(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】オレフィン系共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 210/00 20060101AFI20221205BHJP
C08F 4/76 20060101ALI20221205BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C08F210/00
C08F4/76
C08F4/6592
(21)【出願番号】P 2020558935
(86)(22)【出願日】2019-05-03
(86)【国際出願番号】 KR2019005360
(87)【国際公開番号】W WO2019212302
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0052042
(32)【優先日】2018-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】イン・スン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・チン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】サン・ウン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チョン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】レ・クン・カク
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0073385(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0054849(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0067509(KR,A)
【文献】国際公開第2005/118654(WO,A1)
【文献】特表2018-502819(JP,A)
【文献】特表2008-501659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00
C08F 4/76
C08F 4/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)密度(d)が0.85から0.89g/ccであり、
(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が15g/10分から100g/10分であり、
(3)炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、
(4)核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル及びtotal Vが以下の(a)及び(b)を満た
し、
(a)ビニレン/total V=0.1から0.7
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.6
(6)分子量分布(MWD)が1.5から3.0を満たす、オレフィン系共重合体。
【請求項2】
前記オレフィン系共重合体は、さらに(5)重量平均分子量(Mw)が10,000g/molから80,000g/molを満たす、請求項1に記載のオレフィン系共重合体。
【請求項3】
前記オレフィン系共重合体は、(3)炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.15から0.7である、請求項1
又は2に記載のオレフィン系共重合体。
【請求項4】
前記オレフィン系共重合体は、(4)核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル及びtotal Vが以下の(a)及び(b)を満たす、請求項1~
3のいずれか一項に記載のオレフィン系共重合体。
(a)ビニレン/total V=0.2から0.6
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.5
【請求項5】
前記オレフィン系共重合体は、エチレンと、炭素数3から12のアルファ-オレフィン共単量体との共重合体である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のオレフィン系共重合体。
【請求項6】
前記オレフィン系共重合体は、エチレンと、アルファ-オレフィン共単量体との共重合体であり、前記アルファ-オレフィン共単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び3-クロロメチルスチレンでなる群から選択される何れか一つ又は二つ以上の混合物を含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載のオレフィン系共重合体。
【請求項7】
下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素を10から100cc/分で投入してオレフィン系単量体を重合する段階を含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載のオレフィン系共重合体の製造方法:
【化1】
前記化学式1において、
R
1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであり、
R
2aからR
2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;又は炭素数6から20のアリールであり、
R
3は、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミド;炭素数6から20のアリールアミド;炭素数1から20のアルキリデン;又はハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数3から20のシクロアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ及び炭素数6から20のアリールでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであり、
R
4からR
9は、それぞれ独立して、水素;シリル;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;又は炭素数1から20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R
6からR
9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してよく、
Qは、Si、C、N、P又はSであり、
Mは、4族の遷移金属であり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミノ;炭素数6から20のアリールアミノ;又は炭素数1から20のアルキリデンである。
【請求項8】
前記R
1は、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数1から12のアルコキシ;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアリールアルコキシ;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであり、
前記R
2aからR
2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数1から12のアルコキシ;又はフェニルであり、
前記R
3は、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;フェニル;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から12のアルコキシ及びフェニルでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであり、
前記R
4からR
9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであり、
前記R
6からR
9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5から20の脂肪族環又は炭素数6から20の芳香族環を形成してよく;
前記脂肪族環又は芳香族環は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、又は炭素数6から12のアリールで置換されてよく、
前記QはSiであり、
前記MはTiであり、
前記X
1及びX
2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;又は炭素数2から12のアルケニルである、請求項
7に記載のオレフィン系共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記遷移金属化合物は、下記化学式1-1から1-10の化合物でなる群から選択される1種である、請求項
7に記載のオレフィン系共重合体の製造方法。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【請求項10】
前記重合は、110℃から160℃で行われる、請求項
7~
9のいずれか一項に記載のオレフィン系共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年5月4日付韓国特許出願第10-2018-0052042号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、オレフィン系共重合体及びその製造方法に関し、具体的には、オレフィン系共重合体内の不飽和官能基の含量及び種類を調節することで、高流動性でありながらも硬度、屈曲強度、引張強度等の物性が向上された低密度オレフィン系共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン重合触媒系は、チーグラーナッタ及びメタロセン触媒系に分類でき、この二つの高活性触媒系はそれぞれの特徴に合わせて発展してきた。チーグラーナッタ触媒は、50年代に発明されてから既存の商業プロセスに広く適用されてきたが、複数の活性点が混在する多活性点触媒(multi-site catalyst)であるため、重合体の分子量分布が広いことが特徴であり、共単量体の組成分布が均一ではないため所望の物性確保に限界があるという問題点がある。
【0004】
一方、メタロセン触媒は、遷移金属化合物が主成分である主触媒とアルミニウムが主成分である有機金属化合物である助触媒の組み合わせからなり、このような触媒は、均一系錯体触媒であって単一活性点触媒(single site catalyst)であり、単一活性点特性によって分子量分布が狭く、共単量体の組成分布の均一な高分子が得られ、触媒のリガンド構造変形及び重合条件の変更によって高分子の立体規則度、共重合特性、分子量、結晶化度等を変化させることができる特性を有している。
【0005】
米国特許第5,914,289号には、それぞれの担体に担持されたメタロセン触媒を用いて高分子の分子量及び分子量分布を制御する方法が記載されているところ、担持触媒製造時に用いられた溶媒の量及び製造時間が多くかかり、用いられるメタロセン触媒を担体にそれぞれ担持させなければならないという煩わしさが伴われた。
【0006】
韓国特許出願第10-2003-0012308号には、担体に二重核メタロセン触媒と単一核メタロセン触媒を活性化剤とともに担持し、反応器内の触媒の組み合わせを変化させつつ重合することで分子量分布を制御する方案を開示している。しかし、このような方法は、それぞれの触媒の特性を同時に具現することに限界があり、また完成された触媒の担体成分でメタロセン触媒部分が遊離されて反応器に汚染(ファウリング:fouling)を誘発するという短所がある。
【0007】
一方、直鎖状低密度ポリエチレンは、重合触媒を用いて低圧でエチレンとアルファオレフィンを共重合して製造され、分子量分布が狭く一定長さの短鎖分枝を有し、長鎖分枝がない樹脂である。直鎖状低密度ポリエチレンフィルムは、一般のポリエチレンの特性とともに破断強度と伸び率が高く、引張強度、落錘衝撃強度等に優れるため、既存の低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンの適用が難しいストレッチフィルム、オーバーラップフィルム等への使用が増加している。
【0008】
ところが、1-ブテン又は1-ヘキセンを共単量体として用いる直鎖状低密度ポリエチレンは、大部分が単一気相反応器又は単一ループスラリー反応器で製造され、1-オクテン共単量体を用いる工程に比べて生産性は高いが、このような製品もやはり使用触媒技術及び工程技術の限界で、物性が1-オクテン共単量体の使用時より大幅に劣り、分子量分布が狭いため、加工性が不良である問題がある。
【0009】
米国特許第4,935,474号には、2種又はそれ以上のメタロセン化合物が用いられて広い分子量分布を有するポリエチレン製法に対し報告されている。米国特許第6,828,394号には、共単量体の結合性が良いものとそうではないものを混合して使用するので、加工性に優れ、特にフィルム用に適したポリエチレンの製造方法に対して報告されている。また、米国特許第6,841,631号、米国特許第6,894,128号には、少なくとも2種のメタルコンパウンドが用いられたメタロセン系触媒として二峰又は多峰分子量分布を有するポリエチレンを製造し、フィルム、ブローモールディング、パイプ等の用途に適用可能であると報告されている。しかし、このような製品は、加工性は改善されたものの、単位粒子内の分子量別の分散状態が均一でないため、比較的良好な押出条件においても押出の外観が粗くて物性が安定的でない問題がある。
【0010】
このような背景の下、物性と加工性の間のバランスのとれた、より優れた製品の製造が絶えず要求されており、特に加工性に優れたポリエチレン共重合体の必要性がさらに要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許第5,914,289号
【文献】韓国特許出願第10-2003-0012308号
【文献】米国特許第4,935,474号
【文献】米国特許第6,828,394号
【文献】米国特許第6,841,631号
【文献】米国特許第6,894,128号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、高流動性でありながらも硬度、屈曲強度、引張強度等の物性が向上された低密度オレフィン系共重合体を提供することである。
【0013】
また、本発明の解決しようとする他の課題は、前記オレフィン系共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、(1)密度(d)が0.85から0.89g/ccであり、(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が15g/10分から100g/10分であり、(3)炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、(4)核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル、total Vが以下の(a)及び(b)を満たす、オレフィン系共重合体を提供する。
(a)ビニレン/total V=0.1から0.7
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.6
【0015】
また、前記他の課題を解決するために、本発明は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素を10から100cc/分で投入してオレフィン系単量体を重合する段階を含む、前記オレフィン系共重合体の製造方法を提供する。
【化1】
【0016】
前記化学式1において、
R1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであり、
R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;又は炭素数6から20のアリールであり、
R3は、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミド;炭素数6から20のアリールアミド;炭素数1から20のアルキリデン;又はハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数3から20のシクロアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ及び炭素数6から20のアリールでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであり、
R4からR9は、それぞれ独立して、水素;シリル;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;又は炭素数1から20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R6からR9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してよく、
Qは、Si、C、N、P又はSであり、
Mは、4族の遷移金属であり、
X1及びX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミノ;炭素数6から20のアリールアミノ;又は炭素数1から20のアルキリデンである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によるオレフィン系共重合体は、オレフィン系共重合体内の不飽和官能基の含量及び種類が調節され、高流動性でありながらも硬度、屈曲強度、引張強度等において向上された物性を示し得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の理解を深めるために本発明をより詳しく説明する。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために、用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0020】
本明細書において、用語「重合体」とは、同一であるか異なっている類型の単量体の重合によって製造される重合体化合物を意味する。「重合体」という総称は、「単独重合体」、「共重合体」、「三元共重合体」だけでなく「混成重合体」という用語を含む。また、前記「混成重合体」とは、二つ以上の異なっている類型の単量体の重合によって製造された重合体を意味する。「混成重合体」という総称は、(二つの異なっている単量体から製造された重合体を指称するのに通常用いられる)「共重合体」という用語だけでなく(三つの異なっている類型の単量体から製造された重合体を指称するのに通常用いられる)「三元共重合体」という用語を含む。これは、四つ以上の類型の単量体の重合によって製造された重合体を含む。
【0021】
本発明によるオレフィン系共重合体は、下記(1)から(4)の要件を満たすものである。
(1)密度(d)が0.85から0.89g/ccであり、
(2)溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が15g/10分から100g/10分であり、
(3)炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、
(4)核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル及びtotal Vが以下の(a)及び(b)を満たす。
(a)ビニレン/total V=0.1から0.7
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.6
【0022】
本発明によるオレフィン系共重合体は、ASTM D-792による測定時0.85g/ccから0.89g/ccの密度を示し、具体的に0.855から0.89g/cc、より具体的に0.86から0.89g/ccの密度を有し得る。本発明によるオレフィン系共重合体は、前記範囲の低い密度を示すものである。
【0023】
前記溶融指数(MI)は、オレフィン系共重合体を重合する過程で用いられる触媒の共単量体に対する使用量を調節することで調節され得、オレフィン系共重合体の機械的物性及び衝撃強度、そして成形性に影響を与える。本明細書において、前記溶融指数は、0.85から0.89g/ccの低密度条件でASTM D1238によって190℃、2.16kgの荷重条件で測定したもので、15g/10分から100g/10分であってよく、具体的に15g/10分から80g/10分、より具体的に16g/10分から70g/10分であってよい。
【0024】
前記オレフィン系共重合体は、(3)炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0の場合は除く。また、炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)は、具体的に0.01から0.8、より具体的に0.15から0.7であってよい。
【0025】
また、前記オレフィン系共重合体は、(4)核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル及びtotal Vが以下の(a)及び(b)を満たす。
(a)ビニレン/total V=0.1から0.7
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.6
【0026】
前記(a)及び(b)は、それぞれ不飽和官能基中ビニレンの比率及びビニレンとビニルの比率を示す。
【0027】
前記(a)ビニレン/total Vは、0.1から0.7であってよく、具体的に0.2から0.6、より具体的に0.25から0.5であってよい。
【0028】
また、前記(b)ビニレン/ビニルは、0.8から1.6であってよく、具体的に0.8から1.5、より具体的に0.9から1.4であってよい。
【0029】
前記オレフィン系共重合体は、炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル及び不飽和官能基数(total V)が、前記(3)及び(4)の条件を満たすため、オレフィン系共重合体の分子量分布が減少され、また、通常の従来のオレフィン系共重合体に比べて同一水準の密度及び溶融指数(Melting Index)を有する時、より向上された引張強度、伸び率及び屈曲弾性率を示し得る。
【0030】
前記オレフィン系共重合体は、共重合体内の炭素原子1000個当たりのビニル含量が0.6未満であってよい。具体的に、前記ビニル含量は、共重合体を構成する炭素原子1000個当り0.5以下であってよく、より具体的に0.3以下であってよい。
【0031】
一方、前記オレフィン系共重合体は、共重合体内の炭素原子1000個当たりのビニレン含量が0.5未満であってよい。具体的に、前記ビニル含量は、共重合体を構成する炭素原子1000個当り0.4以下であってよく、より具体的に0.3以下であってよい。
【0032】
共重合体内のビニル又はビニレンの含量は、製造時の重合温度及び水素投入量を介して制御可能であるが、本発明によるオレフィン系共重合体は、前記のように低いビニル及びビニレン含量を有することで分子量分布が減少される。
【0033】
本発明において、共重合体内のビニル及びビニレン含量は、NMR分析結果から計算されてよい。具体的には、共重合体をTCE-d2溶媒に溶解させた後、Bruker AVANCEIII 500MHz NMR装備を用いて常温で3秒の緩和時間、30゜のパルス角度で2048回測定し、コモノマー含量を0.5~1.5ppm領域のエチレン、1-ブテン、1-オクテンピークの積分値を用いて計算し、二重結合の個数は4.5~6.0ppm領域の二重結合の積分値を基準に計算できる(文献Macromolecules 2014,47,3782-3790)。
【0034】
本発明の一例によるオレフィン系共重合体は、さらに(5)重量平均分子量(Mw)が10,000g/molから80,000g/molを満たしてよく、前記重量平均分子量(Mw)は、具体的に20,000g/molから70,000g/molであってよく、より具体的に30,000g/molから65,000g/molであってよい。
【0035】
また、本発明の一例によるオレフィン系共重合体は、さらに重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)である(6)分子量分布(MWD;Molecular Weight Distribution)が1.5から3.0である条件を満たしてよく、前記分子量分布(MWD)は、具体的に1.5から2.5、より具体的に1.9から2.15であってよい。
【0036】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0037】
通常オレフィン系重合体の密度は、重合時に用いられる単量体の種類と含量、重合度等の影響を受け、共重合体の場合、共単量体の含量による影響が大きい。本発明のオレフィン系共重合体は、特徴的構造を有する遷移金属化合物を含む触媒組成物に水素(H2)を投入して共重合されたものであって、多量の共単量体導入が可能であるため、前記のような範囲の低密度を有し、同一密度を有する従来の共重合体と比較して硬度が増加し、その結果、従来の共重合体に比べてより向上された引裂強度、伸び率、屈曲弾性率等の物性を有し得る。
【0038】
また、本発明によるオレフィン系共重合体は、これを製造するための重合反応時に最適含量の水素が投入されることで、分子量分布を調節して前記範囲の狭い分子量分布を示し得る。
【0039】
前記オレフィン系共重合体は、オレフィン系単量体、具体的にはアルファ-オレフィン系単量体、環状オレフィン系単量体、ジエンオレフィン系単量体、トリエンオレフィン系単量体及びスチレン系単量体のうち選択される2種以上の共重合体であってよい。
【0040】
前記アルファ-オレフィン単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチリデンノルボルネン、フェニルノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ブタジエン、1,5-ペンタジエン、1,6-ヘキサジエン、スチレン、アルファ-メチルスチレン、ジビニルベンゼン及び3-クロロメチルスチレンでなる群から選択される何れか一つ又は二つ以上の混合物を含んでよい。
【0041】
具体的に、前記オレフィン系共重合体は、エチレンと、炭素数3から12のアルファ-オレフィン系単量体の共重合体であってよく、具体的に、エチレンと、炭素数3から10のアルファ-オレフィン系単量体の共重合体であってよい。
【0042】
より具体的に、本発明の一例によるオレフィン共重合体は、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンと4-メチル-1-ペンテン又はエチレンと1-オクテンの共重合体であってよい。
【0043】
前記オレフィン系共重合体がエチレンとアルファ-オレフィンの共重合体の場合、前記アルファ-オレフィンの量は共重合体全体重量に対して、15重量%から45重量%であり、具体的に20重量%から45重量%、より具体的に20重量%から40重量%であってよい。
【0044】
前記の範囲に含まれる時、前述した物性的特性の具現が容易である。
【0045】
本発明の一例において、前記オレフィン系共重合体は、エチレンと1-オクテンの共重合体であり、ASTM D638(50mm/分)に準じて測定した引張伸び率が500%以上であり、引裂強度が20kgf/cm2以上であり、ASTM D790によって測定した屈曲弾性率(Secant 1%)が10kgf/cm2以上のものであってよい。具体的に、前記オレフィン系共重合体は、エチレンと1-オクテンの共重合体であり、ASTM D638(50mm/分)に準じて測定した引張伸び率が1,000%以上であり、引裂強度が25kgf/cm2から40kgf/cm2であり、ASTM D790によって測定した屈曲弾性率(Secant 1%)が10.0kgf/cm2から30.0kgf/cm2のものであってよい。
【0046】
また、本発明の一例において、前記オレフィン系共重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体であって、ASTM D638(50mm/分)に準じて測定した引張伸び率が500%以上であり、引裂強度が20kgf/cm2から50kgf/cm2であり、ASTM D790によって測定した屈曲弾性率(Secant 1%)が10.0kgf/cm2以上のものであってよい。具体的に、前記オレフィン系共重合体は、エチレンと1-ブテンの共重合体であって、ASTM D638(50mm/分)に準じて測定した引張伸び率が500%から1000%であり、引裂強度が20kgf/cm2から40kgf/cm2であり、ASTM D790によって測定した屈曲弾性率(Secant 1%)が10.0kgf/cm2から30.0kgf/cm2のものであってよい。
【0047】
前記のような物性及び構成的特徴を有する本発明の一実施形態によるオレフィン系共重合体は、単一反応器において1種以上の遷移金属化合物を含むメタロセン触媒組成物の存在下で水素を連続的に投入し、オレフィン系単量体を重合させる連続溶液重合反応を介して製造され得る。
【0048】
これにより、本発明の一実施形態によるオレフィン系共重合体は、重合体内の重合体を構成する単量体のうち何れか一つの単量体由来繰り返し単位が2個以上線状に連結され構成されたブロックが形成されない。すなわち、本発明によるオレフィン系共重合体は、ブロック共重合体(block copolymer)を含まず、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternating copolymer)及びグラフト共重合体(graft copolymer)でなる群から選択されるものであってよく、より具体的にはランダム共重合体であってよい。
【0049】
具体的に、本発明のオレフィン系共重合体は、下記化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素を10から100cc/分で投入してオレフィン系単量体を重合する段階を含む製造方法により得ることができる。
【0050】
但し、本発明の一実施形態によるオレフィン系共重合体の製造において、下記遷移金属化合物の構造の範囲を特定の開示形態に限定せず、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものとして理解されなければならない。
【0051】
【化2】
前記化学式1において、
R
1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであり、
R
2aからR
2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数1から20のアルコキシ;又は炭素数6から20のアリールであり、
R
3は、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミド;炭素数6から20のアリールアミド;炭素数1から20のアルキリデン;又はハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数3から20のシクロアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ及び炭素数6から20のアリールでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであり、
R
4からR
9は、それぞれ独立して、水素;シリル;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;又は炭素数1から20のヒドロカルビルで置換された14族金属のメタロイドラジカルであり;前記R
6からR
9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて環を形成してよく、
Qは、Si、C、N、P又はSであり、
Mは、4族の遷移金属であり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキル;炭素数1から20のアルキルアミノ;炭素数6から20のアリールアミノ;又は炭素数1から20のアルキリデンである。
【0052】
本発明の一例において、前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記R1は、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数1から20のアルコキシ;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアリールアルコキシ;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであってよく、
前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数1から12のアルコキシ;又はフェニルであってよく、
前記R3は、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から12のアルコキシ及びフェニルでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであってよく、
前記R4からR9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から20のアルキル;炭素数3から20のシクロアルキル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;炭素数7から20のアリールアルキルであってよく、
前記R6からR9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5から20の脂肪族環又は炭素数6から20の芳香族環を形成してよく;前記脂肪族環又は芳香族環は、ハロゲン、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、又は炭素数6から12のアリールで置換されてよく、
前記QはSiであってよく、
前記MはTiであってよく、
前記X1及びX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;炭素数1から13のアルキルアミノ;炭素数6から12のアリールアミノ;又は炭素数1から12のアルキリデンであってよい。
【0053】
また、本発明の他の一例において、前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記R1は、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数1から12のアルコキシ;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアリールアルコキシ;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであってよく、
前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数1から12のアルコキシ;又はフェニルであってよく、
前記R3は、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数2から12のアルケニル;炭素数7から13のアルキルアリール;炭素数7から13のアリールアルキル;フェニル;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数2から12のアルケニル、炭素数1から12のアルコキシ及びフェニルでなる群から選択された1種以上で置換されたフェニルであってよく、
前記R4からR9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1から12のアルキル;炭素数3から12のシクロアルキル;炭素数6から12のアリール;炭素数7から13のアルキルアリール;又は炭素数7から13のアリールアルキルであってよく、
前記R6からR9のうち互いに隣接する2個以上は、互いに連結されて炭素数5から20の脂肪族環又は炭素数6から20の芳香族環を形成してよく;
前記脂肪族環又は芳香族環は、ハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、又は炭素数6から12のアリールで置換されてよく、
前記QはSiであってよく、
前記MはTiであってよく、
前記X1及びX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;又は炭素数2から12のアルケニルであってよい。
【0054】
また、本発明のまた他の一例において、前記化学式1の遷移金属化合物において、
前記R1は、水素又は炭素数1から12のアルキルであってよく、
前記R2aからR2eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1から12のアルキル;又は炭素数1から12のアルコキシであってよく、
前記R3は、水素;炭素数1から12のアルキル;又はフェニルであってよく、
前記R4及びR5は、それぞれ独立して、水素;又は炭素数1から12のアルキルであってよく、
前記R6からR9は、それぞれ独立して、水素又はメチルであってよく、
前記QはSiであってよく、
前記MはTiであってよく、
前記X1及びX2は、それぞれ独立して、水素又は炭素数1から12のアルキルであってよい。
【0055】
前記化学式1で表される化合物は、具体的に下記化学式1-1から1-10で表される化合物のうち何れか一つであってよい。
【0056】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0057】
以外にも、前記化学式1で定義された範囲において多様な構造を有する化合物であってよい。
【0058】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、テトラヒドロキノリンが導入されたシクロペンタジエニルリガンドにより金属サイトが連結されているため、構造的にCp-M-Nの角度は狭く、モノマーが接近するQ3-M-Q4の角度は広く維持する特徴を有する。また、環状の結合によりCp、テトラヒドロキノリン、窒素及び金属サイトが順に連結され、さらに安定且つ固い5角形のリング構造を成す。したがって、このような化合物をメチルアルミノキサン又はB(C6F5)3のような助触媒と反応させて活性化した後にオレフィン重合に適用時、高い重合温度でも高活性、高分子量及び高共重合性等の特徴を有するオレフィン系共重合体を重合することが可能である。
【0059】
本明細書で定義された各置換基に対して詳しく説明する。
【0060】
本明細書に用いられる用語「ヒドロカルビル(hydrocarbyl group)」は、他の言及がなければ、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール又はアリールアルキル等、その構造に構わずに炭素及び水素のみでなる炭素数1から20の1価の炭化水素基を意味する。
【0061】
本明細書に用いられる用語「ハロゲン」は、他の言及がなければ、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
【0062】
本明細書に用いられる用語「アルキル」は、他の言及がなければ、直鎖又は分枝鎖の炭化水素基を意味する。
【0063】
本明細書に用いられる用語「アルケニル」は、他の言及がなければ、直鎖又は分枝鎖のアルケニル基を意味する。
【0064】
前記分枝鎖は、炭素数1から20のアルキル;炭素数2から20のアルケニル;炭素数6から20のアリール;炭素数7から20のアルキルアリール;又は炭素数7から20のアリールアルキルであってよい。
【0065】
本発明の一例によれば、前記アリール基は、炭素数6から20のものが好ましく、具体的に、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジン、ジメチルアニリン、アニソール等があるが、これだけ例として限定されるのではない。
【0066】
前記アルキルアリール基は、前記アルキル基によって置換されたアリール基を意味する。
【0067】
前記アリールアルキル基は、前記アリール基によって置換されたアルキル基を意味する。
【0068】
前記環(又はヘテロ環基)は、炭素数5から20個の環原子を有して1個以上のヘテロ原子を含む1価の脂肪族又は芳香族の炭化水素基を意味し、単一環又は2以上の環の縮合環であってよい。また、前記ヘテロ環基は、アルキル基で置換されるか置換されなくてよい。これらの例としては、インドリン、テトラヒドロキノリン等が挙げられるが、本発明がこれだけに限定されるのではない。
【0069】
前記アルキルアミノ基は、前記アルキル基によって置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等があるが、これらだけに限定されるのではない。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記アリール基は、炭素数6から20のものが好ましく、具体的に、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジン、ジメチルアニリン、アニソール等があるが、これだけ例として限定されるのではない。
【0071】
前記化学式1の遷移金属化合物は、触媒の構造的な特徴上、低密度のポリエチレンだけでなく多量のアルファ-オレフィンが導入可能であるため、密度0.89g/cc以下、より具体的には密度0.85から0.89g/cc水準の低密度ポリオレフィン共重合体の製造が可能である。
【0072】
前記化学式1の遷移金属化合物は、単独で、又は前記化学式1の遷移金属化合物以外に下記化学式2、化学式3、及び化学式4で表される助触媒化合物のうち1種以上をさらに含む組成物の形態であって、重合反応の触媒として用いられてよい。前記助触媒化合物は、前記化学式1の遷移金属化合物の活性化を助けることができる。
【0073】
[化学式2]
-[Al(R10)-O]a-
[化学式3]
A(R10)3
[化学式4]
[L-H]+[W(D)4]-又は[L]+[W(D)4]-
前記化学式2から4において、
R10は、互いに同一か異なっていてよく、それぞれ独立して、ハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル、及びハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビルでなる群から選択され、
Aは、アルミニウム又はホウ素であり、
Dは、それぞれ独立して1以上の水素原子が置換基で置換されてよい炭素数6から20のアリール又は炭素数1から20のアルキルであり、このとき、前記置換基は、ハロゲン、炭素数1から20のヒドロカルビル、炭素数1から20のアルコキシ及び炭素数6から20のアリールオキシでなる群から選択される少なくとも何れか一つであり、
Hは、水素原子であり、
Lは、中性又は陽イオン性ルイス酸であり、
Wは、13族元素であり、
aは、2以上の整数である。
【0074】
前記化学式2で表される化合物の例としては、メチルアルミノキサン(MAO)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン等のアルキルアルミノキサンが挙げられ、また、前記アルキルアルミノキサンが2種以上混合された改質されたアルキルアルミノキサンが挙げられ、具体的にメチルアルミノキサン、改質メチルアルミノキサン(MMAO)であってよい。
【0075】
前記化学式3で表される化合物例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルボロン、トリエチルボロン、トリイソブチルボロン、トリプロピルボロン、トリブチルボロン等が挙げられ、具体的に、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムのうち選択されてよい。
【0076】
前記化学式4で表される化合物例としては、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタテトラフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレートまたはトリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート等が挙げられる。
【0077】
前記触媒組成物は、第一の方法として1)前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式2又は化学式3で表される化合物を接触させて混合物を得る段階と、2)前記混合物に前記化学式4で表される化合物を添加する段階とを含む方法で製造されてよい。
【0078】
また、前記触媒組成物は、第二の方法として前記化学式1で表される遷移金属化合物に前記化学式2で表される化合物を接触させる方法で製造されてよい。
【0079】
前記触媒組成物の製造方法のうち第一の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式2又は化学式3で表される化合物のモル比率は、1/5,000から1/2であってよく、具体的に1/1,000から1/10であってよく、より具体的に1/500から1/20であってよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式2又は化学式3で表される化合物のモル比率が1/2を超過する場合には、アルキル化剤の量が非常に少ないため、金属化合物のアルキル化が完全に行われない問題があり、モル比率が1/5,000未満の場合には、金属化合物のアルキル化は行われるが、残っている過量のアルキル化剤と前記化学式4の化合物である活性化剤間の副反応により、アルキル化された金属化合物の活性化が完全に行われない問題がある。また、前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比率は1/25から1であってよく、具体的に1/10から1であってよく、より具体的に1/5から1であってよい。前記化学式1で表される遷移金属化合物/前記化学式4で表される化合物のモル比率が1を超過する場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われないため生成される触媒組成物の活性度が下がり、モル比率が1/25未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤で触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下する虞がある。
【0080】
前記触媒組成物の製造方法のうち第二の方法の場合に、前記化学式1で表される遷移金属化合物/化学式2で表される化合物のモル比率は1/10,000から1/10であってよく、具体的に1/5,000から1/100であってよく、より具体的に1/3,000から1/500であってよい。前記モル比率が1/10を超過する場合には、活性化剤の量が相対的に少なくて金属化合物の活性化が完全に行われないため生成される触媒組成物の活性度が下がり、1/10,000未満の場合には、金属化合物の活性化が完全に行われるが、残っている過量の活性化剤で触媒組成物の単価が経済的でないか、生成される高分子の純度が低下する虞がある。
【0081】
前記触媒組成物の製造時に反応溶媒として、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等のような炭化水素系溶媒、又はベンゼン、トルエン等のような芳香族系溶媒が用いられてよい。
【0082】
また、前記触媒組成物は、前記遷移金属化合物と助触媒化合物を担体に担持された形態で含んでよい。
【0083】
前記担体は、メタロセン系触媒において担体として用いられるものであれば特別な制限なく使用可能である。具体的に、前記担体は、シリカ、シリカ-アルミナ又はシリカ-マグネシア等であってよく、これらのうち何れか一つ又は二つ以上の混合物が用いられてよい。
【0084】
この中でも前記担体がシリカの場合、シリカ担体と前記化学式1のメタロセン化合物の官能基が化学的に結合を形成するため、オレフィン重合過程で表面から遊離されて出る触媒が殆どない。その結果、オレフィン系共重合体の製造工程において反応器の壁面や重合体の粒子同士が凝集する汚染(ファウリング)の発生を防止できる。また、前記シリカ担体を含む触媒の存在下で製造されるオレフィン系共重合体は、重合体の粒子形態及び見掛け密度が優秀である。
【0085】
より具体的に、前記担体は、高温乾燥等の方法を介して表面に反応性が大きいシロキサン基を含む、高温乾燥されたシリカ又はシリカ-アルミナ等であってよい。
【0086】
前記担体は、Na2O、K2CO3、BaSO4又はMg(NO3)2等のような酸化物、炭酸塩、硫酸塩又は硝酸塩成分をさらに含んでよい。
【0087】
前記担体の乾燥温度は、200から800℃が好ましく、300から600℃がより好ましく、300から400℃が最も好ましい。前記担体の乾燥温度が200℃未満の場合、水分があまりにも多いため表面の水分と助触媒が反応するようになり、800℃を超過する場合には、担体表面の気孔が結合して表面積が減り、また、表面にヒドロキシ基が多く除去され、シロキサン基だけ残るようになり助触媒との反応部位が減少するため好ましくない。
【0088】
また、前記担体表面のヒドロキシ基の量は、0.1から10mmol/gが好ましく、0.5から5mmol/gである時より好ましい。前記担体表面にあるヒドロキシ基の量は、担体の製造方法及び条件又は乾燥条件、例えば、温度、時間、真空又はスプレー乾燥等によって調節できる。
【0089】
一方、前記オレフィン系共重合体の重合反応は、前記の触媒組成物の存在下で水素を連続して投入し、オレフィン系単量体を連続重合させることで行われてよい。
【0090】
前記オレフィン単量体の重合反応は、不活性溶媒下で行われてよく、前記不活性溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n-ヘキサン、1-ヘキセン、1-オクテンが挙げられ、これに制限されない。
【0091】
前記オレフィン系共重合体の重合は、約25から約500℃の温度及び約1から約100kgf/cm2の圧力における反応を介して行われてよい。
【0092】
具体的に、前記オレフィン系共重合体の重合は、約25から約500℃の温度で行われてよく、具体的に80から250℃、より好ましくは100から200℃の温度で行われてよい。また、重合時の反応圧力は、1kgf/cm2から150kgf/cm2、好ましくは1kgf/cm2から120kgf/cm2、より好ましくは5kgf/cm2から100kgf/cm2であってよい。
【0093】
本発明のオレフィン系共重合体は、成形体の製造に有用に用いられる。
【0094】
前記成形体は、具体的にブローモールディング成形体、インフレーション成形体、キャスト成形体、押出ラミネート成形体、押出成形体、発泡成形体、射出成形体、シート(sheet)、フィルム(film)、繊維、モノフィラメント、又は不織布等であってよい。
【実施例】
【0095】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、色々と異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0096】
製造例1:遷移金属化合物1の製造
[リガンド化合物の製造]
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの合成>
【化13】
クロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランの製造
250mLのシュレンクフラスコに1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン10g(1.0eq、49.925mmol)と100mLのTHFを入れ、n-BuLi 22ml(1.1eq、54.918mmol、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で3時間撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液をジクロロ(メチル)(フェニル)シラン8.1ml(1.0eq、49.925mmol)と70mLのTHFが入っているシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーション後、常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0097】
[遷移金属化合物の製造]
N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの製造
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランヘキサン溶液100mlにt-BuNH2 42ml(8eq、399.4mmol)を常温で投入した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン150mlで抽出した。溶媒の乾燥後に黄色い固体13.36g(68%、dr=1:1)を得た。
【0098】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.93(t,2H),7.79(d,1H),7.71(d,1H),7.60(d,2H),7.48(d,2H),7.40~7.10(m,10H,aromatic),3.62(s,1H), 3.60(s,1H),2.28(s,6H),2.09(s,3H),1.76(s,3H),1.12(s,18H),0.23(s,3H),0.13(s,3H)
【0099】
【化14】
100mLのシュレンクフラスコに前記化学式2-4のリガンド化合物4.93g(12.575mmol、1.0eq)とトルエン50ml(0.2M)を入れ、n-BuLi 10.3ml(25.779mmol、2.05eq、2.5M inヘキサン)を-30℃で滴加した後、常温で一晩中撹拌した。撹拌後にMeMgBr 12.6ml(37.725mmol、3.0eq、3.0M inジエチルエーテル)を滴加した後、TiCl
4 13.2ml(13.204mmol、1.05eq、1.0M inトルエン)を順に入れて常温で一晩中撹拌した。撹拌してから真空乾燥した後、ヘキサン150mlで抽出し、50mlまで溶媒を除去してからDME 4ml(37.725mmol、3.0eq)を滴加した後、常温で一晩中撹拌した。再び真空乾燥した後、ヘキサン150mlで抽出した。溶媒を乾燥してから茶色の固体2.23g(38%、dr=1:0.5)を得た。
【0100】
1H NMR(CDCl3,500MHz):δ7.98(d,1H),7.94(d,1H),7.71(t,6H),7.50~7.30(10H),2.66(s,3H),2.61(s,3H),2.15(s,3H),1.62(s,9H),1.56(s,9H),1.53(s,3H),0.93(s,3H),0.31(s,3H),0.58(s,3H),0.51(s,3H),-0.26(s,3H),-0.39(s,3H)
【0101】
製造例2:遷移金属化合物2の製造
[リガンド化合物の製造]
【化15】
100mLのシュレンクフラスコにクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-ジメチルシラン4.65g(15.88mmol)を定量して添加した後、ここに80mLのTHFを投入した。常温でtBuNH
2(4eq、6.68mL)を投入した後、常温で3日間反応させた。反応後、THFを除去した後、ヘキサンで濾過した。溶媒を乾燥してから黄色い液体を4.50g(86%)の収率で得た。
【0102】
1H-NMR(in CDCl3,500MHz):7.99(d,1H),7.83(d,1H),7.35(dd,1H),7.24(dd,1H),3.49(s,1H),2.37(s,3H),2.17(s,3H),1.27(s,9H),0.19(s,3H),-0.17(s,3H).
【0103】
[遷移金属化合物の製造]
【化16】
50mLのシュレンクフラスコに前記で製造されたN-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-ジメチルシルランアミン(1.06g、3.22mmol/1.0eq)及びMTBE 16.0mL(0.2M)を入れ、先に撹拌させた。-40℃でn-BuLi(2.64mL、6.60mmol/2.05eq、2.5M in THF)を入れ、常温で一晩中反応させた。その後、-40℃でMeMgBr(2.68mL、8.05mmol/2.5eq、3.0M inジエチルエーテル)をゆっくり滴加した後、TiCl
4(2.68mL、3.22mmol/1.0eq、1.0M inトルエン)を順に入れて常温で一晩中反応させた。その後、反応混合物を、ヘキサンを用いてセライト(Celite)を通過し濾過した。溶媒を乾燥してから茶色の固体を1.07g(82%)の収率で得た。
【0104】
1H-NMR(in CDCl3,500MHz):7.99(d,1H),7.68(d,1H),7.40(dd,1H),7.30(dd,1H),3.22(s,1H),2.67(s,3H),2.05(s,3H),1.54(s,9H),0.58(s,3H),0.57(s,3H),0.40(s,3H),-0.45(s,3H).
【0105】
実施例1
1.5Lのオートクレーブ連続工程反応器にヘキサン溶媒(5kg/時間)と 1-オクテン(2kg/時間)を満たした後、反応器上部の温度を136℃に予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.05mmol/分)、触媒として前記製造例1で得た遷移金属化合物(0.45μmol/分)、及びジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(1.35μmol/分)を同時に反応器へ投入した。次いで、前記オートクレーブ反応器の中にエチレン(0.87kg/h)及び水素ガス(28cc/分)を投入し、89barの圧力で連続工程において136℃で30分以上維持させて共重合反応を行い、共重合体を得た。その後、12時間以上乾燥してから物性を測定した。
【0106】
実施例2から8
下記表1に示した通り、各物質の含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一の方法で共重合体を製造した。
【0107】
比較例1から7
比較例1にはSolumer 8730L(SKイノベーション社製)を購入して用い、比較例3にはDF7350(三井社製)を購入して用い、比較例4にはLC875(LG化学製)を購入して用いた。
【0108】
比較例2、5及び6は、触媒として前記製造例2で得た遷移金属化合物を用い、下記表1に示した通り各物質の含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一の方法で共重合体を製造した。
【0109】
比較例7は、触媒として前記製造例1で得た遷移金属化合物を用い、下記表1に示した通り水素ガスを投入せず、各物質の含量を変化させたことを除いては、実施例1と同一の方法で共重合体を製造した。
【0110】
【0111】
実験例1
前記実施例1から8、及び比較例1から7の共重合体に対して下記方法によって物性を評価し、下記表2に示した。
【0112】
1)重合体の密度(Density)
ASTM D-792で測定した。
【0113】
2)重合体の溶融指数(Melt Index、MI)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16Kgの荷重)で測定した。
【0114】
3)重量平均分子量(g/mol)及び分子量分布(MWD)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)をそれぞれ測定し、また、重量平均分子量を数平均分子量で分けて分子量分布を計算した。
-カラム:PL Olexis
-溶媒:トリクロロベンゼン(TCB:Trichlorobenzene)
-流速:1.0ml/分
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(3次関数で補正)
【0115】
【0116】
実験例2
前記実施例1から8、及び比較例1から4の共重合体に対し、下記方法により炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル、ビニリデン、全ての不飽和官能基数を測定して下記表3に示した。
【0117】
先ず、試料に存在し得る残留1-オクテン又は1-ブテンを除去ためにNMR分析前に重合体を再沈殿して準備した。詳しくは、重合体1gを70℃のクロロホルムに完全に溶解させ、その結果として収得した重合体溶液を300mlのメタノールに撹拌してゆっくり入れ、重合体を再沈殿させた後、再沈殿された重合体を常温で真空乾燥した。前記過程をもう1回繰り返して残留1-オクテン又は1-ブテンが除去された重合体を収得した。
【0118】
前記で収得した重合体の試料50mgを1mlのTCE-d2溶媒に溶解させた。Bruker AVANCEIII 500MHz NMR装備を用いて常温で3秒の緩和時間、30゜のパルス角度で2048回測定した。コモノマーの含量は0.5~1.5ppm領域のエチレン、1-ブテン、1-オクテンピークの積分値を用いて計算した。二重結合の個数は4.5~6.0ppm領域の二重結合の積分値を基準に計算した。Macromolecules 2014,47,3782-3790を参考にした。
【0119】
【0120】
実験例3
また、前記実施例1、5、7及び比較例1から6のオレフィン系共重合体に対し、下記方法により引張強度、伸び率、屈曲弾性率を測定して下記表4に示した。
【0121】
1)重合体の引張強度、伸び率
前記実施例1、5、7及び比較例1から6のオレフィン系共重合体をそれぞれ押出してペレット状に製造した後、ASTM D638(50mm/分)に準じて破砕時の引張強度及び引張伸び率を測定した。
【0122】
2)重合体の屈曲弾性率
屈曲弾性率(flexural modulus)(Secant1%)は、ASTM D790によって測定した。
【0123】
【0124】
本発明によるオレフィン系共重合体は低密度オレフィン系共重合体であって、従来のオレフィン系共重合体と同等な密度及び溶融指数で増加した引裂強度、伸び率及び屈曲弾性率を示し得る。具体的に、前記表3において同一の共単量体(アルファ-オレフィン単量体)を用いて製造され、同等な密度とMIを示すオレフィン系共重合体に対にして比較すると、実施例のオレフィン系共重合体は、炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル、total Vが以下の(a)及び(b)を全て満たす一方、比較例のオレフィン系共重合体は、これを満たしていないことが確認できる。
(a)ビニレン/total V=0.1から0.7
(b)ビニレン/ビニル=0.8から1.6
【0125】
その結果、実施例のオレフィン系共重合体は、比較例のオレフィン系共重合体に比べ同等であるか優れた伸び率とともに、より高い引裂強度及び屈曲弾性率を示すことが確認できる。例えば、実施例1のオレフィン系共重合体は、比較例1及び比較例2のオレフィン系共重合体に比べ高い引裂強度及び屈曲弾性率を示しており、また、分子量分布(MWD)も実施例1のオレフィン系共重合体が比較例1及び比較例2のオレフィン系共重合体に比べ小さい値を示している。また、実施例5のオレフィン系共重合体は、比較例4から5のオレフィン系共重合体に比べ高い引裂強度及び屈曲弾性率を示している。また、実施例7のオレフィン系共重合体を比較例6のオレフィン系共重合体と比べると、より優れた伸び率、引裂強度、屈曲強度を有することが確認できる。
【0126】
このような実験を介し、本発明によるオレフィン系共重合体は、炭素原子1,000個当たりの不飽和官能基数(total V)が0.8以下であり、核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル、total Vが前記(a)及び(b)を全て満たすので、比較例1、比較例3及び比較例4のような従来のオレフィン系共重合体に比べ高い引裂強度、伸び率及び屈曲弾性率を示すことが確認できた。
【0127】
特に、実施例8と比較例7のオレフィン系共重合体は、同一の触媒組成物の存在下で各物質の含量を同一に用いたとしても、水素の投入可否によって物性に差異が表われ、具体的に比較例7のオレフィン系共重合体は、低いMIを示し、核磁気共鳴分光分析を介して測定された炭素原子1,000個当たりのビニレン、ビニル、total Vの値を介して計算したビニレン/total Vとビニレン/ビニルの値がそれぞれ0.091と0.389で前記(a)及び(b)を満たすことができなかった。
【0128】
すなわち、本発明によるオレフィン系共重合体は、化学式1の遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒組成物の存在下で、水素を10から100cc/分で投入し、オレフィン系単量体を重合して製造されたものであるため、前記水素がオレフィン系共重合体内の不飽和官能基数を調節して、(a)ビニレン/total V及び(b)ビニレン/ビニルの含量比を全て満たすことができるが、比較例2及び5から7のオレフィン系共重合体は、(b)ビニレン/ビニルの含量比を満たすことができず、これにより本発明の実施例によるオレフィン系共重合体は、引張強度、屈曲弾性率及び伸び率においてより優れた特性を示すことができた。