(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】基板搬送モジュール及び基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221206BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2018157709
(22)【出願日】2018-08-24
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井冨 隼人
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0032963(KR,A)
【文献】特開2014-038888(JP,A)
【文献】特開2005-259927(JP,A)
【文献】特開2005-072544(JP,A)
【文献】特開2017-108049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の側壁に設けられた第1の基板搬送口と、
前記筐体の外側に設けられるモジュールと前記筐体内との間で基板を搬送するために、前記筐体の側壁に設けられる開閉自在な第2の基板搬送口と、
容器本体と蓋体とにより構成されると共に前記基板が格納される搬送容器の前記容器本体を、当該容器本体に開口する基板取り出し口の口縁部が前記第1の基板搬送口の口縁部に密着するように前記筐体の側壁に接続し、前記容器本体に対する前記蓋体の着脱による前記基板取り出し口の開閉と、前記第1の基板搬送口の開閉とを行う
複数のロードポートと、
前記筐体内に設けられ、前記第1の基板搬送口と前記第2の基板搬送口との間で基板を搬送する搬送機構と、
前記筐体内に清浄な気体を供給する清浄気体供給部と、
前記筐体内を排気する排気機構と、
前記筐体内における前記第1の基板搬送口と前記第2の基板搬送口との間で搬送される前記基板の搬送路の上方に開口し、当該筐体内の雰囲気を吸引する吸引孔と、
前記吸引された雰囲気における、前記搬送路を移動する基板から放出されるガスに含まれる成分を検出する検出部と、
を備え
、
前記吸引孔は、前記筐体の側壁における前記第1の基板搬送口の上方に開口し、
前記第1の基板搬送口は横方向に複数設けられ、
前記吸引孔は複数設けられ、前記複数の第1の基板搬送口の上方に各々位置し、
前記複数の吸引孔は、横方向に等間隔に設けられ、且つ互いに同じ高さに位置し、
前記搬送機構によって前記複数の第1の基板搬送口の各々に向けて搬送される、前記筐体内の温度よりも高い温度の前記基板から放出されるガスを、前記検出部に各々供給するために前記吸引孔毎に設けられるポンプを備える基板搬送モジュール。
【請求項2】
前記筐体は金属により構成され、
前記検出部により検出される成分は、前記筐体内の雰囲気において前記金属を腐食させる成分である請求項1記載の基板搬送モジュール。
【請求項3】
前記成分は塩素である請求項2記載の基板搬送モジュール。
【請求項4】
前記基板の搬送路は、前記第2の基板搬送口から前記第1の基板搬送口へと搬送される基板の搬送路である請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板搬送モジュール。
【請求項5】
前記検出部は前記成分の濃度を検出し、
検出された成分の濃度と、予め設定された濃度の許容値と、に基づいて異常の有無を判定する判定部が設けられる請求項1ないし
4記載の基板搬送モジュール。
【請求項6】
前記吸引孔は、前記筐体の側壁における前記第1の基板搬送口の上方、前記第2の基板搬送口の上方に各々開口する第1の吸引孔、第2の吸引孔を含み、
前記検出部は、前記第1の吸引孔から吸引される雰囲気中の成分の濃度、前記第2の吸引孔から吸引される雰囲気中の成分の濃度を各々検出し、
前記判定部は、各々検出された成分の濃度と、予め設定された許容値と、に基づいて異常の有無を判定する請求項
5記載の基板搬送モジュール。
【請求項7】
前記検出部による検出結果に応じて、
前記清浄気体供給部、前記排気機構及び前記搬送機構のうちの少なくともいずれかの動作が制御されるように制御信号を出力する制御部が設けられる請求項1ないし
6のいずれか一つに記載の基板搬送モジュール。
【請求項8】
前記ロードポートには、前記蓋体が取り外された前記容器本体内をパージするパージガス供給機構が設けられ、
前記制御部は、
前記検出部による検出結果に応じて、前記清浄気体供給部、前記排気機構及び前記搬送機構のうちの少なくともいずれかの動作が制御されるように制御信号を出力する代わりに、
前記検出部による検出結果に応じて、少なくとも前記パージガス供給機構の動作を制御するように制御信号を出力する請求項
7記載の基板搬送モジュール。
【請求項9】
前記搬送機構による前記第1の基板搬送口への前記基板の搬送中における、当該第1の基板搬送口に接続された前記容器本体へ供給される前記パージガスの流量が、前記検出結果に応じて制御される請求項8記載の基板搬送モジュール。
【請求項10】
筐体内に設けられる
搬送機構により、当該筐体の側壁に各々設けられた第1の基板搬送口と第2の基板搬送口との間で基板を搬送する工程と、
前記筐体の外側に設けられるモジュールと前記筐体内との間で前記基板を搬送するために前記第2の基板搬送口を開閉する工程と、
複数のロードポート
の各々により、前記基板が格納される搬送容器を、当該搬送容器に設けられる基板取り出し口の口縁部が、前記第1の基板搬送口の口縁部に密着するように前記筐体の側壁に接続し、前記蓋体の開閉と前記第1の基板搬送口の開閉とを行う工程と、
清浄気体供給部により前記筐体内に清浄な気体を供給する工程と、
排気機構により前記筐体内を排気する工程と、
前記筐体内における前記第1の基板搬送口と前記第2の基板搬送口との間で搬送される前記基板の搬送路の上方に開口する吸引孔により、前記筐体内の雰囲気を吸引する工程と、
前記吸引された雰囲気における、前記搬送路を移動する基板から放出されるガスに含まれる成分を、検出部により検出する工程と、
を備え、
前記吸引孔は、前記筐体の側壁における前記第1の基板搬送口の上方に開口し、
前記第1の基板搬送口は横方向に複数設けられ、
前記吸引孔は複数設けられ、前記複数の第1の基板搬送口の上方に各々位置し、
前記複数の吸引孔は、横方向に等間隔に設けられ、且つ互いに同じ高さに位置し、
前記筐体内の雰囲気を吸引する工程は、前記搬送機構により前記複数の第1の基板搬送口の各々に向けて搬送される、前記筐体内の温度よりも高い温度の前記基板から放出されるガスを前記吸引孔毎に設けられるポンプにより前記検出部に各々供給する工程を含む基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板搬送モジュール及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、搬送容器に格納された状態で基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)が工場内を搬送される。半導体デバイスの製造装置としては、この搬送容器からウエハを取り出して真空処理が行われるように構成される。特許文献1には、このウエハの取り出しを行うモジュールであるミニエンバイロメント装置について記載されている。このミニエンバイロンメント装置は、フレームと、フレーム内でウエハを搬送する搬送ロボットと、フレーム内の酸素濃度をモニタするために、ウエハの搬送路の上方及び下方に各々設けられた酸素濃度計と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板搬送モジュールにおける基板から放出されるガスの影響を防ぐことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板搬送モジュールは、筐体と、
前記筐体の側壁に設けられた第1の基板搬送口と、
前記筐体の外側に設けられるモジュールと前記筐体内との間で基板を搬送するために、前記筐体の側壁に設けられる開閉自在な第2の基板搬送口と、
容器本体と蓋体とにより構成されると共に前記基板が格納される搬送容器の前記容器本体を、当該容器本体に開口する基板取り出し口の口縁部が前記第1の基板搬送口の口縁部に密着するように前記筐体の側壁に接続し、前記容器本体に対する前記蓋体の着脱による前記基板取り出し口の開閉と、前記第1の基板搬送口の開閉とを行う複数のロードポートと、
前記筐体内に設けられ、前記第1の基板搬送口と前記第2の基板搬送口との間で基板を搬送する搬送機構と、
前記筐体内に清浄な気体を供給する清浄気体供給部と、
前記筐体内を排気する排気機構と、
前記筐体内における前記第1の基板搬送口と前記第2の基板搬送口との間で搬送される前記基板の搬送路の上方に開口し、当該筐体内の雰囲気を吸引する吸引孔と、
前記吸引された雰囲気における、前記搬送路を移動する基板から放出されるガスに含まれる成分を検出する検出部と、
を備え、
前記吸引孔は、前記筐体の側壁における前記第1の基板搬送口の上方に開口し、
前記第1の基板搬送口は横方向に複数設けられ、
前記吸引孔は複数設けられ、前記複数の第1の基板搬送口の上方に各々位置し、
前記複数の吸引孔は、横方向に等間隔に設けられ、且つ互いに同じ高さに位置し、
前記搬送機構によって前記複数の第1の基板搬送口の各々に向けて搬送される、前記筐体内の温度よりも高い温度の前記基板から放出されるガスを、前記検出部に各々供給するために前記吸引孔毎に設けられるポンプを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板搬送モジュールにおける基板から放出されるガスの影響を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態である基板処理装置の平面図である。
【
図2】前記基板処理装置に設けられる成膜モジュールの概略縦断側面図である。
【
図3】前記基板処理装置に設けられるローダーモジュールの縦断側面図である。
【
図4】前記ローダーモジュールの縦断側面図である。
【
図5】前記ローダーモジュールの横断平面図である。
【
図6】前記ローダーモジュールにて行われる塩素の検出を説明するためのグラフ図である。
【
図8】前記基板処理装置に設けられる制御部のブロック図である。
【
図9】前記制御部にて実施されるフローの説明図である。
【
図10】前記ローダーモジュールの他の構成例を示す縦断側面図である。
【
図11】前記ローダーモジュールのさらに他の構成例を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施の形態であるローダーモジュール4を含む真空処理装置1について、
図1を参照しながら説明する。ローダーモジュール4は例えば横長に構成されたEFEM(Equipment Front End Module)であり、このローダーモジュール4内は、大気雰囲気且つ常圧雰囲気に形成されている。ローダーモジュール4については後に詳しく説明するが、複数のウエハWを格納する密閉容器である搬送容器Bから当該ウエハWを取り出して、真空処理装置1内に取り込む基板搬送モジュールとして構成される。
【0009】
ローダーモジュール4の側方には、ウエハWの向きや偏心の調整を行うアライメントモジュール11が設けられている。このアライメントモジュール11も、基板搬送モジュールとして構成される。ローダーモジュール4の後方側の左右には、ロードロックモジュール12、13が設けられている。ロードロックモジュール12、13は、互いに同様に構成されており、内部にウエハWを載置して待機させるためのステージ14を備えている。ロードロックモジュール12、13は、ウエハWをローダーモジュール4と後述の真空搬送モジュール15との間で搬送するために、内部をN2(窒素)ガス雰囲気の常圧雰囲気と真空雰囲気との間で切り替え可能に構成される。また、ロードロックモジュール12、13と、ローダーモジュール4との間にはゲートバルブG1が各々介在する。
【0010】
ロードロックモジュール12、13の後方側には、内部が真空雰囲気とされる真空搬送モジュール15が設けられている。真空搬送モジュール15は、搬送アーム16を備えている。真空搬送モジュール15にはその周に沿って4つの成膜モジュール2が接続されており、真空搬送モジュール15と成膜モジュール2との間にはゲートバルブG2が介在している。この成膜モジュール2は、真空雰囲気下でウエハWの表面にTiN(窒化チタン)膜を形成する。
【0011】
搬送容器Bに格納されるウエハWは、ローダーモジュール4→アライメントモジュール11→ローダーモジュール4→ロードロックモジュール12(13)→真空搬送モジュール15→成膜モジュール2の順で搬送されて成膜処理される。成膜処理されたウエハWは、成膜モジュール2→真空搬送モジュール15→ロードロックモジュール12(13)→ローダーモジュール4→搬送容器B1の順に搬送される。ロードロックモジュール12、13と、真空搬送モジュール15と、成膜モジュール2との間におけるウエハWの搬送は、上記の搬送アーム16により行われる。アライメントモジュール11と、ローダーモジュール4と、ロードロックモジュール12、13との間におけるウエハWの搬送は、ローダーモジュール4に設けられる後述の搬送機構40により行われる。
【0012】
続いて、
図2の概略図を用いて成膜モジュール2の構成について説明する。成膜モジュール2は真空容器21を備えている。図中22は、上記のゲートバルブG2により開閉される真空容器21の搬送口である。真空容器21内には、当該真空容器21内を排気して所定の圧力の真空雰囲気を形成するための排気口23が開口する。排気口23は、真空ポンプなどの排気機構24に接続されている。真空容器21内にはウエハWを載置するステージ25が設けられ、ステージ25はウエハWを加熱するヒーター26を備える。
【0013】
ステージ25の上方には、当該ステージ25に対向するガス供給部27が設けられており、ガス供給部27は例えばシャワーヘッドとして構成される。ガス供給部27には、第1の配管28、第2の配管29の各下流端が接続されている。第1の配管28の上流側は分岐して、原料ガスとして、例えばTiCl4(四塩化チタン)ガス供給源31、置換ガスとして、例えばN2ガス供給源32に接続されている。第2の配管29の上流側は分岐して、還元ガスとして、例えばNH3(アンモニア)ガス供給源33、置換ガスとして、例えばN2ガス供給源34に接続されている。これらの各ガス供給源31~34はバルブなどを含み、ガス供給部に各ガスを供給する。成膜処理時においてはヒーター26によりウエハWが所定の温度に加熱された状態でガス供給部27からTiCl4ガス、NH3ガスが交互に繰り返し供給される。また、TiCl4ガスが供給される期間と、NH3ガスが供給される期間との間の期間において、ガス供給部27からは、パージガスとしてN2ガスが供給する。つまり、この成膜モジュール2ではウエハWにALD(Atomic Layer Deposition)が行われて、TiN膜が形成される。
【0014】
続いて、
図3の縦断側面図も参照しながら、ローダーモジュール4について詳しく説明する。このローダーモジュール4は角型の筐体41を備えており、当該筐体41は平面視左右に横長の矩形状に構成される。この筐体41は金属、例えばアルミニウムにより構成されている。筐体41の後方側の側壁の左右に間隔を空けて、上記のゲートバルブG1によって開閉される第2の基板搬送口である搬送口42が開口している。搬送口42は互いに同じ高さに形成されている。筐体41内には、左右に移動自在且つ昇降自在な台43が設けられており、この台43上には昇降自在な多関節アームである搬送アーム44が設けられている。この搬送アーム44及び台43についても金属、例えばアルミニウムにより構成されている。台43の移動及び搬送アーム44の協働により、後述の各ロードポート6の搬送容器Bと上記のロードロックモジュール12、13の各ステージ14との間でウエハWの受け渡しが行われる。台43及び搬送アーム44は、搬送機構40として構成される。
【0015】
筐体41内の天井部はファンフィルタユニット(FFU)45により構成されている。FFU45にはガス供給管46の一端が接続され、ガス供給管46の他端は大気の供給源47に接続されている。FFU45、ガス供給管46及び大気供給源47は、清浄気体供給部を構成する。上記のFFU45は、当該FFU45の上部側を構成すると共にガス供給管46から供給される大気を下方に供給する送気用ファン48と、送気用ファン48の下方に設けられ、当該送気用ファン48から供給された大気をろ過することにより清浄化して下方に供給するフィルタ49とからなる。送気用ファン48の回転数によって、筐体41内における気流の速度及び筐体41内への大気の供給量が調整される。筐体41の底部には排気口51が開口し、排気口51は、排気機構をなす排気用ファン52に接続されている。排気用ファン52の回転数により、排気口51から排気量が調整される。
【0016】
前記筐体41の前方側の側壁、つまり上記の搬送口42が設けられる側壁に対向する側壁には、搬送口61が設けられている。搬送口61は3つ、互いに同じ高さに設けられ、左右に等間隔を空けて形成される(
図1参照)。そして搬送口61毎に、搬送容器Bから筐体41内にウエハWを搬入出すると共に当該搬送口61を開閉するロードポート6が設けられている。この搬送容器Bは、例えばFOUP(Front Open Unified Pod)であり、容器本体B1と、容器本体B1に対して着脱自在な蓋体B2とにより構成されている。蓋体B2は、容器本体B1に対して着脱されることで容器本体B1の前方に形成された基板取り出し口B3を開閉する。また、蓋体B2は図示しないロック機構を備え、当該ロック機構により容器本体B1に固定される。
【0017】
ロードポート6は、支持台62、移動ステージ63、開閉ドア64及び移動機構65により構成される。支持台62は、筐体41の外側において搬送口61の下方位置から前方に突出する。移動ステージ63は、搬送容器Bを載置した状態で支持台62上を前後に移動する。この移動ステージ63の移動によって、
図3に示すように容器本体B1の基板取り出し口B3の口縁部B4が、筐体41の外側から搬送口61の口縁部66に密着した状態とし、容器本体B1に対してウエハWの受け渡しが行えるようにする。なお、このように口縁部B4が口縁部66に密着するときの容器本体B1の位置を受け渡し位置とする。
【0018】
開閉ドア64は、筐体41の内側から搬送口61を閉じる、
図3に示す閉鎖位置に位置することができる。また、開閉ドア64は図示しないロック解除機構を備え、上記のように容器本体B1が受け渡し位置に位置し、且つ当該開閉ドア64が閉鎖位置に位置する状態で、蓋体B2のロック機構に作用し、容器本体B1と蓋体B2との間にロックが形成された状態と、ロックが解除された状態とを切り替えることができる。そのように容器本体B1とのロックが解除された蓋体B2は、当該開閉ドア64に支持される。移動機構65は、蓋体B2を支持する開閉ドア64を、閉鎖位置と、当該閉鎖位置の後方且つ下方の開放位置に移動させることができる。開放位置は、搬送容器Bとロードロックモジュール12、13との間でウエハWを搬送するときのウエハWの搬送路上から開閉ドア64が退避した位置である。
図4は開閉ドア64が開放位置に移動し、搬送機構40によってロードロックモジュール13から搬送容器BにウエハWが戻される状態を示している。
【0019】
上記の移動ステージ63は、容器本体B1を載置するときに当該容器本体B1内に接続されるガス供給部68を備えており、ガス供給部68にはガス供給路69の一端が接続されている。ガス供給路69の他端は、流量調整部71を介してN
2ガス供給源72に接続されている。N
2ガス供給源72は、受け渡し位置に容器本体B1が位置し、且つ開放位置に蓋体B2が位置するときに当該容器本体B1内にパージガスとしてN
2ガスを供給する。それによって、容器本体B1内のガスがパージされ、パージされたガスは、
図4中に点線で示すように筐体41内の上記の排気口51から排気されて除去される。流量調整部71はマスフローコントローラを含み、ガス供給部68からのパージガスの供給量を調整できるように構成されている。ガス供給部68、ガス供給路69、流量調整部71及びN
2ガス供給源72は、パージガス供給部を構成する。
【0020】
ガス供給部68からのパージガスの供給により、容器本体B1内において、後述するウエハWから放出されるガスの濃度を低下させることができ、ウエハWに対して次の処理が行われる環境へ、当該ガスを構成する成分が持ち込まれることを抑制することができる。例えば、このガス供給部68からのパージガスの供給は、開閉ドア64が閉鎖位置から移動して蓋体B2及び搬送口61が開いてから、開閉ドア64が閉鎖位置に移動して蓋体B2及び搬送口61が閉じられるまでの間、継続して行われる。
【0021】
筐体41内の側壁において各搬送口61の上方には、吸引孔73が開口している。このような位置に開口しているため、吸引孔73はロードロックモジュール13に対応する搬送口42から各ロードポート6に対応する搬送口61へ移動するウエハWの搬送路の上方に開口していることになる。また、各ガス吸引孔73は各搬送口61の位置に対応して、互いに同じ高さに設けられ且つ互いに等間隔を空けて設けられている。後述するように、吸引孔73から吸引を行うことで各搬送口61を通過するウエハWから放出される塩素濃度が検出されるが、このような吸引孔73の配置により、各搬送口61を通過するウエハWについて同じ条件で塩素濃度が検出される。
【0022】
図5の縦断平面図も参照しながら説明すると、各ガス吸引孔73には配管74の一端が接続され、各配管74の他端は分析部76に接続されている。従って、この例では搬送口61、ロードポート6、吸引孔73、配管74、分析部76の組が3つ設けられている。分析部76は例えばポンプ79を備えており、当該ポンプ79により吸引孔73から吸引された気体が分析部76に導入される。そして分析部76は、このように導入された雰囲気中の塩素(Cl)の濃度に対応する例えばアナログ電圧信号を検出信号として、後述の制御部8に送信する。
【0023】
分析部76により行われる塩素(Cl)の検出手法について特段の制限は無く、例えばイオンモビリティ分光法やイオンクロマト分析法など、公知の検出手法を用いることができる。分析部76による吸引については例えばローダーモジュール4の稼働中、常時行われる。なお配管74については、例えば樹脂からなる軟質の配管を用いてもよいし、例えばステンレスからなる硬質な配管を用いてもよい。そして、分析部76が、筐体41から離れた位置に設けられるように配管74を引き回してもよいし、分析部76が筐体41に設けられるように配管74を引き回してもよい。また、分析部76は例えば2L/分で気体を吸引するがこれは一例であり、そのような吸引量であることには限られない。なお、後述のように、3つのうちの1つの搬送口61の上方に設けられる吸引孔73から吸引された気体の塩素に基づいて、当該吸引孔73に接続される分析部76が検出信号を出力し、当該搬送口61を開閉するロードポート6の動作が制御される。従って、これらの搬送口61、ロードポート6、吸引孔73、分析部76を、互いに対応する搬送口61、ロードポート6、吸引孔73、分析部76として記載する場合が有る。
【0024】
上記のように塩素濃度を検出する理由について説明する。既述のように成膜モジュール2においては、TiCl4を用いて成膜が行われるため、成膜モジュール2から搬出されるウエハWには塩素(Cl)が残留し、ウエハWからこの塩素(Cl)を含むガスが放出されることになる。このウエハWから放出されるガスをアウトガスと呼ぶことにする。このアウトガス中の塩素(Cl)は、ウエハWが大気雰囲気のローダーモジュール4に搬送されたときに当該大気に含まれる水分と化学反応を起こして塩酸を生じ、この塩酸によって、ローダーモジュール4を構成する筐体41及び搬送機構40などを構成する金属が腐食する。つまり、塩素(Cl)を含むアウトガスは、ローダーモジュール4を構成する金属を腐食させる腐食性ガスである。
【0025】
成膜処理時に加熱されることで、搬送容器Bに回収されるウエハWの温度はローダーモジュール4の筐体41内の温度よりも高い。例えば筐体41内の温度は25℃程度であるが、ロードロックモジュール12(13)からローダーモジュール4に搬送されるウエハWの温度は例えば80℃以上である。このようにウエハWの温度が周囲の温度よりも高いことで、ウエハWのアウトガスは熱泳動により上昇気流を形成する。そして、このように上昇気流が形成されるため、筐体41内において成膜処理済みのウエハWが通過する搬送口61の上方は、このアウトガスに曝されやすく、比較的腐食が進行しやすい領域である。そこで、この例ではこの腐食が進行しやすい領域の塩素濃度を精度高く測り、後述する対処によって当該腐食の発生及び進行を抑えることができるように、吸引孔73が当該領域に開口するようにしている。ただし後述するように、このような位置に吸引孔73を設けることには限られない。
【0026】
続いて、制御部8について説明する。制御部8は、真空処理装置1の各部に制御信号を送信し、既述したウエハWの搬送及び処理が行えるように制御信号を送信する。また、既述した各分析部76から出力される検出信号に基づいて、吸引された気体中の塩素濃度を検出する。従って、制御部8及び分析部76は、塩素の検出部として構成される。さらに、制御部8はこの塩素濃度が上昇したときに、後述の対処動作が行われるように各部に制御信号を出力する。
【0027】
上記の吸引孔73からの吸引及び分析部76による塩素濃度の検出は、例えば真空処理装置1の動作中に常時行われる。上記のようにウエハWから放出されるアウトガスは上昇気流を形成することから、ウエハWが吸引孔73の下方を通過して搬送容器Bに戻されるときに、吸引孔73から吸引される気体には多くの塩素(Cl)が含まれることになり、検出される塩素濃度は急激に上昇する。その後、当該ウエハWが搬送容器Bに格納されると、吸引孔73から吸引されるガス中の塩素濃度は次第に低下する。
図6のグラフは、縦軸に塩素濃度(単位:ppb)、横軸に経過時間(単位:秒)を夫々設定している。この
図6では同じ搬送容器Bに順番に搬送される3つのウエハWについて、分析部76が仮にこれら3つのうち1つのウエハWのみから放出される塩素濃度を検出したとした場合の波形を、ウエハW毎に異なる線種で示している。波形について、1枚目のウエハWは実線、2枚目のウエハWは1点鎖線、3枚目のウエハWは2点鎖線で夫々示している。各ウエハWは同様に処理されているため、同様にガスが放出されると考えられるので、各波形は同一形状としている。
【0028】
ただし、ウエハWは比較的短い間隔で周期的に搬送容器Bに搬送される。つまり一つのウエハWが搬送容器Bに搬送されて、そのウエハWからのガスが吸引孔73に向けて供給されるときに、この吸引孔73付近にはそのウエハWに先行して搬送容器Bに搬送されたウエハWから放出されたガスが残留しており、この残留ガスも吸引孔73に供給される。従って、ウエハWが周期的に搬送容器Bに搬送される際には、搬送されるウエハWの順番が大きくなるほど、吸引孔73付近に塩素が累積され、検出される塩素濃度が高くなる。具体的に、
図6のグラフで3枚目のウエハWを搬送容器Bに戻す時刻t0で検出される塩素濃度は、この3枚目のウエハWから放出されるアウトガスの塩素濃度A3に、1枚目及び2枚目のウエハWから放出されて残留しているアウトガスの塩素濃度A1、A2が夫々累積された濃度、即ちA1+A2+A3に対応する。
【0029】
従って、多数のウエハWが周期的に搬送容器Bに搬送されるとき、塩素濃度の検出値は例えば
図7のグラフに示すような波形を描くと考えられる。
図7のグラフの縦軸、横軸は
図6のグラフと同様に塩素濃度、時間を夫々示しており、時刻t1、t2、t3、t4は、連続して搬送容器Bに戻される4枚のウエハWが吸引孔73の下方を各々通過したタイミングを夫々示している。ウエハWが吸引孔73の下方を通過する度に塩素濃度が急激に上昇し、その後、塩素濃度が急激に下降する、即ち波形にピークが見られるが、搬送容器Bに戻る順番が遅いウエハWが通過するときほど、そのピークの値は大きい。このようにウエハWの搬送中に検出される塩素濃度の値は上下に変動するが、制御部8は、例えばこのような波形の各ピーク(図中に点線の円で囲っている)の値のみを抽出して塩素濃度として取り扱い、予め設定された許容値とを比較して異常の有無を判定する。この塩素濃度の波形の取得及び波形からの塩素濃度の検出は、検出信号の受信後速やかに行われる。つまりウエハWの搬送中に、リアルタイムで塩素濃度の検出が行われる。
【0030】
続いて、
図8を参照しながら制御部8の構成について説明する。制御部8は、バス81、CPU82、プログラム格納部83、メモリ84及びアラーム出力部85を備えており、バス81にCPU82、プログラム格納部83、メモリ84、アラーム出力部85が各々接続されている。また、バス81には上記の分析部76が接続されており、制御部8が既述の検出信号を受信することができるように構成されている。図中では当該検出信号を、点線の矢印で示している。
【0031】
上記のプログラム格納部83には、プログラム86が格納されている。プログラム86には、制御部8から真空処理装置1の各部に制御信号を送信し、既述したウエハWの搬送及び処理、塩素濃度の検出、及び後述の対処動作のフローが実行されるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラム86は、例えば、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)、DVDなどの記憶媒体に格納されてプログラム格納部83にインストールされる。
【0032】
ところでこの制御部8は検出される塩素濃度が上昇したときに、この上昇に対処する対処動作を実行することができるように構成されている。この実施形態の当該対処動作としては、FFU45の送気用ファン48の回転数の増加、排気用ファン52の回転数の増加による排気口51からの排気量の増加、流量調整部71による受け渡し位置の容器本体B1へのパージガスの供給量の増加である。
図8では送気用ファン48、排気用ファン52、流量調整部71に送信される対処動作を実行するための制御信号を鎖線の矢印として表示している。
【0033】
メモリ84には、塩素濃度の許容値や、送気用ファン48の基準の回転数、排気用ファン52の基準の回転数が記憶される。例えば塩素濃度が正常と判定されたときには、このメモリ84に記憶される基準の回転数で送気用ファン48、排気用ファン52が各々回転し、異常と判定されたときには基準の回転数から所定量増加した回転数で送気用ファン48、排気用ファン52が回転する。この基準の回転数に対する所定の増加量についても、例えば当該メモリ84に記憶される。さらに、メモリ84には、塩素濃度の検出値と、流量調整部71による容器本体B1へのパージガス供給量との対応関係が記憶される。この対応関係は、塩素濃度の検出値が大きいほどパージガスの供給量が大きくなるように設定されている。この対応関係と塩素濃度の検出値とに基づいてパージガス供給量が決定され、決定された供給量となるように流量調整部71の動作が制御される。つまり上記の対応関係は、塩素濃度の検出値に応じてパージガス供給量をフィードバック制御するためのデータである。
【0034】
アラーム出力部85は、例えばモニタやスピーカーなどにより構成されており、異常が発生した旨を装置のユーザーに報知するためのアラームを、画像や音声として出力する。なお、塩素濃度の検出値に応じて、異なる種類のアラームが出力されるようにしてもよい。
【0035】
続いて
図9のフローに基づいて、既述のようにモジュール間をウエハWが搬送されて処理が行われる際のローダーモジュール4の動作を説明する。ローダーモジュール4において、FFU45の送気用ファン48が基準の回転数で回転すると共に、排気用ファン52が基準の回転数で回転し、筐体41内に下降気流が形成される。その一方で各吸引孔73からの吸引が行われ、各分析部76から制御部8に検出信号が送信される。このような状態で図示しない搬送用器用の搬送機構により、搬送容器Bが順次各ロードポート6に搬送される。
【0036】
そして、搬送容器Bから格納されているウエハWが搬出され、既述したようにその搬出されたウエハWは成膜モジュール2にて成膜処理を受けて当該搬送容器Bに戻される。搬出されたウエハWが全て戻された搬送容器Bについては、上記の搬送容器用の搬送機構によりロードポート6から退避される。空いたロードポート6には、新規な搬送容器Bが搬送される。既述のようにロードポート6によって搬送口61が開いている間は、当該ロードポート6に対応する分析部76により検出される塩素濃度に対応した供給量で、当該ロードポート6に設けられるガス供給部68からパージガスが、搬送容器Bの容器本体B1内に供給されてパージが行われる。
【0037】
図7で説明したように搬送容器BにウエハWが戻される度に、各検出信号から得られる塩素濃度の波形にはピークが出現し、このピークの値が塩素濃度として検出される(ステップS1)。この検出された塩素濃度について、許容値を越えているか否かが判定される(ステップS2)。許容値を越えていないと判定された場合は、塩素濃度は異常無しとされる。そして、異常無しとされた場合には、引き続きステップS1の塩素濃度の検出が行われ、基準の回転数での送気用ファン48の回転、基準の回転数での排気用ファン52の回転が各々行われる。
【0038】
ステップS2において例えばいずれかの分析部76によって検出される塩素濃度が許容値を越えることで、異常と判定されたとする。その場合には、送気用ファン52の回転数、排気用ファン53の回転数、異常な塩素濃度を検出した分析部76に対応するロードポート6のパージガス供給量の各々について、現在上限値となっているか否かの判定が行われる(ステップS3)。ステップS3において、送気用ファン52の回転数及び排気用ファン53の回転数について上限値ではないと判定されたものについては、回転数が所定量増加する。また、パージガス供給量については上限値ではないと判定されると、検出した塩素濃度に対応する値となるように増加する。送気用ファン52の回転数、排気用ファン53の回転、パージガス供給量のうち、上限値であると判定されたものについてはその上限値のまま動作が続けられる。また、アラーム出力部85より、塩素濃度が異常となったことを示すアラームが出力される(ステップS4)。
【0039】
ステップS4で送気用ファン48及び排気用ファン52の回転数が増加した場合は、筐体41内の排気量が増加すると共に下降気流の流速が大きくなる。それによって、筐体41内から塩素(Cl)が効率良く除去され、ロードロックモジュール12(13)から搬送容器Bに新たにウエハWが搬送されても、検出される塩素濃度のピーク値は比較的低いものとなる。また、ステップS4でガス供給部68からのパージガスの供給量が増加する場合は、容器本体B1内が効率良くパージされ、容器本体B1内に格納されるウエハWの表面に残留する塩素(Cl)は確実且つ速やかに除去され、容器本体B1内の塩素(Cl)濃度が低下する。
【0040】
上記のステップS4が行われた後、検出される塩素濃度について、許容値以下に低下したか否か判定される(ステップS5)。このステップS5で許容値以下に低下していないと判定された場合は既述のステップS3が再度実行される。ステップS5で許容値以下に低下したと判定された場合は、送気用ファン48の回転数、排気用ファン52の回転数は各々基準の回転数となるように低下する。また、その塩素濃度の低下に応じて、パージガスの供給量が低下する。その一方で、アラーム出力部85からのアラームの出力が停止する(ステップS6)。このステップS6に続いて、ローダーモジュール4におけるウエハWの搬送が終了したか否か判定される(ステップS7)。このステップS7で、搬送が終了したと判定された場合は、当該ローダーモジュール4における塩素濃度の検出が停止し、搬送が終了していないと判定された場合は、ステップS1以降の各ステップが実施される。また、上記のステップS3において、送気用ファン52の回転数、排気用ファン53の回転数及びパージガス供給量が上限値に達している場合は、これらのパラメータはその上限値のまま動作し、ステップS7と同様にローダーモジュール4にてウエハWの搬送が終了したか否か判定される(ステップS8)。このステップS8で搬送が終了したと判定された場合は塩素濃度の検出が停止し、搬送が終了していないと判定された場合は、ステップS5における検出される塩素濃度が許容値以下となったか否かの判定が行われる。
【0041】
上記の真空処理装置1を構成するローダーモジュール4においては、ロードロックモジュール12(13)から搬送容器Bに戻されるウエハWの搬送路の上方に開口するように、筐体41の側壁に吸引孔73が開口し、吸引された気体中の塩素濃度をより検出している。そして、検出される塩素濃度が上昇したときの対処動作としてFFU45及び排気用ファン52の回転数の増加が行われ、筐体41内の塩素濃度の上昇が抑制される。従って、筐体41内における各部の金属の腐食を抑制することができる。それ故に、腐食によって発生する異物がウエハWに付着することが抑制されるので、ウエハWの歩留りの低下も抑制することができる。また、対処動作として容器本体B1へのパージガスの供給量が増加されるので、搬送容器BによるウエハWの搬送先に塩素が持ち込まれることが抑制される。その結果、ウエハWの搬送先の環境の悪化を防ぐことができる。このパージガスの供給量は、検出される塩素濃度に対応するため、余分なパージガスを供給することを防いで、パージガスの使用量の削減を図ることができる。従って、装置を運用するにあたり省エネルギー化を図ることができる。
【0042】
ところで塩素濃度が上昇したときに行われる対処動作としては、上記の例に限られない。例えば、上記のように塩素濃度が異常と判定されたときに搬送機構40の動作を停止させ、ローダーモジュール4におけるウエハWの搬送が停止されてもよい。それにより、上記の腐食による異物が付着したおそれが有るウエハWを、当該ウエハWに対して次の処理を行う環境へ持ち込むことを防ぐことができる。なお、異常と判定されたときに搬送機構40の動作を速やかに止めても良いし、搬送容器Bから搬出されたウエハWを全て搬送容器Bに戻し終えた後に動作を停止してもよい。即ち搬送機構40の動作を停止するタイミングは任意に設定してよい。なお、塩素濃度に応じて行われる動作について、送気用ファン48の回転数、排気用ファンの回転数、ロードポート6のパージガスの供給量、及び当該搬送機構40の動作のうち、いずれか一つのみ、あるいはこの中のうちの選択された複数のみの動作が行われてもよい。
【0043】
また、例えば上記の塩素濃度に応じて、例えばFFU45から供給される大気の流量を変化させてもよい。具体的には、例えばFFU45に接続されるガス供給管46にマスフローコントローラを備えた流量調整部を設けて、塩素濃度が高いほどFFU45への大気の供給量を多くしてもよい。ところで、上記の例では塩素濃度に応じて排気用ファン52の回転数を制御することで排気口51からの排気量を制御しているが、そのように回転数を制御することには限られない。例えば排気用ファン52と排気口51との間にバルブが介設された排気管を設け、塩素濃度が高いときにはこのバルブの開度を大きくして排気量を増加させてもよい。なお、上記の例では送気用ファン48、排気用ファン52について、基準の回転数と、基準の回転数+所定の増加量との2段階に回転数が変更されるが、そのように2段階で変更されることには限られない。例えば検出された塩素濃度と回転数との対応関係を設定しておき、その対応関係に基づいて回転数が多段階に変更されるようにしてもよい。
【0044】
ところで、比較的高い塩素濃度が検出されたときに、上記のように送気用ファン48及び排気用ファンの回転数を制御して、筐体41内の塩素濃度を低下させるための動作が行われる例について説明してきたが、そのような動作が行われなくてもよい。例えば、制御部8に、検出された塩素濃度を表示するモニタを設ける。装置のユーザーは、そのモニタの塩素濃度の表示に基づいて、例えば筐体41内の金属部品を交換したり、洗浄したりする時期について検討することができるため有利である。
【0045】
また、上記の例では制御部8は常時、分析部76からの検出信号を受信して塩素濃度の検出を行っているが、そのように塩素濃度の検出が常時行われることには限られず、特定の時間のみ検出を行ってもよい。例えば、ロットの先頭のウエハWがロードロックモジュール12(13)から搬出されるときに検出が開始され、当該ロットの最後のウエハWが搬送容器Bに搬送完了するまでの期間(ウエハ回収期間とする)において塩素濃度の検出を行う。そのウエハ回収期間以外の期間では制御部8による塩素濃度の検出が行われないようにしてもよい。さらに、上記の例では
図7で示したように波形のピーク値を塩素濃度として許容値との比較を行うことにしているが、そのように波形のピーク値を塩素の濃度とすることには限られない。例えば、上記のウエハ回収期間中の所定の区間における平均値を算出し、この平均値を塩素濃度として取り扱ってもよい。
【0046】
ところで吸引孔73としては、ローダーモジュール4において、ウエハWの搬送路に開口するように設けられていればよい。従って、例えば筐体41の内側壁から突出する配管を設け、この配管の先端の孔を吸引孔73とし、分析部76は筐体41の外側からこの配管の基端を吸引して、ウエハWの搬送路の上方の雰囲気を取り込み、検出を行うようにしてもよい。この配管の吸引孔73としては、側方に開口することには限られない。例えば、配管が屈曲することで、吸引孔73が下方に開口していてもよい。
【0047】
また、
図10に示すように搬送口61の上方に吸引孔73を設け、且つロードロックモジュール13に接続される搬送口42の上方に吸引孔73を設けてもよい。説明の便宜上、搬送口61の上方に開口した吸引孔73を73A、搬送口42の上方に開口した吸引孔73を73Bとする。73Aは第1の吸引孔であり、73Bは第2の吸引孔である。上記の位置に開口されることで、吸引孔73Bについても吸引孔73Aと同様に、ロードロックモジュール13から容器本体B1に戻されるウエハWの搬送路の上方に開口していることになる。吸引孔73Bについても、吸引孔73Aと同様に配管74を介して分析部76に接続されている。そして、制御部8は、吸引孔73A、73Bから各々吸引された気体中の塩素濃度を検出可能に構成されている。
【0048】
このように吸引孔73A、73Bを設けた場合、例えば吸引孔73Aから吸引された気体中の塩素濃度が許容値を越え、且つ吸引孔73Bから吸引された気体中の塩素濃度が許容値を越えた場合に、判定部をなす制御部8は異常であると判定する。そして、
図9のステップS3として説明したように塩素濃度の上昇に対処する各対処動作が実行されるようにしてもよい。その一方で、吸引孔73Aから吸引された気体中の塩素濃度、吸引孔73Bから吸引された気体中の塩素濃度のうちの両方あるいはいずれか一方が許容値以下である場合には正常であると判定し、上記の対処動作が行われないようにしてもよい。つまり、吸引孔73Aから吸引された気体中の成分、及び吸引孔73Bから吸引された気体中の成分に基づいて、異常の有無の判定が行われるようにすることができる。
【0049】
また、例えば、ロードロックモジュールの何れか一方を未処理ウエハ用、他方を処理済みウエハ用として、
図11に示すように各搬送口42の上方の吸引口73Bを対応させてもよい。
【0050】
その場合、例えば制御部8は、ロードロックモジュール12の搬送口42の上方の吸引孔73Bから吸引される気体中の塩素濃度と、ロードロックモジュール13の搬送口42の上方の吸引孔73Bから吸引される気体中の塩素濃度との差分値を算出するように構成されていてもよい。そして、制御部8は、この差分値が例えば許容値以下であるか否かを判定し、許容値以下であれば装置は正常と判定し、許容範囲を越えていれば装置が異常と判定してもよい。具体的に、成膜処理前のウエハWから放出されてロードロックモジュール12の搬送口42の上方の吸引孔73Bによって吸引される気体の塩素濃度を処理前塩素濃度とする。また、成膜処理後のウエハWから放出されてロードロックモジュール13の搬送口42の上方の吸引孔73Bによって吸引される気体の塩素濃度を処理後塩素濃度とする。そのような処理前塩素濃度及び処理後塩素濃度に基づいて、制御部8が真空処理装置1の異常の有無の判定を行うようにしてもよい。
【0051】
また、これらの吸引孔73A、73Bから各々気体を吸引して塩素濃度を検出することで、装置のユーザーは筐体41内の各位置における塩素濃度がどの程度になるかを把握することができる。従って、ユーザーは把握した塩素濃度に応じて、各位置の交換部品を用意するなどの対応を取ることができるため有利である。なお、吸引孔73A、73Bのうち、いずれかの吸引孔のみを設けて、塩素濃度の検出を行うようにしてもよい。ところで、ウエハWの搬送口42、61の上方に吸引孔73を設ける例を示したが、吸引孔73はウエハWから上方へ向けて放出されるアウトガス中の塩素を検出するために、この搬送口42と搬送口61との間におけるウエハWの搬送路の上方に設けられていればよい。従って、搬送口42、61の上方に吸引孔73が設けられることには限られず、例えばアライメントモジュール11内に開口していてもよい。
【0052】
成膜モジュール2について、例えばTiCl4ガス及びH2ガスをウエハWに供給してCVD(Chemical Vapor Deposition)によりTi膜を形成するようにしてもよい。その場合にも、搬送容器Bに搬送されるウエハWからは塩素(Cl)を含むアウトガスが放出されると考えられるため、既述のローダーモジュール4で塩素濃度を検出することが有効である。なお真空処理装置1を構成する、ウエハWに処理ガスを供給して処理する処理モジュールとしては成膜モジュールには限られず、例えばエッチングモジュールやプラズマ化した処理ガスにウエハWを曝して自然酸化膜を除去するプリクリーンモジュールあってもよい。また、TiCl4以外の塩素系ガスを用いてウエハWを処理する場合にも、同様にウエハWのアウトガスには塩素(Cl)が含まれるため、上記のように塩素濃度を検出することが有効となる。なお、例示の真空処理装置1は4つの成膜モジュール2を有するクラスタタイプの真空処理装置であるが、成膜モジュール2は4つに限られるものではなく、例えば4つ以上であってもよく、8つの成膜モジュール2を有していてもよい。また、大気暴露せずにウエハWを処理できる形態であればよい。
【0053】
また、ローダーモジュール4の大気雰囲気において、金属を腐食させる元素としては塩素(Cl)に限られず、例えばBr(臭素)が挙げられる。従って、例えばBrを含むガスが供給されて処理を受けたウエハWを搬送容器Bに戻し、分析部76がBrを検出する構成とされるように構成されてもよい。Brを含むガス処理としては、例えばHBrガスによるポリシリコンのエッチング処理が挙げられる。また、分析部76については、ウエハWから放出されるアウトガスに含まれる成分を検出して当該成分量に対応する検出信号を出力することができればよく、既述のようにローダーモジュール4を腐食させるガスの成分を検出させることには限られない。
【0054】
また、後述の評価試験で示すように成膜モジュール2におけるウエハWの処理温度が低いほど、成膜処理中におけるウエハWからの塩素の昇華量が少なく、ウエハWに塩素が残留することでローダーモジュール4に持ち込まれやすい。後述の評価試験では、処理温度が500℃以下のときに検出される塩素濃度が比較的高くなっていた。従って、真空搬送モジュール15に接続される成膜モジュール2やエッチングモジュールにおいて、ウエハWが500℃以下で処理される場合に、上記のように塩素濃度の検出を行うことが特に有効である。
【0055】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0056】
(評価試験)
本開示の実施形態に関連して行われた評価試験について説明する。この評価試験では、既述の真空処理装置1と略同様の試験装置を用いて試験を行ったが、この試験装置では上記の吸引孔73を設けていない。そしてこの試験装置においては、受け渡し位置における容器本体B1の上部と、分析部76に相当するガス濃度分析器とを配管を介して接続した。このガス濃度分析器は、配管を介して容器本体B1内を上方から吸引し、成膜処理を受けて容器本体B1に戻されたウエハWのアウトガス中の塩素の濃度を測定することができるように構成されている。
【0057】
評価試験1
評価試験1-1では、成膜モジュール2においてTiN膜を成膜した複数のウエハWを、容器本体B1に戻したときに測定される塩素濃度を調べた。このTiN膜の成膜処理時の温度について、ウエハW毎に440℃~680℃の範囲内の互いに異なる温度に設定している。この評価試験1-1では、ウエハWは凹凸パターンが形成されていないウエハ(ベアウエハ)Wの表面積の10倍の表面積を持つように、凹凸パターンが形成されたウエハW(10倍表面積ウエハWとする)を用いた。また評価試験1-2として、ベアウエハWの表面積の5倍の表面積を持つように凹凸パターンが形成されたウエハW(5倍表面積ウエハWとする)を用いたことを除いては、評価試験1-1と同様に試験を行った。
【0058】
図12のグラフは、評価試験1-1、1-2において、440℃で処理されたウエハWから検出された塩素濃度の時間による推移を示したものであり、グラフの縦軸が塩素濃度(単位:ppb)、グラフの横軸が測定時間(単位:秒)を夫々示している。なお、この
図12のグラフと、評価試験の結果を示す後述の各グラフの縦軸中のAは、正の整数である。
図12のグラフでは、評価試験1-1の結果は実線で、評価試験1-2の結果は点線で夫々表している。評価試験1-1、1-2共にグラフの波形は急激に上昇した後で急激に下降し、当該波形にはピークが出現している。440℃以外の温度で成膜処理された各ウエハWについても、この440℃で処理されたウエハWと同様に波形にピークが出現していた。
【0059】
図13のグラフは、各処理温度で成膜処理されたウエハWから検出された、
図12で説明した波形のピーク値の塩素濃度を示している。グラフの縦軸が当該ピーク値である塩素濃度(単位:ppb)を表し、横軸が処理温度(単位:℃)を表している。評価試験1-1の結果を表すグラフ中のプロットについては互いに実線で結び、評価試験1-2の結果を表すグラフ中のプロットについては、互いに点線で結び、夫々示している。
【0060】
この
図13のグラフに示すように、評価試験1-1、1-2共に成膜処理時の温度が低いほど、ピークの塩素濃度が高かった。これは既述したように、成膜処理時の温度が低いと、この成膜処理時における熱による塩素の除去量が少ないことによるものと考えられる。従って、既述したように成膜処理時の温度が比較的低い場合には、実施形態で説明したように塩素濃度を検出することが特に有効であることが分かる。また、この評価試験では容器本体B1からウエハWのアウトガスを吸引しているが、上記のようにアウトガスは上方へ放出されるため実施形態のように筐体41の側壁から吸引しても、同様に塩素の濃度を測ることができると考えられる。つまり、この評価試験1の結果からは、実施形態で示すようにローダーモジュール4を構成した場合に、ウエハWから放出される塩素の濃度を数値として表すことができることが推定される。なお、この
図13のグラフから明らかなように、評価試験1-1、1-2では成膜処理時の温度が同じ場合、評価試験1-1の方がピークの塩素濃度が高い。従って、表面積が大きいウエハWを処理する際に塩素濃度をモニタすることが特に有効であることが確認された。
【0061】
評価試験2
評価試験2-1として、評価試験1で用いた試験装置を用いて、440℃でTiN膜の成膜処理が行われた同一ロットの25枚のウエハWを、周期的に容器本体B1に戻すときにおける塩素濃度をモニタした。この評価試験2-1では、1時間あたり25枚のウエハWを成膜処理して容器本体B1に戻せるように設定した。また、評価試験2-2として評価試験2-1と略同様の試験を行ったが、この評価試験2-2では1時間あたり50枚のウエハWを成膜処理して容器本体B1に戻せるように設定した。
【0062】
図14のグラフは評価試験2-1の結果を、
図15のグラフは評価試験2-2の結果を夫々示している。各グラフの横軸は測定時間(単位:秒)を、縦軸は塩素濃度(単位:ppb)を夫々示している。評価試験2-1、2-2共に、各ウエハWが容器本体B1に戻るタイミングに対応して、グラフの波形にピークが現れていた。評価試験2-1では、1枚目から20枚目のウエハWに対応するピークについては、順番が後のウエハWに対応するピークほど、塩素濃度の値が大きくなっている。20枚目以降のウエハWに対応するピークの塩素濃度の値は略一定であった。評価試験2-2では、1枚目から25枚目のウエハWに対応するピークについて、順番が後のウエハWに対応するピークほど塩素濃度の値が大きく、25枚目のウエハWに対応するピークの塩素濃度は、評価試験2-1での最大となったピークの塩素濃度より大きかった。
【0063】
この例では容器本体B1内を吸引して塩素濃度を測定しているが、実施形態で説明したように筐体41の側壁に吸引孔を設けて測定を行う場合も塩素濃度は同様の波形となると考えられる。従って
図7で説明したように、波形のピーク値に基づいて異常の有無の判定を行うことが可能なことが分かる。また、この評価試験2からは、ウエハWの搬送速度によって検出される塩素濃度が異なることが確認された。
【0064】
W ウエハ
4 ローダーモジュール
42 搬送口
40 搬送機構
45 FFU
52 排気用ファン
6 ロードポート
61 搬送口
73 吸引孔
76 分析部
8 制御部