含む。堆積チャンバ120は、少なくとも一つの、典型的には複数の堆積ユニット121を通過するようにフレキシブル基板を誘導するためのコーティングドラム122を含む。さらに、図1に例示的に示されるように、堆積装置は処理デバイス160a、160b、160cを含む。処理デバイス160a、160b、160cは、堆積装置内部の多数の位置に配置することができる。図1では、処理デバイス160a、160b、160cの三つの異なる位置が示されている。三つの異なる位置のうち、典型的には実施態様により一つの選択肢が実現されうるが、一つの装置内に二つ以上の処理デバイスがあってもよい。処理デバイス160aは第1の堆積ユニット121の上流に置かれる。したがって、この処理デバイス160aからのイオンビームは、第1の堆積工程の前に基板を前処理するために使用され、これによって典型的には堆積された層/コーティングの接着が改善する。処理デバイス160bは、最後の堆積ユニット121の下流に置かれる。したがって処理デバイス160bは、例えばコーティングの均質性を向上させるため、又はその構造を変化させるために、直前の堆積工程において堆積された層の後処理のために使用される。処理デバイス160cも、最後の堆積ユニット121の後に提供され、コーティングされていない基板の側面を処理するように方向付けられる。これは、例えば、第2のコーティングドラム122を含む第2の堆積チャンバ120(どちらも図示しない)が図1の第1の堆積チャンバ120に隣接して設けられるとき、採用されうる。この場合、処理デバイス160cは、例えば基板10の側面を前処理することができ、基板はその後第2の堆積チャンバ内でコーティングされる。
【0014】
通常、ここに記載される堆積装置100、101は、以下に記載されるようなロールツーロール堆積装置である。堆積装置101は、平坦でありうる(非可撓性の)基板10b上に層を堆積させるための周知のシートツーシート原理に従って働いてもよい。このような堆積装置101は、後述の実施態様に関して記載される処理デバイス160a、160b、160cを含み、これら処理デバイスは、少なくとも一つの堆積ユニット121の上流又は下流で基板10bを処理するように構成される。通常、処理デバイス160a、160b、160cは、線形イオン源161を含む。線形イオン源161は、プラズマ生成ユニット166を含む抽出ボックス164を含む。それは抽出電極168の一部として第1の線形スリット170を有し、線形スリットは、抽出ボックス164の基板10bと対向する側面に設けられたイオン出口である。さらに、イオン源は、第2の線形スリット174を有する外側電極172を有し、これは、抽出ボックスに隣接し且つイオンの経路において第1の線形スリット170の下流に設けられる。さらに、処理デバイスは、抽出ボックス168と大地電位に電気的に接続された電源176を有し、この電源176は、約1kHzから約500kHzの範囲の周波数での動作に適合される。通常、ここに開示される処理デバイス160a、160b、160cは、広範なコーティング/堆積装置及び方法に採用することができ、それには、非限定的な例として、後述するシートツーシート堆積装置及びロールツーロール装置が含まれる。
【0015】
したがって、ここに記載される堆積装置の実施態様は、例えば、前処理に起因する基板に対する層の接着の改善によって、一般的な堆積装置と比較したとき改善されている。さらなる一実施例として、堆積装置は、有利には、例えばダイヤモンド様カーボン層を生成するために、処理デバイス160bによる後処理を用いた、高密度化することのできる層でのフレキシブル基板のコーティングを提供する。
【0016】
本開示において、「堆積装置」は通常、基板、特にフレキシブル基板上に材料を堆積させるように構成された装置と理解することができる。特に、堆積装置は、層のスタックでフレキシブル基板をコーティングするように構成されたロールツーロール(R2R)堆積である。具体的には、堆積装置は、少なくとも一つの真空チャンバ、特に真空堆積チャンバを有する真空堆積装置とすることができる。例えば、堆積装置は、長さ500m以上、1000m以上、又は数キロメートルの基板に対して構成されうる。基板の幅は、300mm以上、特に500mm以上、さらに詳細には1m以上とすることができる。さらに、基板の幅は3m以下、特に2m以下にすることができる。
【0017】
本開示では、「フレキシブル基板」は曲げることのできる基板と理解することができる。例えば、「フレキシブル基板」は「箔」又は「ウェブ」とすることができる。本開示では、「フレキシブル基板」という用語と「基板」という用語とは同義的に使用されうる。例えば、ここに記載される基板は、PET、HC-PET、PE、PI、PU、TaC、OPP、COP、COCのような材料、一又は複数の金属、紙、それらの組み合わせ、及びハードコートPET(例えば、HC-PET、HC-TaC)などの既にコーティング済みの基板を含みうる。いくつかの実施態様では、フレキシブル基板は、両面で指数が一致した(IM)層が設けられたCOP基板である。例えば、基板の厚さは、20μm以上及び1mm以下、特に50μmから200μmとすることができる。
【0018】
本開示では、「堆積チャンバ」は、基板上に材料を堆積させるための少なくとも一つの堆積ユニットを有するチャンバと理解することができる。特に、堆積チャンバは、真空チャンバ、例えば真空堆積チャンバでありうる。ここで使用される「真空」という用語は、例えば10mbar未満の真空圧を有する、工業的真空の意味で理解することができる。典型的には、ここに記載される処理チャンバ内の圧力は、約10-5mbarと約10-8mbarとの間、さらに典型的には約10-5mbarと約10-7mbarとの間、さらにより典型的には約10-6mbarと約10-7mbarとの間でありうる。
【0019】
本開示において、「堆積ユニット」は、基板上に材料を堆積させるように構成されたユニット又はデバイスと理解することができる。例えば、堆積ユニットは、ここに記載されるスパッタ堆積ユニットでありうる。しかしながら、ここに記載される堆積装置は、スパッタ堆積に限定されることはなく、他の堆積ユニットも追加で使用されうる。例えば、いくつかの実装態様では、CVD堆積ユニット、蒸発堆積ユニット、PECVD堆積ユニット、又は他の堆積ユニットが利用されてよい。
【0020】
本開示では、「コーティングドラム」は、フレキシブル基板に接触するための基板支持面を有するドラム又はローラと理解することができる。特に、コーティングドラムは回転軸の周りで回転可能で、基板誘導領域を含みうる。典型的には、基板誘導領域は、コーティングドラムの湾曲した基板支持面、例えば円筒形の対称面である。コーティングドラムの湾曲した基板支持面は、堆積装置の動作中に、フレキシブル基板に(少なくとも部分的に)接触するように適合されうる。
【0021】
ここで使用される「上流」及び「下流」という用語は、基板の移送経路に沿った、それぞれのチャンバ又はそれぞれの構成要素の、別のチャンバ又は構成要素に対する位置を指している。例えば、動作中に、基板はローラアセンブリを介し、基板移送経路に沿って、第1のスプールチャンバ110から堆積チャンバ120を経由し、その後第2のスプールチャンバ150まで誘導される。したがって、堆積チャンバ120は、第1のスプールチャンバ110の下流に配置され、第1のスプールチャンバ110は堆積チャンバ120の上流に配置される。動作中に、基板が最初に第1のローラ又は第1の構成要素によって誘導されるか又はこれらを通って移送され、その後第2のローラ又は第2の構成要素によって誘導されるか又はこれらを通って移送されるとき、第2のローラ又は第2の構成要素は第1のローラ又は第1の構成要素の下流に配置されている。
【0022】
本開示において、「処理デバイス」は、堆積の前に、イオン及び/又は電子衝突により、フレキシブル基板上に堆積された層に対して、又は基板に対して、処理を施すように構成されたデバイスと理解される。
【0023】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、処理デバイスは非接触型処理デバイスである。例えば、少なくとも5mm、特に少なくとも10mm、さらに詳細には少なくとも15mmの間隙が、処理デバイスと処理対象基板又は層との間に提供されうる。
【0024】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、処理デバイスはイオン源、特に線形イオン源(LIS)である。特に、処理デバイスは、フレキシブル基板の上、又はフレキシブル基板上に堆積される層の上にイオン衝突をもたらすように構成される。実施態様によれば、イオン源は、MF(中間周波数)電流抽出を含む。第1の堆積工程の前に(上流で)基板にイオン衝突を提供することは、堆積された層スタックの接着を改善することが判明した。また、フレキシブル基板上に堆積された層の処理は層の高密度化をもたらし、これは層の品質及び耐性を上昇させるために有利でありうる。
【0025】
ここに記載され且つ図1に示される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、線形イオン源161(処理デバイス160a、160b、160cのうちのいずれかの)は、抽出ボックス164を含む。これはプラズマ生成ユニット166を含む。抽出ボックス164内部のプラズマ由来のイオンは、第1の線形スリット170から抽出される。前記スリットは抽出電極168の一部であり、フレキシブル基板10と対向するように取り付けられる抽出ボックス164の側面に設けられたイオン出口を形成する。外側電極172は、第2の線形スリット174をさらに有し、第2の線形スリットは、抽出ボックス164を出るイオンの経路において第1の線形スリット170の下流、即ち線形イオン源161の下流に設けられる。
【0026】
ここに記載され且つ図1に例示的に示される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、電源176は、その出力ポートの一つで抽出ボックス168に電気的に接続される。他のポートで、電源は大地電位に接続される。電源176は、典型的には、ここでは中間周波数又はMFレンジとも呼ばれる、約1kHzから約500kHzの範囲、さらに典型的には約10kHzから約100kHzの周波数での動作に適合される。
【0027】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、電源176は、正弦波AC電圧又はパルスDC電圧を提供するように適合される。典型的には、必須ではないが、電源176の電圧は、約500V(pp)から約2000V(pp)、さらに典型的には約700V(pp)から約1500V(pp)の範囲内である。
【0028】
後述では、正弦波AC電圧(中間周波数の)に関する実施態様について記載する。経時的電圧グラフの一例が図1の横に示されている。一般的なDC抽出ではなくこのような中間周波数抽出を利用することにはいくつかの利点がある。例えば、MFは、一秒間に数千回抽出電極を放電することができる。通常、電荷蓄積の傾向が大きく低減されるか、又は場合によってはほぼゼロになる。これは、アーク発生の有害現象の低減をもたらしうる。典型的には、イオンビームは、正及び負に帯電したイオンを含む。負に帯電したイオンは直接抽出することができる。加えて、電子が抽出されるであろう。つまり、プラズマ源から抽出されたビームはほぼ中性となり、したがって、一部の実施態様では、荷電ビームを集束させる一般的な抑制電極を省略することができる。このようにして、一般的なトリード設計の代わりに、外側電極と抽出電極のダイオード構成を実現することができる。
【0029】
イオンは異なるエネルギーを達成するので、イオンが抽出されるときの電流電圧に応じて、イオンビーム内で広いイオンエネルギー範囲が達成されうる。これは、基板材料に異なるイオン侵入深さをもたらし、このことは、コーティング品質の向上のために有利に使用されうる。
【0030】
図1に示されるように、一部の実施態様においては、電源176の出口と抽出ボックス164との間に、抽出電極に対して阻止コンデンサ178が設けられる。電源176の出力電圧は、AC(pp)出力電圧がピークツーピークAC電圧の約半分のDCオフセットを有するように適合されうる。阻止コンデンサ178により、抽出されたイオンと電子の数が等しくなり、コンデンサにDC電流が存在しなくなる。イオンと比べて電子は軽いため可動性が高く、したがって速いので、電子流(即ち電子電流)は、イオン流と電子流との間に均衡を達成するために電圧を調節することにより影響されうる。
【0031】
さらなる実施態様では、電源176の出力電圧は、AC出力電圧が約100V未満の負のピーク電位をもたらすDCオフセットを有するように適合される。これは、抽出ボックス164内のプラズマからの電子抽出の最小化を助ける。電源176の出力電圧は、抽出電極168に接続されたAC出力電圧がAC周波数で正のイオン及び電子を断続的に抽出するように適合される。ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様では、電源176は、典型的には約500Vから約2000V、さらに典型的には約700Vから約1500Vの電圧範囲のパルスDC電圧を提供するように適合される。経時的パルス電圧の例示的グラフが、他のグラフに示される正弦波ACの代替例として図1に示されている。パルス電圧を用いて、基板(コーティングあり又はなし)がイオンビーム/電子ビームにより帯電する量を調節することができる。ビーム中に電子の大部分又はイオンの大部分がある場合、地面に対する電圧レベルにより、その量は広い範囲にわたって調節することができるか、又はそれらは等しくなるように調節されうる。後者の場合、基板/層はビームによって帯電せず、中性のままとなるであろう。その効果は、帯電基板(堆積層(複数可)あり又はなし)と堆積装置の部品、特に線形イオン源との間のアーク発生の問題が著しく低減されるか、又は場合によっては完全に回避されることである。さらに、基板の帯電挙動は広く制御することができ、それを使用してコーティングの接着及び品質などを改善することができる。
【0032】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、少なくとも一つの堆積ユニット124は直流スパッタ堆積ユニットである。代替的に、少なくとも一つの堆積ユニット124は、パルス式直流スパッタ堆積ユニットとすることができる。図1及び2に概略的に示されるように、少なくとも一つの堆積ユニット124のターゲット125は、平面のターゲットとすることができる。例えば、少なくとも一つの堆積ユニット124は、平面的カソードスパッタ源とすることができる。代替的に、例えば、少なくとも一つの堆積ユニット124のターゲット125は、回転ターゲットとすることができる。図4及び図5を例示的に参照し、複数の堆積ユニット121に対して、及びここに記載されるグラファイトターゲット125を有する少なくとも一つの堆積ユニット124に対して使用されうる、様々な可能な実装態様を記載する。
【0033】
図1及び図2を例示的に参照すると、堆積装置100は典型的に、フレキシブル基板10を基板移送経路に沿って、第1のスプールチャンバ110から第2のスプールチャンバ150まで誘導することができるように構成されており、基板移送経路は堆積チャンバ120を貫通しうると理解される。フレキシブル基板は、堆積チャンバ120内で層のスタックによってコーティングすることができる。複数のロールを備えるローラアセンブリ又はローラは、基板移送経路に沿って基板を移送するように提供することができ、ローラアセンブリの二つ以上のローラ、五つ以上のローラ、又は10個以上のローラは、ストレージスプールと巻き取りスプールとの間に配置されうる。
【0034】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、装置はさらに、部分的に凸状で部分的に凹状の基板移送経路に沿って、フレキシブル基板を第1のスプールチャンバから第2のスプールチャンバまで移送するように構成されたローラアセンブリを含む。言い換えるならば、一部の誘導ローラがフレキシブル基板の第1の主要面に接触し、一部の誘導ローラが第1の主要面と向かい合うフレキシブル基板の第2の主要面に接触するように、基板移送経路は部分的に右に湾曲し、部分的に左に湾曲しうる。
【0035】
例えば、図2の第1の誘導ローラ107はフレキシブル基板の第2の主要面に接触し、フレキシブル基板は第1の誘導ローラ107(基板移送経路の「凸状」部分)によって誘導される間に左に曲げられる。図2の第2の誘導ローラ108は、フレキシブル基板の第1の主要面に接触し、フレキシブル基板は第2の誘導ローラ108(基板移送経路の「凹状」部分)によって誘導される間に右に曲げられる。したがって、有利にはコンパクトな堆積装置が提供されうる。
【0036】
いくつかの実施態様によれば、堆積装置のいくつかのチャンバ又はすべてのチャンバは、排気可能な真空チャンバとして構成されうる。例えば、堆積装置は、第1のスプールチャンバ110及び/又は堆積チャンバ120及び/又は第2のスプールチャンバ150での真空の生成又は真空の維持を可能にする構成要素及び機器を含みうる。特に、堆積装置は、第1のスプールチャンバ110及び/又は堆積チャンバ120及び/又は第2のスプールチャンバ150での真空の生成又は真空の維持のための真空ポンプ、排気ダクト、真空密閉などを含みうる。
【0037】
図1及び図2に例示的に示されるように、典型的には第1のスプールチャンバ110はストレージスプール112を収納するように構成され、ストレージスプール112はフレキシブル基板10が巻かれた状態で提供されうる。動作中、フレキシブル基板10は、ストレージスプール112から繰り出すことができ、基板移送経路(図1及び図2に矢印で示される)に沿って、第1のスプールチャンバ110から堆積チャンバ120に向かって移送されうる。ここで使用される「ストレージスプール」という用語は、コーティングされるフレキシブル基板がその上に保存されるロールと理解される。したがって、ここで使用される「巻き取りスプール」という用語は、コーティングされたフレキシブル基板を受け取るように適合されたロールと理解される。「ストレージスプール」という用語は、ここでは「供給ロール」とも呼ばれ、「巻き取りスプール」という用語は、ここでは「取り込みロール」とも呼ばれる。
【0038】
図2を例示的に参照すると、ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、密閉デバイス105は、隣接するチャンバ間に、例えば、第1のスプールチャンバ110と堆積チャンバ120との間に、及び/又は堆積チャンバ120と第2のスプールチャンバ150との間に、提供されうる。したがって、有利には、巻き取りチャンバ(即ち、第1のスプールチャンバ110と第2のスプールチャンバ150)は独立に、特に堆積チャンバとは独立に、通気又は排気されうる。密閉デバイス105は、基板を平坦な密閉面に押し当てるように構成された膨張可能な密閉を含みうる。
【0039】
図2に例示的に示されるように、典型的には、コーティングドラム122は、複数の堆積ユニット、例えば、第1の堆積ユニット121A、第2の堆積ユニット121B、及び第3の堆積ユニット121Cを通過するようにフレキシブル基板10を誘導するように構成されている。例えば、図2に概略的に示されるように、第1の堆積ユニット121A及び第3の堆積ユニット121Cは、図4を参照してより詳細に例示的に記載されるAC(交流)スパッタ源とすることができる。
【0040】
図2の曲がった矢印で例示的に示されているように、コーティングドラム122は、典型的には回転軸123の周りで回転可能である。特に、コーティングドラムは能動的に駆動されうる。言い換えると、コーティングドラムを回転させる駆動力が提供されうる。コーティングドラムは、フレキシブル基板10に接触するための、湾曲した基板支持面、例えば、コーティングドラム122の外面を含みうる。特に、湾曲した基板支持面は、例えば、図3を参照して例示的に記載されるように、電位を印加するデバイス140を利用することによって、電位を提供するために導電性とすることができる。例えば、基板支持面は、導電性材料、例えば金属材を含みうるか、又は導電性材料からなりうる。
【0041】
したがって、コーティングドラムによって、複数の堆積ユニットを通過するようにフレキシブル基板を誘導している間に、フレキシブル基板はコーティングドラムの基板支持面に直接接触しうる。例えば、複数の堆積ユニットのうちの一部の堆積ユニットは、図1図2及び図3に概略的に示されるように、コーティングドラム122の周りの円周方向に配置されうる。コーティングドラム122が回転するにつれて、フレキシブル基板は、フレキシブル基板の第1の主要面が所定の速度で堆積ユニットを通過する間にコーティングされうるように、コーティングドラムの湾曲した基板支持面に対向する堆積ユニットを通過するように誘導される。
【0042】
したがって、動作中に、基板は、コーティングドラムの湾曲した基板支持面上の基板誘導領域上で誘導される。基板誘導領域は、コーティングドラムの動作中に基板が湾曲した基板面に接触する、コーティングドラムの角範囲として定義することができ、コーティングドラムの巻き付け角(enlacement angle)に対応しうる。いくつかの実施態様では、コーティングドラムの巻き付け角は、図2に概略的に描かれているように、120°以上、具体的には180°以上、又は場合によっては270°以上でありうる。いくつかの実施態様では、動作中、コーティングドラムの最上部分はフレキシブル基板に接触せず、コーティングドラムの巻き付け領域は、コーティングドラムの少なくとも下半分の全体を占めることができる。いくつかの実施態様では、コーティングドラムには、本質的に対称にフレキシブル基板が巻き付けられる。
【0043】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、コーティングドラム122は、典型的には0.1mから4m、さらに典型的には0.5から2mの範囲、例えば約1.4mの幅を有する。コーティングドラムの直径は、1mを上回ってもよく、例えば1.5mと2.5mの間である。
【0044】
いくつかの実施態様では、ローラアセンブリの一又は複数のローラ、例えば誘導ローラは、ストレージスプール112とコーティングドラム122との間に、及び/又はコーティングドラム122の下流に配置されうる。例えば、図1に示される実施態様では、二つの誘導ローラがストレージスプール112とコーティングドラム122との間に提供され、少なくとも一つの誘導ローラは第1のスプールチャンバ内に配置され、少なくとも一つの誘導ローラはコーティングドラム122の上流の堆積チャンバ内に配置されうる。いくつかの実施態様では、三つ、四つ、五つ以上、特に八つ以上の誘導ローラがストレージスプールとコーティングドラムとの間に提供される。誘導ローラは能動型又は受動型のローラでありうる。
【0045】
ここで使用される「能動型」ローラ又はロールは、それぞれのローラを能動的に動かす又は回転させるための駆動部又はモータが設けられたローラであると理解されうる。例えば、能動型ローラは、所定のトルク又は所定の回転速度を提供するように調整されうる。典型的には、ストレージスプール112及び巻き取りスプール152は、能動型ローラとして提供されうる。いくつかの実施態様では、コーティングドラムは能動型ローラとして構成されうる。さらに、能動型ローラは、動作中に所定の張力で基板を引っ張るように構成された基板張力ローラとして構成することができる。ここで使用される「受動型」ローラは、受動型ローラを能動的に動かす又は回転するためのドライブを備えていないローラ又はロールと理解される。受動型ローラは、動作中に外側のローラ面に直接接触しうるフレキシブル基板の摩擦力によって回転されうる。
【0046】
図2に例示的に示されるように、一又は複数の誘導ローラ113は、コーティングドラム122の下流、及び第2のスプールチャンバ150の上流に配置されうる。例えば、少なくとも一つの誘導ローラは、フレキシブル基板10を真空チャンバに向かって、例えば堆積チャンバ120の下流に配置された第2のスプールチャンバ150に向かって誘導するために、コーティングドラム122の下流の堆積チャンバ120に配置されるか、又はフレキシブル基板を巻き取りスプール152の上に滑らかに誘導するため、フレキシブルローラをコーティングドラムの基板支持面に対して本質的に接線方向に誘導するために、コーティングドラム122の上流の第2のスプールチャンバ150に配置されうる。
【0047】
図3は、ここに記載される実施態様のいくつかで使用されうる堆積チャンバの一部の概略拡大図を示す。
【0048】
図3を例示的に参照すると、ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、それぞれが動作中に一つの堆積ユニットから他の堆積ユニット(例えば隣接する堆積ユニット)へのプロセスガスの流れを減らすため、二つの隣接する堆積ユニットの間にガス分離ユニット510が提供されうる。ガス分離ユニット510は、堆積チャンバの内部空間を複数の分離された区画に分割するガス分離壁として構成され、各区画は一つの堆積ユニットを含みうる。二つの隣接するガス分離ユニットの間にそれぞれ一つの堆積ユニットが配置されうる。言い換えるならば、堆積ユニットは、それぞれガス分離ユニット510によって分離されうる。したがって、有利には、隣接する区画/堆積ユニットの間に高いガス分離を設けることができる。
【0049】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、それぞれの堆積ユニットを格納する区画の各々は、個々の堆積ユニットの堆積条件を適切に設定することができるように、他の堆積ユニットを格納する他の区画とは独立に排気することができる。ガス分離ユニットによって分離されうる隣接した堆積ユニットによって、異なる材料をフレキシブル基板上に堆積することができる。
【0050】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、ガス分離ユニット510は、それぞれのガス分離ユニットとそれぞれのコーティングドラムとの間のスリット511の幅を調整するように構成されうる。いくつかの実施態様によれば、ガス分離ユニット510は、スリット511の幅を調整するように構成されたアクチュエータを含みうる。隣接する堆積ユニット間のガス流を低減するため、及び隣接する堆積ユニット間のガス分離係数を高めるために、ガス分離ユニットとコーティングドラムとの間のスリット511の幅は、小さな値、例えば1cm以下、特に5mm以下、具体的には2mm以下とすることができる。いくつかの実施態様では、スリット511の円周方向の長さ、即ち二つの隣接する堆積区画間のそれぞれのガス分離通路の長さは、1cm以上、特に5cm以上、又は場合によっては10cm以上でありうる。いくつかの実施態様では、スリットの長さは、場合によってはそれぞれ約14cmであってよい。
【0051】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、複数の堆積ユニット121の少なくとも一つのうちの第1の堆積ユニットはスパッタ堆積ユニットでありうる。いくつかの実施態様では、複数の堆積ユニット121の各堆積ユニットはスパッタ堆積ユニットである。そのとき、一又は複数のスパッタ堆積ユニットは、DCスパッタリング、ACスパッタリング、RF(高周波)スパッタリング、MF(中周波)スパッタリング、パルススパッタリング、パルスDCスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、反応性スパッタリング、又はこれらの組み合わせに対して構成されうる。DCスパッタ源は、導電性材料、例えば銅などの金属を用いたフレキシブル基板のコーティングに適している場合がある。交流(AC)スパッタ源、例えばRFスパッタ源又はMFスパッタ源は、フレキシブル基板を導電性材料又は絶縁材料で、例えば誘電体材料、半導体、金属又はカーボンでコーティングするために適している場合がある。
【0052】
しかしながら、ここに記載される堆積装置は、スパッタ堆積に限定されず、いくつかの実施態様では他の堆積ユニットが使用されうる。例えば、いくつかの実装態様では、CVD堆積ユニット、蒸発堆積ユニット、PECVD堆積ユニット又は他の堆積ユニットが利用されうる。特に、堆積装置のモジュール式設計により、堆積チャンバから第1の堆積ユニットを半径方向に取り除くことにより、及び堆積チャンバに別の堆積ユニットを装填することにより、第1の堆積ユニットを第2の堆積ユニットで置き換えることが可能でありうる。そのために、堆積チャンバには、一又は複数の堆積ユニットを交換するために開閉されうる密閉ふたが提供されうる。
【0053】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、フレキシブル基板上に非導電性材料を堆積するために、少なくとも一つのACスパッタ源が、例えば堆積チャンバに提供されうる。いくつかの実施態様では、フレキシブル基板上に導電性材料を堆積させるために、少なくとも一つのDCスパッタ源が堆積チャンバに提供されうる。
【0054】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできる、図3に例示的に示された実施例によれば、複数の堆積ユニットの少なくとも一つの第1の堆積ユニット301はACスパッタ源でありうる。図3に示される実施態様では、複数の堆積ユニットのうちの二つの第1の堆積ユニットは、ACスパッタ源、例えば、以下により詳細に記載される二つのターゲットを備えるスパッタ源である。酸化ケイ素などの誘電体材料がACスパッタ源を用いてフレキシブル基板上に堆積されうる。例えば、二つの隣接する堆積ユニット、例えば第1の堆積ユニットが、反応性スパッタプロセスにおいて、フレキシブル基板の第1の主要面上に酸化ケイ素層を直接堆積させるように構成されうる。結果として得られる酸化ケイ素層の厚さは、互いに隣り合う二つ以上のACスパッタ源を利用することによって、例えば2倍に、増大しうる。
【0055】
複数の堆積ユニットのうちの残りの堆積ユニットは、DCスパッタ源でありうる。図3に示される実施態様では、少なくとも一つの第1の堆積ユニット301の下流に配置された複数の堆積ユニットのうちの少なくとも一つの第2の堆積ユニット302は、例えばITO層を堆積させるように構成されたDCスパッタ源でありうる。他の実施態様では、カーボン層又はITO層を堆積させるように構成された二つ以上のDCスパッタ源が提供されうる。いくつかの実施態様では、カーボン層又はITO層は、少なくとも一つの第1の堆積ユニット301によって堆積される酸化ケイ素層の上に堆積されうる。
【0056】
さらに、いくつかの実施態様では、少なくとも一つの第2の堆積ユニット302の下流に配置された少なくとも一つの第3の堆積ユニット303(例えば三つの第3の堆積ユニット)が、例えば金属層を堆積するために、DCスパッタユニットとして構成されうる。図3に例示的に示されるように、ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、少なくとも一つの堆積ユニット124は、少なくとも一つの第2の堆積ユニット302の下流で少なくとも一つの第3の堆積ユニット303の上流に配置することができる。例えば、図3に例示的に示されるように、合計七つの堆積ユニットが提供されうる。しかしながら、図3に示される堆積チャンバ構成は一実施例であり、例えば堆積ユニットの順序を変えた、又は堆積ユニットの数を変えた他の構成が可能であることを理解されたい。
【0057】
例えば、処理デバイス160は、図3に例示的に示されるように、複数の堆積ユニットの下流の堆積チャンバ内に配置されうる。さらに、ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様では、処理デバイス160bは、フレキシブル基板がコーティングドラム122の基板支持面に接触しているときに処理デバイス160を使用してフレキシブル基板上に堆積させた層を高密度化することができるように配置されている。明示的には示されていないが、二つ以上の処理デバイスが堆積チャンバ120内に提供されうると理解されたい。例えば、一又は複数のさらなる処理デバイスが、複数の堆積ユニットのうちの隣接する二つの堆積ユニット間に提供されうる。したがって、有利には、層スタックの個々の層の高密度化を行うことができる。
【0058】
図4はACスパッタ源610をより詳細に示しており、図5はDCスパッタ源612をより詳細に示している。図4に示されるACスパッタ源610は、二つのスパッタデバイス、即ち第1のスパッタデバイス701及び第2のスパッタデバイス702を含みうる。本開示では、「スパッタデバイス」は、フレキシブル基板上に堆積される材料を含むターゲット703を含むデバイスと理解されたい。ターゲットは、堆積される材料又は少なくとも堆積される材料の成分から作製されうる。いくつかの実施態様では、スパッタデバイスは、回転軸を有する回転ターゲットとして構成されたターゲット703を含みうる。いくつかの実装態様では、スパッタデバイスは、ターゲット703がその上に配置されうるバッキングチューブ704を含みうる。いくつかの実装態様では、スパッタデバイスの動作中に磁場を生成するための磁石アレンジメントが、例えば回転ターゲットの内部に設けられうる。回転ターゲット内に磁石アレンジメントが設けられる場合、スパッタデバイスはスパッタマグネトロンと称されることがある。いくつかの実装態様では、スパッタデバイス又はスパッタデバイスの部品を冷却するために、冷却チャネルがスパッタデバイス内に設けられうる。
【0059】
いくつかの実装態様では、スパッタデバイスは堆積チャンバの支持体に接続されるように適合されてよく、例えばフランジがスパッタデバイスの端部に設けられうる。いくつかの実施態様によれば、スパッタデバイスは、カソード又はアノードとして動作しうる。例えば、第1のスパッタデバイス701はカソードとして動作することができ、また、第2のスパッタデバイス702はある時点でアノードとして動作しうる。第1のスパッタデバイス701と第2のスパッタデバイス702との間に交流が印加されるとき、その後のある時点で、第1のスパッタデバイス701はアノードとして動作し、第2のスパッタデバイス702はカソードとして動作しうる。いくつかの実施態様では、ターゲット703はシリコンを含んでもよく又はシリコンから作製されてもよい。
【0060】
「ツインスパッタデバイス」という用語は、一対のスパッタデバイス、例えば第1のスパッタデバイス701と第2のスパッタデバイス702を意味する。第1のスパッタデバイスと第2のスパッタデバイスはツインスパッタデバイスペアを形成しうる。例えば、ツインスパッタデバイスペアの両スパッタデバイスは、フレキシブル基板をコーティングするために、同じ堆積プロセスにおいて同時に使用されうる。ツインスパッタデバイスは同様に設計されうる。例えば、ツインスパッタデバイスは、同じコーティング材料を提供することができ、実質的に同じサイズ及び実質的に同じ形状を有しうる。ツインスパッタデバイスは、堆積チャンバ内に配置されうるスパッタ源を形成するために、互いに隣接して配置されうる。ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、ツインスパッタデバイスの二つのスパッタデバイスは、同じ材料、例えばシリコン、ITO、又はカーボンから作製されたターゲットを含む。
【0061】
図3及び図4に示されるように、第1のスパッタデバイス701は、第1のスパッタデバイス701の回転軸となりうる第1の軸を有する。第2のスパッタデバイス702は、第2のスパッタデバイス702の回転軸となりうる回転軸を有する。スパッタデバイスは、フレキシブル基板上に堆積される材料を提供する。反応性堆積プロセスについては、最終的にフレキシブル基板上に堆積される材料は、追加的にプロセスガスの化合物を含むことができる。
【0062】
図3に例示的に示される実施態様によれば、フレキシブル基板は、コーティングドラム122によってツインスパッタデバイスを通過するように誘導される。そのとき、コーティングウインドウは、コーティングドラム122上のフレキシブル基板の第1の位置705、及びコーティングドラム122上のフレキシブル基板の第2の位置706によって限定される。コーティングウインドウ、即ち第1の位置705と第2の位置706との間のフレキシブル基板の一部は、材料がその上に堆積される基板の領域を規定する。図3に示すように、第1のスパッタデバイス701から放出された堆積材料の粒子と、第2のスパッタデバイス702から放出された堆積材料の粒子は、コーティングウインドウ内のフレキシブル基板に到達する。
【0063】
ACスパッタ源610は、第1のスパッタデバイス701の第1の軸から第2のスパッタデバイス702の第2の軸までの距離が300mm以下、特に200mm以下になるように適合されうる。典型的には、第1のスパッタデバイス701の第1の軸と第2のスパッタデバイス702の第2の軸との距離は、150mmと200mmの間、さらに典型的には170mmと185mmの間、例えば180mmでありうる。いくつかの実施態様によれば、円筒形のスパッタデバイスでありうる第1のスパッタデバイス701及び第2のスパッタデバイス701の外径は、90mmと120mmの間、さらに典型的には約100mmと約110mmの間の範囲とすることができる。
【0064】
いくつかの実施態様では、第1のスパッタデバイス701には第1の磁石アレンジメントが設けられ、第2のスパッタデバイス702には第2の磁石アレンジメントが設けられうる。磁石アレンジメントは、堆積効率を改善する磁場を生成するように構成された磁石ヨークであってよい。いくつかの実施態様によれば、磁石アレンジメントは互いに向かって傾けられてもよい。互いに向かって傾けられて配置された磁石アレンジメントは、この文脈では、磁石アレンジメントによって生成される磁場が互いに向って方向付けられていることを意味しうる。
【0065】
図5は、ここに記載される実施態様のいくつかに使用されうるDCスパッタ源612の拡大概略図を示す。いくつかの実施態様では、図3に示された少なくとも一つの第2の堆積ユニット302はDCスパッタ源612として構成される、及び/又は少なくとも一つの第3の堆積ユニット303はDCスパッタ源612として構成される。DCスパッタ源612は、フレキシブル基板の上に堆積される材料を提供するためのターゲット614を含む少なくとも一つのカソード613を含みうる。少なくとも一つのカソード613は回転式カソードであってよく、特に回転軸の周りで回転可能な本質的に円筒形のカソードであってよい。ターゲット614は、堆積される材料から作製されうる。例えば、ターゲット614は、銅又はアルミニウムのターゲットなどの、金属ターゲットであってよい。図5に例示的に示されるように、少なくとも一つの堆積ユニット124がDCスパッタ源として構成される実施態様では、ターゲット614は例えばグラファイトターゲットでありうる。さらに、図5に例示的に示されるように、生成されたプラズマを閉じ込めるための磁石アセンブリ615が、回転式カソードの内部に配置されうる。
【0066】
いくつかの実装態様では、DCスパッタ源612は、図5に例示的に示されるように、単一のカソードを含みうる。いくつかの実施態様では、導電性の表面、例えば堆積チャンバの壁面は、アノードとして動作しうる。他の実装態様では、分離されたアノード、例えばロッド形状を有するアノードは、少なくとも一つのカソード613と分離されたアノードとの間に電場が生成されうるように、カソードの隣に設けられる。少なくとも一つのカソード613とアノードとの間に電場を印加するために、電源が供給されてよい。金属などの導電性材料の堆積を可能にしうるDC電場が印加されうる。いくつかの実装態様では、パルスDC場が少なくとも一つのカソード613に印加される。いくつかの実施態様では、DCスパッタ源612は、二つ以上のカソード、例えば二つ以上のカソードのアレイを含みうる。
【0067】
ここに記載される他の実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、堆積ユニット、特にカソード(例えば、ACスパッタ源、DC回転式カソード、ツイン回転式カソード、及びダブルDC平面カソード)は置き換え可能であると理解される。したがって、共通の区画設計が提供されうる。さらに、堆積ユニットは、それぞれの堆積ユニットを個別に制御するように構成されたプロセスコントローラに接続されうる。したがって、有利には、プロセスコントローラは、反応性プロセスを完全に自動化することができるように提供されうる。
【0068】
ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできるいくつかの実施態様によれば、ここに記載される堆積源は、反応性堆積プロセスのために構成されうる。さらに、プロセスガスが、個々の堆積ユニットが提供される複数の分離された区間のうちの少なくとも一つに追加されうる。例えば、プロセスガスは、アルゴン、C(アセチレン)、CH(メタン)及びH(水素)のうちの少なくとも一つを含むことができる。ここに記載されるプロセスガスの提供は、層の堆積にとって有利でありうる。
【0069】
ここに記載される堆積装置の実施態様を考慮すると、フレキシブル基板10を層のスタックでコーティングするための堆積装置100が提供されることに留意されたい。ここに記載される他のいずれかの実施態様と組み合わせることのできる実施態様によれば、堆積装置100は、フレキシブル基板10を提供するためのストレージスプール112を格納する第1のスプールチャンバ110と、第1のスプールチャンバ110の下流に配置された堆積チャンバ120と、堆積チャンバ120の下流に配置されて、堆積後にフレキシブル基板10を巻くための巻き取りスプール152を格納する第2のスプールチャンバ150とを含む。堆積チャンバ120は、少なくとも一つのスパッタ堆積ユニット125を含む複数の堆積ユニット121を通過するようにフレキシブル基板を誘導するためのコーティングドラム122を含む。コーティングドラムは、コーティングドラムの基板誘導面に電位を供給するように構成されている。例えば、コーティングドラムの基板誘導面を、ここに記載される電位印加デバイスを使用することにより電位に曝すことができる。
【0070】
「層のスタック」とは、交互に堆積された二つ又は三つ以上の層であり、これら二つ又は三つ以上の層は、同じ又は二つ若しくは三つ以上の異なる材料から構成されうると理解することができる。さらに、層のスタックは一又は複数の導電層、例えば金属層、及び/又は一又は複数の絶縁層、例えば誘電体層を含みうる。いくつかの実施態様では、層のスタックは、一又は複数の透明な層、例えばSiO層又はITO層を含みうる。いくつかの実施態様では、層のスタックのうちの少なくとも一つの層は、導電性の透明な層、例えばITO層でありうる。例えば、ITO層は、容量性のタッチアプリケーション、例えばタッチパネルに有利でありうる。
【0071】
追加的に又は代替的に、イオン衝突及び/又は電子衝突は、例えば堆積チャンバ120内に提供されたプラズマからコーティングドラム122に向かって、例えばここに記載される電位を印加するためのデバイス140によりコーティングドラムに電位を提供することによって、電子又はイオンを加速することにより達成することができる。以上の説明は実施態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱せずに他の実施態様及びさらなる実施態様が考案可能であり、本開示の範囲は特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5