(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】トモシンセシス撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/02 20060101AFI20221205BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20221205BHJP
A61B 6/08 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A61B6/02 301
A61B6/00 300G
A61B6/00 300B
A61B6/08 330
A61B6/00 320M
(21)【出願番号】P 2019162949
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今野 紳一朗
(72)【発明者】
【氏名】藤本 淑恵
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0270745(US,A1)
【文献】特開昭55-029396(JP,A)
【文献】特開2015-104459(JP,A)
【文献】特開2000-005330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0067481(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0169431(US,A1)
【文献】特開2004-089699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0091939(US,A1)
【文献】特表平08-508431(JP,A)
【文献】特開2009-131656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0091940(US,A1)
【文献】特開2012-045278(JP,A)
【文献】特開平06-030926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うために、前記放射線を発する3個以上の放射線管が配列された放射線源と、
前記放射線の照射野を規定するための前記放射線の照射開口を、前記放射線管の配列方向に沿って複数有する照射野限定器であり、少なくとも1個の前記放射線管分の間隔を空けて配置された前記照射開口を有し、かつ、3個以上の前記放射線管の一部である第1放射線管から前記放射線を発する場合の第1セット位置と、3個以上の前記放射線管のうち、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管から前記放射線を発する場合の第2セット位置の少なくとも2つのセット位置に、前記照射開口の位置が移動される照射野限定器と、
前記放射線を検出して放射線画像を出力する放射線検出器と、
を備え、
前記照射野限定器は、前記照射開口として機能する複数の貫通穴が形成された板状部材であり、
前記放射線管は、前記配列方向を前記放射線検出器の撮像面に対して傾けて配置し、
前記貫通穴の形状は、台形状であって、前記各放射線管から照射された前記放射線の前記撮像面における前記照射野の形状が一致するように、前記各放射線管と該各放射線管に対応する前記板状部材の前記貫通穴の位置との距離と前記各放射線管に対応する前記板状部材の前記貫通穴の位置と前記撮像面との距離とに応じた、形状及びサイズとするトモシンセシス撮影装置。
【請求項2】
異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うために、前記放射線を発する3個以上の放射線管が配列された放射線源と、
前記放射線の照射野を規定するための前記放射線の照射開口を、前記放射線管の配列方向に沿って複数有する照射野限定器であり、少なくとも1個の前記放射線管分の間隔を空けて配置された前記照射開口を有し、かつ、3個以上の前記放射線管の一部である第1放射線管から前記放射線を発する場合の第1セット位置と、3個以上の前記放射線管のうち、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管から前記放射線を発する場合の第2セット位置の少なくとも2つのセット位置に、前記照射開口の位置が移動される照射野限定器と、
を備え、
前記照射野限定器は、前記照射開口として機能する複数の貫通穴が形成された板状部材であり、
前記板状部材は、隣接する前記貫通穴の間に、前記各貫通穴に対向する前記放射線管以外の前記放射線管から照射される前記放射線を遮るように、前記放射線管に向かって突出した凸部を有するトモシンセシス撮影装置。
【請求項3】
前記放射線管の配列方向に沿って前記板状部材が移動されることで、前記少なくとも2つのセット位置に、前記照射開口の位置が移動される請求項1
又は2に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項4】
前記板状部材は、前記放射線管と前記貫通穴との間隔が変化する方向に移動される請求項
3に記載のトモシンセシス撮影装置。
【請求項5】
異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うために、前記放射線を発する3個以上の放射線管が配列された放射線源と、
前記放射線の照射野を規定するための前記放射線の照射開口を、前記放射線管の配列方向に沿って複数有する照射野限定器であり、少なくとも1個の前記放射線管分の間隔を空けて配置された前記照射開口を有し、かつ、3個以上の前記放射線管の一部である第1放射線管から前記放射線を発する場合の第1セット位置と、3個以上の前記放射線管のうち、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管から前記放射線を発する場合の第2セット位置の2つのセット位置に、前記照射開口の位置が移動される照射野限定器と、
前記放射線を検出して放射線画像を出力する放射線検出器と、
を備え、
前記照射野限定器は、前記照射開口として機能する貫通穴が形成された板状部材
を複数含み、
前記放射線管と、前
記放射線検出器の撮像面との間に配され
、かつ前記撮像面に平行な回転軸を中心として前記
各板状部材が回転されることで、前記少なくとも2つのセット位置に、前記照射開口が移動され
るトモシンセシス撮影装置。
【請求項6】
異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うために、前記放射線を発する3個以上の放射線管が配列された放射線源と、
前記放射線の照射野を規定するための前記放射線の照射開口を、前記放射線管の配列方向に沿って複数有する照射野限定器であり、少なくとも1個の前記放射線管分の間隔を空けて配置された前記照射開口を有し、かつ、3個以上の前記放射線管の一部である第1放射線管から前記放射線を発する場合の第1セット位置と、3個以上の前記放射線管のうち、前記第1放射線管とは異なる第2放射線管から前記放射線を発する場合の第2セット位置の少なくとも2つのセット位置に、前記照射開口の位置が移動される照射野限定器と、
を備え、
前記照射野限定器は、前記照射開口として機能する複数の貫通穴が形成された板状部材であり、
前記照射野限定器は、複数の前記照射開口の幅を調整するための
前記放射線管の配列方向に長い長尺部を含む調整部材を有し、
前記調整部材は、前記放射線管の配列方向と交差する方向に移動することによって、複数の前記照射開口の幅を一度に調整す
るトモシンセシス撮影装置。
【請求項7】
複数の前記放射線管は、直線状または円弧状に、等しい間隔で配列されている請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のトモシンセシス撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、トモシンセシス撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の任意の断層面における断層画像を生成するために、異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影が知られている。特許文献1には、放射線を発する焦点が複数配列された放射線源を用いてトモシンセシス撮影を行うトモシンセシス撮影装置が記載されている。特許文献1に記載のトモシンセシス撮影装置は、放射線の照射野を規定するための放射線の照射開口を、複数の焦点の各々に対して形成する照射野限定器を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、1つ以上の焦点を有する放射線管を3個以上用い、隣接する放射線管同士を近接させ、断層画像のSN(Signal-Noise)比を向上させることを検討している。この場合、複数の放射線管の各々に対して照射開口が形成された照射野限定器を適用すると、ある放射線管から放射線を照射したときに、隣接する放射線管の照射開口から放射線が漏れ、これにより不必要な被曝が生じるおそれがあった。
【0005】
本開示の技術は、不必要な被曝を防止することが可能なトモシンセシス撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示のトモシンセシス撮影装置は、異なる複数の照射角度から被写体に放射線を照射するトモシンセシス撮影を行うために、放射線を発する3個以上の放射線管が配列された放射線源と、放射線の照射野を規定するための放射線の照射開口を、放射線管の配列方向に沿って複数有する照射野限定器であり、少なくとも1個の放射線管分の間隔を空けて配置された照射開口を有し、かつ、3個以上の放射線管の一部である第1放射線管から放射線を発する場合の第1セット位置と、3個以上の放射線管のうち、第1放射線管とは異なる第2放射線管から放射線を発する場合の第2セット位置の少なくとも2つのセット位置に、照射開口の位置が移動される照射野限定器と、を備える。
【0007】
照射野限定器は、照射開口として機能する貫通穴が形成された板状部材を含み、放射線管の配列方向に沿って板状部材が移動されることで、少なくとも2つのセット位置に、照射開口の位置が移動されることが好ましい。
【0008】
板状部材は、放射線管と貫通穴との間隔が変化する方向に移動されることが好ましい。
【0009】
板状部材は、隣接する貫通穴の間に、放射線管に向かって突出した凸部を有することが好ましい。
【0010】
照射野限定器は、少なくとも1辺が照射開口の開口縁として機能する貫通穴が形成された板状部材が、放射線を検出して放射線画像を出力する放射線検出器の撮像面の法線方向に沿って積層された構成を有し、複数枚の板状部材の各々が、放射線管の配列方向に沿って移動されることで、少なくとも2つのセット位置に、照射開口の位置が移動されることが好ましい。
【0011】
照射野限定器は、積層方向に隣接する2枚の板状部材を、放射線管の配列方向に沿って同時に移動させる1つのアクチュエータを有することが好ましい。
【0012】
照射野限定器は、照射開口として機能する貫通穴が形成されたシート状部材を含み、放射線管の配列方向に沿ってシート状部材が送り出され、かつ巻き取られることで、照射開口が移動されることが好ましい。
【0013】
シート状部材には、大きさが異なる複数種の貫通穴が形成されていることが好ましい。
【0014】
照射野限定器は、照射開口として機能する貫通穴が形成された板状部材を含み、放射線管と、放射線を検出して放射線画像を出力する放射線検出器の撮像面との間に配された回転軸を中心として板状部材が回転されることで、少なくとも2つのセット位置に、照射開口が移動されることが好ましい。
【0015】
照射野限定器は、複数の照射開口の幅を調整するための調整部材を有し、調整部材は、放射線管の配列方向と交差する方向に移動することによって、複数の照射開口の幅を一度に調整することが好ましい。
【0016】
複数の放射線管は、直線状または円弧状に、等しい間隔で配列されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本開示の技術によれば、不必要な被曝を防止することが可能なトモシンセシス撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図8】トモシンセシス撮影で得られた複数の投影画像から断層画像を生成する様子を示す図である。
【
図9】放射線源および照射野限定器の分解斜視図である。
【
図10】ハウジング内において板状部材がレールに保持されている状態を示す図である。
【
図11】変位機構の一部を示す図であり、
図11Aは、ピニオンギアを反時計回りに回転させた場合、
図11Bは、ピニオンギアを時計回りに回転させた場合をそれぞれ示す。
【
図12】第1セット位置におけるトモシンセシス撮影の様子を示す図である。
【
図13】第2セット位置におけるトモシンセシス撮影の様子を示す図である。
【
図15】主に制御装置のCPUの処理部を示すブロック図である。
【
図19】制御装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図20】第1板状部材および第2板状部材で照射野限定器を構成する例を示す図である。
【
図21】第1板状部材および第2板状部材で照射野限定器を構成する別の例を示す図である。
【
図23】放射線管と貫通穴との間隔が変化する方向に板状部材を移動させる第2実施形態を示す図であり、
図23Aは、放射線管と貫通穴との間隔が狭められた場合、
図23Bは、放射線管と貫通穴との間隔が広げられた場合をそれぞれ示す。
【
図24】隣接する貫通穴の間に、放射線管に向かって突出した凸部を設ける第3実施形態を示す斜視図である。
【
図25】隣接する貫通穴の間に、放射線管に向かって突出した凸部を設ける第3実施形態を示す部分断面図である。
【
図26】板状部材が積層された構成を有する照射野限定器を用いる第4実施形態を示す図であり、
図26Aは第1セット位置、
図26Bは第2セット位置をそれぞれ示す。
【
図27】第4実施形態の変位機構の一部を示す図であり、
図27Aは、ピニオンギアを反時計回りに回転させた場合、
図27Bは、ピニオンギアを時計回りに回転させた場合をそれぞれ示す。
【
図29】照射開口のX方向の幅を調整する様子を示す図であり、
図29Aは、照射開口のX方向の幅を広げた場合、
図29Bは、照射開口のX方向の幅を狭めた場合をそれぞれ示す。
【
図30】4枚の板状部材が積層された構成を有する照射野限定器を用いる第4実施形態の変形例を示す図であり、
図30Aは第1セット位置、
図30Bは第2セット位置をそれぞれ示す。
【
図31】シート状部材で構成された照射野限定器を用いる第5実施形態を示す図である。
【
図33】板状部材を回転させることで、照射開口を移動させる第6実施形態を示す図であり、
図33Aは第1セット位置、
図33Bは第2セット位置をそれぞれ示す。
【
図34】板状部材を回転させることで、照射開口を移動させる第6実施形態の変形例を示す図である。
【
図35】板状部材を回転させることで、照射開口を移動させる第6実施形態の変形例を示す図である。
【
図36】照射開口のY方向の幅を調整する第7実施形態を示す斜視図である。
【
図37】照射開口のY方向の幅を調整する第7実施形態を示す平面図である。
【
図39】
図38に示す板状部材により照射開口を画定する様子を示す図である。
【
図40】
図38に示す板状部材の第1セット位置を示す図である。
【
図41】
図38に示す板状部材の第2セット位置を示す図である。
【
図42】複数の放射線管を複数のグループに分け、端のグループの放射線管を、撮像面に対して所定の角度傾けて配置した例を示す図である。
【
図43】複数の放射線管を複数のグループに分け、端のグループの放射線管を、撮像面に対して所定の角度傾けて配置した例を示す図である。
【
図44】第2グループの板状部材の貫通穴のサイズおよび形状を示す図である。
【
図45】第1グループの板状部材の貫通穴のサイズおよび形状を示す図である。
【
図46】第1グループの板状部材の貫通穴のサイズおよび形状の別の例を示す図である。
【
図47】放射線の焦点が、円弧状に、等間隔で並ぶ設定とされた複数の位置に、放射線管を配した例を示す図である。
【
図48】
図47に示す例の場合の板状部材の第1セット位置を示す図である。
【
図49】
図47に示す例の場合の板状部材の第2セット位置を示す図である。
【
図50】
図47に示す例の場合の板状部材の貫通穴のサイズおよび形状を示す図である。
【
図51】
図47に示す例の場合の板状部材の貫通穴のサイズおよび形状の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1および
図2において、乳房撮影装置10は、本開示の技術に係る「トモシンセシス撮影装置」の一例であり、被検者Hの乳房Mを被写体とする。乳房撮影装置10は、乳房MにX線、γ線といった放射線37(
図3等参照)を照射して、乳房Mの放射線画像を撮影する。
【0020】
乳房撮影装置10は、装置本体11と制御装置12とで構成される。装置本体11は、例えば医療施設の放射線撮影室に設置される。制御装置12は、例えば放射線撮影室の隣室の制御室に設置される。制御装置12は、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータである。制御装置12は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク13を介して、画像データベース(以下、DB;Data Base)サーバ14と通信可能に接続されている。画像DBサーバ14は、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)サーバであり、乳房撮影装置10から放射線画像を受信し、放射線画像を蓄積管理する。
【0021】
ネットワーク13には、端末装置15も接続されている。端末装置15は、例えば、放射線画像に基づく診療を行う医師が使用するパーソナルコンピュータである。端末装置15は、画像DBサーバ14から放射線画像を受信し、放射線画像をディスプレイに表示する。
【0022】
装置本体11は、スタンド20とアーム21とを有する。スタンド20は、放射線撮影室の床面に設置される台座20Aと、台座20Aから高さ方向に延びる支柱20Bとで構成される。アーム21は横から見た形状が略C字状であり、接続部21Aを介して、支柱20Bに接続されている。この接続部21Aにより、アーム21は支柱20Bに対して高さ方向に移動可能で、被検者Hの身長に応じた高さ調節が可能となっている。また、アーム21は、接続部21Aを貫く、支柱20Bに垂直な回転軸回りに回転可能である。
【0023】
アーム21は、線源収容部22、検出器収容部23、および本体部24で構成される。線源収容部22は放射線源25を収容する。検出器収容部23は放射線検出器26を収容する。また、検出器収容部23は、乳房Mが載せられる撮影台としても機能する。本体部24は、線源収容部22と検出器収容部23とを一体的に接続する。線源収容部22は高さ方向の上側に配されており、検出器収容部23は、線源収容部22と対向する姿勢で、高さ方向の下側に配されている。
【0024】
放射線源25は、複数、例えば15個の放射線管27と、放射線管27を収容するハウジング28とで構成される。ハウジング28内は、絶縁油で満たされている。放射線管27は、乳房Mに対する照射角度が異なる複数の投影画像P(
図7参照)を放射線画像として撮影するトモシンセシス撮影に用いられる。放射線検出器26は、乳房Mを透過した放射線37を検出することで放射線画像を出力する。なお、放射線管27の個数は、上記例の15個に限らない。放射線管27は3個以上であればよい。
【0025】
線源収容部22には、放射線源25に加えて照射野限定器29も収容されている。照射野限定器29は、放射線源25の下部に取り付けられている。照射野限定器29はコリメータとも呼ばれ、放射線検出器26の撮像面45(
図4参照)における放射線37の照射野を規定する。
【0026】
本体部24の線源収容部22と検出器収容部23との間には、圧迫板30が取り付けられている。圧迫板30は、放射線37を透過する材料で形成されている。圧迫板30は、検出器収容部23と対向配置されている。圧迫板30は、検出器収容部23に向かう方向と検出器収容部23から離間する方向とに移動可能である。圧迫板30は、検出器収容部23に向かって移動して、検出器収容部23との間で乳房Mを挟み込んで圧迫する。圧迫板30は複数種類あり、乳房Mの大きさ等に応じて付け替えられる。
【0027】
線源収容部22の正面下部には、フェイスガード31が取り付けられている。フェイスガード31は、被検者Hの顔を放射線37から防護する。
【0028】
支柱20B内には、放射線管27に印加する管電圧を発生する管電圧発生器(図示せず)が設けられている。また、支柱20B内には、管電圧発生器から延びる電圧ケーブル(図示せず)が配設されている。電圧ケーブルは、さらに接続部21Aからアーム21を通って線源収容部22内に導入され、放射線源25に接続される。
【0029】
図3において、放射線管27は、陰極35と陽極36とを有している。陰極35は、電子を放出する。陽極36は、電子が衝突することで放射線37を発する。陰極35と陽極36とは、略円筒形状の真空のガラス管38に収容されている。陰極35は冷陰極である。より詳しくは、陰極35は、電界放出現象を利用して、陽極36に向けて電子線EBを放出する電子放出源を有する電界放出型である。陽極36は、回転機構により回転する回転陽極とは異なり、回転せずに位置が固定された固定陽極である。
【0030】
陰極35と陽極36との間には、管電圧発生器からの管電圧が印加される。管電圧の印加により、陰極35から陽極36に向けて電子線EBが放出される。そして、電子線EBが衝突した陽極36の点(以下、焦点)Fから、放射線37が発せられる。
【0031】
検出器収容部23の部分を示す
図4において、放射線検出器26は撮像面45を有する。撮像面45は、乳房Mを透過した放射線37を検出することで乳房Mの投影画像Pを撮像する面である。より詳しくは、撮像面45は、放射線37を電気信号に変換する画素が二次元配列された二次元平面である。このような放射線検出器26は、FPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる。放射線検出器26は、放射線37を可視光に変換するシンチレータを有し、シンチレータが発する可視光を電気信号に変換する間接変換型でもよいし、放射線37を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。
【0032】
図5および
図6は、乳房撮影装置10における乳房Mの撮影方式を示す。
図5は頭尾方向(CC;Craniocaudal view)撮影、
図6は内外斜位方向(MLO;Mediolateral Oblique view)撮影である。CC撮影は、検出器収容部23と圧迫板30とで、乳房Mを上下に挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像PとしてCC画像を出力する。対してMLO撮影は、検出器収容部23と圧迫板30とで、乳房Mを60°程度の角度で斜めに挟み込んで圧迫して撮影する撮影方式である。この場合、放射線検出器26は、投影画像PとしてMLO画像を出力する。なお、
図5および
図6では、簡単化のために1個の放射線管27だけを図示している。また、
図5および
図6では、右の乳房Mを示しているが、もちろん左の乳房Mの撮影も可能である。
【0033】
支柱20B側から放射線源25および放射線検出器26を平面視した
図7において、撮像面45の法線方向をZ方向、撮像面45の辺に沿う方向をX方向、Z方向およびX方向と直交する撮像面45の奥行方向をY方向とする。放射線管27は、撮像面45に対する放射線37の照射角度が異なる計15箇所の位置SP1、SP2、・・・、SP14、SP15に配置されている。各位置SP1~SP15における放射線管27の放射線37の焦点F1~F15は、直線状に、等しい間隔D_Fで並んでいる。
【0034】
X方向の撮像面45の辺の中心点CPから延びる撮像面45の法線NRに、位置SP8が配されている。位置SP8以外の他の位置は、法線NRの左側に位置SP1~SP7、法線NRの右側に位置SP9~SP15というように、法線NRに関して左右対称に設定されている。すなわち、位置SP1~SP7の放射線管27と位置SP9~SP15の放射線管27とは、線対称な位置に配置されている。
【0035】
ここで、位置SP1~SP15が設定される直線GLは、放射線源25および放射線検出器26をZ方向から平面視した場合に、X方向の撮像面45の辺と平行な線である。つまり、X方向は、本開示の技術に係る「放射線管の配列方向」の一例である。直線GLは、Y方向に関して、手前側(支柱20Bとは反対側)にオフセットされている。なお、焦点F1~F15の間隔D_Fは、完全に一致する場合に限らず、例えば±5%の誤差を許容する。
【0036】
放射線37の照射角度は、法線NRと、各位置SP1~SP15における放射線管27の放射線37の焦点F1~F15および中心点CPを結んだ線とのなす角度である。このため、法線NRと一致する位置SP8における照射角度は0°である。
図7では、位置SP1における焦点F1および中心点CPを結んだ線L1、および法線NRと線L1とのなす角度である照射角度θ(1)を、一例として図示している。
【0037】
符号Ψで示す角度は、トモシンセシス撮影の最大スキャン角度である。最大スキャン角度Ψは、位置SP1~SP15のうちの両端の位置SP1、SP15で規定される。具体的には、最大スキャン角度Ψは、位置SP1における焦点F1および中心点CPを結んだ線L1と、位置SP15における焦点F15および中心点CPを結んだ線L15とのなす角度である。
【0038】
通常の1回のトモシンセシス撮影においては、各位置SP1~SP15の放射線管27が各々動作されて、各位置SP1~SP15から乳房Mに向けて放射線37が照射される。放射線検出器26は、各位置SP1~SP15において照射された放射線37をその都度検出し、各位置SP1~SP15における投影画像Pを出力する。トモシンセシス撮影は、
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影の両撮影方式でそれぞれ行うことが可能である。なお、
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影を単独で行う単純撮影の場合は、照射角度が0°の位置SP8に配置された放射線管27のみが動作される。
【0039】
図8に示すように、乳房撮影装置10は、通常、
図7で示したトモシンセシス撮影で得られた、複数の位置SP1~SP15における複数の投影画像Pから、乳房Mの任意の断層面TF1~TFNに対応する断層画像T1~TNを生成する。乳房撮影装置10は、断層画像T1~TNの生成に、フィルタ補正逆投影法等の周知の方法を用いる。断層画像T1~TNは、各断層面TF1~TFNのそれぞれに存在する構造物を強調した画像である。この断層画像TのSN比を向上させるために、隣接する放射線管27同士は、例えば数cm~数十cmの距離で近接して配置されている。
【0040】
図9に示すように、ハウジング28の下面には、各放射線管27の直下の対応する位置に、放射線37を透過する放射線透過窓50が設けられている。各放射線管27から発せられた放射線37は、この放射線透過窓50を通じて、ハウジング28外に出射される。
【0041】
照射野限定器29は、ハウジング51と、1枚の板状部材52とを含む。ハウジング51の上面には、ハウジング28の放射線透過窓50と対応する位置に、小開口53が設けられている。また、ハウジング51の下面には、大開口54が設けられている。ハウジング28の下面とハウジング51の上面は、放射線透過窓50と小開口53とが一致するように接続される。放射線透過窓50から出射された放射線37は、小開口53を介してハウジング51内に入射される。
【0042】
板状部材52は、ハウジング51に収容される。板状部材52は、例えば鉛等の放射線37を遮蔽する材料で形成されている。板状部材52には、X方向に沿って、計8個の貫通穴55が形成されている。隣接する貫通穴55は、間隔D_OPだけ離れている。間隔D_OPは、1個の放射線管27分の間隔と略同じである。貫通穴55は、後述するように、照射野を規定するための照射開口として機能する。小開口53を介してハウジング51内に入射された放射線37は、板状部材52の貫通穴55により照射開口を画定され、大開口54を介して放射線検出器26の撮像面45に向けて出射される。
【0043】
図10に示すように、板状部材52は、ハウジング51内において、一対のレール60によりX方向に移動自在に保持されている。レール60には、板状部材52のY方向の両端が嵌合する。なお、図示は省略したが、レール60には、板状部材52のX方向の移動を容易ならしめるためのベアリング等が設けられている。
【0044】
図11に示すように、板状部材52のX方向の一端の下面には、レール60と干渉しない位置にラックギア61が形成されている。ラックギア61は、ピニオンギア62と噛み合っている。ピニオンギア62は、モータ63により時計回りと反時計回りに回転する。すなわち、板状部材52は、ラックアンドピニオンによってX方向に往復移動される。
図11Aは、モータ63によりピニオンギア62を反時計回りに回転させた場合、
図11Bは、モータ63によりピニオンギア62を時計回りに回転させた場合をそれぞれ示す。なお、
図10で示したレール60と、
図11で示したラックギア61、ピニオンギア62、およびモータ63とは、板状部材52を変位させることで、照射開口として機能する貫通穴55を移動させる変位機構65(
図16参照)を構成する。
【0045】
変位機構65は、
図12に示す第1セット位置と、
図13に示す第2セット位置とに板状部材52を移動させる。
図12に示すように、第1セット位置においては、板状部材52の各貫通穴55は、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。すなわち、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27は、本開示の技術に係る「第1放射線管」の一例である。
【0046】
一方、
図13に示すように、第2セット位置においては、板状部材52の各貫通穴55は、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。ただし、第1セット位置において位置SP15の放射線管27に配された貫通穴55を除く。すなわち、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27は、本開示の技術に係る「第2放射線管」の一例である。
【0047】
【0048】
図9で示したように、隣接する貫通穴55は、1個の放射線管27分の間隔と略同じ間隔D_OP離れている。このため、
図12および
図14Aで示した第1セット位置においては、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27には、貫通穴55は対向しない。一方、
図13および
図14Bで示した第2セット位置においては、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27には、貫通穴55は対向しない。
【0049】
図15において、制御装置12を構成するコンピュータは、ストレージデバイス70、メモリ71、CPU(Central Processing Unit)72、ディスプレイ73、および入力デバイス74等を備えている。
【0050】
ストレージデバイス70は、制御装置12を構成するコンピュータに内蔵、またはケーブル、ネットワークを通じて接続されたハードディスクドライブである。もしくはストレージデバイス70は、ハードディスクドライブを複数台連装したディスクアレイである。ストレージデバイス70には、オペレーティングシステム等の制御プログラム、各種アプリケーションプログラム、およびこれらのプログラムに付随する各種データ等が記憶されている。なお、ハードディスクドライブに代えてソリッドステートドライブを用いてもよい。
【0051】
メモリ71は、CPU72が処理を実行するためのワークメモリである。CPU72は、ストレージデバイス70に記憶されたプログラムをメモリ71へロードして、プログラムにしたがった処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
【0052】
ディスプレイ73は各種画面を表示する。各種画面にはGUI(Graphical User Interface)による操作機能が備えられる。制御装置12を構成するコンピュータは、各種画面を通じて、入力デバイス74からの操作指示の入力を受け付ける。入力デバイス74は、キーボード、マウス、タッチパネル等である。
【0053】
ストレージデバイス70には、作動プログラム77が記憶されている。作動プログラム77は、コンピュータを制御装置12として機能させるためのアプリケーションプログラムである。ストレージデバイス70には、作動プログラム77の他に、設定用テーブル78が記憶されている。
【0054】
作動プログラム77が起動されると、制御装置12のCPU72は、メモリ71等と協働して、受付部80、設定部81、制御部82、生成部83、および表示制御部84として機能する。
【0055】
受付部80は、入力デバイス74を介してオペレータにより入力される撮影条件87を受け付ける。受付部80は、撮影条件87を設定部81に出力する。
【0056】
設定部81は、受付部80からの撮影条件87を受け取る。また、設定部81は、ストレージデバイス70から設定用テーブル78を読み出す。設定部81は、撮影条件87および設定用テーブル78にしたがって、放射線管27および変位機構65の動作条件88を設定する。設定部81は、動作条件88を制御部82に出力する。
【0057】
制御部82は、放射線源25、放射線検出器26、および照射野限定器29の動作を制御する。制御部82は、設定部81からの動作条件88を受け取る。制御部82は、動作条件88にしたがって放射線管27および変位機構65を動作させ、放射線管27から放射線37を照射させる。制御部82は、放射線37の照射により放射線検出器26で検出された投影画像Pを、放射線検出器26から生成部83に出力させる。
【0058】
生成部83は、放射線検出器26からの複数の投影画像Pを受け取る。生成部83は、複数の投影画像Pに基づいて、断層画像Tを生成する。生成部83は、断層画像Tを表示制御部84に出力する。
【0059】
表示制御部84は、生成部83からの断層画像Tを受け取る。表示制御部84は、受け取った断層画像Tをディスプレイ73に表示する制御を行う。
【0060】
図16に示すように、撮影条件87には、使用する圧迫板30(
図16では使用圧迫板と表記)と撮影モードとが含まれる。圧迫板30は、前述のように、乳房Mの大きさ等に応じて付け替えられる。そして、トモシンセシス撮影においては、使用する圧迫板30に応じて、放射線37を照射する放射線管27が異なる(
図17参照)。このため、使用する圧迫板30が撮影条件87に含まれている。
【0061】
撮影モードには、画質優先モードと被曝低減モード(
図17参照)とがある。画質優先モードは、できるだけ多くの放射線管27から放射線37を照射して、断層画像のSN比を高めるモードである。一方、被曝低減モードは、最低限の放射線37の照射に止め、被検者Hの被曝をなるべく低減するモードである。これらの各撮影モードに応じて、放射線37を照射する放射線管27が異なる(
図17参照)ため、撮影モードが撮影条件87に含まれている。
【0062】
図16では、使用する圧迫板30として圧迫板Bが、撮影モードとして画質優先モードが、それぞれ登録された撮影条件87を例示している。なお、使用する圧迫板30および撮影モード以外で、放射線37を照射する放射線管27が変更されるような情報を撮影条件87に加えてもよい。
【0063】
図17に示すように、設定用テーブル78には、使用する圧迫板30および撮影モードの組み合わせ毎に、放射線37を照射する放射線管27(
図17では使用放射線管と表記)の放射線管ID(Identification Data)が登録されている。放射線管IDは、位置SP1に配された放射線管27がRT01、位置SP2に配された放射線管27がRT02、・・・、位置SP14に配された放射線管27がRT14、位置SP15に配された放射線管27がRT15というように、各位置SP1~SP15と数字がリンクしている。
【0064】
被曝低減モードにおいては、放射線37を照射する放射線管27の数が、画質優先モードよりも減らされている。例えば使用する圧迫板30が圧迫板Bの場合、画質優先モードでは、放射線管IDがRT02~RT14の計13個の放射線管27が登録されている。対して被曝低減モードでは、放射線管IDがRT02、RT04、RT06、RT08、RT10、RT12、RT14の計7個の放射線管27が登録されている。
【0065】
図18において、動作条件88には、放射線37の照射順毎に、放射線管27の放射線管IDおよび板状部材52のセット位置が登録されている。
図18では、撮影条件87が
図16で示した内容、すなわち、使用する圧迫板30が圧迫板Bで、撮影モードが画質優先モードである、という内容であった場合の動作条件88を例示している。撮影条件87が
図16で示した内容であった場合、
図17で示した設定用テーブル78によれば、放射線37を照射する放射線管27は、放射線管IDがRT02~RT14の放射線管27である。このため、動作条件88には、まず、照射順1~6に、放射線管IDとしてRT03、RT05、RT07、RT09、RT11、RT13が、板状部材52のセット位置として第1セット位置が、それぞれ登録される。そして、照射順7~13に、放射線管IDとしてRT02、RT04、RT06、RT08、RT10、RT12、RT14が、板状部材52のセット位置として第2セット位置が登録される。
【0066】
図18で示した動作条件88の場合、制御部82は、放射線管IDがRT03、RT05、RT07、RT09、RT11、RT13、RT02、RT04、RT06、RT08、RT10、RT12、RT14の放射線管27から、この順に放射線37を照射させる。また、制御部82は、照射順6と照射順7の間に変位機構65を動作させて、板状部材52のセット位置を第1セット位置から第2セット位置に移動させる。
【0067】
なお、他の例として、撮影条件87が、使用する圧迫板30が圧迫板Bで、撮影モードが被曝低減モードである、という内容であった場合を考える。この場合、設定用テーブル78によれば、放射線37を照射する放射線管27は、放射線管IDがRT02、RT04、RT06、RT08、RT10、RT12、RT14のものである。したがってこの場合は、板状部材52のセット位置は、終始第2セット位置のままとなる。
【0068】
制御部82は、例えばリニアエンコーダの検出信号に基づいて、板状部材52が第1セット位置および第2セット位置のいずれにあるかを認識する。
【0069】
次に、上記構成による作用について、
図19に示すフローチャートを参照して説明する。作動プログラム77が起動されると、
図15で示したように、制御装置12のCPU72が、受付部80、設定部81、制御部82、生成部83、および表示制御部84として機能される。
【0070】
まず、受付部80によって撮影条件87が受け付けられる(ステップST100)。撮影条件87は、受付部80から設定部81に出力される。続いて、設定部81において、撮影条件87および設定用テーブル78にしたがって、動作条件88が設定される(ステップST110)。動作条件88は、設定部81から制御部82に出力される。
【0071】
ステップST120において、制御部82によって、動作条件88にしたがって放射線管27が動作される。放射線管27から発せられた放射線37は、放射線透過窓50および小開口53を通じて照射野限定器29に入射される。照射野限定器29に入射された放射線37は、照射開口として機能する板状部材52の貫通穴55を通過する。これにより放射線37の照射野が規定される。貫通穴55は、
図9で示したように、1個の放射線管27分の間隔と略同じ間隔D_OPを空けて配置されている。したがって、ある放射線管27から放射線37を照射したときに、隣接する貫通穴55から放射線37が漏れることが抑制される。
【0072】
ステップST120において、必要に応じて、制御部82によって、動作条件88にしたがって変位機構65が動作され、板状部材52がX方向に移動される。これにより、照射開口として機能する貫通穴55が2個の放射線管27で兼用される。
【0073】
貫通穴55により照射野が規定されて乳房Mに照射された放射線37は、放射線検出器26により検出される。そして、放射線検出器26から生成部83に投影画像Pが出力される。なお、このステップST120は、動作条件88に登録された全放射線管27による放射線37の照射が終了しない間(ステップST130でNO)は、繰り返し続けられる。
【0074】
動作条件88に登録された全放射線管27による放射線37の照射が終了した場合(ステップST130でYES)、生成部83により、放射線検出器26からの投影画像Pに基づいて、断層画像Tが生成される(ステップST140)。断層画像Tは、生成部83から表示制御部84に出力される。断層画像Tは、表示制御部84によってディスプレイ73に表示され、オペレータの閲覧に供される(ステップST150)。
【0075】
以上説明したように、乳房撮影装置10は、3個以上の放射線管27を有する放射線源25に対して、少なくとも1個の放射線管27分の間隔D_OPを空けて配置された放射線37の照射開口である貫通穴55を複数有し、かつ、3個以上の放射線管27の一部である第1放射線管から放射線37を発する場合の第1セット位置と、3個以上の放射線管27のうち、第1放射線管とは異なる第2放射線管から放射線37を発する場合の第2セット位置に、照射開口の位置が移動される照射野限定器29を用いている。したがって、不必要な被曝を防止することが可能となる。
【0076】
本実施形態では、照射野限定器29を、照射開口として機能する貫通穴55が形成された板状部材52で構成している。そして、変位機構65により、放射線管27の配列方向であるX方向に沿って板状部材52を移動させることで、貫通穴55を移動させている。したがって、非常に単純な構成で放射線37の照射野を規定することができる。
【0077】
なお、
図20に示すように、板状部材52を、第1板状部材52Aと第2板状部材52Bとに分けてもよい。第1板状部材52Aは、位置SP1~SP8に配置された放射線管27から照射された放射線37の照射開口を画定する。また、第2板状部材52Bは、位置SP9~SP15に配置された放射線管27から照射された放射線37の照射開口を画定する。
【0078】
より詳しくは、第1板状部材52Aの貫通穴55は、第1セット位置においては、位置SP1、SP3、SP5、SP7に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、第1板状部材52Aの貫通穴55は、第2セット位置においては、位置SP2、SP4、SP6、SP8に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。また、第2板状部材52Bの貫通穴55は、第1セット位置においては、位置SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、第2板状部材52Bの貫通穴55は、第2セット位置においては、位置SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。第1板状部材52Aおよび第2板状部材52Bは、同じタイミングで第1セット位置と第2セット位置に移動される。
【0079】
図21は、第1板状部材52Aおよび第2板状部材52Bを、X方向において互いに干渉しないように、Z方向にずらして配置した例を示す。この場合、
図22の表95に示すように、第2板状部材52Bが第1セット位置にある状態で放射線37を照射している最中に、第1板状部材52Aを第2セット位置に移動させることができる。また、第1板状部材52Aが第2セット位置にある状態で放射線37を照射している最中に、第2板状部材52Bを第2セット位置に移動させることができる。上記第1実施形態および
図20の場合は、放射線37の照射と板状部材52の移動とを別々に行う必要があったが、
図21の例によれば、放射線37の照射と板状部材52の移動とを併せて行うことができるので、撮影時間を短縮化することができる。
【0080】
なお、以下の実施形態では、上記第1実施形態と同じく、位置SP1~SP15に15個の放射線管27が配置されていることを前提にして説明する。
【0081】
[第2実施形態]
図23に示す第2実施形態では、放射線管27と貫通穴55との間隔が変化する方向に板状部材52を移動させる。
【0082】
図23に示すように、第2実施形態では、X方向に沿って板状部材52を移動させるだけでなく、Z方向に沿って板状部材52を移動させる。これにより、放射線管27と貫通穴55との間隔が変化する。すなわち、Z方向は、本開示の技術に係る「放射線管と貫通穴との間隔が変化する方向」の一例である。なお、Z方向に沿って板状部材52を移動させる方法としては、
図11で示したラックアンドピニオンをZ方向用にも設ける方法を採用することができる。あるいは、ワイヤとプーリにより板状部材52をZ方向に沿って昇降させてもよい。変位機構65には、こうした板状部材52をZ方向に沿って移動させる機構も含まれる。
【0083】
図23Aは、板状部材52が放射線管27側に移動され、放射線管27と貫通穴55との間隔が狭められた場合を示している。対して
図23Bは、板状部材52が放射線検出器26側に移動され、放射線管27と貫通穴55との間隔が広げられた場合を示している。
図23Aの場合、一点鎖線および符号100Aで示すように、貫通穴55により規定される照射野は、放射線検出器26の撮像面45と略同じサイズである。対して
図23Bの場合は、一点鎖線および符号100Bで示すように、貫通穴55で規定される照射野は、撮像面45よりも一回り小さいサイズである。すなわち、板状部材52が放射線検出器26側に移動され、放射線管27と貫通穴55との間隔が広げられたほうが、照射野のサイズは小さくなる。
【0084】
このように、第2実施形態では、放射線管27と貫通穴55との間隔が変化する方向に板状部材52を移動させるので、照射野のサイズを変更することができる。
【0085】
[第3実施形態]
図24および
図25に示す第3実施形態では、板状部材の隣接する貫通穴の間に、放射線管27に向かって突出した凸部を設ける。
【0086】
図24および
図25に示すように、第3実施形態の板状部材105には、隣接する貫通穴106の間に、放射線管27に向かって突出した凸部107が設けられている。この凸部107があることによって、貫通穴106から外れた放射線37は、
図25に×印で示すように効果的に遮蔽される。したがって、隣接する貫通穴106から放射線37が漏れることを、より確実に抑制することができる。また、隣接する貫通穴106同士の間隔D_OPをさらに狭めることができる。ひいては、隣接する放射線管27同士をさらに近接させて、断層画像TのSN比をさらに向上させることができる。
【0087】
なお、凸部107の放射線管27に向かう立ち上がり面は、
図24および
図25で例示したように傾斜していてもよいし、垂直であってもよい。
【0088】
[第4実施形態]
図26~
図30に示す第4実施形態では、板状部材が積層された構成を有する照射野限定器を用いる。
【0089】
図26に示す照射野限定器は、2枚の板状部材110A、110Bが、放射線検出器26の撮像面45の法線方向であるZ方向に沿って積層された構成を有する。板状部材110Aには貫通穴111A、板状部材110Bには貫通穴111Bがそれぞれ形成されている。板状部材110A、110Bは、上記第1実施形態の板状部材52と同様に、図示しないレールによりX方向に移動自在に保持されている。
【0090】
図26Aに示すように、第1セット位置においては、板状部材110A、110Bの各貫通穴111A、111Bは、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図26Bに示すように、第2セット位置においては、板状部材110A、110Bの各貫通穴111A、111Bは、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。
【0091】
図27に示すように、板状部材110AのX方向の一端の下面には、ラックギア115Aが形成されている。同じく、板状部材110BのX方向の一端の上面には、ラックギア115Bが形成されている。ラックギア115A、115Bは、ピニオンギア116と噛み合っている。ピニオンギア116は、モータ117により時計回りと反時計回りに回転する。すなわち、板状部材110A、110Bは、ラックアンドピニオンによってX方向の互いに相反する方向に往復移動される。このように、積層方向に隣接する2枚の板状部材110A、110Bは、1つのモータ117によってX方向に沿って同時に移動される。モータ117は、本開示の技術に係る「アクチュエータ」の一例である。
図27Aは、モータ117によりピニオンギア116を反時計回りに回転させた場合、
図27Bは、モータ117によりピニオンギア116を時計回りに回転させた場合をそれぞれ示す。なお、図示しないレールと、
図27で示したラックギア115A、115B、ピニオンギア116、およびモータ117によって、変位機構が構成される。
【0092】
図28は、板状部材110A、110Bを放射線管27側からみた図である。板状部材110Bは板状部材110Aよりも放射線検出器26側に位置しているため、板状部材110Bの貫通穴111Bは、図示するように、板状部材110Aの貫通穴111Aよりも一回り大きいサイズを有する。そして、ハッチングおよび符号119で示す照射開口は、貫通穴111Aの3辺と貫通穴111Bの1辺とで画定される。すなわち、貫通穴111A、111Bは、少なくとも1辺が照射開口119の開口縁として機能する。こうして貫通穴111A、111Bにより画定される照射開口119の間隔D_OPは、上記第1実施形態と同じく、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する(
図26参照)。
【0093】
図29に示すように、本実施形態の照射野限定器は、板状部材110A、110BのX方向の移動量を微調整することで、照射開口119のX方向の幅W_OPXを調整することが可能である。
図29Aは、照射開口119のX方向の幅W_OPXを、
図29に示す状態から若干広げた場合、
図29Bは、照射開口119のX方向の幅W_OPXを、
図28に示す状態から若干狭めた場合をそれぞれ示す。
【0094】
このように、第4実施形態では、少なくとも1辺が照射開口119の開口縁として機能する貫通穴111A、111Bが形成された板状部材110A、110Bが、放射線検出器26の撮像面45の法線方向であるZ方向に沿って積層された照射野限定器を用いる。そして、変位機構は、板状部材110A、110Bの各々を、放射線管27の配列方向であるX方向に沿って移動させることで、照射開口119を移動させる。これにより、
図29で示したように、照射開口119のX方向の幅W_OPXを調整することが可能となる。
【0095】
また、
図27で示したように、積層方向に隣接する2枚の板状部材110A、110Bは、モータ117によって、放射線管27の配列方向であるX方向に沿って同時に移動される。したがって、各板状部材110A、110Bを2つのモータによって移動させる場合と比べて、部品コストを削減することができ、装置の小型化にも貢献することができる。
【0096】
なお、積層する板状部材の枚数は2枚に限らない。例えば
図30に示すように、4枚の板状部材120A、120B、120C、120DがZ方向に沿って積層された構成を有する照射野限定器を用いてもよい。
【0097】
図30において、板状部材120A~120Dには、それぞれ貫通穴121A、121B、121C、121DがX方向に沿って形成されている。
図30Aに示すように、第1セット位置においては、板状部材120A~120Dの各貫通穴121A~121Dは、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図30Bに示すように、第2セット位置においては、板状部材120A~120Dの各貫通穴121A~121Dは、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。なお、この場合も、各貫通穴121A~121Dにより画定される照射開口119の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0098】
また、積層方向に隣接する2枚の板状部材120A、120Bは、
図26で示した照射野限定器と同様に、1つのアクチュエータによってX方向の互いに相反する方向に往復移動される。同じく、積層方向に隣接する2枚の板状部材120C、120Dも、1つのアクチュエータによってX方向の互いに相反する方向に往復移動される。さらに、
図26で示した照射野限定器と同様に、貫通穴121A~121Dは、少なくとも1辺が照射開口119の開口縁として機能する。
【0099】
このように4枚の板状部材120A~120Dを用いれば、2枚の板状部材110A、110Bの場合よりも、照射開口119のX方向の幅W_OPXをより細かく調整することができる。
【0100】
上記第3実施形態を適用して、複数枚の板状部材のうち、最も放射線管27側に配された板状部材の隣接する貫通穴の間に、放射線管27に向かって突出した凸部を設けてもよい。
【0101】
[第5実施形態]
図31および
図32に示す第5実施形態では、シート状部材で構成された照射野限定器を用いる。
【0102】
図31において、シート状部材125には、照射開口として機能する貫通穴126が形成されている。隣接する貫通穴126は、上記第1実施形態の板状部材52の貫通穴55と同じく、少なくとも1個の放射線管27分の間隔D_OPを空けて配置されている。つまり、シート状部材125は、上記第1実施形態の板状部材52をシート状にしたものであるといえる。シート状部材125は、一対のレール127によりX方向に移動自在に保持されている。シート状部材125は、例えば、可撓性を有するプラスチックフイルムの表面に、放射線37を遮蔽する材料が塗布されたものである。
【0103】
シート状部材125のX方向の一端は、芯材128に取り付けられている。芯材128は、モータ129により時計回りと反時計回りに回転する。このモータ129による芯材128の回転により、X方向に沿ってシート状部材125が送り出され、かつ巻き取られる。これにより、破線で示すように、照射開口として機能する貫通穴126が移動される。つまり、レール127、芯材128、およびモータ129は、変位機構130を構成する。なお、図示は省略したが、シート状部材125のX方向の他端側には、送り出されたシート状部材125を収容するスペースが確保されている。
【0104】
図32に示すように、貫通穴126には、比較的サイズが大きい貫通穴126A、サイズが中程度の貫通穴126B、比較的サイズが小さい貫通穴126Cの3種がある。第5実施形態の制御部は、シート状部材125の送り出し量を変更することで、貫通穴126A~126Cのうちのいずれかを各放射線管27に対向させる。
【0105】
このように、第5実施形態では、照射開口として機能する貫通穴126が形成されたシート状部材125で構成された照射野限定器を用いる。そして、変位機構130により、放射線管27の配列方向であるX方向に沿ってシート状部材125を送り出し、かつ巻き取ることで、照射開口を移動させる。したがって、板状部材で構成される照射野限定器と比べて、照射野限定器を軽量化することができる。
【0106】
また、シート状部材125には、大きさが異なる複数種の貫通穴126A~126Cが形成されている。したがって、照射野のサイズを変更することができる。大きさが異なる複数種の貫通穴が形成された板状部材を複数枚用意し、複数枚の板状部材を選択的に用いる場合よりも、部品点数を格段に少なくすることができ、装置の小型化にも貢献することができる。
【0107】
貫通穴126は2種でもよいし4種以上でもよい。また、シート状部材125のX方向の他端にも芯材を取り付け、該芯材をモータにより回転させてもよい。
【0108】
貫通穴126は1種でも構わない。この場合は上記第2実施形態を適用して、放射線管27と貫通穴126との間隔が変化する方向にシート状部材125を移動させてもよい。あるいは上記第4実施形態を適用して、複数枚のシート状部材125をZ方向に積層してもよい。
【0109】
[第6実施形態]
図33~
図35に示す第6実施形態では、板状部材を回転させることで、照射開口を移動させる。
【0110】
図33に示す照射野限定器は、X方向に並んだ8枚の板状部材135(
図33では5枚だけ図示)で構成される。各板状部材135には、照射開口として機能する貫通穴136が1つ形成されている。各板状部材135には、回転軸137が取り付けられている。回転軸137は、放射線管27と撮像面45との間に配されている。より詳しくは、回転軸137は、放射線管27の配列方向であるX方向に直交する方向、かつ放射線検出器26の撮像面45に平行な方向に延びる軸である。つまり、回転軸137は、Y方向と平行である。
【0111】
回転軸137には、モータ138が接続されている。回転軸137は、モータ138により時計回りおよび反時計回りに回転する。各板状部材135は、回転軸137を中心として時計回りおよび反時計回りに回転する。回転軸137およびモータ138は、変位機構139を構成する。
【0112】
図33Aに示すように、第1セット位置においては、板状部材135の貫通穴136は、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図33Bに示すように、第2セット位置においては、板状部材135の貫通穴136は、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。ただし、第1セット位置において位置SP1の放射線管27に配された貫通穴136を除く。なお、この場合も、貫通穴136により画定される照射開口の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0113】
このように、第6実施形態では、照射開口として機能する貫通穴136が形成された板状部材135で構成された照射野限定器を用いる。そして、放射線管27の配列方向であるX方向に直交し、かつ放射線検出器26の撮像面45に平行な方向に延びる回転軸137を中心として板状部材135を回転させることで、照射開口を移動させる。したがって、板状部材またはシート状部材をX方向に沿って移動させる上記各実施形態を、何らかの理由で採用できない場合にも対応することができる。
【0114】
なお、板状部材に形成する貫通穴の個数は1つに限らない。例えば
図34および
図35に示す板状部材145のように、2つの貫通穴146を形成してもよい。
【0115】
図34および
図35において、板状部材145は、位置SP1側に配置された1枚の第1板状部材145Aと、4枚の第2板状部材145Bとで構成される。第1板状部材145Aには、照射開口として機能する貫通穴146が1つ形成されている。対して、第2板状部材145Bには、照射開口として機能する貫通穴146が2つ形成されている。第1板状部材145Aおよび第2板状部材145Bには、回転軸147が取り付けられている。回転軸147は、回転軸137と同じく、放射線管27の配列方向であるX方向に直交し、かつ放射線検出器26の撮像面45に平行な方向に延びる軸である。
【0116】
回転軸147には、モータ148が接続されている。回転軸147は、モータ148により時計回りおよび反時計回りに回転する。第1板状部材145Aおよび第2板状部材145Bは、回転軸147を中心として時計回りおよび反時計回りに回転する。回転軸147およびモータ148は、変位機構149を構成する。
【0117】
図34に示すように、第1セット位置においては、第2板状部材145Bの貫通穴146は、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図35に示すように、第2セット位置においては、第1板状部材145Aおよび第2板状部材145Bの貫通穴146は、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。ただし、第1セット位置において位置SP13、SP15の放射線管27に配された、第2板状部材145Bの貫通穴146を除く。なお、この場合も、貫通穴146により画定される照射開口の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0118】
[第7実施形態]
図36および
図37に示す第7実施形態では、調整部材160によって、複数の照射開口119の幅を一度に調整する。
【0119】
図36および
図37は、上記第1実施形態の板状部材52を用いた場合を例示している。
図36および
図37において、板状部材52の上部には、一対の調整部材160が覆い被さるように配されている。調整部材160は、X方向に長い長方形状の板であり、長辺がX方向に沿って配置されている。調整部材160は、図示しない移動機構によって、Y方向に沿って往復移動可能である。Y方向は、本開示の技術に係る「放射線管の配列方向と交差する方向」の一例である。
図37に示すように、調整部材160をY方向に沿って移動させることで、複数の照射開口119のY方向の幅W_OPYが一度に調整される。
【0120】
このように、第7実施形態では、複数の照射開口119の幅W_OPYを調整するための調整部材160を有する。調整部材160は、放射線管27の配列方向と交差する方向に移動することによって、複数の照射開口119の幅W_OPYを一度に調整する。したがって、Y方向の照射開口119の幅W_OPYを、容易に調整することが可能となる。
【0121】
上記第1実施形態の板状部材52で構成される照射野限定器29に限らず、他の実施形態の照射野限定器に本第7実施形態を適用して、Y方向の照射開口119の幅W_OPYを調整してもよい。
【0122】
図38~
図41に示す一対の板状部材165、166を用いてもよい。
【0123】
図38において、一対の板状部材165、166は、X方向に関して線対称な形状を有する。板状部材165、166は、上記第1実施形態の板状部材52をジグザグに切ったような形状を有している。より詳しくは、板状部材165、166は、X方向に長い長尺部167、168から、矩形板状の複数の突出部169、170が、間隔を空けてY方向に沿って突き出した櫛形状を有している。板状部材165、166は、Z方向にずらして配置される(
図41および
図42も参照)。また、板状部材165、166は、斜め上方向または斜め下方向に移動される(
図41および
図42参照)。
【0124】
この場合、
図39に示すように、照射開口119は、板状部材165の長尺部167および突出部169と、板状部材166の長尺部168および突出部170とで囲われた空間により画定される。
【0125】
図40に示すように、第1セット位置においては、板状部材165、166の各長尺部167、168および各突出部169、170は、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図41に示すように、第2セット位置においては、板状部材165、166の各長尺部167、168および各突出部169、170は、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。なお、この場合も、照射開口119の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0126】
第1セット位置においては、板状部材165が放射線管27側、板状部材166が放射線検出器26側にそれぞれ配置される。第2セット位置においては、板状部材165が第1セット位置から斜め下方向、板状部材166が第1セット位置から斜め上方向にそれぞれ移動される。そして、第1セット位置とは逆に、板状部材166が放射線管27側、板状部材165が放射線検出器26側にそれぞれ配置される。なお、
図40および
図41では、理解を助けるために、突出部169、170を実線で示し、長尺部167、168を2点鎖線で示している。
【0127】
このように、貫通穴を有さない板状部材165、166を用い、板状部材165、166を斜め方向に移動させることによっても、照射開口119を画定することができる。なお、
図38~
図41では2枚の板状部材165、166を例示したが、板状部材の枚数は3枚以上でもよい。
【0128】
図42および
図43に示すように、放射線管27を、位置SP1~SP5に配された放射線管27の第1グループ、位置SP6~SP10に配された放射線管27の第2グループ、位置SP11~SP15に配された放射線管27の第3グループに分け、第1グループおよび第3グループの放射線管27を、撮像面45に対して所定の角度傾けて配置してもよい。
【0129】
この場合、グループ毎に板状部材180を用意することが好ましい。すなわち、第1グループには板状部材180A、第2グループには板状部材180B、第3グループには板状部材180Cをそれぞれ用意する。板状部材180Aには貫通穴181A、板状部材180Bには貫通穴181B、板状部材180Cには貫通穴181Cがそれぞれ形成されている。
【0130】
板状部材180A~180Cは、
図42に示す第1セット位置と、
図43に示す第2セット位置とに移動される。
図42に示すように、第1セット位置においては、板状部材180A~180Cの各貫通穴181A~181Cは、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図43に示すように、第2セット位置においては、板状部材180A~180Cの各貫通穴181A~181Cは、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。なお、この場合も、各貫通穴181A~181Cにより画定される照射開口の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0131】
図44に示すように、第2グループにおいては、放射線管27と板状部材180Bとの距離SD1と、板状部材180Bと撮像面45との距離SD2との比SD1/SD2が、グループを構成する全ての放射線管27で同じである。また、放射線管27の配列方向と板状部材180Bの長辺方向とが平行である。さらに、撮像面45のX方向の辺と板状部材180Bの長辺方向とが平行である。したがって、板状部材180Bの貫通穴181Bは、サイズが同じになり、かつ形状が長方形状と同じになる。なお、距離SD1は、放射線管27の焦点Fと、対向する貫通穴181Bの中心とを結ぶ線の長さである。また、距離SD2は、貫通穴181Bの中心と、撮像面45の中心とを結ぶ線の長さである。
【0132】
対して
図45に示すように、第1グループにおいては、放射線管27の配列方向と板状部材180Bの長辺方向とが平行である点は第2グループと同じであるが、比SD1/SD2が、グループを構成する放射線管27によって異なる。また、前述のように、放射線管27が撮像面45に対して所定の角度傾けて配置されているので、撮像面45のX方向の辺と板状部材180Bの長辺方向とが平行ではない。したがって、板状部材180Aの貫通穴181Aは、サイズが異なる。より詳しくは、貫通穴181Aは端にいくほどサイズが大きくなる。また、貫通穴181Aは、形状が、端に向けて裾野が広がった台形状となる。なお、板状部材180Cは、板状部材180Aと鏡面対称な形状であるため、図示を省略する。
【0133】
なお、
図46に示すように、第1グループにおいて、比SD1/SD2が、グループを構成する全ての放射線管27で同じとなるよう、中央にいくにつれて放射線管27を板状部材180Aから離して配置してもよい。この場合の貫通穴181Aは、
図45の場合と同じ台形状であるが、サイズは同じになる。この場合、図示は省略したが、第3グループにおいても、比SD1/SD2が、グループを構成する全ての放射線管27で同じとなるよう、中央にいくにつれて放射線管27を板状部材180Cから離して配置する。
【0134】
このように、複数の放射線管27を複数のグループに分け、各グループを1つの放射線源と見立て、各グループに板状部材180A~180Cを配してもよい。
【0135】
上記各実施形態では、焦点Fが配される位置を直線状としているが、これに限定されない。
図47に示すように、焦点F1~F15が配される複数の位置SP1~SP15を、円弧状に、等しい間隔D_Fで並べてもよい。この場合、例えば
図48および
図49に示す1枚の板状部材185が用いられる。板状部材185は、位置SP1~SP15に倣った円弧形状を有している。板状部材185には、照射開口として機能する貫通穴186が形成されている。板状部材185は、放射線管27の配列方向に沿って移動される。
【0136】
図48に示すように、第1セット位置においては、板状部材185の各貫通穴186は、位置SP1、SP3、SP5、SP7、SP9、SP11、SP13、SP15に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。一方、
図49に示すように、第2セット位置においては、板状部材185の各貫通穴186は、位置SP2、SP4、SP6、SP8、SP10、SP12、SP14に配置された放射線管27からの放射線37の照射開口として機能する。ただし、第1セット位置で位置SP15の放射線管27に配された貫通穴186を除く。なお、この場合も、貫通穴186により画定される照射開口の間隔D_OPは、少なくとも1個の放射線管27分の間隔を有する。
【0137】
この場合、
図50に示すように、比SD1/SD2が放射線管27によって異なる。また、前述のように、放射線管27が円弧状に配置されているので、撮像面45のX方向の辺と板状部材185の長辺方向とが平行ではない。したがって、貫通穴186は、端にいくほどサイズが大きくなる。また、貫通穴186は、形状が、端に向けて裾野が広がった台形状となる。
【0138】
なお、
図51に示すように、円弧形状の板状部材185の代わりに、直線状の板状部材187を用いてもよい。この場合、比SD1/SD2が放射線管27によって異なる。ただし、撮像面45のX方向の辺と板状部材187の長辺方向とは平行である。したがって、板状部材187の貫通穴188は、端にいくほどサイズが小さくなる。また、貫通穴188は、形状が長方形状と同じになる。
【0139】
図52は、
図42~
図51の態様における貫通穴のサイズおよび形状をまとめた表189である。パターン1~3は放射線管27が直線状に配置された場合、パターン4、5は放射線管27が円弧状に配置された場合である。パターン1は、
図44で示した板状部材180Bの態様である。この場合、貫通穴181Bのサイズは同じになり、形状も長方形状と同じになる。パターン2は、
図45で示した板状部材180Aの態様である。この場合、貫通穴181Aのサイズは異なるが、形状は台形状と同じになる。パターン3は、
図46で示した板状部材180Aの態様である。この場合、貫通穴181Aのサイズは同じになり、形状も台形状と同じになる。
【0140】
パターン4は、
図50で示した板状部材185の態様である。この場合、貫通穴186のサイズは異なるが、形状は台形状と同じになる。パターン5は、
図51で示した板状部材187の態様である。この場合、貫通穴188のサイズは異なるが、形状は長方形状と同じになる。
【0141】
照射開口は、2個以上の放射線管27分の間隔を空けて配置されていてもよい。ただし、この場合は1つの照射開口を2個以上の放射線管27で兼用することになるため、板状部材等の移動回数が2回以上となる。
【0142】
上記第1実施形態等では、変位機構の例としてラックアンドピニオンを例示したが、これに限らない。他の周知の変位機構を用いてもよい。
【0143】
図5で示したCC撮影、および
図6で示したMLO撮影を単独で行う単純撮影の代わりに、単純撮影で得られる放射線画像と等価な合成放射線画像を生成してもよい。合成放射線画像は、トモシンセシス撮影で得られた複数の投影画像P、および生成部83で生成した複数の断層画像Tのうちの少なくともいずれかに、最小値投影法等の周知の合成画像生成処理を施すことで生成される。
【0144】
上記各実施形態では、乳房撮影装置10を例示した。従来、乳房撮影装置10においてトモシンセシス撮影を行うことは、乳房Mの微小石灰化等の病変の発見を容易にするための手法として有用性が認められている。したがって、本開示の技術を、乳房撮影装置10に適用することは好ましい。
【0145】
もちろん、乳房撮影装置10に限らず、本開示の技術を、他の撮影装置に適用してもよい。例えば、手術時に被検者Hを撮影する、
図53に示す撮影装置190に、本開示の技術を適用してもよい。
【0146】
撮影装置190は、制御装置191を内蔵する装置本体192と、横から見た形状が略C字状のアーム193とを備えている。装置本体192には台車194が取り付けられ、装置本体192は移動可能となっている。アーム193は、線源収容部195、検出器収容部196、および本体部197で構成される。
図1で示した乳房撮影装置10と同じく、線源収容部195は放射線源198および照射野限定器199を収容する。また、検出器収容部196は放射線検出器200を収容する。線源収容部195と検出器収容部196とは、本体部197により対向した姿勢で保持される。
【0147】
放射線源198および放射線検出器200は、
図1で示した放射線源25および放射線検出器26と基本的な構成は同じである。ただし、撮影装置190では、被検者Hの胸部全体等、乳房Mよりも大きな被写体を撮影する。このため、放射線源198を構成する放射線管201は、乳房撮影装置10の各放射線管27よりも径が大きい。また、放射線検出器200も、その撮像面202は、放射線検出器26の撮像面45よりも面積が大きい。なお、大きな被写体の撮影に対応するため、放射線管201の配列個数を増やしてもよい。
【0148】
検出器収容部196は、被検者Hが仰臥する寝台203の下方に挿入される。寝台203は放射線37を透過する材料で形成されている。線源収容部195は、被検者Hの上方であって、被検者Hを挟んで検出器収容部196と対向する位置に配置される。
【0149】
撮影装置190の照射野限定器199は、乳房撮影装置10の照射野限定器29と同じく、少なくとも1つの放射線管201分の間隔を空けて配置された放射線37の照射開口を複数有し、かつ、3個以上の放射線管201の一部である第1放射線管から放射線37を発する場合の第1セット位置と、3個以上の放射線管27のうち、第1放射線管とは異なる第2放射線管から放射線37を発する場合の第2セット位置の少なくとも2つのセット位置に、照射開口の位置が移動される。なお、撮影装置190においても、トモシンセシス撮影の他に、1つの放射線管201を用いて単純撮影を行うことが可能である。また、単純撮影を行う代わりに合成放射線画像を生成することも可能である。さらに、撮影装置190は、静止画の放射線画像を撮影する他、動画の放射線画像を撮影することも可能である。なお、符号204は、放射線源198のハウジングである。
【0150】
本開示の技術は、こうした手術用の撮影装置190以外にも、天井吊り下げ型の放射線源と、放射線検出器がセットされる立位撮影台または臥位撮影台とを組み合わせた一般的な放射線撮影装置に適用することも可能である。また、病棟を巡回して被検者Hを撮影するために用いられる、カート型の移動式放射線撮影装置に、本開示の技術を適用することも可能である。
【0151】
上記各実施形態では、1つの焦点Fを有する放射線管27を例示したが、これに限らない。複数の焦点Fを有する放射線管を用いてもよい。
【0152】
本開示の技術は、上述の種々の実施形態および/または種々の変形例を適宜組み合わせることも可能である。また、上記各実施形態に限らず、要旨を逸脱しない限り種々の構成を採用し得ることはもちろんである。
【0153】
以上に示した記載内容および図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、および効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、および効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容および図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことはいうまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容および図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0154】
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」と同義である。つまり、「Aおよび/またはB」は、Aだけであってもよいし、Bだけであってもよいし、AおよびBの組み合わせであってもよい、という意味である。また、本明細書において、3つ以上の事柄を「および/または」で結び付けて表現する場合も、「Aおよび/またはB」と同様の考え方が適用される。
【0155】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願および技術規格は、個々の文献、特許出願および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0156】
10 乳房撮影装置
11、192 装置本体
12、191 制御装置
13 ネットワーク
14 画像データベースサーバ(画像DBサーバ)
15 端末装置
20 スタンド
20A 台座
20B 支柱
21、193 アーム
21A 接続部
22、195 線源収容部
23、196 検出器収容部
24、197 本体部
25、198 放射線源
26、200 放射線検出器
27、201 放射線管
28、51、204 ハウジング
29、199 照射野限定器
30 圧迫板
31 フェイスガード
35 陰極
36 陽極
37 放射線
38 ガラス管
45、202 撮像面
50 放射線透過窓
52、105、110A、110B、120A~120D、135、145、145A、145B、165、166、180A~180C、185、187 板状部材
52A、52B 第1、第2板状部材
53 小開口
54 大開口
55、106、111A、111B、121A~121D、126、126A~126C、136、146、181A~181C、186、188 貫通穴
60、127 レール
61、115A、115B ラックギア
62、116 ピニオンギア
63、117、129、138、148 モータ
65、130、139、149 変位機構
70 ストレージデバイス
71 メモリ
72 CPU
73 ディスプレイ
74 入力デバイス
77 作動プログラム
78 設定用テーブル
80 受付部
81 設定部
82 制御部
83 生成部
84 表示制御部
87 撮影条件
88 動作条件
95、189 表
100A、100B 照射野
107 凸部
119 照射開口
125 シート状部材
128 芯材
137、147 回転軸
160 調整部材
167、168 長尺部
169、170 突出部
190 撮影装置
194 台車
203 寝台
CP 撮像面の辺の中心点
D_F 焦点の間隔
D_OP 貫通穴の間隔
EB 電子線
F、F1~F15 放射線の焦点
GL 焦点の位置が設定される直線
H 被検者
L、L1、L15 焦点と中心点とを結んだ線
M 乳房(被写体)
NR 撮像面の辺の中心点から延びる撮像面の法線
P 投影画像
RT01~RT15 放射線管ID
SD1 放射線管と板状部材との距離
SD2 板状部材と撮像面との距離
SP、SP1~SP15 放射線管の位置
ST100、ST110、ST120、ST130、ST140、ST150 ステップ
T、T1~TN 断層画像
TF、TF1~TFN 断層面
W_OPX 放射線管の配列方向の照射開口の幅
W_OPY 放射線管の配列方向に直交し、かつ放射線検出器の撮像面に平行な方向の照射開口の幅
θ 放射線の照射角度
Ψ トモシンセシス撮影の最大スキャン角度