(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-30
(45)【発行日】2022-12-08
(54)【発明の名称】組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/30 20060101AFI20221201BHJP
A23G 1/02 20060101ALI20221201BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221201BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221201BHJP
A23G 1/06 20060101ALI20221201BHJP
A23G 1/56 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A23G1/30
A23G1/02
A23G3/34 106
A23G3/34 107
A23L5/00 K
A23G1/06
A23G1/56
(21)【出願番号】P 2021551466
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 JP2020037486
(87)【国際公開番号】W WO2021066119
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2019181757
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】松田 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】宮 史登
(72)【発明者】
【氏名】林 哲全
(72)【発明者】
【氏名】桧垣 薫
(72)【発明者】
【氏名】宇都宮 洋之
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特許第6541087(JP,B1)
【文献】特開2018-191539(JP,A)
【文献】特開2018-085947(JP,A)
【文献】特開2011-155868(JP,A)
【文献】価格.comマガジン, 2017.08.29 [検索日 2022.06.13], インターネット:<URL:https://kakakumag.com/seikatsu-kaden/?id=10907>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/30
A23G 1/02
A23G 3/34
A23L 5/00
A23G 1/56
A23G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、
湿式加熱処理されたカカオ豆の粉砕物であって未破砕カカオ豆細胞を含有する
粉砕物を含有する、組成物。
【請求項2】
油分あたりのフリーファット含有率が30%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、油分あたりのフリーファット含有率が60%以下である、
湿式加熱処理されたカカオ豆の粉砕物であって未破砕カカオ豆細胞を含有する
粉砕物を含有する、組成物。
【請求項5】
粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、破断強度が3kgf以下である、
湿式加熱処理されたカカオ豆の粉砕物であって未破砕カカオ豆細胞を含有する
粉砕物を含有する、組成物。
【請求項6】
カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上である、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
原料カカオ豆を水分存在下で加熱し加熱処理カカオ豆を得る工程、
得られた加熱処理カカオ豆を破砕して粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ豆細胞を含有する粉砕物を得る工程
を含む
、未破砕カカオ豆細胞を含有する粉砕物を含有する
組成物の製造方
法。
【請求項8】
ペースト状である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
粉末状である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
固形分あたりのポリフェノール含有量が、1~10重量%である、請求項1~
6、8及び9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~
6、及び8~10のいずれか1項に記載の組成物を含む、食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオ豆を原料とした組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チョコレートの原材料であるカカオ豆にはポリフェノールが豊富に含まれている。カカオ豆は、一般的には、生産国で発酵・乾燥させたあと輸出され、工場でロースト、磨砕等の加工が行われ、チョコレートが製造される。
【0003】
従来、カカオ豆の加工品としては、カカオマスやココアパウダーが良く知られているが、それ以外にもいくつか検討されてきている。例えば、特許文献1は、チョコレートやココアパウダーの原料として利用されるカカオニブスに関し、クリスピーを改善し、ニブスの悪臭を除去し、チョコレート製造におけるコンチング時間を短縮できるものとして、カカオニブスを蒸煮処理し、次いでこれに適量の酵素を添加し、水とともに30~60℃で反応せしめた後、乾燥しローストすることを特徴とするカカオニブスの処理方法を提案する。このようにして得られたニブスは、チョコレートのほか、それ以外のキャンデー、キヤラメル、ケーキ、ビスケット等の菓子に用いることができ、広範囲の製菓原料とすることができる旨が述べられている。また特許文献2は、カカオ豆、コーヒー豆等の嗜好飲料用豆類を直接摂食できる新しい食品に加工する方法として、嗜好飲料用豆類を水又は塩類希薄水溶液に浸漬後取り出し、次いで調味液に浸漬して、該調味液が嗜好飲料用豆類に吸収される時間浸漬した後、取り出し、次いで乾燥することを特徴とする味付け嗜好飲料用豆類の製造法を提案する。この方法では調味液に浸漬することにより味付けする前に、水又は塩類希薄水溶液に浸漬する前処理をすることで、嗜好飲料用豆類が共通して持っている苦みが抑えられ、甘くてソフトな食感を有する味付け豆が得られ、このような味付け豆を直接摂食できる旨が説明されている。さらに特許文献3は、ポリフェノールオキシダーゼ活性が低下し、ポリフェノール含有量が高いカカオ豆を得る方法として、非発酵、非焙煎の生カカオ豆を水蒸気による蒸煮と乾燥を組み合わせた工程で処理することを提案する。ここでは、蒸煮後のカカオ豆に関し、総ポリフェノール含有量はカカオ豆100gあたり0~30gの範囲であり、また低分子量ポリフェノール含有量はカカオ豆100gあたり0~20gであることが説明されている。また得られたカカオ豆から、ポリフェノール含有量が高い、カカオリカー、ココアパウダー、又は抽出物が製造でき、そのようなカカオ豆に由来する製品を、菓子製品、チョコレート、カカオ含有製品に使用できることが説明されている。
【0004】
一方、アズキ、インゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆を煮熟し、磨砕し、加重を与えて脱水して得た生餡、及び糖液に生餡を加えて練り上げて調製した練り餡について、澱粉の存在と餡粒子の形状、テクスチャー特性等が報告されている(非特許文献1)。この報告は、アズキ以外は通常は餡の原料としないインゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆を原料として餡を製造しているが、カカオ豆の使用に関しては述べられていない。一般には、餡に適しているのは澱粉含有量が多いものとされており、カカオ豆は、アズキ、インゲンマメ、ラッカセイ、及び大豆のいずれよりも、澱粉含有量は低く、そして油分が高い。そのため、カカオ豆は、ローストした後の乾燥状態で磨砕して特徴的な香気と物性を有するよう加工することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭48-068777号公報
【文献】特開平10-033119号公報
【文献】US8048469号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日本家政学会誌,Vol.50,No.4,pp323-332,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のカカオ豆加工品であるカカオマスやココアパウダー等は、油がしみ出すことから水との相溶性が悪いため、羊羹やスムージー等の水系食品(水が連続相である食品)へ利用し難い場面が多い。また、カカオ豆には種々の生理機能を有するカカオポリフェノールが含まれるが、一般的な加工工程である発酵やローストにより、その多くが失われてしまう。さらにカカオ豆加工品を利用した代表的な油系食品であるチョコレートは、通常、30℃以上の高温度帯における保形性がないため、夏季や熱帯地域における流通が難しい。
【0008】
本発明は、カカオ豆を原料とした、油のしみ出しの少ない、カカオ豆を用いた食品素材を提供することを課題とする。また、このような食品素材は、ポリフェノール含有量が高いことが好ましい。さらにこのような食品素材は、チョコレート製品に限らず、さまざまな食品に用いることができることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、原料カカオ豆から未破砕細胞を含有する、食品素材として新規な組成物を得るに至った。またこのような組成物が油のしみ出しが少ない等の特徴を有し、食品素材として有用であることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、以下を提供する:
[1]粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ豆細胞を含有する、組成物。
[2]油分あたりのフリーファット含有率が30重量%以下である、組成物。
[3]カカオ豆細胞中の未破砕細胞が30%以上である、組成物。
[4]破断強度 が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有する、組成物。
[5]原料カカオ豆を水分存在下で加熱し加熱処理カカオ豆を得る工程、
得られた加熱処理カカオ豆を破砕する工程
を含む製造方法により得られる、組成物。
[6]固形分あたりのポリフェノール含有量が、1~10重量% である、1~5のいずれか1項に記載の組成物。
[7]1~6のいずれか1項に記載の組成物を含む、食品。
[8]原料カカオ豆を水分存在下で加熱し、加熱処理カカオ豆を得る工程、
得られた加熱処理カカオ豆を破砕する工程
を含む、組成物の製造方法。
[9]原料カカオ豆を水分存在下で加熱する工程
を含む、フリーファット含有率の低い 組成物の製造方法。
【0010】
本発明はまた、以下を提供する。
[1] 粒度分布が10μm~1.5mmの範囲内にあり、未破砕カカオ豆細胞を含有する、組成物。
[2] 油分あたりのフリーファット含有率が30%以下である、1に記載の組成物。
[3] カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上である、1又は2に記載の組成物。
[4] 油分あたりのフリーファット含有率が60%以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有する、組成物。
[5] 油分あたりのフリーファット含有率が30%以下である、4に記載の組成物。
[6] カカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞が30%以上である、組成物。
[7] 破断強度が3kgf以下である、未破砕カカオ豆細胞を含有する、組成物。
[8] 湿式加熱処理されたカカオ豆の粉砕物を含有する、組成物。
[9] 原料カカオ豆を水分存在下で加熱し加熱処理カカオ豆を得る工程、
得られた加熱処理カカオ豆を破砕する工程
を含む製造方法により得られる、組成物。
[10] ペースト状である、1~9のいずれか1項に記載の組成物。
[11] 粉末状である、1~9のいずれか1項に記載の組成物。
[12] 固形分あたりのポリフェノール含有量が、1~10重量%である、1~11のいずれか1項に記載の組成物。
[13] 1~12のいずれか1項に記載の組成物を含む、食品。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、カカオ豆を原料とし、油のしみ出しが少ない食品素材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】各カカオ豆加工品の顕微鏡写真 a)未発酵生カカオ豆、b)加熱処理工程後のカカオ豆、c)本発明品、d)カカオマス
【
図2】各カカオ豆加工品の共焦点顕微鏡写真 a)乾燥カカオ豆(未発酵)、b)本発明品、c)カカオマス
【
図3】粒度分布 a)60メッシュの篩を使用して製造された本発明品、b)カカオマス
【
図4】マイクロチューブにおよそ2g測り取り、遠心分離(16,000rpm、10分間)した後の写真 a)本発明品、b)左:カカオマス、右:市販ミルクチョコレート
【
図5】破断強度測定結果 A:未発酵乾燥カカオ豆、B:未発酵ローストカカオ豆、C:未発酵ボイル(1時間)乾燥カカオ豆、D:未発酵ボイル(2時間)乾燥カカオ豆
【発明を実施するための形態】
【0013】
[組成物]
(主な特徴)
本発明の組成物は、カカオ豆を原料として加工された素材であり、以下の特徴を有する:
1)未破砕カカオ豆細胞を含有する。
2)粒度分布が10μm~1.5mmである。
あるいは、以下の特徴を有する。
3)油分含有量に対するフリーファット含有量の重量比率が60%以下である。なお本発明に関し、組成物等について含有される成分の割合又は率をいうときは、特に記載した場合を除き、重量に基づく。
あるいは、以下の特徴を有する。
4)カカオ豆細胞中の未破砕細胞の個数比率が30%以上である。
あるいは、以下の特徴を有する。
1)未破砕カカオ豆細胞を含有する。
5)破断強度が3kgf以下である。
なお、本発明の組成物には、ホールの生カカオ豆は含まれない。ホールの生カカオ豆の例としては、天然のカカオ豆自体、発酵したカカオ豆自体が挙げられる。また本発明の組成物には既存のカカオニブは含まれない。カカオニブとは、カカオ豆からシェルが除去されたものであり、水分存在下で加熱されていないものである。ただし、カカオニブは、一般的なチョコレート及びココア製造で慣用されている加熱殺菌処理及び又はロースト処理されたものを含む。カカオニブには、前記のものの破砕物も含む。
【0014】
本発明の組成物の特徴の一つは、水分存在下で加熱(湿式加熱)されていることである。カカオ豆を加熱処理する際に水分が存在するか否かは、処理されたカカオ豆の成分やその組成に影響を与えうる。湿式加熱の例として、茹で、蒸し、蒸煮、水分存在下でのマイクロ波加熱が挙げられる。湿式加熱というときは、殺菌又はローストを目的とした加熱は含まない。湿式加熱のための温度及び時間は、後述するように、含まれるポリフェノールオキシダーゼをある程度失活させることができ、また破断強度が一定の範囲値となるように軟化される条件であることが好ましい。
【0015】
水分存在下で加熱され、かつ未破砕細胞を比較的多く残すように粉砕されたカカオ豆加工品は、本発明により初めて提供されるものである。したがって、そのようなカカオ豆加工品(湿式加熱粉砕品)及びその乾燥物(湿式加熱粉砕乾燥品)のみならず、そのように破砕するためのカカオ豆の湿式加熱処理物(湿式加熱豆)及びその乾燥物(湿式加熱乾燥豆)、湿式加熱乾燥豆の粉砕物(湿式加熱乾燥粉砕品)、カカオ豆の乾燥物(乾燥豆)であって湿式加熱し、粉砕するためのものの実施はいずれも、直接的又は間接的に本発明の組成物の実施に該当しうる。
【0016】
また本発明の組成物の特徴の一つは、特別な粒度分布を有することであるが、従来のカカオ豆加工品とともに粒子サイズが小さいほうから並べると、カカオマス及びカカオリカー、本発明の組成物、カカオニブ、ホールの豆の順である。なお通常のカカオマスは、粒度分布において98%以上の粒子が0.5~100μmの範囲内にあり、単一のピークを有し、ピークが5~20μmの範囲にある。また、カカオニブの粒子サイズは、粗砕の程度にもよるが、通常は粒子が視認できる程度であり、目開き1mmの篩をほとんど通過しない。
【0017】
(原料カカオ豆)
カカオ豆は、カカオ(Theobroma cacao)の種子を指し、本発明の組成物の原料となるカカオ豆の品種や産地は、特に制限されない。カカオ品種の例として、フォラステロ種、クリオロ種、トリニタリオ種、これらの派生種、交配種が挙げられる。産地の例として、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、ブラジル、ベネズエラ、トリニダード・トバゴが挙げられる。
【0018】
一般に、チョコレートの原料として用いられるカカオ豆は、カカオポッド(カカオの実)からパルプとともに取り出され、発酵され、乾燥されるが、本発明のカカオ豆加工品に用いられる原料カカオ豆は、未破砕のカカオ豆細胞が含有されていれば、加工の有無又は程度は、特に制限されない。カカオ豆の加工の例として、発酵、パルプの除去、乾燥、焙煎(ロースト、焙炒ということもある。)、酵素失活処理が挙げられる。
【0019】
ポリフェノール含有量が高い組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆は、ポリフェノールが減少する工程を経ていないことが好ましい。ポリフェノールは、発酵条件において促進される酵素の作用や高温で減少する。したがって、本発明に好ましく用いられる原料カカオ豆は、完全発酵されていないことが好ましく、またローストされていないことが好ましい。完全発酵とは、カカオ豆の収穫後に7日間以上発酵させたものをいう。
【0020】
色調が鮮やかな組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆は、カカオポッドから取り出した直後の新鮮なカカオ豆や、それからパルプを直ちに除いた新鮮なカカオ豆であることが好ましい。またこのような新鮮なカカオ豆は、カカオ豆に内在する酵素、例えばポリフェノールオキシダーゼを失活させる処理が直ちにされていることが好ましい。カカオ豆に内在するポリフェノールオキシダーゼ活性が残存しているとカカオ豆のポリフェノールに作用し、濃褐色の色調に変化するからである。
【0021】
フリーファット含有率が低い組成物を得るとの観点からは、原料カカオ豆はホール豆であることが好ましい。破砕の程度によっては、カカオ豆細胞が壊れ、細胞内に含まれていた油脂が遊離するからである。
【0022】
(本発明の組成物の形態、粒度分布)
本発明の組成物は、カカオ豆の破砕物であるということができる。カカオ豆の破砕は、後述するように得られる組成物が未破砕カカオ豆細胞を含有すれば、サイズに制限はない。カカオ豆細胞のサイズは様々であるが、最小径は約10μmであるから、本発明の組成物は、約10μm以上の粒子を含みうる。前記粒子とは、カカオ豆細胞そのもの、又はカカオ豆細胞の集合体をいう。前記カカオ豆細胞の集合体には、カカオ豆細胞が分離されず接着した組織の状態で残存している形態や、カカオ豆細胞が分離された後に凝集された形態も含まれる。本発明の組成物の粒度分布は、例えば10μm~1.5mmであり、好ましくは10μm~1.2mmであり、より好ましくは10μm~1mmである。
【0023】
本発明に関し、粒度分布というときは、特に記載した場合を除き、対象となる組成物に含まれる粒度の分布の度合いをいう。また本発明に関し、組成物の粒度分布が特定の範囲内にあるというときは、特に記載した場合を除き、その組成物をレーザー回折式粒度分布測定に供したときに、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の粒子の粒子径が、その特定の範囲内に含まれることをいう。ここでいう%は、体積に基づく値(相対粒子量)である。
【0024】
本発明の組成物に含まれる粒子のメディアン径は、200~400μmであり、好ましくは240~380μmであり、より好ましくは280~360μmであり、さらに好ましくは300~340μmである。モード径は280~480μmであり、好ましくは310~460μmであり、より好ましくは350~430μmであり、さらに好ましくは370~410μmである。平均径は150~350μmである。また、本発明の組成物は粒子径が0.2mm~0.7mmの範囲内にある粒子の相対粒子量が5%以上である。なお測定は、レーザー回折式粒度分布測定法により、体積基準とする。
【0025】
破砕の手段は特に制限されず、例として、ミキサー等による磨砕、カカオ豆細胞サイズ以上の目開きの篩で漉すことが挙げられる。
【0026】
また本発明の組成物は、ペーストか、又はその乾燥物の形態であることができる。すなわち、本発明の組成物は、加熱処理カカオ豆の破砕物であるということができる。本発明の組成物の一態様では、茹で、蒸し、蒸煮、マイクロ波加熱等の水分存在下での加熱手段により、破砕が容易な状態の材料である。加熱処理により、カカオ豆は内在するポリフェノールオキシダーゼが失活されている。また加熱処理カカオ豆は、原料カカオ豆が細胞単位で分離できる状態になっていると考えられる。ペーストは、粒餡のように、比較的大きな固形物が含まれた状態であってもよい。
【0027】
形態がペースト状である本発明の組成物は、水分を15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上、さらに好ましくは30%以上含む。ペースト状である本発明の組成物に含まれる水分の上限値は、ペースト状である限り特に制限はなく、下限値がいずれの場合であっても、例えば70%以下であり、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。形態が乾燥物、より特定すると粉末状である本発明の組成物の水分は、5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3.5%以下、さらに好ましくは3%以下である。粉末状である本発明の組成物に含まれる水分の下限値には特に制限はなく、上限値がいずれの場合であっても、例えば0%、0.1%以下、0.5%以下、1%以下であり得る。
【0028】
(未破砕カカオ豆細胞の含有)
本発明の組成物は、未破砕のカカオ豆細胞を含有する。未破砕とは、細胞膜が破砕されていないことをいう。対象となる組成物に未破砕カカオ豆細胞が含有されているかどうかは、マイクロスコープ等を用いた観察により、細胞膜に囲まれた細胞の存在が確認できるか否かにより判断できる。またカカオ豆細胞が未破砕であれば、脂質及びタンパク質が細胞内にとどまっていることから、未破砕のカカオ豆細胞が含有されているかどうかは、タンパク質と脂質とをそれぞれ染色し、観察してタンパク質と脂質の所在が同じであるか否かにより判断できる。
【0029】
本発明の組成物における、含有されるカカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞の割合は、フリーファットを細胞から放出させない等の観点からは、高いほうが好ましい。カカオ豆細胞に対する未破砕のカカオ豆細胞の割合は、カカオ豆加工品をマイクロスコープで観察し、一定領域において確認される全細胞の数及び未破砕のカカオ豆細胞の数から算出できる。具体的には、以下の方法による。
(1) サンプル0.03gに2mlの水を加えて撹拌し、さらに0.5mlの0.01%メチレンブルー溶液を加えて、撹拌した後、スライドガラスに滴下し、カバーガラスを載せて顕微鏡で観察する(倍率:450倍)。
(2) 観察像、又はそれを撮影した画像から、必要に応じ画像解析ソフトを用いて、サンプルのエリア面積(A)と破砕細胞数(B)を求める。破砕細胞数は、エリアに含まれる破砕されている細胞を目視により選択してカウントすることにより得られる。
(3) 未破砕細胞を半径10μmの円として、一つの未破砕細胞の面積(C)を算出する(10×10×3.14=314μm2)。
(4) エリア面積(A)を一つの未破砕細胞の面積(C)で除して全細胞数(D)を算出する。
(5) カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)は、以下の式により算出する。このとき、全細胞数(D)が100~300の範囲であるエリアを、5以上、好ましくは10以上用いて、各々について以下の式で値を算出し、得られた値を平均してそのサンプルのカカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合とすることができる。
【0030】
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)=(D-B)/D×100
【0031】
本発明の組成物のこの割合は、例えば30%以上であり、好ましくは40%以上であり、より好ましくは50%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。
【0032】
未破砕カカオ豆細胞は細胞膜が破砕されていないため、油脂分やポリフェノール等の成分が細胞内に維持される。一般的なカカオ豆加工品であるカカオマスは、通常、製造工程で約20μm以下となるまで細かく粉砕される。そのため、カカオマス中には、破砕されたカカオ豆細胞から油脂分やポリフェノール等が放出されて存在している。一方、本発明の組成物では、細胞膜が破砕されていないカカオ豆細胞中に、カカオ豆由来の油脂分やポリフェノールが封じられているため、それらの成分がしみ出しにくいという特性を有する。
【0033】
(フリーファット含有率)
本発明の組成物は、油分あたりのフリーファット含有率が低い。チョコレート分野において、フリーファット(遊離油脂)とは、材料中に遊離状態で存在する油脂をいう。フリーファットは、チョコレートの流動性や粘度等に影響を与える。また、フリーファットを多く含む材料からは油がしみ出しやすいと考えられる。
【0034】
本発明に関し、油分あたりのフリーファット含有率というとき(単に、フリーファット含有率ということもある。)は、特に記載した場合を除き、以下の方法により測定・算出されたものをいう。すなわち、対象となる組成物に含まれる油脂類に占めるフリーファットの割合(重量基準)をいう。
【0035】
フリーファット含有量測定
(1) サンプル約5g(a)を50ml遠沈管に入れる
(2) n-ヘキサン25mlを加える
(3) 130回/分×3分間、振幅4cmで振とうする
(4) 3000rpm,4℃,10分間遠心分離
(5) 100ml三角フラスコの重量(b)を測定
(6) 上記(4)の上澄をろ紙上に移してろ過し、100ml三角フラスコでろ液を回収
(7) 窒素ガスを吹き付けてn-ヘキサンを蒸発させる
(8) 真空定温乾燥機にて、98℃、減圧下で4時間保持し、n-ヘキサンを蒸発させる
(9) デシケーター内で空冷後、三角フラスコの重量(c)を測定する
【0036】
<x>組成物中のフリーファット含有率(サンプル重量あたりのフリーファット含有率)(%)=(c-b)/a×100
<y>油分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/a中の油分×100
<z>固形分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/(a-a中の水分)×100
【0037】
本発明の組成物の油分あたりのフリーファット含有率は例えば60%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは28%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、本発明の組成物の油分あたりのフリーファット含有率は、30%以下であることが好ましい。
【0038】
本発明の組成物の固形分あたりのフリーファット含有率は例えば42%以下であり、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは16%以下であり、さらに好ましくは14%以下であり、さらに好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、本発明の組成物の固形分あたりのフリーファット含有率は、16%以下であることが好ましい。
【0039】
本発明の組成物中のフリーファット含有率は例えば41%以下であり、好ましくは25%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは14%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは8%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。油のしみ出しが特に少なく、水系食品との相溶性にも優れるとの観点からは、本発明の組成物中のフリーファット含有率は、10%以下であることが好ましい。
【0040】
一般に、加工されていないカカオ豆のフリーファット含有率は低いが、従来のカカオ豆加工品は、加工工程により細胞が破砕されているため、フリーファット含有率が高い。一方、本発明の組成物は、細胞膜が破砕されていないカカオ豆細胞中に、カカオ豆由来の油脂が封じられているため、カカオ豆に由来する油脂を相応に高濃度で含有するにも関わらず、フリーファット含有率が低いという、従来のカカオ豆加工品にはない際立つ特性を有する。
【0041】
(ポリフェノール含有量)
本発明の組成物は、ポリフェノール含有量が高い。また、本発明の組成物は、プロシアニジン含有量が高い。加熱処理により、カカオ豆に内在するポリフェノールオキシダーゼが失活されているからである。
【0042】
本発明の組成物のポリフェノール含有量の下限値は、固形分あたり、例えば1.8%以上であり、好ましくは2.0%以上であり、 より好ましくは2.4%以上であり、さらに好ましくは2.8%以上であり、さらに好ましくは3.2%以上であり、さらに好ましくは3.6%以上であり、さらに好ましくは3.8%以上であり、さらに好ましくは4.0%以上である。本発明の組成物に含まれるポリフェノール含有量の上限値は、下限値がいずれの場合であっても、固形分あたり、例えば10%以下であり、好ましくは8%以下であり、より好ましくは7.6%以下であり、さらに好ましくは7.2%以下であり、 さらに好ましくは6.8%以下であり、さらに好ましくは6.4%以下である。
【0043】
本発明に関し、ポリフェノール含有量は、特に記載した場合を除き、フォーリンチオカルト法で測定し、(-)-エピカテキンに換算して算出した値を指す。フォーリンチオカルト法によるポリフェノールの測定方法は、全国チョコレート業構成取引協議会「チョコレート類のカカオポリフェノールに係る表示基準」別紙「カカオポリフェノール測定法」を参照することができる。なお、本発明の組成物に含まれるポリフェノールは、カカオ豆由来のものであるので、カカオポリフェノールといわれることがある。また本発明の組成物のポリフェノール含有量は、種々のポリフェノール化合物の総量として測定された値であるので、総ポリフェノール含有量、又はポリフェノール総量等と称することができる。
【0044】
本発明の組成物においては、ポリフェノールのうち、プロシアニジンが多く含まれていることが好ましい。本発明の組成物のプロシアニジン含有量の下限値は、固形分あたり、例えば0.2%以上であり、好ましくは0.3%以上であり、 より好ましくは0.5%以上であり、さらに好ましくは0.7%以上であり、さらに好ましくは1.1%以上であり、さらに好ましくは1.3%以上であり、さらに好ましくは1.5%以上であり、さらに好ましくは1.7%以上である。本発明の組成物に含まれるプロシアニジン含有量の上限値は、下限値がいずれの場合であっても、固形分あたり、例えば5%以下であり、好ましくは4%以下であり、より好ましくは3.5%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下であり、 さらに好ましくは2.7%以下であり、さらに好ましくは2.2%以下である。
【0045】
本発明に関し、プロシアニジン含有量は、特に記載した場合を除き、カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、及びシンナムタンニンA2を、HPLCを用いて測定した値を指す。
【0046】
(破断強度)
本発明の組成物は、後述するように水分存在下で加熱処理され、破断強度が一定の範囲値となるように軟化されていてもよい。本発明の組成物の破断強度は、例えば3kgf以下であり、2.87kgf以下であることが好ましく、2.49以下であることがより好ましく、2.46以下であることがさらに好ましく、2.28kgf以下であることがさらに好ましい。下限値は、上限値がいずれの場合であっても0.5kgf以上とすることができ、1.0kgf以上とすることが好ましく、1.42kgf以上とすることがより好ましく、1.69kgf以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明に関し、破断強度というときは、特に記載した場合を除き、次のように測定する。
減圧下、100℃、4時間以上乾燥させたサンプルを、レオメーターにより、直径3mm円柱状のプランジャーを用いて進入深度4.0mm、進入速度2cm/minで測定する。サンプルの温度は22~24℃とする。得られた測定値がばらつく場合は、適切なサンプル数に対して測定を行う。適切なサンプル数は、当業者であれば適宜決定できるが、例えば、一の組成物から50のサンプルを取り、50の測定値の平均値をその組成物の破断強度としてもよい。
【0048】
(他の原料)
本発明の組成物は、食品として許容される添加物を含んでいてもよい。そのような添加物の例は、甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、賦形剤、界面活性剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤、コーティング剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、pH調整剤、乳化剤、安定剤等である。
【0049】
[製造方法]
本発明は、また、下記の工程を含む、組成物の製造方法を提供する:
・原料カカオ豆を水分存在下で加熱処理し、加熱処理カカオ豆を得る工程、
・得られた加熱処理カカオ豆を破砕する工程。
また本発明は、フリーファット含有率の低い、組成物を得るのに適した、下記を含む製造方法を提供する:
・原料カカオ豆を水分存在下で加熱処理し、加熱処理カカオ豆を得る工程、あるいは、
・原料カカオ豆を細胞単位で分離が容易となるように加工する工程。
【0050】
本発明の製造方法における加熱処理のための手段は、水分存在下での加熱手段であって、続く破砕工程が容易に行えるように、また好ましくはカカオ豆では内在するポリフェノールオキシダーゼが失活するように、原料カカオ豆を加工することができれば、特に制限されない。加熱の手段の例として、茹で(煮熱、ボイルということもある。)、蒸し、蒸煮、マイクロ波加熱が挙げられる。
【0051】
加熱処理のための温度及び時間は、ポリフェノールオキシダーゼをある程度失活させることができ、また原料カカオ豆の破断強度を上述した値とすることができる条件であることが好ましい。このような条件の例は、80℃以上、好ましくは90℃以上、より好ましくは沸騰した水中で、10分以上、好ましくは20分以上、より好ましくは30分以上、煮熱することである。
【0052】
水分存在下での加熱処理は、水を熱媒体とするため、熱伝導率が高い。また加熱の温度と時間を適切にすることにより、カカオ豆の細胞壁及び/又は細胞壁間の接着部を軟化させることができると考えられる。
【0053】
本発明の製造方法における破砕のための手段は、未破砕カカオ豆細胞を含有する組成物が得られるのであれば、特に制限されない。破砕物のサイズに制限はない。最小の粒度としては、カカオ豆細胞のサイズであり、例えば直径約20μmである。
【0054】
破砕の手段は特にされず、例として、ミキサー等による磨砕(grind)、カカオ豆細胞サイズ以上の目開きの篩で漉すこと(mash)が挙げられる。漉すための装置の例として、ステンレス製の32メッシュ、60メッシュ等の篩等が挙げられる。磨砕のための装置の例として、餡製造に汎用される撹拌機等が挙げられる。
【0055】
[本発明の組成物を用いた食品]
本発明の組成物は、食品又は医薬品の製造において、原料として用いることができる。以下では、食品及び医薬品のうち、食品を例に説明するが、その説明は当業者であれば医薬品に当てはめて理解することができる。
【0056】
食品は、特に記載した場合を除き、ヒトのためのもののみならず、ヒト以外の動物のためのものを含む。食品は、特に記載した場合を除き、一般食品、機能性食品、栄養組成物を含み、また治療食(治療の目的を果たすもの。医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの。)、食事療法食、成分調整食、介護食、治療支援用食品を含む。食品は、特に記載した場合を除き、固形物のみならず、液状のもの、例えば飲料、ドリンク剤、流動食、及びスープを含む。
【0057】
機能性食品とは、生体に所定の機能性を付与できる食品をいい、例えば、特定保健用食品(条件付きトクホ[特定保健用食品]を含む)、機能性表示食品、栄養機能食品を含む保健機能食品、特別用途食品、栄養補助食品、健康補助食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル、液剤等の各種の剤形のもの)、美容食品(例えば、ダイエット食品)等の、健康食品の全般を包含している。また、本発明に関し、機能性食品とは、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康食品を包含する。
【0058】
本発明の組成物は、フリーファット含有量が低く、油がしみ出しにくいために水との相溶性にも優れている。この観点からは、本発明の組成物を好ましく適用できる食品として、油系食品のほか、従来のカカオ豆加工品では適用が難しかった水系食品を挙げることができる。油系食品とは、油脂が連続相となっている食品をいう。水系食品とは、水が連続相となっている食品をいう。
【0059】
また本発明の組成物は、チョコレート製品のほか、チョコレート製品以外の食品にも用いることができる。
【0060】
本発明の組成物を原料として用いた食品は、菓子、飲料、調味料、加工食品、惣菜、スープ等の任意の形態にすることができる。より具体的には、チョコレート製品(チョコレート、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子)、グミ、錠菓、チューイングガム、キャンデー、スナック、ビスケット、クラッカー、羊羹、餡、アイスクリーム、氷菓、ゼリー、プリン、フィリング、清涼飲料、スムージー、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、茶飲料、コーヒー飲料、粉末飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、スプレッド、マーガリン、風味調味料、ドレッシング、ソース、たれ、つゆ、ルウ、ヨーグルト、クリーム、チーズ、乳飲料、乳酸菌飲料、パン、パスタピッツァクラスト、ケーキ、ケーキミックス、調製粉乳、流動食、病者用食品、栄養食品、サプリメント、タブレット、冷凍食品、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ、即席麺、豆腐であり得る。
【0061】
また本発明の組成物は、ポリフェノール含有量が高い。この観点からは、本発明の組成物を好ましく適用できる食品として、ポリフェノールを多く含ませたい食品を挙げることができる。
【0062】
本発明の組成物の食品中の含有量は、特に制限されず、食品の形態等に応じて適宜とすることができる。例えば、本発明の組成物の食品中の含有量は、1~99%とすることができ、10~90%であってもよく、20~60%であってもよい。
【0063】
本発明の組成物を含む食品は、本発明の組成物以外に、他の食品原料、食品として許容可能な他の有効成分や栄養成分を含んでいてもよい。また組成物は、食品として許容される添加物をさらに含んでいてもよい。
【0064】
食品の製造において、本発明の組成物の配合の段階は、本発明の組成物の特性を著しく損なわない限り配合の段階は、特に制限されない。例えば、製造の初期の段階に、他の原材料に混合して配合することができる。
【0065】
本発明の組成物及びそれを用いた食品には、カカオ豆加工品を含有している旨、その量が多い旨、ポリフェノール含有している旨、その量が多い旨、ポリフェノールにより期待できる効果を表示することができ、また特定の対象に対して当該食品の摂取を薦める旨を表示することができる。表示は、直接的に又は間接的にすることができ、直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、パンフレット、展示会、書籍、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール、音声等の、場所又は手段による、広告・宣伝活動を含む。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0066】
[本発明の組成物の製造、分析]
下記を準備・製造した。
(カカオ豆原料A)
カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆を、原料Aとして、以下で用いた。
【0067】
(カカオ豆原料B)
カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥したものを、原料Bとして、以下で用いた。
【0068】
(比較例)
従来の発酵、乾燥、ロースト、及び磨砕工程を経て、従来のカカオ豆加工品としてのカカオマスを調製した。また、このカカオマスを、従来の油圧プレス機で処理して、油分12%又は油分22%のココアパウダーを調製した。
【0069】
(本発明品)
原料A、又はBを用い、加熱処理工程、シェル剥離工程、及び破砕工程(裏ごし工程)を経て、カカオ豆加工品A1(原料A使用、32メッシュによる裏ごし品)、A2(原料A使用、32メッシュ及び60メッシュによる裏ごし品)、B1(原料B使用、32メッシュによる裏ごし品)、B2(原料B使用、32メッシュ及び60メッシュによる裏ごし品)を得た。
【0070】
それぞれの工程は、下記のように実施した。
【0071】
(加熱処理工程)
(1) 鍋に、原料カカオ豆の重量の5倍重量の水を入れ、沸騰させる。
(2) (1)に原料カカオ豆を入れ、原料Aは30分間、原料Bは1時間煮る。
(3) ザルにカカオ豆をあけて、水を切る。
なお、ボイル時の水の量は、5倍量でも20倍量でもポリフェノール残存率に違いはなく、ボイル時間は、ポリフェノール残存率に影響を与えることが分かった。
【0072】
(シェル剥離工程)
手作業にて、カカオ豆からシェルを剥離する。
【0073】
(破砕工程(裏ごし工程))
(1) 篩(32メッシュ、目開き500μm)で裏ごしする。
(2) 必要に応じ、(1)を篩(60メッシュ、目開き250μm)でさらに裏ごしする。
【0074】
(ポリフェノール含有量の測定)
ポリフェノール含有量は、フォーリンチオカルト法で測定し、(-)-エピカテキン換算量として算出した。具体的には、全国チョコレート業構成取引協議会「チョコレート類のカカオポリフェノールに係る表示基準」別紙「カカオポリフェノール測定法」に記載された方法により測定し、算出した。
【0075】
ポリフェノール残存率は、原料Aを用いた場合は、カカオポッドから取り出した生豆のポリフェノール総量を100%として算出した。また、原料Bを用いた場合は、カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥させたカカオ豆のポリフェノール総量を100%として算出した。
【0076】
(プロシアニジンの測定)
プロシアニジンは、HPLCで定量した。具体的には、カラムは、Deverosil-ODS-HG5(4.6mm×250mm、φ5μ、野村化学株式会社製)を使用した。溶離液は、A液とB液で構成され、A液は0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、B液は0.1%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液を使用した。カラムへ通す溶離液の流速は0.8ml/分、グラジェントの条件は、溶離液全体に占めるB液の割合を、開始時点で10%、開始5分後で10%、開始35分後で25%、開始40分後で100%、開始45分後で100%とした。サンプルインジェクション量は10μLであり、エピカテキンを標準品として、各成分をエピカテキン換算量として算出した。
各成分:カテキン、エピカテキン、プロシアニジンB2、プロシアニジンB5、プロシアニジンC1、シンナムタンニンA2
【0077】
プロシアニジン残存率は、原料Aを用いた場合は、カカオポッドから取り出した生豆のプロシアニジン含有量を100%として算出した。また、原料Bを用いた場合は、カカオポッドから取り出したパルプ付きカカオ豆のパルプを除去し、乾燥させたカカオ豆のプロシアニジン含有率を100%として算出した。
【0078】
(フリーファットの測定)
フリーファットは、下記の方法で測定した。
(1) サンプル約5g(a)を50ml遠沈管に入れる
(2) n-ヘキサン25mlを加える
(3) 130回/分×3分間、振幅4cmで振とう
(4) 3000rpm,4℃,10分間遠心分離
(5) 100ml三角フラスコの重量(b)を測定
(6) 上記(4)の上澄をろ紙上に移してろ過し、100ml三角フラスコでろ液を回収
(7) 窒素ガスを吹き付けてn-ヘキサンを蒸発させる
(8) 真空定温乾燥機にて、98℃、減圧下で4時間保持し、n-ヘキサンを蒸発させる
(9) デシケーター内で空冷後、三角フラスコの重量(c)を測定
【0079】
サンプル重量中のフリーファット含有率(%)=(c-b)/a×100
油分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/a中の油分×100
固形分あたりのフリーファット含有率(%)=<x>/(a-a中の水分)×100
【0080】
(油のしみ出しの比較観察)
原料Aの60メッシュ裏ごし処理品(カカオ豆加工品A2)、カカオマス、及び融解させた市販のミルクチョコレートをそれぞれマイクロチューブにおよそ2g測り取り、遠心分離(16,000rpm、10分間)した後、各材料からの油の分離を目視で観察した。
【0081】
(構造観察)
下記の手順で、マイクロスコープにより観察した。
(1) サンプルをスライドガラスに載せる
(2) n-ヘキサンを滴下する
(3) メチレンブルー溶液を滴下する
(4) ヨウ素液を滴下する
(5) マイクロスコープにて観察
【0082】
また、下記の手順で、共焦点顕微鏡により観察した。
(1) サンプルをスライドガラスに載せる
(2) Nile Mix染色液を滴下する
(3) カバーガラスを載せる
(4) 共焦点顕微鏡にて観察
【0083】
Nile Mix染色液:1,2-Propanediolに2%超純水を入れて混合し、溶媒を調製する。Nile Red 0.02g 及び Nile Blue A 0.01gを前記溶媒に入れて1Lに調整した後、1時間以上撹拌混合する。
【0084】
(未破砕細胞の割合の測定)
下記の手順で、未破砕細胞の割合を測定・算出した。
(1) 測定試料0.03gをコニカルチューブに入れて、2mlの超純水を加えて撹拌し、さらに0.5mlの0.01%メチレンブルー溶液(メチレンブルー三水和物(分子式 : C16H18N3SCl・3H2O 分子量 : 373.90)を超純水にて溶解、希釈し、0.01%(w/v)のメチレンブルー溶液 とする)を加えて撹拌した後、スライドガラスに滴下し、カバーガラスを載せてマイクロスコープで観察する(倍率:450倍)。
(2) 前記画像を画像解析ソフト「ImageJ」(フリーソフト、以下URLからダウンロードが可能:https://imagej.net/Welcome、バージョン1.50)を用いて、以下の「エリア面積(A)」、「破砕細胞数(B)」を得る。
エリア面積(A):画像を二値化(make binary)した後に、「Analyze」機能を用いることにより「Area」として解析される。なお、二値化した際に、光の加減で空洞になってしまった部分については「fill holes」により埋めて解析した。
破砕細胞数(B):「Cell Counter」機能により、画像から目視で破砕されている細胞を選択して手動でカウントする。
(3) 一つの未破砕細胞面積(C)については、細胞を半径10μmの円とした概算値とすることにより算出する(10×10×3.14=314μm2)。
(4) エリア面積(A)を一つの未破砕細胞面積(C)で除して全細胞数(D)を得る。
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)は、以下の式により算出する。全細胞数(D)が100~300の範囲であるエリアを5以上について値を算出し、平均値を求める。
【0085】
カカオ豆細胞中の未破砕細胞の割合(%)=(D-B)/D×100
【0086】
(粒度分布)
粒度分布計(レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-2200(株式会社島津製作所))にて測定した。図面の縦軸は、各粒子径の体積分布が全体の体積に占める割合を示す相対粒子量を%で示し、横軸は粒子径をμmで示した。
【0087】
(水分)
水分は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 5.炭水化物 イ 水分 (3)減圧加熱乾燥法に従って測定した。
【0088】
(油分)
油分は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」(http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/foods_index_18_180119_0003.pdf)における「別添 栄養成分等の分析方法等」 2.脂質 (1)エーテル抽出法に従って測定した。
【0089】
(結果)
測定結果を下表に示した。
【0090】
【0091】
従来のカカオ豆加工品であるカカオマスやココアパウダーは、含有する油分に対するフリーファットの割合が70%以上であるのに対して、本発明品は30%以下であり、著しく低かった。
【0092】
また、ポリフェノール残存率は、従来のカカオ豆加工品であるカカオマスは40~68%であるのに対して、本発明品では70%以上であり、従来の加工法により得られる素材に対して著しく高い残存率を有していた。プロシアニジン残存率も、従来のカカオ豆加工品であるカカオマスは16~21%であるのに対して、本発明品では70%以上であり、従来の加工法により得られる素材に対して著しく高い残存率を有していた。
【0093】
マイクロスコープによる観察では、加熱処理後のカカオ豆は、細胞膜が残存し、細胞内部に水分を含んで膨張した澱粉粒の存在が確認できた(
図1b)。加熱処理後に破砕された本発明品についても、細胞膜が残存し、細胞内の成分は保持されていた(
図1c)。一方、カカオマスは、細胞膜が破砕されて、細胞内部の成分が放出されていた(
図1d)。
【0094】
また、共焦点顕微鏡観察では、未加工のカカオ豆では、細胞内に脂質が存在することが確認でき、本発明品では、タンパク質と脂質の所在が同じであることから、細胞が破砕されず、細胞内に脂質がとどまっていることが確認できた。一方、カカオマスは、タンパク質と脂質の所在が異なることから(
図2c)、細胞が破砕されて細胞内に存在した脂質やタンパク質が放出されていた。
【0095】
また、未破砕細胞の割合(未破砕細胞率)を算出した結果を、下表に示した。
【0096】
【0097】
カカオ豆加工品B2のカカオ豆細胞中の未破砕カカオ豆細胞の割合を上表に基づき平均値として算出したところ、74.7%であった。
【0098】
粒度分布では、カカオマスは、粒子径が5~10μmの範囲にピークを有していた(
図3b)一方で、本発明品(カカオ豆加工品A2、60メッシュ裏ごし品)は、カカオマスとは異なり、粒子径がほぼ20μm以上であり、大きな粒子径を有していた(
図3a)。
図3aにおいて、粒子の100%が10μm~1.5mmの範囲内に含まれていたことから、カカオ豆加工品A2の粒度分布は10μm~1.5mmの範囲内であった。
【0099】
なお、本発明品(
図3a)のメディアン径は318.8μm、モード径は391.7μm、平均径は269.9μmであった。カカオマス(
図3b)のメディアン径は7.4μm、モード径は7.5μm、平均径は6.8μmであった。
【0100】
また、油のしみ出しに関しては、カカオマス、及び融解させた市販のミルクチョコレートについては分離した油が観察されたが、カカオ豆加工品A2には油の分離が見られなかった。
【0101】
[チョコレート]
カカオ豆加工品を減圧乾燥機にて98℃、2時間乾燥させることにより得た、水分3%以下の粉末カカオ豆加工品を用い、下記の配合で、常法によりチョコレートを製造した。
【0102】
【0103】
このチョコレートのポリフェノール総量は、34,4mg/gであり、市販の高ポリフェノールチョコレート(商品名「チョコレート効果カカオ95%」(株式会社明治)、ポリフェノール総量34.8mg/g)と比較して、ポリフェノール含有量が同等である一方で、苦み及び渋みが、より少ないものであった。
【0104】
[あんこ]
カカオ豆加工品B2に粉糖を加え混ぜ、あんこを製造した。配合を下表に示した。
【0105】
【0106】
得られたあんこは、油を多く含んでいる(20%程度)にも関わらず、外観上、油の分離がない。またポリフェノールを多く含む。
【0107】
[羊羹]
下記の配合で、羊羹を製造した。
【0108】
【0109】
(手順)
(1) 水と寒天を合わせ、鍋で沸騰するまで火にかける。
(2) 沸騰し、寒天が完全に溶解したら糖類を加え、煮溶かす。
(3) カカオ豆加工品を加え、均一に混ぜ、ふつふつと沸く程度まで火にかける。
(4) 火から上げ、型に流し入れ、常温で粗熱を取り、冷蔵する。
【0110】
得られた羊羹は、油を多く含んでいる(10%程度)にも関わらず、油の分離がない。またポリフェノールを多く含む。
【0111】
[スプレッド]
下記の配合で、スプレッドを製造した。
【0112】
【0113】
(手順)
(1) 水Aを沸騰させ、グラニュー糖、黒糖、食塩Aを溶解する。
(2) 溶解したらカカオ豆加工品B1を加え、均一に混ぜふつふつと沸く程度まで火にかける。
(3) 60メッシュで漉す。
(4) 水Bと寒天、カカオエキスAを合わせ、鍋で沸騰するまで火にかける
(5) 沸騰し、寒天が完全に溶解したら(3)を加え、均一に混ぜ、ふつふつと沸く程度まで火にかける。
(6) 食塩B、バター(有塩バター想定)、バニリン、練乳、及びカカオエキスBの入ったボールに、(5)を入れ、混合する。
(7) しっかり混ぜたら型に流し込み、粗熱を取り、冷蔵庫で冷却する。
【0114】
得られたスプレッドは、油を多く含んでいる(12%程度)にも関わらず、油の分離がない。またポリフェノールを多く含む。
【0115】
[パウダー]
カカオ豆加工品A1を、98℃で2時間減圧乾燥し、水分3%以下にした後、32メッシュを通過させ、完成する。
【0116】
得られたパウダーは、油分が55%程度であるにも関わらず、外観上、油にじみがない。また、水に分散させると、従来のココアパウダー及びカカオマスでは油が溶出するのに対し、得られたパウダーは油が溶出しない。また、得られたパウダーは、ココアパウダーやカカオマスに比較して、苦み及び渋みが少ない。またポリフェノールを多く含む。
【0117】
[パスタ(生めん)]
下記の配合で、パスタを製造した。
【0118】
【0119】
(手順)
(1) 小麦粉を篩い、軽量する。
(2) オリーブオイル、卵、塩、及びパウダーを加え、切るように混ぜる。
(3) そぼろ状に混ざったら、手で一塊になるように捏ねる。
(4) 耳たぶくらいの硬さになったら、半分に分け、丸めてラップに包み生地を休ませる(15分以上)。
(5) 生地にしっかり打ち粉をして伸ばす。
(6) 必要な厚みに伸ばしたら麺状になるようにカットする。
(7) 沸騰したお湯でゆでたら完成
【0120】
[スムージー]
下記の配合で、スムージーを製造した。
【0121】
【0122】
(手順)
(1) 水にグラニュー糖、食塩、乳化剤を溶かし、カカオ豆加工品B1と合わせる。
(2) 均一になるまで混合したら完成
【0123】
[各処理を経たカカオ豆のポリフェノール含有量等の測定]
(サンプル1~3)
サンプル1. パルプつきの生豆(未発酵、乾燥なし、ローストなし)
サンプル2. カカオニブ(発酵、乾燥あり、ローストなし)
サンプル3. カカオニブ(発酵、乾燥あり、ローストあり)
【0124】
各サンプルについて、下表に記載された条件で水による煮熱処理を行い、サンプル1についてはシェルを除去し、前述の方法でポリフェノール、プロシアニジン、及び水分を測定し、固形分あたりのポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を求めた。結果を下表に示した。
【0125】
【0126】
(サンプル4~6)
サンプル4. 未発酵豆(乾燥あり、ローストなし)
サンプル5. 未発酵豆(乾燥なし、ローストなし)
サンプル6. 発酵豆
【0127】
各サンプルについて、必要に応じ、乾燥、ロースト処理を行った後、下表に示した条件で水による煮熱処理を行い、前述の方法でポリフェノール、プロシアニジン、及び水分を測定した。固形分あたりのポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を下表に示した。
【0128】
【0129】
(サンプル7~10)
サンプル7. 未発酵豆(手でパルプ除去)
サンプル8. 未発酵豆(水洗浄によりパルプ除去)
サンプル9. 未発酵豆(手でパルプ除去)
サンプル10.未発酵豆(水洗浄によりパルプ除去)
【0130】
各サンプルについて、水による煮熱処理を行った後、水切りし、シェルを除いた。32メッシュの篩で裏ごしたもの(32MePass品)、又は32メッシュの篩及び65メッシュの篩で裏ごしたもの(65MePass品)について、前述の方法でポリフェノール、プロシアニジン、及び水分を測定し、固形分あたりのポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を求めた。結果を下表に示した。
【0131】
【0132】
(サンプル11~15)
サンプル11. 未発酵豆(手でパルプ除去)
サンプル12. 未発酵豆(水洗浄によりパルプ除去)
サンプル13. 発酵豆
サンプル14.未発酵豆(水洗浄によりパルプ除去)
サンプル15.発酵豆
【0133】
各サンプルについて、水による煮熱処理(100℃、1時間)を行った後、水切りし、シェルを除いた。32メッシュの篩で裏ごしし、フレーク状のものとした(32MePass品)。フレークを減圧乾燥器で水分3%以下に乾燥し、32メッシュの篩を通した(パウダー)。前述の方法でポリフェノール、プロシアニジン、及び水分を測定し、固形分あたりのポリフェノール含有量及びプロシアニジン含有量を求めた。結果を下表に示した。
【0134】
【0135】
[破断強度の測定]
加熱したカカオ豆の破断強度を測定した。
【0136】
(材料及び方法)
サンプルA~Dの調製手順を下記に示した。
A:未発酵乾燥カカオ豆
未発酵豆(乾燥豆)を減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
B:未発酵ローストカカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)をロースターにて126℃、40分ロースト
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
C:未発酵ボイル(1時間)乾燥カカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)を沸騰水にて1時間ボイル
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
D:未発酵ボイル(2時間)乾燥カカオ豆
(1) 未発酵豆(乾燥豆)を沸騰水にて2時間ボイル
(2) 減圧乾燥機にて100℃、4時間乾燥
【0137】
破断強度は、下記の条件により測定した。
・使用機器:FUDOH社レオメーターRTC-3010D-CW
・S.ADJ(進入深度):4.0mm
・T.SPEED(進入速度):2cm/min
・プランジャー:直径3mm円柱状
・測定方法:各サンプル(ホールカカオ豆)を架台の中心部に設置し、サンプル温度は22~24℃にて測定した。
【0138】
(結果)
結果を下表に示した。
【0139】
【0140】
ボイル加熱により、カカオ豆の破断強度が著しく小さくなった。また、ボイル時間を長くすることにより、破断強度が小さくなった。