(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】樹脂成形体、樹脂フィルム、及び射出成形品
(51)【国際特許分類】
C08G 61/08 20060101AFI20221202BHJP
【FI】
C08G61/08
(21)【出願番号】P 2017505356
(86)(22)【出願日】2016-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2016057206
(87)【国際公開番号】W WO2016143795
(87)【国際公開日】2016-09-15
【審査請求日】2018-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2015046498
(32)【優先日】2015-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016019609
(32)【優先日】2016-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100108419
【氏名又は名称】大石 治仁
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】早野 重孝
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】藤代 亮
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-507208(JP,A)
【文献】特開2014-162811(JP,A)
【文献】特表2014-530754(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0302710(US,A1)
【文献】国際公開第2014/139679(WO,A1)
【文献】Syndioselective Ring-Opening Metathesis Polymerization of endo-Dicyclopentadiene with Tungsten Complexes Having Imido Ligands: Development of Crystalline Syndiotactic Hydrogenated Poly(endo-dicyclopentadiene)、Macromolecules、米国、2006.発行、Vol.39, No.1、p.30-38, Supporting Information
【文献】Iso- and Syndio-Selective ROMP of Norbornene and Tetracyclododecene: Effects of Tacticity Control on the Hydrogenated Ring-Opened Poly(cycloolefin)s、Macromolecules、米国、2014.発行、Vol.47, No.22、p.7797-7811, Supporting Information
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を320℃で10分間加熱して溶融させ、次いで10℃/分で降温して室温まで冷却させて結晶化させた後、示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温し、昇温測定時に観測される吸熱ピークの開始温度である融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高
く、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体の主鎖二重結合の水素化率が99%以上である、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する樹脂成形体。
【請求項2】
さらに無機充填剤を含有する、請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を320℃で10分間加熱して溶融させ、次いで10℃/分で降温して室温まで冷却させて結晶化させた後、示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温し、昇温測定時に観測される吸熱ピークの開始温度である融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高
く、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体の主鎖二重結合の水素化率が99%以上である、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する樹脂フィルム。
【請求項4】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を320℃で10分間加熱して溶融させ、次いで10℃/分で降温して室温まで冷却させて結晶化させた後、示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温し、昇温測定時に観測される吸熱ピークの開始温度である融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高
く、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体の主鎖二重結合の水素化率が99%以上である、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジシクロペンタジエン等のノルボルネン系単量体の開環重合体水素化物は、いわゆるシクロオレフィンポリマーの一種であり、透明性、低複屈折性、成形加工性等に優れることから、光学用途をはじめとして、種々の用途に適用できる材料として用いられている。
【0003】
ジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、アタクチックな構造を有する非晶性の重合体として得られることが一般的である。しかしながら、アタクチックな構造を有する非晶性のジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物は、その用途によっては、耐熱性、機械強度、耐溶剤性等が不十分となる場合がある。そこで、それらの性能を改良する手法として、主鎖に立体規則性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物を製造することにより、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体水素化物が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、タングステンフェニルイミドテトラクロリドジエチルエーテル錯体等の、特定の置換基を有する周期表第6族遷移金属化合物を主成分とする重合触媒を用いて、ジシクロペンタジエンを開環重合すると、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒に室温で可溶な、シス-シンジオ規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体が得られ、さらに、その開環重合体中の炭素-炭素二重結合を、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド及びエチルビニルエーテルの混合物等を水素化触媒として用いて水素化することによって、結晶性を有するシンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が得られることが開示されている。また、特許文献2には、タングステンフェニルイミドビスビフェノラート錯体等の、特定の芳香族ジオキシ基を配位子として有する周期表第4~6族の遷移金属化合物を主成分とする重合触媒を用いて、ジシクロペンタジエンを開環重合すると、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒に室温で不溶な、結晶性を有するシス-アイソ規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体が得られ、さらに、その開環重合体中の炭素-炭素二重結合を、RuHCl(CO)(PPh3)2等を水素化触媒として用いて水素化することによって、結晶性を有するアイソタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-089744号公報(US2007/0185290A1)
【文献】特開2013-139513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者が、特許文献1に具体的に記載されたシンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物について改めて検討したところによると、このシンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は高い融点を有するものであったが、その融点は270℃前後であり、重合体を加熱した場合に260℃未満から軟化(融解)が始まるため、実質的な耐熱性は260℃未満であった。
一方で、特許文献2に具体的に記載されたアイソタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、そのアイソタクティシティーは分析装置の測定精度の範囲で100%であり、その融点は295℃前後であり極めて高い融点を有するものである。しかしながら、シス-アイソタクチック構造を有するジシクロペンタジエン開環重合体はシクロヘキサン等の炭化水素溶媒に室温で不溶であるため、工業的な生産規模での製造が困難なものであった。
【0007】
このように、耐熱性等により優れる結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、種々の樹脂成形体の原料樹脂として期待されるが、そのような特性を有する結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は工業的に扱いやすいものではなく、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の特性を十分に活かしきれていないのが実情であった。
【0008】
そこで本発明は、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の特性が十分に反映された樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、高い融解開始温度を有し、かつ、立体規則性が高いシンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は、耐熱性に優れるものであることが分かった。さらに、例えば、この重合体を、溶融成形法を利用して成形することで、その特性が十分に発揮された樹脂成形体が得られることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成するに至ったものである。
【0010】
かくして、本発明によれば、以下の樹脂成形体、樹脂フィルム及び射出成形品が提供される。
〔1〕融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高い、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する樹脂成形体。
〔2〕さらに無機充填剤を含有する、〔1〕に記載の樹脂成形体。
〔3〕融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高い、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する樹脂フィルム。
〔4〕融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高い、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を含有する射出成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の特性が十分に反映された樹脂成形体、樹脂フィルム及び射出成形品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(樹脂成形体)
本発明の樹脂成形体は、融解開始温度が260℃以上、かつ、融点が280℃未満で、シンジオタクティシティーが90%より高い、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(以下、「ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)」ということがある。)を含有することを特徴とする。
【0013】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、下記式(1)で表される、水素化ポリ(エンド-ジシクロペンタジエン)の繰り返し単位を含むものである。
【0014】
【0015】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の融解開始温度は260℃以上であり、265℃以上が好ましい。融解開始温度の上限は、特に限定されないが、融点以下である。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は融解開始温度が非常に高いものであるため、本発明の樹脂成形体は耐熱性に優れる。本発明において融解開始温度とは、一旦、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を十分に溶融させ、次いで十分に結晶化させた後に測定される融解開始温度(以下、溶融後融解開始温度という場合がある。)である。例えば、後述の実施例における、溶融後融解開始温度の測定方法に従って、この融解開始温度を測定することができる。
【0016】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の融点は280℃未満であり、270℃以上280℃未満が好ましい。融点の下限は、特に限定されないが、概ね260℃であり、かつ融解開始温度以上である。本発明の結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物は融点が適度に高いことで、耐熱性に優れ、かつ成形時の酸化劣化を抑えることができる。一方、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の融点が高すぎると、成形加工性が劣るために高温で成形することとなり、結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物が酸化劣化しやすくなる。
本発明における融点とは、一旦、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を十分に溶融させ、次いで十分に結晶化させた後に測定される融点である。この融点は、例えば、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
【0017】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、上記式(1)において、(1,4)で表される炭素が不斉炭素(*にて表示)であるため、立体規則性(タクティシティー)が存在する。
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、シンジオタクチックな立体規則性を有し、シンジオタクティシティー、すなわち、立体配置における、メソ二連子(meso diad)とラセモ二連子(racemo diad)の合計中のラセモ二連子の割合(以下、単にラセモ二連子の割合という場合がある。)が90%より高い高分子である。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)においては、ラセモ二連子の割合は、91%より高いことが好ましく、92%より高いことがより好ましい。
ラセモ二連子の割合が90%以下になると、シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の結晶性が大きく低下し、樹脂成形体の耐熱性が低下する。
【0018】
前記シンジオタクティシティーは、具体的には、式I:〔(ラセモ二連子)/(メソ二連子+ラセモ二連子)×100(%)〕で求めることができる。
ラセモ二連子の割合は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の13C-NMRスペクトルを分析することにより算出することができる。具体的には、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の前記式(1)における(5,9)で表される炭素原子のスペクトルを定量することで求めることができる。すなわち、前記式(1)で表される繰り返し単位の(5,9)の炭素原子について、オルトジクロロベンゼン-d4/トリクロロベンゼン〔混合比(重量基準)1/2〕混合溶媒中、200℃で13C-NMRスペクトル測定を行い、メソ二連子由来の43.35ppmのシグナルのピーク面積値と、ラセモ二連子由来の43.43ppmのシグナルのピーク面積値とを、前記式Iに代入し計算することで、ラセモ二連子の割合を決定することができる。
【0019】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、下記式(2)で表されるジシクロペンタジエン由来の繰り返し単位を有する。
【0020】
【0021】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、樹脂成形体の耐熱性を特に良好なものとし、また、溶融成形法を利用して樹脂成形体を製造する際の溶融樹脂の結晶化速度を速いものとする観点から、ジシクロペンタジエン由来の繰り返し単位を多く含むものが好ましい。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)における全繰り返し単位中、ジシクロペンタジエン由来の繰り返し単位が占める割合は特に限定されないが、90重量%以上であることが好ましく、95重量%以上であることがより好ましく、97重量%以上であることが特に好ましく、ジシクロペンタジエン由来の繰り返し単位のみからなることが最も好ましい。
【0022】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は、後述するように、特定の開環重合触媒の存在下に、ジシクロペンタジエン、又はジシクロペンタジエンと他の環状オレフィン単量体を含むモノマー混合物(以下、これらをまとめて「ジシクロペンタジエン等」ということがある。)を開環重合することにより、ジシクロペンタジエン開環重合体を得たのち、このものを水素化することにより効率よく得ることができる。
【0023】
ジシクロペンタジエンには、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するが、そのどちらも単量体として用いることが可能であり、一方の異性体を単独で用いてもよいし、エンド体及びエキソ体が任意の割合で存在する異性体混合物を用いることもできる。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の結晶性を高め、その耐熱性を特に良好なものとする観点からは、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。用いるジシクロペンタジエンは、エンド体又はエキソ体の割合が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましい。なお、割合を高くする立体異性体は、合成容易性の観点から、エンド体であることが好ましい。
【0024】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を製造するに際しては、ジシクロペンタジエンに、他の環状オレフィン単量体を組み合わせて用いることもできる。他の環状オレフィン単量体の使用量は、ジシクロペンタジエンと他の環状オレフィン単量体の合計量に対し、通常、10重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0重量%である。
【0025】
ジシクロペンタジエンに組み合わせて用いることができる他の環状オレフィン単量体としては次のものが挙げられる。
シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプタン等のシクロアルケン類;
置換基を有するジシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンの5員環部分の二重結合を飽和させた単量体であるジシクロペンタジエン類;
ノルボルネン、5-メチルノルボルネン、5-エチルノルボルネン、5-ブチルノルボルネン、5-ヘキシルノルボルネン、5-デシルノルボルネン、5-シクロヘキシルノルボルネン、5-シクロペンチルノルボルネン等の、無置換又はアルキル基を置換基として有するノルボルネン類;
5-エチリデンノルボルネン、5-ビニルノルボルネン、5-プロペニルノルボルネン、5-シクロヘキセニルノルボルネン、5-シクロペンテニルノルボルネン等の、アルケニル基を置換基として有するノルボルネン類;
5-フェニルノルボルネン等の、芳香環を置換基として有するノルボルネン類;
【0026】
5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-エトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-メトキシカルボニルノルボルネン、5-メチル-5-エトキシカルボニルノルボルネン、ノルボルネニル-2-メチルプロピオネイト、ノルボルネニル-2-メチルオクタネイト、ノルボルネン-5,6-ジカルボン酸無水物、5-ヒドロキシメチルノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)ノルボルネン、5-ヒドロキシ-i-プロピルノルボルネン、5,6-ジカルボキシノルボルネン、5-メトキシカルボニル-6-カルボキシノルボルネン等の、酸素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
5-シアノノルボルネン、ノルボルネン-5,6-ジカルボン酸イミド等の、窒素原子を含む極性基を有するノルボルネン類;
【0027】
また、テトラシクロドデセン以外のテトラシクロドデセン類として、8-メチルテトラシクロドデセン、8-エチルテトラシクロドデセン、8-シクロヘキシルテトラシクロドデセン、8-シクロペンチルテトラシクロドデセン等の、アルキル基を置換基として有するテトラシクロドデセン類;
8-メチリデンテトラシクロドデセン、8-エチリデンテトラシクロドデセン、8-ビニルテトラシクロドデセン、8-プロペニルテトラシクロドデセン、8-シクロヘキセニルテトラシクロドデセン、8-シクロペンテニルテトラシクロドデセン等の、環外に二重結合を有するテトラシクロドデセン類;
8-フェニルテトラシクロドデセン等の芳香環を有するテトラシクロドデセン類;
8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロドデセン、8-ヒドロキシメチルテトラシクロドデセン、8-カルボキシテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸無水物等の、酸素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8-シアノテトラシクロドデセン、テトラシクロドデセン-8,9-ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8-クロロテトラシクロドデセン等の、ハロゲン原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
8-トリメトキシシリルテトラシクロドデセン等の、ケイ素原子を含む置換基を有するテトラシクロドデセン類;
【0028】
ヘキサシクロヘプタデセン類としては、ヘキサシクロヘプタデセン、12-メチルヘキサシクロヘプタデセン、12-エチルヘキサシクロヘプタデセン、12-シクロヘキシルヘキサシクロヘプタデセン、12-シクロペンチルヘキサシクロヘプタデセン等の、無置換又はアルキル基を置換基として有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12-メチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12-エチリデンヘキサシクロヘプタデセン、12-ビニルヘキサシクロヘプタデセン、12-プロペニルヘキサシクロヘプタデセン、12-シクロヘキセニルヘキサシクロヘプタデセン、12-シクロペンテニルヘキサシクロヘプタデセン等の環外に二重結合を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12-フェニルヘキサシクロヘプタデセン等の、芳香族基を置換基として有するヘキサシクロヘプタデセン類;
【0029】
12-メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12-メチル-12-メトキシカルボニルヘキサシクロヘプタデセン、12-ヒドロキシメチルヘキサシクロヘプタデセン、12-カルボキシヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13-ジカルボン酸、ヘキサシクロヘプタデセン12,13-ジカルボン酸無水物等の、酸素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12-シアノヘキサシクロヘプタデセン、ヘキサシクロヘプタデセン12,13-ジカルボン酸イミド等の窒素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12-クロロヘキサシクロヘプタデセン等の、ハロゲン原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
12-トリメトキシシリルヘキサシクロヘプタデセン等の、ケイ素原子を含む置換基を有するヘキサシクロヘプタデセン類;
【0030】
テトラシクロ[6.5.12,5.01,6.08,13]トリデカ-3,8,10,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[6.6.12,5.01,6.08,13]テトラデカ-3,8,10,12-テトラエン(1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセンともいう)等が挙げられる。
【0031】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の数平均分子量(Mn)は、通常、500~1,000,000、好ましくは1000~600,000、より好ましくは2000~400,000である。Mnが低すぎると樹脂成形体の機械強度が低下する場合があり、Mnが高すぎると成形が困難となる傾向がある。なお、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の数平均分子量は、水素化工程前のジシクロペンタジエン開環重合体の数平均分子量とほぼ等しい。
【0032】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)のガラス転移点(Tg)は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましい。ガラス転移点がかかる範囲にあれば、耐熱性が良好で、例えば、荷重たわみ温度が高く、好適である。ガラス転移点の上限は、特に限定されないが、概ね120℃である。
【0033】
シクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の製造中間体であるジシクロペンタジエン開環重合体は、ジシクロペンタジエン等を、下記の式(3)で表されるタングステン化合物を含んでなる重合触媒を用いて開環重合することにより効率よく得ることができる。
【0034】
【0035】
前記式(3)中、Wはタングステン原子を表す。
R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、及び置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基から選択される基を表す。
L1は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、及び置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基から選択される置換基を有していてもよい窒素原子を表す。
L2は、少なくとも1個の窒素原子を有してなる環員数が5~15の共役複素環基を表し、該共役複素環基は置換基を有していてもよい。
L3は、-O-R3で示されるアルコキシ基を表し、R3は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基から選択される基を表す。
L4は、少なくとも2個の窒素原子を有する環員数が12~24の中性の共役複素環配位子を表し、該共役複素環配位子は置換基を有していてもよい。
【0036】
式(3)中、Wはタングステン原子である。
R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子;メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基等の、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の、置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基;又は置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基;を表す。前記置換基を有していてもよいアリール基のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。また、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基及び炭素数6~12のアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;等が挙げられる。
【0037】
L1は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、及び置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基から選択される置換基を有していてもよい窒素原子を表す。すなわち、L1は、=N-R4(R4は、水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基、及び置換基を有していてもよい炭素数3~20のシクロアルキル基から選択される基を表す。)で示される基である。
【0038】
前記L1の窒素原子が有しうる置換基(R4)の、炭素数1~12のアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれのものであってもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
前記R4の炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられる。
前記R4の炭素数3~20のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0039】
前記R4の、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。
前記R4の、炭素数1~12のアルキル基が有しうる置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
前記R4の、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基が有しうる置換基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、2-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、ペンタフルオロフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0040】
L2は、少なくとも1個の窒素原子を有してなる環員数が5~15の、置換基を有していてもよい共役複素環基を表す。
L2の共役複素環基としては、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基等の5員環共役複素環基;ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基等の6員環共役複素環基;キナゾリニル基、フタラジニル基、ピロロピリジル基等の縮合環共役複素環基;等が挙げられる。
【0041】
前記共役複素環基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1~12のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0042】
L3は、-O-R3で示される基である。R3は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基から選択される基である。
【0043】
前記R3の置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基の炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。
【0044】
前記R3の炭素数1~12のアルキル基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0045】
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基の炭素数6~30のアリール基としては、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0046】
前記R3の炭素数6~30のアリール基が有しうる置換基は特に限定されるものではない。例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1~12のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3~20のシクロアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1~12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基等の炭素数1~12のハロアルキル基;トリフルオロメトキシ基等の炭素数1~12のハロアルコキシ基;フェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2-クロロフェニル基、3-メトキシフェニル基等の置換基を有していてもよい、炭素数6~12のアリール基;アミノ基;メチルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基等のジ置換アミノ基;イミノ基等が挙げられる。
【0047】
前記L3の具体例としては、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基、2-メチル-2-プロポキシ基、1,1,1-トリフルオロ-2-メチル-2-プロポキシ基、1,1,1-トリフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-プロポキシ基、2-トリフルオロメチル―2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ基等の、R3が置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基である基;2,6-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)フェノキシ基、2,6-ビス(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,3,5,6-テトラフェニルフェノキシ基等の、R3が置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基である基;が挙げられる。
【0048】
L4は、少なくとも2個の窒素原子を有してなる環員数が12~24の中性の共役複素環配位子である。当該配位子の具体例としては、2,2’-ビピリジル、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジブロモ-2,2’-ビピリジル、2,2’-ビキノリン、1,10-フェナントロリン、ターピリジンが挙げられる。
【0049】
また、前記L4の該共役複素環基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記L2の共役複素環基が有しうる置換基として列記したものと同様のものが挙げられる。
【0050】
前記タングステン化合物の具体例としては、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)2,6-ジメチルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)フェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)2,6-ジメチルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(2,2’-ビピリジン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)フェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(2,2’-ビピリジン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)-2,6-ジイソプロピルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)-2,6-ジイソプロピルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(2,2’-ビピリジン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
また、前記タングステン化合物は、中性の共役複素環配位子を有するものであるが、ジシクロペンタジエンの開環重合の速度を上げるために、金属塩化合物を併用しても良い。金属塩化合物を併用することにより、中性の共役複素環配位子を、タングステン化合物から脱離させ、高活性な触媒種とすることが出来る。
金属塩を構成する金属原子としては、亜鉛、錫、銅、チタン、希土類等が好適である。用いられうる金属塩の具体例としては、塩化亜鉛、塩化銅、塩化錫、塩化チタン、塩化スカンジウム、塩化イットリウム等が挙げられる。
【0052】
これらタングステン化合物は、例えば、特表2014-520103号公報(国際公開第2012/167171号)等に記載された方法により製造することができる。また、タングステン化合物として市販されているものを、所望により精製して使用することもできる。
【0053】
ジシクロペンタジエン開環重合体は、ジシクロペンタジエン等と重合触媒とを混合し、ジシクロペンタジエン等を開環重合することにより製造することができる。
【0054】
ジシクロペンタジエン等に対する重合触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、重合触媒中のタングステン化合物:ジシクロペンタジエン等のモル比が、1:10~1:2,000,000である範囲が好ましく、1:200~1:1,000,000である範囲がより好ましく、1:500~1:500,000である範囲が特に好ましい。重合触媒の使用量が多すぎると重合触媒の除去が困難となるおそれがあり、少なすぎると十分な重合活性が得られないおそれがある。
【0055】
重合反応は無溶媒系で行うこともできるが、反応を良好にコントロールする観点からは、有機溶媒中で行うことが好ましい。この際用いられる有機溶媒は、生成される開環重合体を溶解または分散させることができ、重合反応に悪影響を与えないものであれば、特に限定されない。用いられうる有機溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテルを挙げることができる。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、エーテル、及び芳香族エーテルが好ましく用いられる。
【0056】
重合反応を有機溶媒中で行う場合、反応系中の単量体の濃度は、特に限定されるものではないが、1~50重量%であることが好ましく、2~45重量%であることがより好ましく、3~40重量%であることが特に好ましい。単量体の濃度が低すぎると生産性が悪くなるおそれがあり、高すぎると重合反応後の反応溶液の粘度が高くなりすぎて、その後の水素化反応が困難となるおそれがある。
【0057】
重合温度は特に限定されないが、通常-30℃~+200℃、好ましくは0℃~180℃である。また、重合時間も特に限定されないが、通常1分間~100時間の範囲で選択される。
【0058】
重合反応を行うにあたり、得られるジシクロペンタジエン開環重合体の分子量を調整する目的で、重合反応系に、ビニル化合物またはジエン化合物を添加してもよい。
この分子量調整の目的で用いるビニル化合物は、ビニル基を有する有機化合物であれば特に限定されない。例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエーテル類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等酸素含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;ビニルトリメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン等のケイ素含有ビニル化合物;等を用いることができる。
【0059】
また、分子量調整の目的で用いるジエン化合物も特に限定されない。例えば、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン;等を用いることができる。
添加するビニル化合物またはジエン化合物の量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、通常、単量体として用いるジシクロペンタジエン等100モルに対して、0.1~10モルの範囲で選択される。
【0060】
このように、上述した式(3)で表されるタングステン化合物を含んでなる重合触媒を用いて、上述したような条件でジシクロペンタジエンの開環重合反応を行うことにより、シンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を得ることができる。
そして、このシンジオタクチック立体規則性を有するジシクロペンタジエン開環重合体を水素化反応に供することにより、シンジオタクチック立体規則性を有して且つ結晶性を有する、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を得ることができる。
なお、ジシクロペンタジエン開環重合体は、反応液中から回収して水素化反応に供してもよいが、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む反応液をそのまま水素化反応に供することもできる。
【0061】
水素化反応に供するジシクロペンタジエン開環重合体の1H-NMRによって測定される数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、1,000~1,000,000であることが好ましく、2,000~800,000であることがより好ましい。このような数平均分子量を有するジシクロペンタジエン開環重合体を水素化反応に供することによって、特に成形加工性と耐熱性とのバランスに優れたジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を得ることができる。ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の数平均分子量は、重合時に用いる分子量調整剤の添加量等を調節することにより、調節することができる。
【0062】
水素化反応に供するジシクロペンタジエン開環重合体の1H-NMRによって測定されるシス含有率は、50%より高いことが好ましく、70%より高いことがより好ましく、90%より高いことが特に好ましい。
【0063】
ジシクロペンタジエン開環重合体においては、ラセモ二連子の割合が90%より高いことが好ましく、91%より高いことがより好ましく、92%より高いことが特に好ましい。シス含有率が50%より高く、ラセモ二連子の割合が90%より高いことによって、ジシクロペンタジエン開環重合体の有機溶剤に対する溶解性が高くなり、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む反応液をそのまま水素化反応に供する製造プロセスが有利になるので、好ましい。
【0064】
上記のように、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の製造中間体として用いうるジシクロペンタジエン開環重合体は、室温において、有機溶媒に溶解する。特に、重合反応を有機溶媒中で行い、ジシクロペンタジエン開環重合体を含む有機溶媒反応液をそのまま水素化反応に供する製造プロセスの観点から、水素化に不活性な有機溶媒に溶解することが好ましい。
【0065】
ジシクロペンタジエン開環重合体を溶解する溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル;等が挙げられる。
【0066】
ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化反応は、例えば、ジシクロペンタジエン開環重合体が存在する系に、(a)水素化剤を添加し、次いで加熱し反応させることにより、もしくは、(b)水素化触媒を添加し、次いで水素を添加して、ジシクロペンタジエン開環重合体中に存在する炭素-炭素二重結合を水素化することにより、行うことができる。これらの中でも、工業的な製造の観点からは、(b)の水素化触媒と水素ガスを用いてジシクロペンタジエン開環重合体の水素化反応を行うことが好ましい。
【0067】
前記(a)の方法においては、水素移動型水素化反応(transfer hydrogenation)に対する水素化剤としてのヒドラジン含有化合物を用いて、ジシクロペンタジエン開環重合体に含まれる炭素-炭素二重結合を水素化することが好ましい。
【0068】
水素移動型水素化反応(transfer hydrogenation)に対する水素化剤として用いられる化合物は、特に限定されない。ジシクロペンタジエン開環重合体に対する水素化剤として用いられる化合物は、水素化触媒として用いられるものであってもよい。水素化剤の具体例としては、ヒドラジン、パラトルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
【0069】
前記(b)の方法で用いられる水素化触媒は、開環重合体の水素化触媒として従来公知のものを使用することができる。その具体例としては、RuHCl(CO)(PPh3)3、RuHCl(CO)[P(p-Me-Ph)3]3、RuHCl(CO)(PCy3)2、RuHCl(CO)[P(n-Bu)3]3、RuHCl(CO)[P(i-Pr)3]2、RuH2(CO)(PPh3)3、RuH2(CO)[P(p-Me-Ph)3]3、RuH2(CO)(PCy3)3、RuH2(CO)[P(n-Bu)3]3RuH(OCOCH3)(CO)(PPh3)2、RuH(OCOPh)(CO)(PPh3)2、RuH(OCOPh-CH3)(CO)(PPh3)2、RuH(OCOPh-OCH3)(CO)(PPh3)2、RuH(OCOPh)(CO)(PCy3)2、ラネーニッケル、ニッケル珪藻土、酢酸ニッケル、酢酸パラジウム、PdCl2、RhCl(PPh)3等が挙げられる。
【0070】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行う。用いられうる不活性有機溶媒としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;アニソール、フェネトール等の芳香族エーテル;等が挙げられる。
【0071】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を製造する際は、好ましくは、ジシクロペンタジエン開環重合体、及び水素化触媒が存在している系に、さらに水素を添加することにより、ジシクロペンタジエン開環重合体中に存在する炭素-炭素二重結合を水素化する。
水素化反応は、使用する水素化触媒系によっても適する条件範囲が異なるが、反応温度は通常-20℃~+250℃、好ましくは-10℃~+220℃、より好ましくは0℃~200℃である。水素化温度が低すぎると反応速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると副反応が起こる場合がある。触媒的水素化反応の場合、水素圧力は、通常0.01~20MPa、好ましくは0.05~15MPa、より好ましくは0.1~10MPaである。水素圧力が低すぎると水素化速度が遅くなりすぎる場合があり、高すぎると高耐圧反応装置が必要となる点において装置上の制約が生じる。反応時間は所望の水素化率とできれば特に限定されないが、通常0.1~10時間である。水素化反応後は、常法に従ってジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を回収すればよく、重合体の回収にあたっては、ろ過等の手法により、触媒残渣を除去することができる。
【0072】
ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化反応における水素化率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上、特に好ましくは99.5%以上である。水素化率が高くなるほど、最終的に得られるジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の耐熱性が良好なものとなる。
【0073】
本発明の樹脂成形体は、無機充填剤を含有するものであってもよい。本発明の樹脂成形体は、無機充填剤を含有することでより耐熱性に優れたものとなる。
特に、本発明の樹脂成形体をリフロー工程に供するような場合、無機充填剤を含有することで、その樹脂成形体はリフロー耐熱性に優れたものとなる。
無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、ゼオライト、マグネシア、チタニア、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ガラス等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂成形体の耐熱性がより優れたものとなることから、ガラスフィラーが好ましい。
【0074】
ガラスフィラーとしては公知のものを用いることができ、その形状において限定されない。また、ガラスフィラーはシラン系化合物、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物等で表面処理されていてもよい。
ガラスフィラーとしては、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスバルーン等が挙げられ、ガラス繊維が好ましい。
ガラス繊維の形状や形態は特に限定されない。具体的にはミルドファイバー、カットファイバー、チョップドストランド、ロービング等が挙げられ、チョップドストランドが好ましい。
ガラス繊維の長さは、3~40mmであることが好ましく、5~30mmであることがより好ましい。ガラス繊維が短すぎると、樹脂成形体の機械強度が低くなる。
ガラス繊維の断面形状は円形、楕円形、扁平形状、矩形など任意である。また、これらのガラス繊維を任意の比率で用い得る。
【0075】
本発明の樹脂成形体が無機充填剤を含有するとき、その含有量は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)と無機充填剤の合計量に対して、好ましくは5~60重量%、より好ましくは15~50重量%である。無機充填剤の含有量が少な過ぎる樹脂成形体はリフロー時の耐熱性や強度に劣る傾向がある。一方、無機充填剤の含有量が多過ぎる樹脂成形体は、誘電正接が高くなる傾向がある。
【0076】
本発明の樹脂成形体は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)や無機充填剤以外の成分を含有するものであってもよい。かかる成分としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤、酸補足剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤が挙げられる。
【0077】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0078】
フェノール系酸化防止剤としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-メチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-t-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、α-トコフェノール、2,2,4-トリメチル-6-ヒドロキシ-7-t-ブチルクロマン、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、〔ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]〕等が挙げられる。
【0079】
リン系酸化防止剤としては、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)4,4’-ビフェニルジホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。
【0080】
イオウ系酸化防止剤としては、ジステアリルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0081】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤等が挙げられる。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0082】
近赤外線吸収剤は、シアニン系近赤外線吸収剤;ピリリウム系赤外線吸収剤;スクワリリウム系近赤外線吸収剤;クロコニウム系赤外線吸収剤;アズレニウム系近赤外線吸収剤;フタロシアニン系近赤外線吸収剤;ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤;ナフトキノン系近赤外線吸収剤;アントラキノン系近赤外線吸収剤;インドフェノール系近赤外線吸収剤;アジ系近赤外線吸収剤;等が挙げられる。
可塑剤としては、燐酸トリエステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤等が挙げられる。
帯電防止剤としては、多価アルコールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
酸補足剤としては、酸化マグネシウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0083】
難燃剤としては、ハロゲン化有機化合物、赤リン、縮合型リン酸エステル、反応型リン酸エステル、ポリリン酸アンモン系化合物、リン酸金属塩系化合物等の有機リン系化合物;メラミンホスフェイト、メラミンシアヌレイト等のメラミン系化合物;等が挙げられる。
難燃助剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物;酸化アルミニウム水和物、酸化アンチモン等の無機酸化物;ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩;等が挙げられる。
これらの難燃剤や難燃助剤は、一種単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
これらの添加剤の含有量は、目的に合わせて適宜決定することができる。その含有量は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)100重量部に対して、通常0.001~5重量部、好ましくは0.01~1重量部の範囲である。
【0085】
本発明の樹脂成形体の製造方法は特に限定されない。例えば、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有する成形材料を調製し、得られた成形材料を溶融成形することにより、本発明の樹脂成形体を製造することができる。
【0086】
成形材料は、常法に従って製造することができる。
例えば、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)に加えて、その他の成分を含有する成形材料は、各成分を混合することにより得ることができる。混合方法としては、各成分を溶融状態で混錬する方法が挙げられる。
混練は、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、フィーダールーダー等の溶融混練機を用いて行うことができる。混練温度は、好ましくは250~400℃、より好ましくは260~350℃の範囲である。混練に際し、各成分を一括添加して混練してもよいし、数回に分けて添加しながら混練してもよい。
混錬後は、常法に従って、棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切ることで、ペレット化することができる。
【0087】
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は一般的な有機溶媒に対する溶解性に劣る傾向がある。したがって、この成形材料は、キャスト法等の溶液を利用する成形方法の成形材料としては適していない。
その一方で、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は溶融状態のものを冷却すると短時間で結晶化するという特性がある。このため、溶融成形法を使用して、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有する成形材料を成形することにより、目的の樹脂成形体を生産性良く製造することができる。
【0088】
溶融成形法としては、押出成形法、射出成形法、溶融紡糸成形法、プレス成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法等の方法が挙げられ、目的の樹脂成形体に応じて適宜選択することができる。
【0089】
(樹脂フィルム)
樹脂成形体が樹脂フィルムの場合、溶融成形法としては押出成形法が好適に用いられる。
押出成形法により樹脂フィルムを製造する場合、公知の方法を適宜使用することができる。例えば、前記成形材料を押出機に投入して、溶融混練し、次いで、押出機に接続したTダイから溶融樹脂を連続的にフィルム状に押出し、これを冷却することで樹脂フィルムを得ることができる。
樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、通常、1~300μm、好ましくは2~200μmである。
この樹脂フィルムは、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有するため、耐熱性に優れる。
【0090】
押出成形法により得られた樹脂フィルムには、延伸処理や、熱固定処理を施してもよい。
延伸処理を行うことで、結晶化度が高く、より強度に優れる樹脂フィルムが得られる。延伸処理を行う場合、その処理は一軸延伸法、二軸延伸法、斜め延伸法等により行うことができる。
延伸処理を行う際の樹脂フィルムの温度は、通常、95~135℃、好ましくは95~120℃である。
延伸倍率は、面倍率で好ましくは10倍以上、より好ましくは15~400倍である。
【0091】
熱固定処理は、長手方向、幅方向に張力をかけて樹脂フィルムを張った状態で所定の熱を加える処理をいう。熱固定処理をすることで、熱収縮率が小さい樹脂フィルムが得られる。
熱固定処理における樹脂フィルムの温度は、通常、120~230℃、好ましくは160~220℃である。
熱固定処理の時間は、通常、1~60秒である。
【0092】
得られた樹脂フィルムを金属箔と融着させることで、樹脂層と金属層とを有する積層フィルムを得ることができる。
金属箔を構成する金属としては、銅、金、銀、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、クロム等が挙げられる。これらの中でも、基板材料として有用な積層体が得られることから、銅が好ましい。
金属箔の厚みは特に限定されず、積層フィルムの使用目的に合わせて適宜決定することができる。金属箔の厚みは、通常、1~35μm、好ましくは3~18μmである。
【0093】
樹脂フィルムと金属箔との融着方法は特に限定されない。例えば、樹脂フィルムと金属箔を重ね合せ、熱プレスする方法(熱プレス法)や、樹脂フィルムと金属箔を重ね合せたものを熱ロールの間を通過させる方法(熱ロール法)により、樹脂フィルムと金属箔とを融着させることができる。
【0094】
この積層フィルムの樹脂層は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有する。上記のようにジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)は溶融状態から短時間で結晶化するため、積層フィルムを製造する際の融着工程を短時間で終えることができる。
また、この積層フィルムは、リフロー耐熱性に優れるものである。したがって、この積層フィルムはフレキシブルプリント基板として好適に用いられる。
【0095】
(射出成形品)
溶融成形法として、射出成形法を用いることで、種々の射出成形品を製造することができる。
射出成形法により射出成形品を製造する場合、公知の方法を適宜使用することができる。例えば、前記成形材料を押出機に投入して、溶融混練し、次いで、押出機に接続した型に溶融樹脂を射出し、型内の溶融樹脂を冷却して固化させることで射出成形品を得ることができる。
射出成形品としては、光反射体、絶縁材料、コネクター、食品包装材、ボトル、パイプ、ギヤー類等が挙げられる。
これらの射出成形品は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有するため、耐熱性に優れる。
【0096】
射出成形法により射出成形品を製造する場合、無機充填剤を含有する成形材料を用いることが好ましい。無機充填剤を含有する成形材料を用いることで、より耐熱性に優れる射出成形品が得られ易くなる。また、無機充填剤が存在することで、溶融状態のジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)の結晶化が促進される傾向があるため、無機充填剤を含有する成形材料を用いることで、型に射出した後の冷却時間が短縮され、射出成形品をより生産性よく製造することができる。
【0097】
(繊維状成形体)
樹脂成形体が繊維状成形体である場合、溶融成形法としては溶融紡糸成形法が好適に用いられる。
溶融紡糸成形法により繊維状成形体を製造する場合、公知の方法を適宜使用することができる。例えば、前記成形材料を押出機に投入して、溶融混練し、次いで、押出機に接続した紡糸ノズルから溶融樹脂を連続的に吐出し、これを冷却することで繊維状成形体を得ることができる。
この繊維状成形体は、ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物(α)を含有するため、耐熱性に優れる。
【0098】
溶融紡糸成形法により得られた繊維状成形体には、延伸処理を施してもよい。
延伸処理を行うことで、結晶化度が高く、より強度に優れる繊維状成形体が得られる。 延伸処理を行う際の繊維状成形体の温度は、通常、40~140℃、好ましくは40~120℃である。
延伸倍率は、好ましくは通常、1.5~8.0倍である。
【実施例】
【0099】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0100】
なお、各例における測定や評価は、以下の方法により行った。
(1)ジシクロペンタジエン開環重合体の数平均分子量
1H-NMR測定に基づき、重合体鎖末端に存在する水素原子の数と末端以外の重合体鎖中に存在する水素原子の数の比を求め、その比に基づいてジシクロペンタジエン開環重合体の数平均分子量を算出した。
(2)ジシクロペンタジエン開環重合体のシス/トランス含有率
1H-NMR測定を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体のシス/トランス含有率を求めた。
(3)ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化反応における水素化率
1H-NMR測定を行い、ジシクロペンタジエン開環重合体の水素化反応における水素化率を求めた。
(4)シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物の融点及び溶融後融解開始温度
ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物を320℃で10分間加熱して溶融させ、次いで10℃/分で降温して室温まで冷却させて結晶化させた後、示差走査熱量計を用いて、10℃/分で昇温して測定した。昇温測定時に観測される吸熱ピークにおいて、吸熱(結晶融解)熱量が最も大きくなる温度を融点とし、吸熱ピークの開始温度を溶融後融解開始温度として、求めた。
(5)シンジオタクチック結晶性ジシクロペンタジエン開環重合体水素化物のラセモ二連子の割合
オルトジクロロベンゼン-d4/トリクロロベンゼン(混合比(重量基準)1/2)を溶媒として、200℃で13C-NMR測定を行い、メソ二連子由来の43.35ppmのシグナルのピーク面積値と、ラセモ二連子由来の43.43ppmのシグナルのピーク面積値と、に基づいて決定した。
【0101】
(6)耐リフロー性(樹脂フィルム)
実施例1又は比較例1で得られた評価用樹脂フィルムに対して、オーブンを用いて260℃で10秒間加熱する熱処理を3回行った後、評価用樹脂フィルムを目視観察して、耐リフロー性を評価した。
ここで、評価用樹脂フィルムが熱処理の前後で変形、溶融することなく形状を保持していたものを「○」(良)、変形、溶融が見られたものを「×」(不良)とした。
(7)耐リフロー性(射出成形品のリフロー後の反り量)
実施例2又は比較例2で得られた試験片に対して、オーブンを用いて260℃で10秒間加熱する熱処理を3回行った後、試験片の反り量を測定することにより耐リフロー性を評価した。ここで、反り量が0.8mm以上であった場合は耐リフロー性が不足しているといえる。
(8)結晶化速度
実施例2又は比較例2における射出成形時に、成形品が変形せずに離型できるまでに必要な金型の冷却時間を測定することで、成形材料の結晶化速度を評価した。ここで、冷却時間が40秒を超える場合に結晶化速度が不足しているといえる。
【0102】
〔合成例1〕
ビスピロリド前駆体である、W(CHCMe2Ph)(NArdiiPr)(Me2Pyr)2(ここで、Meはメチル基を表し、Phはフェニル基を表し、ArdiiPrは、2,6-ジイソプロピルフェニル基を表し、Me2Pyrは、2,5-ジメチルピロールを表す。)337mg(0.5ミリモル)をベンゼン5mlに溶解させ、そこへ、α,α-ビストリフルオロメチルベンジルアルコール〔Ph(CF3)2COH〕84μl(0.5ミリモル)を加え、全容(反応混合物)を室温(20℃)で2時間撹拌した。次いで、1,10-フェナントロリン90mg(0.5ミリモル)を加え、全容を室温(20℃)で1時間撹拌した後、反応混合物をフリーザー中に移した。反応混合物にペンタン10mlを加えて、反応生成物を定量的に沈殿させた。反応生成物をオレンジ色の固体として濾取した。このものをペンタンで洗浄し、乾燥させた。収量は490mgであった(定量的)。
得られた固体の1H-NMR、13C-NMR、19F-NMRスペクトルにより、このものは、(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)-2,6-ジイソプロピルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)(下記式(A)で示される化合物)と同定された。
【0103】
【0104】
〔合成例2〕
攪拌機付きガラス製反応器に、タングステン(2,6-ジメチルフェニルイミド)テトラクロリド1.35部と、ジエチルエーテル21部を添加し、これを-78℃に冷却した。さらにジエチルエーテル21部に溶解した3,3’,5,5’-テトラメチル-2,2’-ビフェノール0.74部を添加した。この混合物を0℃まで徐々に加温し、0℃を維持して24時間反応を行った。反応後、ジエチルエーテルを留去することにより暗赤紫色の固形物を得た。
得られた固形物に、ヘキサン13部とジエチルエーテル4.2部を添加し、これを-78℃に冷却し1時間静置して、微結晶状の不溶物を析出させた。可溶部分をろ別し、残った不溶物をさらにヘキサン6.6部にて洗浄後、溶媒を留去して化合物1.84部を得た。
この化合物について、C6D6溶媒中で1H-NMRスペクトルを測定した結果、この化合物は下記式(B)で表される化合物であることが分かった。
【0105】
【0106】
〔製造例1〕
攪拌機付きガラス反応器に、合成例1で得た(2-トリフルオロメチル-2-フェニル-1,1,1-トリフルオロエトキシ)-2,6-ジイソプロピルフェニルイミドタングステン(VI)(2,5-ジメチルピロリド)(ネオフィリデン)(1,10-フェナントロリン)0.076g(1/500 モル/モル)、及びトルエン1gを入れ、次いで、ジシクロペンタジエン5.0g、シクロヘキサン20.0g及び1-ヘキセン0.21gを添加し、さらに無水塩化亜鉛0.0105gを1,4-ジオキサン5gに溶解したものを添加して、50℃において重合反応を行った。重合反応開始後、速やかに1,10-フェナントロリン亜鉛の白色の濁りが生成した。3時間反応させた後、重合反応液に大量のアセトンを注いで沈殿物を凝集させ、凝集物を濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。得られたジシクロペンタジエン開環重合体(A)の収量は4.3gであり、数平均分子量は10,900で、シス含率は81%であった。
【0107】
次に、攪拌機付きオートクレーブに、ジシクロペンタジエン開環重合体(A)1.75g及びシクロヘキサン47gを加えた。そして、シクロヘキサン10mlにRuHCl(CO)(PPh3)30.00157gを分散させたものをさらに添加し、水素圧4.0MPa、160℃で8時間水素化反応を行った。この水素化反応液を多量のアセトンに注いで生成した開環重合体水素化物を完全に析出させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥した。
得られた開環重合体水素化物(A)の水素化率は99%以上であり、ラセモ二連子の割合は91%であった。当該水素化物の融点を測定したところ、融点は274℃であり、融解熱量は28J/gであり、溶融後融解開始温度は265℃であった。
【0108】
〔製造例2〕
攪拌機付きガラス製反応器に、合成例2で得た式(B)で表される化合物0.082g、及びトルエン3.5gを入れ、これを-78℃に冷却した。このものに、ジエチルアルミニウムクロリド0.027gをトルエン0.87gに溶解して得られた溶液を添加し、これを0℃に加温し、0℃で1時間反応を行い、触媒を含有する混合液を得た。
得られた混合液に、ジシクロペンタジエン7.5g、トルエン23g、1-オクテン0.65gを添加し、0℃で24時間重合反応を行った。得られた重合反応液に大量のメタノールを注いで沈殿物を凝集させ、濾別洗浄後、40℃で24時間減圧乾燥して、ジシクロペンタジエン開環重合体(B)を7.4g得た。このものの数平均分子量は42,000、シス含有率は93%であった。
【0109】
次に、ジシクロペンタジエン開環重合体(A)に代えて、ジシクロペンタジエン開環重合体(B)を使用したこと以外は、製造例1における水素化反応と同様にして、開環重合体水素化物(B)を得た。
開環重合体水素化物(B)の水素化率は99%以上であり、ラセモ二連子の割合は88%であった。当該水素化物の融点を測定したところ、融点は270℃であり、融解熱量は49J/gであり、溶融後融解開始温度は258℃であった。
【0110】
【0111】
〔実施例1〕
製造例1で得られた開環重合体水素化物(A)100部に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製、イルガノックス(登録商標)1010)1.1部を混合し、原料組成物を得た。この原料組成物を、内径3mmのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(東芝機械社製、TEM-37B)に投入し、熱溶融押出成形法により、ストランド状の成形体を得、これを冷却した後、ストランドカッターにて細断し、樹脂ペレットを得た。
【0112】
二軸押出し機の運転条件を以下に示す。
・バレル設定温度:270~280℃
・ダイ設定温度:270℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダ回転数:50rpm
【0113】
得られた樹脂ペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機(Optical Control Systems社製、Measuring Extruder Type Me-20/2800 V3)にて、厚み150μm、幅120mmのフィルム状に成形し、得られた未延伸フィルムを2m/分の速度でロール状に巻き取った。
【0114】
フィルム成形機の運転条件を以下に示す。
・バレル温度設定:280~290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
【0115】
未延伸フィルムを任意の部位で90mm×90mmの正方形に切り出した後、これを、小型延伸機(東洋精機製作所社製、EX10-Bタイプ)に設置し、延伸温度:100℃、延伸倍率:2.0倍×2.0倍、延伸速度:10,000mm/分の条件で延伸処理した。
次いで、得られた延伸フィルムを鉄板に固定し、このものを、オーブンを用いて200℃で20分間、加熱処理を行うことにより評価用樹脂フィルムを得た。
得られた評価用樹脂フィルムについて、耐リフロー性を評価した。評価結果を第2表に示す。
【0116】
〔比較例1〕
製造例1で得られた開環重合体水素化物(A)に代えて、製造例2で得られた開環重合体水素化物(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして評価用樹脂フィルムを製造し、耐リフロー性を評価した。評価結果を第2表に示す。
【0117】
〔実施例2〕
製造例1で得られた開環重合体水素化物(A)100部に、酸化防止剤として、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製、イルガノックス(登録商標)1010)1.1部を混合し、原料組成物を得た。この原料組成物を、内径3mmのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(東芝機械社製、TEM-37B)に投入し、熱溶融押出成形法により、ストランド状の成形体を得、これを冷却した後、ストランドカッターにて細断し、樹脂ペレットを得た。
【0118】
二軸押出し機の運転条件を以下に示す。
・バレル設定温度:270~280℃
・ダイ設定温度:270℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダ回転数:50rpm
【0119】
得られた樹脂ペレットを用いて、射出成形機(FUNUC社製、ROBOSHOT S2000i-50A)で成形温度290℃、射出圧力0.8MPa、金型温度150℃の条件で、縦80mm、横50mm、厚さ1mmの射出成形品(試験片)を得た。得られた試験片について、リフロー後の反りを測定した。測定結果を第2表に示す。
【0120】
〔比較例2〕
実施例2において、製造例1で得られた開環重合体水素化物(A)に代えて、製造例2で得られた開環重合体水素化物(B)を使用したこと以外は、実施例2と同様にして射出成形品を得、リフロー後の反りを測定した。測定結果を第2表に示す。
【0121】
【0122】
第2表から以下のことが分かる。
実施例1の樹脂フィルムは、比較例1の樹脂フィルムに比べて耐リフロー性に優れている。
同様に、実施例2の射出成形品は、比較例2の射出成形品に比べて、耐リフロー性に優れている。
さらに、実施例2においては、射出成形時の金型の冷却時間が短く、生産性に優れている。