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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】碍管ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/064 20060101AFI20221206BHJP
   H01B 17/26 20060101ALI20221206BHJP
   H01R 13/533 20060101ALI20221206BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20221206BHJP
   H02G 15/103 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H02G15/064
H01B17/26 D
H01R13/533 B
H02G15/08
H02G15/103
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022148268
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2022058252の分割
【原出願日】2022-03-31
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2021149108
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 亘
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 有希
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実公昭47-007806(JP,Y2)
【文献】特開2010-004590(JP,A)
【文献】特開2013-046549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/064
H02G 15/103
H02G 15/08
H01B 17/26
H01R 13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルが挿入される挿入穴を有する碍管と、
前記碍管内に埋設され、前記電力ケーブルと電気的に接続される接続電極と、
前記挿入穴の内面に設けられ、前記接続電極と電気的に接続されるとともに、前記電力ケーブルを囲む導電性塗料層と、を備え、
前記接続電極から前記挿入穴が開口する側に離れた位置において前記碍管内に埋設され、前記電力ケーブルの端部の周囲における電界を緩和するための電界緩和電極を更に備え、
前記導電性塗料層は、前記接続電極と前記電界緩和電極とを電気的に接続している、
碍管ユニット。
【請求項2】
前記接続電極は、前記挿入穴の底面から前記挿入穴内に露出するとともに前記導電性塗料層の一部が接触する第1接触面を有し、
前記挿入穴の径方向における前記第1接触面の幅は、前記導電性塗料層の厚みよりも大きい、
請求項1に記載の碍管ユニット。
【請求項3】
前記接続電極は、外周側に張り出した張出部を有し、
前記張出部が前記第1接触面を有している、
請求項2に記載の碍管ユニット。
【請求項4】
前記第1接触面は、前記挿入穴の前記底面と面一に形成されている、
請求項2又は3に記載の碍管ユニット。
【請求項5】
前記導電性塗料層の一部は、前記電界緩和電極の内周端面であって前記碍管から露出した第2接触面に接触している、
請求項1に記載の碍管ユニット。
【請求項6】
前記第2接触面は、前記挿入穴の側面のうちの前記第2接触面より前記接続電極側の部位である内側側面部と面一に形成されている、
請求項5に記載の碍管ユニット。
【請求項7】
前記導電性塗料層の表面には、前記接続電極と前記電界緩和電極と前記導電性塗料層とに導通する導通部材が設けられている、
請求項1に記載の碍管ユニット。
【請求項8】
前記碍管には、前記挿入穴が複数形成されており、
前記接続電極は、複数の前記挿入穴のそれぞれに挿入される複数の前記電力ケーブルを互いに電気的に接続する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の碍管ユニット。
【請求項9】
前記碍管には、2つの前記挿入穴が形成されており、
前記2つの挿入穴は、一方向の互いに反対側に向かって開口しており、
前記接続電極は、前記碍管に埋設された埋設部と、前記埋設部から前記一方向の互いに反対側に突出するとともに2つの前記挿入穴の内側にそれぞれ突出した2つの突出部とを有する、
請求項8に記載の碍管ユニット。
【請求項10】
前記碍管には、2つの前記挿入穴が形成されており、
前記2つの挿入穴は、第1方向に開口した挿入穴と、前記第1方向に交差する第2方向
に開口した挿入穴とを有し、
前記接続電極は、前記碍管に埋設された埋設部と、前記埋設部から前記2つの挿入穴の
それぞれの内側に突出した2つの突出部と、を有する、
請求項8に記載の碍管ユニット。
【請求項11】
前記埋設部は、前記第1方向の長さが前記第2方向の長さよりも長く、
前記2つの突出部は、前記埋設部から前記第1方向に突出した突出部と、前記埋設部か
ら前記第2方向に突出した突出部とを有する、
請求項10に記載の碍管ユニット。
【請求項12】
前記第2方向の長さが、前記第1方向の長さよりも短い、
請求項11に記載の碍管ユニット。
【請求項13】
前記碍管には、3つ以上の前記挿入穴が形成されており、
前記接続電極は、前記碍管に埋設された埋設部と、前記埋設部から前記3つ以上の挿入
穴のそれぞれの内側に突出した3つ以上の突出部と、を有する、
請求項8に記載の碍管ユニット。
【請求項14】
前記埋設部は、一方向に長尺に形成されている、
請求項13に記載の碍管ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍管ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの電力ケーブル同士を接続するための電力ケーブル用接続部が開示されている。特許文献1に記載の電力ケーブル用接続部は、2つの電力ケーブルを電気的に接続する導体接続管が埋設されたエポキシユニットと、電力ケーブルの周囲を囲むストッパーと、導体接続管に電気的に接続されたシールド電極と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-219637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、電力ケーブル用接続部全体を軽量化する観点から改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、軽量化が可能な碍管ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記の目的を達成するため、電力ケーブルが挿入される挿入穴を有する碍管と、前記碍管内に埋設され、前記電力ケーブルと電気的に接続される接続電極と、前記挿入穴の内面に設けられ、前記接続電極と電気的に接続されるとともに、前記電力ケーブルを囲む導電性塗料層と、を備える碍管ユニットを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軽量化が可能な碍管ユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施の形態における、電力ケーブル接続構造体の断面図である。
図2図1の一部を拡大した図である。
図3】第1の実施の形態における、碍管ユニットの断面図である。
図4図3の一部を拡大した図である。
図5】第1の実施の形態における、碍管ユニットの正面図である。
図6】第2の実施の形態における、碍管ユニットの一部を拡大した断面図である。
図7】第2の実施の形態における、導通部材が取り付けられる前の碍管ユニットの一部を拡大した断面図である。
図8】第2の実施の形態における、導電性塗料層周辺を拡大した電力ケーブル接続構造体の断面図である。
図9】第3の実施の形態における、碍管ユニットの断面図である。
図10】第3の実施の形態における、電力ケーブル接続構造体の断面図である。
図11】第4の実施の形態における、碍管ユニットの断面図である。
図12】第4の実施の形態における、導電性塗料層を除いた碍管ユニットの正面図である。
図13】第4の実施の形態における、電力ケーブル接続構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、図1乃至図5を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0010】
(電力ケーブル接続構造体1)
図1は、本形態における電力ケーブル接続構造体1の断面図である。図2は、図1の一部を拡大した図である。
【0011】
電力ケーブル接続構造体1は、例えば鉄道車両に用いられ、高電圧が印加される2つの電力ケーブル41同士を電気的に接続する。電力ケーブル接続構造体1は、碍管21を有する碍管ユニット2と、碍管ユニット2を収容するケース3と、電力ケーブル41を有するとともにケース3に固定されたケーブルアッシー4とを備える。
【0012】
以後、単に「軸方向」といったときは、碍管ユニット2の中心軸Cが延在する方向を意味する。また、単に「径方向」といったときは、中心軸Cを中心とした径方向を意味する。なお、本形態において、中心軸Cは、後述の挿入穴211の中心軸でもあり、かつ、中心軸Cを中心とした径方向は、挿入穴211の径方向でもある。径方向における中心軸Cに近い側を内周側といい、その反対側を外周側という。
【0013】
本形態において電力ケーブル接続構造体1は、碍管ユニット2の軸方向中心を境に軸方向に対称に形成されている。そのため、以後、碍管ユニット2の軸方向中心の両側のそれぞれに存在する一対の構成要素に関し、一方の構成要素について説明した内容は、特に言及しない限り、他方の構成要素についても当てはまるものとし、重複する説明を省略することもある。また、碍管ユニット2の軸方向中心に近い側を軸方向内側といい、碍管ユニット2の軸方向中心から遠ざかる側を軸方向外側という。なお、本形態において、電力ケーブル接続構造体1が碍管21の軸方向中心を境に軸方向に対称に形成された例を示すが、これに限られず非対称な形状であってもよい。
【0014】
(碍管ユニット2)
図3は、碍管ユニット2の断面図である。図4は、図3の一部を拡大した図である。図5は、碍管ユニット2の正面図である。碍管ユニット2は、碍管21、接続電極22、電界緩和電極23、導電性塗料層24、及びナット部材25を備える。
【0015】
碍管21は、エポキシ樹脂等の電気的絶縁性を有する樹脂からなり、軸方向に長尺に形成されている。碍管21は、例えば、接続電極22、電界緩和電極23、及びナット部材25を配置した金型内に溶融状態のエポキシ樹脂を流し込んで硬化させるインサート成形により、接続電極22、電界緩和電極23、及びナット部材25と一体に形成されている。
【0016】
碍管21には、軸方向の互いに反対側に開口した一対の挿入穴211が形成されている。図1に示すごとく、一対の挿入穴211のそれぞれには、電力ケーブル41が1つずつ挿入されている。各挿入穴211に挿入された電力ケーブル41同士は、接続電極22を介して電気的に接続されている。
【0017】
接続電極22は、軸方向の両端部を一対の挿入穴211内に露出させつつ、碍管21における一対の挿入穴211間の部位に埋設されている。
【0018】
図3に示すごとく、接続電極22は、埋設部221と、埋設部221から軸方向の両側に突出した一対の突出部222とを有する。埋設部221は、接続電極22の軸方向の中央に形成されており、碍管21内に埋設されている。埋設部221における軸方向外側の両端部には、全周にわたって突出部222よりも外周側に張り出した張出部221aが設けられている。
【0019】
図3及び図4に示すごとく、張出部221aの軸方向外側の面は、挿入穴211の底面211aから挿入穴211内に露出するとともに導電性塗料層24が接触される第1接触面221bである。第1接触面221bは、軸方向に直交する円環状の面であり、本形態においては第1接触面221bの略全体に導電性塗料層24が接触している。なお、これに限られず、例えば第1接触面221bのうちの外周部のみに導電性塗料層24が設けられているような構成を採用することも可能である。また、導電性塗料層24は、さらに突出部222の外周面に接触していてもよい。図4に示すごとく、第1接触面221bの径方向の幅W1は、導電性塗料層24の厚みよりも大きくすることができる。
【0020】
第1接触面221bは、挿入穴211の底面211aと面一に形成されている。なお、第1接触面221bと挿入穴211の底面211aとを面一になるよう設計したものの、製造公差等により第1接触面221bと挿入穴211の底面211aとの位置が軸方向に僅かにずれたような場合も、第1接触面221bと挿入穴211の底面211aとは面一であるとする。第1接触面221bと挿入穴211の底面211aとを面一にすることにより、第1接触面221bと底面211aとに導電性塗料層24を構成する塗料を塗布しやすい。
【0021】
図3及び図4に示すごとく、埋設部221の外周面における一対の張出部221aの間は、張出部221aから内周側に凹んだ凹部221dとなっている。凹部221dは、接続電極22の全周にわたって形成されており、凹部221d内にも碍管21を構成する樹脂が入り込んでいる。埋設部221の外周面に凹部221dを設けることにより、接続電極22が碍管21から軸方向に抜け落ちることを抑制できる。ここで、張出部221aの軸方向内側を向く張出内側面221cは、軸方向内側に向かうほど内周側に向かうテーパ状に形成されている。これにより、凹部221dの形状が外周側の位置ほど軸方向に広がる形状となるため、碍管21を構成する樹脂が凹部221d内に流入しやすくなる。
【0022】
一対の突出部222は、一対の挿入穴211の内側に露出している。突出部222は、挿入穴211の底面211aから挿入穴211内に突出している。接続電極22には、突出部222の軸方向外側の端面に開口する雌ねじ孔22aが形成されている。図2に示すごとく、雌ねじ孔22aには、接続電極22と電力ケーブル41とを電気的に中継するための中継部材43を接続電極22に固定するためのボルト11が螺合されている。接続電極22は、第1接触面221bに接触した導電性塗料層24を介して電界緩和電極23と電気的に接続されている。
【0023】
図3に示すごとく、電界緩和電極23は、2つの挿入穴211のそれぞれの周囲に1つずつ設けられている。電界緩和電極23は、接続電極22から軸方向外側に離れた位置に設けられおり、碍管21内に埋設されている。電界緩和電極23は、挿入穴211に挿入される電力ケーブル41を取り囲むよう環状を呈している。電界緩和電極23は、円筒状に形成された円筒部231と、円筒部231の軸方向中央部から内周側に延設された延設部232とを有し、断面T字状を呈している。
【0024】
図2に示すごとく、円筒部231における延設部232から軸方向外側に延びる部位は、電力ケーブル41のケーブル導体部411が配される空間Sよりも軸方向外側まで延びている。この部位は、電力ケーブル41の軸方向内側の端部の周囲に電界が集中することを抑制する役割を有する。なお、円筒部231における延設部232から軸方向内側に延びる部位は、電界緩和電極23を軸方向に対称に形成する観点から設けられたものである。電界緩和電極23を軸方向に対称に形成することで、電界緩和電極23の軸方向の方向性が無くなるため、碍管ユニット2の製造を容易にしやすい。
【0025】
図4及び図5に示すごとく、延設部232は、軸方向外側の面のうちの内周側端部に、碍管21から軸方向外側に露出した円環状の支持面232aを有する。図2に示すごとく、支持面232aは、後述するストッパー45を受ける面である。また、図4及び図5に示すごとく、延設部232の内周端面は、碍管21から露出するとともに導電性塗料層24が接触された第2接触面232bである。第2接触面232bは、軸方向に平行な円筒状の面であり、本形態においては、第2接触面232bの略全体が第2接触面232bを構成している。なお、これに限られず、例えば第2接触面232bのうちの軸方向内側の部位のみに導電性塗料層24が設けられているような構成を採用することも可能である。図4に示すごとく、第2接触面232bの軸方向の幅W2は、導電性塗料層24の厚みよりも大きくすることができる。
【0026】
第2接触面232bは、挿入穴211の側面211bのうちの第2接触面232bより軸方向内側の部位である内側側面部211cと面一に形成されている。なお、第2接触面232bと内側側面部211cとを面一になるよう設計したものの、製造公差等により第2接触面232bと内側側面部211cの位置が軸方向に僅かにずれたような場合も、第2接触面232bと内側側面部211cとは面一であるとする。第2接触面232bと内側側面部211cとを面一にすることにより、第2接触面232bと内側側面部211cとに導電性塗料層24を構成する塗料を塗布しやすい。
【0027】
導電性塗料層24は、導電性を有する塗料を碍管21内に塗布した後、焼き付け等により固化させることで形成された層である。導電性塗料層24は、例えば銀ペースト等を用いることができるが、これに限られない。導電性塗料層24を構成する塗料の塗布方法は、例えば刷毛を用いた手塗りを採用することができるが、これに限られず、スプレー塗り等、他の塗装方法を採用することも可能である。導電性塗料層24は、全体的に均一の厚みを有する。導電性塗料層24の厚みは、例えば1mm未満とすることができる。導電性塗料層24は、接続電極22を介して電力ケーブル41と電気的に接続されており、かつ、挿入穴211の底面211a及び内側側面部211cに隙間なく接触している。導電性塗料層24は、電力ケーブル41のケーブル導体部411が配される空間S(図2参照)に放電が生じることを抑制する役割を有する。
【0028】
図3乃至図5に示すごとく、導電性塗料層24は、カップ状を呈しており、接続電極22の第1接触面221b及び挿入穴211の底面211aに接触した円環状の塗料層底部241と、挿入穴211の内側側面部211c及び電界緩和電極23の第2接触面232bに接触した円筒状の塗料層側部242とを有する。本形態において、挿入穴211の内側側面部211cは、軸方向外側に向かうほど内径が大きくなるよう僅かに傾斜しており、これに伴って塗料層側部242も、軸方向外側に向かうほど内径及び外径が大きくなるよう僅かに傾斜している。内側側面部211cの傾斜は、接続電極22、電界緩和電極23及びナット部材25と一体に碍管21を成形する際の金型を引き抜きやすくするための抜き勾配として設けられたものである。なお、内側側面部211c及び塗料層側部242は、例えば軸方向に平行に形成されていてもよい。
【0029】
碍管21の軸方向外側の端部には、複数のナット部材25が埋設されている。ナット部材25は、軸方向外側の端部に開口した雌ねじ孔251が設けられた袋ナットである。図2に示すごとく、ナット部材25の雌ねじ孔251には、碍管ユニット2をケース3に固定するためのボルト12が螺合される。
【0030】
(ケース3)
ケース3は、金属等の剛性が高く導電性を有する素材からなる。ケース3及び後述のカバー47は、互いに電気的に接続されているとともに接地電位に接続されている。図1及び図2に示すごとく、ケース3は、碍管ユニット2を収容して保護している。ケース3は、碍管ユニット2の両端面に対向する一対の第1ケース部材31と、一対の第1ケース部材31間に設けられた第2ケース部材32とを有する。
【0031】
第1ケース部材31は、碍管21の軸方向外側の面に対向しており、ボルト12によって碍管21のナット部材25に固定されている。第1ケース部材31の軸方向外側には、スタッドボルト13が螺合されている。第1ケース部材31には、スタッドボルト13及びナット14を用いてケーブルアッシー4の後述のカバー47が固定されている。第1ケース部材31の外周部は、軸方向内側に突出した円筒状の嵌合部311を有する。嵌合部311の内周側に、第2ケース部材32が嵌合されている。
【0032】
第2ケース部材32は、円筒状を呈しており、碍管21を外周側から覆っている。第2ケース部材32の両端部が、一対の第1ケース部材31の嵌合部311に挿入嵌合されている。
【0033】
(ケーブルアッシー4)
ケーブルアッシー4は、電力ケーブル41、接続端子42、中継部材43、ストレスコーン44、ストッパー45、加圧部材46、及びカバー47を備える。電力ケーブル41は、中心から順に、ケーブル導体部411、ケーブル内部半導電層(図示略)、ケーブル絶縁体412、ケーブル外部半導電層413、ケーブルシールド層414、及びケーブルシース415を備える。電力ケーブル41は、軸方向内側から順に、ケーブル導体部411、ケーブル絶縁体412、ケーブル外部半導電層413、ケーブルシールド層414が露出するよう段剥ぎされている。
【0034】
接続端子42は、ケーブル導体部411にかしめられたかしめ部421と、かしめ部421から軸方向内側に形成されるとともに中継部材43に挿入される挿入部422とを有する。かしめ部421は、ケーブル導体部411にかしめられることで、ケーブル導体部411に固定されるとともにケーブル導体部411と電気的に接続されている。挿入部422は、筒状の中継部材43の内側に挿入されている。
【0035】
中継部材43は、接続端子42と接続電極22とを電気的に中継する。本形態において、中継部材43はいわゆるチューリップコンタクトである。図2に示すごとく、中継部材43は、軸方向に長尺な導体を円状に並べた本体部431と、本体部431を内周側に締め付ける締付ばね432と、本体部431の内周部に嵌合された環状の固定板433とを有する。本体部431は、軸方向外側の端部が接続端子42の挿入部422に外嵌されているとともに、軸方向内側の端部が接続電極22の突出部222に外嵌されており、これによって接続端子42と接続電極22との双方に電気的に接続されている。中継部材43の軸方向両端部のそれぞれの外周側に、締付ばね432が巻回されている。
【0036】
固定板433は、接続端子42の軸方向内側の位置において、本体部431の内周部に嵌合している。中継部材43は、ボルト11を、固定板433に形成された貫通孔に挿通するとともに接続電極22の雌ねじ孔22aに螺合することで、接続電極22に対して固定されている。なお、中継部材43は、電力ケーブル41と接続電極22とを電気的に中継することができれば、チューリップコンタクト以外の構成を採用することも可能である。
【0037】
ストレスコーン44は、ケーブル絶縁体412及びケーブル外部半導電層413の外周部に嵌合されている。ストレスコーン44は、加圧部材46によって軸方向に圧縮されており、電力ケーブル41と碍管21の挿入穴211の内面との双方に接触している。
【0038】
ストレスコーン44は、二部材から構成されており、軸方向内側に絶縁部441、軸方向外側に半導電部442を備える。絶縁部441は、内周部がケーブル絶縁体412に接触している。半導電部442は、内周部がケーブル外部半導電層413に接触しており、ケーブル外部半導電層413を介して接地電位に接続される。ストレスコーン44の軸方向内側に、ストッパー45が配されている。
【0039】
ストッパー45は、円環状に形成されており、その内側に電力ケーブル41が挿入されている。ストッパー45は、加圧部材46からストレスコーン44に加えられた軸方向の加圧力を受ける役割を有し、電界緩和電極23の支持面232aに当接している。
【0040】
加圧部材46は、ストレスコーン44を軸方向に圧縮させるためのものである。加圧部材46は、軸方向内側がストレスコーン44に当接しており、軸方向外側がカバー47に係止されている。そして、加圧部材46は、例えばコイルばねの反力によって、ストレスコーン44を軸方向内側に向けて加圧している。本形態において、加圧部材46の全体は、導電性を有する素材からなり、図示は省略するが、電力ケーブル41のケーブルシールド層414とカバー47及びケース3との双方に電気的に接続されている。
【0041】
カバー47は、前述のごとく、スタッドボルト13及びナット14を用いて第1ケース部材31に固定されている。カバー47は、ケース3から軸方向の外側に突出した電力ケーブル41、ストレスコーン44、及び加圧部材46を外周側から囲っている。カバー47の軸方向外側の端部は、弾性変形可能な筒状の弾性シート16を介して電力ケーブル41に密着している。
【0042】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
本形態においては、挿入穴211の内面に導電性塗料層24が設けられており、導電性塗料層24は、接続電極22と電気的に接続されるとともに電力ケーブル41を囲んでいる。それゆえ、比較的軽量な導電性塗料層24により、電力ケーブル41の周囲に放電が生じることを抑制することができ、碍管ユニット2全体の軽量化を図ることができる。
【0043】
また、接続電極22は、外周側に張り出した張出部221aを有する。そして、導電性塗料層24の一部は、張出部221aにおける軸方向外側の面であって碍管21から露出した第1接触面221bに接触している。それゆえ、導電性塗料層24を構成する塗料を、接続電極22の表面に塗布しやすい。
【0044】
また、第1接触面221bにおける径方向の幅W1は、導電性塗料層24の厚みよりも大きい。それゆえ、第1接触面221bに、導電性塗料層24を構成する塗料を、一層塗布しやすくなる。
【0045】
また、第1接触面221bは、挿入穴211の底面211aと面一に形成されている。それゆえ、挿入穴211の底面211aと第1接触面221bとに、導電性塗料層24を構成する塗料を連続的に塗布しやすくなる。
【0046】
また、導電性塗料層24は、接続電極22と、接続電極22から軸方向に離れた位置に配された電界緩和電極23とを電気的に接続している。そのため、接続電極22と電界緩和電極23とを接続する部材を軽量化することができる。また、接続電極22と電界緩和電極23とを軸方向に大きく離しても、接続電極22と電界緩和電極23とを接続する導電性塗料層24が過度に重くならないため、電界緩和電極23を接続電極22から離れた位置に配置しやすい。
【0047】
また、導電性塗料層24の一部は、電界緩和電極23の内周端面であって碍管21から露出した第2接触面232bに接触している。それゆえ、第2接触面232bと挿入穴211の内側側面部211cとに、導電性塗料層24を構成する塗料を塗布しやすい。
【0048】
また、第2接触面232bは、挿入穴211の側面211bのうちの第2接触面232bより接続電極22側の部位である内側側面部211cと面一に形成されている。それゆえ、挿入穴211の内側側面部211cと第2接触面232bとに、導電性塗料層24を構成する塗料を連続的に塗布しやすい。
【0049】
また、碍管21には、挿入穴211が複数形成されており、接続電極22は、複数の挿入穴211のそれぞれに挿入される複数の電力ケーブル41を互いに電気的に接続する。このように、碍管ユニット2が複数の電力ケーブル41を接続するために用いられる場合、碍管ユニット2が大型化して碍管ユニット2の重量化がより懸念されやすいところ、導電性塗料層24を設けることによる碍管ユニット2の軽量化のメリットが大きい。
【0050】
また、碍管21には、2つの挿入穴211が形成されており、2つの挿入穴211は、軸方向の互いに反対側に向かって開口している。そして、接続電極22は、碍管21に埋設された埋設部221と、埋設部221から軸方向の互いに反対側に突出するとともに2つの挿入穴211の内側にそれぞれ突出した2つの突出部222とを有する。それゆえ、2つの電力ケーブル41同士を、簡易な形状の接続電極22にて電気的に接続することが可能となる。その結果、碍管ユニット2の生産性を向上させることができる。
【0051】
以上のごとく、本形態によれば、軽量化が可能な碍管ユニットを提供することができる。
【0052】
[第2の実施の形態]
図6は、本形態における碍管ユニット2の一部を拡大した断面図である。図7は、導通部材6が取り付けられる前の碍管ユニット2の一部を拡大した断面図である。図8は、導電性塗料層24周辺を拡大した電力ケーブル接続構造体1の断面図である。
【0053】
本形態は、第1の実施の形態に対し、更に導通部材6を備える形態である。導通部材6は、導電性塗料層24の表面に配されており、接続電極22と電界緩和電極23と導電性塗料層24とに導通している。本形態において、導通部材6は、塗料層側部242に接触するよう設けられた第1部位61と、第1部位61の軸方向内側の端部から内周側に延設され、塗料層底部241に接触するよう設けられた第2部位62とを有し、全体として略L字状を呈している。
【0054】
図6及び図7に示すごとく、電界緩和電極23には、第1接触面221bに開口する雌ねじ孔232cが設けられており、第1部位61には、雌ねじ孔232cに連通するボルト挿通孔611が形成されている。また、導電性塗料層24は、雌ねじ孔232cを避けるように、第1接触面221bに設けられている。そして、導通部材6は、ボルト15を、ボルト挿通孔611に挿通するとともに雌ねじ孔232cに螺合することにより、導電性塗料層24の表面に押し付けられ、導電性塗料層24を介して電界緩和電極23と導通している。
【0055】
第2部位62の内周側の端部は、接続電極22の突出部222よりも外周側に離れた位置に形成されている。図8に示すごとく、第2部位62は、ボルト11を用いて中継部材43を接続電極22に固定することにより、中継部材43によって塗料層底部241に押し付けられている。これにより、第2部位62は、導電性塗料層24を介して、第1接触面221bと対向している。
【0056】
本形態のその他の構成は、第1の実施の形態の構成と同様である。
なお、第2の実施の形態以降において用いた符号のうち、既出の形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0057】
(第2の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、導電性塗料層24の表面には、接続電極22と電界緩和電極23と導電性塗料層24とに導通する導通部材6が設けられている。それゆえ、接続電極22と電界緩和電極23との電気的接続を確実にしやすい。このことについて、以下説明する。
【0058】
例えば、碍管ユニット2に対するケーブルアッシー4の脱着時等に、ケーブルアッシー4が導電性塗料層24に干渉したような場合は、導電性塗料層24が軸方向に分割されるように割れるおそれが考えられる。この場合において、導通部材6が無ければ、導電性塗料層24を介した接続電極22と電界緩和電極23との電気的接続が断たれるおそれがある。一方、本形態においては、導通部材6を設けているため、仮に導電性塗料層24が軸方向に分割されても、導通部材6によって接続電極22と電界緩和電極23と導電性塗料層24との導通が維持される。
その他、本形態においても、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0059】
なお、本形態において、導通部材6は、略L字状に形成した例を示したが、これに限られない。例えば、導電性塗料層24の形状と同様に、カップ状に形成してもよい。この場合は、碍管ユニット2に対するケーブルアッシー4の脱着時等に、ケーブルアッシー4が導電性塗料層24に干渉することを抑制することができる。
【0060】
[第3の実施の形態]
図9は、本形態における碍管ユニット2の断面図である。図9に示すごとく、本形態は、第1の実施の形態と基本構造を同様としつつ、碍管ユニット2の全体をL字状に形成した形態である。碍管ユニット2は、L字の一端側に開口した第1挿入穴212と、他端側に開口した第2挿入穴213とを有する。第1挿入穴212の開口方向を第1方向D1とし、第2挿入穴213の開口方向を第2方向D2とする。第1方向D1と第2方向D2とは、互いに交差する方向、具体的には互いに直交する方向である。
【0061】
碍管21は、第2方向D2の長さL2が、第1方向D1の長さL1よりも短い。かかる構成を実現しやすくするために、本形態においては、第1挿入穴212と第2挿入穴213との位置関係を工夫している。例えば、第1方向D1から見たとき、第2挿入穴213の底面213aは、第1挿入穴212の底面212aと重なる位置に形成されている。そして、第1挿入穴212の中心軸C1と第2挿入穴213の中心軸C2との交点Pから第2挿入穴213の底面213aまでの第2方向D2の距離は、交点Pから第1挿入穴212の底面212aまでの第1方向D1の距離よりも短くなっている。
【0062】
接続電極22は、碍管21に埋設された埋設部221と、埋設部221から2つの挿入穴212,213の内側にそれぞれ突出した2つの突出部222とを有する。埋設部221は、第1方向D1の長さが第2方向D2の長さよりも長い。また、埋設部221における第1方向D1の第1挿入穴212と反対側の端部は、第2挿入穴213側に僅かに突出しており、埋設部221の全体が略L字状を呈している。埋設部221におけるL字の一端側の面は、第1挿入穴212の内側に露出するとともに導電性塗料層24が接触される第1接触面221bとなっている。また、埋設部221におけるL字の他端側の面は、第2挿入穴213の内側に露出するとともに導電性塗料層24が接触される第1接触面221bとなっている。
【0063】
2つの突出部222のうちの一方の突出部222は、埋設部221から第1方向D1に突出するとともに第1挿入穴212の内側に突出しており、他方の突出部222は、埋設部221から第2方向D2に突出するとともに第2挿入穴213の内側に突出している。一方の突出部222は、第1挿入穴212の底面212aから第1挿入穴212の内側に突出しており、他方の突出部222は、第2挿入穴213の底面213aから第2挿入穴213の内側に突出している。
【0064】
図10は、本形態の碍管ユニット2を備える電力ケーブル接続構造体1の断面図である。本形態において、第1挿入穴212への電力ケーブル41の挿入方向は第1方向D1であり、第2挿入穴213への電力ケーブル41の挿入方向は第2方向D2となる。また、本形態において、碍管ユニット2を囲む第2ケース部材32は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に直交する方向の一方側(例えば図10の紙面奥側)が開放されたトンネル状に形成されている。そして、第2ケース部材32は、その開放された側から碍管ユニット2を挿入させるように、碍管ユニット2に組み付けられる。なお、第2ケース部材32の開放部分を閉塞する平板をさらに設けてもよい。
【0065】
例えば、鉄道車両の屋根等における碍管ユニット2の配置スペースにおいて、鉄道車両の進行方向のスペースの制約が大きいような場合、第2方向D2(すなわち碍管ユニット2の短手方向)が鉄道車両の進行方向となる姿勢で、碍管ユニット2が鉄道屋根に配置され得る。これにより、碍管ユニット2の配置スペースにおいて特定方向の制限があるような場合であっても、碍管ユニット2を配置しやすくなる。
【0066】
その他は、第1の実施の形態と同様である。なお、第1の実施の形態において軸方向といったものは、第1挿入穴212周囲の部位の説明については第1方向D1と読み替え、第2挿入穴213周囲の部位の説明については第2方向D2と読み替えるものとする。また、第1の実施の形態において軸方向内側といったものは、交点Pに近い側とし、第1の実施の形態において軸方向外側といったものは、交点Pから遠い側とする。
【0067】
(第3の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、碍管21に設けられた2つの挿入穴212,213は、第1方向D1に開口した第1挿入穴212と、第1方向D1に交差する第2方向D2に開口した第2挿入穴213とを有する。そして、接続電極22は、碍管21に埋設された埋設部221と、埋設部221から第1挿入穴212及び第2挿入穴213のそれぞれの内側に突出した2つの突出部222とを有する。このように、互いに交差する開口方向の2つの挿入穴212,213を有する碍管ユニット2においては、2つの電力ケーブル41を電気的に接続するための構造が複雑になりやすいものの、本形態においては2つの電力ケーブル41を接続する接続電極22の構造を簡素化しやすい。
【0068】
また、埋設部221は、第1方向D1の長さが第2方向D2の長さよりも長く、2つの突出部222は、埋設部221から第1方向D1に突出した突出部222と、埋設部221から第2方向D2に突出した突出部222とを有する。それゆえ、埋設部221が、本形態のように互いに交差する開口方向の2つの挿入穴212,213に挿入される2つの電力ケーブル41を電気的に接続する場合であっても、埋設部221の構造を簡素化することができる。
【0069】
さらに、碍管ユニット2の第2方向D2の長さL2は、碍管ユニット2の第1方向D1の長さL1よりも短い。それゆえ、碍管ユニット2の第2方向D2の小型化を図ることができる。これにより、碍管ユニット2の配置スペース(例えば鉄道車両の屋根上)が特定方向において制限されているような場合、この特定方向が第2方向D2となる姿勢で碍管ユニット2を配置スペースに配置することで、特定方向に制限された配置スペースであっても碍管ユニット2を配置しやすい。碍管ユニット2の第2方向D2の長さL2が、碍管ユニット2の第1方向D1の長さL1よりも短い構成は、前述のごとく、埋設部221が第1方向D1の長さが第2方向D2の長さよりも長く、2つの突出部222が、埋設部221から第1方向D1に突出した突出部222と、埋設部221から第2方向D2に突出した突出部222とを有する構成を備えることで、より実現しやすくなる。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0070】
[第4の実施の形態]
図11は、本形態における碍管ユニット2の断面図である。図12は、導電性塗料層24を除いた碍管ユニット2の正面図である。
【0071】
本形態は、3つの電力ケーブルを互いに接続可能な三分岐型の碍管ユニット2である。図11に示すごとく、碍管21は、一方向に延びる第1碍管部21aと、第1碍管部21aと平行に形成されるとともに第1碍管部21aよりも短尺な第2碍管部21bと、第1碍管部21aと第2碍管部21bとを連結する第3碍管部21cと、を有する。
【0072】
第1碍管部21aには、第1碍管部21aの延在方向の互いに反対側に開口する第1挿入穴214及び第2挿入穴215が形成されている。また、第2碍管部21bには、第2挿入穴215と同じ側に開口する第3挿入穴216が形成されている。図11においては、第1挿入穴214の中心軸を符号C3で表し、第2挿入穴215の中心軸を符号C4で表し、第3挿入穴216の中心軸を符号C5で表している。本形態においては、中心軸C3,C4,C5が延在する方向を軸方向という。
【0073】
第2挿入穴215は、接続電極22を挟んで第1挿入穴214と反対側に形成されている。第3挿入穴216は、第2挿入穴215から軸方向に直交する方向に離れた位置に形成されている。以後、第2挿入穴215と第3挿入穴216との並び方向(すなわち、図11及び図12のそれぞれの上下方向)を、単に並び方向ということもある。軸方向における第2挿入穴215の形成領域と第3挿入穴216の形成領域とは、同じ領域である。3つの挿入穴214,215,216に挿入される電力ケーブルは、接続電極22を介して互いに電気的に接続される。
【0074】
接続電極22は、碍管21に埋設された埋設部221と、埋設部221から3つの挿入穴214,215,216の内側にそれぞれ突出した3つの突出部222とを有する。埋設部221は、軸方向における、第1挿入穴214と第2挿入穴215及び第3挿入穴216との間に配されているとともに並び方向に長尺な棒状に形成されている。図11及び図12に示すごとく、埋設部221は、各挿入穴214,215,216に露出するとともに導電性塗料層24が接触される3つの第1接触面221bを有する。第1接触面221bにおける挿入穴214,215,216の径方向の幅W1は、導電性塗料層24の厚みよりも大きくすることができる。ここで、図12から分かるように、第1接触面221bにおける挿入穴214,215,216の径方向の幅は、一定ではなく突出部222の周方向の位置によって異なるが、単に第1接触面221bにおける挿入穴214,215,216の径方向の幅W1といったときは、第1接触面221bにおける周方向の各位置の幅のうちの最大の幅を意味するものとする。また、導電性塗料層24の厚みが位置によって異なる場合において、単に導電性塗料層24の厚みといったときは、導電性塗料層24の最大厚みを意味するものとする。
【0075】
図11に示すごとく、各突出部222は、各挿入穴214,215,216の底面214a,215a,216aから各挿入穴214,215,216の内側に突出している。3つの突出部222のうち、第1挿入穴214及び第2挿入穴215のそれぞれの内側に突出した2つの突出部222は、並び方向における埋設部221の一端部付近に設けられており、残りの1つの突出部222は埋設部221の他端部付近に設けられている。第1挿入穴214及び第2挿入穴215のそれぞれの内側に突出した2つの突出部222は、埋設部221を挟んで互いに反対側に形成されている。また、第2挿入穴215及び第3挿入穴216のそれぞれの内側に突出した2つの突出部222は、埋設部221から互いに同じ側(図11における左側)に突出している。
【0076】
図13は、本形態の碍管ユニット2を備える電力ケーブル接続構造体1の断面図である。図13に示すごとく、第1挿入穴214には軸方向の一方側から電力ケーブル41が挿入され、第2挿入穴215及び第3挿入穴216には軸方向の他方側から電力ケーブル41が挿入される。一例として、第1挿入穴214には、幹線としての電力ケーブル41が挿入され、当該電力ケーブル41から入力された電力が、第2挿入穴215に挿入された電力ケーブル41と、第3挿入穴216に挿入された電力ケーブル41とに分岐される。また、一例として、第2挿入穴215に挿入される電力ケーブル41は、連結された車両間を跨ぐよう配線され、第3挿入穴216に挿入される電力ケーブル41は、床下機器へ電気的に接続されるよう配線される。なお、各電力ケーブル41の接続先については、これに限定されない。
【0077】
本形態において、碍管ユニット2を収容して保護するケース3は、第1部材33、第2部材34、2つの第3部材35、及び2つの第4部材36を有する。第1部材33は、第1挿入穴214が開口する側に開口する第1開口部331と、第1開口部331と反対側に開口するとともに第1開口部331よりも大きな第2開口部332を有し、全体として略筒状に形成されている。碍管ユニット2は、第1部材33の第2開口部332から第1部材33内に挿入される。そして、第1部材33は、第1挿入穴214の外周側に位置するナット部材25にボルト17によって固定されている。
【0078】
第2部材34は、第2開口部332を閉塞する板状の部材である。第2部材34には、第1碍管部21a及び第2碍管部21bをそれぞれ挿入する2つの穴部341が形成されている。第2部材34は、第1部材33にボルト18によって固定されており、また、第2部材34には、第3部材35がボルト19によって固定されている。
【0079】
2つの第3部材35は、第2部材34から突出した第1碍管部21a及び第2碍管部21bをそれぞれ囲む筒状に形成されている。
【0080】
第4部材36は、第3部材35に外嵌されている。図示は省略するが、第4部材36と第3部材35との嵌合部には、水密性を確保するための処理(例えばOリングの配置)がなされていてもよい。2つの第4部材36の一方は、第2挿入穴215の外周側に位置するナット部材25に、他方は、第3挿入穴216の外周側に位置するナット部材25に、ボルト10によって固定されている。
【0081】
その他は、第1の実施の形態と同様である。なお、第1の実施の形態において軸方向内側といったものは、軸方向における接続電極22に近い側とし、第1の実施の形態において軸方向外側といったものは、軸方向における接続電極22から遠い側とする。
【0082】
(第4の実施の形態の作用及び効果)
本形態において、碍管21には、3つ以上の挿入穴214,215,216が形成されており、接続電極22は、碍管21に埋設された埋設部221と、埋設部221から3つ以上の挿入穴214,215,216のそれぞれの内側に突出した3つ以上の突出部222と、を有する。それゆえ、簡易な構造の接続電極22にて3つ以上の電力ケーブル41の相互の接続を可能にすることができる。
【0083】
また、埋設部221は、一方向に長尺に形成されており、3つ以上の突出部222は、長尺な埋設部221から突出している。それゆえ、長尺な埋設部221に、挿入穴214,215,216の数だけ突出部222を形成することで、接続電極22を構成することができる。そのため、接続電極22の構造を一層簡素化しやすい。
その他、第1の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0084】
なお、本形態においては、次のような変形も可能である。
例えば、本形態において、第3挿入穴が開口する側は第2挿入穴が開口する側と同じ側としたが、第3挿入穴が開口する側を、並び方向における一方側(図11の上側)としてもよい。この場合、碍管ユニットの全体はT字状に形成され、第3挿入穴の内側に突出する突出部は、埋設部から並び方向に突出するよう形成される。
また、並び方向における第1挿入穴の位置を、並び方向における第2挿入穴と第3挿入穴との間の中央位置等としてもよい。この場合、第1挿入穴の内側に突出する突出部は、埋設部における並び方向の中央位置等に形成される。
また、接続電極を挟んで第3挿入穴の反対側に、4つ目の挿入穴を設けた、いわゆるX分岐型の碍管ユニットとしてもよい。この場合、接続電極には、埋設部を挟んで、第3挿入穴内に突出する突出部と反対側に突出する4つ目の突出部が形成され、4つの挿入穴に挿入される4つの電力ケーブル同士が、接続電極を介して電気的に接続される。さらに、挿入穴は、5つ以上でもよい。
【0085】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0086】
[1]電力ケーブル(41)が挿入される挿入穴(211,212,213,214,215,216)を有する碍管(21)と、前記碍管(21)内に埋設され、前記電力ケーブル(41)と電気的に接続される接続電極(22)と、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)の内面に設けられ、前記接続電極(22)と電気的に接続されるとともに、前記電力ケーブル(41)を囲む導電性塗料層(24)と、を備える碍管ユニット(2)。
【0087】
[2]前記接続電極(22)は、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)の底面(211a,212a,213a,214a,215a,216a)から前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)内に露出するとともに前記導電性塗料層(24)の一部が接触する第1接触面(221b)を有し、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)の径方向における前記第1接触面(221b)の幅(W1)は、前記導電性塗料層(24)の厚みよりも大きい、[1]に記載の碍管ユニット(2)。
【0088】
[3]前記接続電極(22)は、外周側に張り出した張出部(221a)を有し、前記張出部(221a)が前記第1接触面(221b)を有している、[2]に記載の碍管ユニット(2)。
【0089】
[4]前記第1接触面(221b)は、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)の前記底面(211a,212a,213a,214a,215a,216a)と面一に形成されている、[2]又は[3]に記載の碍管ユニット(2)。
【0090】
[5]前記接続電極(22)から前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)が開口する側に離れた位置において前記碍管(21)内に埋設され、前記電力ケーブル(41)の端部の周囲における電界を緩和するための電界緩和電極(23)を更に備え、前記導電性塗料層(24)は、前記接続電極(22)と前記電界緩和電極(23)とを電気的に接続している、[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の碍管ユニット(2)。
【0091】
[6]前記導電性塗料層(24)の一部は、前記電界緩和電極(23)の内周端面であって前記碍管(21)から露出した第2接触面(232b)に接触している、[5]に記載の碍管ユニット(2)。
【0092】
[7]前記第2接触面(232b)は、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)の側面(211b)のうちの前記第2接触面(232b)より前記接続電極(22)側の部位である内側側面部(211c)と面一に形成されている、[6]に記載の碍管ユニット(2)。
【0093】
[8]前記導電性塗料層(24)の表面には、前記接続電極(22)と前記電界緩和電極(23)と前記導電性塗料層(24)とに導通する導通部材(6)が設けられている、[5]乃至[7]のいずれか1項に記載の碍管ユニット(2)。
【0094】
[9]前記碍管(21)には、前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)が複数形成されており、前記接続電極(22)は、複数の前記挿入穴(211,212,213,214,215,216)のそれぞれに挿入される複数の前記電力ケーブル(41)を互いに電気的に接続する、[1]乃至[8]のいずれか1項に記載の碍管ユニット(2)。
【0095】
[10]前記碍管(21)には、2つの前記挿入穴(211)が形成されており、前記2つの挿入穴(211)は、一方向の互いに反対側に向かって開口しており、前記接続電極(22)は、前記碍管(21)に埋設された埋設部(221)と、前記埋設部(221)から前記一方向の互いに反対側に突出するとともに2つの前記挿入穴(211)の内側にそれぞれ突出した2つの突出部(222)とを有する、[9]に記載の碍管ユニット(2)。
【0096】
[11]前記碍管(21)には、2つの前記挿入穴(212,213)が形成されており、前記2つの挿入穴(212,213)は、第1方向(D1)に開口した挿入穴(212)と、前記第1方向(D1)に交差する第2方向(D2)に開口した挿入穴(213)とを有し、前記接続電極(22)は、前記碍管(21)に埋設された埋設部(221)と、前記埋設部(221)から前記2つの挿入穴(212,213)のそれぞれの内側に突出した2つの突出部(222)と、を有する、[9]に記載の碍管ユニット(2)。
【0097】
[12]前記埋設部(221)は、前記第1方向(D1)の長さが前記第2方向(D2)の長さよりも長く、前記2つの突出部(222)は、前記埋設部(221)から前記第1方向(D1)に突出した突出部(222)と、前記埋設部(221)から前記第2方向(D2)に突出した突出部(222)とを有する、[11]に記載の碍管ユニット(2)。
【0098】
[13]前記第2方向(D2)の長さが、前記第1方向(D1)の長さよりも短い、[12]に記載の碍管ユニット(2)。
【0099】
[14]前記碍管(21)には、3つ以上の前記挿入穴(214,215,216)が形成されており、前記接続電極(22)は、前記碍管(21)に埋設された埋設部(221)と、前記埋設部(221)から前記3つ以上の挿入穴(214,215,216)のそれぞれの内側に突出した3つ以上の突出部(222)と、を有する、[9]に記載の碍管ユニット(2)。
【0100】
[15]前記埋設部(221)は、一方向に長尺に形成されている、[14]に記載の碍管ユニット(2)。
【0101】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、前述した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【0102】
例えば、前記各実施の形態においては、碍管ユニットが軸方向に対称に形成されており、碍管ユニットに一対の電力ケーブルをそれぞれ挿入するための一対の挿入穴を形成した例を示したが、これに限られない。例えば、電力ケーブルの終端が挿入される挿入穴を1つのみ有するような終端接続部として構成とすることもできる。この場合は、挿入穴が1つであるため、これに対応して第2電極、導電性塗料層等についても1つずつ設けられる。
【符号の説明】
【0103】
2…碍管ユニット
21…碍管
211,212,213,214,215,216…挿入穴
211a,212a,213a,214a,215a,216a…底面
211b…側面
211c…内側側面部
22…接続電極
221…埋設部
221a…張出部
221b…第1接触面
222…突出部
23…電界緩和電極
232b…第2接触面
24…導電性塗料層
41…電力ケーブル
6…導通部材
D1…第1方向
D2…第2方向
W1…第1接触面の幅

【要約】
【課題】軽量化が可能な碍管ユニットを提供する。
【解決手段】 電力ケーブルが挿入される挿入穴を有する碍管と、前記碍管内に埋設され、前記電力ケーブルと電気的に接続される接続電極と、前記挿入穴の内面に設けられ、前記接続電極と電気的に接続されるとともに、前記電力ケーブルを囲む導電性塗料層と、を備え、前記接続電極から前記挿入穴が開口する側に離れた位置において前記碍管内に埋設され、前記電力ケーブルの端部の周囲における電界を緩和するための電界緩和電極を更に備え、前記導電性塗料層は、前記接続電極と前記電界緩和電極とを電気的に接続している、碍管ユニット。
【選択図】図2

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13