(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、液体カートリッジ、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20221206BHJP
B41J 2/16 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 305
B41J2/175 119
B41J2/14 603
B41J2/16 503
B41J2/14 613
(21)【出願番号】P 2018245490
(22)【出願日】2018-12-27
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018037327
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】益田 俊顕
(72)【発明者】
【氏名】青山 伝
(72)【発明者】
【氏名】黒田 隆彦
【審査官】井出 元晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022137(JP,A)
【文献】特開2016-135583(JP,A)
【文献】特開2017-217907(JP,A)
【文献】特開2016-097590(JP,A)
【文献】特開2016-026912(JP,A)
【文献】特開2014-076605(JP,A)
【文献】特開2015-036238(JP,A)
【文献】特開2016-135559(JP,A)
【文献】特開2012-210814(JP,A)
【文献】特開2014-237323(JP,A)
【文献】特開2007-001213(JP,A)
【文献】特開2008-068508(JP,A)
【文献】特開2017-185677(JP,A)
【文献】特開2017-185659(JP,A)
【文献】特開2008-126420(JP,A)
【文献】特開2017-024387(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0293584(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0180825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/175
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、を備え、
前記共通供給流路支流における前記液体の流れ方向に沿って形成された側面と前記共通供給流路支流の底面との間の角部にラウンドが設けられ
、
前記共通供給流路支流の底面には前記供給口が開口されており、
前記供給口の周縁には周囲より盛り上がっている突起体が形成され、
前記突起体の先端は尖っている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記共通供給流路本流の側面と底面との間の角部にラウンドが設けられていることを特徴とする
請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記共通供給流路本流と前記複数の共通供給流路支流とが形成されている基材がシリコンから成ることを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記共通供給流路支流の側面と底面には、供給する前記液体に対する保護膜が形成されており、前記保護膜を含めてラウンドが形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記共通供給流路支流の底面の表面粗さが前記共通供給流路支流の側面の表面粗さよりも粗いことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記共通供給流路支流の底面と対面する壁面はダンパ部材で形成されており、
前記ダンパ部材は前記共通供給流路支流を形成している基材に接着剤で接合されており、
前記共通供給流路支流の前記ダンパ部材側の開口縁には段差が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記共通供給流路支流の内部において、前記供給口はラウンド部が形成された領域には設けられていないことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別回収流路と、
2以上の前記個別回収流路にそれぞれ回収口を介して連通する複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通回収流路支流に連通する共通回収流路本流と、を備え、
前記共通回収流路支流における前記液体の流れ方向に沿って形成された側面と前記共通回収流路支流の底面との間の角部にラウンドが設けられていることを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記共通回収流路本流の側面と底面との間の角部にラウンドが設けられていることを特徴とする請求項
8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記共通回収流路支流の側面と底面には、前記液体に対する保護膜が形成されており、前記保護膜を含めてラウンドが形成されていることを特徴とする請求項
8又は請求項
9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、を備え、
前記共通供給流路支流における前記液体の流れ方向に沿って形成された側面と前記共通供給流路支流の底面との間の角部にラウンドが設けられ
、
前記共通供給流路本流と前記複数の共通供給流路支流とが、単一の基材からなる共通流路部材に設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドが、共通のベース部材に複数取り付けられて成るヘッドモジュール。
【請求項13】
液滴を吐出する液体吐出ヘッドと該液体吐出ヘッドに記録液を供給する液体タンクを一体化して成る液体カートリッジにおいて、
前記液体吐出ヘッドが請求項1~
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドであることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項14】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項15】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載する液体カートリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか1つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項
14に記載の液体吐出ユニット。
【請求項16】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッド、または、請求項
14若しくは
15に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡排出性を高めた液体吐出ヘッドとこれを備えたヘッドモジュール、液体カートリッジ、液体吐出ユニットおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置として、インクジェットヘッドを搭載したキャリッジを主走査方向に往復移動させながら、インクジェットヘッドからインク液滴を吐出してこれを記録媒体上に着弾させることによって、所望の画像パターンを形成するようにしたインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
かかるインクジェット記録装置に設けられるインクジェットヘッドは、複数の加圧液室とノズル、共通液室、加圧液室に隣接して設けられた圧電素子やヒータなどを備える圧電体素子、インクジェットヘッドを駆動するための駆動ICなどを含んで構成されている。
【0004】
ところで、共通液室にインクタンクからインクが供給される際、共通液室内の空気の一部が気泡となって残留する場合がある。このように共通液室に気泡が残留すると、ノズルからインクを吐出する際に気泡がノズルに導かれることがあり、これによってインクの吐出不良が発生し、このことが画質不良の発生原因となる。
【0005】
そこで、特許文献1には、インクジェットヘッドの共通液室内に貫通孔から供給されるインクを、少なくとも2方向に分岐する中子を設け、該中子の加圧液室側の面の親水性を、共通液室内の加圧液室側の面よりも高く設定するとともに、共通液室内に円弧状の凸部を形成する構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、気泡排出性が高い液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の液体吐出ヘッドは、液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、を備え、前記共通供給流路支流における前記液体の流れ方向に沿って形成された側面と前記共通供給流路支流の底面との間の角部にラウンドが設けられ、前記共通供給流路支流の底面には前記供給口が開口されており、前記供給口の周縁には周囲より盛り上がっている突起体が形成され、前記突起体の先端は尖っていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気泡排出性が高い液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明にかかる液体吐出ヘッドの一例の液室短手方向の断面図である。
【
図2】本発明にかかる液体吐出ヘッドの一例の液室長手方向の断面図である。
【
図3】本発明にかかる液体吐出ヘッドの一例の支持基板の斜視図である。
【
図4】本発明にかかる液体吐出ヘッドの他の例の外観斜視説明図である。
【
図7】同じくフレーム部材を除く分解斜視説明図である。
【
図9】同じく流路部分の拡大断面斜視説明図である。
【
図11】本発明にかかる液体吐出ヘッドの他の例の流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す斜視図である。
【
図12】同液体吐出ヘッドの流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す断面図である。
【
図13】同液体吐出ヘッドの流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す平面図である。
【
図14】ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例1)を模式的に表す断面図である。
【
図15】ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例2)を模式的に表す断面図である。
【
図16】ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例3)を模式的に表す断面図である。
【
図17】ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例4)を模式的に表す平面図である。
【
図18】本発明に係るヘッドモジュールの一例の分解斜視説明図である。
【
図19】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【
図20】本発明にかかるインクジェット記録装置の一例の斜視図である。
【
図21】本発明にかかるインクジェット記録装置の一例の側断面図である。
【
図22】本発明にかかる液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置要部の一例の平面図である。
【
図23】本発明にかかる液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置要部の一例の側面図である。
【
図24】本発明の別実施形態にかかる液体吐出ユニットの一例の正面図である。
【
図25】本発明の別実施形態にかかる液体吐出ユニットの他の例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0011】
[液体吐出ヘッド]
図1は本発明にかかる液体吐出ヘッドの一例の液室短手方向の断面図、
図2は同液体吐出ヘッドの一例の液室長手方向の断面図、
図3は同液体吐出ヘッドの一例の支持基板の斜視図であり、図示の液体吐出ヘッド1aは、アクチュエータ基板201に、液体吐出エネルギを発生する圧電体素子12と振動板13を備え、加圧液室隔壁14と加圧液室15を形成している。ここで、加圧液室15は、加圧液室隔壁14で仕切られている。
【0012】
圧電体素子12は、共通電極121と個別電極122によって挟まれており、各電極層に配線層を積層して電圧を印加する。アクチュエータ基板201とノズル基板203によって加圧液室15が形成されている。そして、これらのアクチュエータ基板201と支持基板202およびノズル基板203を接合することによって、液体吐出ヘッド1aが構成されている。なお、共通液室18と支流液室66を形成するアクチュエータ基板201や支持基板202の基材をシリコンとすることによって、これらのアクチュエータ基板201や支持基板202に十分な剛性を確保することができるとともに、アクチュエータ基板201や支持基板202における共通液室18と支流液室66の加工が容易となる。
【0013】
以上のように構成された液体吐出ヘッド1aにおいては、各加圧液室15内に液体、例えば記録液(インク)が満たされた状態で、図示しない制御部から画像データに基づいて、記録液の吐出を行いたいノズル孔16に対応する個別電極122に対して、発振回路により、引き出し配線、層間絶縁膜に形成された接続孔(図示せず)を介して例えば20Vのパルス電圧を印加する。このパルス電圧を印加することによって、圧電体素子12は、電歪効果によって圧電体素子12そのものが振動板13と平行方向に縮むことによって、振動板13が加圧液室15方向に撓む。これによって、加圧液室15内の圧力が急激に上昇し、加圧液室15に連通するノズル孔16から記録液が吐出する。
【0014】
次に、パルス電圧印加後は、縮んだ圧電体素子12が元に戻ることから、撓んだ振動板13は元の位置に戻るため、加圧液室15内が共通液室18(
図2参照)に比べて負圧となり、外部から支流液室66を介して供給されているインクが共通液滴供給路19と共通液室18から流体抵抗部17を介して加圧液室15に供給される。これを繰り返すことによって、液滴を連続的に吐出することができ、液体吐出ヘッド1aに対向して配置された被記録体(用紙)に画像が形成される。
【0015】
ここで、本発明にかかる液体吐出ヘッド1aの製造方法について説明するが、この液体吐出ヘッド1aは、下記(1)~(10)の手順に従って製造される。
【0016】
(1)アクチュエータ基板201として、面方位(100)のシリコン単結晶基板(例えば、板厚400μm)上に振動板13を膜成形する。なお、この振動板13は、振動板としての機能と後のプロセス整合性を確保していれば、単層と積層膜の何れでも構わない。
【0017】
例えば、振動板13の材質としては、LP-CVD法によってシリコン酸化膜、ポリシリコン膜、アモルファスシリコン膜、またはシリコン窒化膜として、これらを所望の剛性が得られるように積層に成膜する。プロセス整合性と剛性および振動板13全体の応力を勘案して、積層数は、3~7層程度が好ましい。後の共通電極121との密着性を確保するために振動板13の最上層は、LPCVD法によって形成したシリコン酸化膜とする。その後、例えば、TiO2とPtから成る共通電極121の層をスパッタ法で各々10nmと160nmに成膜する。
【0018】
(2)次に、共通電極121上に圧電体素子12としてPZTを例えばスピンコート法によって複数回に分けて成膜し、最終的に2μm厚成膜する。次に、SROとPtから成る個別電極122をスパッタ法によって各々40nmと100nm成膜する。ここで、圧電体素子12の成膜方法としては、スピンコート法に限らず、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法、エアーゾル法、ゾルゲル法、インクジェット法などを使用することができる。そして、リソエッチ法によって、後に形成する加圧液室15に対応する位置に圧電体素子12と個別電極122を形成する。また、接合部48(
図1参照)に対応する位置に圧電体素子12を形成する。
【0019】
(3)次に、共通電極121、圧電体素子12と後に形成する引き出し配線42とを絶縁するために層間絶縁膜45を成膜する。ここで、層間絶縁膜45は、例えばプラズマCVD法によってSiO2膜を1000nm成膜することによって形成される。この層間絶縁膜45は、圧電体素子12や電極材料に影響を及ぼさず、絶縁性を有する膜であれば、プラズマCVD法によるSiO2膜以外の膜でもよい。
【0020】
次に、個別電極122と引き出し配線42とを接続する接続孔(図示しない)をリソエッチ法によって形成する。ここで、図示しないが、共通電極121も引き出し配線42と接続する場合には、同様に接続孔を形成する。
【0021】
(4)次に、引き出し配線42として、例えばTiN/Alを各々30nm/3μmをスパッタ法によって成膜する。TiNは、接続孔の底部で、個別電極122、或いは共通電極121の材料であるPtが、引き出し配線42の材料であるAlが直接接触することによって、後の工程による熱履歴で合金化し、体積変化によるストレスに起因する膜剥がれなどを防止するために、合金化を防ぐバリア層として適用している。また、後の支持基板202との接合部48となる箇所にも引き出し配線42を形成する。
【0022】
(5)次に、パッシベーション膜150として、例えばプラズマCVD法によってシリコン窒化膜を1000nm厚成膜する。
【0023】
(6)その後、リソエッチ法によって、引き出し配線42の引き出し配線パッド部41とアクチュエータ部160および共通液滴供給路19の開口を行う。
【0024】
(7)次に、リソエッチ法によって共通液滴供給路19、後の共通液室18部になる箇所の振動板13を除去する。
【0025】
(8)次に、アクチュエータ部160に対応した位置にリソエッチ法によってザグリ67を設け、本流液室68と支流液室66を形成し、さらに支流液室66の側壁にラウンド部70を形成した支持基板202を作製する。このとき、ドライエッチング法によってSi加工を行う。ドライエッチングの条件を制御することによって、隔壁近傍のラウンド部70のラウンド度合い(半径)を制御することが可能である。その後、支持基板202とアクチュエータ基板201を、接合部48を介して接着剤49で接合する。このとき、接着剤49は、一般的な薄膜転写装置によって支持基板202側に厚さ1μm程度塗布している。その後、加圧液室15、共通液室18、流体抵抗部17を形成するためにアクチュエータ基板201を所望の厚さ(例えば、厚さ80μm)になるように、公知の技術によって研磨する。この場合、研磨以外にエッチングなどでもよい。
【0026】
(9)次に、リソエッチ法によって、加圧液室15、共通液室18、流体抵抗部17以外の隔壁部をレジストで被覆する。その後、アルカリ溶液(KOH溶液、或いはTMHA溶液)で異方性ウェットエッチを行い、加圧液室15と共通液室18および流体抵抗部17を形成する。なお、アルカリ溶液による異方性ウェットエッチ以外にICPエッチャーを用いたドライエッチによって加圧液室15と共通液室18および流体抵抗部17を形成してもよい。
【0027】
(10)次に、別に形成した各加圧液室15に対応した位置にノズル孔16を開口したノズル基板203を接合することによって液体吐出ヘッド1aが製造される。
【0028】
以上の(1)~(10)の工程を経て製造された液体吐出ヘッド1aにおいては、支流液室66の側壁にラウンド部70を形成したため、気泡排出性が高められ、液滴の不吐出や吐出速度の低下が発生しない。このため、液滴の吐出安定性の高い液体吐出ヘッド1aを歩留まりよく製造することができる。
【0029】
このようにして、液体を供給する共通液室18と、該共通液室18から複数のノズルに通じる複数の支流液室66を形成する流路部材を備えた液体吐出ヘッドにおいて、支流液室66の側面と底面との間の端部にラウンド(ラウンド部70)が設けられる。これにより、気泡排出性が高く、液滴の不吐出や吐出速度の低下を防ぐことができる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0030】
次に、本発明にかかる液体吐出ヘッドの他の例について、
図4ないし
図10を参照して説明する。
図4は一実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図5は同じく分解斜視説明図、
図6は同じく断面斜視説明図である。
図7は同じくフレーム部材を除く分解斜視説明図、
図8は同じく流路部分の断面斜視説明図である。
図9は同じく拡大断面斜視説明図、
図10は同じく流路部分の平面説明図である。なお、
図4ないし
図10では、ラウンド部を設ける前の状態を表している。
【0031】
この液体吐出ヘッド1は、ノズル板10と、流路板(個別流路部材)20と、振動板部材30と、共通流路部材50と、ダンパ部材60と、フレーム部材80と、駆動回路102を実装した基板(フレキシブル配線基板)101などを備えている。
【0032】
ノズル板10には、液体を吐出する複数のノズル11を有している。複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置され、
図10に示すように、第1方向F、第2方向S及び第3方向Tの三方向に並んで配置されている。
【0033】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。1つの圧力室21及びこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0034】
振動板部材30は、圧力室21の変形な可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0035】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定さるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することができる。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0036】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル11の第2方向Sに交互に隣接して形成している。
【0037】
共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
【0038】
また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0039】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する(対向する)供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する(対向する)回収側ダンパ63を有している。
【0040】
ここで、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62又は回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0041】
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、及び共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面には、流路中を流れる液体(たとえば、インク)に対して内壁面を保護するための保護膜(接液膜とも言う)が形成されている。たとえば、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の内壁面、及び共通供給流路本流56と共通回収流路本流57の内壁面はSi基板が熱処理されることで、表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化シリコン膜の上にはインクに対してSi基板の表面を保護するタンタルシリコン酸化膜が形成される。
【0042】
次に、前述した液体吐出ヘッド1に、ラウンド部を設けた実施形態について説明する。
図11は、
図4から
図10を参照して説明した液体吐出ヘッドの流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す斜視図である。
図12は、同液体吐出ヘッドの流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す断面図である。
図13は、同液体吐出ヘッドの流路部分に形成したラウンド部の一例を模式的に表す平面図である。
【0043】
共通供給流路支流52の側面と底面との間の角部(「側面と底面との各部」ともいう)、および、共通回収流路支流53の側面と底面との間の角部にはラウンド部70が形成されている。なお、
図12に示す流路部分のように、流路の内壁面に保護膜81が形成されている場合には、保護膜81を含めてラウンド部70が形成されている。
【0044】
ここで、各部は、例えば、二つの面によるなす角が形成される部分とする。または、各部は、例えば、二つの面が交差する交線が形成される部分とする。
従って、共通供給流路支流52の側面と底面との各部にラウンド部70が形成されることにより、側面と底面とが交差する部分は、曲面となる。また、側面と底面とによるなす角がなくなる。
【0045】
ラウンド部70は共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の液体の流れ方向(
図11に示す矢印Aまたは矢印Bの方向)に沿った、側面と底面との間の角部に形成されている。
また、
図13に示すように、共通供給流路本流56と共通回収流路本流57にも液体の流れ方向(
図13に示す矢印Cまたは矢印Dの方向)に沿った、側面と底面との間の角部にラウンド部70が形成されている。
【0046】
以下に、ラウンド部を設けた液体吐出ヘッドの流路部分の一例(
図11から
図13)を変形した他の例を説明する。複数の変形例は、その一つまたは複数を組み合わせてもよい。
【0047】
[変形例1]
図14は、ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例1)を模式的に表す断面図である。
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の底面は側面に対して表面が粗く形成されている(
図14では、粗い表面83の部分)。これにより保護膜が共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の底面がより密着して形成される。なお、
図14では、流路の底面部分の表面の粗さを示すため、
図12で示した保護膜81を省略している。
このようにすると、例えば、保護膜81の密着性が向上するため、保護膜81が底面から剥がれるなどによりラウンド部70の形状が変形することを避けることができる。
【0048】
[変形例2]
図15は、ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例2)を模式的に表す断面図である。
共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の底面と反対側の上面はダンパ部材60で構成されている。ダンパ部材60は接着剤85で共通流路部材50に接合されている。共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の開口縁には段差(凹部87)が形成される。これにより、ダンパ部材60を接合する際の接着剤が凹部87に流れ込み、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の底面まで接着剤85が流れ込むのを抑制する。
このようにすると、例えば、接着剤85が流れ込むことによってラウンド部70の形状が変形することを避けることができる。
【0049】
[変形例3]
図16は、ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例3)を模式的に表す断面図である。
共通供給流路支流52に形成された供給口54と共通回収流路支流53の底面に形成された回収口55の周縁は盛り上がっており、先端が尖った突起体89が形成されてる。この突起体は供給口54と回収口55の周縁を囲んで構成されている。これにより、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53内の気泡が突起体89に接触することで、気泡がより小さな気泡に分割され、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53内から気泡が排出されやすくなる。なお、
図16では、供給口54および回収口55の周縁に形成された突起体89を示すため、
図12で示した保護膜81を省略している。
【0050】
[変形例4]
図17は、ラウンド部を設けた流路部分の他の例(変形例4)を模式的に表す平面図である。
共通供給流路支流52に形成された供給口54と共通回収流路支流53の底面に形成された回収口55は、ラウンド部70が設けられていない領域に形成されている。これにより、1つの共通供給流路支流52に設けられている全ての供給口54の貫通孔の長さが同じになり、長さに起因する流体抵抗値が一定になる。同様に、共通回収流路支流53に設けられている全ての回収口55の貫通孔の長さが同じになり、長さに起因する流体抵抗値が一定になる。
【0051】
[ヘッドモジュール]
次に、本発明に係るヘッドモジュールの一例について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、
図19は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0052】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数の液体吐出ヘッド1と、複数の液体吐出ヘッド1を保持するベース部材103と、複数の液体吐出ヘッド1のノズルカバーとなるカバー部材113とを備えている。
【0053】
また、ヘッドモジュール100は、放熱部材104と、複数のヘッドに対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105と、フレキシブル配線部材101と接続するプリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0054】
[液体カートリッジおよび液体吐出装置]
次に、本発明にかかる液体カートリッジとこれを備えた液体吐出装置の実施の形態について説明するが、以下においては、液体カートリッジと液体吐出装置として、インクを用いたインクカートリッジとインクジェット記録装置について説明する。
【0055】
図20は本発明に係るインクジェット記録装置の一例の斜視図、
図21は同インクジェット記録装置の一例の側断面図であり、図示のインクジェット記録装置90は、装置本体の内部に、走査方向に移動可能なキャリッジ98とこのキャリッジ98に搭載された前述した液体吐出ヘッド1(または、
図1および
図2の液体吐出ヘッド1aとしてもよい)およびこの液体吐出ヘッド1にインクを供給するためのインクカートリッジ99などで構成された印字機構部91などを収納し、装置本体の下方には、多数枚の用紙92が積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)93が前方側から抜き差し自在に装着されている。
【0056】
また、インクジェット記録装置90は、用紙92を手差しで給紙するために開かれる手差しトレイ94を有しており、給紙カセット93或いは手差しトレイ94から給送される用紙92を取り込み、印字機構部91によって用紙92に所要の画像を記録した後、画像が記録された用紙92を後面側に装着された排紙トレイ95に排出する。
【0057】
印字機構部91は、図示しない左右の側板に横架されたガイド部材である主ガイドロッド96と従ガイドロッド97およびキャリッジ98を主走査方向に沿って摺動自在に保持しているが、キャリッジ98においては、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびブラック(K)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッド1が、その複数のインク吐出口(ノズル)が主走査方向と交差する方向となるように配列されており、これらの液体吐出ヘッド1は、インク滴吐出方向が下向きとなるように装着されている。また、キャリッジ98には、液体吐出ヘッド1に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ99が交換可能に装着されている。
【0058】
インクカートリッジ99は、上方に大気に連通する大気口、下方には液体吐出ヘッド1にインクを供給するための供給口がそれぞれ設けられており、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛細管力によって液体吐出ヘッド1に供給されるインクを僅かな負圧に維持している。なお、本実施の形態では、液体吐出ヘッド1としては、各色のものを使用しているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個の液出ヘッドを用いてもよい。
【0059】
ここで、キャリッジ98は、後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド96に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)が従ガイドロッド97に摺動自在に載置されている。そして、このキャリッジ98を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ191によって回転駆動される駆動プーリ192と従動プーリ193との間にタイミングベルト194を張架し、このタイミングベルト194をキャリッジ98に固定しており、主走査モータ191の正逆回転によってキャリッジ98が往復駆動される。
【0060】
一方、インクジェット記録装置90には、給紙カセット93にセットされた用紙92を分離給送する給紙ローラ195およびフリクションパッド196と、用紙92を案内するガイド部材197と、給紙された用紙92を反転させて搬送する搬送ローラ198と、この搬送ローラ198の周面に押し付けられる搬送コロ199および搬送ローラ198からの用紙92の送り出し角度を規定する先端コロ110が設けられている。なお、搬送ローラ198は、図示しない副走査モータによってギア列を介して回転駆動される。
【0061】
そして、キャリッジ98の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ198から送り出された用紙92を液体吐出ヘッド1の下方側で案内するための用紙ガイド部材である印写受け部材111が設けられている。この印写受け部材111の用紙搬送方向下流側には、用紙92を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ112と拍車118が設けられており、さらに用紙92を排紙トレイ95に送り出すための排紙ローラ114と拍車115および排紙経路を形成するガイド部材116,117が配設されている。
【0062】
以上のように構成されたインクジェット記録装置90における記録時には、キャリッジ98を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド1を駆動することによって、停止している用紙92にインクを吐出して1行分を記録し、その後、用紙92を所定量だけ搬送した後、次の行の記録を行う。記録終了信号または用紙92の後端が記録領域に到達した信号を受けることによって、記録動作を終了して用紙92を排出する。
【0063】
また、キャリッジ98の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、液体吐出ヘッド1の吐出不良を回復するための回復装置117が配置されている(
図20参照)。この回復装置117は、キャップ手段と吸引手段およびクリーニング手段を有している。キャリッジ98は、印字待機中には、この回復装置117側に移動してキャッピン手段によって液体吐出ヘッド1をキャッピングして吐出口部を湿潤状態に保つことによって、インク乾燥による吐出不良の発生を防止する。また、記録途中などに記録と関係ないインクを吐出することによって、全ての吐出口のインクの粘度を一定に保ち、安定した吐出状態を維持する。
【0064】
また、吐出不良が発生した場合などには、キャッピング手段によって液体吐出ヘッド1の吐出出口(ノズル)を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクと共に気泡などを吸出し、吐出口面に付着したインクやゴミなどは、クリーニング手段によって除去されて吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【0065】
このように、本実施の形態にかかるインクジェット記録装置90においては、前述した液体吐出ヘッド1を搭載しているため、安定したインク吐出特性が得られ、画像品質が高められる。
【0066】
なお、以上はインクジェット記録装置90に液体吐出ヘッド1を使用した場合について説明したが、インク以外の液滴、例えば、パターニング用の液体レジストを吐出する装置に液体吐出ヘッド1を適用してもよい。
【0067】
以上の説明で明らかなように、本実施の形態によれば、液体吐出ヘッド1の気泡排出性を高めて液滴の不吐出や吐出速度の低下を防ぐことができ、この液体吐出ヘッド1を備えるインクカートリッジ99およびインクジェット記録装置90によって高品質の画像を安定的に得ることができるという効果が得られる。
【0068】
[液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置]
次に、本発明にかかる液体吐出ヘッドとこれを備えた液体吐出装置の実施の形態を
図22から
図25に基づいて以下に説明するが、
図22は本発明にかかる液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置要部の一例の平面図、
図23は同液体吐出装置要部の一例の側面図である。
【0069】
本実施の形態にかかる液体吐出装置は、シリアル型の装置であって、この装置においては、主走査移動機構493によってキャリッジ403が主走査方向に往復移動する。ここで、主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408などを備えている。また、ガイド部材402は、左右の側板491A,491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407との間に架け渡されたタイミングベルト408を介してキャリッジ403が主走査方向に往復移動する。
【0070】
上記キャリッジ403には、本発明にかかる液体吐出ヘッド404およびヘッドタンク441を一体化して成る液体吐出ユニット440が搭載されている。液体吐出ヘッド404は、例えば、前述した液体吐出ヘッド1または液体吐出ヘッド1aを用いるとよい。この液体吐出ユニット440に設けられた液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、この液体吐出ヘッド404は、複数のノズルから成るノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置しており、液滴の吐出方向が下方となる向きに装着されている。
【0071】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を当該液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494によって、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0072】
前記供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452などで構成されている。液体カートリッジ450は、カートリッジホルダ451に着脱可能に装着されている。そして、ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって液体カートリッジ450から液体が供給される。
【0073】
また、本実施の形態にかかる液体吐出装置は、記録媒体である用紙410を搬送するための搬送機構495を備えており、この搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、該搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を備えている。
【0074】
上記搬送ベルト412は、用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で用紙410を搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであって、搬送ローラ413とテンションローラ414との間に架け渡されている。なお、この搬送ベルト412による用紙410の吸着は、静電吸着、エアー吸着などによって行うことができる。
【0075】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417およびタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって副走査方向に周回移動する。
【0076】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側であって、搬送ベルト412の側方には、液体吐出ヘッド404の維持回復を行うための維持回復機構420が配置されている。この維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成されている面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0077】
主走査移動機構493、供給機構494,維持回復機構420および搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0078】
以上のように構成された液体吐出装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0079】
そして、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら、画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することによって、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0080】
このように、本実施の形態にかかる液体吐出装置は、本発明にかかる液体吐出ヘッド404を備えているため、高質画像を安定して形成することができる。
【0081】
次に、本発明にかかる液体吐出ユニットの他の実施形態を
図24に基づいて以下に説明する。
【0082】
図24は本実施の形態にかかる液体吐出ユニットの一例の正面図であり、図示の液体吐出ユニット440は、前記液体吐出装置を構成している部材のうち、側板491A,491Bおよび背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403および液体吐出ヘッド404によって構成されている。なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前記維持回復機構420と供給機構494の少なくとも1つをさらに取り付けてもよい。
【0083】
また、本発明にかかる液体吐出ユニットのさらに別形態を
図25に基づいて以下に説明する。
【0084】
図25は本実施の形態にかかる液体吐出ユニットの他の例の正面図であり、図示の液体吐出ユニット440は、流路部品444が取り付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456によって構成されている。なお、流路部品444は、カバー442の内部に配置されている。ここで、流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444に上部には、液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うためのコネクタ443が設けられている。
【0085】
なお、本発明にかかる液体吐出装置は、液体吐出ヘッド404または液体吐出ユニット440を備え、液体吐出ヘッド404を駆動して液体を吐出させる装置であり、これには、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能である装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。また、この液体吐出装置には、液体が付着可能なものの給送、搬送、排出にかかる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含まれる。
【0086】
例えば、液体吐出装置として、インクを吐出して用紙に画像を形成する画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出する立体造形装置(三次元造形装置)も含まれる。
【0087】
また、液体吐出装置は、吐出する液体によって文字や図形などの有意な画像が可視化されるものに限定されることはない。例えば、それ自体意味を持たないパターンなどを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0088】
前記「液体が付着するもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、液体が付着して固着するもの、液体が付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0089】
また、「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど、液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0090】
また、「液体」には、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、または、アミノ酸、たんぱく室、カルシウムを含む溶液および分散液なども含まれる。
【0091】
また、液体吐出装置は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置に限定されるものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0092】
また、液体吐出装置としては、他にも用紙の表面を改質などの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0093】
液体吐出ユニットとは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、液体吐出ユニットは、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも1つを液滴吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0094】
ここで「一体化」とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が締結、接着、係合などによって互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものが含まれる。また、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
【0095】
例えば、液体吐出ヘッドとして、
図23に示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化しているものがある。また、チューブなどによって互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクとが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ヘッドのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0096】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジとが一体化されているものがある。
【0097】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを、走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジおよび主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0098】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定し、液体吐出ヘッドとキャリッジおよび維持回復機構を一体化したものもある。
【0099】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液滴吐出ヘッドにチューブを接続し、液体吐出ヘッドと供給機構を一体化してものがある。
【0100】
主走査移動機構には、ガイド部材単体も含まれるものとする。また、供給機構には、チューブ単体、装填部単体も含まれるものとする。
【0101】
また、液体吐出ヘッドは、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電体素子を使用するものでもよい)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極から成る静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0102】
なお、以上の説明における「画像形成」、「記録」、「印写」「印刷」、「造形」などの用語は、いずれも同義語とする。
【0103】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0104】
1、1a、404 液体吐出ヘッド
10 ノズル板
11 ノズル
12 圧電体素子
13 振動板
14 加圧液室隔壁
15 加圧液室
16 ノズル孔
17 流体抵抗部
18 共通液室
19 共通液滴供給路
20 個別流路部材
21 圧力室
22 個別供給流路
23 個別回収流路
30 振動板部材
40 圧電素子
50 共通流路部材
52 共通供給流路支流
53 共通回収流路支流
54 供給口
55 回収口
56 共通供給流路本流
57 共通回収流路本流
66 支流液室
68 本流液室
70 ラウンド部
81 保護膜
83 粗い表面
85 接着剤
87 凹部
89 突起体
90 インクジェット記録装置(液体吐出装置)
99 インクカートリッジ(液体カートリッジ)
100 ヘッドモジュール
121 共通電極
122 個別電極
160 アクチュエータ部
201 アクチュエータ基板
202 支持基板
203 ノズル基板
403 キャリッジ
420 維持回復機構
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
450 液体カートリッジ
493 主走査移動機構
494 供給機構
440 液体吐出ユニット
500 印刷装置(液体を吐出する装置)
550 ヘッドユニット
600 液体循環装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】