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  • 特許-精鉱シュートの昇降装置 図1
  • 特許-精鉱シュートの昇降装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】精鉱シュートの昇降装置
(51)【国際特許分類】
   C22B 15/00 20060101AFI20221206BHJP
   F27D 99/00 20100101ALI20221206BHJP
   F27D 3/18 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C22B15/00 102
F27D99/00 A
F27D3/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019010845
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020117784
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴江 晃也
(72)【発明者】
【氏名】東 司
(72)【発明者】
【氏名】森 勝弘
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-064710(JP,A)
【文献】特開2003-343810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
F27D 3/00- 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドボックス内に配置された精鉱シュートの昇降装置であって、
前記精鉱シュートに固定されたアームと、
ジャッキと、
前記ジャッキを駆動する駆動装置と、を備え、
前記ジャッキは、
前記ウインドボックスに対して固定された基部と、
前記アームと連結され、前記基部に対して移動する可動部と、を備え、
前記アームは棒状の鉛直部を有し、
前記鉛直部は前記ウインドボックスの天板に形成された貫通孔に通されており、
前記鉛直部の上端と前記可動部とが結合されており、
前記基部に対して前記可動部が上下動することで、前記精鉱シュートが昇降する
ことを特徴とする精鉱シュートの昇降装置。
【請求項2】
前記駆動装置は前記天板の上面に設けられた支持台に載せられている
ことを特徴とする請求項記載の精鉱シュートの昇降装置。
【請求項3】
前記鉛直部は前記精鉱シュートを中心として回転対称な複数の位置のそれぞれに設けられており、
前記ジャッキは前記鉛直部のそれぞれに設けられている
ことを特徴とする請求項または記載の精鉱シュートの昇降装置。
【請求項4】
前記鉛直部と前記天板との間が封止部材で封止されている
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の精鉱シュートの昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精鉱シュートの昇降装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、精鉱バーナーに備えられた精鉱シュートの高さを調整するための昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銅硫化物、ニッケル硫化物などの非鉄金属硫化物を原料とする熔融製錬には自熔製錬炉が用いられる。自熔製錬炉には製錬原料と反応用ガスとを炉内に供給する精鉱バーナーが備えられている。
【0003】
自熔製錬炉の操業においては、炉内の熔融製錬反応を制御し、安定した操業を行なうことが求められる。熔融製錬反応は製錬原料に含まれる金属硫化物の酸化反応である。この酸化反応は製錬原料と反応用ガスとの接触によって生じる。そのため、製錬原料と反応用ガスとがしっかりと混合しているほど、酸化反応は急激に進行する。このことから、精鉱バーナー内では製錬原料と反応用ガスとを混合しておく予混合が行われる。一方で、予混合の度合いが大きいと、精鉱バーナー内で反応が進みすぎ、精鉱バーナーの損耗が激しくなる。
【0004】
特許文献1には、精鉱バーナーに備えられた精鉱シュートの位置を調整することで、製錬原料と反応用ガスとの予混合の度合いを管理することが開示されている。予混合の度合いを管理することで、自熔製錬炉の安定操業が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-46120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
製錬原料と反応用ガスとの予混合の度合いを適切に調整するには、精鉱シュートの位置を頻繁に調整する必要がある。これに加え、以下に説明するように、点検口を開く場合にも精鉱シュートを昇降させる必要がある。
【0007】
予混合の度合いを高くするには、精鉱シュートを上昇させればよい。しかし、精鉱シュートを上昇させすぎると、精鉱バーナーの点検口を開けた際に点検口から精鉱が吹き出すことがある。そこで、精鉱シュートを上昇させた状態で操業を行なっている場合には、点検口から精鉱が吹き出ない程度に精鉱シュートを下降させた後、点検口を開いて作業を行い、作業終了後に再び精鉱シュートを上昇させる。点検口を開ける頻度は比較的高い。例えば、精鉱バーナーのライナーに付着する鋳付き(ベコ)を落とすために、定期的に点検口を開けて作業を行なう。このような点検口を用いた作業のたびに、精鉱シュートを昇降させる必要がある。
【0008】
しかし、従来の設備では、精鉱シュートの位置を調整する作業に手間がかかり、作業員にとって負担が大きい。また、作業場所は温度が高い環境であり、長時間の作業は熱中症などのリスクもある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、手間をかけることなく精鉱シュートの高さを調整できる昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の精鉱シュートの昇降装置は、ウインドボックス内に配置された精鉱シュートの昇降装置であって、前記精鉱シュートに固定されたアームと、ジャッキと、前記ジャッキを駆動する駆動装置と、を備え、前記ジャッキは、前記ウインドボックスに対して固定された基部と、前記アームと連結され、前記基部に対して移動する可動部と、を備え、前記アームは棒状の鉛直部を有し、前記鉛直部は前記ウインドボックスの天板に形成された貫通孔に通されており、前記鉛直部の上端と前記可動部とが結合されており、前記基部に対して前記可動部が上下動することで、前記精鉱シュートが昇降することを特徴とする。
第2発明の精鉱シュートの昇降装置は、第1発明において、前記駆動装置は前記天板の上面に設けられた支持台に載せられていることを特徴とする。
第3発明の精鉱シュートの昇降装置は、第1または第2発明において、前記鉛直部は前記精鉱シュートを中心として回転対称な複数の位置のそれぞれに設けられており、前記ジャッキは前記鉛直部のそれぞれに設けられていることを特徴とする。
第4発明の精鉱シュートの昇降装置は、第1~第3発明のいずれかにおいて、前記鉛直部と前記天板との間が封止部材で封止されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、駆動装置によりジャッキを動作させることで精鉱シュートが昇降するので、手間をかけることなく精鉱シュートの高さを調整できる。また、アームとジャッキとで精鉱シュートを懸垂させた単純な構成であるので、設備費用を抑えることができる。
第2発明によれば、駆動装置が支持台に載せられているので、駆動装置をウインドボックスの熱から保護できる。
第3発明によれば、複数の鉛直部が精鉱シュートの周りに配置されているので、各鉛直部の昇降量を調整することで、精鉱シュートの傾きを調節できる。
第4発明によれば、鉛直部と天板との間が封止されているので、ウインドボックスから反応用ガスが漏れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態に係る昇降装置の正面図である。
図2図1の昇降装置のジャッキ部分の拡大図である。
図3】自熔製錬炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
(自熔製錬炉)
まず、自熔製錬炉FFの全体構成を説明する。
図3に示すように、自熔製錬炉FFはセトラー11を備えている。セトラー11の一端の上面には反応塔12が立設している。セトラー11の他端の上面には排煙道13が立設している。反応塔12の上端には精鉱バーナー20が設けられている。セトラー11の側壁には、カラミの高さにカラミ抜き口14が、カワの高さにカワ抜き口15が、離れて設けられている。
【0014】
自熔製錬炉FFを用いた銅製錬操業は以下のように行なわれる。
精鉱バーナー20から粉状の製錬原料と、反応用ガス(例えば酸素富化空気)とが反応塔12内に吹き込まれる。製錬原料には少なくとも硫化銅精鉱(以下、単に「銅精鉱」と称する。)とフラックスとが含まれている。フラックスは良質のカラミを製造するために添加されるものであり、例えば珪砂である。また、製錬原料には必要に応じて冷材などが含まれている。
【0015】
反応塔12内に吹きこまれた製錬原料は、補助バーナーの熱、反応塔12の炉壁内の輻射熱などにより昇温され、銅精鉱中の硫黄分および鉄分が燃焼することで熔融する。製錬原料が熔融した熔体はセトラー11内に溜められる。セトラー11内において熔体はカラミとカワとに比重分離する。
【0016】
熔体上部のカラミはカラミ抜き口14から排出され、電気錬かん炉で処理される。熔体下部のカワは、次工程の転炉の要求に応じて適量がカワ抜き口15から抜き出される。反応塔12およびセトラー11内で発生した製錬ガスは、排煙道13を通って自熔製錬炉FFから排出され、排熱ボイラーで熱が回収される。
【0017】
(精鉱バーナー)
つぎに、精鉱バーナー20の構成を説明する。
図1に示すように、精鉱バーナー20は反応用ガスが導入されるウインドボックス21を備えている。ウインドボックス21の下部は下方に絞られたコーン状に形成されており、その下端に円筒状のバーナーコーン22が接続されている。バーナーコーン22は反応塔12の上端に立設している。また、バーナーコーン22には点検口23が設けられている。
【0018】
精鉱バーナー20は補助バーナー24を備えている。補助バーナー24はウインドボックス21およびバーナーコーン22の内部を貫き、鉛直に配置されている。補助バーナー24はバーナーコーン22の軸心に配置されている。補助バーナー24の炎が噴射される下端はバーナーコーン22の下端付近に位置している。
【0019】
補助バーナー24の外周を囲むように精鉱シュート25が設けられている。精鉱シュート25は補助バーナー24と同軸の筒部材である。精鉱シュート25はウインドボックス21内に配置されており、ウインドボックス21内で昇降可能となっている。製錬原料は精鉱シュート25を通して自熔製錬炉FF内に供給される。
【0020】
精鉱シュート25の外周を囲むように風速調整器26が設けられている。風速調整器26はウインドボックス21内に配置されており、精鉱シュート25とは独立してウインドボックス21内で昇降可能となっている。風速調整器26を昇降させることで、ウインドボックス21からバーナーコーン22に供給される反応用ガスの流路幅を調整できる。これにより、反応用ガスの流速を調整できる。
【0021】
(昇降装置)
つぎに、本発明の一実施形態に係る昇降装置Aを説明する。
昇降装置Aは精鉱シュート25を昇降させる装置である。昇降装置Aにより精鉱シュート25の下端部の高さを調整することで、製錬原料と反応用ガスとの予混合の度合いを調整できる。
【0022】
昇降装置Aは精鉱シュート25に固定されたアーム30と、アーム30に連結したジャッキ40とを有する。本実施形態では精鉱シュート25に2つのアーム30が固定されている。また、2つのアーム30のそれぞれにジャッキ40が連結されている。アーム30およびジャッキ40の数は特に限定されず、1セットでもよいし、複数セットでもよい。
【0023】
アーム30は全体としてL字形をしており、水平部31と鉛直部32とからなる。水平部31は精鉱シュート25の横断面の半径方向に沿って、水平に配置されている。水平部31の一端は精鉱シュート25の外表面に固定されており、他端は鉛直部32に接続している。
【0024】
水平部31は風速調整器26に形成された縦孔26hに通されている。これにより、水平部31と風速調整器26とが干渉することなく、精鉱シュート25と風速調整器26とを個別に昇降できるようになっている。
【0025】
鉛直部32は棒状の部材であり、鉛直方向に沿って配置されている。鉛直部32の下部(下端)は水平部31と接続している。ウインドボックス21の天板21aには縦方向の貫通孔21hが形成されている。鉛直部32はこの貫通孔21hに通されており、上端が天板21aより上方に突出している。
【0026】
ジャッキ40は天板21aの上方に配置されている。ジャッキ40によりアーム30が支持されている。このように、昇降装置Aはアーム30とジャッキ40とで精鉱シュート25を懸垂させた比較的単純な構成であるので、設備費用を抑えることができる。
【0027】
図2に示すように、本実施形態のジャッキ40はスクリュージャッキと称されるタイプのものであり、機構部41とネジ軸42とを有している。機構部41に設けられたウォームシャフト43を正逆回転させることで、ネジ軸42を機構部41に対して上下動させることができる。
【0028】
機構部41は天板21aの上面に固定された支持台44に支持されている。これにより、機構部41はウインドボックス21に対して固定されている。一方、ネジ軸42の先端部は結合部材45により鉛直部32の上端と結合されている。したがって、機構部41に対してネジ軸42が移動することで精鉱シュート25が昇降する。支持台44を介してジャッキ40を固定することで、ジャッキ40をウインドボックス21の熱などから保護できる。
【0029】
なお、本実施形態の機構部41およびネジ軸42が、それぞれ特許請求の範囲に記載の「基部」および「可動部」に相当する。ジャッキ40としてはスクリュージャッキに限定されず、種々のジャッキを採用できる。ジャッキ40は、例えば、スクリュージャッキなどの機械式ジャッキでもよいし、油圧ジャッキなどの液圧式ジャッキでもよい。ジャッキの構成部材のうち、ウインドボックス21に対して直接的にまたは間接的に固定される部材が基部であり、アーム30と連結される部材が可動部である。ジャッキ40の動作により精鉱シュート25が昇降すればよく、アーム30とジャッキ40の可動部とは何らかの機構を介して間接的に連結されてもよい。
【0030】
ジャッキ40には駆動装置50が接続されている。駆動装置50によりジャッキ40が駆動される。ジャッキ40がスクリュージャッキの場合、駆動装置50として電動機を用いることができる。この場合、ジャッキ40のウォームシャフト43と電動機の回転軸とが、直接または減速機などを介して接続される。ジャッキ40が油圧ジャッキの場合、駆動装置50として油圧ポンプ、各種の切換弁などからなる油圧回路を用いることができる。
【0031】
駆動装置50は支持台44に載せることが好ましい。そうすれば、駆動装置50をウインドボックス21の熱などから保護できる。機構部41と駆動装置50とを一つの支持台44に載せてもよいし、別々の支持台に載せてもよい。機構部41を支持する支持台と駆動装置50を支持する支持台とを別に設けることで、機構部41に対する駆動装置50の高さ調整ができるようになる。そのため、機構部41と駆動装置50とを容易に(必要に応じて水平に)接続できる。
【0032】
駆動装置50には図示しない操作手段が接続される。操作手段を操作することにより駆動装置50のON/OFFの切り替え、正逆回転の切り替えなどが行なわれる。操作手段は例えば各種のスイッチで構成される。操作手段は、駆動装置50の近傍に設けてもよいし、遠隔地に設けてもよい。操作手段を遠隔地に設ければ、作業員は温度が高い環境での作業が不要となるので、作業員の熱中症などのリスクを低減できる。
【0033】
昇降装置Aは以上のような構成であるので、駆動装置50によりジャッキ40を動作させるだけで、精鉱シュート25を昇降させることができる。そのため、手間をかけることなく精鉱シュート25の高さを調整できる。その結果、作業員の負担を軽減できる。
【0034】
鉛直部32と天板21a(貫通孔21hの内壁)との間には隙間がある。この隙間を封止部材60で封止することが好ましい。封止部材60として、例えばグランドパッキンを用いることができる。この場合、天板21aにスタッフィングボックスを設け、その内部にグランドパッキンを挿入すればよい。このように、鉛直部32と天板21aとの間を封止することで、ウインドボックス21から反応用ガスが漏れることを抑制できる。
【0035】
複数のアーム30を設ける場合、精鉱シュート25の中心軸を中心として回転対称な複数の位置のそれぞれに鉛直部32を設けることが好ましい。例えば、精鉱シュート25の周りに180°間隔で2つの鉛直部32を設けてもよい。精鉱シュート25の周りに120°間隔で3つの鉛直部32を設けてもよい。
【0036】
複数の鉛直部32のそれぞれにジャッキ40が設けられる。したがって、各ジャッキ40により、それに対応する鉛直部32を昇降できる。なお、複数のジャッキ40のそれぞれに駆動装置50を設けてもよい。複数のジャッキ40を一つの駆動装置50で駆動する構成としてもよい。
【0037】
複数の鉛直部32を精鉱シュート25の周りに配置した構成とすれば、各鉛直部32の昇降量を調整することで、精鉱シュート25の傾きを調節できる。基本的には、精鉱シュート25はその中心軸が鉛直方向に沿うよう維持される。しかし、バーナーコーン22の内壁に設けられたライナーの摩耗状況に応じて、銅精鉱の噴出方向を調整したいことがある。このような場合に、精鉱シュート25の傾きを調整することが行なわれる。
【符号の説明】
【0038】
A 昇降装置
30 アーム
31 水平部
32 鉛直部
40 ジャッキ
41 機構部
42 ネジ軸
43 ウォームシャフト
44 支持台
45 結合部材
50 駆動装置
60 封止部材
図1
図2
図3