(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】証明書の作成方法及びそのシステム
(51)【国際特許分類】
B42D 25/485 20140101AFI20221206BHJP
G06Q 50/26 20120101ALI20221206BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20221206BHJP
G06K 19/14 20060101ALI20221206BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
B42D25/485
G06Q50/26
G06Q50/04
G06K19/14
G06K19/07 230
(21)【出願番号】P 2019132340
(22)【出願日】2019-07-18
【審査請求日】2021-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】大澤 慈郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 大作
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-223533(JP,A)
【文献】特開2017-019245(JP,A)
【文献】特開2000-037976(JP,A)
【文献】特開2009-086890(JP,A)
【文献】特開2002-298088(JP,A)
【文献】特開平11-353376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
25/00-25/485
G06K 19/00-19/18
G06Q 10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
証明書の申請を受理すると、証明書の発給の申請を送信する証明書発給システムと、
前記証明書の発給の申請を受信すると、
申請者の個人情報のデータを一括して集約して登録し、集約された前記個人情報のデータを基に前記個人情報のデータを含まない証明書作成リストを作成して送信する証明書情報管理システムと、
前記証明書作成リストを受信すると、前記証明書の生産計画を作成し、送信する証明書生産管理システムと、
前記証明書の生産計画を受信すると、前記証明書の生産計画に含まれている証明書の作成に必要な
前記個人情報のデータを含む情報の要求を送信する証明書生産システムを備え、
前記証明書情報管理システムが前記情報の要求を受信すると、前記証明書生産システムに前記情報を送信し、前記証明書生産システムが
ブランク冊子に前記情報を印刷して証明書を作成することを特徴とする証明書の作成システム
であって、
前記証明書は旅券であり、前記旅券は、少なくとも個人情報を含む第1の情報を格納したICチップと、前記第1の情報とリンクした第2の情報が形成されるID頁とを有し、
前記証明書情報管理システムは、前記第1の情報と前記第2の情報とを含む前記情報を送信し、
前記ブランク冊子は、前記ICチップに前記第1の情報が格納されておらず、前記ID頁に前記第2の情報が形成されていない状態であることを特徴とする証明書の作成システム。
【請求項2】
前記証明書生産システムは、前記
ブランク冊子をあらかじめ保管していることを特徴とする請求項1に記載の証明書の作成システム。
【請求項3】
証明書発給システムにより、証明書の申請を受理すると、証明書の発給の申請を送信するステップと、
証明書情報管理システムにより、前記証明書の発給の申請を受信すると、
申請者の個人情報のデータを一括して集約して登録し、集約された前記個人情報のデータを基に前記個人情報のデータを含まない証明書作成リストを作成して送信するステップと、
証明書生産管理システムにより、前記証明書作成リストを受信すると、前記証明書の生産計画を作成し、送信するステップと、
証明書生産システムにより、前記証明書の生産計画を受信すると、前記証明書の生産計画に含まれている証明書の作成に必要な
前記個人情報のデータを含む情報の要求を送信するステップと、
前記証明書情報管理システムにより、前記情報の要求を受信すると、前記証明書生産システムに前記情報を送信するステップと、
前記証明書生産システムにより、
ブランク冊子に前記情報を印刷して証明書を作成するステップを備えることを特徴とする証明書の作成方法
であって、
前記証明書は旅券であり、前記旅券は、少なくとも個人情報を含む第1の情報を格納したICチップと、前記第1の情報とリンクした第2の情報が形成されるID頁とを有し、
前記証明書情報管理システムが送信する前記情報は、前記第1の情報と前記第2の情報とを含み、前記ブランク冊子は、前記ICチップに前記第1の情報が格納されておらず、
前記ID頁に前記第2の情報が形成されていない状態であることを特徴とする証明書の作成方法。
【請求項4】
前記
ブランク冊子は、前記証明書生産システムにおいてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項
3に記載の証明書の作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、証明書の作成方法及びそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
証明書の一例として例えば旅券を作成する際には、旅券申請者の個人情報を除いて、旅券番号等を含む情報が印刷された冊子(以下「ブランク冊子」と称する。)が用いられる。旅券以外の証明書を作成する際には、証明書番号等を含む情報が印刷された書類(以下「ブランク書類」と称する。)が用いられる。旅券の作成の際には、ブランク冊子が、あらかじめ各都道府県の旅券発給事務所に配布されて保管される。そして、旅券申請者の申請に基づいて、各旅券発給事務所でブランク冊子を用いて旅券を作成して発行する。このように従来は、ブランク冊子の保管、個人情報の印刷及び発行を分散処理で行っていた。
【0003】
従来の証明書の印刷方法として、例えば特開2000-037976号、特開2006-327036号、特開2013-069029号に記載されたものがあった。旅券の申請からその発行までの取引を迅速化し、かつ申請者の手間を省くことを課題として、旅券申請者が旅券発給事務所に出頭することなくネットワークにより旅券を発行するシステムが特許文献1に記載されている。また、本人の照合に必要な正しい生体情報が記録されていない状態で旅券が発行される事態を回避するために、複数の生体情報の間に所定の関係が成立すると判定された場合に、生体情報をICチップに書き込むと共に、旅券における個人情報の頁(以下「ID頁」と称する。)に印刷する証明書の印刷方法が特許文献2に記載されている。さらに、旅券冊子を作成する冊子作成機において、冊子に印刷した情報とICチップに書き込んだ情報とが整合しない場合に、書き込むべき情報を再度取得してICチップに再度書き込みを行う冊子作成機が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-037976号
【文献】特開2006-327036号
【文献】特開2013-069029号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の旅券の一般的な発給方式は、上述したように各都道府県の旅券発給事務所が代理発給する分散型処理によるものである。冊子の製造拠点において製造されたブランク冊子は、各都道府県に配布されて旅券発給事務所ごとに保管される。
旅券申請者は、原則として旅券発給事務所に出頭し、所定の書類を窓口に提出することにより旅券の申請を行う。旅券発給事務所において、旅券作成機により、ブランク冊子に旅券申請者の氏名、性別、生年月日、本籍地、顔写真等の個人情報がID頁に印刷され、表面上にラミネートが貼付されて旅券が完成する。その後、旅券申請者本人が旅券発給事務所に出頭し、本人確認の作業が行われて、完成した旅券が引き渡される。
【0006】
なお、旅券作成機により、旅券申請者の個人情報がICチップに書き込まれるが、この旅券申請者の個人情報とブランク冊子にあらかじめ印刷された旅券番号とが紐付けされて、発給官庁にある旅券発給管理システムに登録される。ここで、ID頁の表面上にラミネートを貼付することにより、顔写真を含む個人情報の改ざん防止を図っている。しかしながら、ID頁の基材は紙であることから、ラミネートを剥がして市販の紙に印刷することにより偽変造する危険性を完全に排除することはできていない。
【0007】
このような旅券の偽変造対策として、旅券所持者の個人情報を旅券のID頁に書き換え不能の状態で付与することができれば、盗難旅券の偽変造防止対策として有効である。
しかしながら、旅券に旅券所持者の個人情報を第三者が改ざん不能な形態で付与するためには、通常の印刷機とは異なる大規模で高価な偽造防止対策装置を必要とする。現状の分散型の発行システムでは、日本全国の都道府県に存在する58箇所の旅券発給事務所において、その事務所ごとにこのような装置を配備することはコストの増大を招き非効率的である。また、ブランク冊子を各都道府県の旅券事務所で管理する必要があるため、分散されたブランク冊子が盗難にあう危険性がある上に、個人情報を各都道府県の旅券事務所で管理しており、情報漏えいの危険性があった。
【0008】
さらに、国際的なテロや国境を越えた国際的犯罪を抑止するためには、旅券機能の更なる強化が必要とされてきている。
本発明は上記事情に鑑み、旅券の偽変造防止及び個人情報の漏えい防止をより有効に実現するとともに、コストの低減を図ることが可能な証明書の作成方法及びそのシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の証明書の作成方法は、証明書発給システムにより、証明書の申請を受理すると、証明書の発給の申請を送信するステップと、証明書情報管理システムにより、前記証明書の発給の申請を受信すると、証明書作成リストを作成して送信するステップと、証明書生産管理システムにより、前記証明書作成リストを受信すると、前記証明書の生産計画を作成し、送信するステップと、証明書生産システムにより、前記証明書の生産計画を受信すると、前記証明書の生産計画に含まれている証明書の作成に必要な情報の要求を送信するステップと、前記証明書情報管理システムにより、前記情報の要求を受信すると、前記証明書生産システムに前記情報を送信するステップと、前記証明書生産システムにより、ブランク書類に前記情報を印刷して証明書を作成するステップと、を備えることを特徴とする。前記ブランク書類は、前記証明書生産システムにおいてあらかじめ保管されているものであってもよい。
【0010】
前記証明書は旅券であり、前記旅券は、少なくとも個人情報を含む第1の情報を格納したICチップと、前記第1の情報とリンクした第2の情報が形成されるID頁とを有し、前記証明書情報管理システムが送信する前記情報は、前記第1の情報と前記第2の情報とを含み、前記ブランク書類は、前記ICチップに前記第1の情報が格納されておらず、前記ID頁に前記第2の情報が形成されていない状態であってもよい。
【0011】
本発明の証明書の作成システムは、証明書の申請を受理すると、証明書の発給の申請を送信する証明書発給システムと、前記証明書の発給の申請を受信すると、証明書作成リストを作成して送信する証明書情報管理システムと、前記証明書作成リストを受信すると、前記証明書の生産計画を作成し、送信する証明書生産管理システムと、前記証明書の生産計画を受信すると、前記証明書の生産計画に含まれている証明書の作成に必要な情報の要求を送信する証明書生産システムと、を備え、前記証明書情報管理システムが前記情報の要求を受信すると、前記証明書生産システムに前記情報を送信し、前記証明書生産システムがブランク書類に前記情報を印刷して証明書を作成することを特徴とする。前記証明書生産システムは、前記ブランク書類をあらかじめ保管してもよい。
【0012】
前記証明書は旅券であり、前記旅券は、少なくとも個人情報を含む第1の情報を格納したICチップと、前記第1の情報とリンクした第2の情報が形成されるID頁とを有し、
前記証明書情報管理システムは、前記第1の情報と前記第2の情報とを含む前記情報を送信し、前記ブランク書類は、前記ICチップに前記第1の情報が格納されておらず、前記ID頁に前記第2の情報が形成されていない状態であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の証明書の作成方法及びそのシステムによれば、より有効に偽変造及び個人情報の漏えいを防止できると共に、証明書の作成に要するコストの低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態による証明書の作成方法及びそのシステムを用いて作成することが可能な旅券の一例を示す説明図。
【
図2】同実施の形態による証明書の作成システムの構成を示すブロック図。
【
図3】同実施の形態による証明書の作成方法を工程別に示すフローチャート。
【
図4】同実施の形態による証明書の作成方法を工程別に示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態による証明書の作成方法及びそのシステムについて、図面を用いて説明する。本実施の形態では、従来のように各都道府県の旅券発給事務所ごとに分散して印刷・発行するのではなく、日本国内の特定の場所のみにおいて、ブランク冊子を保管し旅券申請者の個人情報を印刷して発行するという、集中型発行形態で旅券を作成する。
【0016】
本実施の形態による証明書の作成方法及びそのシステムの適用が可能な旅券の構成を
図1に示す。旅券10は基材の表面上に、主な構成要素として顔画像11、OVD12、文字情報13が形成されている。このうち、顔画像11、文字情報13は、旅券申請者の個人情報に相当する。顔画像11は、レーザビーム等により描画して形成することができる。OVD12は、DP作成機により印刷することができる。文字情報13は、オフセット印刷等により印刷することができる。なお、本実施の形態では後述するように、ID頁がポリカーボネイト等のプラスティックシートが複数積層されたカード型の基材により作成されている。
【0017】
本実施の形態による証明書の作成システムの一例として、旅券の作成を行うシステムの構成を
図2に示す。このシステムは、発給事務所20が有する発給システム、発給官庁30が有する情報管理システム、製造請負企業40が有する生産管理システム、製造請負企業40が設置した製造拠点40A、40Bが有する生産システム、国外に設置された事務所60が備える支援システムが、ネットワーク81により相互接続されて構成されている。発給事務所20は発給システムを有し、ネットワーク81を介して、端末22、サーバ23にデータが入出力され、作成機21により印刷処理が行われる。発給官庁30は情報管理システムを有し、ネットワーク81を介して、個人情報が送信され、端末38、サーバ37においてデータが入出力され、作成機39により必要な印刷処理が行われる。
【0018】
製造請負企業40は生産管理システムを有し、この生産管理システムは、ネットワーク81を介して管理端末45においてデータが入出力される。製造請負企業40には、国内の一箇所ないし複数の特定箇所に限られて製造拠点40A、40Bが設けられ、ここでは二箇所の製造拠点40A、40Bが設けられており、製造拠点40A、40Bは、生産システムを有する。生産システムは、ネットワークに接続された管理サーバ44,仕分端末47、仕分機48、作成サーバ46、大型作成機49を有し、ネットワークを介して、管理サーバ44、管理端末45、作成サーバ46においてデータが入出力される。管理サーバ44により、旅券の仕分けに必要なデータ処理を行う仕分端末47、旅券の仕分けを行う仕分機48の動作が制御され、作成サーバ46により、旅券の作成に必要なデータ処理が行われ、大型作成機49の旅券の作成処理が制御される。
事務所60、は国外に設置されており、事務所60が有する支援システムでは、ネットワーク81を介してサーバ61、端末62、作成機63においてデータが入出力される。
【0019】
このようなシステムを用いて旅券を作成する方法の手順について、
図3及び
図4のフローチャートを用いて説明する。各都道府県の発給事務所20において、旅券申請者により旅券申請書が提出され、申請が受理され(ステップS201)、発給システムにより受理番号が付与される(ステップS202)。旅券申請書に記載された個人情報のデータが旅券発給事務所20の旅券発給システムに入力され(ステップS203)、発給官庁の情報管理システムに送信され、このシステムにおいて個人情報のデータが一括して集約される。
送信されてきたデータが発給官庁30の情報管理システムに登録され(ステップS301)、発給官庁30の情報管理システムによりリストが作成される(ステップS303)。
製造請負企業40の旅券生産管理システムから発給官庁30の情報管理システムへリストの取得要求が送信される。この要求に応じて、発給官庁30の情報管理システムから製造請負企業40の生産管理システムへ、申請された旅券の作成依頼としてリストが送信される(ステップS304)。
【0020】
製造請負企業40の生産管理システムにより、リストが取得される(ステップS401)。そして、生産計画が作成され(ステップS402)、製造拠点40A及び40Bの生産システムへ送信される(ステップS403)。製造拠点40Aの旅券生産システムによりブランク冊子401が製造され、各ブランク冊子401に旅券番号が印刷されると共に穿孔により付与され、さらにICチップに旅券番号が書き込まれる。作成されたブランク冊子401は、製造拠点40Aから出庫されて製造拠点40A、40Bにおいてそれぞれ保管される。製造拠点40A、40Bの生産システムにおいて、製造請負企業40の生産管理システムから送信されてきた生産計画がそれぞれ受信される(ステップS501、S601)。
【0021】
製造拠点40A、40Bの生産システムにおいて、発給官庁30の情報管理システムが有する発給管理ファイル301に対し、リストに基づいて、旅券作成に必要な旅券申請者の個人情報の取得要求が行われる。発給官庁30の情報管理システムから、その日に製造される旅券の作成に必要な旅券申請者の個人情報が送信され、製造拠点40A、40Bの生産システムにおいてそれぞれ受信される(ステップS502、S602)。
【0022】
なお、発給官庁30の旅券情報管理システムから製造請負企業40の生産管理システムに旅券申請者の個人情報が送付されるのではなく、リストが製造拠点40A、40Bの生産システムに送付され、製造拠点40A、40Bから発給官庁30に旅券申請者の個人情報の送付が要求された後、旅券申請者の個人情報が、発給官庁30の情報管理システムから製造拠点40A、40Bの生産システムに送付されるという段階を経ている。これは、製造請負企業40では、製造計画を立案するためのリストが必要ではあるが、旅券申請者の個人情報までは必要としないので、個人情報の漏えいリスクを最小にするためにも製造請負企業40では個人情報を持たずに製造拠点40A、40Bのみで個人情報を保有するようにしたことによるものである。
【0023】
製造拠点40A、40Bの生産システムにおいて、ブランク冊子の旅券番号と、旅券申請書の氏名、性別、生年月日、顔画像、本籍地、国籍、有効期限を含む個人情報とが紐付けされる。製造拠点40A、40Bの生産システムにおいて、それぞれ帳票作業計画書501、601が作成されて帳票の出力が行われる(ステップS503、S603)。製造請負企業40の製造拠点40A、40Bの生産システムから発給官庁30の電子署名ファイル302へ、個人情報と紐付けされた旅券番号が送信される。発給官庁30の情報管理システムにおいて、旅券番号が電子署名によって暗号化され、電子署名ファイル302から、ICデータ・セキュリティデータが送信され、製造拠点40A、40Bの生産システムにおいてそれぞれ受信される。製造拠点40A、40Bにおいて、発給官庁30から送付された個人情報が、ブランク冊子のICチップ内に書き込まれる。ブランク冊子に個人情報が書き込まれると、旅券番号付与冊子となる。この旅券番号付与冊子のID頁には、個人情報が機械可読領域(machine readable zone 以下「MRZ」と称する。)として印刷される。
【0024】
さらに製造請負企業40の製造拠点40A、40Bにおいて、旅券番号付与冊子の旅券番号に基づき、ID頁に個人情報がレーザマーカにより印字される。より詳細には、ID頁がポリカーボネイト等のプラスティックシートが複数積層された基材から成るカード型頁として作成されている。レーザマーカによりレーザ光が照射され、複数積層されたプラスティックシートのうちの少なくとも1枚がレーザ光により発色することにより、旅券申請書の顔画像と発行年月日が書き換え不能な状態で、かつカード券面の上部垂直方向からは視認されない潜像としてカードの表面に彫刻された形態で付与される。さらに、旅券申請書の顔画像がカードの表面に、レーザ描写により階調画像として彫刻された形態で付与される(ステップS504、S604)。
【0025】
このように、旅券番号付与冊子の旅券番号に基づいて、個人情報が潜像としてID頁に形成されることにより、第三者の偽変造を有効に防止することができる。製造拠点40A、40Bの生産システムにより、完成した旅券冊子402の検査が行われる(ステップS505、S605)。具体的には、旅券冊子402の旅券番号に基づいて、ID頁に印刷された個人画像と、ICチップに書き込まれた個人情報とが整合するか否かが検査される。より詳細には、ID頁に印刷された顔画像が光学カメラにより撮像され、ICチップ内に書き込まれた顔画像情報とパターンマッチングされる。さらに、ID頁に印字された旅券番号、氏名、性別、生年月日、本籍地、国籍の文字が光学カメラにより撮像され、光学式文字読取装置(以下「OCR」と称する。)で文字に変換された後、ICチップ内の情報と整合するか否かの検査が行われる。整合しない場合は、後述する再作成手続へ移行する。引き続き、完成した旅券冊子402に対する品質検査が行われる。
【0026】
製造拠点40A、40Bの生産システムにおいて、検査が終了した旅券冊子402を旅券申請者に届けるため、旅券申請が行われた旅券発給事務所20のそれぞれに仕分けが行われる(ステップS506、S606)。帳票出荷リスト502、602が作成されて帳票出力が行われ(ステップS507、S607)、旅券発給事務所20のそれぞれ宛で旅券冊子402が梱包される。梱包された旅券冊子402の管理番号、数量、発送先がOCRで確認される。梱包された旅券冊子402が、製造拠点40A、40Bから出荷される(ステップS508、S608)。製造請負企業40の生産管理システムにおいて、出荷登録が行われ(ステップS404)、発給官庁30の情報管理システムに対して出荷情報の送信が行われる(ステップS405)。発給官庁30の情報管理システムにおいて、製造請負企業40の生産管理システムから送信されてきた出荷情報の登録が行われる(ステップS305)。
【0027】
梱包された旅券冊子402が、運送業者50によって集荷され(ステップS701)、帳票出荷リスト502、602と共に旅券発給事務所20に配送される(ステップS702)。
旅券発給事務所20において、配送されてきた旅券冊子402が受領され(ステップS205)、製造請負企業40の生産管理システムにおいて納品登録が行われる(ステップS406)。
旅券発給事務所20において、納品された旅券冊子402は旅券申請者に交付される(ステップS209)。旅券発給事務所20の発給システムから交付があったことが通知され、発給官庁30の情報管理システムにおいて登録が行われる(ステップS308)。旅券発給事務所20における検査で問題があった場合は、外務省30の旅券情報管理システムにおいて後述する再作成が行われる(ステップS307)。
【0028】
製造拠点40A、40Bにおいて、毀損のある旅券冊子の有無に関する情報が確認され(ステップS509、S609)、毀損のある旅券冊子が存在する場合は廃棄処理リスト503、603が作成されて廃棄処理が行われ(ステップS510、S610)、通知を受けた製造請負企業40において廃棄登録が行われる(ステップS407)。
【0029】
旅券冊子に印刷された個人画像とICチップに書き込まれた個人情報とが整合せず、再作成が行われる場合の手続について説明する。旅券冊子のICチップに書き込まれたデータを修正するため、作成機におけるIC再書込部によって再度書き込みが行われる。具体的には、IC再書込部により、発給官庁30の情報管理システムから旅券冊子のICチップに書き込む情報が取得される。そして、旅券冊子のICチップにこの情報が上書きされることにより、ICチップのデータが修正される。ICチップのデータの修正が終了すると、IC再書込部により、当該旅券冊子のICチップが閉塞されてIC書込禁止処理が行われる。
【0030】
上述したように、従来は日本全国の都道府県に存在する58箇所の旅券発給事務所において分散型で旅券の発行処理を行っていた。このため、盗難旅券の偽変造防止に有効な大規模の偽造防止対策装置を事務所ごとに配置することが困難であった。これに対し本実施の形態によれば、各旅券発給事務所から製造請負企業の製造拠点において一括して旅券を作成することにより、大規模な偽造防止対策装置の配置を実現可能とし、より有効に旅券の偽変造を防止することができると共に、ブランク冊子や個人情報を旅券発給事務所でなく限られた製造拠点のみにおいて管理することにより、ブランク冊子の盗難や個人情報の漏えいを有効に防止することができる。
【0031】
本発明の実施の形態について説明したが、上記実施の形態は例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0032】
例えば、上記実施の形態では証明書の一例として旅券を作成する方法及びシステムに関するものであるが、旅券には限定されず他の証明書の作成についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 旅券
11 顔画像
12 OVD
13 文字情報
20 旅券発給事務所
21、39、53 作成機
22、38、52、62、71 端末
23、37、61 サーバ
30 発給官庁
31、34、42 統合制御装置
33、51 業務情報システム
37 サーバ
40 製造請負企業
40A、40B 製造拠点
44 管理サーバ
45 管理端末
46 作成サーバ
47 仕分端末
48 仕分機
49 大型作成機
60 事務所
63 作成機
81 ネットワーク
301 発給管理ファイル
302 電子署名ファイル