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特許7188253変倍光学系、光学機器および変倍光学系の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】変倍光学系、光学機器および変倍光学系の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/16 20060101AFI20221206BHJP
   G02B 15/20 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G02B15/16
G02B15/20
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019077490
(22)【出願日】2019-04-16
(65)【公開番号】P2020177057
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】武 俊典
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072581(JP,A)
【文献】特開2016-075828(JP,A)
【文献】特開2019-020451(JP,A)
【文献】特開2010-191334(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081251(WO,A1)
【文献】特開2016-161878(JP,A)
【文献】特開2020-106777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群、
負の屈折力を有する第2レンズ群、
正の屈折力を有する第3レンズ群、
正の屈折力を有する第4レンズ群、および、
前記第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有し、
変倍に際し、前記第1レンズ群は像面に対して固定されており、
隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、
前記第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、
前記第2レンズ群の最も物体側に、正の屈折力を有するレンズ成分が位置し、
以下の条件式を満足する変倍光学系。
0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
前記レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう
【請求項2】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群、
負の屈折力を有する第2レンズ群、
正の屈折力を有する第3レンズ群、
正の屈折力を有する第4レンズ群、および、
前記第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有し、
変倍に際し、前記第1レンズ群は像面に対して固定されており、
隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、
前記第2レンズ群に以下の条件式Aのすべてを満足する正レンズである第2レンズを有し、
前記第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、
以下の条件式Bを満足する変倍光学系。
(条件式A)
18.00 < νdP2 < 35.00
1.83 < ndP2+(0.01425×νdP2) < 2.15
0.702 < θgFP2+(0.00316×νdP2)
但し、
ndP2:前記第2レンズに使われている硝材のd線に対する屈折率
νdP2:前記第2レンズに使われている硝材のアッベ数
θgFP2:前記第2レンズに使われている硝材の部分分散比
このとき、アッベ数νdならびに部分分散比θgFは、C線に対する屈折率をnC、d線に対する屈折率をnd、F線に対する屈折率をnF、g線に対する屈折率をngとしたとき、それぞれ次式で定義される値である:
νd = (nd-1) / (nF-nC)
θgF = (ng-nF) / (nF-nC)
(条件式B)
0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【請求項3】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群、
負の屈折力を有する第2レンズ群、
正の屈折力を有する第3レンズ群、
正の屈折力を有する第4レンズ群、および、
前記第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有し、
変倍に際し、前記第1レンズ群および前記第3レンズ群は像面に対して固定されており、
隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、
前記第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、
以下の条件式を満足する変倍光学系。
0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【請求項4】
以下の条件式を満足する請求項1から3の何れか一項に記載の変倍光学系。
1.50 < f1/f3 < 3.00
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
f3:前記第3レンズ群の焦点距離
【請求項5】
合焦に際し、少なくとも前記第4レンズ群が移動する請求項1から4の何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項6】
以下の条件式を満足する請求項1からの何れか一項に記載の変倍光学系。
2.50 < f1/(-f2) < 4.50
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【請求項7】
前記第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズ成分と以降のレンズ成分の間隔が以下の条件式を満たす請求項1からの何れか一項に記載の変倍光学系。
0.50 < Da21/Dp21 < 2.50
但し、
Dp21:前記第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズ成分である第1レンズ成分の光軸上における厚み
Da21:前記第1レンズ成分とその次に像側に位置するレンズ成分との光軸上の空気間隔
前記レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう
【請求項8】
前記第2レンズ群中に、少なくとも正の屈折力を有するレンズを2枚以上有する請求項1からの何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項9】
前記第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズである第1レンズが以下の条件式を満足する請求項1からの何れか一項に記載の変倍光学系。
-0.015 < θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1 < -0.000
但し、
νdP1:前記第1レンズに使われている硝材のアッベ数
θgFP1:前記第1レンズに使われている硝材の部分分散比
このとき、アッベ数νdならびに部分分散比θgFは、C線に対する屈折率をnC、d線に対する屈折率をnd、F線に対する屈折率をnF、g線に対する屈折率をngとしたとき、それぞれ次式で定義される値である:
νd = (nd-1) / (nF-nC)
θgF = (ng-nF) / (nF-nC)
【請求項10】
前記第4レンズ群より像側のレンズ群は、広角端状態において全体として負の屈折力を有する請求項1からの何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項11】
前記第1レンズ群の焦点距離および前記第4レンズ群より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離が以下の条件式を満足する請求項1から10の何れか一項に記載の変倍光学系。
-3.00 < f1/(-fRw) < 3.00
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fRw:前記第4レンズ群より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離
【請求項12】
変倍に際し、前記第4レンズ群に対して像側に隣接する第5レンズ群と絞りが像面に対して固定である請求項1から11の何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項13】
前記第2レンズ群は、少なくとも5枚以上のレンズを有する請求項1から12の何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項14】
前記開口絞りは、前記第4レンズ群に対して像側に隣接する第5レンズ群の内部に位置する請求項1から13の何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項15】
以下の条件式を満足する請求項1から14の何れか一項に記載の変倍光学系。
0.05<β4w<0.70
但し、
β4w:広角端状態における前記第4レンズ群の横倍率
【請求項16】
以下の条件式を満足する請求項1から15の何れか一項に記載の変倍光学系。
0.60<β4t/β4w<1.30
但し、
β4w:広角端状態における前記第4レンズ群の横倍率
β4t:望遠端状態における前記第4レンズ群の横倍率
【請求項17】
前記第1レンズ群、前記第2レンズ群、前記第3レンズ群、前記第4レンズ群、および前記第4レンズ群より像側のレンズ群に含まれるすべてのレンズ面が球面または平面である請求項1から16の何れか一項に記載の変倍光学系。
【請求項18】
請求項1から17の何れか一項に記載の光学系を搭載する光学機器。
【請求項19】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群、
負の屈折力を有する第2レンズ群、
正の屈折力を有する第3レンズ群、
正の屈折力を有する第4レンズ群、および、
前記第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有する変倍光学系の製造方法であって、
以下の条件式を満足するように構成し、
変倍に際し、前記第1レンズ群は像面に対して固定であり、
隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、
前記第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、
前記第2レンズ群の最も物体側に、正の屈折力を有するレンズ成分を配置するよう構成する変倍光学系の製造方法。
0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
前記レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変倍光学系、光学機器および変倍光学系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、写真用カメラ、電子スチルカメラ、ビデオカメラ等に適した変倍光学系が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-224180号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有し、変倍に際し、第1レンズ群は像面に対して固定されており、隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、以下の条件式を満足する。
(1)0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【0005】
本開示の変倍光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有する変倍光学系の製造方法であって、以下の条件式(1)を満足するように構成し、変倍に際し、第1レンズ群は像面に対して固定であり、隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、第4レンズ群より像側に開口絞りを有するよう構成する。
(1)0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図2図2(a)は第1実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図2(b)は第1実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図2(c)は第1実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図3図3は、第2実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図4図4(a)は第2実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図4(b)は第2実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図4(c)は第2実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図5図5は、第3実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図6図6(a)は第3実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図6(b)は第3実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図6(c)は第3実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図7図7は、第4実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図8図8(a)は第4実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図8(b)は第4実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図8(c)は第4実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図9図9は、第5実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図10図10(a)は第5実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図10(b)は第5実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図10(c)は第5実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図11図11は、第6実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
図12図12(a)は第6実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図12(b)は第6実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図12(c)は第6実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
図13】本実施形態の変倍光学系を備えたカメラの模式図である。
図14】本実施形態の変倍光学系の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本願の実施形態の変倍光学系、光学機器および変倍光学系の製造方法について説明する。
【0008】
本実施形態の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有する。本実施形態の変倍光学系は、変倍に際し、第1レンズ群は像面に対して固定されており、隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、第4レンズ群より像側に開口絞りを有し、以下の条件式を満足する。
(1)0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【0009】
本実施形態の変倍光学系は、このような構成のもと、変倍時の収差変動を有効に抑制することができる。
【0010】
本実施形態の変倍光学系は、式(1)において、第2レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の移動距離との比を下限値より大きくすることにより、第2レンズ群の負のパワーを減少させることができ、収差補正のバランスがとりやすくなる。また、条件式(1)の下限値を0.75に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(1)の下限値を0.80、0.85、0.90、0.93、0.95、0.98、1.00、1.03、1.05、1.08、さらに1.10にすることが好ましい。
【0011】
本実施形態の変倍光学系は、式(1)において、第2レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の移動距離との比を上限値より小さくすることにより、第2レンズ群の移動距離が相対的に大きくすることができ、収差補正のバランスがとりやすくなる。また、条件式(1)の上限値を1.45に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(1)の上限値を1.40、1.35、1.30、1.28、1.25、1.23、1.20、1.18、さらに1.15にすることが好ましい。
【0012】
本実施形態の変倍光学系は、開口絞りの位置を第4レンズ群より像側としている。本実施形態の変倍光学系は、この構成により、球面収差をはじめとする諸収差を良好に補正することができる。また、第4レンズ群より像側は光束の径が比較的小さいため、本実施形態の変倍光学系は、絞りの開閉時間を短くすることができ、その結果、連写速度を大きくすることができる。
【0013】
本実施形態の変倍光学系は、第1レンズ群を固定とすることにより変倍または合焦時に光学系全体の長さが一定となるため、変倍または合焦時の収差変動を少なくすることができ好ましい。本実施形態の変倍光学系ではユーザビリティが向上する。
【0014】
以上の構成により、諸収差を良好に補正することができる良好な光学性能を有する光学系を実現することができる。
【0015】
本実施形態の変倍光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(2)1.50 < f1/f3 < 3.00
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
f3:前記第3レンズ群の焦点距離
【0016】
本実施形態の変倍光学系は、式(2)において、第1レンズ群の焦点距離と第3レンズ群の移動距離との比を上限値より小さくすることにより、第3レンズ群の残存収差成分の抑制が容易となるので、変倍時の全域における収差の補正がより容易となる。また、条件式(2)の上限値を2.90に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(2)の上限値を2.70、2.60、2.55、2.50、2.45、2.40、2.38、2.35、さらに2.33にすることが好ましい。
【0017】
本実施形態の変倍光学系は、式(2)において、第1レンズ群の焦点距離と第3レンズ群の移動距離との比を下限値より大きくすることにより、第3レンズ群の残存収差成分の抑制が容易となるので、望遠側の収差の補正がより容易となる。また、条件式(2)の下限値を1.60に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(2)の下限値を1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.93、1.95、1.98、さらに2.00にすることが好ましい。
【0018】
本実施形態の変倍光学系は、合焦に際し、少なくとも第4レンズ群が移動することが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、合焦時の球面収差をはじめとする諸収差の変動を少なくすることができ好ましい。また、本実施形態の変倍光学系は、比較的軽量な第4レンズ群の移動により合焦することで、合焦速度を大きくすることができる。
【0019】
本実施形態の変倍光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(3)2.50 < f1/(-f2) < 4.50
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【0020】
本実施形態の変倍光学系は、式(3)において、第1レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離との比を下限値より大きくすることにより、望遠側の収差の補正がより容易となる。また、条件式(3)の下限値を2.70に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(3)の下限値を2.80、2.90、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.28、3.30、さらに3.32にすることが好ましい。
【0021】
本実施形態の変倍光学系は、式(3)において、第1レンズ群の焦点距離と第2レンズ群の焦点距離との比を上限値より小さくすることにより、変倍時の収差変動の抑制がより容易となる。また、条件式(3)の上限値を4.40に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(3)の上限値を4.30、4.20、4.10、4.00、3.90、3.80、3.75、3.70、さらに3.68にすることが好ましい。
【0022】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群の最も物体側に、正の屈折率を有するレンズ成分が位置することが好ましい。レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、変倍域全体での色収差の補正がより容易となる。
【0023】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズ成分と以降のレンズ成分との間隔が以下の条件式を満たすことが好ましい。
(4)0.50 < Da21/Dp21 < 2.50
但し、
Dp21:前記第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズ成分である第1レンズ成分の光軸上における厚み
Da21:前記第1レンズ成分とその次に像側に位置するレンズ成分との光軸上の空気間隔
前記レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう
【0024】
本実施形態の変倍光学系は、式(4)において第1レンズ成分の光軸上における厚みと次に像側に位置するレンズ成分との光軸上の空気間隔との比を下限値より大きくすることにより、変倍域全体での色収差の補正がより容易となる。また、条件式(4)の下限値を0.60に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)の下限値を0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、0.98、さらに1.00にすることが好ましい。
【0025】
本実施形態の変倍光学系は、式(4)において第1レンズ成分の光軸上における厚みと次に像側に位置するレンズ成分との光軸上の空気間隔との比を上限値より小さくすることにより、高倍率を実現するとともに、広角側の周辺色収差または望遠側の軸上色収差の補正がより容易となる。また、条件式(4)の上限値を2.40に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(4)の上限値を2.30、2.20、2.10、2.05、2.00、1.95、1.90、1.85、さらに1.83にすることが好ましい。
【0026】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群中に、少なくとも正の屈折力を有するレンズを2枚以上有することが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、変倍域全域での色収差補正と他の収差補正とのバランスをより容易にとることができる。
【0027】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズである第1レンズが以下の条件式を満足することが好ましい。
(5)-0.015 < θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1 < -0.000
但し、
νdP1:第1レンズに使われている硝材のアッベ数
θgFP1:第1レンズに使われている硝材の部分分散比
このとき、アッベ数νdならびに部分分散比θgFは、C線に対する屈折率をnC、d線に対する屈折率をnd、F線に対する屈折率をnF、g線に対する屈折率をngとしたとき、それぞれ次式で定義される値である:
νd = (nd-1) / (nF-nC)
θgF = (ng-nF) / (nF-nC)
【0028】
本実施形態の変倍光学系は、式(5)を満たすことにより、全体の色収差を良好にできる。また、本実施形態の変倍光学系は、第1レンズのアッベ数および部分分散比を上限値より小さくすることにより、広角側の倍率色収差、および、望遠側の軸上色収差をより容易に補正できる。また、条件式(5)の下限値を-0.012に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(5)の下限値を-0.010、-0.008、-0.007、-0.006、さらに-0.005にすることが好ましい。一方、条件式(5)の上限値を-0.001に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(5)の上限値を-0.002、さらに-0.003にすることが好ましい。
【0029】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群に以下の条件式のすべてを満足する正レンズである第2レンズを有することが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、変倍域全体での色収差の補正がより容易となる。
(6)18.00 < νdP2 < 35.00
(7)1.83 < ndP2+(0.01425×νdP2) < 2.15
(8)0.702 < θgFP2+(0.00316×νdP2)
但し、
ndP2:第2レンズに使われている硝材のd線に対する屈折率
νdP2:第2レンズに使われている硝材のアッベ数
θgFP2:第2レンズに使われている硝材の部分分散比
このとき、アッベ数νdならびに部分分散比θgFは、C線に対する屈折率をnC、d線に対する屈折率をnd、F線に対する屈折率をnF、g線に対する屈折率をngとしたとき、それぞれ次式で定義される値である:
νd = (nd-1) / (nF-nC)
θgF = (ng-nF) / (nF-nC)
【0030】
条件式(6)は、第2レンズの材料のアッベ数の適切な範囲を規定するものである。条件式(6)を満足することで、球面収差、コマ収差などの基準収差の補正と、1次の色収差の補正を良好に行うことができる。条件式(6)の上限値を33.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(6)の上限値を31.50、30.00、28.50、さらに27.00にすることが好ましい。一方、条件式(6)の下限値を20.00に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(6)の下限値を21.00、22.00、23.00、24.00、さらに24.40にすることが好ましい。
【0031】
条件式(7)は、第2レンズの材料の屈折率とアッベ数の適切な関係を規定するものである。条件式(7)を満足することで、球面収差、コマ収差等の基準収差の補正と、1次の色収差の補正を良好に行うことができる。条件式(7)の上限値を2.15に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(7)の上限値を2.13、さらに2.12にすることが好ましい。一方、条件式(7)の下限値を1.85に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(7)の下限値を1.88、1.90、1.92、1.95、1.97、1.99、2.00、さらに2.02にすることが好ましい。
【0032】
条件式(8)は、第2レンズの材料の異常分散性を適切に規定するものである。条件式(8)を満足することで、色収差の補正において、1次の色収差補正に加えて、2次スペクトルを良好に補正することができる。条件式(8)の下限値を0.704に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(8)の下限値を0.707、0.710、0.712、さらに0715にすることが好ましい。
【0033】
本実施形態の変倍光学系は、変倍に際し、第3レンズ群が固定であることが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、変倍時の収差変動の抑制がより容易となる。
【0034】
本実施形態の変倍光学系は、第4レンズ群より像側のレンズ群は、広角端状態において全体として負の屈折力を有することが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、望遠側の収差補正を容易にしつつ、変倍域全体での像面湾曲等をより容易に補正することができる。
【0035】
本実施形態の変倍光学系は、第1レンズ群の焦点距離および第4レンズ群より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離が以下の条件式を満足することが好ましい。
(9)-3.00 < f1/(-fRw) < 3.00
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
fRw:前記第4レンズ群より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離
【0036】
本実施形態の変倍光学系は、式(9)において、第1レンズ群の焦点距離と第4レンズ群より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離との比を規定するものである。条件式(9)を満足することで、変倍域全体での像面湾曲および歪曲の補正がより容易となる。また、条件式(9)の上限値を2.90に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(9)の上限値を2.80、2.70、2.60、2.50、2.40、2.30、2.20、2.10、さらに2.05にすることが好ましい。一方、条件式(9)の下限値を-2.50に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(9)の下限値を-2.00、-1.50、-1.00、-0.50、0.50、0.80、1.00、1.20、さらに1.50にすることが好ましい。
【0037】
本実施形態の変倍光学系は、第2レンズ群が、少なくとも5枚以上のレンズを有することが好ましい。本実施形態の変倍光学系では、このような構成を有することにより、収差の補正をより容易に行うことができる。
【0038】
本実施形態の変倍光学系は、開口絞りが、第4レンズ群に対して像側に隣接する第5レンズ群の内部に位置することが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、製品ごとの光学性能のばらつきを抑制することができる。
【0039】
本実施形態の変倍光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
(10)0.05<β4w<0.70
但し、
β4w:広角端状態における前記第4レンズ群の横倍率
【0040】
本実施形態の変倍光学系は、条件式(10)を満足することにより、合焦時の収差変動を抑制することができる。また、条件式(10)の上限値を0.65に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(10)の上限値を0.60、0.55、0.50、0.45、0.40、0.35、0.33、0.30、さらに0.29にすることが好ましい。一方、条件式(10)の下限値を0.08に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(10)の下限値を0.10、0.12、0.14、0.15、0.17、0.18、さらに0.19にすることが好ましい。
【0041】
本実施形態の変倍光学系は、以下の条件を満足することが好ましい。
(11)0.60<β4t/β4w<1.30
但し、
β4w:広角端状態における前記第4レンズ群の横倍率
β4t:望遠端状態における前記第4レンズ群の横倍率
【0042】
本実施形態の変倍光学系は、条件式(11)を満足することにより、変倍時の収差変動の抑制がより容易となる。また、条件式(11)の上限値を1.25に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(11)の上限値を1.20、1.18、1.15、1.13、1.10、1.08、1.05、1.03にすることが好ましい。一方、条件式(11)の下限値を0.63に設定することで、本実施形態の効果をより確実なものとすることができる。また、本実施形態の効果をより確実にするために、条件式(11)の下限値を0.65、0.68、0.70、0.73、0.75、0.58、0.80、さらに0.83にすることが好ましい。
【0043】
本実施形態の変倍光学系は、第1レンズ群、第2レンズ群、第3レンズ群、第4レンズ群、および第4レンズ群より像側のレンズ群に含まれるすべてのレンズ面が球面または平面であることが好ましい。本実施形態の変倍光学系は、このような構成を有することにより、レンズ加工および組立調整が容易になり、レンズ加工および組立調整の誤差により光学性能の劣化を防ぐことができる。
【0044】
本実施形態の光学機器は、上述した構成の変倍光学系を有している。これにより、変倍時の収差変動を有効に抑制することができる光学機器を実現することができる。
【0045】
本実施形態の変倍光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有する変倍光学系の製造方法であって、以下の条件式(1)を満足するように構成し、変倍に際し、第1レンズ群は像面に対して固定であり、隣り合う各レンズ群の間隔が変化し、第4レンズ群より像側に開口絞りを有するよう構成する。
(1)0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの前記第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【0046】
このような変倍光学系の製造方法により、変倍時の収差変動を有効に抑制することができる変倍光学系を製造することができる。
【0047】
(数値実施例)
以下、本願の実施例を図面に基づいて説明する。
【0048】
(第1実施例)
図1は、第1実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
【0049】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5を有している。
【0050】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた平凸レンズL13とからなる。
【0051】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、両凸形状の正レンズL22と両凹形状の負レンズL23との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL24と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL26とからなる。
【0052】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、両凸形状の正レンズL34とからなる。
【0053】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、像側に凸面を向けた平凸レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0054】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL51と、開口絞りSと、両凸形状の正レンズL52と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL53と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL54と両凹形状の負レンズL55との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL56と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL57と両凸形状の正レンズL58との接合正レンズと、両凹形状の負レンズL59とからなる。
【0055】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0056】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5は、像面Iに対して固定されている。
【0057】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0058】
本実施例の変倍光学系は、第5レンズ群G5の一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸と直交する方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第5レンズ群G5以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0059】
以下の表1に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。表1において、Fは焦点距離、F.NOはFナンバー、2ωは画角(単位は「°」)、T.L.は変倍光学系の全長、BFはバックフォーカス、すなわち最も像側のレンズ面と像面Iとの光軸上の距離、Yは像高を示す。
【0060】
[レンズ諸元]において、mは物体側から数えた光学面の順番、Rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線(波長587.6nm)に対する屈折率、νdはd線に対するアッベ数、θgFは部分分散比を示す。ここで、νdならびにθgFは、C線(波長656.3nm)に対する屈折率をnC、F線(波長486.1nm)に対する屈折率をnF、g線(波長435.8nm)に対する屈折率をngとしたとき、それぞれ次式で定義される。
νd = (nd-1) / (nF-nC)
θgF = (ng-nF) / (nF-nC)
また、[レンズ諸元]において、曲率半径R=∞は平面を示している。
【0061】
[条件式対応値]において、f2は第2レンズ群G2の焦点距離であり、Δx2は像側への移動を正としたときの第2レンズ群G2の広角端状態から望遠端状態における移動距離である。また、f1は第1レンズ群G1の焦点距離であり、f3は第3レンズ群G3の焦点距離である。また、Dp21は第2レンズ群G2の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズ成分である第1レンズ成分の光軸上における厚みであり、Da21は第1レンズ成分とその次に像側に位置するレンズ成分との光軸上の空気間隔である。また、νdP1は第2レンズ群の最も物体側に位置する正の屈折力を有するレンズである第1レンズに使われている硝材のアッベ数(νd)であり、θgFP1は第1レンズに使われている硝材の部分分散比(θgF)である。また、ndP2は第2レンズ群G2に含まれる正レンズである第2レンズに使われている硝材のd線に対する屈折率(nd)であり、νdP2は第2レンズに使われている硝材のアッベ数(νd)であり、θgFP2は第2レンズに使われている硝材の部分分散比(θgF)である。また、fRwは第4レンズ群G4より像側に位置するレンズ群全体の広角端状態における焦点距離であり、β4wは広角端状態における第4レンズ群G4の横倍率であり、β4tは望遠端状態における第4レンズ群G4の横倍率である。なお、レンズ成分とは、単レンズまたは接合レンズのことをいう。
【0062】
ここで、表1に記載される焦点距離F、曲率半径Rおよびその他の長さの単位は「mm」である。しかし、光学系は比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
【0063】
なお、以上に述べた表1の符号は、後述する他の実施例の表においても同様に使用する。
【0064】
本実施例では、正メニスカスレンズL21が第1レンズに該当し、正メニスカスレンズL25が第2レンズに該当する。
【0065】
(表1)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.600 200.000 291.000
F.NO 2.91 2.91 2.91
2ω 19.57 12.08 8.29
T.L. 341.224 341.224 341.223
BF 54.819 54.819 54.819
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 321.66940 5.200 1.902650 35.77
2 151.60700 13.400 1.497820 82.57
3 -748.49330 0.100 1.000000
4 135.41060 13.200 1.433843 95.27
5 ∞ D1 1.000000
6 124.35940 7.600 1.720467 34.71 0.583
7 1981.86680 12.972 1.000000
8 275.61570 4.700 1.717360 29.53
9 -275.46000 2.850 1.696800 55.52
10 109.09020 3.124 1.000000
11 -1986.35680 2.650 1.804000 46.60
12 57.14000 3.700 1.755750 24.71 0.629
13 86.06040 6.757 1.000000
14 -84.28650 2.500 1.870705 40.73
15 -651.88180 D2 1.000000
16 605.01830 4.700 1.755000 52.34
17 -156.13670 0.100 1.000000
18 88.37420 6.800 1.433843 95.27
19 -277.56450 1.626 1.000000
20 -115.63160 4.700 1.654130 39.72
21 88.64080 1.061 1.000000
22 123.70960 5.300 1.910820 35.25
23 -404.22320 D3 1.000000
24 ∞ 4.000 1.804000 46.60
25 -118.33570 0.100 1.000000
26 63.02260 6.800 1.593490 67.00
27 -199.13800 1.800 1.846660 23.82
28 199.01100 D4 1.000000
29 -145.61410 1.900 2.001000 29.12
30 91.09030 5.002 1.000000
31 ∞ 8.000 1.000000 絞り
32 375.14680 5.000 1.729160 54.61
33 -83.79560 3.919 1.000000
34 368.09220 2.000 1.870705 40.73
35 93.47140 2.746 1.000000
36 -148.92880 3.600 1.805180 25.41
37 -54.33700 1.900 1.516800 64.14
38 107.77010 5.617 1.000000
39 ∞ 8.829 1.000000
40 79.60900 4.400 2.001000 29.12
41 -1873.43360 0.782 1.000000
42 64.03540 3.000 1.804000 46.60
43 33.60900 10.000 1.487490 70.31
44 -77.35390 6.728 1.000000
45 -70.85350 2.000 1.900430 37.38
46 224.49500 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 5.114 39.909 66.471
D2 62.916 28.122 1.560
D3 21.244 17.600 18.669
D4 5.968 9.611 8.542

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 250.635
2 6 -69.674
3 16 108.979
4 24 89.868
5 29 -145.810

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.14
(2) f1/f3 = 2.30
(3) f1/(-f2) = 3.60
(4) Da21/Dp21= 1.71
(5) θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1=-0.004
(6) νdP2 =24.71
(7) ndP2+(0.01425×νdP2) =2.11
(8) θgFP2+(0.00316×νdP2)=0.71
(9) f1/(-fRw)= 1.72
(10) β4w = 0.26
(11) β4t/β4w = 0.89
【0066】
図2(a)は第1実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図2(b)は第1実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図2(c)は第1実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0067】
各収差図において、FNOはFナンバー、Yは像高をそれぞれ示す。詳細には、球面収差図では最大口径に対応するFナンバーの値を示し、非点収差図および歪曲収差図では像高の最大値を示し、コマ収差図では各像高の値を示す。dはd線、gはg線をそれぞれ示す。非点収差図において、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示す。後述する他の実施例の諸収差図においても、本実施例の諸収差図と同様の符号を使用する。
【0068】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0069】
(第2実施例)
図5は、第2実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
【0070】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5を有している。
【0071】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL13とからなる。
【0072】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、両凸形状の正レンズL22と両凹形状の負レンズL23との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL24と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL26とからなる。
【0073】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL34とからなる。
【0074】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0075】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL51と、開口絞りSと、両凹形状の負レンズL52と両凸形状の正レンズL53との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL54と両凹形状の負レンズL55との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL56と、両凸形状の正レンズL57と、両凸形状の正レンズL58と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL59との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL510と、両凹形状の負レンズL511とからなる。
【0076】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0077】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5は、像面Iに対して固定されている。
【0078】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0079】
本実施例の変倍光学系は、第5レンズ群G5の一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸と直交する方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第5レンズ群G5以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0080】
本実施例では、正メニスカスレンズL21が第1レンズに該当し、正メニスカスレンズL25が第2レンズに該当する。
【0081】
以下の表2に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0082】
(表2)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.600 200.000 291.000
F.NO 2.91 2.91 2.91
2ω 19.59 12.08 8.29
T.L. 342.319 342.319 342.319
BF 54.819 54.819 54.819
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 305.70850 4.500 1.902650 35.77
2 148.27732 13.400 1.497820 82.57
3 -804.51207 0.100 1.000000
4 135.34256 12.200 1.433848 95.23
5 -7108.11410 D1 1.000000
6 133.36700 7.100 1.720467 34.71 0.583
7 1705.96720 12.866 1.000000
8 372.24596 4.553 1.755200 27.57
9 -232.89074 2.500 1.651600 58.57
10 105.24684 3.710 1.000000
11 -489.43157 2.500 1.870705 40.73
12 56.38071 4.783 1.749714 24.66 0.627
13 113.72234 5.653 1.000000
14 -90.97294 2.500 1.870705 40.73
15 -442.80561 D2 1.000000
16 225.30614 5.000 1.729160 54.61
17 -166.98906 0.100 1.000000
18 96.48460 7.500 1.433848 95.23
19 -179.59003 1.008 1.000000
20 -116.94301 3.000 1.647690 33.72
21 87.64642 1.294 1.000000
22 134.28076 5.500 2.001003 29.13
23 3791.16980 D3 1.000000
24 1492.74590 4.200 1.804000 46.60
25 -119.96401 0.100 1.000000
26 61.73669 6.900 1.593493 67.00
27 -226.87444 2.200 1.854779 24.80
28 173.88577 D4 1.000000
29 -103.97897 1.800 1.910822 35.25
30 91.72480 4.895 1.000000
31 ∞ 7.753 1.000000 絞り
32 -6000.75320 1.800 1.903660 31.27
33 105.52585 5.800 1.749500 35.25
34 -64.83775 4.000 1.000000
35 166.45825 4.500 1.850000 27.03
36 -124.25639 1.800 1.517420 52.20
37 46.20206 4.486 1.000000
38 -121.67391 1.800 1.834000 37.18
39 -16783.25800 4.000 1.000000
40 ∞ 7.007 1.000000
41 84.14382 7.000 1.700000 48.10
42 -65.74451 0.100 1.000000
43 971.48692 7.245 1.603420 38.03
44 -51.92908 2.000 1.900433 37.37
45 -922.69980 0.100 1.000000
46 74.76608 6.396 1.729160 54.61
47 133.02260 2.652 1.000000
48 -93.65985 2.000 1.870705 40.73
49 237.45972 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 7.000 41.385 67.760
D2 62.760 28.374 2.000
D3 20.958 17.381 18.700
D4 6.482 10.059 8.739

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 244.561
2 6 -68.997
3 16 111.088
4 24 88.456
5 29 -146.620

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.14
(2) f1/f3 = 2.20
(3) f1/(-f2) = 3.54
(4) Da21/Dp21= 1.81
(5) θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1=-0.004
(6) νdP2 =24.66
(7) ndP2+(0.01425×νdP2) =2.10
(8) θgFP2+(0.00316×νdP2)=0.71
(9) f1/(-fRw)= 1.67
(10) β4w = 0.24
(11) β4t/β4w = 0.89
【0083】
図4(a)は第2実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図4(b)は第2実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図4(c)は第2実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0084】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0085】
(第3実施例)
図5は、第3実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
【0086】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5を有している。
【0087】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL13とからなる。
【0088】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、両凸形状の正レンズL22と両凹形状の負レンズL23との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL24と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL26とからなる。
【0089】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、両凸形状の正レンズL34とからなる。
【0090】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0091】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL51と、開口絞りSと、両凸形状の正レンズL52と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL53と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL54と両凹形状の負レンズL55との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL56と、両凸形状の正レンズL57と両凹形状の負レンズL58との接合正レンズと、両凹形状の負レンズL59と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL510とからなる。
【0092】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0093】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5は、像面Iに対して固定されている。
【0094】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0095】
本実施例の変倍光学系は、第5レンズ群G5の一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸と直交する方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第5レンズ群G5以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0096】
本実施例では、正メニスカスレンズL21が第1レンズに該当し、正メニスカスレンズL25が第2レンズに該当する。
【0097】
以下の表3に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0098】
(表3)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.600 200.000 291.000
F.NO 2.91 2.91 2.91
2ω 19.60 12.08 8.29
T.L. 342.319 342.319 342.319
BF 54.819 54.819 54.819
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 302.77200 4.500 1.902650 35.77
2 151.06890 13.400 1.497820 82.57
3 -959.84270 0.100 1.000000
4 143.16270 13.200 1.433848 95.23
5 -3025.24950 D1 1.000000
6 128.81680 7.100 1.720467 34.71 0.583
7 3656.94160 10.844 1.000000
8 292.00270 4.919 1.717360 29.57
9 -221.46280 2.500 1.696800 55.52
10 107.23890 3.640 1.000000
11 -520.59530 2.500 1.870705 40.73
12 60.73180 4.526 1.749714 24.66 0.627
13 119.16390 5.399 1.000000
14 -97.72110 2.500 1.870705 40.73
15 -542.32470 D2 1.000000
16 223.98030 5.000 1.755000 52.33
17 -176.54290 0.100 1.000000
18 94.53500 6.800 1.433848 95.23
19 -600.57610 2.167 1.000000
20 -116.42870 3.000 1.654115 39.68
21 92.72900 0.987 1.000000
22 127.94710 4.500 1.903660 31.27
23 -609.03030 D3 1.000000
24 958.30960 4.200 1.804000 46.60
25 -127.34340 0.100 1.000000
26 66.46510 6.700 1.593493 67.00
27 -162.84250 2.000 1.846663 23.78
28 205.44410 D4 1.000000
29 -157.20240 1.800 2.001003 29.13
30 79.78420 5.151 1.000000
31 ∞ 9.376 1.000000 絞り
32 843.57770 5.000 1.804000 46.60
33 -84.06670 4.000 1.000000
34 288.71080 2.000 1.806099 33.27
35 95.09840 3.190 1.000000
36 -116.99270 4.300 1.850000 27.03
37 -52.44810 1.800 1.487490 70.32
38 86.48950 5.000 1.000000
39 ∞ 5.500 1.000000
40 62.82990 7.200 1.654115 39.68
41 -92.86850 2.862 1.000000
42 61.33920 5.700 1.497820 82.57
43 -672.99910 2.000 1.850000 27.03
44 282.24280 5.879 1.000000
45 -97.82820 2.000 1.900433 37.37
46 42.47710 0.433 1.000000
47 46.32540 4.200 1.795040 28.69
48 297.57420 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 7.000 43.978 72.729
D2 67.879 30.901 2.150
D3 18.700 16.048 18.700
D4 5.850 8.502 5.850

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 251.828
2 6 -74.466
3 16 110.738
4 24 92.308
5 29 -146.969

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.13
(2) f1/f3 = 2.27
(3) f1/(-f2) = 3.38
(4) Da21/Dp21= 1.53
(5) θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1=-0.004
(6) νdP2 =24.66
(7) ndP2+(0.01425×νdP2) =2.10
(8) θgFP2+(0.00316×νdP2)=0.71
(9) f1/(-fRw)= 1.71
(10) β4w = 0.28
(11) β4t/β4w = 1.00
【0099】
図6(a)は第3実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図6(b)は第3実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図6(c)は第3実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0100】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0101】
(第4実施例)
図7は、第4実施例の変倍光学系の広角端状態および望遠端状態における断面図である。
【0102】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5を有している。
【0103】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とからなる。
【0104】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL22と、両凹形状の負レンズL23と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL25とからなる。
【0105】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、両凸形状の正レンズL34とからなる。
【0106】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0107】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、開口絞りSと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL51と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL52と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL53との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL54と両凹形状の負レンズL55との接合負レンズと、物体側に凹面を向けた平凹レンズL56と、両凸形状の正レンズL57と、両凸形状の正レンズL58と像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL59との接合正レンズと、両凸形状の正レンズL510と、両凹形状の負レンズL511とからなる。
【0108】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0109】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5は、像面Iに対して固定されている。
【0110】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0111】
本実施例の変倍光学系は、第5レンズ群G5の一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸と直交する方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第5レンズ群G5以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0112】
本実施例では、正メニスカスレンズL24が第2レンズに該当する。
【0113】
以下の表4に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0114】
(表4)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.600 200.000 291.000
F.NO 2.91 2.91 2.91
2ω 19.61 12.08 8.29
T.L. 338.316 338.316 338.316
BF 54.819 54.819 54.819
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 348.71610 4.500 1.850260 32.35
2 170.05400 13.400 1.497820 82.57
3 -755.90590 0.100 1.000000
4 155.47150 12.200 1.433848 95.23
5 19149.78900 D1 1.000000
6 93.28940 8.600 1.795040 28.69
7 831.89690 9.062 1.000000
8 202.64280 2.500 1.743200 49.26
9 80.24330 4.488 1.000000
10 -934.36020 2.500 1.864070 39.49
11 52.17670 5.500 1.659398 26.87 0.633
12 123.75500 5.469 1.000000
13 -92.40290 2.500 1.881003 40.14
14 -433.74880 D2 1.000000
15 240.39350 5.000 1.804000 46.60
16 -227.45800 0.100 1.000000
17 94.59170 7.500 1.433848 95.23
18 -256.83990 1.829 1.000000
19 -104.42840 3.000 1.620040 36.40
20 86.84160 1.276 1.000000
21 130.70040 5.500 1.886339 40.15
22 -1186.34760 D3 1.000000
23 495.28740 4.000 1.795000 45.31
24 -115.44490 0.200 1.000000
25 54.17880 7.300 1.487490 70.32
26 -275.91900 2.200 1.854779 24.80
27 187.43400 D4 1.000000
28 ∞ 3.800 1.000000 絞り
29 12538.01000 1.800 2.001000 29.12
30 75.76220 3.224 1.000000
31 -81.87080 2.000 1.846663 23.78
32 -72.65200 5.800 1.593190 67.90
33 -73.14180 4.000 1.000000
34 1720.37300 4.500 1.903660 31.27
35 -92.92650 1.800 1.517420 52.20
36 53.42910 3.622 1.000000
37 -133.88100 1.800 1.766840 46.78
38 ∞ 4.000 1.000000
39 ∞ 4.860 1.000000
40 201.91010 4.000 1.744000 44.80
41 -316.45680 0.100 1.000000
42 148.64770 7.400 1.667550 41.87
43 -54.69010 2.000 1.881003 40.14
44 -179.56290 0.100 1.000000
45 108.03460 9.000 1.647690 33.72
46 -73.57780 5.040 1.000000
47 -70.73100 2.000 1.900433 37.37
48 237.45970 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 7.146 46.306 76.646
D2 71.580 32.420 2.080
D3 19.659 17.178 19.183
D4 5.541 8.022 6.017

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 265.040
2 6 -78.766
3 15 126.666
4 23 82.318
5 28 -131.341

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.13
(2) f1/f3 = 2.09
(3) f1/(-f2) = 3.36
(4) Da21/Dp21= 1.05
(6) νdP2 =26.87
(7) ndP2+(0.01425×νdP2) =2.04
(8) θgFP2+(0.00316×νdP2)=0.72
(9) f1/(-fRw)= 2.02
(10) β4w = 0.20
(11) β4t/β4w = 0.97
【0115】
図8(a)は第4実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図8(b)は第4実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図8(c)は第4実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0116】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0117】
(第5実施例)
図9は、第5実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
【0118】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5を有している。
【0119】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と、両凸形状の正レンズL12と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とからなる。
【0120】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL21と両凹形状の負レンズL22との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL23と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL24との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL25と、両凹形状の負レンズL26とからなる。
【0121】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、両凸形状の正レンズL34とからなる。
【0122】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0123】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、開口絞りSと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL51と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズレンズL52との接合負レンズと、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL53と、両凹形状の負レンズL54と両凸形状の正レンズL55との接合負レンズと、両凸形状の正レンズL56と、両凸形状の正レンズL57と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL58と、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL59とからなる。
【0124】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0125】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2および第4レンズ群G4が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、および第5レンズ群G5は、像面Iに対して固定されている。
【0126】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0127】
本実施例の変倍光学系は、第5レンズ群G5の一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸と直交する方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第5レンズ群G5以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0128】
以下の表5に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0129】
(表5)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.001 200.100 293.996
F.NO 2.90 2.90 2.90
2ω 19.73 12.12 8.24
T.L. 342.318 342.316 342.313
BF 54.818 54.816 54.813
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 335.53310 3.000 1.834000 37.18
2 154.51120 0.400 1.000000
3 154.29310 13.408 1.433852 95.25
4 -520.83390 0.100 1.000000
5 135.36400 12.165 1.433852 95.25
6 3736.13210 D1 1.000000
7 128.29510 8.500 1.795040 28.69
8 -4223.17520 2.200 1.487490 70.31
9 984.97450 12.613 1.000000
10 500.00000 2.400 1.719990 50.27
11 49.36080 5.000 1.567320 42.58
12 99.14650 7.500 1.000000
13 -335.01310 2.500 1.729160 54.61
14 226.43530 5.000 1.000000
15 -100.11080 2.000 1.816000 46.59
16 1196.71850 D2 1.000000
17 168.73530 4.500 1.902650 35.73
18 -506.91230 0.200 1.000000
19 102.86130 5.400 1.487490 70.31
20 -507.75180 2.500 1.000000
21 -106.64850 5.400 1.723420 38.03
22 94.05710 0.909 1.000000
23 120.03180 6.000 1.677900 55.35
24 -176.78630 D3 1.000000
25 2377.31100 3.921 1.806100 40.97
26 -102.85300 0.200 1.000000
27 49.64850 7.300 1.497820 82.57
28 -223.63440 2.100 2.001000 29.12
29 201.12050 D4 1.000000
30 ∞ 3.700 1.000000 絞り
31 320.33010 2.000 1.950000 29.37
32 35.01770 5.000 1.757000 47.86
33 104.49890 2.984 1.000000
34 206.07800 2.800 1.903660 31.27
35 56.03080 3.678 1.000000
36 -112.22280 2.729 1.664460 35.87
37 42.39010 6.500 1.805180 25.45
38 -375.28100 10.000 1.000000
39 192.85190 5.500 1.664460 35.87
40 -194.03960 1.415 1.000000
41 158.67080 4.000 2.000690 25.46
42 -324.20510 6.000 1.000000
43 -176.56360 4.700 1.638540 55.34
44 -62.98620 5.495 1.000000
45 -55.01520 4.000 1.762000 40.11
46 -1000.00000 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 5.500 43.477 73.389
D2 70.889 32.912 3.000
D3 20.819 18.247 20.819
D4 4.576 7.147 4.576

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 261.034
2 7 -75.497
3 17 124.411
4 25 85.556
5 30 -157.283

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.11
(2) f1/f3 = 2.10
(3) f1/(-f2) = 3.46
(4) Da21/Dp21= 1.18
(9) f1/(-fRw)= 1.66
(10) β4w = 0.21
(11) β4t/β4w = 1.00
【0130】
図10(a)は第5実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図10(b)は第5実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図10(c)は第5実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0131】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0132】
(第6実施例)
図11は、第6実施例の変倍光学系の広角端状態(W)および望遠端状態(T)における断面図である。
【0133】
本実施例の変倍光学系は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、および、第4レンズ群G4より像側に位置する第5レンズ群G5、第6レンズ群G6、第7レンズ群G7を有している。
【0134】
第1レンズ群G1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL11と両凸形状の正レンズL12との接合正レンズと、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL13とからなる。
【0135】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL21と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL22と物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL23との接合負レンズと、両凹形状の負レンズL24と物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL25との接合負レンズと、像側に凸面を向けた負メニスカスレンズL26とからなる。
【0136】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL31と、両凸形状の正レンズL32と、両凹形状の負レンズL33と、両凸形状の正レンズL34とからなる。
【0137】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、像側に凸面を向けた平凸レンズL41と、両凸形状の正レンズL42と両凹形状の負レンズL43との接合正レンズとからなる。
【0138】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、両凹形状の負レンズL51と、開口絞りSと、像側に凹面を向けた平凹レンズL52と両凸形状の正レンズL53との接合負レンズとからなる。
【0139】
第6レンズ群G6は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL61と、像側に凸面を向けた正メニスカスレンズL62と両凹形状の負レンズL63との接合負レンズとからなる。
【0140】
第7レンズ群G7は、物体側から順に、両凸形状の正レンズL71と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL72と両凸形状の正レンズL73との接合正レンズと、両凹形状の負レンズL74とからなる。
【0141】
像面I上には、CCDやCMOS等から構成された撮像素子(不図示)が配置されている。
【0142】
以上の構成のもと、本実施例の変倍光学系では、広角端状態(W)から望遠端状態(T)への変倍の際、第1レンズ群G1と第2レンズ群G2との間隔、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3との間隔、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4との間隔、第4レンズ群G4と第5レンズ群G5との間隔、第5レンズ群G5と第6レンズ群G6との間隔、第6レンズ群G6と第7レンズ群G7との間隔がそれぞれ変化するように、第2レンズ群G2、第4レンズ群G4、および第6レンズ群G6が光軸に沿って移動する。詳細には、第2レンズ群G2は像側へ移動し、第4レンズ群G4および第6レンズ群G6は一旦物体側に移動した後、像側へ移動する。なお、変倍の際、第1レンズ群G1、第3レンズ群G3、第5レンズ群G5、および第7レンズ群は、像面Iに対して固定されている。
【0143】
本実施例の変倍光学系は、合焦レンズ群として第4レンズ群G4を光軸に沿って物体側へ移動させることにより、無限遠物体から近距離物体への合焦を行う。
【0144】
本実施例の変倍光学系は、第7レンズ群G7の一部を防振レンズ群として光軸と直交する方向の成分を含むように移動させることにより、像ブレ発生時の像面補正、すなわち防振を行う。なお、防振レンズ群は、第7レンズ群G7以外のレンズ群、例えば第3レンズ群に含まれるレンズ群であってもよい。
【0145】
本実施例では、正メニスカスレンズL21が第1レンズに該当し、正メニスカスレンズL25が第2レンズに該当する。
【0146】
以下の表6に、本実施例の変倍光学系の諸元の値を掲げる。
【0147】
(表6)
[全体諸元]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
F 123.600 200.000 291.000
F.NO 2.90 2.89 2.88
2ω 19.53 12.07 8.29
T.L. 341.515 341.515 341.515
BF 54.819 54.819 54.819
Y 21.63 21.63 21.63

[レンズ諸元]
m R d nd νd θgF
物面 ∞ ∞
1 305.80370 5.200 1.902650 35.77
2 151.95680 13.400 1.497820 82.57
3 -731.72780 0.100 1.000000
4 127.79990 13.200 1.433848 95.23
5 1393.36240 D1 1.000000
6 119.73000 8.000 1.720467 34.71 0.583
7 2382.92370 11.843 1.000000
8 157.24410 3.273 1.717360 29.57
9 318.98310 2.850 1.696800 55.52
10 90.66850 3.922 1.000000
11 -963.80580 2.650 1.870705 40.73
12 46.55020 5.472 1.749714 24.66 0.627
13 96.14190 6.392 1.000000
14 -78.01960 2.550 1.834810 42.73
15 -590.82490 D2 1.000000
16 210.56120 5.200 1.755000 52.33
17 -247.05590 0.100 1.000000
18 101.38660 6.800 1.433848 95.23
19 -343.49190 1.528 1.000000
20 -128.08020 4.433 1.654115 39.68
21 92.64210 1.373 1.000000
22 154.41990 4.800 1.910822 35.25
23 -286.77000 D3 1.000000
24 ∞ 4.200 1.804000 46.60
25 -119.33190 0.100 1.000000
26 63.55140 6.700 1.593493 67.00
27 -167.32780 2.000 1.846663 23.78
28 266.30340 D4 1.000000
29 -140.35770 2.000 1.985087 28.56
30 107.93410 4.688 1.000000
31 ∞ 6.600 1.000000 絞り
32 ∞ 2.200 1.813368 45.82
33 51.52800 6.200 1.740695 49.86
34 -82.95310 D5 1.000000
35 561.09980 2.200 1.806100 40.97
36 89.82510 3.052 1.000000
37 -120.77160 4.300 1.795040 28.69
38 -46.55430 1.800 1.516800 63.88
39 136.17300 7.000 1.000000
40 ∞ D6 1.000000
41 84.49860 5.200 2.001003 29.13
42 -473.11160 2.168 1.000000
43 62.21980 3.000 1.804000 46.60
44 33.62860 10.000 1.487490 70.32
45 -71.24290 6.640 1.000000
46 -66.41450 2.000 1.900433 37.37
47 230.59390 BF 1.000000

[変倍時可変間隔データ]
広角端状態 中間焦点距離状態 望遠端状態
D1 5.100 39.297 64.880
D2 61.280 27.083 1.500
D3 21.293 17.234 18.209
D4 5.786 9.845 8.870
D5 4.000 2.684 3.048
D6 4.103 5.419 5.055

[各群焦点距離データ]
群 始面焦点距離
1 1 247.269
2 6 -67.518
3 16 110.138
4 24 85.118
5 29 -152.801
6 35 -83.487
7 41 82.911

[条件式対応値]
(1) (-f2)/Δx2= 1.13
(2) f1/f3 = 2.25
(3) f1/(-f2) = 3.66
(4) Da21/Dp21= 1.48
(5) θgFP1-0.6558+0.001982×νdP1=-0.004
(6) νdP2 =24.66
(7) ndP2+(0.01425×νdP2) =2.10
(8) θgFP2+(0.00316×νdP2)=0.71
(9) f1/(-fRw)= 1.82
(10) β4w = 0.23
(11) β4t/β4w = 0.86
【0148】
図12(a)は第6実施例の変倍光学系の広角端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図12(b)は第6実施例の変倍光学系の中間焦点距離状態における無限遠物体合焦時の諸収差図であり、図12(c)は第6実施例の変倍光学系の望遠端状態における無限遠物体合焦時の諸収差図である。
【0149】
各収差図より、本実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有していることがわかる。
【0150】
上記各実施例によれば、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有する変倍光学系を実現することができる。
【0151】
上記各実施例は、本発明の一具体例を示しているものであり、本発明はこれらに限定されない。以下の内容は、本願の実施形態の変倍光学系の光学性能を損なわない範囲で適宜採用することが可能である。
【0152】
なお、本実施形態の変倍光学系は、変倍比が約2.4倍である。また、本実施形態の変倍光学系は、広角端状態における焦点距離が35mm換算で120mm程度である。さらに、本実施形態の変倍光学系は、Fナンバーがf/2.9程度である。
【0153】
本実施形態の変倍光学系の数値実施例として、5群構成のものと7群構成のものとを示したが、本実施形態はこれに限られず、その他の群構成(例えば6群または8群以上)の変倍光学系を構成することもできる。
【0154】
また、上記各実施例の変倍光学系は、第4レンズ群全体を合焦レンズ群としているが、いずれかのレンズ群の一部、いずれかのレンズ群全体、あるいは複数のレンズ群を合焦レンズ群として光軸方向へ移動させる構成としてもよい。また、かかる合焦レンズ群は、オートフォーカスに適用することも可能である。
【0155】
また、上記各実施例の変倍光学系は、第5レンズ群の一部を防振レンズ群としているが、いずれかのレンズ群全体またはその一部を防振レンズ群とし、その防振レンズ群を、光軸に対し垂直な方向の成分を含む所定の移動方向に沿って移動させ、または光軸を含む面内方向へ回転移動(揺動)させることにより、手ブレ等によって生じる像ブレを補正する構成とすることもできる。
【0156】
また、上記各実施例の変倍光学系において、開口絞りは第5レンズ群に配置されることが好ましく、開口絞りとして部材を設けずにレンズ枠でその役割を代用する構成としてもよい。
【0157】
また、上記各実施例の変倍光学系を構成するレンズのレンズ面は、球面または平面としてよく、あるいは非球面としてもよい。レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工および組立調整が容易となり、レンズ加工および組立調整の誤差による光学性能の劣化を防ぐことができるため、好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないため好ましい。レンズ面が非球面の場合、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に成形したガラスモールド非球面、またはガラス表面に設けた樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれでもよい。また、レンズ面は回折面としてもよく、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしてもよい。
【0158】
また、上記各実施例の変倍光学系を構成するレンズのレンズ面に、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施してもよい。これにより、フレアやゴーストを軽減し、コントラストの高い光学性能を達成することができる。
【0159】
次に、本実施形態の変倍光学系を備えたカメラを、図13に基づいて説明する。
図13は、本実施形態の変倍光学系を備えたカメラの模式図である。
【0160】
カメラ1は、撮影レンズ2として上記第1実施例に係る変倍光学系を備えたレンズ交換式カメラである。
【0161】
カメラ1において、不図示の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光され、クイックリターンミラー3を介して焦点板4に結像される。焦点板4に結像された光は、ペンタプリズム5内で複数回反射されて接眼レンズ6へ導かれる。これにより、アイポイントEPに眼を位置させた撮影者は、被写体像を正立像として観察することができる。
【0162】
また、撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、クイックリターンミラー3が光路外へ退避し、不図示の被写体からの光は撮像素子7へ到達する。これにより被写体からの光は、撮像素子7によって撮像され、被写体画像として不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者はカメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0163】
ここで、カメラ1に撮影レンズ2として搭載した上記第1実施例の変倍光学系は、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有する変倍光学系である。したがって、カメラ1は変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を実現することができる。なお、上記第2~第6実施例の変倍光学系を撮影レンズ2として搭載したカメラを構成しても、カメラ1と同様の効果を奏することができる。また、クイックリターンミラーを有しない構成のタイプのカメラに上記各実施例の変倍光学系を搭載した場合でも、カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0164】
最後に、本実施形態の変倍光学系の製造方法の概略を、図14に基づいて説明する。
図14は、本実施形態の変倍光学系の製造方法の概略を示すフローチャートである。
【0165】
図14に示す本実施形態の変倍光学系の製造方法は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を有する変倍光学系の製造方法であって、以下のステップS1、S2、およびS3を含む。
【0166】
ステップS1:物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群、および、第4レンズ群より像側に位置する少なくとも1つのレンズ群を準備し、以下の条件式(1)を満足するようにし、各レンズ群をレンズ鏡筒内に物体側から順に配置する。
(1)0.70 < (-f2)/Δx2 < 1.50
但し、
f2:第2レンズ群の焦点距離
Δx2:像側への移動を正としたときの第2レンズ群の広角端状態から望遠端状態における移動距離
【0167】
ステップS2:レンズ鏡筒内に公知の移動機構を設ける等することで、変倍に際し、第1レンズ群は像面に対して固定されており、隣り合う各レンズ群の間隔が変化するようにする。
【0168】
ステップS3:第4レンズ群より像側に開口絞りを設ける。
【0169】
かかる本実施形態の変倍光学系の製造方法によれば、変倍時の収差変動を有効に抑制し、高い光学性能を有する変倍光学系を製造することができる。
【0170】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0171】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
S 開口絞り
I 像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14