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特許7187396大豆粉及びα化ハイアミロース澱粉を使用したドーナツミックス及びこれを使用したドーナツ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】大豆粉及びα化ハイアミロース澱粉を使用したドーナツミックス及びこれを使用したドーナツ
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/36 20060101AFI20221205BHJP
   A21D 13/60 20170101ALI20221205BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D13/60
A23G3/34 108
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019131848
(22)【出願日】2019-07-17
(65)【公開番号】P2021016313
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】大柳 杏里
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-092474(JP,A)
【文献】特開昭63-173539(JP,A)
【文献】特開平03-292866(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】特開2016-028554(JP,A)
【文献】特開2016-047021(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119675(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D,A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α化ハイアミロース澱粉を穀粉及び/又は澱粉100質量部中5質量部以上40質量部以下含み、穀粉及び/又は澱粉100質量部に対して大豆粉を20質量部以上70質量部以下含むケーキドーナツ用ミックス。
【請求項2】
請求項1に記載のケーキドーナツ用ミックスを使用したケーキドーナツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆粉及びα化ハイアミロース澱粉を使用したドーナツミックス及びこれを使用したドーナツに関する。
【背景技術】
【0002】
ドーナツに求められる食感は好みにより様々であるが、ホクホクしてしっとりした食感はその一つである。
大豆粉をドーナツに使用した例としては、冷凍しても硬くなりすぎずに喫食可能な状態を維持し、その冷凍状態のものを喫食してもシャリっとした食感を楽しむことができ、また、常温と同程度の品温で喫食しても口どけのよい食感を楽しむことができるドーナツの製造に適したドーナツ用ミックスとして、糖、糖アルコール、デキストリン及び可溶性澱粉からなる群から選択される1種以上の第1成分を25~70質量%、並びに大豆粉を0.1~10質量%含有するドーナツ用ミックスが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-57299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、ホクホクしてしっとりした食感のドーナツが求められている。
従って、本発明の目的は、ホクホクしてしっとりした食感のドーナツを得ることができるドーナツミックス及びこれを使用したドーナツを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ケーキドーナツミックスの原料に大豆粉とα化ハイアミロース澱粉を特定量使用することで、ホクホクしてしっとりした食感のケーキドーナツを得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、α化ハイアミロース澱粉を穀粉及び/又は澱粉100質量部中5質量部以上40質量部以下含み、穀粉及び/又は澱粉100質量部に対して大豆粉を20質量部以上70質量部以下含むケーキドーナツ用ミックス及びこれを使用したケーキドーナツである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のドーナツミックスを使用することによりホクホクしてしっとりした食感のドーナツを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する大豆粉は、大豆を粉状に加工したもので、生の大豆を粉状にしたものや加熱大豆を粉状にした、きな粉も使用できる。
原料となる大豆には特に限定はなく全脂大豆や脱脂大豆を使用することができる。
本発明で使用する大豆粉粉は市販品も使用できる。
本発明で使用する大豆粉の使用量は、ドーナツミックスに使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部に対して20質量部以上70質量部以下である。
大豆粉の使用量が使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部に対して70質量部を超えるとホクホクした食感は得ることができるが、しっとりした食感を十分に得ることでできず不適である。
大豆粉の使用量が使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部に対して20質量部未満ではホクホクした食感も、しっとりした食感を十分に得ることでできず不適である。
【0008】
本発明で使用するα化ハイアミロース澱粉とは、アミロース含有量が30質量%以上のハイアミロース澱粉やこれを化学的、物理的、酵素的に変性させた加工澱粉をアルファ化(α化)して粉状にした澱粉をいう。
α化ハイアミロース澱粉の原料となる澱粉には特に限定はないが、ハイアミロースコーンスターチ、ハイアミロース米粉澱粉等を挙げることができる。
ハイアミロースコーンスターチ澱粉はホクホクしてしっとりした食感になる点でより好ましい。
本発明で使用するα化ハイアミロース澱粉は市販品も使用できる。
本発明で使用するα化ハイアミロース澱粉の使用量は、ドーナツミックスに使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部中5質量部以上40質量部以下である。
α化ハイアミロース澱粉の使用量が使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部中40質量部を超えるとホクホクした食感ではなくモチモチした食感になり、しっとりした食感も十分に得ることでできず不適である。
α化ハイアミロース澱粉の使用量が使用する穀粉及び/又は澱粉100質量部中5質量部未満の場合、ホクホクした食感も、しっとりした食感も十分に得ることでできず不適である。
なお、ドーナツミックスに使用する穀粉及び/又は澱粉の使用量は、従来のドーナツと同様でよい。
【0009】
本発明において、大豆粉とα化ハイアミロース澱粉以外の原料は公知のドーナツ原料が使用でき、その使用量も公知のドーナツ原料と同じでよく特に限定はない。
例えば、油脂、塩、乳、乳化剤、膨張剤、甘味料、香料、調味料、増粘剤などを挙げることができる。
【0010】
本発明のドーナツの生地の調製は、公知のドーナツの生地の調製方法でよいがα化ハイアミロース澱粉は吸水性が高く加水量が同じ場合、生地の硬さが異なってくるので生地の硬さを適宜調製するため、加水量を変更する必要はある。
なお、加水量を変更するのは、生地の硬さの違いにより作業性が低下するのを防ぐためであり、食感の改善効果はほとんどない。
【0011】
生地からドーナツを調製する方法も公知のドーナツの製造方法と同様でよく、特に限定はない。
例えば、ドーナツカッターを使用して生地を分割しフライ油でフライすることでドーナツを得ることができる。
得られた、ドーナツの保存、喫食方法も従来のドーナツと同様でよい。
【実施例
【0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1~2に示す原料をミキサー(KitchenAid社製:製品名「KSM5」)に投入し低速で1分間、高速で2分間混捏しドーナツ生地を得た。
捏上温度は23℃であった。
得られたドーナツ生地をドーナツカッター(ベルショー社製:「Fカッター及びプレーンプランジャー」使用)で50gに分割し、190℃のフライ油で潜行1分30秒間フライしてドーナツを得た。
得られたドーナツを以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食感(ホクホク感)
5点 ホクホクとして良い
4点 ややホクホクとして、やや良い
3点 普通
2点 ややホクホクせず、やや悪い
1点 ホクホクせず悪い
・食感(しっとり感)
5点 しっとりとして良い
4点 ややしっとりして、やや良い
3点 普通
2点 ややパサつきが感じられやや悪い
1点 パサつきが感じられ悪い
【0013】
得られた評価結果を表1~2に示す。
表中、配合量の単位は質量部、評価は点数を付けた人数と平均点を示している。
食感(ホクホク感)及び食感(しっとり感)の平均点が、両方とも3.5点以上であるものを合格とした。
【0014】
【表1】
【0015】
実施例1~5、比較例1~3は大豆粉の量がドーナツの食感に与える影響を試験した。
実施例1~実施例5は、いずれもホクホク感、しっとり感ともに満足できる結果であった。
比較例2は、大豆粉が20質量部未満の場合で、食感(ホクホク感)及び食感(しっとり感)ともに満足できる結果ではなかった。
比較例3は、大豆粉が70質量部を超えた場合で食感(ホクホク感)はあるが、食感(しっとり感)が劣り満足できる結果ではなかった。
【0016】
【表2】
【0017】
実施例6~10、比較例4~5はα化ハイアミロース澱粉の量がドーナツの食感に与える影響を試験した。
実施例6~実施例10は、いずれもホクホク感、しっとり感ともに満足できる結果であった。
比較例4は、α化ハイアミロース澱粉が5質量部未満の場合で、食感(ホクホク感)及び食感(しっとり感)ともに満足できる結果ではなかった。
比較例5は、ホクホクとした食感ではなく、モチモチした食感となった。