(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、ヘッドユニット、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221206BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 305
B41J2/14 609
B41J2/18
B41J2/14 603
B41J2/14 607
(21)【出願番号】P 2019006704
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018043802
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将紀
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152799(WO,A1)
【文献】特開2016-030367(JP,A)
【文献】特開2006-264268(JP,A)
【文献】特開2016-150512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、
前記共通供給流路支流の一部の壁面を形成する供給側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとし、
前記第1ノズルに通じる前記供給口を第1供給口、前記第2ノズルに通じる前記供給口を第2供給口とするとき、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1供給口及び前記第2供給口は、同じ前記共通供給流路支流に配置され、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、前記供給口から前記供給側ダンパまでの距離より離れて
おり、
前記供給側ダンパは、前記供給口と対向している
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、同じ前記共通供給流路支流に配置される前記供給口の中で、最も隣接した関係にない
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別回収流路と、
2以上の前記個別回収流路にそれぞれ回収口を介して連通する複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通回収流路支流に連通する共通回収流路本流と、
前記共通回収流路支流の一部の壁面を形成する回収側ダンパと、を備えている
ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第3ノズル、第4ノズルとし、
前記第3ノズルに通じる前記回収口を第1回収口、前記第4ノズルに通じる前記回収口を第2回収口とするとき、
前記第3ノズルと前記第4ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1回収口及び前記第2回収口は、同じ前記共通回収流路支流に配置され、
前記第1回収口と前記第2回収口との間の距離は、同じ前記共通回収流路支流に配置される前記回収口の中で、最も隣接した関係にない
ことを特徴とする請求項
3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第1回収口と前記第2回収口との間の距離は、前記回収口から前記回収側ダンパまでの距離より離れている
ことを特徴とする請求項
4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とは交互に隣接して配置されている
ことを特徴とする請求項
3ないし5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記回収側ダンパは前記回収口と対向している
ことを特徴とする請求項
3ないし6のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記供給側ダンパと前記回収側ダンパは、同一のダンパ部材で構成され、
前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流は、同じ共通流路部材上に形成された溝状の流路を前記ダンパ部材で封止して構成されている
ことを特徴とする請求項
3ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流は同じ共通流路部材上に交互に配置され、
前記交互に配置される方向が前記ノズルの配列方向と同じである
ことを特徴とする請求項
8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、
前記共通供給流路支流の一部の壁面を形成する供給側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとし、
前記第1ノズルに通じる前記供給口を第1供給口、前記第2ノズルに通じる前記供給口を第2供給口とするとき、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1供給口及び前記第2供給口は、同じ前記共通供給流路支流に配置され、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、前記供給口から前記供給側ダンパまでの距離より離れており、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、同じ前記共通供給流路支流に配置される前記供給口の中で、最も隣接した関係にない
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、
前記共通供給流路支流の一部の壁面を形成する供給側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとし、
前記第1ノズルに通じる前記供給口を第1供給口、前記第2ノズルに通じる前記供給口を第2供給口とするとき、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1供給口及び前記第2供給口は、同じ前記共通供給流路支流に配置され、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、前記供給口から前記供給側ダンパまでの距離より離れており、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別回収流路と、
2以上の前記個別回収流路にそれぞれ回収口を介して連通する複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通回収流路支流に連通する共通回収流路本流と、
前記共通回収流路支流の一部の壁面を形成する回収側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第3ノズル、第4ノズルとし、
前記第3ノズルに通じる前記回収口を第1回収口、前記第4ノズルに通じる前記回収口を第2回収口とするとき、
前記第3ノズルと前記第4ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1回収口及び前記第2回収口は、同じ前記共通回収流路支流に配置され、
前記第1回収口と前記第2回収口との間の距離は、同じ前記共通回収流路支流に配置される前記回収口の中で、最も隣接した関係にない
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、
前記共通供給流路支流の一部の壁面を形成する供給側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとし、
前記第1ノズルに通じる前記供給口を第1供給口、前記第2ノズルに通じる前記供給口を第2供給口とするとき、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1供給口及び前記第2供給口は、同じ前記共通供給流路支流に配置され、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、前記供給口から前記供給側ダンパまでの距離より離れており、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別回収流路と、
2以上の前記個別回収流路にそれぞれ回収口を介して連通する複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通回収流路支流に連通する共通回収流路本流と、
前記共通回収流路支流の一部の壁面を形成する回収側ダンパと、を備え、
前記回収側ダンパは前記回収口と対向している
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項13】
請求項1ないし
12のいずれかに記載の液体吐出ヘッドが複数配列されている
ことを特徴とするヘッドモジュール。
【請求項14】
請求項
13に記載のヘッドモジュールが並べて配置されている
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項15】
請求項1ないし
12のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、請求項
13に記載のヘッドモジュール、又は、請求項
14に記載のヘッドユニットを含む
ことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項16】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項
15に記載の液体吐出ユニット。
【請求項17】
請求項1ないし
12のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、請求項
13に記載のヘッドモジュール、請求項
14に記載のヘッドユニット、請求項
15又は請求項
16に記載の液体吐出ユニット、の少なくともいずれかを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、ヘッドモジュール、ヘッドユニット、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいては、液体吐出に伴う圧力変動が共通流路を介して他の圧力室(個別液室)の吐出特性に影響を与えるクロストークを抑制する必要がある。
【0003】
従来、ノズルに通じる圧力室と、圧力室と連通するインク供給路と、インク供給路に開口を介して接続された複数の支流と、複数の支流が接続された本流とを有し、ノズルが二次元状にマトリックス配置され、インク供給路への開口に対面して、支流の一部を構成する膜状のダンパを備えたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の構成にあっては、1つの支流には、液体の流れ方向と直交する方向(幅方向)において1つのインク供給路への開口が配置されている。そのため、支流の一部を構成するダンパの幅が狭くなり、ダンパ効果が十分でなく、クロストークを十分に抑えることができないという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、クロストークを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
前記複数の圧力室に各々連通する複数の個別供給流路と、
2以上の前記個別供給流路にそれぞれ供給口を介して連通する複数の共通供給流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に連通する共通供給流路本流と、
前記共通供給流路支流の一部の壁面を形成する供給側ダンパと、を備え、
隣接する2つの前記ノズルを、それぞれ第1ノズル、第2ノズルとし、
前記第1ノズルに通じる前記供給口を第1供給口、前記第2ノズルに通じる前記供給口を第2供給口とするとき、
前記第1ノズルと前記第2ノズルとは、最も隣接するノズルの組合せであり、
前記第1供給口及び前記第2供給口は、同じ前記共通供給流路支流に配置され、
前記第1供給口と前記第2供給口との間の距離は、前記供給口から前記供給側ダンパまでの距離より離れており、
前記供給側ダンパは、前記供給口と対向している
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、クロストークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【
図4】同じくフレーム部材を除く分解斜視説明図である。
【
図6】同じく流路部分の拡大断面斜視説明図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部拡大平面説明図である。
【
図13】本発明に係るヘッドモジュールの一例の分解斜視説明図である。
【
図14】同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【
図15】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
【
図16】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【
図17】液体循環装置の一例のブロック説明図である。
【
図18】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例の要部平面説明図である。
【
図20】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図21】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図8を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図2は同じく分解斜視説明図、
図3は同じく断面斜視説明図である。
図4は同じくフレーム部材を除く分解斜視説明図、
図5は同じく流路部分の断面斜視説明図、
図6は同じく流路部分の拡大断面斜視説明図である。
図7は同じく流路部分の平面説明図である。
【0011】
この液体吐出ヘッド1は、ノズル板10と、流路板(個別流路部材)20と、振動板部材30と、共通流路部材50と、ダンパ部材60と、フレーム部材80と、駆動回路102を実装した基板(フレキシブル配線基板)101などを備えている。
【0012】
ノズル板10には、液体を吐出する複数のノズル11を有している。複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置され、
図7に示すように、第1方向F、第2方向S及び第3方向Tの三方向に並んで配置されている。
【0013】
個別流路部材20は、複数のノズル11に各々連通する複数の圧力室(個別液室)21と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別供給流路22と、複数の圧力室21に各々通じる複数の個別回収流路23とを形成している。1つの圧力室21及びこれに通じる個別供給流路22と個別回収流路23を併せて個別流路25と称する。
【0014】
振動板部材30は、圧力室21の変形な可能な壁面である振動板31を形成し、振動板31には圧電素子40が一体に設けられている。また、振動板部材30には、個別供給流路22に通じる供給側開口32と、個別回収流路23に通じる回収側開口33とが形成されている。圧電素子40は、振動板31を変形させて圧力室21内の液体を加圧する圧力発生手段である。
【0015】
なお、個別流路部材20と振動板部材30とは、部材として別部材であることに限定さるものではない。例えば、SOI(Silicon on Insulator)基板を使用して個別流路部材20及び振動板部材30を同一部材で一体に形成することができる。つまり、シリコン基板上に、シリコン酸化膜、シリコン層、シリコン酸化膜の順に成膜されたSOI基板を使用し、シリコン基板を個別流路部材20とし、シリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜とで振動板31を形成することができる。この構成では、SOI基板のシリコン酸化膜、シリコン層及びシリコン酸化膜の層構成が振動板部材30となる。このように、振動板部材30は個別流路部材20の表面に成膜された材料で構成されるものを含む。
【0016】
共通流路部材50は、2以上の個別供給流路22に通じる複数の共通供給流路支流52と、2以上の個別回収流路23に通じる複数の共通回収流路支流53とを、ノズル11の第2方向Sに交互に隣接して形成している。
【0017】
共通流路部材50には、個別供給流路22の供給側開口32と共通供給流路支流52を通じる供給口54となる貫通孔と、個別回収流路23の回収側開口33と共通回収流路支流53を通じる回収口55となる貫通孔が形成されている。
【0018】
また、共通流路部材50は、複数の共通供給流路支流52に通じる1又は複数の共通供給流路本流56と、複数の共通回収流路支流53に通じる1又は複数の共通回収流路本流57を形成している。
【0019】
ダンパ部材60は、共通供給流路支流52の供給口54と対面する(対向する)供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収口55と対面する(対向する)回収側ダンパ63を有している。
【0020】
ここで、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は、同じ部材である共通流路部材50に交互に並べて配列された溝部を、ダンパ部材60の供給側ダンパ62又は回収側ダンパ63で封止することで構成している。なお、ダンパ部材60のダンパ材料としては、有機溶剤に強い金属薄膜又は無機薄膜を用いることが好ましい。ダンパ部材60の供給側ダンパ62、回収側ダンパ63の部分の厚みは10μm以下が好ましい。
【0021】
次に、本実施形態における流路配置構成について
図8ないし
図11も参照して説明する。
図8ないし
図11は
図7の要部拡大平面説明図である。なお、支流については仮想線で図示している。
【0022】
まず、
図8を参照して、複数のノズル11は、二次元状にマトリクス配置され、第1方向F、第2方向S及び第3方向Tの三方向に並んで配置されている。この二次元状にマトリクス配置されたノズル11のまとまりを、
図7に示すように、ノズル群NG(NG1、NG2)とする。
【0023】
1つのノズル群NGにおいて、第1方向Fは、第2方向Sにおける複数のノズル11の配列をノズル列とするとき、ノズル11の配列方向に対して所定の傾き角度θ1でノズル列が並ぶ方向となる。共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53は第1方向に延びている。したがってまた、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53の長手方向は第1方向Fに沿っている。
【0024】
1つのノズル群NGにおいて、第2方向Sは、最も隣接したノズル11が並ぶ方向(ノズル配列方向)であり、第1方向Fを基準とすると、第1方向に角度θ1で交差する方向である。共通供給流路支流52と共通回収流路支流53とは、第2方向Sに交互に配置されている。
【0025】
1つのノズル群NGにおいて、第3方向Tは、第1方向F及び第2方向Sと交差する方向であり、本実施形態では、個別供給流路22、圧力室21及び個別回収流路23で構成される個別流路25は第3方向に沿って配置されている。
【0026】
ここで、個別供給流路22、圧力室21、個別回収流路23で構成される個別流路25は、ノズル11の軸(液体吐出方向の中心軸)に対して2回軸対称の形状としている。
【0027】
個別流路25を2回軸対称とすることで、
図8に示す例では、例えばノズル11Aに通じる個別流路25とノズル11Eに通じる個別流路25の関係のように、個別流路25における液体の流れに平行な方向(第3方向T)で隣接するノズル11A、11Eに対して個別流路25を反転して配置することができる。
【0028】
つまり、同一の共通供給流路支流52に配置されるノズル11Aの個別液室25に通じる供給口54Aとノズル11Eの個別液室25に通じる供給口54Eに対して、個別液室の方向を反転して配置することができる。
【0029】
これにより、共通供給流路支流52の配置に制約されずに、個別液室25(ノズル11)の実装密度を高密度化することができ、ヘッドを小型化できる。
【0030】
また、同じ共通供給流路支流52内で互いに最近接で隣接する(最も隣接する)2つの供給口54、54に各々通じる2つのノズル11、例えば、
図8の例では供給口54Aに接続されるノズル11Aと、供給口54Eに接続されるノズル11Eは、回収口55A,55Eを通じて異なる共通回収流路支流53に通じている。
【0031】
なお、個別流路25は、共通供給流路支流52及び共通回収流路支流53における液体の流れの方向(第1方向F)に対しては併進対称配置(反転しない配置)としている。
【0032】
次に、
図9を参照して、第3方向Tにおけるノズル11の配置間隔P3は任意の方向にとることができるが、第1方向Fにおけるノズル11の配置間隔P1と第2方向Tにおけるノズル11の配置間隔P2より広くとることができる。
【0033】
第3方向Tは、第3方向Tにおけるノズル11の配置間隔P3が第2方向Sにおけるノズル11の配置間隔P2の2倍以上の距離をとれる方向とすることで、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の配置間隔P0を、第2方向Sに並ぶノズル11の配置間隔P2の2倍以上としている。
【0034】
なお、配置間隔P0は、本実施形態では、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53が交互に配置される方向(第2方向S)における流路幅の中心間距離に相当する。
【0035】
また、共通供給流路支流52の幅W1は第2方向Sに並ぶノズル11の配列間隔P2より広くしている(ここでは、2倍以上としている)。同様に、共通回収流路支流53の幅W2も、第2方向Sにおけるノズル11の配列間隔P2より広くしている(ここでは、2倍以上としている。)。
【0036】
次に、
図10を参照して、同じ共通供給流路支流52に属するノズル11の内で最も隣接する2つのノズル11の各供給口54間の距離と供給口54から供給側ダンパ62までの距離の関係について説明する。
【0037】
ここで、隣接する2つのノズル11、11のうち、最も隣接するノズル11の組合せを、それぞれ第1ノズル11A、第2ノズル11Bとする。
図8では第2方向Sに並ぶノズル11、11が、同じ列の、最も隣接するノズル11の組み合わせとなる。
【0038】
そして、第1ノズル11Aに通じる供給口54を第1供給口54Aとし、第2ノズル11Bに通じる供給口54を第2供給口54Bとするとき、第1ノズル11Aに通じる第1供給口54A及び第2ノズル11Bに通じる第2供給口54Bは、同じ共通供給流路支流52に配置されている。
【0039】
このとき、第1供給口54Aと第2供給口54Bとの間の距離aは、供給口54(第1供給口54A、第2供給口54B)から供給側ダンパ62までの距離b(
図6参照)よりも離れている(a>b)構成としている。
【0040】
また、本実施形態では、第1ノズル11Aは、第2方向Sにおいて、第2ノズル11Bと反対側に配置された第2ノズル11B1との関係でも、最も隣接するノズルである。そこで、第1ノズル11Aに通じる第1供給口54Aと第2ノズル11B1に通じる第2供給口54B1との間の距離a1も、供給口54から供給側ダンパ62までの距離bよりも離れている(a1>b)構成としている。
【0041】
同様に、本実施形態では、第2ノズル11Bは、第2方向Sにおいて、第1ノズル11Aと反対側に配置された第1ノズル11A1との関係でも、最も隣接するノズルである。そこで、第1ノズル11A1に通じる第1供給口54A1と第2ノズル11Bに通じる第2供給口54Bとの間の距離a1も、供給口54から供給側ダンパ62までの距離bよりも離れている(a1>b)構成としている。
【0042】
この場合、第1供給口54Aと第2供給口54Bとは最も隣接する供給口54ではないが、第1ノズル11Aと第2ノズル11Bとは同じ列に属する最も隣接したノズルの関係にある。
【0043】
一方、第1供給口54Aに最も隣接する供給口54は、上述したように、ノズル11Eに通じる供給口54Eとなるが、ノズル11Eは、第1ノズル11A及び第2ノズル11Bと異なる列に配置されている。
【0044】
このように構成したので、圧力室21の液体を加圧してノズル11から液体を吐出させると、個別供給流路22から第1供給口54Aを通じて共通供給流路支流52に圧力波が伝搬する。
【0045】
このとき、第1供給口54Aから出た圧力波は、球面上に広がり、第2供給口54Bに伝搬して到達する前に、供給側ダンパ62との間の距離bが短いので、供給側ダンパ62に到達して吸収され、第2供給口54Bまで到達する圧力波は減少する。
【0046】
これにより、共通供給流路支流52を通じた他のノズル11に対する圧力干渉(相互干渉)を抑制して、クロストークを低減することができる。
【0047】
一方、第1供給口54Aに最も隣接する供給口54はノズル11Eの供給口54Eであり、第1ノズル11Aの液体吐出に伴う圧力波は供給口54Eを通じてノズル11Eの圧力室21に伝搬する。しかしながら、ノズル11Eは第1ノズル11Aと異なる列にあり、ノズル11Aとは同時に駆動されないので、クロストークによる影響は小さくなる。
【0048】
そして、
図7(
図8ないし
図11)に示す流路配置構成とすることによって、ノズル密度の高密度化とクロストークの低減を図ることができる。
【0049】
つまり、一般的に、すべての供給口54、54間の距離を、供給口54と供給側ダンパ62との距離よりも大きくなるように配置することで、隣接ノズル間のクロストークを抑制することができる。
【0050】
しかしながら、供給口54間の距離を大きくすることは、ノズル11の配置密度を低下させることになり、ヘッドサイズが大型化することになる。
【0051】
そこで、前述した流路配置構成をとることで、個別液室25の実装密度(ノズル11の配置)の高密度化を図り、ヘッドを小型化している。
【0052】
また、供給口54から供給側ダンパ62までの距離bは短い方が良いが、供給共通流路支流52の断面積を考慮して最適な寸法とする必要がある。この場合、同じ共通供給流路支流52に接続されている各供給口54に液体を配分するために、共通供給流路支流52は接続されるノズル11の数分の液体流量を確保する必要がある。
【0053】
供給口54から供給側ダンパ62までの距離bは、共通供給流路支流52の流路高さに相当する。供給口54と供給側ダンパ62との間の距離bを短くすることは、共通供給流路支流52の流路高さを小さくすることになり、共通供給流路支流52の断面積が小さくなり、共通供給流路支流52の流体抵抗が増大することになる。
【0054】
共通供給流路支流52の流体抵抗が大きい場合、吐出により各ノズル11の流量が変動したときに共通供給流路支流52内の圧力損失の変動が大きくなる(圧力損失は抵抗と流量の積に依存する)。圧力損失の変動が大きくなると、流量に応じて各ノズル11での圧力が変動するため、吐出特性ばらつきが発生する。
【0055】
そこで、本実施形態では上記の流路配置構成とすることで、1つの共通供給流路支流52の幅W1を、第2方向Sにおけるノズル11の配置間隔P2の2倍以上とし、断面積を大きくし、流体抵抗を低減している。
【0056】
このようにして、流体抵抗の低減とクロストークの低減を両立することができる。
【0057】
また、共通供給流路支流52の幅W1を広くすることで、供給側ダンパ62の幅が広くなり、供給側ダンパ62のコンプライアンスを高めることができる。したがって、共通供給流路支流52の流体抵抗が許容される範囲内で、共通供給流路支流52の流路高さを十分小さくして、幅を広くすることで、クロストーク低減しつつ、吐出ばらつきを低減できることになる。
【0058】
次に、
図11を参照して、本実施形態の流路配置構成では、圧力室21の個別供給流路22と反対側に個別回収流路23を配置し、回収口55を介して共通回収流路支流53に接続し、複数の共通回収流路支流53は共通回収流路本流57に連通している。
【0059】
これにより、本実施形態の液体吐出ヘッド1は個別液室(圧力室)循環型ヘッドを構成し、乾燥性の高い液体や沈降性の高い液体を使用することができる。
【0060】
ここで、前述したように、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53は交互に配置し、共通回収流路支流53の壁面には、回収口55に対向して、回収側ダンパ63を配置している。
【0061】
吐出時に圧力室21で発生する圧力波は、供給側だけでなく、共通回収流路支流53を経由して他のノズル11に干渉し、共通供給流路支流52と同じく、共通回収流路支流53を介してクロストークによる吐出特性のばらつきが発生することになる。
【0062】
そこで、共通回収流路支流53の壁面には回収側ダンパ63を配置することで、共通回収流路支流53を介したクロストークを低減することができる。
【0063】
ここで、供給側と同様に、隣接する2つのノズル11、11のうち、最も隣接するノズル11の組合せを、それぞれ第3ノズル11C、第4ノズル11Dとする。
図11では第2方向Sに並ぶノズル11、11が、同じ列の、最も隣接するノズル11の組み合わせとなる。
【0064】
そして、第3ノズル11Cに通じる回収口55を第1回収口55Cとし、第4ノズル11Dに通じる回収口55を第2回収口55Dとするとき、第3ノズル11Cに通じる第1回収口55C及び第4ノズル11Dに通じる第2回収口55Dは、同じ共通回収流路支流53に配置されている。
【0065】
そして、第1回収口55Cと第2回収口55Dとの間の距離cは、回収口55(第1回収口55Cと第2回収口55D)から回収側ダンパ63までの距離d(=b)よりも離れている(c>d)構成としている。
【0066】
また、本実施形態では、第3ノズル11Cは、第2方向Sにおいて、第4ノズル11Dと反対側に配置された第4ノズル11D1との関係でも、最も隣接するノズルである。そこで、第3ノズル11Cに通じる第1回収口55Cと第4ノズル11D1に通じる第2回収口55D1との間の距離c1も、回収口55から回収側ダンパ63までの距離dよりも離れている(c1>d)構成としている。
【0067】
同様に、本実施形態では、第4ノズル11Dは、第2方向Sにおいて、第3ノズル11Cと反対側に配置された第3ノズル11C1との関係でも、最も隣接するノズルである。そこで、第3ノズル11C1に通じる第1回収口55C1と第4ノズル11Dに通じる第2回収口55Dとの間の距離c1も、回収口55から回収側ダンパ63までの距離dよりも離れている(c1>d)構成としている。
【0068】
ここで、第1回収口55Cと第2回収口55Dとは最も隣接する回収口55ではないが、第3ノズル11Cと第4ノズル11Dとは同じ列に属する最も隣接したノズルの関係にある。
【0069】
このように構成したので、圧力室21の液体を加圧してノズル11から液体を吐出させたとき、個別回収流路23から第1回収口55Cを通じて共通回収流路支流53に圧力波が伝搬するとき、第1回収口55Cから出た圧力波は、第2回収口55Dに伝搬して到達する前に、回収側ダンパ63に到達して吸収減衰される。
【0070】
これにより、共通回収流路支流53を通じた他のノズル11に対する圧力干渉(相互干渉)を抑制して、クロストークを低減することができる。
【0071】
また、本実施形態では、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53は共通流路部材50に交互に配置している。
【0072】
これにより、1枚のダンパ部材60で、共通供給流路支流52の供給側ダンパ62と、共通回収流路支流53の回収側ダンパ63を形成することができ、ヘッドの小型化が可能となる。
【0073】
また、前述したように、共通供給流路支流52と共通回収流路支流53の配置間隔P0を、第2方向Sにおけるノズル11の配置間隔P2の2倍以上としている。また、共通回収流路支流53の幅W2を、共通供給流路支流52の幅W1と同様に、第2方向Sにおけるノズル11の配列間隔P2の2倍以上としている。
【0074】
これにより、共通回収流路支流53においても、流体抵抗を低減しつつ、回収側ダンパ63のコンプライアンスを高くするとともに、回収側ダンパ63と回収口55の距離を十分に短くすることができる。
【0075】
したがって、圧力波の伝搬によるクロストークの低減と、循環型ヘッドによる多様な液体に対する対応と、信頼性向上を図ることができる。
【0076】
以上のように、
図7ないし
図11で説明した流路配置構成をとることで、共通供給流路支流及び共通回収流路支流の各流体抵抗を低減し、また、共通供給流路支流及び共通回収流路支流に配置されるダンパのコンプライアンスを増大することができ、ヘッドの小型化と、クロストーク低減、流体抵抗低減による特性安定性の向上を図ることができる。
【0077】
次に、本発明の第2実施形態について
図12を参照して説明する。
図12は同実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部拡大平面説明図である。
【0078】
本実施形態においては、共通供給流路支流52が延びている第1方向Fと同じ方向に、最も隣接した第1ノズル11Aと第2ノズル11Bとが並んでいる。また、第2方向Sにノズル列が並び、第3方向Tに個別供給流路22、個別回収流路23が沿うように配置されている。
【0079】
ここでも、第1ノズル11Aに通じる第1供給口54と、第2ノズル11Bに通じる第2供給口54Bとの間の距離aが、前述した供給口54から供給側ダンパまでの距離bより離れている(a>b)構成としている。
【0080】
これにより、前記第1実施形態と同様に、共通供給流路支流52を通じた他のノズル11に対する圧力干渉(相互干渉)を抑制して、クロストークを低減することができる。
【0081】
次に、本発明に係るヘッドモジュールの一例について
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は同ヘッドモジュールの分解斜視説明図、
図14は同ヘッドモジュールのノズル面側から見た分解斜視説明図である。
【0082】
ヘッドモジュール100は、液体を吐出する液体吐出ヘッドである複数のヘッド1と、複数のヘッド1を保持するベース部材103と、複数のヘッド1のノズルカバーとなるカバー部材113とを備えている。
【0083】
また、ヘッドモジュール100は、放熱部材104と、複数のヘッドに対して液体を供給する流路を形成しているマニホールド105と、フレキシブル配線部材101と接続するプリント基板(PCB)106と、モジュールケース107とを備えている。
【0084】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図15及び
図16を参照して説明する。
図15は同装置の概略説明図、
図16は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0085】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0086】
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0087】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が印刷される。
【0088】
ここで、ヘッドユニット550には、本発明に係る2つのヘッドモジュール100A、100Bを共通ベース部材552に備えている。
【0089】
そして、ヘッドモジュール100の搬送方向と直交する方向におけるヘッド1の並び方向をヘッド配列方向とするとき、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1A1,1A2で同じ色の液体を吐出する。同様に、ヘッドモジュール100Aのヘッド列1B1、1B2を組とし、ヘッドモジュール100Bのヘッド列1C1、1C2を組とし、ヘッド列1D1、1D2を組として、それぞれ所要の色の液体を吐出する。
【0090】
次に、液体循環装置の一例について
図17を参照して説明する。
図17は同循環装置のブロック説明図である。なお、ここでは1つのヘッドのみ図示しているが、複数のヘッドを配列する場合には、マニホールドなどを介して複数のヘッドの供給側、回収側にそれぞれ供給側液体経路、回収側液体経路を接続することになる。
【0091】
液体循環装置600は、供給タンク601、回収タンク602、メインタンク603、第1送液ポンプ604、第2送液ポンプ605、コンプレッサ611、レギュレータ612、真空ポンプ621、レギュレータ622、供給側圧力センサ631、回収側圧力センサ632などで構成されている。
【0092】
ここで、コンプレッサ611及び真空ポンプ621は、供給タンク601内の圧力と回収タンク602内の圧力とに差圧を生じさせる手段を構成している。
【0093】
供給側圧力センサ631は、供給タンク601とヘッド1との間であって、ヘッド1の供給ポート81に繋がった供給側液体経路に接続されている。回収側圧力センサ632は、ヘッド1と回収タンク602との間であって、ヘッド1の回収ポート82に繋がった回収側液体経路に接続されている。
【0094】
回収タンク602の一方は、第1送液ポンプ604を介して供給タンク601と接続されており、回収タンク602の他方は第2送液ポンプ605を介してメインタンク603と接続されている。
【0095】
これにより、供給タンク601から供給ポート71を通ってヘッド1内に液体が流入し、回収ポート72から回収タンク602へ回収され、第1送液ポンプ604によって回収タンク602から供給タンク601へ液体が送られることによって、液体が循環する循環経路が構成される。
【0096】
ここで、供給タンク601にはコンプレッサ611がつなげられており、供給側圧力センサ631で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、回収タンク602には真空ポンプ621がつなげられており、回収側圧力センサ632で所定の負圧が検知されるよう制御される。
【0097】
これにより、ヘッド1内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0098】
また、ヘッド1のノズル11から液体を吐出すると、供給タンク601及び回収タンク602内の液体量が減少していく。そのため、適宜、第2送液ポンプ605を用いて、メインタンク603から回収タンク602に液体を補充する。
【0099】
なお、メインタンク603から回収タンク602への液体補充のタイミングは、回収タンク602内の液体の液面高さが所定高さよりも下がったときに液体補充を行うなど、回収タンク602内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0100】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の他の例について
図18及び
図19を参照して説明する。
図18は同装置の要部平面説明図、
図19は同装置の要部側面説明図である。
【0101】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0102】
このキャリッジ403には、本発明に係る液滴吐出ヘッドであるヘッド1及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440のヘッド1は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド1は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0103】
液体吐出ヘッド1は、前述した液体循環装置600と接続されて、所要の色の液体が循環供給される。
【0104】
この印刷装置500は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0105】
搬送ベルト412は用紙410を吸着してヘッド1に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0106】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0107】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド1の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0108】
維持回復機構420は、例えばヘッド1のノズル面をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0109】
主走査移動機構493、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0110】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0111】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じてヘッド1を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0112】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図20を参照して説明する。
図20は同ユニットの要部平面説明図である。
【0113】
この液体吐出ユニット440、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、ヘッド1で構成されている。
【0114】
なお、この液体吐出ユニット440の例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420を更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0115】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図21を参照して説明する。
図21は同ユニットの正面説明図である。
【0116】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられたヘッド1と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0117】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド1と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0118】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0119】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0120】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0121】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0122】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0123】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0124】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0125】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0126】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0127】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0128】
なお、ここでは、「液体吐出ユニット」について、液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、「液体吐出ユニット」には上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品、機構が一体化したものも含まれる。
【0129】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0130】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0131】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0132】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0133】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0134】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0135】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0136】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0137】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0138】
1 液体吐出ヘッド
10 ノズル板
11 ノズル
20 個別流路部材
21 圧力室
22 個別供給流路
23 個別回収流路
30 振動板部材
40 圧電素子
50 共通流路部材
52 共通供給流路支流
53 共通回収流路支流
54 供給口
55 回収口
56 共通供給流路本流
57 共通回収流路本流
100 ヘッドモジュール
403 キャリッジ
440 液体吐出ユニット
500 印刷装置(液体を吐出する装置)
550 ヘッドユニット
600 液体循環装置