(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】SiC基板の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221205BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20221205BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20221205BHJP
B28D 5/00 20060101ALI20221205BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
H01L21/304 622W
H01L21/304 631
H01L21/304 611B
H01L21/02 C
B23K26/53
B28D5/00 Z
B24B7/04 A
H01L21/02 B
(21)【出願番号】P 2018159320
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】関家 一馬
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-125390(JP,A)
【文献】特開2017-100255(JP,A)
【文献】特開2017-188586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/02
B23K 26/53
B28D 5/00
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCインゴットからSiC基板を生成するSiC基板の加工方法であって、
SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの上面から所望の内部位置に位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射して剥離層を形成する剥離層形成工程と、
SiCインゴットの上面に
接着剤を介してサブストレートを貼着するサブストレート貼着工程と、
該剥離層に外力を付与してSiC基板を該サブストレートと共に剥離する剥離工程と、
該剥離工程の後に該サブストレートに貼着されたSiC基板の剥離面を平坦に仕上げる剥離面平坦化工程と、
該剥離面平坦化工程の後にSiC基板の平坦に仕上げられた剥離面にデバイスを形成するデバイス形成工程と、
該デバイス形成工程の後にレーザー光線の照射によって該接着剤を破壊し、デバイスが形成されたSiC基板から該サブストレートを除去するサブストレート除去工程とを含むSiC基板の加工方法。
【請求項2】
該剥離層形成工程の前に、SiCインゴットの上面を平坦化する上面平坦化工程が含まれる請求項1記載のSiC基板の加工方法。
【請求項3】
該剥離層形成工程において、SiCインゴットの上面から所望の内部位置とは、SiC基板の上面にデバイスを形成できる必要不可欠な厚みのSiC基板が生成できる深さである請求項1記載のSiC基板の加工方法。
【請求項4】
SiCインゴットの上面から所望の内部位置とは、30~100μmである請求項
3記載のSiC基板の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCインゴットからSiC基板を生成するSiC基板の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイス、LED等のデバイスは、SiC基板の上面に機能層が積層され分割予定ラインによって区画されてウエーハの形態で形成される。そして、デバイスが形成されたウエーハは、レーザー加工装置等によって分割予定ラインに加工が施されて個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは制御装置、自動車部品等に利用される。
【0003】
SiC基板は、一般的に円柱形状のSiCインゴットをワイヤーソーで薄く切断することにより生成され、切断されたSiC基板の表面および裏面は研磨により鏡面に仕上げられる(たとえば特許文献1参照。)。しかし、SiCインゴットをワイヤーソーで切断し、切断したSiC基板の表面および裏面を研磨すると、高価なSiCインゴットの大部分(70~80%)が捨てられることになるため、SiC基板は相当の高額となり、SiC基板を用いたデバイスチップも高額になるという問題がある。
【0004】
そこで本出願人は、SiCインゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点を生成すべきSiC基板の厚みに相当する深さに位置づけてSiCインゴットにレーザー光線を照射し、c面においてSiCがSiとCとに分離すると共にSiとCとに分離したc面に沿ってクラックが延びる剥離層を形成し、外力を付与してSiCインゴットからSiC基板を剥離してSiC基板を効率よく生成できる技術を開発した(たとえば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-94221号公報
【文献】特開2016-111143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、SiC基板の上面に複数のデバイスを形成する幾多の工程において加工が施される際に、SiC基板が損傷しないようにSiC基板の厚みは500~700μmに設定されており、SiC基板1枚当たりの価格を充分に下げられないという問題がある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、SiCインゴットからSiC基板を効率よく経済的に生成することができるSiC基板の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下のSiC基板の加工方法である。すなわち、SiCインゴットからSiC基板を生成するSiC基板の加工方法であって、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの上面から所望の内部位置に位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射して剥離層を形成する剥離層形成工程と、SiCインゴットの上面に接着剤を介してサブストレートを貼着するサブストレート貼着工程と、該剥離層に外力を付与してSiC基板を該サブストレートと共に剥離する剥離工程と、該剥離工程の後に該サブストレートに貼着されたSiC基板の剥離面を平坦に仕上げる剥離面平坦化工程と、該剥離面平坦化工程の後にSiC基板の平坦に仕上げられた剥離面にデバイスを形成するデバイス形成工程と、該デバイス形成工程の後にレーザー光線の照射によって該接着剤を破壊し、デバイスが形成されたSiC基板から該サブストレートを除去するサブストレート除去工程とを含むSiC基板の加工方法である。
【0009】
好ましくは、該剥離層形成工程の前に、SiCインゴットの上面を平坦化する上面平坦化工程が含まれる。該剥離層形成工程において、SiCインゴットの上面から所望の内部位置とは、SiC基板の上面にデバイスを形成できる必要不可欠な厚みのSiC基板が生成できる深さであるのが好適である。SiCインゴットの上面から所望の内部位置とは、30~100μmであるのが好都合である。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供するSiC基板の加工方法は、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴットの上面から所望の内部位置に位置づけてレーザー光線をSiCインゴットに照射して剥離層を形成する剥離層形成工程と、SiCインゴットの上面に接着剤を介してサブストレートを貼着するサブストレート貼着工程と、該剥離層に外力を付与してSiC基板を該サブストレートと共に剥離する剥離工程と、該剥離工程の後に該サブストレートに貼着されたSiC基板の剥離面を平坦に仕上げる剥離面平坦化工程と、該剥離面平坦化工程の後にSiC基板の平坦に仕上げられた剥離面にデバイスを形成するデバイス形成工程と、該デバイス形成工程の後にレーザー光線の照射によって該接着剤を破壊し、デバイスが形成されたSiC基板から該サブストレートを除去するサブストレート除去工程とを含むので、剥離層形成工程においてSiCインゴットの上面から浅い位置に剥離層を形成して比較的薄いSiC基板を生成しても、SiC基板にはサブストレートが貼着されており、SiC基板の上面に複数のデバイスを形成する幾多の工程においてSiC基板の損傷が抑制される。したがって、本発明のSiC基板の加工方法では、従来よりも薄いSiC基板を生成することができるので、SiCインゴットから従来よりも多くのSiC基板を効率よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)SiCインゴットの正面図、(b)SiCインゴットの平面図。
【
図2】SiCインゴットを保持テーブルに載置する状態を示す斜視図。
【
図3】上面平坦化工程を実施している状態を示す斜視図。
【
図4】(a)剥離層形成工程を実施している状態を示す斜視図、(b)剥離層が形成されたSiCインゴットの断面図。
【
図5】サブストレート貼着工程を実施している状態を示す斜視図。
【
図7】(a)SiCインゴットから剥離したSiC基板をチャックテーブルに載置する状態を示す斜視図、(b)剥離面平坦化工程を実施している状態を示す斜視図。
【
図9】(a)サブストレート除去工程を実施している状態を示す斜視図、(b)サブストレート除去工程を実施している状態を示す断面図、(c)サブストレートが除去されたSiC基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のSiC基板の加工方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明のSiC基板の加工方法が実施され得る六方晶単結晶SiCインゴット2が示されている。SiCインゴット2は、全体として円柱形状に形成され、円形状の第一の端面4と、第一の端面4と反対側の円形状の第二の端面6と、第一の端面4および第二の端面6の間に位置する周面8と、第一の端面4から第二の端面6に至るc軸(<0001>方向)と、c軸に直交するc面({0001}面)とを有する。
【0014】
SiCインゴット2においては、第一の端面4の垂線10に対してc軸が傾いており、c面と第一の端面4とでオフ角α(たとえばα=1、3、6度)が形成されている。オフ角αが形成される方向を
図1に矢印Aで示す。また、SiCインゴット2の周面8には、結晶方位を示す矩形状の第一のオリエンテーションフラット12および第二のオリエンテーションフラット14が形成されている。第一のオリエンテーションフラット12は、オフ角αが形成される方向Aに平行であり、第二のオリエンテーションフラット14は、オフ角αが形成される方向Aに直交している。
図1(b)に示すとおり、上方からみて、第二のオリエンテーションフラット14の長さL2は、第一のオリエンテーションフラット12の長さL1よりも短い(L2<L1)。
【0015】
図示の実施形態では
図2に示すとおり、まず、適宜の接着剤(たとえばエポキシ樹脂系接着剤)を介してSiCインゴット2を保持テーブル16の上面に固定する。保持テーブル16は、上下方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成されていると共に、後述の研削装置18やレーザー加工装置30等の間を移動自在に構成されている。
【0016】
SiCインゴット2を保持テーブル16に固定した後、SiCインゴット2の上面が既に平坦に形成されている場合を除き、SiCインゴット2の上面を平坦化する上面平坦化工程を実施する。上面平坦化工程は、たとえば
図3に一部を示す研削装置18を用いて実施することができる。研削装置18は、スピンドル用モータ(図示していない。)に連結され、かつ上下方向に延びるスピンドル20と、スピンドル20の下端に固定された円板状のホイールマウント22とを含む。ホイールマウント22の下面にはボルト24により環状の研削ホイール26が固定されている。研削ホイール26の下面の外周縁部には、周方向に間隔をおいて環状に配置された複数の研削砥石28が固定されている。
【0017】
図3を参照して説明を続けると、上面平坦化工程では、まず、保持テーブル16を研削装置18の下方に移動させる。次いで、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば300rpm)で保持テーブル16を回転させる。また、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル20を回転させる。次いで、研削装置18の昇降手段(図示していない。)でスピンドル20を下降させ、SiCインゴット2の上面(図示の実施形態では第一の端面4)に研削砥石28を接触させる。その後、所定の研削送り速度(たとえば0.1μm/s)でスピンドル20を下降させる。これによって、後述の剥離層形成工程におけるレーザー光線の入射を妨げない程度にSiCインゴット2の上面を平坦化することができる。
【0018】
上面平坦化工程を実施した後、SiCに対して透過性を有する波長のレーザー光線の集光点をSiCインゴット2の上面から所望の内部位置に位置づけてレーザー光線をSiCインゴット2に照射して剥離層を形成する剥離層形成工程を実施する。剥離層形成工程は、たとえば
図4に一部を示すレーザー加工装置30を用いて実施することができる。レーザー加工装置30は、パルスレーザー光線発振器(図示していない。)が発振したパルスレーザー光線LBを集光してSiCインゴット2に照射するための集光器32を備える。集光器32は、
図4(a)に矢印Xで示すX軸方向と、X軸方向に直交するY軸方向(
図4(a)に矢印Yで示す方向)とのそれぞれに進退自在に構成されている。なお、X軸方向およびY軸方向が規定する平面は実質上水平である。
【0019】
図4(a)を参照して説明を続けると、剥離層形成工程では、まず、保持テーブル16をレーザー加工装置30の下方に移動させる。次いで、レーザー加工装置30の撮像手段(図示していない。)で上方からSiCインゴット2を撮像する。次いで、撮像手段で撮像したSiCインゴット2の画像に基づいて、保持テーブル16を回転させると共に集光器32を移動させることにより、SiCインゴット2の向きを所定の向きに調整すると共に、SiCインゴット2と集光器32とのXY平面における位置を調整する。SiCインゴット2の向きを所定の向きに調整する際は、
図4(a)に示すとおり、第二のオリエンテーションフラット14をX軸方向に整合させることによって、オフ角αが形成される方向Aと直交する方向をX軸方向に整合させると共に、オフ角αが形成される方向AをY軸方向に整合させる。
【0020】
次いで、レーザー加工装置30の集光点位置調整手段(図示していない。)で集光器32を昇降させ、SiCインゴット2の上面から所望の内部位置に集光点を位置づける。SiCインゴット2の上面から所望の内部位置とは、SiC基板の上面にデバイスを形成できる必要不可欠な厚みのSiC基板が生成できる深さであるのが好ましく、たとえば30~100μm程度である。
【0021】
次いで、オフ角αが形成される方向Aと直交する方向に整合しているX軸方向に集光器32を所定の送り速度で移動させながら、SiCインゴット2に対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線LBを集光器32からSiCインゴット2に照射する。そうすると、
図4(b)に示すとおり、パルスレーザー光線LBの照射によりSiCがSi(シリコン)とC(炭素)とに分離し次に照射されるパルスレーザー光線LBが前に形成されたCに吸収されて連鎖的にSiCがSiとCとに分離すると共に、SiCがSiとCとに分離した部分34からc面に沿って等方的に延びるクラック36が生成される。なお、SiCインゴット2にパルスレーザー光線LBを照射する際は、集光器32に代えて保持テーブル16を移動させてもよい。
【0022】
そして、オフ角αが形成される方向Aに整合しているY軸方向に、クラック36の幅を超えない範囲で所定インデックス量Liだけ、SiCインゴット2に対して集光器32を相対的にインデックス送りしながら、パルスレーザー光線LBの照射を繰り返す。これによって、Y軸方向に所定インデックス量Liの間隔をおいて、SiCインゴット2の上面から所望の内部位置に、SiCがSiとCとに分離した部分34およびクラック36からなる強度が低下した剥離層38を形成することができる。なお、インデックス送りの際は集光器32に代えて保持テーブル16を移動させてもよい。このような剥離層形成工程は、たとえば以下の加工条件で行うことができる。
パルスレーザー光線の波長 :1064nm
繰り返し周波数 :80kHz
平均出力 :3.2W
パルス幅 :4ns
スポット径 :3μm
集光器の開口数(NA) :0.43
インデックス量 :250~400μm
送り速度 :120~260mm/s
【0023】
剥離層形成工程を実施した後、SiCインゴット2の上面にサブストレートを貼着するサブストレート貼着工程を実施する。図示の実施形態では
図5に示すとおり、SiCインゴット2の直径とほぼ同じ直径を有する円板状のガラス製サブストレート40を適宜の接着剤(たとえばポリイミド樹脂系接着剤)を介してSiCインゴット2の第一の端面4(剥離層38に近い方の端面)に貼着している。サブストレート40の厚みは、SiCインゴット2から生成されたSiC基板に加工が施される際に、サブストレート40でSiC基板を保持してSiC基板の損傷を防止することができる程度の厚みであればよく、たとえば500~1000μm程度でよい。
【0024】
サブストレート貼着工程を実施した後、剥離層38に外力を付与してSiC基板をサブストレート40と共に剥離する剥離工程を実施する。剥離工程は、たとえば
図6に示す水槽42内において、水を介してSiCインゴット2に超音波を付与することによって実施することができる。
【0025】
剥離工程では、まず、SiCインゴット2を水槽42内に移動させる。たとえば、上部および下部が開放された筒体42’を昇降自在に構成し、剥離工程実施場所に保持テーブル16を移動させた後、保持テーブル16が載置されている基台(図示していない。)の上面あるいは保持テーブル16の上面周縁部に筒体42’の下端を接触させることによって、水槽42を形成し、SiCインゴット2を水槽42内に収容する。次いで、SiCインゴット2が浸漬するまで水槽42内に水を供給する。次いで、圧電セラミックス等から形成され得る超音波振動子(図示していない。)を浸水させて作動させる。超音波振動子を作動させる際は、超音波振動子とSiCインゴット2とを接触させてもよく、あるいは超音波振動子とSiCインゴット2との間に間隙(たとえば2~3mm)を設けてもよい。超音波振動子を作動させると超音波によって剥離層38を刺激して破壊し、剥離層38を起点として、SiCインゴット2からSiC基板44(
図7参照。)をサブストレート40と共に剥離することができる。なお、剥離工程は、先端に向かって厚みが薄くなるノミのような部材を用いて、剥離層38に衝撃を加えることによっても実施することができる。
【0026】
剥離工程を実施した後、サブストレート40に貼着されたSiC基板44の剥離面を平坦に仕上げる剥離面平坦化工程を実施する。剥離面平坦化工程は、上述の研削装置18と、SiC基板44を吸引保持するチャックテーブル46(
図7参照。)とを用いて実施することができる。チャックテーブル46の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形の吸着チャック48が配置され、チャックテーブル46においては、吸引手段で吸着チャック48の上面に吸引力を生成し、上面に載せられたSiC基板44を吸引保持するようになっている。また、チャックテーブル46は上下方向に延びる軸線を中心として回転自在に構成されていると共に、研削装置18の下方の研削位置と、研削装置18から離間した待機位置との間で移動自在に構成されている。
【0027】
剥離面平坦化工程では、まず、
図7(a)に示すとおり、SiC基板44の剥離面44aを上に向けて、チャックテーブル46の上面で、サブストレート40に貼着されたSiC基板44を吸引保持する。次いで、チャックテーブル46を研削位置に移動させる。次いで、
図7(b)に示すとおり、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば300rpm)でチャックテーブル46を回転させる。また、上方からみて反時計回りに所定の回転速度(たとえば6000rpm)でスピンドル20を回転させる。次いで、研削装置18の昇降手段(図示していない。)でスピンドル20を下降させ、SiC基板44の剥離面44aに研削砥石28を接触させる。その後、所定の研削送り速度(たとえば0.1μm/s)でスピンドル20を下降させる。これによって、サブストレート40に貼着されたSiC基板44の剥離面44aを平坦に仕上げることができる。なお、SiCインゴット2については、上述の上面平坦化工程を実施して剥離面44bを平坦化した上で、剥離層形成工程、サブストレート貼着工程および剥離工程を繰り返すことにより、SiCインゴット2から複数のSiC基板44を生成する。そして、生成したSiC基板44のそれぞれに対して剥離面平坦化工程を実施する。
【0028】
剥離面平坦化工程を実施した後、SiC基板44の平坦に仕上げられた剥離面44aにデバイスを形成するデバイス形成工程を実施する。図示の実施形態では
図8に示すとおり、SiC基板44の平坦に仕上げられた剥離面44aは、格子状の分割予定ライン50によって複数の矩形領域に区画され、複数の矩形領域のそれぞれにはパワーデバイス、LED等のデバイス52が形成されている。図示の実施形態では、SiC基板44にサブストレート40が貼着されているので、デバイス形成工程においてSiC基板44に加工を施す際に、SiC基板44の損傷が抑制される。
【0029】
デバイス形成工程を実施した後、デバイス52が形成されたSiC基板44からサブストレート40を除去するサブストレート除去工程を実施する。サブストレート除去工程は、たとえば
図9に一部を示すレーザー加工装置54を用いて実施することができる。レーザー加工装置54は、被加工物を吸引保持するチャックテーブル(図示していない。)と、チャックテーブルに吸引保持された被加工物にパルスレーザー光線LB’を照射する集光器56とを備える。集光器56は、X軸方向およびY軸方向に進退自在に構成されている。
【0030】
図9を参照して説明を続けると、サブストレート除去工程では、まず、サブストレート40を上に向けて、チャックテーブルの上面でSiC基板44を吸引保持する。次いで、レーザー加工装置54の集光点位置調整手段(図示していない。)で集光器56を昇降させ、サブストレート40とSiC基板44とを接着している接着剤58に集光点を位置づける。次いで、集光器56を所定の送り速度でX軸方向に移動させながら、パルスレーザー光線LB’を集光器56から接着剤58に照射して接着剤58を破壊する。パルスレーザー光線LB’の照射は、集光器56を所定インデックス量だけY軸方向にインデックス送りしながら適宜繰り返す。そして、SiC基板44からサブストレート40を除去することができる程度に接着剤58を破壊したら、SiC基板44からサブストレート40を除去することによって、
図9(c)に示すとおり、デバイス52が形成されたSiC基板44を得ることができる。なお、接着剤58にパルスレーザー光線LB’を照射する際やインデックス送りの際は、集光器56に代えてチャックテーブルを移動させてもよい。このようなサブストレート除去工程は、たとえば以下の加工条件で行うことができる。
パルスレーザー光線の波長 :355nm
繰り返し周波数 :80kHz
平均出力 :1.5W
パルス幅 :4ns
スポット径 :3μm
集光器の開口数(NA) :0.43
インデックス量 :100μm
送り速度 :240mm/s
【0031】
以上のとおり図示の実施形態では、剥離層形成工程においてSiCインゴット2の上面から浅い位置(たとえば30~100μm程度)に剥離層38を形成して比較的薄いSiC基板44を生成しても、SiC基板44にはサブストレート40が貼着されているので、デバイス形成工程においてSiC基板44の損傷が抑制される。したがって、図示の実施形態では、従来よりも薄いSiC基板44を生成することができるので、SiCインゴット2から従来よりも多くのSiC基板44を効率よく生成することができる。
【符号の説明】
【0032】
2:SiCインゴット
38:剥離層
40:サブストレート
44:SiC基板
44a:SiC基板の剥離面
52:デバイス