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特許7188260基地局の動作試験方法、無線通信システム及び基地局
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】基地局の動作試験方法、無線通信システム及び基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/06 20090101AFI20221206BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20221206BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20221206BHJP
   H04W 88/18 20090101ALI20221206BHJP
【FI】
H04W24/06
H04W84/12
H04W88/08
H04W88/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019081830
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020182016
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-178752(JP,A)
【文献】Part3 サイトサーベイを徹底解明,N+I NETWORK,日本,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2005年11月01日,第5巻, 第11号,第85-90ページ
【文献】中平俊朗,無線リソース最適化のための戦略管理アーキテクチャ(WiSMA)におけるマルチ無線インターフェス動的制御法,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年04月11日,第119巻、第8号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 -H04B 7/26
H04W 4/00 -H04W 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末局がそれぞれ接続可能な複数の無線通信部をそれぞれ備える複数の基地局の動作試験方法であって、
前記基地局に備えられて、基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとを切替え可能にされた前記無線通信部の少なくともいずれかが、複数の前記基地局のうちの他の前記基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集工程と、
前記基地局それぞれの性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報に基づいて、前記基地局それぞれに対する試験実施情報を算出する算出工程と、
前記試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、他の前記基地局の前記無線通信部を前記子機モードに切替えて、互いに無線通信をさせることにより、前記基地局の動作試験を実施する試験実施工程と
を含むことを特徴とする基地局の動作試験方法。
【請求項2】
前記無線通信部それぞれは、
複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であること
を特徴とする請求項1に記載の基地局の動作試験方法。
【請求項3】
前記試験実施情報は、
前記環境情報によって示される同一周波数で互いに送信信号を検出し合う干渉関係である前記基地局の組み合わせに対して同時にトラヒックを加えた試験の実施を示す情報であること
を特徴とする請求項2に記載の基地局の動作試験方法。
【請求項4】
端末局と無線通信を行う複数の基地局と、前記基地局それぞれを制御する制御局とを備えた無線通信システムであって、
前記基地局それぞれは、
基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとが切替え可能な複数の無線通信部と、
前記無線通信部が他の前記基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集部と、
試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、前記子機モードに切替えられた他の前記基地局の前記無線通信部との間で無線通信をさせることにより、当該基地局の動作試験を実施する試験実施部と
を有し、
前記制御局は、
前記基地局それぞれの性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報に基づいて、前記基地局それぞれに対する前記試験実施情報を算出する算出部と、
前記算出部が算出した前記試験実施情報を前記基地局それぞれに対して送信する通信部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項5】
前記無線通信部それぞれは、
複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であること
を特徴とする請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記試験実施情報は、
前記環境情報によって示される同一周波数で互いに送信信号を検出し合う干渉関係である前記基地局の組み合わせに対して同時にトラヒックを加えた試験の実施を示す情報であること
を特徴とする請求項5に記載の無線通信システム。
【請求項7】
端末局がそれぞれ接続可能な複数の無線通信部を備える基地局であって、
前記無線通信部は、
基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとを切替え可能にされており、
前記無線通信部が他の前記無線通信部を備える他の基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集部と、
基地局の性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報を用いて算出された試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、前記子機モードに切替えられた他の基地局の無線通信部と無線通信を行うことにより、当該基地局の動作試験を実施する試験実施部と
さらに有することを特徴とする基地局。
【請求項8】
前記無線通信部それぞれは、
複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であること
を特徴とする請求項7に記載の基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局の動作試験方法、無線通信システム及び基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
免許不要帯の電波を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11無線LAN規格があり、11a、11b、11g、11n、11acなど様々な規格が規定されており、それぞれ用いる無線周波数帯、無線伝送技術、及び無線伝送速度が異なる。
【0003】
11b規格は、2.4GHz帯を用いる最大11Mbpsの無線伝送速度である。11a規格は、5GHz帯を用いる最大54Mbpsの無線伝送速度である。11g規格は、2.4GHz帯を用いる最大54Mbpsの無線伝送速度である。11n規格は、2.4及び5GHz帯を利用する最大600Mbpsの無線伝送速度である。11ac規格は、5GHz帯を用いる最大6900Mbpsの無線伝送速度である。これらの様々なIEEE802.11無線LAN規格は、後方互換性が保たれており、混在した環境でも使用することが可能である。
【0004】
また、駅、空港、ショッピングモール、スタジアムなどの公衆エリアでは、集客やユーザ満足度向上を目的として、無線LAN接続サービスが提供されている。このような環境では、多くの利用者を収容するために、複数の無線LAN基地局を集中させて設置する場合がある。また、無線LANシステムの設置後に、接続サービスのシステム性能を評価することがある(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】無線LAN環境調査サービス、[online]、株式会社アイ・オー・データ機器、[2019/03/11検索]、インターネット<URL:https://www.iodata.jp/support/service/iss/sitesurvey/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の無線LAN基地局が設置された環境において、無線LAN接続サービスのシステム性能を評価するためには、各基地局に対してそれぞれ試験用の端末局を接続させ、タイミングを合わせて同時に無線通信を行って評価する必要がある。
【0007】
基地局を1台ずつ試験することも考えられるが、互いに近い距離に設置された基地局どうしは、使用する無線チャネルによっては互いに電波干渉が生じる場合があり、エリア全体での評価を行うには適していない。複数の基地局に対して同時に無線通信を行う場合には、試験のために多くの人員と稼働がかかること、及び複数の試験パターンを用いて試験を実施した後に、試験結果を取りまとめる手間が発生することが課題となっている。
【0008】
本発明は、現地で作業員が端末局を接続させることなく、複数の基地局の動作試験を実施することができる基地局の動作試験方法、無線通信システム及び基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様にかかる基地局の動作試験方法は、端末局がそれぞれ接続可能な複数の無線通信部をそれぞれ備える複数の基地局の動作試験方法であって、前記基地局に備えられて、基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとを切替え可能にされた前記無線通信部の少なくともいずれかが、複数の前記基地局のうちの他の前記基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集工程と、前記基地局それぞれの性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報に基づいて、前記基地局それぞれに対する試験実施情報を算出する算出工程と、前記試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、他の前記基地局の前記無線通信部を前記子機モードに切替えて、互いに無線通信をさせることにより、前記基地局の動作試験を実施する試験実施工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様にかかる基地局の動作試験方法は、前記無線通信部それぞれは、複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様にかかる基地局の動作試験方法は、前記試験実施情報が、前記環境情報によって示される同一周波数で互いに送信信号を検出し合う干渉関係である前記基地局の組み合わせに対して同時にトラヒックを加えた試験の実施を示す情報であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、端末局と無線通信を行う複数の基地局と、前記基地局それぞれを制御する制御局とを備えた無線通信システムであって、前記基地局それぞれは、基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとが切替え可能な複数の無線通信部と、前記無線通信部が他の前記基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集部と、試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、前記子機モードに切替えられた他の前記基地局の前記無線通信部との間で無線通信をさせることにより、当該基地局の動作試験を実施する試験実施部とを有し、前記制御局は、前記基地局それぞれの性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報に基づいて、前記基地局それぞれに対する前記試験実施情報を算出する算出部と、前記算出部が算出した前記試験実施情報を前記基地局それぞれに対して送信する通信部とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記無線通信部それぞれは、複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記試験実施情報が、前記環境情報によって示される同一周波数で互いに送信信号を検出し合う干渉関係である前記基地局の組み合わせに対して同時にトラヒックを加えた試験の実施を示す情報であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一態様にかかる基地局は、端末局がそれぞれ接続可能な複数の無線通信部を備える基地局であって、前記無線通信部は、基地局として無線通信を行う通常モードと、仮想の端末局として無線通信を行う子機モードとを切替え可能にされており、前記無線通信部が他の前記無線通信部を備える他の基地局から受信した信号により示される無線環境を環境情報として収集する環境情報収集部と、基地局の性能を示す基地局性能情報及び前記環境情報を用いて算出された試験実施情報に基づいて、前記無線通信部のいずれかを前記通常モードに設定し、前記子機モードに切替えられた他の基地局の無線通信部と無線通信を行うことにより、当該基地局の動作試験を実施する試験実施部とをさらに有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一態様にかかる基地局は、前記無線通信部それぞれは、複数の通信規格に対応する前記子機モード及び前記通常モードを切替え可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現地で作業員が端末局を接続させることなく、複数の基地局の動作試験を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】一実施形態にかかる基地局の構成例を示す図である。
図3】環境情報収集部が収集する環境情報の例を示す図である。
図4】試験制御部が有する機能の詳細を示す図である。
図5】制御局の構成例を示す図である。
図6】算出部が算出する試験実施情報の例を示す図である。
図7】記憶部が記憶する試験結果情報の例を示す図である。
図8】無線通信システムにおける試験実施情報を生成する処理を示すフローチャートである。
図9】基地局に対する動作試験の実施例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。図1は、一実施形態にかかる無線通信システム1の構成例を示す。図1に示すように、無線通信システム1は、例えば、複数の基地局2それぞれがネットワーク10を介して制御局3に接続されている。無線通信システム1には、図示しない端末局が複数の基地局2のいずれかと無線通信可能なエリア200が存在する。また、基地局2それぞれは、複数の多様な通信規格又は通信方式の端末局をエリア200に収容する。
【0020】
図2は、一実施形態にかかる基地局2の構成例を示す。図2に示すように、基地局2は、例えば複数のアンテナ20、m個の無線通信部21-1~21-m、環境情報収集部22、試験制御部23、設定部240を備える情報処理部24及び通信部25を有する。なお、無線通信部21-1~21-mのように複数ある構成のいずれかを特定しない場合には、単に無線通信部21などと略記する。また、一般的に基地局が備えているその他の機能ブロックについては図示していない。
【0021】
アンテナ20は、複数本ずつ無線通信部21-1~21-mにそれぞれ接続され、無線通信部21-1~21-mから入力される無線フレームを送信し、受信した無線フレームを無線通信部21-1~21-mに対して出力する。
【0022】
無線通信部21-1~21-mは、例えば複数のアンテナ20を介して、それぞれ独立して1つ以上の端末局と無線LANなどの無線通信を行うことができるようにされている。また、無線通信部21-1~21-mそれぞれは、基地局2が通常の基地局として機能するための無線通信を行う通常モード(基地局モード)と、仮想の端末局として無線通信を行う子機モード(端末局モード)とを切替え可能にされている。
【0023】
さらに、無線通信部21-1~21-mそれぞれは、例えば複数の多様な通信規格又は通信方式について変更可能に対応し、設定された通信規格に従った動作試験のための試験用データの送受信などの無線通信を、アンテナ20を介して行う。すなわち、無線通信部21-1~21-mは、仮想的な複数の異なる通信規格の端末局、又は基地局として機能することが可能にされている。
【0024】
環境情報収集部22は、無線通信部21-1~21-mが他の基地局2から受信したビーコン信号の電力、及び受信チャネルなどを含む自局周辺の無線環境を環境情報として収集し、情報処理部24に対して出力する。
【0025】
図3は、環境情報収集部22が収集する環境情報の例を示す。図3に示すように、環境情報は、各基地局2において、周辺の他の基地局2から受信したビーコン信号から取得可能な情報であり、基地局識別子、自局のBSSID(Basic Serivce Set Identifier)、ビーコン受信BSSID、ビーコン受信電力、及びビーコン受信チャネルが含まれる。
【0026】
試験制御部23(図2)は、無線通信部21-1~21-m及び情報処理部24それぞれに対して双方向の信号入出力を行う。例えば、試験制御部23は、基地局2が動作試験を行う場合の試験用データの入出力を無線通信部21-1~21-mに対して行い、基地局2の動作試験を制御する。
【0027】
図4は、試験制御部23が有する機能の詳細を示す。図4に示すように、試験制御部23は、試験実施部231及び結果通知部232を有する。
【0028】
試験実施部231は、無線通信部21-1~21-mを基地局モード又は端末局モードのいずれかに切替える切替部233を備え、情報処理部24の設定部240により設定された試験実施情報に基づく設定を行って試験を実施する。
【0029】
ここで、試験実施情報は、複数の基地局2が協調して試験を実施するための条件を含む情報(図6を用いて後述)であり、各基地局2に対して制御局3から配信されることとする。例えば、試験実施情報は、環境情報によって示される同一周波数で互いに送信信号を検出し合う干渉関係である基地局2の組み合わせに対して同時にトラヒックを加えた試験の実施を示す情報である。
【0030】
例えば、試験実施部231は、試験実施情報に基づく設定を無線通信部21-1~21-mに対して行い、通常モードで動作する無線通信部21と、他の基地局2の子機モードに切替えられた無線通信部21とを無線通信させることにより、当該基地局2の動作試験を実施する。
【0031】
また、試験実施部231は、切替部233が当該基地局2の特定の無線通信部21を子機モードに切替えた後、他の基地局2の通常モードで動作する無線通信部21と無線通信をさせることにより、他の基地局2の動作試験を実施する。
【0032】
このように、試験実施部231は、試験実施情報に基づいて、無線通信部21の少なくともいずれかを通常モードに設定し、子機モードに切替えられた他の基地局2の無線通信部21との間で無線通信をさせることにより、当該基地局の動作試験を実施する。
【0033】
結果通知部232は、試験実施部231が実施した動作試験の結果を取得し、情報処理部24に対して通知する。
【0034】
情報処理部24(図2)は、図示しないCPU及びメモリを備えて所定の情報処理を行い、環境情報収集部22、試験制御部23及び通信部25それぞれに対して双方向の信号入出力を行う。例えば、情報処理部24は、環境情報収集部22が収集した環境情報を取得し、通信部25に対して出力する。
【0035】
また、情報処理部24は、通信部25から入力される試験実施情報に基づく設定を設定部240が試験制御部23に対して行う。また、情報処理部24は、試験制御部23から入力された動作試験の結果を取りまとめて試験結果情報とし、基地局性能情報とともに通信部25に対して出力する。基地局性能情報は、当該基地局2が備える無線通信の性能を示す情報であり、無線通信部21の数(m)、アンテナ20の数、対応する通信規格などの情報を含む。
【0036】
通信部25は、情報処理部24から入力される基地局性能情報、環境情報及び試験結果情報を、例えば有線通信によりネットワーク10(図1)を介して制御局3へ送信(通知)する。また、通信部25は、ネットワーク10を介して制御局3から送信される試験実施情報を情報処理部24に対して出力する。
【0037】
図5は、制御局3の構成例を示す。図5に示すように、制御局3は、通信部31、算出部32、制御部33及び記憶部34を有する。なお、一般的に制御局が備えているその他の機能ブロックについては図示していない。
【0038】
通信部31は、例えば有線通信によりネットワーク10を介して基地局2それぞれから基地局性能情報及び環境情報を受信し、算出部32に対して出力する。また、通信部31は、基地局2それぞれから試験結果情報を受信し、制御部33を介して記憶部34に記憶させる。また、通信部31は、ネットワーク10を介して、制御部33から入力される各情報を基地局2それぞれに対して送信(配信)する。
【0039】
算出部32は、通信部31から入力された基地局性能情報及び環境情報に基づいて、基地局2それぞれに対する試験実施情報を算出し、算出した試験実施情報を制御部33に対して出力する。
【0040】
図6は、算出部32が算出する試験実施情報の例を示す。図6に示すように、試験実施情報は、基地局識別子によって識別される基地局2それぞれが動作試験を行う場合の試験条件を試験番号によって特定する情報である。例えば、試験実施情報は、試験番号ごとに規定されており、基地局識別子、無線通信部番号、動作モード、接続先、及び試験内容を含む。
【0041】
図6において、基地局識別子は、試験を行う基地局2のMAC(Media Access Control)アドレスやシリアル番号など、基地局2を識別する情報を含む。無線通信部番号は、無線通信部21のいずれかを特定する情報である。動作モードは、無線通信部21の動作が基地局モード又は端末局モードのいずれであるかを示す情報である。接続先は、端末局モードの無線通信部21に対する接続先を特定する情報である。試験内容は、無線通信システム1が動作試験を行う場合の無線通信部21それぞれの動作を示す情報である。
【0042】
制御部33(図5)は、制御局3を構成する各部を制御する。例えば、制御部33は、通信部31から入力される試験結果情報を記憶部34に記憶させ、算出部32が算出した試験実施情報を通信部31に送信させる。
【0043】
記憶部34は、通信部31から入力される試験結果情報を記憶する記憶装置などである。
【0044】
図7は、記憶部34が記憶する試験結果情報の例を示す。図7に示すように、試験結果情報には、基地局識別子、試験番号、試験日時、無線通信部番号及び試験結果が含まれる。
【0045】
次に、無線通信システム1の動作例について説明する。
【0046】
図8は、無線通信システム1における試験実施情報を生成する処理を示すフローチャートである。まず、制御局3は、各基地局2から基地局性能情報及び環境情報を収集する(S100)。
【0047】
次に、制御局3は、基地局2それぞれから収集した環境情報に基づいて、例えば算出部32が複数の基地局2どうしの干渉関係を示す干渉関係情報を生成する(S102)。
【0048】
例えば、制御局3は、基地局2どうしで互いに送信するビーコン信号の電力に基づいて、それぞれの基地局2における周辺の他の基地局2からの信号をどの程度の電力で受信しているかをまとめることにより、干渉関係情報を生成する。
【0049】
なお、制御局3が干渉関係情報を生成する目的は、基地局2どうしを互いに接続させるときに、接続可能と推定される基地局2どうしのペアを見つけるためである。
【0050】
次に、制御局3は、基地局性能情報及び干渉関係情報に基づいて、試験実施情報を生成する(S104)。
【0051】
そして、制御局3は、干渉関係情報に基づいて、例えば基地局識別子が01,02,03である基地局2どうしが互いに近い距離にあり、かつ、同一周波数で互いに送信信号を検出しあう干渉関係であると判定した場合、基地局識別子が01,02,03である基地局2に対して同時にトラヒックを加えた試験を実施する。
【0052】
このとき、無線通信システム1は、基地局識別子が01,02,03である基地局2それぞれの基地局性能情報に含まれる無線通信部21の数に基づいて、基地局2それぞれの無線通信部21-1~21-mに対する設定を行う。
【0053】
例えば、試験制御部23は、図6に示した例のように、基地局2それぞれの各無線通信部21に対して動作モードを設定する。また、試験制御部23は、無線通信部21が端末局モードで動作する場合には、当該無線通信部21の接続先を設定する。試験内容については、予め用意された動作の中から必要に応じて設定されてもよい。このように、無線通信システム1は、実際の利用状況を想定した性能測定を可能にされている。
【0054】
図9は、基地局2に対する動作試験の実施例を示すフローチャートである。まず、制御局3は、各試験実施情報について、全て未実施とする設定を行う(S200)。
【0055】
次に、制御局3は、全ての試験実施情報の中に未実施の試験実施情報があるか否かを判定し(S202)、ある場合(S202:Yes)にはS204の処理へ進み、ない場合(S202:No)には処理を終了する。
【0056】
次に、制御局3は、未実施の試験実施情報を1つ選択し、実施済みとして、選択した試験実施情報において試験実施対象となる基地局2それぞれに対し、試験実施情報を通知する(S204)。
【0057】
各基地局2は、通知された試験実施情報に基づき、自局の無線通信部21-1~21-mに対して、動作モード設定及び接続先への無線接続を実施し、試験の準備が完了した旨を制御局3へ通知する(S206)。
【0058】
次に、制御局3は、試験実施情報を通知した基地局2それぞれから試験準備完了の旨の通知が揃ったことを確認し、各基地局2に対して試験を実施するように通知する(S208)。
【0059】
各基地局2は、制御局3から試験実施の通知を受けると、それぞれ試験実施情報に基づいて試験を実施し、試験結果情報を制御局3へ通知する(S210)。
【0060】
次に、制御局3は、各基地局2から取得した試験結果情報を記憶部34によって記憶し、S202の処理へ戻る。
【0061】
このように、無線通信システム1は、図8,9等を用いて説明した処理を定期的に実施することにより、複数の基地局2を協調させた試験を自律的に実施することができる。また、無線通信システム1は、試験実施の条件として、例えば基地局2に接続される端末局の数や、トラヒック情報などを用いることにより、ユーザの利用状況を考慮した試験実施の可否を判断することも可能となっている。
【0062】
従って、無線通信システム1は、現地で作業員が端末局を接続させなくても、複数の基地局2が協調して動作試験を実施することができ、基地局単体ではなく無線接続サービス全体としての性能、及び動作状況を、測定人員を要することなく評価・確認することができる。さらに、無線通信システム1は、基地局2が試験結果を制御局3へ通知することにより、無線通信システム1の運用者が複数の基地局2の試験結果を容易に収集・確認することを可能にし、試験結果の確認の手間を削減することができる。
【0063】
また、無線通信システム1は、動作試験を実施するときに、基地局2が備える複数の無線通信部21の中の一部を動作試験用に利用することにより、無線サービスの提供を維持したままで動作試験を実施することが可能となる。
【0064】
なお、上述した実施形態における基地局2及び制御局3は、専用装置による実現に限らず、汎用コンピュータによって実現されてもよい。この場合、基地局2及び制御局3は、それぞれが備える各機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現されてもよい。
【0065】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0066】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するものや、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものを含んでもよい。
【0067】
また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現されるものであってもよい。また、上記プログラムは、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0068】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明してきたが、上述の実施形態は、本発明の例示に過ぎず、本発明が上述の実施形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で、構成要素の追加、省略、置換、その他の変更が行われてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1・・・無線通信システム、2・・・基地局、3・・・制御局、10・・・ネットワーク、20・・・アンテナ、21-1~21-m・・・無線通信部、22・・・環境情報収集部、23・・・試験制御部、24・・・情報処理部、25・・・通信部、31・・・通信部、32・・・算出部、33・・・制御部、34・・・記憶部、231・・・試験実施部、232・・・結果通知部、233・・・切替部、240・・・設定部
図1
図2
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図6
図7
図8
図9