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特許7188907対象物判定装置、プログラム、対象物判定方法、及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】対象物判定装置、プログラム、対象物判定方法、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G01N27/02 Z
G01N27/02 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018087572
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2019191124
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 博次
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/221901(WO,A1)
【文献】特開2003-004687(JP,A)
【文献】特開2006-275666(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0134889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信部により、対象物を介して、重畳した状態で同じ期間に受信された、第1の周波数の第1の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅並びに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅から、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の特徴を表す第1の特徴量と前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量とを計算する計算部であって、前記第1の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記振幅又は前記振幅に関連する物理量であり、前記第2の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記位相又は前記位相に関連する物理量である、計算部と、
前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いと、前記第1の特徴量の複数の違い及び前記第2の特徴量の複数の違いと前記対象物の複数の性質との関係とに基づいて、前記対象物の性質を判定する判定部と、
を備え、
前記計算部は、前記第1の特徴量が電力値である場合に、前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との差又は比を計算し、
前記計算部は、前記第1の特徴量が前記振幅である場合に、前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との比又は前記振幅の変化率を計算し、
前記計算部は、前記第1の信号の前記第2の特徴量と前記第2の信号の前記第2の特徴量との差を計算する
対象物判定装置。
【請求項2】
前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いは、それぞれ、前記電力値の差及び前記位相又は前記位相に関連する前記物理量の差であることを特徴とする請求項1に記載の対象物判定装置。
【請求項3】
前記第1の特徴量は、前記振幅及び前記電力値を包含し、前記第2の特徴量は、前記位相、前記位相の角度、及び前記位相に対応する時間差を包含する、
請求項1又は請求項2に記載の対象物判定装置。
【請求項4】
前記計算部は、
複数の第1の期間の各々内に受信した前記第1の信号及び前記第2の信号の各々から計算した前記第1の特徴量の平均値と前記第2の特徴量の平均値とを計算し、又は
前記複数の第1の期間の全体を第2の期間とし、前記第2の期間内に受信した前記第1の信号及び前記第2の信号の各々から前記第1の特徴量の平均値と前記第2の特徴量の平均値とを計算する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の対象物判定装置。
【請求項5】
受信部により、対象物を介して、重畳した状態で同じ期間に受信された、第1の周波数の第1の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅並びに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅から、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の特徴を表す第1の特徴量と前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量とを計算するステップと、
前記第1の特徴量が電力値である場合に前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との差又は比を計算し、前記第1の特徴量が前記振幅である場合に前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との比又は前記第1の特徴量の変化率を計算するステップと、
前記第1の信号の前記第2の特徴量と前記第2の信号の前記第2の特徴量との差を計算するステップと
前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いと、前記第1の特徴量の複数の違い及び前記第2の特徴量の複数の違いと前記対象物の複数の性質との関係とに基づいて、前記対象物の性質を判定するステップと、
を備え、
前記第1の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記振幅又は前記振幅に関連する物理量であり、前記第2の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記位相又は前記位相に関連する物理量である、
対象物判定方法。
【請求項6】
コンピュータに、請求項5に記載の対象物判定方法を実行させるためのプログラム。
【請求項7】
処理装置に請求項5に記載の対象物判定方法を実行させるためのプログラムを記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記プログラムを実行する処理装置と、
を備える対象物判定装置。
【請求項8】
受信部により、対象物を介して、重畳した状態で同じ期間に受信された、第1の周波数の第1の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅並びに前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2の信号をDFT処理した信号の位相及び振幅から、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の特徴を表す第1の特徴量と前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量とを計算する計算部であって、前記第1の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記振幅又は前記振幅に関連する物理量であり、前記第2の特徴量は、前記第1の信号及び前記第2の信号の前記位相又は前記位相に関連する物理量である、計算部と、
前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いと、前記第1の特徴量の複数の違い及び前記第2の特徴量の複数の違いと前記対象物の複数の性質との関係とに基づいて、前記対象物の性質を判定する判定部と、
を備え、
前記計算部は、前記第1の特徴量が電力値である場合に、前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との差又は比を計算し、
前記計算部は、前記第1の特徴量が前記振幅である場合に、前記第1の信号の前記第1の特徴量と前記第2の信号の前記第1の特徴量との比又は前記振幅の変化率を計算し、
前記計算部は、前記第1の信号の前記第2の特徴量と前記第2の信号の前記第2の特徴量との差を計算する
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物判定装置、プログラム、及び対象物判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、土の性質としてのインピーダンスの計測は、土の水分量の測定、土のイオン濃度の測定に用いられている。従来の第1の土地判定装置は、土の中に電極を入れ、一方の電極から所望の周波数の信号を送信し、もう一方の電極で、送信された信号(所望の周波数)を受信し、受信した信号に基づいて土のインピーダンスを計測している。
【0003】
土のインピーダンスも、抵抗成分に加え、容量成分/誘導成分が含まれ、複素であらわされる値となる。複素の値を取得する際、上記信号の送信側の所望の周波数の信号の位相タイミングを、受信側が知らないと、受信側の位相が送信側に対しどのくらい回転(位相遅れ)しているのかが分からない。そのため、従来のインピーダンス計測装置では、受信側には送信側から、送信側のタイミング情報もしくはタイミングを受信側が知り得るように、信号を別途送信している。
【0004】
また、従来の第2の土地判定装置は、位相情報を用いず、予め送信側がどのレベルで送信したかを受信側が何らかの方法で知ることで、測定した周波数における土の減衰特性を計測している。
【0005】
このように、従来の第1の土地判定装置及び第2の土地判定装置では、送信側のタイミング情報もしくはタイミングを知り得るなんらかの信号、及び信号のレベルを示す信号が必要になる。そのため、送信側と受信側とが分離して、送信側と受信側とのそれぞれに接続された2つのセンサ間にて土地の性質を計測する場合、送信側の位相に関わるタイミング信号もしくは送信側のレベルを示す信号を、有線もしくは無線にて送信する仕組みが必要になる。
【0006】
例えば、従来、図10(A)や図10(B)に示す構成の土地判定装置/システムが提案されている。これらの土地判定装置/システムでは、受信側に含まれるDFT206が、送信された信号の位相と振幅をベクトルに変換した結果を出力するが、上記のように送信側からタイミング信号が入力される。
【0007】
なお、関連する特許文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-200193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、送信側の位相に関わるタイミング信号もしくは送信側のレベルを示す信号を受信側に送信する仕組みとして、有線の場合では、線材で送信側と受信側との間をつなぐこととなり、送信側と受信側との各々の装置の設置の自由度を奪うこと、屋外設置時に落下物や到来物による断線を避けること、落雷の誘導を防ぐ何らかの仕組みが必要であることなど、多くの制約が生じ設置コストやメンテナンスコストが増大する。計測対象の土壌に配線ケーブルという土壌にとって異物が増えるため、ケーブル敷設による計測結果への影響も考慮しなければならなくなる。これにより本来計測したい結果を得られないリスクも生じる。
【0010】
また、無線による仕組みでは、ケーブルを排することも可能ではあるが、無線通信による伝送遅延や無線通信帯域の制約からくるタイミング情報の時間精度の確保のためには、安価な無線装置では実現が困難となる。
【0011】
本開示の技術は、上記した点に鑑みてなされたものであり、第1の信号及び第2の信号の送信のタイミングを示す信号を受信せずに、対象物の性質を判定することが可能な対象物判定装置、プログラム、及び対象物判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の技術の第1の態様の対象物判定装置は、受信部により、対象物を介して、重畳した状態又は別々に受信された、第1の周波数の第1の信号及び前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2の信号から、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の特徴を表す第1の特徴量と前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量とを計算する計算部と、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いと、前記第1の特徴量の複数の違い及び前記第2の特徴量の複数の違いと対象物の複数の性質との関係とに基づいて、前記対象物の性質を判定する判定部と、を備える。
【0013】
本開示の技術の第2の態様の対象物判定方法は、受信部により、対象物を介して、重畳した状態又は別々に受信された、第1の周波数の第1の信号及び前記第1の周波数とは異なる第2の周波数の第2の信号から、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の特徴を表す第1の特徴量と前記第1の特徴量とは異なる第2の特徴量とを計算するステップと、前記第1の信号及び前記第2の信号の各々の前記第1の特徴量の違い及び前記第2の特徴量の違いと、前記第1の特徴量の複数の違い及び前記第2の特徴量の複数の違いと対象物の複数の性質との関係とに基づいて、前記対象物の性質を判定するステップと、を備える。
【0014】
本開示の技術の第3の態様のプログラムは、コンピュータに、請求項5に記載の対象物判定方法を実行させる。
【0015】
本開示の技術の第4の態様の対象物判定装置は、処理装置に請求項5に記載の対象物判定方法を実行させるためのプログラムを記憶した記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記プログラムを実行する処理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、第1の信号及び第2の信号の送信のタイミングを示す信号を受信せずに、対象物の性質を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施の形態の土地性質判定システムのブロック図である。
図2】第1の性質L1の土と第2の性質L2の土地を介して送信された第1の周波数f1の信号と第2の周波数f2の信号がそれぞれ第1のDFT処理及び第2のDFT処理された場合の振幅A11~A22及び位相θ11~θ22の関係をベクトルにより示す図である。
図3】信号の周波数と当該信号の振幅を二乗して得られる電力との関係を示すグラフである。
図4】信号の周波数と当該信号の位相の角度との関係を示すグラフである。
図5】2つの異なる周波数の信号の電力(振幅の二乗)の差(ΔP1、ΔP2)と、2つの異なる周波数の信号の位相の角度の差(Δθ1、Δθ2)とに応じて、土の性質(L1、L2)が特定され記憶されているテーブルを示す図である。
図6】第2の実施の形態の土地性質判定システムのブロック図である。
図7A】コンピュータ110CのCPU122の機能部を示す図である。
図7B】コンピュータ220CのCPU222の機能部を示す図である。
図8】送信装置100Bのコンピュータ110Cが正弦波を生成する処理プログラムのフローチャートである。
図9図9には、測定装置200Bによる土の性質を判定する判定処理プログラムのフローチャートである。
図10】(A)は、土地判定装置のブロック図であり、(B)は、土地判定システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、開示の技術の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1には、土地性質判定システムが示されている。図1に示すように、土地性質判定システムは、送信装置100Aと、測定装置200Aと、を備えている。送信装置100Aは、生成装置110と、電極108と、を備えている。測定装置200Aは、電極202と、判定装置220と、を備えている。なお、電極108と電極202とは、一定距離(例えば、数十センチ~数メートル)離れ、電極108と電極202との間に土が存在する。生成装置110と判定装置220とは、半導体装置で構成されている。
判定装置220は、本開示の技術の対象物判定装置及び半導体装置の一例である。
【0020】
生成装置110は、正弦波生成回路102Aと、正弦波生成回路102Bとを備えている。正弦波生成回路102Aは、第1の周波数f1の第1の正弦波に対応するデジタル信号(以下、「第1の正弦波信号」という)を生成する。正弦波生成回路102Bは、第2の周波数f2の第2の正弦波に対応するデジタル信号(以下、「第2の正弦波信号」という)を生成する。第1の実施の形態では、第2の周波数f2は、第1の周波数f1のN倍である。正弦波生成回路102A及び正弦波生成回路102Bは、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号を、選択的に切り替えて出力し、又は加算して同時に出力する切替加算回路104に接続されている。なお、第1の実施の形態では、切替加算回路104は、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号を加算し、加算信号として出力する。切替加算回路104は、加算信号をアナログ変換して、電気信号として出力するDAC(Digital to Analog Converter)106に接続されている。DAC106は電極108に接続されている。電極108は、DAC106からの信号(アナログ電気信号)を土に送信する。
【0021】
測定装置200Aは、電極108により送信された信号を、土を介して受信する電極202と、電極202により受信された信号を処理して、土の性質を判定する判定装置220とを備えている。判定装置220は、電極202に接続され、電極202により受信された信号をデジタル変換するADC(Analog-to-Digital Converter)204を備えている。ADC204には、ADC204からの信号を離散フーリエ変換し、第1の正弦波(周波数f1)に対応する振幅及び位相を出力するDFT(Discrete Fourier Transform)206Aと、ADC204からの信号を離散フーリエ変換し、第2の正弦波(周波数f2)に対応する振幅及び位相を出力するDFT206Bとが接続されている。
【0022】
DFT206Aには、電力変換回路208Aと、角度変換回路210Aとが接続されている。DFT206Bには、電力変換回路208Bと、角度変換回路210Bとが接続されている。電力変換回路208Aは、DFT206Aからの振幅を二乗することにより、電力に変換する。角度変換回路210Aは、DFT206Aからの位相を角度に変換する。電力変換回路208Bは、DFT206Bからの振幅を二乗することにより、電力に変換する。角度変換回路210Bは、DFT206Bからの位相を角度に変換する。
【0023】
電力変換回路208A及び電力変換回路208Bは、電力差計算回路212に接続されている。電力差計算回路212は、電力変換回路208A及び電力変換回路208Bの各々からの電力差を計算する。角度変換回路210A及び角度変換回路210Bは、角度差計算回路214に接続されている。角度差計算回路214は、角度変換回路210A及び角度変換回路210Bの各々からの角度差を計算する。
【0024】
電力差計算回路212には、電力差計算回路212により計算された電力差を平均化する平均化回路216Aに接続されている。角度差計算回路214は、角度差計算回路214により計算された角度差を平均化する平均化回路216Bに接続されている。平均化回路216A及び平均化回路216Bは、判定回路218に接続されている。判定回路218は、詳細には後述する電力差及び角度差と土の性質との関係を示すテーブル(図5も参照)を備えている。
【0025】
判定回路218は、平均化回路216A及び平均化回路216Bにより平均化された電力差及び角度差と、テーブルにある電力差及び角度差と土の性質との関係とに基づいて、電極108と電極202との間にある土の性質を判定する。土の性質としては、第1の実施の形態では、例えば、土のpHと土の単位体積当たりの水分量とがある。なお、土の性質はこれらのpHや水分量に限定されず、pHや水分量に代えて又はpHや水分量と共に、例えば、イオン濃度を、土の性質として判定してもよい。
【0026】
DFT206A~平均化回路216Bは、本開示の技術の計算部の一例である。判定回路は、本開示の技術の判定部の一例である。
【0027】
次に、第1の実施の形態の作用を説明する。
【0028】
まず、送信装置100Aの作用を説明する。生成装置110の正弦波生成回路102Aは、第1の正弦波信号を生成し、正弦波生成回路102Bは、第2の正弦波信号を生成する。正弦波生成回路102Aが第1の正弦波信号を生成開始するタイミングと、正弦波生成回路102Bが第2の正弦波信号を生成開始するタイミングは同じである。第1の正弦波信号の振幅と第2の正弦波信号の振幅とは同じである。切替加算回路104は、正弦波生成回路102A及び正弦波生成回路102Bから出力された第1の正弦波及び第2の正弦波を加算し、加算信号として出力する。DAC106は、切替加算回路104からの加算信号をアナログ信号に変換して、電極108に出力する。電極108は、DAC106から出力された信号を、土に送信する。
【0029】
次に、測定装置200Aの作用を説明する。上記のように土に送信された信号は、測定装置200Aの電極202により受信され、電極202は、受信した信号をADC204に出力する。ADC204は、受信した信号をデジタル変換し、信号を、DFT206A及びDFT206Bに出力する。
【0030】
DFT206A及びDFT206Bは、一定期間に受信された信号をDFT変換する。DFT206A及びDFT206BでDFT変換するための信号の個数は、DFT206A及びDFT206Bの各々で異なるが、DFT206A及びDFT206Bは、同じ一定期間の間に受信された信号を用いる。この一定期間は、第1の周波数f1の第1の正弦波信号の波長により定まる期間と第2の周波数f2の第2の正弦波信号の波長により定まる期間との最小公倍数としている。このように、DFT206A及びDFT206Bは、同じ一定期間の間に受信された信号を用いるとしているのは、外乱ノイズの影響を小さくするためのである。例えば、DFT206Aは、第1の期間の間に受信された信号を用い、DFT206Bは、第1の期間より長い第2の期間の間に受信された信号を用いるとする。第1の期間経過後、第2の期間経過前に、外乱ノイズが発生すると、DFT206Bにより得られる振幅及び位相にのみ外乱ノイズが影響するからである。
【0031】
また、DFT206A及びDFT206Bが、同じ一定期間の間に受信された信号を用いるようにしているのは、ノイズの影響を受けにくくするためである。より詳細に説明すると、例えば、DFT206Aが、ある第1の所定期間の間に受信された信号を用い、DFT206Bが、当該第1の所定時間に続く第2の所定時間の間に受信された信号を用いる場合を想定してみる。これを、DFT206A及びDFT206Bが共に同じ当該第1の所定時間の間に受信された信号を用いる場合と比較すると、上記想定の場合のほうが、第2の所定時間の分、時間が長くなり、その分、外乱ノイズの影響を受ける確率が高くなる。しかし、本実施の形態では、DFT206A及びDFT206Bは、同じ一定期間の間に受信された信号を用いるようにしているので、上記想定の場合より、ノイズの影響を受けにくくすることができる。
【0032】
また、詳細には後述するが、本実施の形態では、DFT206A及びDFT206Bの各々からの振幅を変換した電力の差及びDFT206A及びDFT206Bの各々からの位相の角度の差を用いている。DFT206A及びDFT206Bが同じ一定期間の間に受信された信号を用いるので、仮に、当該同じ一定期間に外乱ノイズがあったとしても、同様にノイズが影響する各電力の差及び各角度の差を計算するので、ノイズの影響を小さくすることができる。
【0033】
DFT206Aは、ADC204からの信号が所定個数蓄えられる毎に、所定個数の信号を用いて、第1のDFT処理をして、第1の周波数f1の第1の正弦波信号の振幅と位相とを示す信号をそれぞれ、電力変換回路208A及び角度変換回路210Aに出力する。DFT206Bは、ADC204からの信号が所定個数蓄えられる毎に、所定個数の信号を用いて、第2のDFT処理をして、第2の周波数f2の第2の正弦波信号の振幅と位相とを示す信号をそれぞれ、電力変換回路208B及び角度変換回路210Bに出力する。
なお、第1のDFT処理及び第2のDFT処理の各々は、DFT変換と振幅及び位相を求める処理とを含む。
【0034】
上記のように生成装置110の正弦波生成回路102Aが第1の正弦波信号を生成開始するタイミングと、正弦波生成回路102Bが第2の正弦波信号を生成開始するタイミングは同じである。DFT206A及びDFT206Bの各々の動作タイミングは同じである。
【0035】
電力変換回路208A及び電力変換回路208Bは、受信した振幅の二乗を計算することにより、振幅を電力値に変換する。角度変換回路210A及び角度変換回路210Bは、受信した位相を角度に変換する。
【0036】
電力差計算回路212は、電力変換回路208Aからの電力値と電力変換回路208Bからの電力値との差を計算する。角度差計算回路214は、角度変換回路210Aからの角度と角度変換回路210Bからの角度との差を計算する。
【0037】
上記のように、DFT206A及びDFT206Bは、ADC204からの信号が所定個数蓄えられる毎に、振幅と位相とを示す信号を、電力変換回路208A、208B及び角度変換回路210A、210Bに出力する。よって、DFT206~角度差計算回路214は、DFT206A及びDFT206Bで信号が所定個数蓄えられる毎、即ち、所定時間毎に上記と同様に動作する。平均化回路216Aには、所定時間毎に、電力差計算回路212から電力値の差が入力され、平均化回路216Bには、所定時間毎に、角度差計算回路214からの角度の差が入力される。平均化回路216Aは、電力差計算回路212からの電力値の差が一定個数に到達したところで、電力値の差の平均値を計算する。平均化回路216Bは、角度差計算回路214からの角度の差が一定個数に到達したところで、角度の差の平均値を計算する。
【0038】
判定回路218は、平均化回路216Aからの電力値の差の平均値と平均化回路216Bからの角度の差の平均値とに基づいて、土の性質(pH及び水分量)を判定する。
【0039】
次に、電力値の差と角度の差とに基づいて、土の性質(pH及び水分量)が判定できる原理を説明する。
【0040】
図2には、第1の性質L1の土と第2の性質L2の土地を介して送信された第1の周波数f1の信号と第2の周波数f2の信号がそれぞれ第1のDFT処理及び第2のDFT処理された場合の振幅A11~A22及び位相θ11~θ22の関係がベクトルにより示されている。
図2に示すように、振幅A11~A22及び位相θ11~θ22は、実数+j×虚数のベクトルで定まる。第1のDFT処理及び第2のDFT処理の各DFT変換により、ベクトル(実数、虚数)が求められる。実数は、振幅×COS(位相)、虚数は、振幅×SIN(位相)であり、電力は、実数+虚数であり、振幅は、√(電力)=√(実数+虚数)である。このように振幅は、√(実数+虚数)により求められる。
また、上記のように、実数=振幅×COS(位相)であるので、COS(位相)=(実数/振幅)である。よって、位相は、ACOS(実数/振幅)である。また、虚数=振幅×SIN(位相)であるので、SIN(位相)=(虚数/振幅)である。よって、位相は、ASIN(虚数/振幅)でもある。このように位相は、ACOS(実数/振幅)又はASIN(虚数/振幅)により求められる。位相θ11~θ22は、送信装置100Aから信号が送信されるタイミングを、実数軸を基準にして表される。
このようにDFTにより得られたベクトル(実数、虚数)から振幅A11~A22及び位相θ11~θ22が求まる。本実施の形態の第1のDFT処理及び第2のDFT処理では、DFTにより得られたベクトル(実数、虚数)から更に振幅及び位相を求めている。
【0041】
電極108と電極202との間の土が第1の性質L1の場合、第1の周波数f1の信号について第1のDFT処理を実行すると、振幅A11、位相θ11が出力され、第2の周波数f2の電気信号について第2のDFT処理を実行すると、振幅A21、位相θ21が出力される。電極108と電極202との間の土が第2のL2の場合、第1のDFT処理により、振幅A12、位相θ12が出力され、第2のDFT処理により、振幅A22、位相θ22が出力される。
【0042】
このように、同じ周波数であり且つ同じDFT処理を実行しても振幅及び位相の角度が、(A11,A12)、(A21,A22)、(θ11,θ12)、(θ21,θ22)のように、異なるのは、土の性質が異なるからである。
【0043】
図3には、信号の周波数と当該信号の振幅を二乗して得られる電力との関係が示されている。図3に示すように、振幅を二乗して得られる電力値は、周波数と、電極108と電極202との間の土の性質L1、L2とによって異なる。なお、図3の縦軸は対数をとった値である。図4には、信号の周波数と当該信号の位相の角度との関係が示されている。図4に示すように、信号の位相の角度は、周波数と、電極108と電極202との間の土の性質L1、L2とによって異なる。
【0044】
逆に、2つの異なる周波数f1、f2の信号の電力(振幅の二乗)の差、ΔP1(P11-P21)、ΔP2(P12-P22)は、土の性質L1、L2により異なる。また、2つの異なる周波数f1、f2の信号の位相の角度の差、Δθ1(θ11-θ21)、Δθ2(θ12-θ22)は、土の性質L1、L2により異なる。
【0045】
つまり、土の性質が異なると、2つの異なる周波数f1、f2の信号の電力(振幅の二乗)の差及び位相の角度の差が異なるので、2つの異なる周波数f1、f2の信号の電力(振幅の二乗)の差及び位相の角度の差が定まると、土の性質が特定される。図5には、2つの異なる周波数の信号の電力(振幅の二乗)の差(ΔP1、ΔP2)と、2つの異なる周波数の信号の位相の角度の差(Δθ1、Δθ2)とに応じて、土の性質(L1、L2)が特定され記憶されているテーブルが示されている。
【0046】
このように、2つの異なる周波数の信号の電力値(振幅の二乗)の差(ΔP1、ΔP2)及び2つの異なる周波数の信号の位相の角度の差(Δθ1、Δθ2)と、テーブルとに基づいて、電極108と電極202との間の土の性質を判定することができる。
【0047】
なお、求められた電力値の差や角度の差が、テーブルに規定された値に該当しない場合には、最も近い値を選択し、選択した値に応じて土地の性質を判定する。
【0048】
以上説明しように第1の実施の形態では、土地の性質を判定することができる。
【0049】
土地の性質として上記水分量(単位体積当たりの)を判定する場合、電極108と電極202とを山の崖等に埋めると、判定された水分量から、崖崩れの発生の可能性を判定することができ、第1の実施の形態は、判定された水分量が閾値を超えると警報をする等をする土砂災害の予防システムとして利用することができる。また、電極108と電極202とを農作物の種等が埋められている場所に埋めると、種等の回りの土地の水分量が分かり、水分量が閾値を下回った場合、噴水器を作動させるなどの植物育成システムとして利用することができる。
【0050】
また、DFT206Aは、第1のDFT処理をして、第1の周波数f1の第1の正弦波信号の振幅と位相とを出力し、DFT206Bは、第2のDFT処理をして、第2の周波数f2の第2の正弦波信号の振幅と位相とを出力する。このようにDFT206A、206Bにより、第1の正弦波信号の振幅と第2に正弦波信号の振幅とが求められるので、生成装置110と判定装置220との間で、送信信号のレベルの情報の信号を送受信する必要がない。また、送信装置100Aから信号が送信される時からの、信号が測定装置200Aで受信される時の時間差(タイミング遅れ)は、位相差に対応する。上記のようにDFT206A、206Bにより、第1の正弦波信号の位相と第2に正弦波信号の位相とが求められるので、第1の正弦波信号及び第2に正弦波信号の各々の測定装置200Aで受信される時の時間差(タイミング遅れ)も分かる。よって、生成装置110と判定装置220との間で、生成装置110が生成する信号の位相に関わるタイミング信号を送受信する必要がない。以上より、第1の実施の形態では、生成装置110が生成する信号の位相に関わるタイミング信号や送信信号のレベルの情報の信号を送受信する通信経路が無くとも、土の性質を判定することができる。
【0051】
ところで、第1の正弦波信号に対応する第1の送信信号と、第2の正弦波信号に対応する第2の送信信号とを時間的にずれして別々に送受信し、第1の送信信号又は第2の送信信号に外来ノイズが影響すると、電力差及び位相差に大きな誤差が生ずる。しかし、第1に実施の形態では、送信装置100Aの切替加算回路104は、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号を加算し、加算信号として出力する。加算信号に外来ノイズが影響しても、電力差及び位相差に生ずる誤差は比較的小さい。よって、第1の実施の形態では、送受信する信号に外来ノイズが影響しても、土の性質をより精度よく判定することができる。
【0052】
また、送信装置100Aの切替加算回路104は、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号を加算し、加算信号として出力するので、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号間のタイミング制御等を不要とすることができる。
【0053】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施の形態を説明する。図6には、土地性質判定システムが示されている。送信測定システムは、送信装置100Bと測定装置200Bとを備える。送信装置100Bは、電極108、DAC106、記憶装置132、及びコンピュータ110Cを備えている。コンピュータ110Cは、CPU122、ROM124、RAM126、及び入出力(I/O)ポート128が、バス130により相互に接続されて、構成されている。I/O128には、記憶装置132とDAC106とが接続され、DAC106には電極108が接続されている。記憶装置132には、後述する正弦波を生成する処理プログラムと、第1の周波数f1の正弦波信号及び第2の周波数f2の正弦波信号の各々の波形の情報とが記憶されている。
【0054】
測定装置200Bは、電極202、ADC204、記憶装置206、及びコンピュータ220Cを備えている。コンピュータ220Cは、CPU222、ROM224、RAM226、及び入出力(I/O)ポート228が、バス230により相互に接続されて、構成されている。入出力(I/O)ポート228には、ADC204と記憶装置206とが接続されている。ADC204には電極202が接続されている。記憶装置206には、後述する判定処理プログラムが記憶されている。
【0055】
コンピュータ220Cは、本開示の技術の対象物判定装置の一例である。判定処理プログラムは、本開示の技術のプログラムの一例である。
【0056】
図7Aには、コンピュータ110CのCPU122の機能部が示されている。CPU122は、処理部152、読み出し部154、加算部156、出力部158を備えている。
【0057】
図7Bは、コンピュータ220CのCPU222の機能部が示されている。CPU222の機能部は、処理部252、DFT処理部254、電力変換部256、角度変換部258、電力差計算部260、角度差計算部262、平均化部264、判定部266を備えている。
【0058】
図8には、送信装置100Bのコンピュータ110Cが正弦波を生成する処理プログラムのフローチャートが示されている。なお、図8に示す正弦波を生成する処理プログラムによる処理内容は、第1の実施の形態における生成装置110の生成内容と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0059】
ステップ162で、処理部152は、本処理プログラムがスタートしてから又は後述する信号を出力してから所定期間経過したか否かを判断する。所定期間経過していないと判断した場合には、所定期間経過するまで待機する。
【0060】
所定期間が経過したと判断した場合には、ステップ164で、読み出し部154は、記憶装置132から、当該タイミングに対応する第1の正弦波の信号の値を読み出し、ステップ166で、読み出し部154は、記憶装置132から、当該タイミングに対応する第2の正弦波の信号の値を読み出す。
【0061】
ステップ168で、加算部156は、ステップ164、166で読み出された各値を加算し、ステップ170で、出力部158は、加算された値を、DAC106に出力する。DAC106は、加算された信号をアナログ変換して電極108に出力する。電極108は信号を土に出力(送信)する。
【0062】
ステップ172で、処理部152は、図示しない入力部から終了指示が入力されたか否かを判断する。終了指示が入力されていなければ、ステップ162に戻って、以上の処理(ステップ162~172)が実行される。終了指示が入力されると、正弦波を生成する処理プログラムの実行が終了する。
【0063】
上記のように電極108から出力された信号は、土を介して、測定装置200Bの電極202により受信される。ADC204は、電極202が信号を受信する毎に、受信された信号がデジタル変換されてコンピュータ220Cに入力される。
【0064】
図9には、測定装置200Bによる土の性質を判定する判定処理プログラムのフローチャートが示されている。判定処理プログラムが実行されることにより実行される判定処理は、本開示の技術の対象物判定方法の一例である。図9に示す判定処理プログラムによる処理内容は、第1の実施の形態における判定装置220のDFT~判定の内容と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0065】
ステップ270で、処理部252は、電力差及び角度差を計算した回数を示す変数nを0にセットし、ステップ272で、処理部252は、変数nを1インクリメントする。
【0066】
ステップ274で、処理部252は、ADC204によりコンピュータ220Cに入力された信号が所定個数蓄えられたか否かを判断する。所定個数の信号が蓄えられていなければ、所定個数の信号が蓄えられるまで、ステップ274の判断が実行される。
【0067】
所定個数の信号が蓄えられた場合には、ステップステップ276で、DFT処理部254は、所定個数の信号について第1のDFT処理を実行し、第1の周波数f1の第1の正弦波信号の振幅及び位相を求める。次のステップ278で、所定個数の信号について第2のDFT処理を実行し、第2の周波数f2の第2の正弦波信号の振幅及び位相を求める。
【0068】
ステップ280で、電力変換部256は、第1の周波数f1の信号の振幅を電力値に変換し、ステップ282で、角度変換部258は、第1の周波数f1の信号の位相を角度に変換する。ステップ284で、電力変換部256は、第2の周波数f2の信号の振幅を電力値に変換し、ステップ286で、角度変換部258は、第2の周波数f2の信号の位相を角度に変換する。ステップ288で、電力差計算部260は、第1の周波数f1の信号の振幅が変換された電力値と、第2の周波数f2の信号の振幅が変換された電力値との差を計算する。ステップ290で、角度差計算部262は、第1の周波数f1の信号の位相が変換された角度と第2の周波数f2の信号の位相が変換された角度との差を計算する。
【0069】
ステップ292で、処理部252は、変数nが総数Nに等しいか否かを判断する。変数nが総数に等しくないと判断された場合には、判定処理はステップ272に戻る。変数nが総数Nに等しいと判断した場合には、ステップ294で、平均化部264は、電力差を平均化し、296で、平均化部264は、角度差を平均化する。
【0070】
ステップ298で、判定部266は、電力差及び角度差と、図5に示したテーブルとから、土の性質を判定する。
【0071】
以上説明しように第2の実施の形態では、土地の性質を判定することができる。
【0072】
第2の実施の形態では、土砂災害の予防システムや植物育成システムとして利用することができる。
【0073】
第2の実施の形態では、送信装置100Bと測定装置200Bとの間に、送信装置100Bが生成する信号の位相に関わるタイミング信号や送信信号のレベルの情報の信号を送受信する通信経路が無くとも、土の性質を特定することができる。
【0074】
第2の実施の形態では、送受信する信号に外来ノイズが影響しても、土の性質をより精度よく判定することができる。
【0075】
[変形例]
次に、本開示の技術の変形例を説明する。
<第1の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、電力値の差や位相の差を用いているが、例えば、電力値の比や位相の比を用いてもよい。
【0076】
<第2の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、電力値(振幅)や位相を用いているが、例えば、振幅の変化率や、位相に対応する時間差を用いてもよい。
【0077】
<第3の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、第1の正弦波信号を生成開始するタイミングと第2の正弦波信号を生成開始するタイミングは同じであり、各DFTのタイミングも同じであるが、それぞれ異なるようにしてもよい。
【0078】
<第4の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、第1の正弦波信号の振幅と第2の正弦波信号の振幅とは同じであるが、異なるようにしてもよい。この場合、電力差を計算する際に、異なる振幅の大きさに基づいて電力値を調整してから、電力値の差を計算する。
【0079】
<第5の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、電力値の差及び角度差の各々を、誤差を少なくするため、平均化している。即ち、振幅及び位相を、各DFTのため一定期間の間に受信された信号を用いて、取得し、各々一定個の平均を求めているが、各DFTでは、一定期間×一定個の期間の間に受信された信号を用いて、振幅及び位相をそれぞれ1つ取得するようにしてもよい。この場合、第1の実施の形態では、平均化回路216A、216を省略し、第2の実施の形態におけるステップ270、272、292~296の処理が省略される。
【0080】
<第6の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、性質を判定する対象を土としているが、別の対象でもよい。例えば、皮膚等でもよい。
【0081】
<第7の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、振幅を電力値に変換しているが、これは装置に起因する抵抗が大きい場合、振幅の値が小さくなるが、振幅を二乗にして電力値にすることにより、誤差の影響を少なくすることができる。第7の変形例としては、電力に変換せず、振幅を用いてもよい。
【0082】
<第8の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、第1の正弦波信号及び第2の正弦波信号を用いているが、これらに代えて、正弦波信号ではなく、各々異なる固有の周波数成分が高い割合で含まれた信号を用いてもよい。
【0083】
<第9の変形例>
第1の実施の形態及び第2の実施の形態では、第1の周波数f1の信号と第2の周波数f2の信号とを用いて土の性質(第1の性質)を判定している。本開示の技術はこれに限定されない。第1の周波数f1及び第2の周波数f2の各々と異なる第3の周波数f3と、第1の周波数f1~第3の周波数f3とは異なる第4の周波数f4とを更に用いてもよい。この場合、これら2つの異なる周波数f3、f4の信号の電力(振幅の二乗)の差と、これら2つの異なる周波数f3、f4の信号の位相の角度の差とに応じて、土の性質が特定され記憶されている第2のテーブルを予め備える。これら2つの異なる周波数f3、f4の信号を用いて、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様に、土の性質(第2の性質)を判定する。そして、第1の周波数f1の信号と第2の周波数f2の信号とを用いて判定した土の第1の性質と、第3の周波数f3の信号と第4の周波数f4の信号とを用いて判定した土の第2の性質とに基づいて、土の最終的な性質を決定してもよい。例えば、第1の性質と第2の性質との平均を求めて土の最終的な性質を決定してもよい。
このように各々異なる2つの周波数の複数の組の各々の信号を用いて土の性質を決定してもよい。
なお、2つの周波数の複数の組には、次の場合がある。2組の場合には、例えば、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第3の周波数f3、第4の周波数f4)の組とがある。なお、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第1の周波数f1、第3の周波数f3)の組との場合でもよい。
また、3組の場合には、例えば、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第3の周波数f3、第4の周波数f4)の組と、(第5の周波数f5、第6の周波数f6)の組とがある。なお、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第1の周波数f1、第3の周波数f3)の組、(第1の周波数f1、第4の周波数f4)の組との場合でもよい。
更に、4組の場合には、例えば、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第3の周波数f3、第4の周波数f4)の組と、(第5の周波数f5、第6の周波数f6)の組と、(第7の周波数f7、第8の周波数f8)の組とがある。なお、(第1の周波数f1、第2の周波数f2)の組と、(第1の周波数f1、第3の周波数f3)の組、(第1の周波数f1、第4の周波数f4)の組と、(第1の周波数f1、第5の周波数f5)の場合でもよい。
なお、2組~4組に限定されず、5組以上でもよい。
【符号の説明】
【0084】
100A 送信装置
200A 測定装置
208A 電力変換回路
208B 電力変換回路
210A 角度変換回路
210B 角度変換回路
212 電力差計算回路
214 角度差計算回路
216A 平均化回路
216B 平均化回路
218 判定回路
100B 送信装置
200B 測定装置
222 CPU
206 記憶装置
252 処理部
254 処理部
256 電力変換部
258 角度変換部
260 電力差計算部
262 角度差計算部
264 平均化部
266 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10