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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】多層のゲル状食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/20 20160101AFI20221206BHJP
   A23L 9/10 20160101ALI20221206BHJP
   A23L 21/10 20160101ALI20221206BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20221206BHJP
   A23G 1/54 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A23L29/20
A23L9/10
A23L21/10
A23G3/54
A23G1/54
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018191477
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020058283
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 哲明
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 芳信
(72)【発明者】
【氏名】内山 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】平櫛 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智幸
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-502155(JP,A)
【文献】特開2004-113019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 29/00-29/30
A23L 9/00-9/20
A23L 21/00-21/25
A23G 1/00-9/52
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填口の短手方向の長さと長手方向の長さの比率が、短手方向の長さを1とした場合、5以上であり、かつ、直線のみにより構成されたスリットノズルを用いて、液状の第一ミックス上に液状の第二ミックスを充填する工程を含む、多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項2】
前記液状の第一ミックス上に、4g~8gの液状の第二ミックスを充填する工程を含む、請求項1に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項3】
スリットノズルが、回転運動又はスリットノズルの充填口の短手方向に対して平行方向への反復運動を行う、請求項1または2に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項4】
多層のゲル状食品の容器開口部が円形であり、スリットノズルの充填口の長手方向の長さが、前記容器の開口面の直径の長さから半径の長さの範囲内である、請求項1~3のいずれか1項に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項5】
スリットノズルの回転運動時の回転数が30~500rpmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項6】
第二ミックス層の最も厚い部分の厚みが10mm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項7】
第二ミックス充填後60分以内に、第一ミックスの中心温度を20℃以下まで低下させることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の多層のゲル状食品の製造方法。
【請求項8】
前記第一ミックス層が、硬度が20~300gfのゲル層であり、第一ミックス層上に充填された前記第二ミックス層が、硬度が100gf以上、最も厚い部分の厚みが0.5mm以上10mm以下である固化したチョコレート層とを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の多層のゲル状食品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な多層のゲル状食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリン、ゼリー、及びババロア等のデザートが、世界中で広く食されている。これらのデザートの中には、嗜好性及び外観の向上を目的として、複数の層を含むものがある。
【0003】
複数の層を含むデザートの製造は、困難を極める。下層のミックスと上層のミックスがその境界において混ざり、嗜好性及び外観が損なわれることを防止するために、製造工程及びミックス組成において多数の制約が発生するからである。具体的には、下層を急冷して固化させてから液状の上層を充填する必要、液状である下層にいったん固化された上層を添加して、その後加熱溶融、急冷等の操作を行う必要、下層又は上層のミックスに対して、特定の原料を添加する必要等が生じ得る。
【0004】
特許文献1では、上下二層間に界面を有する多層デザートの製造方法を開示する。しかしながら、この技術では、上層又は下層に特定の原料を添加する必要があるなど、商品設計上の制約が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-6127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、嗜好性及び外観などの商品性に優れた多層のゲル状食品を、工業的かつ効率的に製造する方法を提供することを課題とする。
【0007】
上記課題を鑑み、鋭意研究を進めたところ、以下の態様とすることで、嗜好性及び外観などの商品性に優れた多層のゲル状食品を、工業的かつ効率的に製造する方法を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
<1>スリットノズルを用いて、液状の第一ミックス上に液状の第二ミックスを充填する工程を含む、多層のゲル状食品の製造方法、
<2>スリットノズルが、回転運動又はスリットノズルの充填口の短手方向に対して平行方向への反復運動を行う、<1>に記載の多層のゲル状食品の製造方法、
<3>多層のゲル状食品の容器開口部が円形であり、スリットノズルの充填口の長手方向の長さが、前記容器の開口面の直径の長さから半径の長さの範囲内である、<1>又は<2>に記載の多層のゲル状食品の製造方法、
<4>スリットノズルの回転運動時の回転数が30~500rpmである、<2>又は<3>に記載の
多層のゲル状食品の製造方法、
<5>第二ミックス層の最も厚い部分の厚みが10mm以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の多層のゲル状食品の製造方法、
<6>第二ミックス充填後60分以内に、第一ミックスの中心温度を20℃以下まで低下させることを
特徴とする、<1>~<5>のいずれかに記載の多層のゲル状食品の製造方法、
<7>硬度が20~300gfのゲル層と、硬度が100gf以上、最も厚い部分の厚みが0.5mm以上10mm以下である固化したチョコレート層と、を含むことを特徴とする多層のゲル状食品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層のゲル状食品の製造方法によれば、嗜好性及び外観などの商品性に優れた多層のゲル状食品を工業的かつ効率的に製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】スリットノズルと充填口の模式図を示す図である。
図2】本発明の製造方法におけるスリットノズルに含まれる充填口の配置の一態様を示す模式図である。
図3】本発明の製造方法におけるスリットノズルに含まれる充填口の配置の一態様を示す模式図である。
図4】比較例1で使用したモノノズルに含まれる充填口の配置を示す模式図である。
図5】比較例2で使用した円盤状ノズルに含まれる充填口の配置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(スリットノズル)
本発明の多層のゲル状食品の製造方法では、スリットノズルを用いて液状の第二ミックスを充填する。スリットノズルとは、充填口にスリット形状を含むノズルである。スリット形状とは、換言すれば、充填口の形状において、長手方向の長さに対して短手方向の長さが著しく短い形状である。スリットノズルは、一般的には、工業製品の製造工程において、エアーを噴霧することによる乾燥工程、及び洗浄水を噴霧することによる洗浄工程等に用いられている。スリットノズルは、本発明の効果が得られる限りにおいて、市販されているものを使用することもでき、または、例えば、内部が中空である円柱状の配管にスリットを入れることにより、作製することもできる。
【0012】
(充填口の形状)
本明細書では、スリットノズルにおいて、第二ミックスが射出される開口を充填口と称する。スリットノズルの充填口の短手方向Sの長さは、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下が最も好ましい。スリットノズルの充填口の短手方向Sの長さと長手方向Lの長さの比率は、短手方向の長さを1とした場合、5以上、10以上、15以上、20以上、又は30以上であることができる。充填口の外縁は、本発明の効果が得られる限りにおいて、一部又は全部に曲線を含んでもよいが、スリットノズルの製造の容易性及び均等に第二ミックスを充填するという観点から、直線のみにより構成されていることが好ましい。また、本発明の製造方法においては、充填口が単一のスリット形状から成ることが好ましいが、本発明の効果が得られる限りにおいて、複数のスリットを含んでもよい。複数のスリットは、互いに略平行に配置されていてもよく、本発明の効果が得られる限りにおいて、例えば図2に示すようなスリット形状と交差するさらなるスリット形状であってもよい。
【0013】
スリットノズルにおいては、本発明の効果が得られる限りにおいて、充填口を任意の位置に配置することができる。例えば、図3に示すように、容器開口部と対向する面において、スリットノズルにおける容器開口部と対向する面の中央ではなく、特定の位置に配置させてもよい。
【0014】
(回転運動)
本発明の製造方法においては、第二ミックスの充填時にスリットノズルを回転させることが好ましい。充填口内に位置する任意の一点を回転の中心(円心)とすることが好ましく、充填口の長手方向の中心を円心として用いることがより好ましい。回転の速度は、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されることはないが、例えば、30~500rpm、より好ましくは100~300rpmである。回転は、一充填、すなわち第二ミックスを一つの容器に充填する時間帯全てにわたり行ってもよいが、本発明の効果が得られる限りにおいて、回転しない時間帯を含んでもよい。多層のゲル状食品の容器開口部が円形である場合、スリットノズルの充填口の長手方向の長さは、好ましくは、前記容器の開口面の直径の長さから半径の長さの範囲内である。
【0015】
(スリットノズルの充填口の短手方向に対して平行方向への反復運動)
本発明の製造方法においては、第二ミックスの充填時に、スリットノズルをスリットノズルの充填口の短手方向に対して平行方向への反復運動を行うこともできる。本明細書において、「平行方向」とは、本発明の効果が得られる限りにおいて、略平行を含む概念である。本明細書において、「反復運動」とは、特定の方向に進行した後同じ軌跡をたどり後退する動作を繰り返すことを意味する。反復運動の速度は、本発明の効果が得られる限りにおいて限定されることはなく、任意の速度を採用すればよい。反復運動は、一充填、すなわち第二ミックスを一つの容器に充填する時間帯全てにわたり行ってもよいが、本発明の効果が得られる限りにおいて、停止する時間帯を含んでもよい。
【0016】
(第一ミックス)
第一ミックスは、スリットノズルから射出される第二ミックスと界面を形成するミックスである。第一ミックスは、第二ミックスの充填時において液状であり、喫食時にはゲル状である。本明細書において「液状」とは、一定の流動性を有する液体の状態を意味する。本明細書において、第一ミックスが「液状」であるとは、例えば、第二ミックスの充填時の温度において、B型粘度計(型式BL、株式会社東京計器(現東機産業株式会社)製、No.2ローター)で二重円筒型の測定治具を使用し、スピンドルを20 1/sで回転させて粘度を測定した場合に、第一ミックスの粘度が2000cP以下であることをいう。本発明の多層のゲル状食品の製造方法において、第二ミックスの充填時における第一ミックスの粘度の上限は、例えば、50cP、100cP、300cP、500cP又は1000cPである。下限としては、例えば、1cP又は10cPである。具体的な範囲としては、1~1000cP、1~800cP、又は10~500cPであることができる。第一ミックスとしては、ゼリーミックス、プリンミックス、ヨーグルトミックス、ババロアミックス、カラメルミックス、チョコレートムースミックス、杏仁豆腐ミックス、レアチーズケーキミックス、及び羊羹ミックス等が例示できる。
【0017】
(第二ミックス)
本発明の多層のゲル状食品の製造方法は、液状の第一ミックス上に液状の第二ミックスを充填する工程を含む。第二ミックスは、スリットノズルを用いて充填するときに液状であればよく、喫食時には液状、ゲル状、又は固形状であることができるが、ゲル状又は固形状であることが好ましい。本明細書において、第二ミックスが「液状」であるとは、例えば、スリットノズルを用いて第二ミックスを充填する際の温度において、B型粘度計(型式BL、株式会社東京計器(現東機産業株式会社)製、No.2ローター)で二重円筒型の治具を使用し、スピンドルを20 1/sで回転させて粘度を測定した場合に第二ミックスの粘度が2000cP以下であることをいう。本発明の多層のゲル状食品の製造方法において、第二ミックスの充填時における第二ミックスの粘度の上限は、例えば、50cP、100cP、300cP、500cP又は1000cPである。下限としては、例えば、1cP、5cP、10cP、30cP、又は50cPである。具体的な範囲としては、1~2000cP、10~800cP、30~800cP、又は30~500cPであることができる。第二ミックスとしては、チョコレート、ホイップクリーム、ジャム、ゼリーミックス、プリンミックス、ヨーグルトミックス、ババロアミックス、カラメルミックス、チョコレートムースミックス、杏仁豆腐ミックス、レアチーズケーキミックス、及び羊羹ミックス等が例示できるが、常温で固形状であるチョコレートを用いることで、喫食時にチョコレートの固形感を感じることができることから、常温で固形状であるチョコレートを用いることが好ましい。第二ミックスは、第一ミックスが形成するミックス層を全て覆うことが好ましいが、ミックス層を全て覆わなくともよい。
【0018】
第一ミックス及び第二ミックスは、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記例示の中から適宜選択して組み合わせることができる。第一ミックスを、ゼリーミックス、プリンミックス、又はババロアミックスとして、第二ミックスをチョコレートとすることが好ましい。本発明で用いることができるチョコレートとしては、チョコレート類の表示に関する公正競争規約に記載されるチョコレート類で、液化可能なものを全て包含するものとする。
【0019】
本発明の多層のゲル状食品の製造方法における第一ミックス及び第二ミックスの原料としては、特にこれらに限定されるものではないが、糖類、乳原料、植物油脂、安定剤、乳化剤、ゼラチン、卵、カラメル、食品素材、香料等、一般的にゲル状食品の製造に使用されるような原料はいずれも使用可能である。これらの原材料は、物性調整や風味調整を目的として使用されるが、全てを使用しなくても良い。第一ミックスは、寒天、カラギナン、グアーガム、キサンタンガム等のゲル化剤を含むことが好ましい。
【0020】
本発明の多層のゲル状食品の製造方法において、第一ミックス及び第二ミックスの比重は、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはないが、充填時の温度において、第一ミックスの比重が第二ミックスの比重と等しいか又は第二ミックスの比重よりも大きいことが好ましい。第一ミックスの比重が第二ミックスの比重よりも大きい場合、具体的には、第二ミックスの充填時の温度において、第一ミックスの比重が、第二ミックスの比重よりも、0.01以上、0.03以上、0.05以上、又は0.1以上大きいことが好ましい。第一ミックスの比重は、第二ミックスの充填時の温度において、例えば1.00~1.20、好ましくは1.00~1.15、より好ましくは1.05~1.15、さらに好ましくは1.05~1.10である。第二ミックスの比重は、第二ミックスの充填時の温度において、例えば1.00~1.20、好ましくは1.00~1.15、より好ましくは1.00~1.10、さらに好ましくは1.03~1.08である。
固化後の第一ミックス部分(例えば、プリンミックス)の硬度は、20~300gfであり、好ましくは25~200gf、より好ましくは30~100gfである。
【0021】
本発明の多層のゲル状食品の製造方法より得られる多層のゲル状食品では、第一ミックス層の方が第二ミックス層より厚いことが好ましい。第二ミックス層の厚さは、最も厚い部分において、20mm以下、10mm以下、又は5mm以下であることができる。第一ミックス層の厚さは、第二ミックス層の厚さを1とした場合、1~20、1~15、又は1~10であることができる。
第二ミックス部分がチョコレートである場合、チョコレート薄膜単体の厚さは、0.5mm以上であり、好ましくは0.5mm~10mmであり、より好ましくは、1~4mm、さらに好ましくは1.5~3mmである。硬度は、100gf以上であり、好ましくは150~1000gf、より好ましくは200~700gfである。
【0022】
第二ミックス充填時の第一ミックス及び第二ミックスの温度は、第一ミックス及び第二ミックスが共に液状であればよく、特に限定されることはないが、例えば、10℃~70℃又は20℃~70℃であることができる。
【0023】
(多層のゲル状食品の製造方法)
本発明の製造方法により製造される多層のゲル状食品は、第一ミックスから成る第一ミックス層と第二ミックスから成る第二ミックス層を有する。第一ミックス層のさらに下層に、さらなる層を含むこともできる。必要に応じて、第二ミックス層の上にトッピングを添加する、又は第二ミックス層の上に第三ミックス層を含むこともできる。また、本発明の効果が得られる限りにおいて、第一ミックス層及び/又は第二ミックス層においてクッキー等の固形物が含まれてもよい。なお、本明細書において「ゲル状」とは、見かけ上、液体ではないが、流動性をもち、重力又は外部からの物理的刺激により容易にその形状を変える状態を意味する。
【0024】
ゲル状食品の容器としては、本発明の効果が得られる限りにおいて特に限定されることはないが、容器開口部が円形または略円形のものを使用することが好ましい。
【0025】
本発明ではミックスの充填に連続型充填機を使用する。この連続型充填機はジャケット付きのフィラータンクを複数備えており、各々を任意の温度に保持することができる。製造速度及び充填速度に関しては、本発明の効果が得られる限りにおいて、適宜調整可能である。ミックスの充填完了後速やかに、例えば、1時間以内、好ましくは50分以内に冷却して、第一ミックスをゲル化させ、且つ第二ミックスをゲル化又は固化させること(又は、第一ミックスの中心温度を20℃以下まで低下させること)が好ましい。
【0026】
本発明の多層のゲル状食品の製造方法では、第一ミックスの充填工程と第二ミックスの充填工程との間に、冷却等による第一ミックスの固化工程を含む必要がなく、したがって、時間のロスや余分な設備投資を省略することが可能であるが、第一ミックスの充填工程と第二ミックスの充填工程との間に、冷却等による第一ミックスの固化工程を含むものを本発明の範囲から除外するものではない。
【0027】
(作用)
本発明の多層のゲル状食品の製造方法において効果が得られる理由は、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。
本発明の多層のゲル状食品の製造方法において効果が得られるメカニズムの1つとしては、第一ミックス上に第二ミックスを薄膜上に何層にもわたり充填できることが挙げられる。薄膜上に何層にもわたり充填することで、第一ミックスに物理的な振動を与えることがなく、したがって、第一ミックスと第二ミックスとが混ざり合うことを防止することができる。
【0028】
以下に本発明の実施例を示して詳細に説明する。ただし、実施例は本発明の態様の1つであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0029】
実施例1、2に対して目視及び官能による評価を以下の通りに定め、平均2点以上を合格とした。
目視評価は、外観を観察してプリン表面の被覆度合い及び境界面の明確さを評価した。官能評価は、パネル数5人で喫食して固形感が製品として耐えうるか、の観点から評価した。
4:境界面が明確かつ固形感もあり製品として優良
3:境界面が明確かつ固形感もあり製品として良好
2:境界面や固形感がやや劣るが製品として可能
1:境界面や固形感がなく製品として不可
【実施例1】
【0030】
ミックスとして、砂糖15kg、脱脂粉乳5kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを配合して水75kgに溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で60℃に保持した(第一ミックス:ゲル化温度40℃)。また、カカオ分50%のチョコレート(融点38℃)を53℃に加温して溶解させ、連続型充填機のフィラータンク内で53℃に保持した(第二ミックス)。
液状のミックスを直径71mm、高さ100mmの容器に100g充填し、その後、100rpmで回転しているスリットノズルを使用して液状のチョコレートを4g充填した。チョコレート充填時の、ミックスの粘度は30cP、比重は1.08であり、チョコレートの粘度は60cP、比重は1.03であった。充填後、60分以内にミックスの中心温度が20℃以下になるように急冷してミックス及びチョコレートのゲル化/固化を実施した。得られたサンプルの外観、食感及び風味の評価を行い、良好な結果を得た(表1)。得られたチョコレート薄膜単体の厚さは1.5mmであり、硬度は200gfであった。なお、硬度の測定は以下の方法に則った。テクスチャーアナライザーTA.XT Plus(英弘精機株式会社製)を使用し、先端に径10mmの鉄球を有する治具を、チョコレート薄膜の中心に接するまで5mm/秒のスピードで降下させ、チョコレート薄膜の中心に接してから5gfの荷重を受けた直後から0.5mm/秒のスピードで10mm降下させた際に、治具が受けた最大の荷重をチョコレート薄膜の硬度とした。
また、固化後のプリン部分の硬度は50gfであった。硬度測定は以下の方法に則った。RHEONER IIクリープメータ RE2-33005B (株式会社山電製)を使用し、径30mmの円板型ワイヤーカッターを、速度1mm/秒の速さで、10℃に調温したプリン部の厚さ40%まで侵入させた時の最大の荷重をプリン部分の硬度とした。
【0031】
【表1】
【実施例2】
【0032】
ミックス1として、砂糖20kg、脱脂粉乳5kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを水70kgに配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で50℃に保持した(ゲル化温度35℃)。ミックス2として、砂糖10kg、脱脂粉乳3kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で63℃に保持した(第一ミックス:ゲル化温度43℃)。また、カカオ分15%の準チョコレート(融点45℃)を60℃に加温して溶解させ、連続型充填機のフィラータンク内で60℃に保持した(第二ミックス)。
直径71mm、高さ100mmの容器に液状のミックス1を50g、液状のミックス2を50g充填し、その後、250rpmで回転しているスリットノズルを使用して液状のチョコレートを8g充填した。チョコレート充填時の、ミックス2の粘度は15cP、比重は1.05であり、チョコレートの粘度は100cP、比重は1.05であった。充填後、50分以内にミックスの中心温度が20℃以下になるよう急冷してミックス及びチョコレートのゲル化/固化を実施した。得られたサンプルの外観、食感及び風味の評価を行い、良好な結果を得た(表2)。得られたチョコレート薄膜単体の厚さは3mmであり、硬度は700gfであった。また、プリン部分の硬度は35gfであった。
【0033】
【表2】
【比較例1】
【0034】
ミックス1として、砂糖20kg、脱脂粉乳5kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを水70kgに配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で50℃に保持した(ゲル化温度35℃)。ミックス2として、砂糖10kg、脱脂粉乳3kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で63℃に保持した(第一ミックス:ゲル化温度43℃)。また、カカオ分15%の準チョコレート(融点45℃)を60℃に加温して溶解させ、連続型充填機のフィラータンク内で60℃に保持した(第二ミックス)。
直径71mm、高さ100mmの容器に液状のミックス1を50g、液状のミックス2を50g充填し、その後、250rpmで回転している径2mmの穴が中心に一つ空いているモノノズルを使用して液状のチョコレートを8g充填した。しかし、吐出したチョコレートがプリンミックスに侵入して薄膜が形成されなかったため、製品として不可であった(表3)。
【0035】
【表3】
【比較例2】
【0036】
ミックス1として、砂糖20kg、脱脂粉乳5kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを水70kgに配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で50℃に保持した(ゲル化温度35℃)。ミックス2として、砂糖10kg、脱脂粉乳3kg、植物油脂3kg、安定剤1kg、乳化剤1kgを配合して溶解、均質を実施し、連続型充填機のフィラータンク内で63℃に保持した(第一ミックス:ゲル化温度43℃)。また、カカオ分15%の準チョコレート(融点45℃)を60℃に加温して溶解させ、連続型充填機のフィラータンク内で60℃に保持した(第二ミックス)。
直径71mm、高さ100mmの容器に液状のミックス1を50g、液状のミックス2を50g充填し、その後250rpmで回転している、径2mmの穴が径30mmの円の中心に対して120°毎に計3つ空いている径50mmの円板状ノズルを使用して液状のチョコレートを8g充填した。しかし、プリンミックス上でチョコレートの一様な薄膜は形成されず、崩れた円形に充填されてしまったため、外観上、製品として不可であった(表4)。
【0037】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、嗜好性及び外観などの商品性に優れた多層のゲル状食品を、工業的かつ効率的に製造することが可能である。
【符号の説明】
【0039】
1.スリットノズル
2.充填口
3.モノノズル
4.円盤状ノズル
L.充填口の長手方向の長さ
S.充填口の短手方向の長さ
図1
図2
図3
図4
図5