(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】中華饅頭の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 35/00 20160101AFI20221205BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20221205BHJP
【FI】
A23L35/00
A23L5/00 F
(21)【出願番号】P 2019150083
(22)【出願日】2019-08-20
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】吉屋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】野田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】赤澤 恵梨
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/131167(WO,A1)
【文献】特開2016-154541(JP,A)
【文献】特開昭48-018442(JP,A)
【文献】特開2008-253207(JP,A)
【文献】特開昭57-105149(JP,A)
【文献】特開2010-239884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中華饅頭の製造方法であって、整形後、蒸す前に中華饅頭生地
の少なくとも底部を除いた生地全体をバッターで被覆することを特徴とする中華饅頭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華饅頭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等では、中華饅頭等を温かい状態で提供するために蒸し什器等を使用して販売しているが中華饅頭を蒸し什器のような湿度が高い環境下で長時間保存すると、皮がべたべたと水っぽい食感になってしまうという問題があった。
また、中華饅頭は、多くの場合、冷凍または冷蔵状態で流通されているが、提供までの時間を短縮するため電子レンジを使用して短時間加熱した後、什器に移す場合は電子レンジ加熱により中華饅頭の生地が硬くなってしまう問題があった。
湿度が高い環境下での保存性及び電子レンジ耐性を改善する方法として、例えば、生地にιカラギーナン及び有機酸モノグリセリドを含有する組成物と小麦粉を混合して中華まん生地を得、該生地で具材を包むことを特徴とする中華まん類の製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
また、電子レンジ加温後の中華まん類の食感の引きや経時的な硬化等を解決する方法として、中華まん生地原料に水溶性ヘミセルロースを添加して製造する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-70256号公報
【文献】特開平11-169138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、湿度が高い環境下での保存性の向上及び電子レンジで加熱しても皮が硬くなり難い中華饅頭の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、整形後、蒸す前に中華饅頭生地をバッターで被覆することで長時間、蒸し什器で保存しても皮の食感が、べたべたと水っぽくなるのを軽減でき、また、電子レンジで加熱しても皮の食感が硬くなるのを軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は中華饅頭の製造方法であって、整形後、蒸す前に中華饅頭生地の少なくとも底部を除いた生地全体をバッターで被覆することを特徴とする中華饅頭の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の中華饅頭の製造方法で製造した中華饅頭は、長時間、蒸し什器で保存しても皮の食感が、べちゃべちゃと水っぽくなり難く、また、電子レンジで加熱しても皮の食感が硬くなり難い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の中華饅頭とは、穀粉、食塩、イースト等の原料を加水混捏して生地を調製し、得られた生地で具を包み整形し発酵後、蒸すことで可食状態にする工程を含む食品をいう。
具の種類により肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまん等と呼ばれて販売されている。
本発明の中華饅頭の製造方法は、従来の中華饅頭の製造工程において、整形後、蒸す前に中華饅頭生地をバッターで被覆すること以外は従来の中華饅頭の製造工程が使用でき特に限定はない。
【0008】
例えば、本発明の中華饅頭の原料は穀粉、砂糖、食塩、油脂、イースト等、従来の中華饅頭に使用されている原料が使用でき特に限定はない。
生地の調製方法も従来の中華饅頭の調整方法が使用でき、特に限定はない。
例えば、前記原料に加水し、これを混捏することで生地を得ることができる。
使用する具や整形方法も従来の中華饅頭と同じでよく特に限定はない。
【0009】
本発明の中華饅頭の製造方法は、整形した生地をバッターで被覆することを特徴としている。
被覆方法は生地表面にバッターを被覆できれば特に限定はなく、噴霧、浸漬、塗布等の方法が使用できる。
使用できるバッターとしては、従来から天ぷらに使用されているバッターを挙げることができる。
例えば、使用できる原料としては、穀粉類、澱粉類、デキストリン、植物性蛋白質、乳化剤、卵粉、増粘多糖類、膨張剤、食物繊維、油脂類、塩、糖類、調味料、香辛料、着色料、ビタミン類、ミネラル類が挙げられ、バッターの加水量は穀粉100質量部に対して100~500質量部程度である。
好ましいバッターは、小麦粉、澱粉または米粉等の穀粉100質量部に対して、増粘多糖類を0.05質量部から5質量部含むバッターであり、粘度安定性が良く生地表面を均一に被覆しやすい。
被覆するバッター量は、生地表面を覆うことができれば薄いほうがよく、バッター量は、生地表面に対して0.005~0.1g/cm2程度である。
【0010】
本発明の中華饅頭の製造方法は、整形後、蒸す前に生地を発酵するが発酵方法は従来の中華饅頭に使用されている方法が使用でき特に限定はない。
本発明では、整形後、蒸す前に中華饅頭生地をバッターで被覆するが、バッターで被覆するタイミングは、発酵工程の前でも途中でも後でもよい。
また、被覆は1回でなく、数回に分けて行ってもよい。
被覆は、生地表面全体を満遍なく被覆することが好ましいが、部分的に被覆されていない部分があってもよい。
例えば、底部など直接、蒸気にさらされていない場所は、無理に被覆する必要はない。
【0011】
発酵とバッターによる被覆が済んだ後、蒸して可食状態にするが、蒸し温度や蒸し時間、器具等は従来の中華饅頭に使用されている方法が使用でき特に限定はない。
得られた中華饅頭の保存、喫食方法は、従来の中華饅頭と同じでよく特に限定はない。
例えば、常温、冷蔵、冷凍等の方法で保存できる。
冷凍保存した中華饅頭を電子レンジで解凍加熱した場合に本発明の中華饅頭の製造方法により得られた中華饅頭は、皮が硬くなりにくい。
また、蒸し什器で保存しても皮の食感が、べたべたと水っぽくなり難いが、蒸し什器で保存する場合は、12時間以内が好ましい。
【実施例】
【0012】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
強力小麦粉50質量部、薄力小麦粉50質量部、生イースト2質量部、食塩1.5質量部、上白糖13質量部、ベーキングパウダー1質量部と水47質量部をミキサーに投入し、低速2分間、中速3分間ミキシング後、ラード4質量部を加え、低速1分間、中速3分間、高速4分間ミキシングを行い、中華饅頭生地を調製した。
捏上生地温度は25℃であった。
得られた生地を温度27℃、湿度80%の醗酵室で10分間発酵させ、60gに分割して5分間ベンチタイムをとった後、40gのこしあんを包餡してドーム形状の成型生地を得た。
ボウルに入れたバッターミックス(薄力小麦粉78質量部、コーンスターチ20質量部、塩0.5質量部、キサンタンガム0.5質量部、ベーキングパウダー1質量部)100質量部に対し、水を250質量部加え、ホイッパーで1分間撹拌してバッターを調製した。
前記成型生地を前記バッターで生地全体を被覆した。
なお、塗布したバッターの量は生地表面に対して0.02g/cm2であった。
前記バッターで被覆した成型生地を温度45℃、湿度50%の醗酵室で40分間発酵させた後、25℃環境下における室内にて10分間放置した。
これを98℃の蒸し器で15分間蒸して中華饅頭を得た。
得られた中華饅頭は25℃環境下における室内にて15分間放置した後、-40℃の急速冷凍機を使用して30分間冷凍した後、-20℃の冷凍庫内で7日間保存した。
[比較例1]
実施例1において、生地をバッターで被覆しなかった以外は実施例1と同様にして冷凍中華饅頭を得て保存した。
[評価試験1]
実施例1と比較例1で得られた冷凍中華饅頭を80℃の蒸し什器に入れて10時間保存した後、10名のパネラーにより、以下の評価基準により評価した。
結果を表1に示す。
・食感(生地の水っぽさ)
5点 全く水っぽくなく、非常に優れている。
4点 水っぽくなく、優れている。
3点 普通
2点 水っぽく、劣っている。
1点 べちゃべちゃと水っぽく、非常に劣っている。
【0013】
【0014】
[評価試験2]
実施例1と比較例1で得られた冷凍中華饅頭を電子レンジで1500W、10秒間加熱した後、10名のパネラーにより、以下の評価基準により評価した。
結果を表2に示す。
・食感(生地の硬さ)
5点 非常にソフトで、非常に良い
4点 ソフトで、良い
3点 普通
2点 硬く、悪い
1点 非常に硬く、非常に悪い
【0015】
【0016】
[評価試験3]
実施例1と比較例1で得られた冷凍中華饅頭を電子レンジで1500W、10秒間加熱した後、80℃の蒸し什器に入れて10時間保存した後、試験例1及び試験例2と同様に評価した。
結果を表3に示す。
【0017】
【0018】
本発明の中華饅頭の製造方法で製造した中華饅頭は、蒸し什器で保存しても皮の食感が、水っぽくなり難く、また、電子レンジで加熱しても皮の食感が硬くなり難くかった。