(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】キャリア板の除去方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2018152308
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】木内 逸人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222310(JP,A)
【文献】特開2012-004522(JP,A)
【文献】特表2015-505164(JP,A)
【文献】特開2010-225976(JP,A)
【文献】特開2017-204555(JP,A)
【文献】特開2015-228483(JP,A)
【文献】特開2016-219634(JP,A)
【文献】特開2018-14361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア板の表面に仮接着層を介して設けられたワークから該キャリア板を除去するキャリア板の除去方法であって、
該キャリア板を第1保持手段で保持して該ワークを露出させる第1保持ステップと、
該第1保持ステップを実施した後、該ワーク側から該キャリア板の外周縁に沿って該キャリア板を加工し、該キャリア板の外周縁に裏面側が表面側より外向きに突出した段差部を形成する段差部形成ステップと、
該段差部形成ステップを実施した後、該ワークを第2保持手段で保持して該キャリア板を露出させる第2保持ステップと、
該第2保持ステップを実施した後、除去手段で該段差部
を下方から支持して該除去手段を上昇させ、該キャリア板を該ワークから離れる方向に移動させることで該ワークから該キャリア板を除去するキャリア板除去ステップと、を備えたことを特徴とするキャリア板の除去方法。
【請求項2】
該キャリア板除去ステップでは、除去手段で該段差部に力を加えながら該ワークと該キャリア板との間に流体を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項3】
該キャリア板除去ステップを実施した後、該ワークから除去された該キャリア板を該除去手段で外部に搬出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャリア板の除去方法。
【請求項4】
該キャリア板及び該ワークは、平面視で矩形状に形成されており、
該キャリア板除去ステップでは、該キャリア板の角に相当する位置で該段差部を該除去手段で下方から支持して該除去手段を上昇させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のキャリア板の除去方法。
【請求項5】
該仮接着層は、該キャリア板除去ステップにおいて該キャリア板側に密着した第1部分と該ワーク側に密着した第2部分とに分離されるように、複数の膜を重ねて形成されており、
該段差部形成ステップでは、該段差部を形成すると同時に、該仮接着層の該段差部に対応する領域を除去することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のキャリア板の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着層を介してキャリア板に重なるワークからキャリア板を除去するキャリア板の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機やパーソナルコンピュータに代表される電子機器では、電子回路等のデバイスを備えるデバイスチップが必須の構成要素になっている。デバイスチップは、例えば、シリコン等の半導体材料でなるウェーハの表面を分割予定ライン(ストリート)で複数の領域に区画し、各領域にデバイスを形成した後、この分割予定ラインに沿ってウェーハを分割することにより得られる。
【0003】
上述のような方法で得られたデバイスチップは、例えば、CSP(Chip Size Package)用のマザー基板に固定され、ワイヤボンディング等の方法で電気的に接続された後にモールド樹脂で封止される。このように、モールド樹脂によってデバイスチップを封止してパッケージデバイスを形成することで、衝撃、光、熱、水等の外的な要因からデバイスチップを保護できるようになる。
【0004】
近年では、ウェーハレベルの再配線技術を用いてデバイスチップの領域外にパッケージ端子を形成するFOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)と呼ばれるパッケージ技術が採用され始めている(例えば、特許文献1参照)。また、ウェーハよりサイズの大きいパネル(代表的には、液晶パネルの製造に用いられるガラス基板)のレベルでパッケージデバイスを一括して製造するFOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)と呼ばれるパッケージ技術も提案されている。
【0005】
FOPLPでは、例えば、仮の基板となるキャリア板の表面に仮接着層を介して配線層(RDL:Redistribution Layer)を形成し、この配線層にデバイスチップを接合する。次に、デバイスチップをモールド樹脂で封止して、パッケージパネルを得る。その後、パッケージパネルを研削等の方法によって薄くした上で、このパッケージパネルを分割することにより、パッケージデバイスが完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したFOPLPでは、例えば、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割した後に、このパッケージデバイスからキャリア板が除去される。具体的には、キャリア板から各パッケージデバイスをピックアップする。ところが、パッケージデバイスのサイズが小さいと、このパッケージデバイスをキャリア板からピックアップするのは難しい。
【0008】
一方で、パッケージパネルをパッケージデバイスへと分割する前に、パッケージパネルからキャリア板を剥離、除去することも考えられる。しかしながら、仮接着層にはある程度に強い接着力があるので、パッケージパネルやキャリア板を損傷させることなくキャリア板をパッケージパネルから剥離するのが難しかった。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パッケージパネル等のワークからキャリア板を容易に除去できるキャリア板の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、キャリア板の表面に仮接着層を介して設けられたワークから該キャリア板を除去するキャリア板の除去方法であって、該キャリア板を第1保持手段で保持して該ワークを露出させる第1保持ステップと、該第1保持ステップを実施した後、該ワーク側から該キャリア板の外周縁に沿って該キャリア板を加工し、該キャリア板の外周縁に裏面側が表面側より外向きに突出した段差部を形成する段差部形成ステップと、該段差部形成ステップを実施した後、該ワークを第2保持手段で保持して該キャリア板を露出させる第2保持ステップと、該第2保持ステップを実施した後、除去手段で該段差部を下方から支持して該除去手段を上昇させ、該キャリア板を該ワークから離れる方向に移動させることで該ワークから該キャリア板を除去するキャリア板除去ステップと、を備えたキャリア板の除去方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様において、該キャリア板除去ステップでは、除去手段で該段差部に力を加えながら該ワークと該キャリア板との間に流体を吹き付けることが好ましい。また、該キャリア板除去ステップを実施した後、該ワークから除去された該キャリア板を該除去手段で外部に搬出することが好ましい。また、該キャリア板及び該ワークは、平面視で矩形状に形成されており、該キャリア板除去ステップでは、該キャリア板の角に相当する位置で該段差部を該除去手段で下方から支持して該除去手段を上昇させることが好ましい。また、該仮接着層は、該キャリア板除去ステップにおいて該キャリア板側に密着した第1部分と該ワーク側に密着した第2部分とに分離されるように、複数の膜を重ねて形成されており、該段差部形成ステップでは、該段差部を形成すると同時に、該仮接着層の該段差部に対応する領域を除去することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係るキャリア板の除去方法では、ワーク側からキャリア板の外周縁に沿ってキャリア板を加工し、キャリア板の外周縁に裏面側が表面側より外向きに突出した段差部を形成する。よって、ワークを保持した状態で段差部に力を加えてキャリア板をワークから離れる方向に移動させることで、ワークからキャリア板を容易に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(A)は、キャリア板とワークとを含む複合基板の構成例を示す断面図であり、
図1(B)は、第1保持ステップについて示す断面図である。
【
図2】
図2(A)は、段差部形成ステップについて示す断面図であり、
図2(B)は、キャリア板に段差部が形成された状態を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、第2保持ステップについて示す断面図であり、
図3(B)は、キャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
【
図4】
図4(A)は、第1変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図であり、
図4(B)は、第2変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
【
図5】
図5(A)は、第3変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図であり、
図5(B)は、第4変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。本実施形態に係るキャリア板の除去方法は、第1保持ステップ(
図1(B)参照)、段差部形成ステップ(
図2(A)及び
図2(B)参照)、第2保持ステップ(
図3(A)参照)、及びキャリア板除去ステップ(
図3(B)参照)を含む。
【0015】
第1保持ステップでは、キャリア板とワークとを含む複合基板のキャリア板側を保持してワーク側を露出させる。段差部形成ステップでは、キャリア板の外周縁に沿って切削ブレードを切り込ませ、このキャリア板の外周縁に段差部を形成する。第2保持ステップでは、複合基板のワーク側を保持してキャリア板側を露出させる。
【0016】
キャリア板除去ステップでは、キャリア板の段差部に力を加えて、キャリア板をワークから離れる方向に移動させることで、ワークからキャリア板を除去する。以下、本実施形態に係るキャリア板の除去方法について詳述する。
【0017】
図1(A)は、本実施形態に係るキャリア板の除去方法で使用される複合基板1の構成例を示す断面図である。複合基板1は、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の絶縁体材料で形成されたキャリア板3を含んでいる。このキャリア板3は、例えば、概ね平坦な第1面(表面)3aと、第1面3aとは反対側の第2面(裏面)3bとを有し、第1面3a側又は第2面3b側から見た平面視で矩形状に構成されている。キャリア板3の厚みは、例えば、2mm以下、代表的には、1.1mmである。
【0018】
なお、本実施形態では、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラス等の絶縁体材料でなるキャリア板3を用いているが、キャリア板3の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。例えば、半導体、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる板等をキャリア板3として用いることもできる。円盤状の半導体ウェーハ等をキャリア板3としても良い。
【0019】
キャリア板3の第1面3a側には、仮接着層5を介してワーク7が配置されている。この仮接着層5は、例えば、金属膜や絶縁体膜等を重ねることによって第1面3aの概ね全体に設けられ、キャリア板3とワーク7とを接着する機能を持つ。仮接着層5の厚みは、例えば、20μm以下、代表的には、5μmである。後述するキャリア板除去ステップでワーク7からキャリア板3を剥離、除去する際には、この仮接着層5が、キャリア板3側に密着した第1部分と、ワーク7側に密着した第2部分とに分離される。
【0020】
ワーク7は、例えば、パッケージパネルやパッケージウェーハ等とも呼ばれ、仮接着層5に接する配線層(RDL)と、配線層に接合された複数のデバイスチップと、各デバイスチップを封止するモールド樹脂層とを含む。このワーク7は、例えば、平面視でキャリア板3と概ね同じ大きさ、形状に構成されている。ワーク7の厚みは、例えば、1.5mm以下、代表的には、0.6mmである。
【0021】
なお、このワーク7の第1面(表面)7a側は、研削等の方法で加工されても良い。また、ワーク7内で隣接するデバイスチップの間の領域には、分割予定ライン(切断予定ライン)が設定される。この分割予定ラインに沿ってワーク7を切断することで、各デバイスチップに対応する複数のパッケージデバイスが得られる。ただし、ワーク7の材質、形状、構造、大きさ等に特段の制限はない。
【0022】
本実施形態に係るキャリア板の除去方法では、まず、上述した複合基板1のキャリア板3側を保持してワーク7側を露出させる第1保持ステップを行う。
図1(B)は、第1保持ステップについて示す断面図である。なお、
図1(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0023】
この第1保持ステップは、
図1(B)等に示す切削装置2を用いて行われる。切削装置2は、複合基板1を保持するためのチャックテーブル(第1保持手段、第1保持ユニット)4を備えている。チャックテーブル4は、例えば、ステンレスに代表される金属材料でなる円筒状の枠体6と、多孔質材料でなり枠体6の上部に配置される保持板8とを含む。
【0024】
保持板8の上面は、複合基板1のキャリア板3側を吸引、保持するための保持面8aとなっている。この保持板8の下面側は、枠体6の内部に設けられた流路6aやバルブ10等を介して吸引源12に接続されている。そのため、バルブ10を開けば、吸引源12の負圧を保持面8aに作用させることができる。
【0025】
このチャックテーブル4(枠体6)は、モータ等の回転駆動源(不図示)に連結されており、上述した保持面8aに対して概ね垂直な回転軸の周りに回転する。また、チャックテーブル4(枠体6)は、加工送り機構(不図示)によって支持されており、上述した保持面8aに対して概ね平行な加工送り方向に移動する。
【0026】
第1保持ステップでは、
図1(B)に示すように、例えば、キャリア板3の第2面3bをチャックテーブル4の保持面8aに接触させる。そして、バルブ10を開いて、吸引源12の負圧を保持面8aに作用させる。これにより、複合基板1のキャリア板3側がチャックテーブル4に吸引、保持される。すなわち、複合基板1のワーク7は、上方に露出した状態となる。
【0027】
第1保持ステップの後には、キャリア板3の外周縁に段差部を形成する段差部形成ステップを行う。
図2(A)は、段差部形成ステップについて示す断面図であり、
図2(B)は、キャリア板3に段差部3cが形成された状態を示す断面図である。なお、
図2(A)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0028】
段差部形成ステップは、引き続き切削装置2を用いて行われる。
図2(A)に示すように、チャックテーブル4の上方には、切削ユニット14が配置されている。切削ユニット14は、保持面8aに対して概ね平行な回転軸となるスピンドル16を備えている。スピンドル16の一端側には、結合材に砥粒が分散されてなる環状の切削ブレード18が装着されている。
【0029】
スピンドル16の他端側には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されており、スピンドル16の一端側に装着された切削ブレード18は、回転駆動源から伝わる力によって回転する。この切削ユニット14は、例えば、昇降機構(不図示)と割り出し送り機構(不図示)とによって支持されており、保持面8aに対して概ね垂直な鉛直方向と、鉛直方向及び加工送り方向に対して概ね垂直な割り出し送り方向とに移動する。
【0030】
段差部形成ステップでは、まず、複合基板1を保持したチャックテーブル4を回転させて、加工の対象となるキャリア板3の外周縁の一部(平面視で矩形の一辺に相当する部分)を、加工送り方向に対して概ね平行にする。次に、チャックテーブル4と切削ユニット14とを相対的に移動させて、上述した外周縁の一部の延長線上方に切削ブレード18を位置付ける。
【0031】
また、切削ブレード18の下端を、キャリア板3の第1面3aより低く、第2面3bより高い位置に位置付ける。その後、切削ブレード18を回転させながら、チャックテーブル4を加工送り方向に移動させる。これにより、切削ブレード18を第1面3a側(ワーク7側)からキャリア板3の外周縁に沿って第2面3bに達しない深さまで切り込ませ、第2面3b側が第1面3a側より外向き(第1面3a又は第2面3bに対して平行な方向において外向き)に突出した段差部3cを形成できる。
【0032】
キャリア板3の外周縁と切削ブレード18との重なりの幅(すなわち、形成される段差部3cの幅、又は突出量)は、ワーク7から切り出されるパッケージデバイス等に影響の出ない範囲で設定される。例えば、ワーク7の外周に設定される余剰領域(外周余剰領域)の幅が広い場合には、キャリア板3の外周縁と切削ブレード18との重なりの幅(段差部3cの幅)も広く設定できる。キャリア板3の除去し易さ等を考慮すると、段差部3cの幅は、例えば、0.2mm以上3mm以下に設定されることが好ましい。
【0033】
上述のように、仮接着層5及びワーク7は、平面視でキャリア板3と概ね同じ大きさ、形状に構成されている。そのため、切削ブレード18を第1面3a側(ワーク7側)からキャリア板3の外周縁に切り込ませると、仮接着層5及びワーク7の対応する領域も同時に切削、除去される。キャリア板3の外周縁の一部に段差部3cを形成した後には、同様の手順を繰り返し、キャリア板3の外周縁の他の部分にも段差部3cを形成する。キャリア板3の外周縁の全体に段差部3cが形成されると、段差部形成ステップは終了する。
【0034】
なお、本実施形態では、キャリア板3の外周縁の全体に段差部3cを形成しているが、段差部3cは、少なくともキャリア板3の外周縁の一部に形成されていれば良い。また、キャリア板3やワーク7が平面視で円形(すなわち、円盤状)の場合には、例えば、切削ブレード18をキャリア板3の外周縁に切り込ませながらチャックテーブル4を回転させることで、キャリア板3の外周縁に沿って段差部3cを形成できる。
【0035】
段差部形成ステップの後には、複合基板1のワーク7側を保持してキャリア板3側を露出させる第2保持ステップを行う。
図3(A)は、第2保持ステップについて示す断面図である。なお、
図3(A)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0036】
第2保持ステップは、
図3(A)等に示す除去装置22を用いて行われる。除去装置22は、複合基板1を保持するためのチャックテーブル(第2保持手段、第2保持ユニット)24を備えている。チャックテーブル24の構造等は、上述した切削装置2のチャックテーブル4と概ね同じである。
【0037】
すなわち、チャックテーブル24は、ステンレスに代表される金属材料でなる円筒状の枠体26と、多孔質材料でなり枠体26の上部に配置される保持板28とを含む。保持板28の上面は、複合基板1のワーク7側を吸引、保持するための保持面28aとなっている。この保持板28の下面側は、枠体26の内部に設けられた流路26aやバルブ30等を介して吸引源32に接続されている。そのため、バルブ30を開けば、吸引源32の負圧を保持面28aに作用させることができる。
【0038】
第2保持ステップでは、
図3(A)に示すように、例えば、ワーク7の第1面7aをチャックテーブル24の保持面28aに接触させる。そして、バルブ30を開いて、吸引源32の負圧を保持面28aに作用させる。これにより、複合基板1のワーク7側がチャックテーブル24に吸引、保持される。すなわち、複合基板1のキャリア板3は、上方に露出した状態となる。
【0039】
なお、本実施形態の第2保持ステップでは、ワーク7の第1面7aをチャックテーブル24の保持面28aに対して直に接触させているが、ワーク7の第1面7aとチャックテーブル24の保持面28aとの間にポーラスシート等を介在させても良い。これにより、保持面28aとの接触に起因するワーク7の損傷や汚染等を防止できるようになる。
【0040】
第2保持ステップの後には、ワーク7からキャリア板3を除去するキャリア板除去ステップを行う。
図3(B)は、キャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。なお、
図3(B)では、一部の構成要素を機能ブロックで示している。
【0041】
キャリア板除去ステップは、引き続き除去装置22を用いて行われる。
図3(B)に示すように、チャックテーブル24の上方には、キャリア板3を除去するための複数の除去アーム(除去手段、除去ユニット)34が配置されている。各除去アーム34は、キャリア板3の段差部3cを支持できる爪状の構造を先端部に有している。また、各除去アーム34の基端側には、各除去アーム34を移動させる移動機構(不図示)が連結されている。
【0042】
キャリア板除去ステップでは、まず、各除去アーム34の爪状の先端部によってキャリア板3の段差部3cを下方から支持できる位置に、各除去アーム34を移動させる。そして、
図3(B)に示すように、移動機構によって各除去アーム34を上昇させる。すなわち、各除去アーム34でキャリア板3の段差部3cに上向きの力を加える。
【0043】
上述のように、複合基板1のワーク7側は、チャックテーブル24によって吸引、保持されている。そのため、各除去アーム34でキャリア板3の段差部3cに上向きの力を加えると、キャリア板3は仮接着層5を境にワーク7から剥離され、上昇する。すなわち、キャリア板3は、ワーク7から離れる方向に移動する。ワーク7からキャリア板3の全体が分離、除去されると、キャリア板除去ステップは終了する。
【0044】
なお、ワーク7から分離されたキャリア板3は、例えば、各除去アーム34によってそのままチャックテーブル24の外部に搬出される。もちろん、吸着パッド等を含む他の搬送ユニットを用いて分離後のキャリア板3をチャックテーブル24の外部に搬出しても良い。
【0045】
以上のように、本実施形態に係るキャリア板の除去方法では、ワーク7側からキャリア板3の外周縁に沿ってキャリア板3の裏面に達しない深さまで切削ブレード18を切り込ませ、キャリア板3の外周縁に第2面(裏面)3b側が第1面(表面)3a側より外向きに突出した段差部3cを形成する。よって、ワーク7を保持した状態で段差部3cに力を加えてキャリア板3をワーク7から離れる方向に移動させることで、ワーク7からキャリア板3を容易に除去できる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態の記載に制限されず種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、切削装置2と除去装置22とを用いてワーク7からキャリア板3を除去しているが、切削装置2と除去装置22との機能を合わせ備えた装置を用いてワーク7からキャリア板3を除去しても良い。
【0047】
より具体的には、例えば、切削装置2に対して除去装置22の除去アーム34等を組み込むことができる。もちろん、除去装置22に対して切削装置2の切削ユニット14等を組み込んでも良い。なお、これら場合には、第1保持ステップと第2保持ステップとが同じチャックテーブル(チャックテーブル4又はチャックテーブル24)を用いて行われることになる。
【0048】
また、上記実施形態では、ワーク7側からキャリア板3の外周縁に沿って切削ブレード18を切り込ませることによって段差部3cを形成しているが、例えば、ワーク7側からキャリア板3の外周縁に沿ってレーザービームを照射することによって段差部3cを形成しても良い。この場合には、切削装置2(切削ユニット14)の代わりに、少なくともキャリア板3に吸収される波長のレーザービームを照射できるレーザー加工装置(レーザー加工ユニット)が使用される。
【0049】
また、キャリア板除去ステップにおいてキャリア板3を除去する際に、キャリア板3とワーク7との間(仮接着層5に相当する領域)に流体を吹き付けることもできる。
図4(A)は、第1変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
図4(A)に示すように、第1変形例に係るキャリア板除去ステップで使用される除去アーム34の内部には、流体を供給するための流路34aが設けられている。
【0050】
流路34aの上流側は、バルブ(不図示)等を介して流体の供給源(不図示)に接続されている。一方で、流路34aの下流端は、除去アーム34の先端部において開口している。そのため、各除去アーム34の先端部でキャリア板3の段差部3cを下方から支持しながらバルブを開けば、キャリア板3とワーク7との間に流体を吹き付けることができる。
【0051】
例えば、キャリア板3とワーク7との間に流体を吹き付けながら、除去アーム34で段差部3cに力を加えることにより、ワーク7からキャリア板3をより容易に剥離できるようになる。キャリア板3とワーク7との間に吹き付ける流体としては、例えば、エアーや水等を用いることができる。ただし、この流体の種類等に特段の制限はない。
【0052】
また、上記実施形態等では、複数の除去アーム34を用いてワーク7からキャリア板3を剥離、除去しているが、1つの除去アーム34を用いてワーク7からキャリア板3を剥離、除去することもできる。
図4(B)は、1つの除去アーム34を用いてワーク7からキャリア板3を剥離、除去する第2変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
【0053】
また、キャリア板除去ステップで除去アーム34により支持される段差部3cの位置等にも特段の制限はない。
図5(A)は、第3変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図であり、
図5(B)は、第4変形例のキャリア板除去ステップについて示す一部断面側面図である。
【0054】
第3変形例のキャリア板除去ステップでは、
図5(A)に示すように、除去アーム34によってキャリア板3の1つの角3dに相当する位置で段差部3cを支持し、キャリア板3を剥離する。この場合、キャリア板3は、角3dに相当する位置から対角線の方向に沿って徐々に剥離されることになる。
【0055】
一方で、第4変形例のキャリア板除去ステップでは、
図5(B)に示すように、除去アーム34によってキャリア板3の4つの角3d,3e,3f,3gに相当する位置で段差部3cを支持し、キャリア板3を剥離する。この場合、キャリア板3は、角3d,3e,3f,3gに相当する位置から対角線の方向に沿って徐々に剥離されることになる。
【0056】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0057】
1 複合基板
3 キャリア板
3a 第1面(表面)
3b 第2面(裏面)
3c 段差部
3d,3e,3f,3g 角
5 仮接着層
7 ワーク
7a 第1面(表面)
2 切削装置
4 チャックテーブル(第1保持手段、第1保持ユニット)
6 枠体
6a 流路
8 保持板
8a 保持面
10 バルブ
12 吸引源
14 切削ユニット
16 スピンドル
18 切削ブレード
22 除去装置
24 チャックテーブル(第2保持手段、第2保持ユニット)
26 枠体
26a 流路
28 保持板
28a 保持面
30 バルブ
32 吸引源
34 除去アーム(除去手段、除去ユニット)
34a 流路