(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2020547492
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2018034419
(87)【国際公開番号】W WO2020059011
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】加我 友紀直
(72)【発明者】
【氏名】山本 一良
(72)【発明者】
【氏名】林原 秀元
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一秀
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-228911(JP,A)
【文献】特開2007-088035(JP,A)
【文献】特開2011-014658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステップで構成されるプロセスレシピを実行して、基板処理系を動作させる制御部を含む基板処理装置であって、
前記制御部は、
前記プロセスレシピの実行中に、予め決められた収集条件を満たすステップについて、前記基板処理系における監視対象の部品についての部品データを収集し、
収集した前記部品データの相関関係を示す相関カーブを生成し、
生成した前記相関カーブと予め記憶させていた基準となる初期相関カーブとを比較して、前記相関カーブと前記初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えているか判定し、
前記閾値を超えた場合に、アラームを発生させるように構成されている、
基板処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記監視対象の部品についてのエラー項目の組合せパターンが定義されたテーブルを有しており、
前記閾値を超えた場合に、前記監視対象の部品毎に収集した前記部品データから前記エラー項目の発生を確認し、前記テーブルの該当する組合せパターンと照合し、異常が発生した前記監視対象の部品と該部品に発生した異常の原因とを特定するように構成されている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記監視対象の部品は、少なくとも前記基板処理系に含まれる反応室のガス供給側の部品と、前記反応室のガス排気側の部品とが、それぞれ一つ以上選択されるように構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記監視対象の部品は、流量制御器と圧力センサである、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記予め決められた収集条件は、前記ステップの処理時間、前記基板処理系に含まれる排気バルブの開閉状態、および、前記基板処理系に含まれる排気装置の動作状態を含む請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記相関カーブは、前記基板処理系に含まれる圧力センサの実測値が縦軸に、前記基板処理系に含まれる反応室に供給されたガスの実流量が横軸に、それぞれプロットされて構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記ステップ毎に前記収集条件と合致しているか確認し、合致したステップにおいて、前記基板処理系に含まれる反応室の圧力を測定する圧力センサの実測値に対する
前記反応室に供給されるガスの実流量が算出するように構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記初期相関カーブは、前記基板処理系が所定の成膜性能を発揮している状態での前記相関カーブに相当する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記監視対象の部品についてのエラー項目として、前記基板処理系に含まれる反応室のガス供給側の部品に関連するエラー項目と、前記反応室のガス排気側の部品に関連するエラー項目とが、それぞれ設けられている請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記監視対象の部品についてのエラー項目は、前記基板処理系に含まれるマスフローコントローラのゼロ点電圧、前記マスフローコントローラにおける設定流量と実流量との偏差、および、前記基板処理系に含まれる反応室のリークレートの組み合わせで構成されている請求項9に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記プロセスレシピを実行させる毎に、前記相関カーブを生成して、前記初期相関カーブとの比較を行うように構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記制御部は、任意の複数点の前記実流量における前記実測値の差分の合計が前記閾値を超えたときにアラームを発生させるよう構成されている請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記監視対象の部品を一覧形式のテーブル表として、前記監視対象の部品を含む前記基板処理系を装置概要図として、画面上に表示するように構成されている表示部を備え、
前記制御部は、前記閾値を超えた場合に、アラームを発生させるとともに、該アラームを発生させた異常を生じさせた監視対象の部品と該異常が発生していない部品と識別可能に前記表示部に表示させるよう構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
複数のステップで構成されるプロセスレシピを実行して基板処理系を動作させる基板処理工程を有する半導体装置の製造方法であって、
前記基板処理工程は、
前記プロセスレシピの実行中に、予め決められた収集条件を満たすステップについて、前記基板処理系における監視対象の部品についての部品データを収集する工程と、
収集した前記部品データの相関関係を示す相関カーブを生成する工程と、
生成した前記相関カーブと予め記憶させていた基準となる初期相関カーブとを比較して、前記相関カーブと前記初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えているか判定する工程と、
前記閾値を超えた場合に、アラームを発生させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項15】
複数のステップで構成されるプロセスレシピを実行して基板処理系を動作させる手順と、
前記プロセスレシピの実行中に、予め決められた収集条件を満たすステップについて、前記基板処理系における監視対象の部品についての部品データを収集する手順と、
収集した前記部品データの相関関係を示す相関カーブを生成する手順と、
生成した前記相関カーブと予め記憶させていた基準となる初期相関カーブとを比較して、前記相関カーブと前記初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えているか判定する手順と、
前記閾値を超えた場合に、アラームを発生させる手順と、
をコンピュータを介して基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、装置の稼働率や生産効率の向上を図るため、装置の情報を蓄積し、その情報を使い装置の異常の解析や装置の状態監視を行っている。例えば、特許文献1には、異常解析において、複数のモニタデータを用いて異常要因を特定する技術が記載されている。また、例えば、特許文献2には、異常解析において、複数のモニタデータとイベントデータを表示する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-078271号公報
【文献】国際公開第2017/168676号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、異常解析において、単に複数データを用いても、各データの相関関係の経時的な変化に依らなければ、把握することが困難な異常があり得る。
【0005】
本開示は、複数データの相関関係の経時変化に伴う基板の不良生産を防止して、生産歩留まりを向上させることを可能にする構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
複数のステップで構成されるプロセスレシピを実行して、基板処理系を動作させる制御部を含む構成であって、
前記制御部は、
前記プロセスレシピの実行中に、予め決められた収集条件を満たすステップについて、前記基板処理系における監視対象の部品についての部品データを収集し、
収集した前記部品データの相関関係を示す相関カーブを生成し、
生成した前記相関カーブと予め記憶させていた基準となる初期相関カーブとを比較して、前記相関カーブと前記初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えているか判定し、
前記閾値を超えた場合に、アラームを発生させる構成が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、複数データの相関関係の経時変化に伴う基板の不良生産を防止して、生産歩留まりを向上させることを可能にする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に好適に用いられる基板処理装置を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に好適に用いられる基板処理装置を示す側断面図である。
【
図3】一実施形態に好適に用いられる制御部の機能構成を示す図である。
【
図4】一実施形態に好適に用いられる主コントローラの機能構成を示す図である。
【
図5】一実施形態に好適に用いられる、監視対象となる部品を含む基板処理系の構成例を示す図である。
【
図6】一実施形態で実施されるプロセスレシピの各ステップにおいて、収集される対象となる部品、部品データの収集条件、相関データ生成のための部品データの算出方法を説明する一具体例を示す説明図である。
【
図7】一実施形態で生成される相関カーブの一具体例を示す説明図である。
【
図8】一実施形態で表示される画面の一具体例を示す説明図である。
【
図9】一実施形態で利用される各センサ情報の組み合わせパターン別原因判定表の図示例である。
【
図10】一実施形態の変形例で好適に用いられる、監視対象となる部品を含む基板処理系の構成例を示す図である。
【
図11】一実施形態の変形例で利用される各センサ情報の組み合わせパターン別原因判定表の図示例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<一実施形態>
以下、本開示の一実施形態について
図1から
図9を参照しながら説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
まず、一実施形態に係る基板処理装置の構成例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(基板処理装置の概要)
図1および
図2に示すように、本開示が適用される基板処理装置(以後、単に装置ともいう)1は筐体2を備え、該筐体2の正面壁3の下部にはメンテナンス可能な様に設けられた開口部(正面メンテナンス口)4が開設され、該開口部4は正面メンテナンス扉5によって開閉される。
【0012】
筐体2の正面壁3にはポッド搬入搬出口6が筐体2の内外を連通する様に開設されており、ポッド搬入搬出口6はフロントシャッタ7によって開閉され、ポッド搬入搬出口6の正面前方側にはロードポート8が設置されており、該ロードポート8は載置されたポッド9を位置合せする様に構成されている。該ポッド9は密閉式の基板搬送容器であり、図示しない工程内搬送装置によってロードポート8上に搬入され、また、該ロードポート8上から搬出される様になっている。
【0013】
筐体2内の前後方向の略中央部に於ける上部には、回転式ポッド棚11が設置されており、該回転式ポッド棚11は複数個のポッド9を格納する様に構成されている。回転式ポッド棚11は垂直に立設されて間欠回転される支柱12と、該支柱12に上中下段の各位置に於いて放射状に支持された複数段の棚板13とを備えており、該棚板13はポッド9を複数個宛載置した状態で格納する様に構成されている。回転式ポッド棚11の下方には、ポッドオープナ14が設けられ、該ポッドオープナ14はポッド9を載置し、又該ポッド9の蓋を開閉可能な構成を有している。
【0014】
ロードポート8と回転式ポッド棚11、ポッドオープナ14との間には、ポッド搬送機構15が設置されており、該ポッド搬送機構15は、ポッド9を保持して昇降可能、水平方向に進退可能となっており、ロードポート8、回転式ポッド棚11、ポッドオープナ14との間でポッド9を搬送する様に構成されている。
【0015】
筐体2内の前後方向の略中央部に於ける下部には、サブ筐体16が後端に亘って設けられている。該サブ筐体16の正面壁17にはウエハ(以後、基板ともいう)18をサブ筐体16内に対して搬入搬出する為のウエハ搬入搬出口19が一対、垂直方向に上下2段に並べられて開設されており、上下段のウエハ搬入搬出口19に対してポッドオープナ14がそれぞれ設けられている。
【0016】
ポッドオープナ14はポッド9を載置する載置台21と、ポッド9の蓋を開閉する開閉機構22とを備えている。ポッドオープナ14は載置台21に載置されたポッド9の蓋を開閉機構22によって開閉することにより、ポッド9のウエハ出入口を開閉する様に構成されている。
【0017】
サブ筐体16はポッド搬送機構15や回転式ポッド棚11が配設されている空間(ポッド搬送空間)から気密となっている移載室23を構成している。該移載室23の前側領域にはウエハ移載機構(基板移載機構)24が設置されており、該基板移載機構24は、基板18を載置する所要枚数(図示では5枚)のウエハ載置プレート25を具備し、該ウエハ載置プレート25は水平方向に直動可能、水平方向に回転可能、又昇降可能となっている。基板移載機構24はボート(基板保持体)26に対して基板18を装填および払出しする様に構成されている。
【0018】
移載室23の後側領域には、ボート26を収容して待機させる待機部27が構成され、該待機部27の上方には縦型の処理炉28が設けられている。該処理炉28は内部に処理室(反応室)29を形成し、該処理室29の下端部は炉口部となっており、該炉口部は炉口シャッタ31により開閉される様になっている。
【0019】
筐体2の右側端部とサブ筐体16の待機部27の右側端部との間にはボート26を昇降させる為の昇降機構としてのボートエレベータ32が設置されている。該ボートエレベータ32の昇降台に連結されたアーム33には蓋体としてのシールキャップ34が水平に取付けられており、該蓋体34はボート26を垂直に支持し、該ボート26を処理室29に装入した状態で炉口部を気密に閉塞可能となっている。
【0020】
ボート26は、複数枚(例えば、50枚~125枚程度)の基板18をその中心に揃えて水平姿勢で多段に保持する様に構成されている。
【0021】
ボートエレベータ32側と対向した位置にはクリーンユニット35が配設され、該クリーンユニット35は、清浄化した雰囲気若しくは不活性ガスであるクリーンエア36を供給する様供給ファンおよび防塵フィルタで構成されている。基板移載機構24とクリーンユニット35との間には、基板18の円周方向の位置を整合させる基板整合装置としてのノッチ合せ装置(図示せず)が設置されている。
【0022】
クリーンユニット35から吹出されたクリーンエア36は、ノッチ合せ装置(図示せず)および基板移載機構24、ボート26に流通された後に、図示しないダクトにより吸込まれて、筐体2の外部に排気がなされるか、若しくはクリーンユニット35によって移載室23内に吹出されるように構成されている。
【0023】
次に、装置1の作動について説明する。
ポッド9がロードポート8に供給されると、ポッド搬入搬出口6がフロントシャッタ7によって開放される。ロードポート8上のポッド9はポッド搬送装置15によって筐体2の内部へポッド搬入搬出口6を通して搬入され、回転式ポッド棚11の指定された棚板13へ載置される。ポッド9は回転式ポッド棚11で一時的に保管された後、ポッド搬送装置15により棚板13からいずれか一方のポッドオープナ14に搬送されて載置台21に移載されるか、若しくはロードポート8から直接載置台21に移載される。
【0024】
この際、ウエハ搬入搬出口19は開閉機構22によって閉じられ、移載室23はクリーンエア36が流通され、充満している。移載室23にはクリーンエア36として窒素ガスが充満されるため、移載室23の酸素濃度は、筐体2の内部の酸素濃度よりも低い。
【0025】
載置台21に載置されたポッド9はその開口側端面がサブ筐体16の正面壁17に於けるウエハ搬入搬出口19の開口縁辺部に押付けられると共に、蓋が開閉機構22によって取外され、ウエハ出入口が開放される。
【0026】
ポッド9がポッドオープナ14によって開放されると、基板18はポッド9から基板移載機構24によって取出され、ノッチ合せ装置(図示せず)に移送され、該ノッチ合せ装置にて基板18を整合した後、基板移載機構24は基板18を移載室23の後方にある待機部27へ搬入し、ボート26に装填(チャージング)する。
【0027】
ボート26に基板18を受渡した基板移載機構24はポッド9に戻り、次の基板18をボート26に装填する。一方(上端又は下段)のポッドオープナ14に於ける基板移載機構24により基板18のボート26への装填作業中に、他方(下段又は上段)のポッドオープナ14には回転式ポッド棚11から別のポッド9がポッド搬送装置15によって搬送されて移載され、他方のポッドオープナ14によるポッド9の開放作業が同時進行される。
【0028】
予め指定された枚数の基板18がボート26に装填されると炉口シャッタ31によって閉じられていた処理炉28の炉口部が炉口シャッタ31によって開放される。続いて、ボート26はボートエレベータ32によって上昇され、処理室29に搬入(ローディング)される。
【0029】
ローディング後は、シールキャップ34によって炉口部が気密に閉塞される。なお、本実施の形態において、このタイミングで(ローディング後)、処理室29が不活性ガスに置換されるパージ工程(プリパージ工程)を有する。
【0030】
処理室29が所望の圧力(真空度)となる様に、真空ポンプなどのガス排気機構(図示せず)によって真空排気される。また、処理室29が所望の温度分布となる様にヒータ駆動部(図示せず)によって所定温度迄加熱される。また、ガス供給機構(図示せず)により、所定の流量に制御された処理ガスが供給され、処理ガスが処理室29を流通する過程で、基板18の表面と接触し、基板18の表面上に所定の処理が実施される。更に、反応後の処理ガスは、ガス排気機構により処理室29から排気される。
【0031】
予め設定された処理時間が経過すると、ガス供給機構により不活性ガス供給源(図示せず)から不活性ガスが供給され、処理室29が不活性ガスに置換されると共に、処理室29の圧力が常圧に復帰される(アフターパージ工程)。そして、ボートエレベータ32によりシールキャップ34を介してボート26が降下される。
【0032】
処理後の基板18の搬出については、上記説明と逆の手順で、基板18およびポッド9は筐体2の外部へ払出される。未処理の基板18が、更にボート26に装填され、基板18の処理が繰返される。
【0033】
(制御部の機能構成)
次に、
図3を参照して、操作部としての主コントローラ201を中心とした制御部(制御システム)200の機能構成について説明する。
図3に示すように、制御部200は、主コントローラ201と、搬送制御部としての搬送系コントローラ211と、処理制御部としてのプロセス系コントローラ212と、データ監視部としての装置管理コントローラ215と、を備えている。装置管理コントローラ215は、データ収集コントローラとして機能して、装置1内外の装置データを収集し、装置1内の装置データDDの健全性を監視する。本実施形態では、制御部200は、装置1内に収容されている。また、搬送系コントローラ211、プロセス系コントローラ212、装置管理コントローラ215は、主コントローラ201の構成と同様である。
【0034】
ここで、装置データDDとは、装置1が基板18を処理するときの処理温度、処理圧力、処理ガスの流量など基板処理に関するデータ(以後、制御パラメータともいう)や、製造した製品基板の品質(例えば、成膜した膜厚、および該膜厚の累積値など)に関するデータや、装置1の構成部品(石英反応管、ヒータ、バルブ、マスフローコントローラ(以後、MFC)等)に関する部品データ(例えば、設定値、実測値)など、装置1が基板18を処理する際に各構成部品を動作させることにより発生するデータである。
【0035】
主コントローラ201は、例えば100BASE-T等のLAN回線LAN1により、搬送系コントローラ211およびプロセス系コントローラ212と電気的に接続されているため、各装置データDDの送受信や各ファイルのダウンロードおよびアップロード等が可能な構成となっている。
【0036】
主コントローラ201には、外部の上位コンピュータ300や管理装置310が、例えば100BASE-T等の通信ネットワークLAN2を介して接続される。このため、装置1がクリーンルーム内に設置されている場合であっても、上位コンピュータ300や管理装置310がクリーンルーム外の事務所等に配置されることが可能である。
【0037】
装置管理コントローラ215は、主コントローラ201とLAN回線で接続され、主コントローラ201から装置データDDを収集し、装置の稼働状態を定量化して画面に表示するように構成されている。なお、装置管理コントローラ215については、後で詳しく説明する。
【0038】
搬送系コントローラ211は、主に回転式ポッド棚11、ボートエレベータ32、ポッド搬送装置15、基板移載機構24、ボート26および回転機構(図示せず)により構成される基板搬送系211Aに接続されている。搬送系コントローラ211は、回転式ポッド棚11、ボートエレベータ32、ポッド搬送装置15、基板移載機構24、ボート26および回転機構(図示せず)の搬送動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0039】
プロセス系コントローラ212は、温度コントローラ212a、圧力コントローラ212b、ガス流量コントローラ212c、シーケンサ212dを備えている。これら温度コントローラ212a、圧力コントローラ212b、ガス流量コントローラ212c、シーケンサ212dは、サブコントローラを構成し、プロセス系コントローラ212と電気的に接続されているため、各装置データDDの送受信や各ファイルのダウンロードおよびアップロード等が可能となっている。
【0040】
温度コントローラ212aには、主にヒータおよび温度センサ等により構成される加熱機構212Aが接続されている。温度コントローラ212aは、処理炉28のヒータの温度を制御することで処理炉28内の温度を調節するように構成されている。なお、温度コントローラ212aは、サイリスタのスイッチング(オンオフ)制御を行い、ヒータ素線に供給する電力を制御するように構成されている。
圧力コントローラ212bには、主に圧力センサ、圧力バルブとしてのAPCバルブおよび真空ポンプにより構成されるガス排気機構212Bが接続されている。圧力コントローラ212bは、圧力センサにより検知された圧力値に基づいて、処理室29の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、APCバルブの開度および真空ポンプのスイッチング(オンオフ)を制御するように構成されている。
ガス流量コントローラ212cは、MFC212cにより構成される。
シーケンサ212dは、処理ガス供給管やパージガス供給管からのガスの供給や停止を、バルブ212Dを開閉させることにより制御するように構成されている。
【0041】
このような構成のプロセス系コントローラ212は、処理室29に供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC212c、バルブ212Dを制御するように構成されている。
【0042】
なお、本実施形態にかかる主コントローラ201、搬送系コントローラ211、プロセス系コントローラ212、装置管理コントローラ215は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(USBキーなど)から当該プログラムをインストールすることにより、所定の処理を実行する各コントローラを構成することができる。
【0043】
そして、主コントローラ201、搬送系コントローラ211、プロセス系コントローラ212、装置管理コントローラ215他を含む各コントローラは、提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、所定の処理を実行することができる。
【0044】
(主コントローラの構成)
次に、主コントローラ201の構成を、
図4を参照しながら説明する。
主コントローラ201は、主コント制御部220、主コント記憶部としてのハードディスク222、各種情報を表示する表示部と、操作者からの各種指示を受け付ける入力部と、を含む操作表示部227、装置1内外と通信する主コント通信部としての送受信モジュール228とを含むように構成される。主コント制御部220は、CPU(中央処理装置)224や、一時記憶部としてのメモリ(RAM、ROM等)226を含み、時計機能(図示せず)を備えたコンピュータとして構成されている。
【0045】
ハードディスク222には、基板の処理条件および処理手順が定義されたレシピ等の各レシピファイル、これら各レシピファイルを実行させるための制御プログラムファイル、レシピを実行するためのパラメータが定義されたパラメータファイル、また、エラー処理プログラムファイルおよびエラー処理のパラメータファイルの他、プロセスパラメータを入力する入力画面を含む各種画面ファイル、各種アイコンファイル等(いずれも図示せず)が格納されている。
【0046】
また、操作表示部227の操作画面には、
図3に示す、基板搬送系211A、加熱機構212A、ガス排気機構212Bおよびガス供給系212Cへの動作指示を入力したりする入力部としての各操作ボタンを設けることも可能である。
【0047】
操作表示部227には、装置1を操作するための操作画面が表示されるように構成されている。操作表示部227は、操作画面を介して装置1内で生成される装置データDDに基づいた情報を操作画面に表示する。操作表示部227の操作画面は、例えば液晶を用いたタッチパネルである。操作表示部227は、操作画面からの作業者の入力データ(入力指示)を受け付け、入力データを主コントローラ201に送信する。また、操作表示部227は、メモリ(RAM)226等に展開されたレシピ、若しくはハードディスク222に格納された複数のレシピのうち任意の基板処理レシピ(以後、プロセスレシピともいう)を実行させる指示(制御指示)を受け付け、主コント制御部220に送信する。
【0048】
なお、本実施形態においては、装置管理コントローラ215が起動時に、各種プログラム等を実行することにより、格納された各画面ファイルおよびデータテーブルを展開し、装置データDDを読み込むことにより、装置の稼働状態が示される各画面が、操作表示部227に表示されるよう構成される。
【0049】
主コント通信部228には、スイッチングハブ等が接続されており、主コントローラ201が、ネットワークを介して、外部のコンピュータ300や装置1内の他のコントローラ(211、212、215)等と、データの送信および受信を行うように構成されている。
【0050】
また、主コントローラ201は、図示しないネットワークを介して外部の上位コンピュータ300、例えば、ホストコンピュータに対して装置1の状態など装置データDDを送信する。なお、装置1の基板処理動作は、主コント記憶部222に記憶されている各レシピファイル、各パラメータファイル等に基づいて、制御部200により制御される。
【0051】
(2)基板処理方法の手順
次に、本実施形態に係る装置1を用いて実施する、所定の処理工程を有する基板処理方法について説明する。ここで、所定の処理工程は、半導体デバイスの製造工程の一工程である基板処理工程を実施する場合を例に挙げる。
【0052】
基板処理工程の実施にあたって、プロセスレシピが、例えば、プロセス系コントローラ212内のRAM等のメモリに展開される。そして、必要に応じて、主コントローラ201からプロセス系コントローラ212や搬送系コントローラ211へ動作指示が与えられる。このようにして実施される基板処理工程は、搬入工程と、成膜工程と、搬出工程と、を少なくとも有する。
【0053】
(移載工程)
主コントローラ201からは、搬送系コントローラ211に対して、基板移載機構24の駆動指示が発せられる。そして、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、基板移載機構24は載置台21上のポッド9からボート26への基板18の移載処理を開始する。この移載処理は、予定された全ての基板18のボート26への装填(ウエハチャージ)が完了するまで行われる。
【0054】
(搬入工程)
所定枚数の基板18がボート26に装填されると、ボート26は、搬送系コントローラ211からの指示に従って動作するボートエレベータ32によって上昇されて、処理炉28内に形成される処理室29に装入(ボートロード)される。ボート26が完全に装入されると、ボートエレベータ32のシールキャップ34は、処理炉28のマニホールドの下端を気密に閉塞する。
【0055】
(成膜工程)
次に、処理室29内は、圧力制御部212bからの指示に従いつつ、所定の成膜圧力(真空度)となるように、真空ポンプなどの真空排気装置によって真空排気される。また処理室29内は、温度制御部212aからの指示に従いつつ、所定の温度となるようにヒータによって加熱される。続いて、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、回転機構によるボート26および基板18の回転を開始する。そして、所定の圧力、所定の温度に維持された状態で、ボート26に保持された複数枚の基板18に所定のガス(処理ガス)を供給して、基板18に所定の処理(例えば成膜処理)がなされる。なお、次の搬出工程前に、処理温度(所定の温度)から温度を降下させる場合がある。
【0056】
(搬出工程)
ボート26に載置された基板18に対する成膜工程が完了すると、搬送系コントローラ211からの指示に従いつつ、その後、回転機構によるボート26および基板18の回転を停止させ、ボートエレベータ32によりシールキャップ34を下降させてマニホールドの下端を開口させるとともに、処理済の基板18を保持したボート26を処理炉28の外部に搬出(ボートアンロード)する。
【0057】
(回収工程)
そして、処理済の基板18を保持したボート26は、クリーンユニット35から吹出されるクリーンエア36によって極めて効果的に冷却される。そして、例えば150℃以下に冷却されると、ボート26から処理済の基板18を脱装(ウエハディスチャージ)してポッド9に移載した後に、新たな未処理基板18のボート26への移載が行われる。
【0058】
(3)装置状態の監視処理
次に、基板処理工程を実施する過程で制御部200が行う制御処理について、ここでは成膜工程を行うときに制御部200の装置管理コントローラ215が行う装置状態の監視処理を例に挙げて、具体的に説明する。
【0059】
成膜工程においては、
図5に示すように、複数種類の処理ガスN2-1,N2-2,N2-3が、それぞれに対応するガス流量コントローラ(MFC)212cで流量が調整された状態で、それぞれについて設定されたタイミングで、基板18が搬入された処理室(反応室)29に供給される。複数種類の処理ガスN2-1,N2-2,N2-3としては、例えば、原料ガスである第一元素含有ガス、反応ガスまたは改質ガスである第二元素含有ガス、パージガスとして作用する不活性ガス等がある。また、処理室29からは、ガス排気機構212BのAPCバルブ(以後、単にバルブともいう)212B-1および真空ポンプ(以後、単にポンプともいう)212B-2によりガスが排気されて、反応室29内の圧力が調整される。反応室29の圧力は、圧力センサPG1によって検知される。
【0060】
つまり、反応室29に搬入された基板18は、少なくとも反応室29、MFC212c、バルブ212B-1、ポンプ212B-2、圧力センサPG1等を備えた基板処理系によって処理される。そして、成膜工程において、プロセス系コントローラ212は、反応室29に供給する各種ガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるように、MFC212c、バルブ212B-1およびポンプ212B-2を制御する。
【0061】
このとき、装置管理コントローラ215は、データ収集コントローラとして機能して、装置1内外の装置データDDを収集することが可能である。さらに詳しくは、装置管理コントローラ215は、装置データDDとして、少なくとも、各MFC212cの動作状態を監視するために、各MFC212cでの流量調整後の各種ガスのトータル実流量(単位:slm)についてのデータを、各MFC212cから取得するとともに、バルブ212B-1およびポンプ212B-2の動作状態を監視するために、反応室29の実圧力(単位:Pa)についてのデータを、圧力センサPG1から取得することが可能である。
【0062】
つまり、少なくとも反応室29のガス供給側の部品と、反応室29のガス排気側の部品が、それぞれ一つ以上監視対象の部品として選択される。具体的には、ガス供給側の部品である各MFC212cと、ガス排気側の部品であるバルブ212B-1およびポンプ212B-2の動作状態に直接的な影響を受ける圧力センサPG1が、それぞれ監視対象の部品として選択される。そして、装置管理コントローラ215は、各MFC212cで得られるトータル実流量についてのデータと、圧力センサPG1で得られる実圧力についてのデータとを、監視対象の部品についての部品データとして収集するようになっている。
【0063】
ただし、装置管理コントローラ215による部品データの収集は、必要に応じて行えばよい。本実施形態においては、以下に説明するように、プロセスレシピの実行中に、予め決められた収集条件を満たすステップについてのみ、部品データの収集を行うものとする。
【0064】
具体的には、成膜工程を含む基板処理工程を実行する際の手順や条件等が規定されるプロセスレシピは、
図6に示すように、複数のステップで構成されている(図中のレシピstep#参照)。その場合に、装置管理コントローラ215は、予め決められた収集条件を満たすステップについてのみ、部品データの収集を行うようになっている。
【0065】
予め決められた収集条件は、例えば、実行するプロセスレシピを構成する各ステップの処理時間、バルブ212B-1の開閉状態、および、ポンプ212B-2の動作状態を含む。さらに詳しくは、装置管理コントローラ215は、例えば、ステップの処理時間が所定時間(本実施形態では、5秒)以上であり(図中のTime[sec]参照)、バルブ212B-1が開(Open)状態であり(図中のValve参照)、かつ、ポンプ212B-2が動作(ON)状態である(図中のPump参照)場合に、部品データとして、ステップ毎に、各MFC212cで得られるトータル実流量についてのデータと、圧力センサPG1で得られる実圧力についてのデータと、を収集する(図中の太線枠内参照)。
【0066】
このようにして、収集条件を満たす各ステップの部品データを収集したら、装置管理コントローラ215は、続いて、
図7に示すように、収集した部品データの同士の相関関係を示す相関カーブを生成する。ここで本明細書において、相関カーブとは、反応室29の入力側の部品データと反応室29の出力側の部品データとの関係を示す関係式のことを示す。特に、本実施形態では、反応室29に供給される各MFC212cにて流量制御された実ガス流量と反応室29の圧力を検出する圧力センサPG1との関係式のことを示す。
図7に示す相関カーブは、圧力センサPG1の実測値が縦軸に、反応室29に供給されたガスの実流量が横軸に、それぞれプロットされて構成されている。つまり、装置管理コントローラ215は、圧力センサPG1の実測値を縦軸とし、反応室29へのガス実流量を横軸とする座標空間において、収集条件を満たす各ステップで収集した各MFC212cによるトータル実流量についてのデータと、圧力センサPG1による実圧力についてのデータとを、互いに対応付けてプロットすることで、相関カーブを生成するようになっている。また、プロセスレシピによっては、大量のデータが収集されることがあり、単にデータをプロットするのでは相関カーブがうまく描けないことがある。このような場合もあるため、予め装置管理コントローラ215は、例えば、最小二乗法を用いて近似曲線を求めることにより相関カーブ(関係式)を生成するように構成されてもよい。
そして、このように生成された相関カーブを参照することにより、装置管理コントローラ215は、ステップ毎に、圧力センサPG1による実圧力についてのデータ(すなわち、圧力センサPG1の実測値)に対する各MFC212cによるトータル実流量についてのデータ(すなわち、反応室29へのガス実流量)を算出することが可能となる。
【0067】
相関カーブの生成は、プロセスレシピを実行する毎に都度行う。相関カーブを生成したら、装置管理コントローラ215は、続いて、生成した相関カーブと予め記憶させていた基準となる初期相関カーブとを比較する。初期相関カーブとの比較についても、プロセスレシピを実行する毎に都度行うことになる。
【0068】
ここで、初期相関カーブは、生成される相関カーブの異常(相関カーブの変化の有無)を判定するための基準となる相関カーブである。該初期相関カーブは、反応室29等を含む基板処理部が所定の成膜性能を発揮している状態(すなわち、基準となるバッチにおいて、例えば基板処理部が問題なく成膜性能を発揮している状態)で生成される相関カーブに相当するものである。初期相関カーブは、予め装置管理コントローラ215がアクセス可能な記憶部(例えば、主コントローラ201の主コント記憶部222)に記憶されているものとする。
【0069】
そして、装置管理コントローラ215は、相関カーブと初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えているか否かを判定する。具体的には、例えば、任意の流量における反応室29内の圧力について、相関カーブから算出される値と初期相関カーブから算出される値との差分を求め、その差分が予め決められた閾値を超えているか否かを判定する。このとき、任意の流量は、必ずしも一点である必要はなく、複数点についてであってもよい。その場合には、各点における差分をそれぞれ求め、それぞれの差分の合計値が予め決められた閾値を超えているか否かを判定することになる。なお、判定の基になる閾値についても、初期相関カーブと同様に、予め装置管理コントローラ215がアクセス可能な記憶部222に記憶されているものとする。
【0070】
判定の結果、相関カーブと初期相関カーブとの差分が閾値を超えた場合に、装置管理コントローラ215は、アラームを発生させるように、主コントローラ201に依頼する。これを受けて、主コントローラ201は、操作表示部227の画面上でのアラーム出力を行ったり、またはネットワークを介して外部のコンピュータ300に対するアラーム出力を行ったりする。なお、装置管理コントローラ215は、相関カーブと初期相関カーブとの差分が閾値内に収まった場合は正常と判定する。
【0071】
アラーム出力の具体的な態様について、
図8を用いて説明する。
図8によれば、どの部品にエラーが発生しているかを装置概要図で色分け表示することができる。
【0072】
図8に示すように、監視対象の部品を含む各構成要素については、これらが模式的な構成図(装置概要図)として画面上に表示されており、監視対象の部品については、一覧形式のテーブル表(部品管理テーブル等)によって画面上に表示されている。そして、その表示画面上において、相関カーブの変化の原因と断定した箇所を、例えば表示色を変更することで、他の箇所と識別可能にする。
【0073】
具体的には、例えば、MFCゼロ点電圧にズレが生じている場合やMFC流量偏差異常が生じている場合であれば、そのMFCの図柄や該当欄等の表示色を所定色(例えばエラー表示色である黄色)に変更して、他の箇所と識別可能にする。また、例えば、ポンプ異常が生じている場合であれば、そのポンプの図柄や該当欄等の表示色を所定色(例えばエラー表示色である黄色)に変更して、他の箇所と識別可能にする。
【0074】
なお、アラーム出力の具体的な態様については、ここで挙げた例に限定されることはなく、予め設定された態様によるものであれば、他の態様によるものであってもよい。例えば、上述したように表示色を変更するのではなく、注意喚起を促す所定図柄(例えば!マーク)を併せて表示する、といったものであってもよい。
【0075】
また、
図8に示すように、表示変更をした箇所(アラーム発生個所)を示すアイコン(例えば、!マーク)をタッチすると、その箇所の異常履歴の情報表示画面に遷移するように構成されている。
【0076】
このようなアラーム出力を行うことで、装置1の操作者等は、修理またはメンテナンスが必要な箇所を認識することができる。例えば、経時変化に伴って生じ得る基板18の不良生産の対策として修理またはメンテナンスを行う場合であっても、装置1のダウンタイムを極力短縮させることが可能となる。
【0077】
また、このようなアラーム出力を行うことで、装置1の操作者等は、初期相関カーブで規定される場合に比べて、複数の部品データの間における相関関係に経時的な変化が生じていることを認識することができる。したがって、例えば、経時変化に伴って基板18の不良生産が生じ得る状況になっても、そのことがプロセスレシピを実行する度に判定されて認識し得るようになるので、基板18の不良生産を未然に防止して生産歩留まりを向上させることが可能になる。
【0078】
(4)アラーム原因の判定処理
次に、上述した装置状態の監視処理において、アラーム出力を行うと判定した場合に、さらに装置管理コントローラ215が行うアラーム原因の判定処理について具体的に説明する。
【0079】
上述したようなアラーム出力を行えば、装置1の操作者等は、相関カーブの経時的な変化を認識し得るようになる。しかしながら、アラーム出力のみでは、相関カーブが変化した原因を特定することが困難である。そこで、本実施形態においては、アラーム出力に加えて、相関カーブが変化した原因を特定するための判定処理を行うようになっている。
【0080】
具体的には、アラーム原因の判定処理のために、各センサ情報の組み合わせパターン別原因判定表(以後、単に原因判定表ともいう)を予め用意しておく。原因判定表は、
図9に示すように、監視対象の部品についてのエラー項目の組合せパターンが定義されたテーブルによって構成されたもので、装置管理コントローラ215がアクセス可能な記憶部222に記憶されているものとする。
【0081】
このような原因判定表(テーブル)では、監視対象の部品についてのエラー項目として、反応室29のガス供給側の部品に関連するエラー項目と、反応室29のガス排気側の部品に関連するエラー項目とが、それぞれ設けられている。さらに詳しくは、ガス供給側の部品に関連するエラー項目として、例えば、各MFC212cのゼロ点電圧と、各MFC212cにおける設定流量と実流量との偏差と、が挙げられる。また、反応室29のガス排気側の部品に関連するエラー項目として、例えば、圧力センサPG1による検出結果からわかる反応室29のリークレートが挙げられる。そして、各MFC212cのゼロ点電圧、各MFC212cにおける設定流量と実流量との偏差、および、反応室29のリークレートの組み合わせで、原因判定表が構成されている。
【0082】
装置管理コントローラ215は、相関カーブと初期相関カーブとの差分が閾値を超えた場合に、上述したようにアラームを発生させる一方で、監視対象の部品毎にエラー項目の発生(例えば、変化あり/なしの別)を確認する。各エラー項目は、対応する監視対象の部品からのセンサ情報を監視することで確認できる。そして、その確認結果を原因判定表(テーブル)の該当する組合せパターンと照合し、異常が発生した監視対象の部品を特定することで、アラームの発生原因についての判定処理を行うように構成されている。
【0083】
具体的には、例えば、
図9中のCase1に示すように、MFCゼロ点電圧にのみ異常があり、その他に変化が見られない場合、装置管理コントローラ215は、相関カーブの変化の原因(上述のアラームの原因)は、MFCゼロ点電圧の変化による供給ガス実流量の変化と断定することができる。これと同様に、例えば、
図9中のCase2に示すように、MFC偏差にのみ異常があり、その他に変化が見られない場合、装置管理コントローラ215は、相関カーブの変化(アラーム)の原因は、MFC故障による供給ガス実流量の変化と断定することができる。また、例えば、
図9中のCase3に示すように、リークレートにのみ異常があり、その他に異常が見られない場合、装置管理コントローラ215は、相関カーブの変化(アラーム)の原因は、炉内リーク量変化と断定することができる。また、例えば、
図9中のCase4に示すように、いずれにも異常が見られない場合、装置管理コントローラ215は、相関カーブの変化の原因は、ポンプ212B-2の劣化、または、副生成物による排気配管閉塞発生、と断定することができる。
【0084】
図9では省略されているが、他のケース(Case)として、MFCゼロ点電圧とMFC偏差の両方のエラー項目が発生した場合、装置管理コントローラ215は、MFC故障と断定し、異常の発生したMFCを停止させるよう主コントローラ201に指示する(停止信号を送信する)。また、MFCゼロ点電圧とリークレートの両方のエラー項目が発生した場合、アラームの原因がこれらの両方にあると断定する。MFC偏差とリークレートの場合も同様である。
【0085】
現状では、排気側の部品を含むエラー項目の組合せによる異常原因が不明である。従い、
図9のCase4のようにMFC212cや反応室29のリークレート以外の原因が考えられるとき、ポンプ212B-2の劣化、または、副生成物による排気配管閉塞発生、と断定している。本実施形態の原因判定表は一例であって、エラー項目を追加することができ、将来的に、バルブ212B-1やポンプ212B-2に関するエラー項目の追加にも対応できる。このようにエラー項目の組合せパターンが増えると、あらゆる異常にも原因判定表による要因判定が可能となり、併せて復旧処理などの対応もできるようになる。
【0086】
このように、原因判定表に基づいて断定された原因について、装置管理コントローラ215は、アラーム出力と合わせてレポート報知するように、主コントローラ201に依頼する。これを受けて、主コントローラ201は、操作表示部227の画面上でレポート報知を行ったり、またはネットワークを介して外部のコンピュータ300に対するレポート報知を行ったりする。
【0087】
レポート報知の具体的な態様としては、例えば、
図8に示す画面を用いることができる。具体的には、例えば、MFCゼロ点電圧にズレが生じている場合であれば、そのMFCの図柄や該当欄等の表示色を所定色(例えばエラー表示色である黄色)に変更して、他の箇所と識別可能にしつつ、相関カーブの変化の原因が判明したら、装置概要図におけるMFC(の図柄)へのタッチ操作に応じて、そのゼロ点ズレの原因を含む情報が表示されるようにする。また、例えば、ポンプ異常が生じている場合であれば、そのポンプの図柄や該当欄等の表示色を所定色(例えばエラー表示色である黄色)に変更して、他の箇所と識別可能にしつつ、相関カーブの変化の原因が判明したら、装置概要図におけるポンプ(の図柄)へのタッチ操作に応じて、そのポンプ異常の原因を含む情報が表示されるようにする。なお、レポート報知の具体的な態様については、ここで挙げた例に限定されることはなく、予め設定された態様によるものであれば、他の態様によるものであってもよい。例えば、図示しない装置1から離間された場所(例えば、事務所)に設置されているコンピュータ装置(PC)にデータ送信されるようにしてもよい。なお、原因が特定された部品(例えば、上記MFCやポンプ等)のエラーが解除されると、装置概要図や部品管理テーブル上に表示された識別可能な表示が元に戻されるように構成してもよい。
【0088】
このようなレポート報知を行うことで、装置1の操作者等は、修理またはメンテナンスの内容を迅速かつ的確に実行することができる。したがって、例えば、経時変化に伴って生じ得る基板18の不良生産の対策として修理またはメンテナンスを行う場合であっても、装置1のダウンタイムを極力短縮させることが可能となる。
【0089】
(5)本実施形態による効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0090】
(a)本実施形態によれば、プロセスレシピの実行中に収集した各部品データの相関関係を示す相関カーブを生成し、その相関カーブと基準となる初期相関カーブとの差分が予め決められた閾値を超えた場合に、アラームを発生させるようになっている。したがって、各部品データ(複数データ)の相関関係の経時変化に伴う基板18の不良生産を未然に防止して、基板18の生産歩留まりを向上させることが可能になる。
【0091】
(b)また、本実施形態では、相関カーブの生成に必要な各部品データの収集を、予め決められた収集条件を満たすステップについて行う。したがって、相関カーブへの影響が大きいと考えられるステップのみデータ収集を行えばよく、データ収集のための処理負荷軽減が図れるようになる。
【0092】
(c)本実施形態によれば、テーブル形式の原因判定表を予め用意しておき、相関カーブと初期相関カーブとの差分が閾値を超えた場合に、監視対象の部品毎にエラー項目の発生を確認して原因判定表の組合せパターンと照合することで、アラームを発生させる異常の発生原因を特定する判定処理を行うようになっている。したがって、異常発生原因(すなわち、修理またはメンテナンスが必要な箇所)を迅速かつ的確に認識でき、例えば、経時変化に伴う異常発生箇所の修理またはメンテナンスを行う場合であっても、装置1のダウンタイムを極力短縮させ、その結果として装置稼働率を向上させることが可能となる。
【0093】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例を
図10および
図11を参照しながら説明する。なお、ここでは、上述した実施形態と異なる部分のみ以下に説明し、同様の部分については説明を省略する。
【0094】
ここで説明する変形例は、圧力センサを各所に複数設置し、副生成物による排気配管閉塞箇所の絞り込みを行うことを可能にした例である。
具体的には、
図10に示すように、上述した実施形態の場合と同様に反応室29内の実圧力を直接測定する圧力センサPG1に加えて、反応室29とバルブ212B-1との間に設置された圧力センサPG2と、バルブ212B-1とポンプ212B-2との間の上流側に設置された圧力センサPG3と、バルブ212B-1とポンプ212B-2との間の上流側に設置された圧力センサPG4と、が設けられている。このような構成により、反応室29内の実圧力に加えて、排気配管内の各所における実圧力についても、測定し得るようになっている。
【0095】
このように、圧力センサPG1~PG4を各所に複数設置した場合には、アラーム原因の判定処理のための原因判定表(テーブル)についても、これに対応したものを予め用意しておく。具体的には、原因判定表として、
図11に示すように、上述した実施形態で説明した各エラー項目に加えて、各圧力センサPG1~PG4による検出結果についてもエラー項目として規定され、これらの組み合わせで構成されたものを用意しておく。
【0096】
かかる原因判定表を用いれば、装置管理コントローラ215は、以下のようなアラーム原因についての判定処理を行うことができる。
例えば、
図11中のCase1ではMFCゼロ点電圧の変化による供給ガス実流量の変化、同Case2ではMFC故障による供給ガス実流量の変化、同Case3では炉内リーク量変化が、それぞれ相関カーブ変化の原因と断定することができる。
また、
図11中のCase4では、副生成物堆積による配管閉塞が、反応室29と圧力センサPG2との間に発生していることが、相関カーブ変化の原因と断定することができる。また、同Case5では圧力センサPG2と圧力センサPG3との間、同Case6では圧力センサPG3と圧力センサPG4との間において、それぞれ発生した副生成物堆積による配管閉塞が相関カーブ変化の原因と断定することができる。また、同Case7では、圧力センサPG4とポンプ212B-2との間に発生した副生成物堆積による配管閉塞、もしくは、ポンプ212B-2の劣化が、相関カーブ変化の原因と断定することができる。
【0097】
このように、ここで説明する変形例によれば、圧力センサPG1~PG4を各所に複数設置するとともに、これに対応する原因判定表を予め用意しておくことで、アラーム原因の判定処理にあたり、副生成物による配管閉塞の個所を絞り込むことができる。したがって、さらなるダウンタイム短縮が可能となり、装置稼働率を向上させる上で非常に好ましいものとなる。
【0098】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態およびその変形例について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態または変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば将来的な部品の自動管理に関して以下簡潔に記載する。
【0099】
例えば、装置管理コントローラ215が、予め用意された原因判定表(
図9)に対して、ガス供給側の部品である各MFCと、ガス排気側の部品であるAPCバルブおよび真空ポンプの動作状態に直接的な影響を受ける圧力センサPG1を、それぞれ監視対象の部品として自動的に選択し、そして、装置管理コントローラ215が、選択された監視対象の部品に関する初期相関カーブの作成若しくは選択及びこの初期相関カーブに対する閾値の設定を行い、本実施例における相関カーブを作成するための部品データ収集条件を、自動的に設定するよう構成することが考えられる。
【0100】
このようにすると、原因判定表に応じて、装置管理コントローラ215が、監視対象部品の選択、収集された部品のデータ収集、相関カーブの作成および相関カーブと初期相関カーブとの比較、をそれぞれ行うことにより、監視対象の部品を、自動的に監視することができる。基板処理装置1を構成する部品から最適な部品を選択し、必要な部品の管理を効率よく行うことができる。
【0101】
上述の実施形態または変形例では、主に、半導体製造工程で用いられる基板処理装置および半導体装置の製造方法について説明したが、本発明がこれらに限定されることはなく、例えば、液晶表示(LCD)装置のようなガラス基板を処理する基板処理装置およびその製造方法にも適用可能である。
【0102】
また、成膜工程については、液体原料を気化した状態で処理炉28内の処理室(反応室)29に供給して基板(ウエハ)18の面上への成膜を行うものであればよく、成膜する膜種が特に限定されることはない。例えば、成膜工程で成膜する膜種は、シリコン化合物(SiN、Si等)を含む膜であっても、金属化合物(W、Ti、Hf等)を含む膜であっても、いずれの場合も好適に適用可能である。
【0103】
また、成膜工程で行う成膜処理には、例えば、CVD(chemical vapordeposition)、PVD(Physical Vapor Deposition)、酸化膜、窒化膜を形成する処理、金属を含む膜を形成する処理等を含む。
【0104】
また、上述の実施形態または変形例では、成膜処理を行う基板処理装置および半導体装置の製造方法について説明したが、本発明がこれらに限定されることはなく、例えば、他の基板処理装置(露光装置、リソグラフィ装置、塗布装置、プラズマを利用したCVD装置等)にも適用できる。
【符号の説明】
【0105】
1…基板処理装置、18…基板(ウエハ)、29…処理室(反応室)、200…制御部、201…主コントローラ、212B…ガス排気機構、212B-1…APCバルブ、212B-2…真空ポンプ、212c…ガス流量コントローラ(MFC)、215…装置管理コントローラ、DD…装置データ、PG1~PG4…圧力センサ