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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-01
(45)【発行日】2022-12-09
(54)【発明の名称】包装容器を備える製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/24 20060101AFI20221202BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20221202BHJP
【FI】
B65D81/24 D
B32B27/28 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019057004
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020158129
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】星加 里奈
(72)【発明者】
【氏名】野中 康弘
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087705(WO,A1)
【文献】特開2008-007203(JP,A)
【文献】特開2012-012088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/24
B32B 27/28-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン単位含有量20モル%以上60モル%以下であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むガスバリア層及びポリオレフィン樹脂から構成される熱可塑性樹脂層を備える多層構造体(a)を含む包装容器(A)と、包装容器(A)を密封する蓋材(B)と、前記密封空間中に緊密に充填されたゲル状内容物(C)とを有する製品であって、ISO527-1に準拠して測定した包装容器(A)の硬さTと、ゲル状内容物(C)の硬さUの比率T/Uが1,000以上100,000以下であり、前記包装容器(A)の硬さTが100N以上100,000N以下であり、前記ゲル状内容物(C)の硬さUが0.3N以上20N以下であり、多層構造体(a)の平均総厚みにおける前記ガスバリア層の平均厚みが1%以上20%以下であり、包装容器(A)の内表面が前記ポリオレフィン樹脂から構成される熱可塑性樹脂層であり、包装容器(A)がカップ状容器であり、カップ状容器の底面が円形または楕円形である、製品。
【請求項2】
JIS-B0601(2001年)に準拠して測定した包装容器(A)の表面における最大高さ粗さ(Rz)が1μm以上30μm以下である、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
JIS-B0601(2001年)に準拠して測定した包装容器(A)の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上2.5μm以下である、請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
多層構造体(a)が熱可塑性樹脂層を少なくとも2層備え、前記ガスバリア層が前記少なくとも2層の熱可塑性樹脂層の間に配置された構成を備える、請求項1~のいずれか1項に記載の製品。
【請求項5】
多層構造体(a)の平均総厚みにおける、前記熱可塑性樹脂層の平均厚みの割合が80%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の製品。
【請求項6】
ゲル状内容物(C)が脂質を1.0質量%以上含む食品である、請求項1~のいずれか1項に記載の製品。
【請求項7】
前記脂質を1.0質量%以上含む食品が炭素数3~7のアルデヒド系香気成分を含み、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記アルデヒド系香気成分のうち、含有量が最も多いアルデヒド系香気成分をアルデヒド(f)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F10)との変化率((F10-F)/F)が0.5%未満である、請求項に記載の製品。
【請求項8】
前記ゲル状内容物(C)がカロテノイド系化合物を含む食品であって、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記カロテノイド系化合物のうち、含有量が最も多いカロテノイド系化合物をカロテノイド(c)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C10)との変化率((C-C10)/C)が0.5%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性を有する包装容器及びゲル状内容物を備える製品に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐、ゼリー、プリンなどのゲル状内容物の容器は、種々の樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂など)からなるシートを真空又は射出成形し、必要により、オレフィン系樹脂などをラミネート加工して製造できる。そして、この容器に内容物(豆腐など)の原料を仕込み、加熱又は冷却により凝固させて、容器を密封することにより内容物を充填し封入できる。そのため、容器(充填容器)中には空気が入らず、内容物が緊密に充填されているので、内容物を取り出す際に、容器を反転させても内容物が取り出せないか、又は内容物が崩れてしまう場合が多い。
【0003】
特許文献1では、内容物が緊密に充填された容器から、内容物の取り出し性(身離れ性)を改善する方法が提案されている。具体的には、内容物の体積を容器の容積より小さくし、容器と内容物との間に液体又は水分を膜状に介在させることにより、内容物を取り出す容器が記載されている。しかし、原料を直接容器内に仕込み凝固させる場合には、容器と内容物との間に水分などを介在させることができない。
【0004】
特許文献2には、プリン容器の底面に開孔用突起を設け、プリンを取り出す際に、前記突起を横方向に押圧して開孔し、真空状態を開放することにより容器内のプリンを取り出す方法が開示されている。しかし、この方法では、容器に突起を設けるために製造工程が複雑になり工業的にも不利であるばかりか、容器の開口部をシールするシール材を剥離し、突起を横方向に倒す操作が必要であるため、内容物の取り出し操作も煩雑である。さらに、円滑に取り出せない場合もある。
【0005】
特許文献3には、容器の内側の表面粗さの中心線平均粗さを制御することにより容器に充填された内容物の剥離性を向上させる方法が開示されている。しかし、表面粗さを調整する方法では、原料に特定のエラストマーを使用するため、それらの供給設備を設ける必要があるとともに、内容物の身離れ性が十分でない。
【0006】
また、容器を構成する樹脂に特定の脂肪酸エステルなどを添加又は塗布して、容器に充填された内容物を取り出し易くする方法が提案されている。例えば、特許文献4には、ポリオレフィン系樹脂に、多価アルコール又はその誘導体、ポリオキシエチレン誘導体などの配合剤を添加して得られる食品容器用オレフィン系樹脂組成物が開示されている。この文献には、前記配合剤として、ステアリン酸モノグリセリド、ソルビタンモノステアレートなどが使用でき、前記樹脂組成物から得られた容器を用いることにより、内容物を取り出し易くできることが記載されている。また、特許文献5には、合成樹脂シートで構成された容器内面に、ソーヤレシチン、モノグリセリン脂肪酸エステルなどの食品用吸湿脱水剤をコーティングした豆腐用容器が開示されている。この文献には、前記食品用吸湿脱水剤に水分を吸収させ、吸収した水分を容器と豆腐との間に介在させることにより、豆腐を容器内に浮かせて取り出し易くすることが記載されている。さらに、特許文献6にはHLB11以上の界面活性剤を含有又は塗布された熱可塑性樹脂シートを用いた、内容物が緊密に充填された容器を用いることで、内容物を取り出しやすくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭55-5314号公報
【文献】特開昭53-31476号公報
【文献】特開平7-125160号公報
【文献】特開平7-62163号公報
【文献】特公昭63-3748号公報
【文献】特開2001-122983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、いずれの文献にもエチレン-ビニルアルコール共重合体(以下「EVOH」と略記する場合がある)等のガスバリア材を備える容器を用いることは記載されていない。近年、ゲル状内容物が緊密に充填されたような包装容器においてガスバリア性を有し、かつ、内容物の取り出しが容易である容器を、容易に製造できることが求められつつある。かかる需要を満たすためには、高いガスバリア性を有し、かつ成形性が良好であるEVOHを用いることが好適であるが、EVOH層を備える包装容器はEVOH以外の樹脂層を備える多層構造体を用いる傾向にあり、層構成によっては容器の硬さが変動する。
【0009】
ガスバリア層を備えて容器の硬さが変動した場合、例えば、ゲル状内容物が緊密に充填された状況において、前記従来の容器では内容物の取り出し容易性が悪不十分となる場合があり、逆に取り出し容易性を優先し、層構成を変更した場合にはガスバリア性が不十分となる場合があった。
【0010】
本発明の目的は、高いガスバリア性を有する包装容器を使用し内容物の品質を高いレベルで保持しつつ、内容物の取り出しも容易に行える製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、
[1]エチレン単位含有量20モル%以上60モル%以下であるエチレン-ビニルアルコール共重合体を含むガスバリア層を備える多層構造体(a)を含む包装容器(A)と、包装容器(A)を密封する蓋材(B)と、前記密封空間中にゲル状内容物(C)とを有する製品であって、ISO527-1に準拠して測定した包装容器(A)の硬さTと、ゲル状内容物(C)の硬さUの比率T/Uが1,000以上100,000以下である、製品;
[2]ゲル状内容物(C)が緊密に充填されている、[1]の製品;
[3]JIS-B0601(2001年)に準拠して測定した包装容器(A)の表面における最大高さ粗さ(Rz)が1μm以上30μm以下である、[1]または[2]の製品;
[4]JIS-B0601(2001年)に準拠して測定した常総容器(A)の表面における算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以上2.5μm以下である、[1]~[3]のいずれかの製品;
[5]包装容器(A)の硬さTが100N以上100,000N以下である、[1]~[4]のいずれかの製品;
[6]ゲル状内容物(C)の硬さUが0.3N以上20N以下である、[1]~[5]のいずれかの製品;
[7]多層構造体(a)の平均総厚みにおける、前記ガスバリア層の平均厚みが1%以上20%以下である、[1]~[6]のいずれかの製品;
[8]多層構造体(a)が熱可塑性樹脂層を備える、[1]~[7]のいずれかの製品;
[9]多層構造体(a)が前記熱可塑性樹脂層を少なくとも2層備え、前記ガスバリア層が前記少なくとも2層の熱可塑性樹脂層の間に配置された構成を備える、[1]~[8]のいずれかの製品;
[10]多層構造体(a)の平均総厚みにおける、前記熱可塑性樹脂層の平均厚みの割合が80%以上である、[1]~[9]のいずれかの製品;
[11]ゲル状内容物(C)が脂質を1.0質量%以上含む食品である、[1]~[10]のいずれかの製品;
[12]前記脂質を1.0質量%以上含む食品が炭素数3~7のアルデヒド系香気成分を含み、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記アルデヒド系香気成分のうち、含有量が最も多いアルデヒド系香気成分をアルデヒド(f)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F2)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F10)との変化率((F10-F2)/F2)が0.5%未満である、[11]の製品;
[13]前記脂質を1.0質量以上%含む食品がカロテノイド系化合物を含み、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記カロテノイド系化合物のうち、含有量が最も多いカロテノイド系化合物をカロテノイド(c)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C2)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C10)との変化率((C2-C10)/C2)が0.5%未満である、[11]の製品;
を提供することにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製品は、高いガスバリア性を有する包装容器を使用し内容物の品質を高いレベルで保持しつつ、内容物の取り出しも容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の包装容器の一実施形態であるカップ状容器を示す模式的斜視図である。
図2図1のカップ状容器の模式的断面図である。
図3図1のカップ状容器の製造方法を説明するための模式図である。
図4図1のカップ状容器の製造方法を説明するための模式図である。
図5】本発明の包装容器が備える多層構造体を製造する共押出装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製品は、エチレン単位含有量20モル%以上60モル%以下であるEVOHを含むガスバリア層を備える多層構造体(a)を含む包装容器(A)と、包装容器(A)を密封する蓋材(B)と、前記密封空間中にゲル状内容物(C)とを有し、ISO527-1に準拠して測定した包装容器(A)の硬さTと、内容物(C)の硬さUの比率T/Uが1,000以上100,000以下である。包装容器(A)がEVOHを含むガスバリア層を備えることで、ガスバリア性が高い包装容器(A)となり、内容物の品質を長期間保持できる傾向となる。また、包装容器(A)の硬さTと内容物(C)の硬さUの比率T/Uを1,000以上100,000以下とすることで、内容物の取り出し容易性が良好となる傾向となる。なお、本発明において「取り出し容易性が良好」とは、容器を傾けて内容物を取り出すのが容易であり、取り出した後の内容物の形状や外観が崩れておらず良好であることを意味する。
【0015】
包装容器(A)の硬さ(T)と内容物(C)の硬さ(U)の比率T/Uは、1,000以上であり、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。比率T/Uは、100,000以下であり、75,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。比率T/Uが1,000未満であると、包装容器(A)から内容物(C)を取り出す際に、包装容器(A)を強く押すか強い衝撃を与えるといった力が必要となり、取り出した後の内容物(C)の形状が崩れる傾向となる。比率T/Uが100,000を超えると、包装容器(A)から内容物(C)を取り出す際に容器に軽く衝撃を与えても、包装容器(A)と内容物(C)の間に空間が生まれず、内容物(C)が取り出しにくくなる傾向となる。
【0016】
(包装容器(A))
包装容器(A)はEVOHを含むガスバリア層を備える多層構造体(a)を含み、多層構造体(a)が熱成形されて得られる容器であることが好ましい。包装容器(A)の形状は、内容物(C)を充填でき、内容物(C)の形状を保ちつつ取り出せるような形状であれば特に限定されず、例えば、内容物を容器に取り出す観点からカップ状が好ましい。
【0017】
カップ状容器について、図1及び図2に示すカップ状容器を例にとって、具体的に説明する。但し、カップ状容器は熱成形容器の一例に過ぎず、以下のカップ状容器の説明は、本発明の範囲を限定するものではない。
【0018】
図1及び図2のカップ状容器1は、収容部としてのカップ本体2、及びフランジ部3を備える。このカップ状容器1は、カップ本体2に内容物(C)を収容し、カップ本体2の開口4を塞ぐようにフランジ部3に蓋7をシールすることで使用される。カップ状容器1の底面は円形であるが、本発明のカップ状容器は楕円形であっても多角形であってもよい。
【0019】
カップ状容器1は、通常、多層構造体(a)を熱成形することで得られ、具体的には、図3に示すように多層構造体(a)21を加熱装置30により加熱して軟化させた後に、金型装置40を用いて熱成形することで製造される。
【0020】
加熱装置30は、一対のヒーター(ヒーター31及びヒーター32)を備えるものであり、これらのヒーター31及びヒーター32の間を多層構造体(a)21が通過可能とされている。なお、加熱装置30としては、熱プレスにより加熱するものを用いることもできる。
【0021】
金型装置40は、プラグアシスト法による熱成形に適するものであり、チャンバー(図示略)内に収容される下型50及び上型51を備える。下型50及び上型51は、それぞれ個別に上下方向に移動可能であり、離間状態において、これらの下型50及び上型51の間を多層構造体(a)21が通過可能とされている。下型50は、カップ状容器1の収容部を形成するための複数の凹部52を有する。上型51は、下型50に向けて突出する複数のプラグ53を備える。複数のプラグ53は、下型50の複数の凹部52に対応した位置に設けられている。各プラグ53は、対応する凹部52に挿入可能である。
【0022】
図3及び図4(A)に示すように、加熱装置30により軟化させた多層構造体(a)21に対して、下型50を上動させることで下型50に密着させると共に多層構造体(a)21を若干持ち上げて多層構造体(a)21にテンションを付与する。次に、図4(B)に示すように、上型51を下動させることでプラグ53を凹部52に挿入する。
【0023】
続いて、図4(C)に示すように、上型51を上動させてプラグ53を凹部52から離間させた後にチャンバー(図示略)内を真空引きし、多層構造体(a)21を凹部52の内面に密着させる。その後、エアーの噴射により成形部を冷却することで形状を固定する。続いて、図4(D)に示すように、チャンバー(図示略)内を大気開放すると共に下型50を下動させて下型50を離型することで一次成形品が得られる。この一次成形品を切断することで、図1及び図2に示すカップ状容器1が得られる。
【0024】
包装容器(A)は、ISO527-1に準拠して測定した硬さTが100N以上100,000N以下であることが好ましい。硬さTは1,000N以上がより好ましく、10,000N以上がさらに好ましい。また、硬さTは75,000N以下がより好ましく、50,000N以下がさらに好ましい。硬さTを100N以上とすることで、包装容器を軽く押したり、軽い衝撃を与えたりするだけで、内容物を容易に取り出すことができ、取り出し後の内容物の形状が保たれる傾向にある。硬さTを100,000N以下とすることで、包装容器から内容物を取り出す際に容器に軽く衝撃を与えただけで、包装容器と内容物の間に空間が生まれて、内容物(C)が取り出しやすくなる傾向にある。前記範囲包装容器(A)の硬さは、ガスバリア層の種類や厚み比、多層構造体(a)の層構成や厚み等によって調整できる。なお、本発明における包装容器(A)の硬さTをより詳細に説明すると、ISO527-1に準拠して23℃、50%RHで測定した引張弾性率(MPa)に、包装容器(A)を切り出した測定サンプルの厚みおよび幅を乗じ、単位換算して得られる数値を意味する。
【0025】
包装容器(A)の表面は、JIS-B0601(2001年)に準拠して測定した包装容器(A)の最大高さ粗さ(Rz)および算術平均粗さ(Ra)が特定の範囲であることが好ましい。なお、本発明において包装容器(A)の表面とは包装容器の内表面及び外表面の両面を意味する。包装容器(A)表面の最大高さ粗さ(Rz)は1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。最大高さ粗さ(Rz)を1μm以上とすることで、容器からの取り出し容易性を良好にできる。包装容器(A)表面の最大高さ粗さ(Rz)は30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。最大高さ粗さ(Rz)を30μm以下とすることで、容器製造時に発生したトリム(切り出し部分)や不良品を回収再使用(リサイクル)する際の微粉の発生を抑制し、押出工程でのトラブルを防止することができる。
【0026】
包装容器(A)表面の算術平均粗さ(Ra)は0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。算術平均粗さ(Ra)を0.1μm以上とすることで、容器からの取り出し容易性を良好にできる。また、包装容器表面の算術平均粗さ(Ra)は2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましい。算術平均粗さ(Ra)を2.5μm以下とすることで、容器製造時に発生したトリム(切り出し部分)や不良品を回収再使用(リサイクル)する際の微粉の発生を抑制し、押出工程でのトラブルを防止することができる。
【0027】
包装容器(A)表面の表面粗さ(最大高さ粗さ(Rz)及び算術平均粗さ(Ra))とは、包装容器(A)表面から最大幅1414μm、高さ1060μmの評価範囲を任意に10か所選択し、JIS-B0601(2001年)に準拠して、非接触式、カットオフ値(λc)2.5mmで測定された値の平均値を意味する。なお、多層構造体の平均厚みよりも大きい段差は表面粗さの評価値から除外するものとし、任意に選択する観測範囲においてかかる段差が含まれない範囲を選択するものとする。
【0028】
包装容器(A)表面の最大高さ粗さ(Rz)及び算術平均粗さ(Ra)は、例えば、共押出装置または射出成形における金型の内面、特に、出口部分(ダイ)内面の表面粗さを制御することによって調整できる。それは、金型出口部分内面の表面形状が、押出される多層構造体(a)に転写され、熱成形により得られる包装容器(A)にその影響が残るためであると考えられる。従って、金型内面の平滑性を高くすることで、得られる多層構造体(a)及び包装容器(A)の表面粗さを小さくできる。また、後述する共押出装置のエアーナイフによっても、表面粗さを調整できる。
【0029】
前記ダイ内面の十点平均粗さ(RzJIS94)は15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましい。一方、十点平均粗さ(RzJIS94)は0.1μm以上であっても0.3μm以上であってもよい。また、前記ダイ内面の算術平均粗さ(Ra)は1.2μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.5μm以下がさらに好ましい。一方、算術平均粗さ(Ra)は0.01μm以上であっても0.03μm以上であってもよい。ダイ内面の表面粗さを前記範囲内とすると、得られる多層構造体(a)及び包装容器(A)の表面粗さを本発明の好適な範囲に調整できる傾向にある。
【0030】
ここで、出口部分(ダイ)内面の表面粗さを表すダイ内面の十点平均粗さ(RzJIS94)及び算術平均粗さ(Ra)は、それぞれ任意に選択した10か所における測定値の平均値とする。また、本明細書において、ダイ内面の十点平均粗さ(RzJIS94)及び算術平均粗さ(Ra)の測定値は、JIS-B0601(1994年)に準拠して、カットオフ値(λc)2.5mm、評価長さ(1)7.5mm、接触式で測定される値である。
【0031】
包装容器(A)は、フィルム、シート等の多層構造体を加熱して軟化させた後に、金型形状に合わせて成形する方法(熱成形)や目的とする金型に射出して成形する方法(射出成形)等により成形できる。
【0032】
熱成形方法としては、例えば真空あるいは圧空を用い、必要によりプラグを併せ用いて金型形状に成形する方法(ストレート法、ドレープ法、エアスリップ法、スナップバック法、プラグアシスト法等)、プレス成形する方法等が挙げられる。成形温度、真空度、圧空の圧力、成形速度等の各種成形条件は、プラグ形状や金型形状、原料フィルムやシートの性質等により適当に設定される。成形温度は、成形するのに十分なだけ樹脂が軟化できる温度であれば特に限定されず、フィルム、シート等の多層構造体の構成によってその好適な温度範囲は異なる。
【0033】
フィルムを熱成形する場合、加熱によるフィルムの溶解が生じたり、ヒーター板の金属面の凹凸がフィルムに転写したりするほど高温にはしない一方、賦形が十分でないほど低温にしないことが好ましく、具体的なフィルム温度は50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。また、フィルム温度は120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。一方、シートを熱成形する場合、フィルムの場合より高温でも成形が可能な場合がある。この場合のシート温度は、例えば130℃以上180℃以下が好ましい。
【0034】
(多層構造体(a))
多層構造体(a)は、EVOHを含むガスバリア層を備えることで、包装容器(A)の硬さTを適切な範囲に調整しやすくなり、高いガスバリア性及び内容物(C)の取り出し容易性が良好にできる傾向となる。ここで、「ガスバリア層」とは、気体の透過を防止する機能を有する層であり、具体的にはJIS-K7126-2(2006年)第2部(等圧法)に準拠して測定した、20℃、65%RHにおける酸素透過度が100cc・20μm/(m2・day・atm)以下である層を意味する。
【0035】
(ガスバリア層)
多層構造体(a)は、EVOHを含むガスバリア層を備える。前記ガスバリア層に含まれるEVOHの割合は、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、実質的にEVOHのみから構成されていてもよい。
【0036】
前記EVOHを含むガスバリア層1層あたりの平均厚みは1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましい。また、前記EVOHを含むガスバリア層1層あたりの平均厚みは100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。前記EVOHを含むガスバリア層1層あたりの平均厚みが前記範囲内であると、包装容器(A)の硬さTが適度な範囲となり、内容物(C)の取り出し容易性が良好となる傾向となる他に、耐久性、柔軟性、外観特性が良好となる傾向がある。
【0037】
多層構造体(a)の平均総厚みにおける、前記EVOHを含むガスバリア層の平均厚みの割合は1%以上が好ましく、1.5%以上がより好ましく、2%以上がさらに好ましい。また、前記EVOHを含むガスバリア層の平均厚みの割合は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。多層構造体(a)の平均総厚みにおける前記EVOHを含むガスバリア層の平均厚みの割合が前記範囲にあることで、包装容器(A)の硬さTが適度な範囲となり、内容物(C)の取り出し容易性が良好となる傾向となる他に、耐久性、柔軟性、外観特性が良好となる傾向がある。なお、多層構造体(a)の平均総厚みにおける、前記EVOHを含むガスバリア層の平均厚みの割合は、前記EVOHを含むガスバリア層の平均厚みを、多層構造体(a)の総厚みで除して算出する。
【0038】
(EVOH)
多層構造体(a)が備えるガスバリア層に含まれるEVOHは、通常、エチレン-ビニルエステル共重合体をケン化することで得ることができる。エチレン-ビニルエステル共重合体の製造およびケン化は、公知の方法により行うことができる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的であるが、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等のその他の脂肪酸ビニルエステルであってもよい。
【0039】
EVOHのエチレン単位含有量は20モル%以上であり、22モル%以上が好ましく、24モル%以上がより好ましい。また、前記EVOHのエチレン単位含有量は60モル%以下であり、55モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましい。エチレン単位含有量が20モル%以上であると、溶融成形性及び高湿下でのガスバリア性が良好となる傾向となり、包装容器(A)の硬さTを適切な範囲に調整できる傾向となる。一方、エチレン単位含有量が60モル%以下であると、ガスバリア性が高まる傾向となる。EVOHのエチレン単位含有量は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
【0040】
EVOHのビニルエステル成分のケン化度は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、99モル%以上がさらに好ましい。また、EVOHのケン化度は100モル%以下であっても、99.99モル%以下であってもよい。EVOHのケン化度は、1H-NMR測定を行い、ビニルエステル構造に含まれる水素原子のピーク面積と、ビニルアルコール構造に含まれる水素原子のピーク面積とを測定して算出できる。EVOHのケン化度が前記範囲内であると、良好なガスバリア性となる傾向にある。
【0041】
また、EVOHは、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレンとビニルエステル及びそのケン化物以外の他の単量体由来の単位を有していてもよい。EVOHが前記他の単量体単位を有する場合、EVOHの全構造単位に対する前記他の単量体単位の含有量は30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましく、5モル%以下が特に好ましい。また、EVOHが前記他の単量体由来の単位を有する場合、その下限値は0.05モル%であってもよいし0.10モル%であってもよい。前記他の単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3-アシロキシ-1-プロペン、3-アシロキシ-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-1-ブテン、3-アシロキシ-4-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-3-メチル-1-ブテン、3,4-ジアシロキシ-2-メチル-1-ブテン、4-アシロキシ-1-ペンテン、5-アシロキシ-1-ペンテン、4,5-ジアシロキシ-1-ペンテン、4-アシロキシ-1-ヘキセン、5-アシロキシ-1-ヘキセン、6-アシロキシ-1-ヘキセン、5,6-ジアシロキシ-1-ヘキセン、1,3-ジアセトキシ-2-メチレンプロパン等のエステル基を有するアルケン又はそのケン化物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、又はモノ若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等ビニルシラン化合物;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
【0042】
EVOHは、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化、オキシアルキレン化等の手法の後変性されたEVOHであってもよい。かかる変性されたEVOHは溶融成形性が良好になる傾向にある。
【0043】
EVOHとして、エチレン単位含有量、ケン化度、共重合体成分、変性の有無又は変性の種類等が異なる2種以上のEVOHを混合して用いてもよい。
【0044】
EVOHは他の熱可塑性樹脂、金属塩、酸、ホウ素化合物、可塑剤、フィラー、ブロッキング防止剤、滑剤、安定剤、界面活性剤、色剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、乾燥剤、架橋剤、充填材、各種繊維などの補強材等、他の成分を有していてもよい。中でも、熱安定性や他樹脂との接着性の観点から金属塩及び酸を含むことが好ましい。
【0045】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0046】
前記金属塩としては、層間接着性をより高める観点からはアルカリ金属塩が好ましく、熱安定性の観点からはアルカリ土類金属塩が好ましい。EVOHが金属塩を含む場合、その含有量はEVOHに対し金属塩の金属原子換算で1ppm以上が好ましく、5ppm以上がより好ましく、10ppm以上がさらに好ましく、20ppm以上が特に好ましい。また金属塩の含有量はEVOHに対し金属塩の金属原子換算で10000ppm以下が好ましく、5000ppm以下がより好ましく、1000ppm以下がさらに好ましく、500ppm以下が特に好ましい。金属塩の含有量が前記範囲にあると、層間接着性を良好に保ちつつ、リサイクルを行った際の熱安定性が良好となる傾向になる。
【0047】
前記酸としては、カルボン酸化合物又はリン酸化合物がEVOH溶融成形時の熱安定性を高める観点から好ましい。EVOHがカルボン酸化合物を含む場合、カルボン酸の含有量(EVOHを含むガスバリア層の乾燥組成物中のカルボン酸の含有量)は1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、カルボン酸の含有量は10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、500ppm以下がさらに好ましい。EVOHがリン酸化合物を含む場合、リン酸化合物の含有量(EVOHを含むガスバリア層のリン酸化合物のリン酸根換算含有量)は1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましい。一方、リン酸化合物の含有量は10000ppm以下が好ましく、1000ppm以下がより好ましく、300ppm以下がさらに好ましい。EVOHがカルボン酸化合物又はリン酸化合物を前記範囲内で含むと、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
【0048】
EVOHが前記ホウ素化合物を含む場合、その含有量(EVOHを含むガスバリア層の乾燥組成物中のホウ素化合物のホウ素換算含有量)は1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、50ppm以上がさらに好ましい。また、ホウ素化合物の含有量は2000ppm以上が好ましく、1000ppm以上がより好ましく、500ppm以上がさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が前記範囲内であると、溶融成形時の熱安定性が良好になる傾向にある。
【0049】
前記リン酸化合物、カルボン酸又はホウ素化合物を、EVOHを含むガスバリア層に含有させる方法は特に限定されず、例えばEVOHを含む組成物のペレット等を調製する際に組成物に添加して混練する方法が好適に採用される。この組成物に添加する方法も特に限定されないが、乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法、溶液に浸漬させる方法などが例示される。中でも、均質に分散させる観点から、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法又は溶液に浸漬させる方法が好ましい。溶媒は特に限定されないが、添加剤の溶解性、コストの観点、取り扱いの容易性、作業環境の安全性等の観点から水が好適に用いられる。
【0050】
(熱可塑性樹脂層)
包装容器(A)の硬さTを適度な範囲に調整する観点から、多層構造体(a)は、熱可塑性樹脂層を備えることが好ましい。熱可塑性樹脂層とは、熱可塑性樹脂を主成分として含む層であり、多層構造体(a)が熱可塑性樹脂層を備えると、延伸性や熱成形性を向上させることもできる。熱可塑性樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂の割合は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、実質的に熱可塑性樹脂のみから構成されていてもよい。
【0051】
熱可塑性樹脂層1層あたりの平均厚みは100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。また、熱可塑性樹脂層1層あたりの平均厚みは1000μm以下が好ましく、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましい。熱可塑性樹脂層1層あたりの平均厚みが100μm以上であると厚みの調整が容易となり、多層構造体(a)の硬さを容易に調整できる。熱可塑性樹脂層一層の平均厚みが1000μm以下であると、多層構造体(a)の熱成形性が良好となり、容器の厚み斑が低減される。その結果、内容物を取り出すために容器に衝撃を与えた際に、力が均等に加わり内容物がきれいに取り出せる傾向にある。
【0052】
多層構造体(a)の平均総厚みにおける前記熱可塑性樹脂層の平均厚みの割合は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。また、多層構造体(a)の平均総厚みにおける前記熱可塑性樹脂層の平均厚みの割合は99%以下が好ましく、98.5%以下がより好ましい。多層構造体(a)の平均総厚みにおける前記熱可塑性樹脂層の平均厚みを前記範囲とすることで、良好な熱成形性が得られる傾向にある。
【0053】
多層構造体(a)は熱可塑性樹脂層を少なくとも2層備えることがより好ましく、ガスバリア層が少なくとも2層の熱可塑性樹脂層の間に配置された構成を備えることがさらに好ましい。多層構造体(a)において、前記構成を備えることで高いガスバリア性を有し、内容物(C)の取り出し容易性がより良好となる傾向となる。
【0054】
熱可塑性樹脂層を構成する熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度又は融点まで加熱することにより軟化して塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、例えばポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したグラフト化ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルエステル樹脂、アイオノマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、芳香族又は脂肪族ポリケトン等が挙げられる。中でも機械的強度や成形加工性の点でポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂がより好ましい。
【0055】
熱可塑性樹脂層は、本発明の目的を損なわない範囲で添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、界面活性剤、前記熱可塑性樹脂以外の樹脂、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー等が挙げられる。熱可塑性樹脂層が添加剤を含む場合、添加剤の含有率は熱可塑性樹脂層の総量に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0056】
前記界面活性剤としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、テトリット、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールが挙げられる。熱可塑性樹脂層が包装容器(A)の内表面に位置する場合、前記界面活性剤を含むことで、内容物(A)の取り出し容易性が改善する場合がある。
【0057】
多層構造体(a)が熱可塑性樹脂層を備える場合、例えば、ガスバリア層及び熱可塑性樹脂層との間に接着層を備え、層間接着力を高めてもよい。また、多層構造体(a)が接着層を備えることで、多層構造体(a)を回収再使用(リサイクル)する場合に、得られる回収層の厚み斑を低減できる傾向となる。接着層としては公知の接着性樹脂を使用でき、多層構造体の製造方法に合わせて適宜選択できる。
【0058】
ラミネート法等により多層構造体(a)を製造する場合、接着層としてはポリイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し反応させる二液反応型ポリウレタン系接着剤が好ましい。また、接着層に公知のシランカップリング剤などの少量の添加剤を加えることによって、さらに接着性を高めることができる場合がある。
【0059】
共押出成形法により多層構造体(a)を製造する場合、接着層としては、ガスバリア層及び熱可塑性樹脂層との接着性を有していれば特に限定されないが、カルボン酸変性ポリオレフィンを含有する接着性樹脂が好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィンとしては、オレフィン系重合体にエチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル又はその無水物を化学的(例えば付加反応、グラフト反応等)に結合させて得られるカルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体を好適に使用できる。ここでオレフィン系重合体とは、ポリエチレン(低圧、中圧、高圧)、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ボリブテン等のポリオレフィン、オレフィンと他のモノマー(ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステルなど)との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチルエステル共重合体等)を意味する。中でも、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの含有量5~55質量%)、エチレン-アクリル酸エチルエステル共重合体(アクリル酸エチルエステルの含有量8~35質量%)が好ましく、直鎖状低密度ポリエチレン及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸、そのエステル又はその無水物としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸、又はそのエステル、エチレン性不飽和ジカルボン酸、又はそのモノ若しくはジエステル、若しくはその無水物が挙げられ、中でもエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物が好ましい。具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、フマル酸モノメチルエステルなどが挙げられ、特に、無水マレイン酸が好適である。
【0060】
エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加量又はグラフト量(変性度)は、オレフィン系重合体に対し0.0001~15質量%、好ましくは0.001~10質量%である。エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物のオレフィン系重合体への付加反応、グラフト反応は、例えば、溶媒(キシレンなど)、触媒(過酸化物など)の存在下でラジカル重合法などにより行うことができる。このようにして得られたカルボン酸変性ポリオレフィンの210℃で測定したメルトフローレート(MFR)は0.2~30g/10分であることが好ましく、0.5~10g/10分であることがさらに好ましい。これらの接着性樹脂は単独で用いてもよいし、また二種以上を混合して用いることもできる。
【0061】
多層構造体(a)の平均総厚みは100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましい。また、本発明の多層構造体の平均総厚みは2000μm以下が好ましく、1000μm以下がより好ましく、800μm以下がさらに好ましい。多層構造体(a)の平均総厚みが100μm以上であると、耐衝撃性に優れる傾向にある。また、多層構造体(a)の平均総厚みが2000μm以下であると、製造コストが低下し、良好な熱成形性が得られる傾向にある。また、多層構造体(a)の平均厚みを前記範囲内とすると、得られる多層構造体(a)及び包装容器(A)の硬さを本発明の好適な範囲に調整できる傾向にある。
【0062】
多層構造体(a)の具体的な層構成としては、例えば、EVOHを含むガスバリア層E、接着層をAd、熱可塑性樹脂から得られる層をTで表した場合、T/E/T、E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/T等の構造が挙げられる。回収層を有する場合、回収層をRegと表すと、例えばT/Reg/Ad/E/Ad/Reg/T、T/Reg/Ad/E/Ad/T、T/Ad/E/Ad/Reg/Tの構造が挙げられる。これらの各層は、単層であってもよいし、多層であってもよい。包装容器(A)の硬さを調整しやすくする観点および耐衝撃性を高める観点から、多層構造体(a)は最外層に熱可塑性樹脂層を有している層構造が好ましい。また、多層構造体(a)はEVOHを含むガスバリア層及び熱可塑性樹脂層のみから構成されることが好ましく、その場合、EVOHを含むガスバリア層及び熱可塑性樹脂層はそれぞれ複数層有していてもよい。
【0063】
多層構造体は、共押出成形法、共射出成形法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等公知の方法により製造できる。共押出成形法としては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法等が挙げられる。
【0064】
共押出装置にて多層構造体を製造する例について図1を参照しながら説明する。図1に示す共押出装置は、ポリマー(ポリマー60/ポリマー50/ポリマー60)を押し出す押出ダイ70と、押出ダイ70から押し出された多層構造体100を搬送する第1搬送ロール80及び第2搬送ロール90と、多層構造体100の第1搬送ロール80とは反対側に配設されるエアーナイフ110とを備える。この共押出装置により、熱可塑性樹脂層を形成するポリマー60とガスバリア層を形成するポリマー50とを押出ダイ70から共押出し、この押出ダイ70から押し出された前記ポリマーからなる多層構造体100を第1搬送ロール80及び第2搬送ロール90等により搬送させながら巻き取ることにより、多層構造体フィルムが得られる。なお、図1において、押出ダイ70、第1搬送ロール80、第2搬送ロール90及びエアーナイフ110については、断面構造を示すハッチングを省略している。
【0065】
エアーナイフ110を使用して製膜する場合、エアーナイフに導入するエアーAの圧力は、0.01MPa以上が好ましく、0.05MPa以上がより好ましい。また、前記エアーAの圧力は、0.4MPa以下が好ましく、0.3MPa以下がより好ましい。エアーナイフ110に導入するエアーAの圧力を前記範囲内とすることにより、多層構造体の平滑性を制御し、得られる包装容器表面の粗さを小さくできる。
【0066】
(蓋材(B))
本発明の製品は包装容器(A)に内容物(C)を充填した後、包装容器(A)を密閉する蓋材(B)を備える。内容物(C)の品質を保持するために、蓋材(B)はガスバリア層を有していることが好ましい。蓋材(B)は、単層または多層のいずれであるかに関わらず、全体としてJIS-K7126-2(2006年)第2部(等圧法)に準拠して測定した、20℃、65%RHにおける酸素透過度において、100cc・20μm/(m2・day・atm)以下が好ましく、50cc・20μm/(m2・day・atm)以下がより好ましく、10cc・20μm/(m2・day・atm)以下がさらに好ましい。
【0067】
前記酸素透過度を満たすために、蓋材(B)はガスバリア層を有していることが好ましい。ガスバリア層としては、ガスバリア性を有していれば特に限定されず、例えば、EVOH、リン及び多価金属元素を含む複合構造体、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、無機蒸着フィルム層等が挙げられる。中でも、ガスバリア性の点から、EVOHまたはリン及び多価金属元素を含む複合構造体が好ましい。
【0068】
蓋材(B)は包装容器(A)を密閉するために、ヒートシール層を備えることが好ましい。ヒートシール層としては、熱融着可能な樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)、不飽和カルボン酸またはそのエステルでグラフト変性したグラフト化ポリオレフィン樹脂、ハロゲン化ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ビニルエステル樹脂、アイオノマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、芳香族または脂肪族ポリケトン等が挙げられる。中でも加熱処理に対して耐久性を有することから、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0069】
蓋材(B)を構成するその他の層の例には、ポリエステル層、ポリアミド層、ポリオレフィン層、および接着層などが含まれる。これらの層の数および積層順には特に制限はないが、ヒートシールが行われる場合にはそのための構成が採用される。
【0070】
蓋材(B)は、共押出成形法、共射出成形法、押出ラミネート法、ドライラミネート法等公知の方法により製造できる。
【0071】
(ゲル状内容物(C))
内容物(C)はゲル状であり、包装容器(A)の硬さTとゲル状内容物(C)の硬さUとの比率T/Uが1,000以上100,000以下である。
【0072】
内容物(C)の硬さUとは、食品硬さ測定ユニットFCA-DSV-50N(株式会社イマダ製)及び直径20mmの平型プローブFR-HA-20Jを用い、23℃50%RH条件下において、包装容器(A)に入った状態の内容物(C)を10mm押し込んだ時の最大荷重を意味する。
【0073】
内容物(C)の硬さ(U)は、0.3N以上が好ましく、0.5N以上が好ましく、0.7N以上がより好ましい。内容物(C)の硬さ(U)は、20N以下であり、15Nであることが好ましく、10N以下であることがより好ましい。内容物(C)の硬さ(U)が0.3N未満であると、包装容器から内容物を取り出した際に形状を維持することが難しくなる傾向にある。内容物(C)の硬さ(U)を前記範囲とすることで、包装容器から内容物(C)が取り出しや憂くなり、取り出した内容物(C)が形状を維持できる。
【0074】
ガスバリア層を有する包装容器(A)によって、品質の保持効果が高められる視点から、内容物(C)は食品が好ましく、脂質を1.0質量%以上含む食品がより好ましく、脂質を1.1質量%以上含む食品がさらに好ましく、脂質を1.2質量%以上含む食品が特に好ましい。内容物(C)が脂質を一定量以上含むことで、内容物の取り出し容易性を良好な状態としつつ、包装容器(A)がガスバリア層を有することによる品質の保持効果が顕著に現れる傾向となる。
【0075】
内容物(C)が脂質を1.0質量%以上含む食品である場合、内容物(C)が炭素数3~7のアルデヒド系香気成分を含むと、内容物(C)の品質の保持効果がより顕著に現れる傾向となる。炭素数3~7のアルデヒド系香気成分としては、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2-メチルブタナール、4-メチルバレルアルデヒド、3-メチルペンタナール、2-メチルペンタナール、5-メチルヘキサナール、4-メチルヘキサナール、3-メチルヘキサナール、2-メチルヘキサナール、2,3-ジメチルペンタナール、2-エチルペンタナール等が挙げられる。前記アルデヒド系香気成分の沸点は、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
【0076】
本発明の製品は、製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記アルデヒド系香気成分のうち、含有量が最も多いアルデヒド系香気成分をアルデヒド(f)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F2)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるアルデヒド(f)の含有量(F10)との変化率((F10-F2)/F2)が0.5%未満であることが好ましく、0.4%未満であることがより好ましく、0.3%未満であることがさらに好ましい。変化率((F10-F2)/F2)が0.5%未満であると、食品の品質が保たれる傾向となる。
【0077】
内容物(C)は、品質の保持効果がより顕著に現れる傾向となる観点から、ルテイン、ゼアキサンチン等のカロテノイド系化合物を含むことが好ましい。
【0078】
本発明の製品は、製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれる前記カロテノイド系化合物のうち、含有量が最も多いカロテノイド系化合物をカロテノイド(c)とした場合、前記製品作製後2日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C2)と、前記製品作製後10日間冷蔵保存後の食品に含まれるカロテノイド(c)の含有量(C10)との変化率((C2-C10)/C2)が0.5%未満であることが好ましく、0.4%未満であることがより好ましく、0.3%未満であることがさらに好ましい。変化率(C2-C10)/C2)が0.5%未満であると、食品の品質が保たれる傾向となる。
【0079】
脂質を1.0質量%以上含む食品としては、豆腐、玉子豆腐、プリン、杏仁豆腐、牛乳プリン、ババロア等が挙げられる。
【0080】
容器からの取り出し容易性という本発明の効果をより奏する観点から、内容物(C)は包装容器(A)に緊密に充填されていることが好ましい。内容物(C)を包装容器(A)に充填する方法としては特に限定されず、例えば、内容物(C)や内容物(C)の原材料を容器内から溢れる程に充填し、緊密に蓋材をヒートシールする方法などが挙げられる。
【0081】
内容物(C)の作り方は特に限定されず、内容物(C)の原材料を包装容器(A)内に充填して蓋材をヒートシールした後に加熱処理をして固化する方法、内容物(C)の原材料を加熱し容器内に充填して蓋材をヒートシールした後に冷却固化する等の方法等が挙げられる。
【実施例
【0082】
以下、本発明を実施例と比較例とを挙げて具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されない。なお、測定、算出及び評価の方法はそれぞれ以下の方法に従った。
【0083】
<実施例及び比較例で使用した材料>
・SP521:「エバール(登録商標)SP521」(株式会社クラレ製、EVOH、エチレン単位含有量27モル%、)
・E105:「エバール(登録商標)E105」(株式会社クラレ製、EVOH、エチレン単位含有量44モル%)
・L171:「エバール(登録商標)L171」(株式会社クラレ製、EVOH、エチレン単位含有量27モル%)
・PP:「ノバテック(商標)PP EA7AD」(日本ポリプロ株式会社製、ポリプロピレン)
・PET:「PIFG5(品番)」(株式会社ベルポリエステルプロダクツ製、ポリエステル)
・ONY:「エンブレム(商標)ONBC-15」(ユニチカ株式会社製、延伸ナイロンフィルム、厚み15μm)
・CPP:「RXC-22」(三井化学東セロ株式会社製、無延伸ポリプロピレンフィルム、厚み50μm)
・Ad1:「アドマー(商標)QF500」(三井化学株式会社製、接着性ポリオレフィン)
・Ad2:「アドマー(商標)NF911E」(三井化学株式会社製、接着性ポリオレフィン)
・「タケラック(商標)A-520」(三井化学株式会社製、二液系接着剤)
・「タケネート(商標)A-50」(三井化学株式会社製、二液系接着剤)
【0084】
<評価方法>
(1)ダイの表面粗さ
実施例及び比較例で使用した押出機のダイ内表面について、小型表面粗さ測定機サーフテスト「SJ-400」(接触式、株式会社ミツトヨ製)を用い、JIS-B0601(1994年)に準拠して、カットオフ値(λc)2.5mm、評価長さ(l)7.5mmで十点平均粗さ(RzJIS94)及び算術平均粗さ(Ra)を測定し、任意に選択した10か所における平均値を測定値とした。
【0085】
(2)包装容器の表面粗さ
実施例及び比較例で得られたカップ形状の包装容器の表面について、形状測定レーザマイクロスコープ「VK-X200」(非接触式、キーエンス社製)を用い、JIS-B0601(2001年)に準拠して、カットオフ値(λc)を2.5mmとし、幅1414μm、高さ1060μmの評価面積における容器の最大高さ粗さ(Rz)及び算術平均粗さ(Ra)を測定し、任意に選択した10か所の評価面積における平均値を測定値とした。なお、包装容器の平均厚みよりも大きい段差は表面粗さの評価値から除外するものとし、任意に選択する観測範囲においてかかる段差が含まれない範囲を選択した。
【0086】
(3)包装容器の硬さ
実施例及び比較例で作製したカップ形状の包装容器内部から内容物を取り出し、包装容器内部に付着した内容物を拭き取った後に、側面を15mm幅の短冊状にカットし、23℃50%RH条件下において、ISO527-1に準拠して、ヤング率を測定した。得られたヤング率を用いて、下記式の通り包装容器の硬さTを求めた。
包装容器の硬さT(N)=引張弾性率(MPa)×包装容器(A)の厚み(m)×0.015m
【0087】
(4)内容物の硬さ
実施例及び比較例で用いた内容物について、食品硬さ測定ユニットFCA-DSV-50N(株式会社イマダ製)を用いて硬さを測定した。内容物が包装容器に入った状態で装置にセットし、直径20mmの平型プローブFR-HA-20Jにて10mm押し込んだ時の最大荷重を内容物の硬さ(U)とした。
【0088】
(5)脂質の定量
実施例及び比較例で用いた内容物について、食品分析法(日本食品工業学会、食品分析法演習委員会編)記載の方法に準拠し、酸分解法にて脂質を定量した。具体的には、内容物3gを50mLのビーカーに測り取り、エタノール2mLを加えて混和した後、濃塩酸(36重量%)10mLを加えて混和し、適宜かき混ぜながら70~80℃の湯浴中で30~40分間加温した。加温後の内容物をマジョニア管に移し、ビーカーとガラス棒をエタノール8mLで洗い、さらにエチルエーテル25mLで洗浄し、全ての洗液を前記マジョニア管に集めた後、マジョニア管に栓をして分液操作を行った。分液操作では、石油エーテル25mlを加え、マジョニア管を振る作業(混和作業)とガス抜きとを繰り返し、十分に混和させた後に静置し、エーテル混液層と黒褐色の水槽部とに分離させ、エーテル混液層のみマジョニア管の栓部から、脱脂綿を詰めた漏斗にて濾過しながら回収した(回収層)。回収層は乾燥したビーカーフラスコ(重量W1))中に回収した。マジョニア管に残った水層の抽出操作として、エチルエーテル15mL及び石油エーテル15mLをマジョニア管に加え、上記と同様の方法でエーテル混液層を前記ビーカーフラスコに回収する操作を2度行った後、マジョニア管の栓部及び漏斗をエチルエーテルで洗浄し、洗液を前記ビーカーフラスコに回収した。かかるビーカーフラスコを70~80℃の湯浴上で加温し、回収層のエーテル混液を留去した後、100~105℃の電気低温乾燥機中で60分乾燥し、デシケーター内にて1時間放冷して重量(W)を測った。内容物中の脂質量を下記計算式に従って算出した。
試料中の脂質%=((W1-W)/3)×100
【0089】
(6)アルデヒド系香気成分の定量
アルデヒド系香気成分の定量は、一般財団法人 日本食品分析センターに依頼して分析した。実施例及び比較例で得られた製品をすぐに冷蔵保存し、2日間または10日間冷蔵保存した内容物を3g測り取り、5%過塩素酸とヘキサンを添加し、氷冷下でホモジナイズした。その後塩化ナトリウムを添加し、振盪後に遠心分離を行い、ヘキサン層を抽出した。抽出したヘキサン層をガスクロマトグラフィーに注入し、アルデヒド系香気成分の定量を行い、10日間冷蔵保存した内容物において最も含有量が多い炭素数3~7のアルデヒド系香気成分(アルデヒド(f))を特定し、その含有量を定量した。なお、定量は標準サンプルから作成した検量線に基づいて行った。
【0090】
(7)容器からの取り出しやすさ
実施例及び比較例で得られた製品を2日間冷蔵保存した後、蓋材を取り外した後、内容物が含まれる容器を傾け、皿上に内容物を取り出した際の取り出しやすさ及び取り出した後の内容物の外観を下記の通り判定した。
判定:基準
a:容器に軽い衝撃を与えると皿上に取り出せた
b:容器を強く押さないと皿上に取り出せなかった
c:内容物を掻き出さないと皿上に取り出せなかった
判定:基準
A:内容物の形状が全く崩れていない
B:内容物の形状が多少崩れている
C:内容物の形状が大きく崩れている
【0091】
(8)回収時の厚み斑
実施例及び比較例で得られた多層構造体をニップロールに通し、フィルム・シート用粉砕機(株式会社ホーライ製)にてスクリーン開目穴径を15mmに調整して粉砕し、積層したフレーク状のチップを得た。内径100mmの配管50mに10m毎に5か所のL型配管を設置した。このL型配管によって、サイクロンを有するホッパーを備えた空送設備にて、フレーク状チップ1tを気流搬送し、1t搬送後のフレーク状チップを用いて、東洋精機製作所社製の200mm押出機「D2020」(D(mm)=20、L/D=20、圧縮比=2.0、スクリュー:フルフライト)にて単層製膜を以下の条件で行い、単層フィルムを得た。
押出温度:供給部/圧縮部/計量部/ダイ=180/220/220/220℃
スクリュー回転数:60rpm
吐出量:1.3kg/hr
引取りロール温度:80℃
引取りロール速度:1.1/min.
フィルム厚み:90μm
上記条件で連続製膜を行い、製膜開始から1時間後のフィルムを切り出し(サンプリングし)、サンプリングしたフィルムのTD方向(製膜時フィルムの引取方向の垂直方向。幅方向。)の中心部の厚みを、連続厚み計を用いてMD方向(成形時フィルムの引取方向。長さ方向。)に2m測定し、厚み斑の評価を行った。点数は25mm間隔で採取し、その標準偏差(μm)を求めて、以下の基準で厚み斑を評価した。
A:5.0μm以下
B:5.0μm超10μm以下
C:10μm超15μm以下
【0092】
(9)包装容器及び蓋材の酸素透過度測定
実施例及び比較例で得られた包装容器及び蓋材について、MOCON INC.製酸素透過度測定装置OX-TRAN2/20型(検出限界値0.0005cc/pck・day・atm)を用い、15℃50%RHの条件下でJIS-K7126-2(2006年)第2部(等圧法)に準拠して酸素透過度をそれぞれ測定した。包装容器(A)の酸素透過度(cc/pck・day・atm)と蓋材(B)の酸素透過度(cc/m2・day・atm)に蓋材面積を掛け合わせたものの合計から算出し、包装容器内側の体積で割ることにより包装容器単位あたりの酸素透過度(cc/m3・day・atm)とした。なお、「0.0005cc/(m3・day・atm)」の酸素透過度とは、容器全体において、酸素1気圧下での1日の酸素透過量が容器(pck)あたりで0.0005ccであることを意味する。
【0093】
(10)カロテノイド系化合物の定量方法
一般財団法人 日本食品分析センターに測定を依頼した。実施例及び比較例で得られた製品をすぐに冷蔵保存し、2日間または10日間冷蔵保存した玉子豆腐を2g秤量し、水、ヘキサン/アセトン/エタノール/トルエンの混液、水酸化カリウム-メタノール溶液を添加し、超音波振盪を施した。続いて、水酸化カリウム-メタノール溶液を添加し、水浴中で静置した後に、ヘキサン/アセトン/エタノール/トルエンの混液を用いて抽出した。抽出で得られた有機溶媒層を蒸発乾固させ、ヘキサン/アセトンの混液を加えて、高速液体クロマトグラフィーにてカロテノイド系化合物を定量し(検出器:紫外可視吸光光度計)、10日間冷蔵保存した内容物において最も含有量が多いカロテノイド系化合物(カロテノイド(c))を特定し、その含有量を定量した。なお、定量は標準サンプルから作成した検量線に基づいて行った。
【0094】
(11)内容物(C)の風味
実施例及び比較例で得られた製品を10日間冷蔵保存した後、開封して内部の食品の風味をパネラー5名により確認し、合議により以下の基準に従って判断した。
A:保管前とほとんど変わらない。
B:わずかに風味がしなくなった。
C:ほとんど風味がしなくなった。
【0095】
[実施例1]
(包装容器の作製)
ガスバリア層としてEVOH「エバール(商標)SP521B」、熱可塑性樹脂層としてポリプロピレン「ノバテック(商標)PP EA7AD」(PP)及び接着層として接着性ポリオレフィン「アドマー(商標)QF500」(Ad1)を用いて、以下の条件にて3種5層の多層構造体(PP/Ad1/EVOH/Ad1/PP=386μm/16μm/32μm/16μm/386μm)を得た。なお、製膜設備としては製膜ダイを有する押出機の後に温度コントロール可能な引取りロールを有し、巻き取り機にて得られた多層構造体を巻き取った。使用した製膜ダイについて、上記評価方法(1)に従って、ダイ内表面の粗さを測定した。また、得られた多層構造体について上記評価方法(8)に従って、回収時の厚み斑を測定した。結果を表1に示す。
<製膜条件>
EVOH用押出機:単軸押出機(ラボ機ME型CO-EXT、東洋精機株式会社製)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/230℃
PP用押出機:単軸押出機(GT-32-A、株式会社プラスチック工学研究所製)
口径 32mmφ、L/D=28、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=170/200/210/230℃
Ad1用押出機:単軸押出機(SZW20GT-20MG-STD、株式会社テクノベル製)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/220℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
引取りロール温度:80℃
【0096】
得られた多層構造体を熱成形機(浅野製作所製)にてシート温度170℃にて、カップ形状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=0.5)に熱成形(圧空:5kg/cm2、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、金型温度:40℃を使用)し、カップ形状の包装容器を作製した。得られた包装容器について、上記評価方法(2)、(3)及び(9)に従って、包装容器の表面粗さ、硬さ及び酸素透過度を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
(コーティング液(S-1)の調製)
蒸留水230質量部を撹拌しながら70℃に昇温した。その蒸留水に、トリイソプロポキシアルミニウム88質量部を1時間かけて滴下し、液温を徐々に95℃まで上昇させ、発生するイソプロパノールを留出させることによって加水分解縮合を行った。得られた液体に、60質量%の硝酸水溶液4.0質量部を添加し、95℃で3時間撹拌することによって加水分解縮合物の粒子の凝集体を解膠させた。その後、その液体を、固形分濃度が酸化アルミニウム換算で10質量%になるように濃縮した。こうして得られた分散液22.50質量部に対して、蒸留水54.29質量部およびメタノール18.80質量部を添加し、均一になるように撹拌することによって、分散液を得た。次いで、液温を15℃に維持した状態で分散液を撹拌しながら85質量%のリン酸水溶液4.41質量部を滴下による添加し、粘度が1,500mPa・sになるまで15℃で撹拌を続け、目的のコーティング液(S-1)を得た。コーティング液(S-1)における、アルミニウム原子とリン原子とのモル比は、アルミニウム原子:リン原子=1.15:1.00であった。
【0098】
(有機リン化合物(BO-1)の合成)
窒素雰囲気下にて、ビニルホスホン酸10gおよび2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.025gを水5gに溶解させ、80℃で3時間撹拌した。冷却後、重合溶液に水15gを添加して希釈し、セルロース膜(スペクトラムラボラトリーズ社製Spectra/Por(登録商標))を用いてろ過した。ろ液中の水を留去した後、50℃で24時間真空乾燥して、有機リン化合物(BO-1;ポリ(ビニルスルホン酸))を得た。GPC分析の結果によれば、有機リン化合物(BO-1)の数平均分子量はポリエチレングリコール換算で10,000であった。
【0099】
(コーティング液(T-1)の製造)
上記で得られた有機リン化合物(BO-1)67質量%と、重量平均分子量60,000のポリエチレンオキサイド(明成化学工業株式会社製「アルコックス(登録商標) L-6」)33質量%とを含む混合物を調製した。この混合物を、水とメタノールとの混合溶媒(質量比で水:メタノール=7:3)に溶解させ、固形分濃度が1質量%のコーティング液(T-1)を得た。
【0100】
(蓋材(B1)(リンおよび多価金属元素を含む複合構造体)の作製)
まず、基材である延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製ルミラー(登録商標) P60;厚さ12μm)上に、乾燥後の厚さが0.3μmとなるようにバーコーターを用いて、上記で調製したコーティング液(S-1)を塗工した。塗工後のフィルムを、110℃で5分間乾燥させた後、160℃で1分間熱処理することによって、基材上に層の前駆体層を形成した。次いで、無機リン化合物(BI)の質量WBIと有機リン化合物(BO)の質量WBOとの比WBO/WBI=1.10/98.90となるようにバーコーターを用いてコーティング液(T-1)を塗工し、110℃で3分間乾燥させた。その後、220℃で1分間熱処理することによって層(Y1-1)を形成した。このようにして、リンおよび多価金属元素を含む複合構造体(b1)を得た。得られた複合構造体(b1)の片面に延伸ナイロンフィルム「エンブレム(商標)ONBC-15」(ONY)の片面に二液系接着剤(「タケラック(商標)A-520」/「タケネートA-50」)を固形分2.5g/m2の目付で塗布後、延伸ナイロンフィルム「エンブレム(商標)ONBC-15」(ONY)を積層した。次に、該ONYに二液系接着剤(「タケラック(商標)A-520」/「タケネートA-50」)を固形分2.5g/m2の目付で塗布後、無延伸ポリプロピレンフィルム「RXC-22」(CPP)をドライラミネート法により積層し、複合構造体(b1)/ONY/CPPの構成を有する蓋材(B1)(厚み77μm)を作製した。得られた蓋材について、上記(9)に従って酸素透過度を測定し、単位体積当たりの酸素透過度を算出した。評価結果を表1に示す。
【0101】
(充填豆腐の作製)
おいしい無調整豆乳(キッコーマン株式会社製)と天海のにがり(赤穂化成株式会社製)を体積比率100:3の割合で混合し、得られた包装容器に充填した。その後、内容物が充填された包装容器を、蓋材(B1)のCPP層側が容器と接するようにヒートシールし、内容物が密封された製品を得た。得られた製品を90℃の熱水中で40分間ボイル処理を施し、ボイル処理後に水冷し、容器に付着した水を拭き取って冷蔵保存した。
【0102】
得られた製品について上述した(4)~(7)および(11)の評価方法に従い、内容物の硬さ、脂質含有量、アルデヒド系香気成分の定量、容器からの取り出しやすさ及び内容物の風味を評価した。評価結果を表1に示す。アルデヒド系香気成分の定量においては、アルデヒド(f)がヘキサナールであり、その他のアルデヒド系香気成分としてはプロパナールが検出された。
【0103】
<実施例2~6、8~10>
層構成、ガスバリア層の種類、内容物の硬さ、ダイ表面粗さを表1の通り変更し、各層の厚みを押出機のスクリュー回転速度を変更して表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し評価を行った。なお、内容物の硬さは、にがりの添加量を適宜変更して調整した。評価結果を表1に示す。
【0104】
<実施例7>
キャスティングロールから高さ3cmの場所にエアー吹き出し口の隙間が0.3mmのエアーナイフを配設し、ダイから引取りロール上に押し出すと同時にエアーナイフにより空気を0.1MPaで吹き付けたこと、及びダイ表面粗さを表1の通り変更した以外は実施例1と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0105】
<実施例11>
エアーナイフの空気を吹き付ける強さ及びダイ表面粗さを表1の通り変更した以外は、実施例7と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0106】
<比較例1>
層構成、ガスバリア層の種類、内容物の硬さ、ダイ表面粗さを表1の通り変更し、各層の厚みを押出機のスクリュー回転速度を変更して表1の通り変更し、蓋材を後述する蓋材(B2)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0107】
(蓋材の作製)
延伸ナイロンフィルム「エンブレム(商標)ONBC-15」(ONY)の片面に二液系接着剤(「タケラック(商標)A-520」/「タケネートA-50」)を固形分2.5g/m2の目付で塗布後、無延伸ポリピプロピレンフィルム「RXC-22」(CPP)をドライラミネート法により積層し、ONY/CPPの構成を有する蓋材(B2)(厚み65μm)を作製した。得られた蓋材について、上記(9)に従って酸素透過度を測定し、単位体積当たりの酸素透過度を算出した。評価結果を表1に示す。
【0108】
<比較例2>
層構成、ガスバリア層の種類、内容物の硬さ、ダイ表面粗さを表1の通り変更し、各層の厚みを押出機のスクリュー回転速度を変更して表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で包装容器及び製品を作製し評価を行った。
【0109】
<比較例3>
(包装容器の作製)
ガスバリア層としてEVOH「エバール(商標)SP521B」、熱可塑性樹脂層としてポリエステル「PIFG5(品番)」(PET)及び接着層として接着性ポリオレフィン「アドマー(商標)NF911E」(Ad2)を用いて、以下の条件にて3種5層の多層構造体(PET/Ad2/EVOH/Ad2/PET=552μm/24μm/48μm/24μm/552μm)を得た。なお、製膜設備としては製膜ダイを有する押出機の後に温度コントロール可能な引取りロールを有し、巻き取り機にて得られた多層構造体を巻き取った。使用した製膜ダイについて、上記評価方法(1)に従って、ダイ内表面の粗さを測定した。また、得られた多層構造体について上記評価方法(8)に従って、回収時の厚み斑を測定した。結果を表1に示す。
<製膜条件>
EVOH用押出機:単軸押出機(ラボ機ME型CO-EXT、東洋精機株式会社製)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/230℃
PET用押出機:単軸押出機(GT-32-A、株式会社プラスチック工学研究所製)
口径 32mmφ、L/D=28、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=280/280/280/280℃
Ad2用押出機:単軸押出機(SZW20GT-20MG-STD、株式会社テクノベル製)
口径 20mmφ、L/D=20、スクリュー フルフライトタイプ
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=280/280/280/280℃
ダイ:300mm幅コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社製)
引取りロール温度:80℃
【0110】
得られた多層構造体を熱成形機(浅野製作所製)にてシート温度110℃にて、カップ形状(金型形状70φ×70mm、絞り比S=0.5)に熱成形(圧空:5kg/cm2、プラグ:45φ×65mm、シンタックスフォーム、金型温度:40℃を使用)し、カップ形状の包装容器を作製した。得られた包装容器について、上記評価方法(2)、(3)及び(9)に従って、包装容器の表面粗さ、硬さ及び酸素透過度を測定した。結果を表1に示す。また、得られた包装容器を用いた以外は、実施例1と同様の方法で製品を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
<比較例4、5>
内容物を表1に記載の硬さの寒天ゼリーに変えた以外は実施例1と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し、評価を行った。評価結果を表1に示す。寒天ゼリーは以下に示す通り作製した。適当量の寒天を384gの水道水に1時間浸した後加熱し、寒天が溶けてから96gの砂糖を加え、400gまで加熱を続け、包装容器の中に緊密充填となるように充填して、蓋材(B2)をヒートシールした後に常温で凝固させた後、冷蔵保存した。なお寒天ゼリーの添加量は、表1に記載の硬さに応じて適宜調整した。
【0112】
【表1】
【0113】
<実施例12>
内容物を玉子豆腐とし、包装容器の表面粗さを表2に示すように変更した以外は実施例1と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製した。上記評価方法(2)~(5)、(7)~(11)に記載の方法に従い、包装容器の表面粗さ、包装容器の硬さ、内容物の硬さ、脂質含有量、容器からの取り出しやすさ、回収時の厚み斑、酸素透過度、内容物のカロテノイド系化合物の含有量、及び内容物の風味を評価した。結果を表2に示す。カロテノイド系化合物の定量においては、カロテノイド(c)がルテインであり、その他のカロテノイド系化合物としてはゼアキサンチンが検出された。
【0114】
(玉子豆腐の作製)
卵4個、出汁300mL、醤油小さじ2、塩ひとつまみを混合し、漉し器で濾した後に容器に充填し、実施例1と同様の方法で蓋材(B1)をヒートシールして製品を作製した後、冷蔵保存した。
【0115】
<比較例6>
層構成、ガスバリア層の種類、内容物の硬さ、ダイ表面粗さを表1の通り変更し、各層の厚みを押出機のスクリュー回転速度を変更して表1の通り変更し、蓋材(B2)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で多層構造体、包装容器及び製品を作製し評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
実施例1では、EVOHを有する包装容器(A)の硬さTと、内容物(C)の硬さ(U)の比率T/Uが適切な範囲に調整されており、内容物(C)の容器からの取り出しやすさが良好である。また、良好なガスバリア性を示しており、内容物の風味(品質)を高く保持できている。さらに、包装容器の表面粗さが適切な範囲であることから、回収時の厚み斑も無くリサイクル性が良好であることがわかる。実施例2~4のように、多層構造体(a)の各層の厚みを変更すると、包装容器(A)の硬さTが変動し内容物(C)の硬さUとの比T/Uが変動し、取り出し容易性が多少劣る結果となる。実施例3、5のようにEVOHを含むガスバリア層の厚みを薄くすると、アルデヒド系香気成分の変化率が高まり、風味評価が多少劣る結果となる。実施例6、7、10、11から、ダイ内表面粗さやエアーナイフの条件が包装容器表面粗さに影響し、回収時の厚み斑や内容物(C)の取り出し容易性に影響を及ぼすことがわかる。実施例8から、内容物(C)の硬さUを変更し包装容器(A)の硬さTとの比T/Uを調整した場合であっても、包装容器(A)の硬さTを変更した場合と同様に取り出し容易性に影響があることがわかる。実施例9から、包装容器のガスバリア性が低下することでアルデヒド系香気成分の変化率が高まり風味に影響を及ぼすことがわかる。
【0118】
一方、ガスバリア層を含まない比較例1では、アルデヒド系香気成分の変化率が非常に高く、風味も著しく低下していることがわかる。また、各層の厚みや層構成が異なる比較例2、3では、包装容器(A)の硬さTが高い値となっており、包装容器(A)の硬さTと内容物硬さUとの比T/Uが好適な範囲から外れることにより、内容物(C)の容器からの取り出しやすさが悪化することを確認した。また、内容物(C)の硬さを調整した比較例4、5では、包装容器(A)の硬さTと内容物硬さUとの比T/Uが好適な範囲から外れることにより、内容物(C)の容器からの取り出しやすさが悪化することを確認した。
【0119】
実施例12では、EVOHを有する包装容器(A)の硬さTと、内容物(C)の硬さ(U)の比率T/U、容器表面の最大高さ粗さ(Rz)、算術平均粗さ(Ra)が好適な範囲に調整されており、内容物(C)の容器からの取り出しやすさを担保しつつ、リサイクル性が良好であり、内容物(C)である玉子豆腐の品質を高く保持することができた。比較例6では、包装容器(A)の硬さTが低く、酸素透過度が高く調整されており、容器からの取り出しやすさがやや劣り、内容物(C)である玉子豆腐の品質保持性が悪化することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の製品は、ゲル状内容物の品質を高いレベルで保持すると同時に、内容物を容易に取り出すことができ、取り出した後も内容物の形状を良好に保つことができる。本発明の製品は、例えば、豆腐、玉子豆腐、プリン、杏仁豆腐、牛乳プリン、ババロア等のゲル状の食品を内容物とした場合、特に有用である。
【符号の説明】
【0121】
1 カップ状容器
2 カップ本体
3 フランジ部
4 開口
5 内表面
6 外表面
7 蓋
50 ポリマー(ガスバリア層)
60 ポリマー(熱可塑性樹脂層)
70 押出ダイ
80 第1搬送ロール
90 第2搬送ロール
100 多層構造体
110 エアーナイフ
図1
図2
図3
図4
図5