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  • 特許-水系の防食方法及び水系システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】水系の防食方法及び水系システム
(51)【国際特許分類】
   C23F 11/18 20060101AFI20221206BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20221206BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C23F11/18 102
F28D20/00 B
F28F19/00 511A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019036456
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139204
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 匠
(72)【発明者】
【氏名】飯村 晶
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-056080(JP,A)
【文献】特開2013-208568(JP,A)
【文献】特開平06-192860(JP,A)
【文献】特開平09-304247(JP,A)
【文献】特開昭62-256973(JP,A)
【文献】特開平04-330998(JP,A)
【文献】特開平08-094528(JP,A)
【文献】特開2002-372396(JP,A)
【文献】特開2008-297611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 11/00-11/18
F28D 20/00-20/02
F28F 19/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過工程と、
前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定工程と、
前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加することで、系内の全リン酸濃度が防食機能の維持に必要な濃度を下回らないように調整する添加工程と、
を備える、水系の防食方法。
【請求項2】
前記水系が、鉄系金属部材を有する、請求項1に記載の防食方法。
【請求項3】
前記リン化合物が、オルトリン酸及び/又はその塩、ホスホン酸及び/又はその塩、重合リン酸、ピロリン酸アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、ピロリン酸二水素塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の水系の防食方法。
【請求項4】
前記添加工程において、前記全リン酸濃度が5~50mg-PO4/Lの範囲となるように、前記水系に前記防食剤を添加する、請求項1~3の何れかに記載の水系の防食方法。
【請求項5】
孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過手段と、
前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定手段と、
前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加することで、系内の全リン酸濃度が防食機能の維持に必要な濃度を下回らないように調整する添加手段と、
を含む、水系システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環冷却水系、開放冷温水系、密閉冷温水系等(以下、水系)の防食方法及び水系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水系を構成するシステムでは、鉄等の金属部材表面と水が接触しているため腐食が発生しやすい。これらの腐食を防止するために種々の防食剤や防食方法が提案されている(特許文献1、2等)。
【0003】
水系に添加する防食剤としては、正リン酸、重合リン酸、ホスホン酸といったリン系の防食剤や亜鉛塩などが広く用いられ、これらの添加で、金属部材表面に防食皮膜を形成してその腐食を抑制している。
【0004】
特許文献1には、金属部材表面に防食皮膜を形成中に、防食成分の消耗等で防食機能が低下することを回避する目的で、系内の全リン酸濃度を測定し、系内の全リン酸濃度が防食機能の維持に必要な濃度(以下、最低必要リン酸濃度)を下回った場合には、最低必要リン酸濃度を維持するように、防食剤を追加添加することが開示されている。
【0005】
しかし、従来技術では、防食剤を追加添加しても防食機能の低下が生じるケースもあり、安定して防食機能を維持することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-290419号公報
【文献】特開2011-202243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、安定して高い防食効果を得ることができる水系の防食方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、リン化合物を含む防食剤を添加した水系内には、スラッジ等と結合して防食機能が低下したリン化合物が含まれる場合があるが、これを除いた後の全リン酸濃度に基づいて水系を管理することにより、安定して高い防食効果を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過工程と、前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定工程と、前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加する添加工程と、を備える、水系の防食方法。
[2]前記水系が、鉄系金属部材を有する、[1]に記載の水系の防食方法。
[3]前記リン化合物が、オルトリン酸及び/又はその塩、ホスホン酸及び/又はその塩、重合リン酸、ピロリン酸アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、ピロリン酸二水素塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の水系の防食方法。
[4]前記添加工程において、前記全リン酸濃度が5~50mg-PO/Lの範囲となるように、前記水系に前記防食剤を添加する、[1]~[3]の何れかに記載の水系の防食方法。
[5]孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過手段と、前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定手段と、前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加する添加手段と、を含む、水系システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る水系の防食方法では、濾過工程で、孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して、スラッジ等と結合して防食機能が低下したリン化合物が除かれた濾過水を得ることができる。測定工程で、その濾過水の全リン酸濃度を測定する。添加工程では、その測定結果に基づいて、防食機能の低下していないリン化合物を含む防食剤を添加する。これらの各工程からなる本発明によれば、スラッジ等と結合して防食機能が低下したリン系防食剤の影響を排除し、安定して防食機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の水系の防食方法に好適な水系システムの一実施形態に係る概略系統図である。
図2】実施例で腐食速度測定に用いた装置構成の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1に基づいて、本発明の好適な実施形態について説明する
【0013】
<水系システム>
本発明の水系システムは、孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過手段と、前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定手段と、前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加する添加手段と、を含む。前記孔径は、公称孔径でよく、例えば、平均細孔径である。
【0014】
本発明の水系システムの一実施形態である図1は蓄熱冷系の水系システムであり、負荷の冷却を行うための水(「水系の保有水」に該当)を蓄える蓄熱水槽1と、蓄熱水槽1の水を導いて負荷の冷却を行う熱交換器2と、蓄熱水槽1内の水を導いて冷却する冷凍機3を備えた冷却ライン4を備えている。
熱交換器2で負荷の冷却を行うことにより高温となった水は、蓄熱水槽1経由で冷凍機3に導かれて冷却され、蓄熱水槽1経由で再び循環使用される。
【0015】
蓄熱冷系の水系システムは、蓄熱水槽1内に沈殿したスラッジやスライム等を除去する濾過装置5を備えることもできる。
濾過装置5を設けることにより、水系内におけるスラッジやスライムの増加を抑制することができ、その結果、熱交換機における熱効率の低下や、水系を構成する循環ポンプの閉塞を回避することができる。
【0016】
図1の蓄熱冷系の水系システムは、蓄熱水槽1から熱交換器2に導く水を抜き出す循環ポンプ6の下流側に分岐ライン7を備え、分岐ライン7には、水系内の保有水から、スラッジ等と結合して防食機能が低下したリン化合物を捕捉する濾過手段である濾過部材8を備えている。濾過部材8は、孔径0.01~0.50μmのフィルタであり、孔径0.02~0.45μmのフィルタであることが好ましく、孔径0.02~0.10μmのフィルタであることがより好ましい。
本発明の水系システムにおける濾過手段は、孔径が0.01~0.50μmであるフィルタを含むものであればよい。濾過手段は、図1のように水系内に設けた濾過部材8に限定されず、水系から水を採取して、水系を構成するラインの外で濾過を行うものでもよい。
本発明の水系システムにおける測定手段は、前記濾過手段で濾過して得た濾過水の全リン酸濃度を測定するものであればよい。測定手段として、例えば、水系システムから自動的に保有水の採取及び分析を行う全リン酸濃度分析装置(図示しない)を設けることもできる。
本発明の水系システムにおける添加手段は、前記全リン酸濃度に基づいて、水系に、リン化合物を含む防食剤を添加するものであればよい。添加手段として、例えば、蓄熱水槽1に防食剤を添加する防食剤添加装置(図示しない)を設けることもできる。
【0017】
水系システムを構成する熱交換器伝熱管や配管等の部材の材料は、主に、鉄系金属部材からなる。
【0018】
<水系の防食方法>
本発明の水系の防食方法は、孔径が0.01~0.50μmであるフィルタで、水系の水の少なくとも一部を濾過して濾過水を得る濾過工程と、前記濾過水の全リン酸濃度を測定する測定工程と、前記全リン酸濃度に基づいて、前記水系にリン化合物を含む防食剤を添加する添加工程と、を備える。
【0019】
(防食皮膜の形成)
本発明の水系システムを構成する鉄系金属部材は、水と接触すると著しい腐食が発生するが、水系の保有水に防食剤を添加して、該水系の金属部材表面に防食皮膜を形成することで腐食を防止することができる。
水系の金属部材表面に防食皮膜を形成する工程には、通常、水系システムの運転開始時に行われる基礎処理工程と、基礎処理を行った後の通常運転時に行われる通常処理工程が含まれる。
一般に、水系システムの運転開始時においては金属部材表面に防食皮膜が形成されておらず、極めて腐食が発生しやすい状態となっている。基礎処理工程では、鉄系金属部材の表面に対し、比較的高濃度の防食剤によって防食皮膜を形成させる。通常処理工程では、基礎処理工程で防食皮膜を形成させた鉄系金属部材に対し、低濃度の防食剤によって防食皮膜を維持する。本発明の方法は、いずれの工程にも適用することができる。
【0020】
本発明の方法に用いる防食剤は、リン化合物を含むことが好ましい。
リン化合物としては、オルトリン酸及び/又はその塩、例えばリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムのほか、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、2-ホスホノブタン-1,2,3-トリカルボン酸(PBTC)、アミノトリメチルホスホン酸などのホスホン酸及び/又はその塩、ピロリン酸及び/又はその塩、トリポリリン酸及び/又はその塩、ヘキサメタリン酸及び/又はその塩などの重合リン酸、例えばピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム等のピロリン酸アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム等のヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、ピロリン酸二水素二ナトリウム等のピロリン酸二水素塩等を用いることができる。これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、防食皮膜の形成をより促進する観点から、オルトリン酸及び/又はその塩、ホスホン酸及び/又はその塩、重合リン酸、ピロリン酸アルカリ金属塩、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、ピロリン酸二水素塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0021】
本発明方法を適用する水系の保有水の水質としては、水中に含まれるカルシウム硬度が10~100mg-CaCO/L、特に30~60mg-CaCO/Lであることが好ましい。カルシウム硬度が10mg-CaCO/L以上の水質とすることで、リン酸塩とカルシウムとの作用で生成するリン及びカルシウムよりなる防食皮膜を十分に形成することができる。カルシウム硬度が100mg-CaCO/L以下の水質において、リン及びカルシウムよりなるスケールの析出、付着を回避することができる。なお、処理対象水系の水質が上記範囲を下回る場合は、硝酸カルシウム、塩化カルシウム等のカルシウム硬度成分の添加による水質調整を行えばよく、上記範囲を上回る場合には除去による水質調整やスケール防止剤の添加を行えばよい。
【0022】
このような水系に対して、リン酸及び/又はその塩等のリン化合物であって、防食機能の低下していないものを、添加後の水系の保有水中の全リン酸濃度が5~50mg-PO/L、特に10~30mg-PO/Lとなるように添加する。防食剤添加後の全リン酸濃度が5mg-PO/L未満では、十分な防食皮膜を形成し難く、50mg-PO/Lを超えると、高濃度となって、環境への影響が懸念される。
なお、防食成分の消耗等で、上記最低必要リン酸濃度を下回った場合には、最低必要リン酸濃度を維持するようにリン酸等を追加添加して、水系の全リン酸濃度を管理することが好ましい。このため、水系内の全リン酸濃度を、定期的に測定することが好ましい。
【0023】
(濾過工程、測定工程、添加工程)
図1の水系システムでは、分岐ライン7の採取ポイント(図1のA点)で水系内の保有水を採取して、全リン酸濃度を測定する。
図1の水系システムは、分岐ライン7のA点の上流に、濾過部材8を備えている。この濾過部材8において、スラッジ等と結合して防食機能が低下したリン化合物が捕捉されるため、図1のA点では、防食機能が低下したリン化合物を除いた濾過水の全リン酸濃度が測定される。
全リン酸濃度は、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム分解法や硝酸-硫酸分解法などによりオルソリン酸に分解したのち、モリブデン青吸光光度法やイオンクロマトグラフ法によって測定することができる。
【0024】
従来技術では、防食機能が低下したリン化合物を含む全リン酸濃度を測定し、その測定値が最低必要リン酸濃度を下回らないように、防食剤を追加添加していため、添加量が防食機能の維持に本来必要な量に満たない場合もあったが、本発明によれば、防食機能が低下したリン系防食剤の影響を排除し、防食機能の維持に必要な量を確実に添加することができる。これにより、安定して防食機能を維持することができる。
防食剤の添加量は、例えば、濾過水の測定値を系内の全リン酸濃度とみなし、そのみなし値が最低必要リン酸濃度を下回らないように調整することができる。
【実施例
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
循環水量15000m/hrの開放循環式冷却水系の実機冷却水(栃木県下都賀郡野木町水)を用いて試験を行った。
【0027】
(実施例1)
上記の実機冷却水1Lを1Lビーカー9に満たし、添加薬剤として、0.1%オルトリン酸、NaCl、塩化鉄(III)を、それぞれ添加後に、全リン酸濃度:10mg/L、塩化物イオン濃度:50mg/L、鉄濃度:2mg/Lとなるように添加した。
【0028】
図2に示すように、支持棒10に鉄試験片11(材質:SPCC、寸法:30×50×1mm)を取り付け、上記ビーカー9内の実機冷却水12に鉄試験片11を浸漬させた。図2に示すように、ビーカー9を35℃の恒温槽13に入れ、支持棒10を回転速度150rpmで回転させた。
【0029】
回転を開始してから1時間後に前記1Lビーカー9から20mLを分取し、濾過孔径0.45μmのフィルタ(メルクミリポア社製、製品名:デュラポア(フィルターコード:HVLP)、材質:親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF))で濾過した後、濾過後の冷却水の全リン酸濃度の測定を行った。全リン酸濃度は、モリブデン青吸光光度法により測定した。その測定結果に基づき、前記1Lビーカー9内に、0.1%オルトリン酸を、添加後の全リン酸濃度が10mg/Lとなるように、追加添加した。
【0030】
回転を開始してから3日後に前記1Lビーカー9から20mLを分取し、上記濾過孔径0.45μmのフィルタ(メルクミリポア社製、製品名:デュラポア(フィルターコード:HVLP)、材質:親水性ポリフッ化ビニリデン(PVDF))で濾過した後、濾過後の冷却水の全リン酸濃度の測定を行った。その測定結果に基づき、前記1Lビーカー9内に、0.1%オルトリン酸を、添加後の全リン酸濃度が10mg/Lとなるように、追加添加した。
【0031】
回転を開始してから7日後に重量法により、鉄試験片11の腐食速度を測定した。
腐食速度は下記式により求めた。
腐食速度(mdd:mg/dm2/day)={試験前の試験片重量(mg)-試験後の試験片重量(mg)}÷{試験片の表面積(dm2)×試験期間(day)}
なお、試験後の試験片重量測定前に試験片を酸洗浄し腐食生成物を除去した。
【0032】
(実施例2~3、比較例1)
フィルタの濾過孔径を、それぞれ、下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして鉄試験片の腐食速度を測定した。
実施例2:濾過孔径0.22μm(メルクミリポア社製、製品名:デュラポア(フィルターコード:GVWP)、材質:親水性PVDF
実施例3:濾過孔径0.1μm(メルクミリポア社製、製品名:デュラポア(フィルターコード:VVLP)、材質:親水性PVDF
比較例1:濾過孔径1.0μm(アドバンテック社製、製品名:No5C、材質:セルロース)
【0033】
(実施例4)
添加薬剤のうち、塩化鉄(III)の添加量を、添加後に鉄濃度が5mg/Lとなるように変更した以外は、実施例1と同様にして鉄試験片の腐食速度を測定した。
【0034】
(実施例5~6、比較例2)
フィルタの濾過孔径を、それぞれ、下記のように変更した以外は、実施例4と同様にして鉄試験片の腐食速度を測定した。
実施例5:上記濾過孔径0.22μm
実施例6:上記濾過孔径0.1μm
比較例2:上記濾過孔径1.0μm
【0035】
実施例1~6、比較例1~2の腐食速度測定結果を下記表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、孔径が0.01~0.50μmであるフィルタを透過した冷却水の全リン酸濃度を測定した結果に基づいて、新たに添加する防食剤を調整することにより、腐食速度に顕著な低下が認められた。このように、本発明によれば、従来技術に比べて防食効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、循環冷却水系、開放冷温水系、密閉冷温水系等の水系システムにおいて、鉄等の金属部材表面の腐食を抑制するために利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1:蓄熱水槽
2:熱交換器
3:冷凍機
4:冷却ライン
5:濾過装置
6:循環ポンプ
7:分岐ライン
8:濾過部材
A:採取ポイント
9: ビーカー
10:支持棒
11:鉄試験片
12:実機冷却水
13:恒温槽
図1
図2