(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】成膜装置、製造システム、有機ELパネルの製造システム、成膜方法、及び有機EL素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20221206BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20221206BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221206BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
C23C14/24 C
C23C14/24 G
C23C14/24 J
H01L21/68 A
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2018194414
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-10-01
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158388
【氏名又は名称】鱸 英俊
(72)【発明者】
【氏名】高津 和正
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴志
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-104131(JP,A)
【文献】特開2006-028583(JP,A)
【文献】特開2011-068980(JP,A)
【文献】特開2016-196684(JP,A)
【文献】国際公開第2006/100867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/67-21/687
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能な成膜室の内部で第1蒸着ステージまたは第2蒸着ステージに移動可能な蒸着源と、制御部と、を備える成膜装置であって、
前記第1蒸着ステージは、第1マスクを支持して上下動が可能な第1マスク支持部と、基板を支持可能な第1基板支持部とを備え、
前記第2蒸着ステージは、第2マスクを支持して上下動が可能な第2マスク支持部と、基板を支持可能な第2基板支持部とを備え、
前記制御部は、
前記蒸着源が前記第1蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第2マスク支持部を蒸着時よりも低い
前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第1基板交換と、前記第1基板交換の後に前記第2マスク支持部を上昇させて前記第2マスクとのアライメントが行われた前記第1基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第2蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第1セットと、を行う第1処理と、
前記第1処理の後に、前記蒸着源を前記第1蒸着ステージから前記第2蒸着ステージに移動させる第2処理と、
前記第2処理の後に、前記蒸着源が前記第2蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた前記未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第1マスク支持部を蒸着時よりも低い
前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第2基板交換と、前記第2基板交換の後に前記第1マスク支持部を上昇させて前記第1マスクとのアライメントが行われた前記第2基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第1蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第2セットと、を行う第3処理と、
前記第3処理の後に、前記蒸着源を前記第2蒸着ステージから前記第1蒸着ステージに移動させる第4処理と、
を実行する、ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1処理において、基板搬送機構に前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を前記成膜室から搬出させた後、前記基板搬送機構に未蒸着の基板を前記成膜室に搬入させて前記第2基板支持部に支持させ、
前記第3処理において、前記基板搬送機構に前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を前記成膜室から搬出させた後、前記基板搬送機構に未蒸着の基板を前記成膜室に搬入させて前記第1基板支持部に支持させる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1処理から前記第4処理を繰り返し実行する、
ことを特徴とする請求項1
または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3の中のいずれか1項に記載の成膜装置を複数台備える、
ことを特徴とする製造システム。
【請求項5】
請求項1乃至
3の中のいずれか1項に記載の成膜装置を複数台備え、少なくとも一台の前記成膜装置の前記蒸着源は有機材料の蒸着源である、
ことを特徴とする有機ELパネルの製造システム。
【請求項6】
減圧可能な成膜室の内部で第1蒸着ステージまたは第2蒸着ステージに移動可能な蒸着源を備え、
前記第1蒸着ステージが、第1マスクを支持して上下動が可能な第1マスク支持部と、基板を支持可能な第1基板支持部とを有し、前記第2蒸着ステージが、第2マスクを支持して上下動が可能な第2マスク支持部と、基板を支持可能な第2基板支持部とを有する成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記蒸着源が前記第1蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第2マスク支持部を蒸着時よりも低い
前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第1基板交換と、前記第1基板交換の後に前記第2マスク支持部を上昇させて前記第2マスクとのアライメントが行われた前記第1基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第2蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第1セットと、を行う第1工程と、
前記蒸着源が前記第1蒸着ステージから前記第2蒸着ステージに移動する第2工程と、
前記蒸着源が前記第2蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた前記未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第1マスク支持部を蒸着時よりも低い
前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第2基板交換と、前記第2基板交換の後に前記第1マスク支持部を上昇させて前記第1マスクとのアライメントが行われた前記未蒸着の基板を前記第1蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第2セットと、を行う第3工程と、
前記蒸着源が前記第2蒸着ステージから前記第1蒸着ステージに移動する第4工程と、を有する、
ことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記第1工程においては、基板搬送機構が前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を前記成膜室から搬出した後、前記基板搬送機構が未蒸着の基板を前記成膜室に搬入して前記第2基板支持部に支持させ、
前記第3工程においては、前記基板搬送機構が前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を前記成膜室から搬出した後、前記基板搬送機構が未蒸着の基板を前記成膜室に搬入して前記第1基板支持部に支持させる、
ことを特徴とする請求項
6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第1工程から前記第4工程を繰り返し行う、
ことを特徴とする請求項
6または7に記載の成膜方法。
【請求項9】
請求項
6乃至
8の中のいずれか1項に記載の成膜方法により、
有機EL素子の有機膜を成膜する、
ことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、及び成膜方法に関する。特に、同一のチャンバ内において、ひとつの蒸着ステージで基板に対して蒸着を行いながら、他のステージで基板の交換を行うことが可能な成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型で、視野角、コントラスト、応答速度に優れた有機EL素子は、壁掛けテレビをはじめとする種々の表示装置に盛んに応用されている。
一般に、有機EL素子は、基板を真空チャンバ内に搬入し、所定パターンの有機膜を基板上に成膜する方法で製造される。より詳しくは、真空が維持された成膜チャンバ内に基板を搬入する工程、基板とマスクとを高精度に位置合わせ(アライメント)する工程、有機材料を成膜する工程、成膜済みの基板を成膜チャンバから搬出する工程、等を経て製造される。
【0003】
有機材料を成膜する工程では有機材料を蒸発または昇華させて成膜するが、基板をセットする毎に有機材料を加熱する方式の場合には、加熱の度に成膜レートが安定するまで待機する必要が生じ、製造のスループットを制限してしまうことになる。
そこで、蒸着源を常に高温に維持して有機材料の成膜レートを一定にする方式が考えられるが、基板の搬送やアライメントを行う間にも有機材料の蒸発または昇華が継続するため、有機材料の無駄な損失が大きくなる。このため、製造のスループット向上と、有機材料の損失量低減を両立させる方法が試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1基板と第2基板を収容可能な真空チャンバを備え、第1基板の蒸着領域と第2基板の蒸着領域の間を蒸着源が移動可能に構成した装置が開示されている。この装置の蒸着源は、第1基板の蒸着領域と第2基板の蒸着領域の間を円弧軌道に沿って移動できる。一方の基板の搬送及びアライメントの実行と、他方の基板の蒸着を同時に行えるようにして、工程時間の短縮と材料の利用効率向上を図っている。
【0005】
また、特許文献2には、真空チャンバ内に第1蒸着ステージと第2蒸着ステージを隣接して配置し、両ステージの間を蒸着源が往復移動して交互に成膜を行う装置が開示されている。この装置では、例えば一方の蒸着ステージで基板が成膜されているときに、隣接する他方の蒸着ステージに有機材料が入射しないようにするため、各蒸着ステージにはシャッターが設けられている。一方の蒸着ステージにおける基板の搬送及びアライメント工程の実行と同時に、他方の蒸着ステージにおいて基板の蒸着工程を行えるようにして、工程時間の短縮と材料の利用効率向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-68980号公報
【文献】特開2016-196684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載された装置では、真空チャンバ内の底部に蒸着源を水平移動可能に配置し、有機材料を鉛直上方に向けて蒸発させる。各蒸着ステージには、下から順にマスク保持機構、基板保持機構が配置されるとともに、基板搬送機構や両者のアライメントを調整するアライメント調整機構が設けられている。
【0008】
例えば、成膜後の基板を成膜チャンバから搬出する時には、基板保持機構を持ち上げて基板をマスクから離間させ、その後に基板を成膜チャンバの外に搬送する。また、成膜前の基板を蒸着ステージにセットする時には、成膜チャンバに搬入した基板を蒸着ステージの上方に移動して基板保持機構に保持させ、基板保持機構を下方に移動させて基板とマスクを近接させながらアライメント調整を行いセットする。
【0009】
特許文献1や特許文献2に開示された成膜装置においては、工程時間の短縮と材料の利用効率向上が図られているものの、成膜装置が大型化する傾向があった。
成膜チャンバの中には、下から順に蒸着源、マスク、基板が配置されている。基板を交換する際には、所定の高さに固定されたマスクの上方で基板搬送機構が動作して基板の搬入や搬出が行われていた。この時に、基板搬送機構がマスクやマスク保持機構と干渉しないようにするためには、マスクの上方には基板搬送機構が動作可能な大きな作業空間を確保しておく必要があった。このため、成膜チャンバ(真空チャンバ)の高さや容積が大きくなってしまい、成膜装置の製造コストや輸送費が増大し、さらには成膜装置を設置する建屋の高さや床面荷重も大きくなってしまっていた。これにより、有機EL素子の製造設備のトータルコストが増大していた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、減圧可能な成膜室の内部で第1蒸着ステージまたは第2蒸着ステージに移動可能な蒸着源と、制御部と、を備える成膜装置であって、前記第1蒸着ステージは、第1マスクを支持して上下動が可能な第1マスク支持部と、基板を支持可能な第1基板支持部とを備え、前記第2蒸着ステージは、第2マスクを支持して上下動が可能な第2マスク支持部と、基板を支持可能な第2基板支持部とを備え、前記制御部は、前記蒸着源が前記第1蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第2マスク支持部を蒸着時よりも低い前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第1基板交換と、前記第1基板交換の後に前記第2マスク支持部を上昇させて前記第2マスクとのアライメントが行われた前記第1基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第2蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第1セットと、を行う第1処理と、前記第1処理の後に、前記蒸着源を前記第1蒸着ステージから前記第2蒸着ステージに移動させる第2処理と、前記第2処理の後に、前記蒸着源が前記第2蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた前記未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第1マスク支持部を蒸着時よりも低い前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第2基板交換と、前記第2基板交換の後に前記第1マスク支持部を上昇させて前記第1マスクとのアライメントが行われた前記第2基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第1蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第2セットと、を行う第3処理と、前記第3処理の後に、前記蒸着源を前記第2蒸着ステージから前記第1蒸着ステージに移動させる第4処理と、を実行する、ことを特徴とする成膜装置である。
【0011】
また、本発明は、減圧可能な成膜室の内部で第1蒸着ステージまたは第2蒸着ステージに移動可能な蒸着源を備え、前記第1蒸着ステージが、第1マスクを支持して上下動が可能な第1マスク支持部と、基板を支持可能な第1基板支持部とを有し、前記第2蒸着ステージが、第2マスクを支持して上下動が可能な第2マスク支持部と、基板を支持可能な第2基板支持部とを有する成膜装置を用いた成膜方法であって、前記蒸着源が前記第1蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第2マスク支持部を蒸着時よりも低い前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第2基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第1基板交換と、前記第1基板交換の後に前記第2マスク支持部を上昇させて前記第2マスクとのアライメントが行われた前記第1基板交換が行われた未蒸着の基板を前記第2蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第1セットと、を行う第1工程と、前記蒸着源が前記第1蒸着ステージから前記第2蒸着ステージに移動する第2工程と、前記蒸着源が前記第2蒸着ステージの成膜ポジションにセットされた前記未蒸着の基板に対して行われる蒸着が完了するまでの間に、前記第1マスク支持部を蒸着時よりも低い前記蒸着源の最高部位の高さより低い高さに下降させて前記第1基板支持部に支持された蒸着済の基板を未蒸着の基板に交換する第2基板交換と、前記第2基板交換の後に前記第1マスク支持部を上昇させて前記第1マスクとのアライメントが行われた前記未蒸着の基板を前記第1蒸着ステージの成膜ポジションへセットする第2セットと、を行う第3工程と、前記蒸着源が前記第2蒸着ステージから前記第1蒸着ステージに移動する第4工程と、を有する、ことを特徴とする成膜方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着材料の利用効率と成膜のスループットが高く、しかも真空チャンバの容積がコンパクトなため装置価格が低廉な成膜装置、及び成膜方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】実施形態の成膜装置の全体構成を示す模式的な断面図。
【
図3】実施形態の成膜装置の全体構成を示す模式的な断面図。
【
図4】マスク支持部とマスク駆動手段の一部を拡大した模式的な断面図。
【
図5】実施形態の成膜装置の各部の動作を示すタイムチャート。
【
図6】基板の搬出または搬入を行う際の蒸着ステージを示す模式的な断面図。
【
図7】基板を搬入して基板支持部に固定した際の蒸着ステージを示す模式的な断面図。
【
図8】基板を成膜位置にセットした際の蒸着ステージを示す模式的な断面図。
【
図10】実施形態の有機ELパネル製造システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態である成膜装置及び成膜方法について、図面を参照して説明する。尚、以下の説明で参照する図面においては、同一の構成要素については、特に但し書きがない限り同一の番号を付して図示するものとする。
【0015】
(成膜システム)
図1は、実施形態の成膜装置を含む成膜システムの模式的な平面図である。
図1の成膜システムにおいては、成膜装置100、成膜装置101、成膜装置102、搬送室35、搬送経路103が、ゲートバルブ34を介して互いに接続され、成膜システム内は所定の真空度に保たれている。成膜装置100、成膜装置101、成膜装置102は、有機材料を基板に蒸着する成膜装置であり、各装置の基本構成は同一である。各成膜装置が同一種の有機材料を成膜するように成膜システムを構成してもよいし、成膜装置毎に異種の有機材料を成膜するように構成してもよい。各成膜装置は、2つの蒸着ステージを備えるが、成膜装置の構成と動作については、後に成膜装置100を例に挙げて詳しく説明する。
【0016】
搬送室35は搬送ロボットを備えており、各成膜装置や搬送経路103に基板を搬入したり、各成膜装置や搬送経路103から基板を搬出したりすることができる。搬送ロボットは、可動アーム104と基板保持ハンド33を備え、各成膜装置の各蒸着ステージに基板を搬入したり搬出したりすることができる。可動アーム104と基板保持ハンド33は、真空装置内で安定して基板をハンドリングできるものであれば、どのような形式の機構でもよい。尚、
図1では、成膜装置100の第2蒸着ステージ32と搬送室35とを接続するゲートバルブ34が開かれ、搬送ロボットが基板8をハンドリングしている状態が模式的に図示されている。
【0017】
搬送経路103は、大気中に基板を出し入れ可能なロードロック室や、別の成膜システムに基板を搬送するための搬送路である。
図1では、搬送室35の上下左右の4方向に成膜装置や搬送経路を配置したが、本発明を実施するうえで成膜システムの形態はこの例に限る必要はなく、例えば搬送室を中心に周囲の6方向あるいは8方向に成膜室や搬送経路を配置してもよい。また、基板搬送機構である搬送ロボットは単アームに限らず、マルチアームのロボットでもよい。
【0018】
(成膜装置の構成)
次に、実施形態の成膜装置の構成について、成膜装置100を例に挙げて説明する。
図2及び
図3は、成膜装置100の全体構成を示す模式的な断面図であり、各図は成膜装置100の異なる動作状態を示している。
成膜装置100は、成膜室の外囲器としての真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の内部は不図示の真空ポンプにより、例えば10
-3Pa以下の圧力領域まで減圧可能である。
【0019】
真空チャンバ1内には蒸着源装置2が配置されており、蒸着源装置2の内部には成膜材料である有機材料が貯留され、有機材料は制御されたヒータによって加熱されて所定のレートで蒸発あるいは昇華する。蒸着源装置2の上面には、気化した有機材料を基板に向けて放出するための開口部と、必要に応じて開口部を遮蔽するためのシャッターが設けられている。
【0020】
蒸着源装置2は、X軸スライド機構3とY軸スライド機構4によってX方向及びY方向に移動可能である。
図2及び
図3において、左側には第1蒸着ステージ28が、右側には第2蒸着ステージ32が設置されているが、蒸着源装置2はX軸スライド機構3によりどちらの蒸着ステージ側にも移動できる。
図2は、蒸着源装置2が第1蒸着ステージ28側に位置した状態を示し、
図3は、蒸着源装置2が第2蒸着ステージ32側に位置した状態を示している。
また、蒸着源装置2は、Y軸スライド機構4により、図の紙面に対して垂直な方向に沿って直線往復走査をすることができ、各蒸着ステージにおいてY方向に沿って基板上に均一性の高い膜を成膜することができる。
【0021】
真空チャンバ1内の第1蒸着ステージ28側には、下から順に第1マスク7、第1基板6、マグネット板を兼用する第1押さえ板5が配置されている。第1マスク7は、一対の第1マスク支持部20により両側から支持される。第1基板6は、第1マスク7とアライメントする時には、一対の第1基板支持部26により両側から支持され、基板クランプ21は第1基板6を第1基板支持部26に固定することが可能である。
【0022】
真空チャンバ1上の第1蒸着ステージ28側には、第1マスク駆動手段11、第1基板駆動手段12、第1アライメント機構22、第1アライメントカメラ23が設けられている。第1マスク駆動手段11は、真空チャンバ1内の第1マスク支持部20の上下方向の位置を調整可能である。第1基板駆動手段12は、真空チャンバ1内の第1基板支持部26の上下方向の位置を調整可能である。第1アライメントカメラ23は、第1基板6と第1マスク7のアライメントマークを撮像可能である。第1アライメント機構22は、第1基板支持部26をX軸方向移動、Y軸方向移動、およびθ回転させることが可能である。
【0023】
上述した第1蒸着ステージ28側と同様の構成が、第2蒸着ステージ32側にも設けられている。すなわち、真空チャンバ1内の第2蒸着ステージ32側には、下から順に第2マスク9、第2基板8、マグネット板を兼用する第2押さえ板27が配置されている。第2マスク9は、一対の第2マスク支持部25により両側から支持される。第2基板8は、第2マスク9とアライメントする時には、一対の第2基板支持部24により両側から支持され、基板クランプ29は第2基板8を第2基板支持部24に固定することが可能である。
【0024】
真空チャンバ1上の第2蒸着ステージ32側には、第2マスク駆動手段13、第2基板駆動手段14、第2アライメント機構31、第2アライメントカメラ30が設けられている。第2マスク駆動手段13は、真空チャンバ1内の第2マスク支持部25の上下方向の位置を調整可能である。第2基板駆動手段14は、真空チャンバ1内の第2基板支持部24の上下方向の位置を調整可能である。第2アライメントカメラ30は、第2基板8と第2マスク9のアライメントマークを撮像可能である。第2アライメント機構31は、第2基板支持部24をX軸方向移動、Y軸方向移動、およびθ回転させることが可能である。
【0025】
次に、各蒸着ステージが備えるマスク駆動手段および基板駆動手段の具体的構成について、より詳しく説明する。マスク駆動手段と基板駆動手段は、それぞれ真空チャンバ1内のマスク支持部と基板支持部を上下に移動させることが可能な機構で、基本的な動作原理は同じである。そこで、第1マスク駆動手段11を例に挙げて説明する。
【0026】
図4は、第1マスク支持部20と第1マスク駆動手段11の一部を拡大した模式的な断面図で、同図に示すように第1マスク支持部20の軸は、金属ベローズ19を介して気密性が確保された状態で上下動が可能に大気側に連通している。そして、第1マスク支持部20は、プーリー16とタイミングベルト15を介して伝達される駆動モータ17の回転を、ボールねじ18を用いて直線運動に変換することにより、上下に移動が可能である。第1蒸着ステージ28では、マスクを支持可能な一対の第1マスク支持部20を2軸同期制御することにより、第1マスク7の姿勢を維持しながら昇降動作を行うことが可能である。
【0027】
同様に、第1基板支持部26の軸も金属ベローズを介して気密性が確保された状態で大気側に連通しており、プーリーとタイミングベルトを介して伝達される駆動モータの回転をボールねじで直線運動に変換することにより、上下動が可能である。第1蒸着ステージ28では、基板を支持可能な一対の第1基板支持部26を2軸同期制御することにより、第1基板6の姿勢を維持しながら昇降動作を行うことが可能である。
そして、第2蒸着ステージ32側の第2マスク駆動手段13、第2基板駆動手段14も、同様の機構を有している。
【0028】
(成膜装置の動作)
次に、実施形態の成膜装置の動作について、成膜装置100を例に挙げて説明する。実施形態の成膜装置では、一方の蒸着ステージで蒸着を行う間に、他方の蒸着ステージではマスクを下方に移動させ、基板をハンドリングするための空間を創出してから基板の交換を行う。
図5は、成膜装置100の動作の1サイクルについて、第1蒸着ステージ、第2蒸着ステージ、蒸着源装置の各動作状態の推移を示すタイムチャートである。
【0029】
まず期間T1においては、制御部が各部を制御して第1処理を実行して、以下の第1工程が実施される。すなわち、成膜装置100の第1蒸着ステージ28側では、第1基板6に対して蒸着を行う。蒸着源装置2は期間T1の前に第1蒸着ステージ28側に予め移動してあり、シャッターを開いて蒸着を開始すると、Y軸スライド機構4によりY方向に往復走査しながら基板6の蒸着領域全体に均一性の高い蒸着を行う。所定の膜厚だけ蒸着するとシャッターを閉じて蒸着を終了する。
【0030】
一方、期間T1において、第2蒸着ステージ32では、すでに蒸着済みの基板を搬出し、次に蒸着する基板を搬入して第2マスク9との相対位置をアライメントし、アライメント済の基板とマスクを成膜位置にセットする。尚、
図2は、期間T1における成膜装置100の各部の配置を示している。
【0031】
次に期間T2においては、制御部が各部を制御して第2処理を実行して、以下の第2工程が実施される。すなわち、シャッターを閉じた状態の蒸着源装置2を、X軸スライド機構3により第1蒸着ステージ28側から第2蒸着ステージ32側に移動させる。
【0032】
次に期間T3においては、制御部が各部を制御して第3処理を実行して、以下の第3工程が実施される。すなわち、期間T1に第2蒸着ステージ32に搬入して成膜位置にセットしておいた第2基板8に対して蒸着を行う。蒸着源装置2は、シャッターを開いて蒸着を開始すると、Y軸スライド機構4によりY方向に往復走査しながら第2基板8の蒸着領域全体に均一性の高い蒸着を行う。所定の膜厚だけ蒸着するとシャッターを閉じて蒸着を終了する。
【0033】
一方、期間T3において、第1蒸着ステージ28では、すでに期間T1に蒸着を完了した基板を搬出し、次に蒸着する基板を搬入して第1マスク7との相対位置をアライメントし、アライメント済の基板とマスクを成膜位置にセットする。尚、
図3は、期間T3における成膜装置100の各部の配置を示している。
【0034】
次に期間T4においては、制御部が各部を制御して第4処理を実行して、以下の第4工程が実施される。すなわち、シャッターを閉じた状態の蒸着源装置2を、X軸スライド機構3により第2蒸着ステージ32側から第1蒸着ステージ28側に移動させる。
【0035】
成膜装置100は、以上説明した期間T1から期間T4の動作を繰り返し連続的に行うことにより、蒸着材料の利用効率を高め、多数の基板に対して高いスループットで蒸着を行うことができる。
【0036】
次に、各蒸着ステージにおいて、蒸着済みの基板を蒸着ステージから搬出し、次に蒸着する未蒸着の基板を搬入して成膜位置にセットするまでの手順を詳しく説明する。
ここでは、
図3および
図6~
図8を参照して、期間T3における第1蒸着ステージ28側の動作について説明するが、期間T1における第2蒸着ステージ32側の動作も、手順は同様である。尚、各図において、一点鎖線10は成膜時におけるマスク支持部の高さを示し、一点鎖線36は蒸着源装置2の最高部位の高さを示している。
【0037】
期間T3の開始時点では、第1蒸着ステージ28には、期間T1で蒸着を完了した基板が成膜位置にセットされたままになっている。すなわち、
図8に示すように、第1マスク支持部20は成膜時における高さである一点鎖線10のレベルにあり、蒸着済みの基板と第1マスク7を支持している。蒸着済みの基板の上面にはマグネット板を兼用する第1押さえ板5が密着しており、第1マスク7を基板の下面に吸着させている。蒸着済みの基板は、この段階では第1マスク支持部20に支持されており、第1基板支持部26からは離間し、基板クランプ21は開放状態となっている。
蒸着済みの基板を、搬送ロボットの基板保持ハンド33を用いて第1蒸着ステージ28から搬出するために、以下の動作を行う。
【0038】
まず第1押さえ板5を上昇させて蒸着済みの基板の上面から離間し、第1マスク7をマグネットによる吸引から開放する。次に、第1基板駆動手段12を駆動して第1基板支持部26を上昇させ、蒸着済みの基板を支持させた状態で一点鎖線10よりも若干(例えば10mm)高い位置に移動させる。また、第1マスク駆動手段11を駆動して第1マスク支持部20を下降させ、第1マスク7を支持させた状態で一点鎖線36よりも低い位置に移動させる。蒸着源装置2は期間T2において第2蒸着ステージ32側に移動しているため、第1マスク支持部20を一点鎖線36よりも低い位置まで下降させても、蒸着源装置2と干渉することはない。場合によっては、蒸着源装置2にポジションセンサを設けておき、第1マスク支持部20を下降させる前に蒸着源装置2が第2蒸着ステージ32側に移動しているのを確認する構成としてもよい。
【0039】
本実施形態では、マスク支持部を蒸着源装置の最高部位の高さよりも低い高さにまで下降させることにより、基板支持部とマスクの間に搬送ロボットの動作スペースを創出することができる。基板支持部と搬送ロボットとの間で基板の受け渡し作業を行うには、基板支持部とマスクの間には、搬送ロボットを動作させるだけの広い作業空間が必要である。従来の成膜装置では、基板を搬送する時に、マスクを蒸着時と同じ高さに固定していたため、搬送ロボットの動作スペースを確保するためには、一点鎖線10と真空チャンバの天井の間に広い空間を確保しておく必要があった。そして、基板支持部を真空チャンバの天井方向に大きく(例えば150mm)移動させて搬送ロボットの動作スペースを確保していたが、真空チャンバの高さが大きくなるため装置が大型化し、製造設備のトータルコストが増大していた。
【0040】
本実施形態では、基板を搬出する時には、マスク支持部を下降させることにより、基板支持部を一点鎖線10よりも若干高い位置に移動すれば、基板支持部とマスクの間に搬送ロボットの動作スペースを創出することができる。このため、本実施形態では一点鎖線10と真空チャンバの天井の間に広い空間を確保する必要がないため、
図2や
図3に示すように真空チャンバの室内高さHCを低減し、成膜装置の大きさや重量を低減することができる。すなわち、製造設備のトータルコストを抑制することができる。
【0041】
蒸着済みの基板を搬出する際には、
図3や
図6に示すように、搬送ロボットの基板保持ハンド33を用いて蒸着済みの基板6をすくい上げるようにして保持し、ゲートバルブ34を通過させて搬送室35に搬出する。
【0042】
蒸着済みの基板の搬出が完了すると、次に蒸着する対象である未蒸着の基板を、搬送ロボットを用いて第1蒸着ステージ28に搬入する。各部の高さは、蒸着済みの基板を搬出する時と同様である。したがって、
図6に図示された基板6は、搬出時については蒸着済みの基板であり、搬入時については未蒸着の基板であると言える。未蒸着の基板を第1基板支持部26上に載置すると、搬送ロボットの基板保持ハンド33は搬送室35に退避し、ゲートバルブ34は閉鎖される。
【0043】
その後、
図7に示すように、第1基板支持部26に載置された未蒸着の第1基板6は、基板クランプ21により固定される。
次に、第1マスク駆動手段11を駆動して第1マスク支持部20を上昇させ、蒸着時の高さである一点鎖線10の位置で静止させる。第1基板支持部26は一点鎖線10よりも高い位置にあるが、第1アライメントカメラ23にて第1基板6と第1マスク7のアライメントマークを同時に撮像できる位置まで第1基板を第1マスク7に近接させるように第1基板駆動手段12を駆動して、第1基板支持部26を下降させる。そして、第1基板6と第1マスク7の位置合わせのために、第1アライメントカメラ23にて第1基板6と第1マスク7のアライメントマークを撮像し、撮像データに基づき制御部がアライメント補正量を演算する。
次にここで一旦、第1基板は第1基板駆動手段12を駆動して第1基板支持部26を上昇させる。そして、X軸方向移動、Y軸方向移動及びθ回転可能な第1アライメント機構22を演算結果に基づいて制御部が駆動し、第1基板6をアライメント目標位置に移動させる。
【0044】
第1基板6をアライメント目標位置に移動させた後に、再び第1基板6を第1基板駆動手段12を駆動して第1基板支持部26を下降させて、蒸着時の高さである一点鎖線10の位置で静止させる。そして上方にあるマグネット板を兼用する第1押さえ板5を下降させると、マグネットの磁力で磁性体である第1マスク7が吸い寄せられ、第1基板6の下面と密着する状態になる。第1基板6と第1マスク7が密着状態になった後、基板クランプ21をアンクランプ状態にする。
【0045】
次に、第1基板支持部26を少しだけ下降させることによって、第1基板6は第1マスク7と密着した状態のまま第1マスク支持部20に積載された状態になる。すなわち、
図8に示す成膜位置にセットされた状態となる。
ここまでの動作を、
図5に示す期間T3の間、すなわち第2蒸着ステージ32側で基板への成膜が終了するまでの間に完了させる。
【0046】
(制御系)
次に、
図9の制御ブロック図を参照して、実施形態の成膜装置100の制御系の構成について説明する。尚、成膜装置100の制御系は、
図1に示す成膜システム全体を制御する制御系の一部を構成するものであってもよい。尚、図示の便宜上、
図9には制御部と接続された要素のうち、一部だけを示している。
【0047】
制御部50は、成膜装置100の動作を制御するためのコンピュータで、内部には、CPU、ROM、RAM、I/Oポート等を備えている。ROMには、成膜装置100の基本動作に関わる動作プログラムが記憶されている。
本実施形態の成膜方法に関わる各種処理を実行するためのプログラムは、基本動作プログラムと同様にROMに記憶させておいてもよいが、ネットワークを介して外部からRAMにロードしてもよい。あるいは、プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を介して、RAMにロードしてもよい。
【0048】
I/Oポートは、外部機器やネットワークと接続され、例えば蒸着に必要なデータの入出力を、外部のコンピュータ51との間で行うことができる。また、I/Oポートは、不図示のモニターや入力装置と接続され、成膜装置の動作状態情報を操作者に表示したり、操作者からの命令入力を受け付けたりすることができる。
【0049】
制御部50は、第1マスク駆動手段11、第1基板駆動手段12、第1アライメント機構22、基板クランプ21と接続され、第1蒸着ステージ28の各部の動作を制御する。また、制御部50は、第2マスク駆動手段13、第2基板駆動手段14、第2アライメント機構31、基板クランプ29と接続され、第2蒸着ステージ32の各部の動作を制御する。
また、制御部50は、X軸スライド機構3、Y軸スライド機構4と接続され、蒸着源装置2の位置を制御する。また、制御部50は、蒸着源装置2と接続され、蒸着源装置2のヒータやシャッターの動作を制御する。
【0050】
さらに、制御部50は、第1アライメントカメラ23、第2アライメントカメラ30、蒸着源装置のポジションセンサ、マスク支持部のポジションセンサ、等のセンサと接続され、各部の制御に必要な情報を入手する。
また、制御部50は、搬送ロボットの制御部やゲートバルブ34の制御部と接続され、基板の搬出や搬入を行う際には、これらと協業して動作タイミングの同期調整を行う。場合によっては、制御部50は、搬送ロボットやゲートバルブ34の動作を直接制御してもよい。
制御部50は、これら各部の動作を制御して、各蒸着ステージにおける基板の搬入、蒸着、基板の搬出を含めた成膜工程全般にかかる処理を実行する。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の成膜装置および成膜方法では、一方の蒸着ステージで蒸着が完了すると、蒸着源装置を他方の蒸着ステージに移動させ、蒸着を開始する。そして、他方の蒸着ステージにおける蒸着が完了するまでの間に、一方の蒸着ステージではマスク支持部を下方に移動させて蒸着済の基板の搬出と未蒸着の基板の搬入を行い、マスクとのアライメントを完了させ成膜ポジションにセットする。そして、他方の蒸着ステージで蒸着が完了すると、蒸着源装置を一方の蒸着ステージに移動させ、蒸着を開始する。そして、一方の蒸着ステージにおける蒸着が完了するまでの間に、他方の蒸着ステージではマスク支持部を下方に移動させて蒸着済の基板の搬出と未蒸着の基板の搬入を行い、その後マスクをアライメント位置に上昇させ、マスクと基板のアライメントを完了させ成膜ポジションにセットする。以上を繰り返し行うことにより、同一の真空チャンバ内の2つの蒸着ステージに交互に搬入される新しい基板に対し、連続的に蒸着を行うことが可能となる。つまり、同一の真空チャンバ内で、成膜と基板交換を同時に並行して行うことで、有機EL素子を製造する際に蒸着材料の利用効率を高め、成膜のスループットを高速化することが可能となる。
【0052】
さらに、本実施形態では、基板を搬出または搬入する時にはマスク支持部を蒸着ポジションやアライメント位置よりも下方に下降させるので、基板支持部を成膜位置よりも若干高い位置に移動すれば、基板支持部とマスクの間に搬送ロボットの動作スペースを創出することができる。本実施形態では、成膜位置と真空チャンバの天井の間に広い空間を確保する必要がないため、真空チャンバの室内高を縮小し、成膜装置の大きさや重量を低減することができる。このため、有機EL素子の製造設備のトータルコストを抑制することができる。
【0053】
[他の実施形態]
尚、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
例えば、基板を交換する際には、マスク支持部を蒸着源装置の最高部位の高さよりも低い高さにまで下降させるのが好ましいが、蒸着源装置の最高部位よりも高い位置までの下降で搬送ロボットの動作空間が確保できる場合には、その位置まででもよい。要は、基板を交換する際にマスク支持部を下降させることにより、基板支持部とマスクの間に搬送ロボットの動作スペースを創出し、真空チャンバの高さを抑制できればよい。
また、一つの成膜装置が複数の蒸着ステージを備える系であれば本発明は実施可能であり、例えば一つの成膜装置が3以上の蒸着ステージを備えていてもよい。
【0054】
図10は、本発明を実施した、有機ELパネルを製造する製造システム300の説明図である。製造システム300は、複数の成膜装置100、搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103、基板供給室1105、マスクストック室1106、受渡室1107、ガラス供給室1108、貼合室1109、取出室1110等を備えている。各成膜装置100は、成膜材料の違いやマスクの違いなど細かい点で相違する部分はあるものの、基本的な構成(特に基板の搬送やアライメントに関わる構成)はほぼ共通している。そして、上述したように、各成膜装置100は、一方の蒸着ステージにおける蒸着が完了するまでの間に、他方の蒸着ステージではマスク支持部を蒸着ポジションやアライメント位置よりも下方に移動させて蒸着済の基板の搬出と未蒸着の基板の搬入を行い、その後マスクを上昇させ、基板とマスクとのアライメントを完了させ成膜ポジションにセットする。
【0055】
搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103には、搬送機構であるロボット1120が配置されている。ロボット1120によって各室間の基板の搬送が行われる。製造システム300に含まれる複数の成膜装置100は、お互いが同一材料を成膜する装置であってもよいし、異なる材料を成膜する装置であってもよい。例えば、各成膜装置が互いに異なる発光色の有機材料を蒸着する製造システムでもよい。製造システム300では、ロボット1120によって搬送された基板に有機材料を蒸着したり、あるいは金属材料等の無機材料の薄膜を例えば蒸着により形成する。
【0056】
基板供給室1105には、外部から基板が供給される。マスクストック室1106には、各成膜装置100にて用いられ、膜が堆積したマスクが、ロボット1120によって搬送される。マスクストック室1106に搬送されたマスクを回収することで、マスクを洗浄することができる。また、マスクストック室1106に洗浄済みのマスクを収納しておき、ロボット1120によって成膜装置100にセットすることもできる。
【0057】
ガラス供給室1108には、外部から封止用のガラス材が供給される。貼合室1109において、成膜された基板に封止用のガラス材を貼り合わせることで、有機ELパネルが製造される。製造された有機ELパネルは、取出室1110から取り出される。
以上のように、本発明は有機EL素子を構成する有機膜を成膜する際に好適に実施され得るが、それ以外の成膜に用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0058】
1・・・真空チャンバ/2・・・蒸着源装置/3・・・X軸スライド機構/4・・・Y軸スライド機構/5・・・第1押さえ板/6・・・第1基板/7・・・第1マスク/8・・・第2基板/9・・・第2マスク/10・・・成膜時におけるマスク支持部の高さを示す一点鎖線/11・・・第1マスク駆動手段/12・・・第1基板駆動手段/13・・・第2マスク駆動手段/14・・・第2基板駆動手段/15・・・タイミングベルト/16・・・プーリー/17・・・駆動モータ/18・・・ボールねじ/19・・・金属ベローズ/20・・・第1マスク支持部/21・・・基板クランプ/22・・・第1アライメント機構/23・・・第1アライメントカメラ/24・・・第2基板支持部/25・・・第2マスク支持部/26・・・第1基板支持部/27・・・第2押さえ板/28・・・第1蒸着ステージ/29・・・基板クランプ/30・・・第2アライメントカメラ/31・・・第2アライメント機構/32・・・第2蒸着ステージ/33・・・基板保持ハンド/34・・・ゲートバルブ/35・・・搬送室/36・・・蒸着源装置2の最も高い部分の高さを示す一点鎖線/50・・・制御部/51・・・外部のコンピュータ/100、101、102・・・成膜装置/103・・・搬送経路/104・・・可動アーム/300・・・有機ELパネルを製造する製造システム/1101、1102、1103・・・搬送室/1105・・・基板供給室/1106・・・マスクストック室/1107・・・受渡室/1108・・・ガラス供給室/1109・・・貼合室/1110・・・取出室/1120・・・ロボット