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特許7187424デュラムバイタルグルテン含むパンケーキ用小麦粉組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】デュラムバイタルグルテン含むパンケーキ用小麦粉組成物
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/26 20060101AFI20221205BHJP
   A21D 10/02 20060101ALI20221205BHJP
   A21D 13/44 20170101ALI20221205BHJP
【FI】
A21D2/26
A21D10/02
A21D13/44
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019212962
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021083335
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【弁理士】
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】山岸 美菜
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-149756(JP,A)
【文献】特開平6-153769(JP,A)
【文献】特開2019-017275(JP,A)
【文献】Journal of Texture Studies,2010年,41,pp.245-261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23J
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/FSTA/AGRICOLA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉とデュラムバイタルグルテンの合計100質量部中、デュラムバイタルグルテンを1質量部以上30質量部以下含むパンケーキミックス用小麦粉組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用したパンケーキ用ミックス粉
【請求項3】
請求項1に記載のパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用したパンケーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュラムバイタルグルテン含むパンケーキ用小麦粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
バイタルグルテンは製パン時の作業性改善(べたつき抑制や弾力感の付与)、パンボリュームの増加や食感改善を目的に使用されているが、普通小麦を原料として製造されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
近年、コンビニエンスストアやカフェなどでパンケーキの人気が高まっているが、パンケーキには、高さ(厚み)が出るという条件も求められている。
高さを出す方法として、例えば、グアーガムとキサンタンガムを4:1~25:1の重量比で含有することを特徴とするホットケーキ用プレミックスが知られている(例えば特許文献2参照)。
また、例えば、全ミックス中に、粗蛋白含量が11.5質量%以上の強力粉を80質量%以上含む穀粉類を50~80質量%含有し、且つ小麦蛋白を0.5~ 10質量%さらに含有することを特徴とする焼き菓子類用ミックスが知られている(例えば特許文献3参照)。
また、例えば、RS2に分類される難消化性澱粉とRS4に分類される難消化性澱粉とを1:1.5~15の質量比で含有するベーカリー食品用ミックスが知られている(例えば特許文献4参照)。
また、例えば、α化米粉と、米粉および/ または澱粉とを含有し、α化米粉と、米粉および/または澱粉との配合比( 重量基準)が0 .2~40:99. 8~60であることを特徴とする菓子類用ミックスが知られている(例えば特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-28537号公報
【文献】特開平5-328890号公報
【文献】特開2012-175940号公報
【文献】特開2019-92474号公報
【文献】特開2013-99294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ふんわりした食感で口どけが良く、高さ(厚み)が出るパンケーキミックス用小麦粉組成物及びこれを使用したパンケーキ用ミックス粉、及びパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用したパンケーキを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、普通小麦ではなく、デュラム小麦を原料として調製したバイタルグルテン(以下、デュラムバイタルグルテンという)を含む小麦粉組成物を使用することで、ふんわりした食感で口どけが良く、高さ(厚み)が出たパンケーキを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、小麦粉とデュラムバイタルグルテンの合計100質量部中、デュラムバイタルグルテンを1質量部以上30質量部以下含むパンケーキミックス用小麦粉組成物、及びこれを使用したパンケーキ用ミックス粉、及びパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用したパンケーキである。
なお、普通小麦から採取したバイタルグルテン(以下、バイタルグルテンという)では、高さ(厚み)は出るが、ふんわりした食感で口どけが良いパンケーキを得ることができない。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用することで、ふんわりした食感で口どけが良く、高さ(厚み)が出たパンケーキを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のパンケーキとは、小麦粉、糖類、卵、水及び/又は牛乳、ベーキングパウダー、油脂、必要に応じ乳化剤、増粘剤などを加えてよく混ぜた生地を、焼成板上で焼いたものをいい、形状には特に限定はないが、通常は、円盤状に焼成される。
糖類等の配合により、パンケーキではなく、ホットケーキ、どら焼など呼ばれている場合があるが、すべて本発明のパンケーキに含まれる。
【0009】
デュラム小麦は、主にマカロニ、スパゲティ用のセモリナを得るための原料小麦としてよく知られているが、二粒系小麦に属し、普通系小麦(普通小麦)とは遺伝的にも区別されている。
本発明のデュラムバイタルグルテンは、このデュラム小麦を原料としている。
本発明のデュラムバイタルグルテンは、普通小麦からグルテンを採取する場合と同様の製造方法で得ることができる。
一例として、デュラム小麦粉100質量部に対して水55質量部を加え混捏し生地玉を形成し20分間、30℃の湯浴中にて放置した後、水中にて水洗し、澱粉を洗い出して、デュラム小麦蛋白濃縮物を得た後、このデュラム小麦蛋白濃縮物を真空乾燥機にて乾燥後粉砕して粉末状とし、デュラムバイタルグルテンを得ることができる。
このデュラムバイタルグルテンの蛋白質含量は、精製の程度や水分含有量により多少変動するが約70質量%である。
なお、本発明において、デュラムバイタルグルテンの使用量は、蛋白質含量70質量%に換算した量である。
デュラムバイタルグルテンは、市販品も使用できる。
【0010】
本発明のパンケーキミックス用小麦粉組成物のデュラムバイタルグルテンの含有量は、小麦粉とデュラムバイタルグルテンの合計100質量部中、1質量部以上30質量部以下である(蛋白質量換算で0.7質量部以上21.0質量部以下)である。
1質量部未満では、十分な効果を得ることが出来ず、高さ(厚み)が出ない。
また、30質量部を超えると高さ(厚み)が出て、グルテンを使用しない場合より、ふんわりした食感で口どけは良くなるが蛋白質特有の臭いが出てしまうため好ましくない。
本発明で使用できる小麦粉の種類は特に限定はなく、例えば、薄力粉、中力粉、強力粉、全粒粉、これらの混合物などを挙げることができる。
【0011】
本発明のパンケーキの原料は、本発明のパンケーキミックス用小麦粉組成物を使用する以外は公知のパンケーキの原料が使用でき特に限定はない。
例えば、パンケーキの原料として、小麦粉以外の穀粉類、生澱粉類、加工澱粉類、糖類、卵粉類、粉乳類、油脂類、ベーキングパウダー、乳化剤、増粘剤、食塩、保存料、香料、香辛料、水、牛乳等を挙げることができる。
また、本発明のパンケーキミックス用小麦粉組成物と、これらの原料を必要に応じて混合することでパンケーキ用ミックス粉を得ることができる。
また、ミックス粉とすることなく、これらの原料を順次ミキサーに投入して製造することもできる。
【0012】
前記パンケーキ用ミックス粉を使用したパンケーキの製造方法も公知のパンケーキの製造方法が使用でき、特に限定はない。
例えば、パンケーキ用ミックス粉に加水して生地を調製し、焼成機で焼成してパンケーキを得ることができる。
得られたパンケーキは、公知の方法で食すことができる。
【実施例
【0013】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1~3、比較例1~2、参考例1]パンケーキ
表1に示す配合のパンケーキ原料をパン用縦型ミキサーに投入し、室温で回転数139min-1、1分間混合してパンケーキ用バッターを得た。
このパンケーキ用バッター60gを180℃に予熱した焼成機を使用して3分30秒間焼成しパンケーキを得た。
表1中、配合の単位は質量部である。
【0014】
【表1】
【0015】
焼成後、室温で10分間、放冷した後、5枚(A~E)のパンケーキの高さ(厚み)を測定した。
結果を表2に示す。
表2中、単位はcmである。
【0016】
【表2】
【0017】
デュラムバイタルグルテンを使用した実施例1~3及び比較例2、バイタルグルテンを使用した比較例1は、使用していない参考例1より高さ(厚み)が出ていた。
【0018】
また、前記パンケーキを、デュラムバイタルグルテン及びバイタルグルテンを配合しない参考例1を3点とし以下の評価基準で10名のパネラーにより食感を評価した。
結果を表3に示す。
・食感
5点・・・ふんわり感がかなりあり口どけが非常に良好で、非常に良い
4点・・・ふんわり感があり口どけが良好で、良い
3点・・・ふんわり感と口どけは、普通
2点・・・ふんわり感があまりなく、口どけ悪く、悪い
1点・・・ふんわり感がほとんどなく口どけが非常に悪く、非常に悪い
【0019】
【表3】
【0020】
食感は、デュラムバイタルグルテンを使用した場合、全て向上していたが特に実施例2が優れていた。
【0021】
臭いについても、10名のパネラーにより評価した。
比較例2は、蛋白質特有の臭いが、許容範囲を超えていた。
比較例2以外は、許容範囲内であった。
【0022】
臭いが許容範囲内であり、高さ(厚み)、食感が参考例1より優れているものを合格とした。
比較例1は、高さ(厚み)が出ていたが、食感が劣っていたので不合格であった。
比較例2は、蛋白質特有の臭いが、許容範囲を超えていたので不合格であった。
【0023】
[実施例4、比較例3、参考例2]どら焼
念のため、どら焼においてもデュラムバイタルグルテンの効果を確認した。
表4に示す配合のどら焼き原料をパン用縦型ミキサーに投入し、1分間、回転数139min-1で混合して、どら焼用バッターを得た。
15分間バッターを休ませた後、シュバンクを併用して190℃に予熱した焼成機を使用して、どら焼用バッター35gを2分30秒間焼成し、どら焼を得た。
表1中、配合の単位は質量部である。
【0024】
【表4】
【0025】
焼成後、室温で10分間、放冷した後、5枚(A~E)のどら焼の高さ(厚み)を測定した。
結果を表5に示す。
表5中、単位はcmである。
【0026】
【表5】
【0027】
デュラムバイタルグルテンを使用した実施例4、バイタルグルテンを使用した比較例3は、使用していない参考例2より高さ(厚み)が出ていた。
【0028】
また、前記どら焼を、実施例1と同様にして食感を評価した。
結果を表6に示す。
【0029】
【表6】
【0030】
デュラムバイタルグルテンを使用した場合は食感が優れていたが、バイタルグルテンを使用した場合は、使用しない場合より食感が劣っていた。