(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】極低温冷却装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
F25B 9/06 20060101AFI20221206BHJP
F25B 11/02 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
F25B9/06 K
F25B11/02 A
(21)【出願番号】P 2019017902
(22)【出願日】2019-02-04
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘川 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】服部 賢二
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-169880(JP,A)
【文献】特開2017-215089(JP,A)
【文献】特開平05-079716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0134533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00-9/14
F25B 11/02
H01B 12/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液化冷媒を貯留する第1貯槽と、
前記第1貯槽と被冷却体との間にわたり、前記第1液化冷媒が循環する第1閉流路と、
前記第1閉流路に位置し、前記第1
閉流路に前記第1液化冷媒を循環させる循環ポンプと、
第2液化冷媒を貯留する第2貯槽と、
前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記第2液化冷媒が流通する第1供給経路と、
冷媒ガスが循環する第2閉流路と、前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを圧縮して循環させる圧縮機と、前記圧縮機の二次側の前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを断熱膨張させる膨張タービンと、前記膨張タービンの二次側の前記第2閉流路と前記第1閉流路とに位置する第1熱交換器と、前記圧縮機の二次側かつ前記膨張タービンの一次側の前記第2閉流路、前記第1熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路、及び前記第1供給経路に位置する第2熱交換器と、を有する冷凍機と、
前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路に位置する第1温度測定手段と、
前記第2熱交換器の一次側の前記第1供給経路に位置する第1開閉バルブと、
前記圧縮機、前記第1温度測定手段、及び前記第1開閉バルブとの間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う制御手段と、を備える極低温冷却装置。
【請求項2】
前記第2熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2温度測定手段をさらに備える、請求項1に記載の極低温冷却装置。
【請求項3】
第1液化冷媒を貯留する第1貯槽と、
前記第1貯槽と被冷却体との間にわたり、前記第1液化冷媒が循環する第1閉流路と、
前記第1閉流路に位置し、前記第1
閉流路に前記第1液化冷媒を循環させる循環ポンプと、
第2液化冷媒を貯留する第2貯槽と、
前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記第2液化冷媒が流通する第1供給経路と、
冷媒ガスが循環する第2閉流路と、前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを圧縮して循環させる圧縮機と、前記圧縮機の二次側の前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを断熱膨張させる膨張タービンと、前記膨張タービンの二次側の前記第2閉流路と前記第1閉流路とに位置する第1熱交換器と、前記圧縮機の二次側かつ前記膨張タービンの一次側の前記第2閉流路、前記第1熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路、及び前記第1供給経路に位置する第2熱交換器と、を有する冷凍機と、
前記第1熱交換器の二次側かつ前記第2熱交換器の一次側の前記第2閉流路に位置する第3温度測定手段と、
前記第2熱交換器の一次側の前記第1供給経路に位置する第1開閉バルブと、
前記圧縮機、前記第3温度測定手段、及び前記第1開閉バルブとの間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う制御手段と、を備える極低温冷却装置。
【請求項4】
前記第2貯槽の気相側に一端が接続し、前記第2熱交換器の二次側の前記第1供給経路に他端が接続する第2供給経路と、
前記第2供給経路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2開閉バルブと、をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の極低温冷却装置。
【請求項5】
前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記被冷却体の二次側かつ前記第1貯槽の一次側の前記第1閉流路に他端が接続する第3供給経路と、
前記第3供給経路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第3開閉バルブと、をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の極低温冷却装置。
【請求項6】
前記第1液化冷媒と前記第2液化冷媒とが、液体窒素である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の極低温冷却装置。
【請求項7】
請求項
1に記載の極低温冷却装置の運転方法であって、
前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、1以上の情報と、
前記第1温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路内の前記第1液化冷媒の温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する、極低温冷却装置の運転方法。
【請求項8】
請求項2に記載の極低温冷却装置の運転方法であって、
前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、1以上の情報と、
前記第1温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路内の前記第1液化冷媒の温度情報と、
前記第2温度測定手段による、前記第2熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路内の前記冷媒ガスの温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する
、極低温冷却装置の運転方法。
【請求項9】
請求項3に記載の極低温冷却装置の運転方法であって、
前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、1以上の情報と、
前記第3温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側かつ前記第2熱交換器の一次側の前記第2閉流路内の前記冷媒ガスの温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する、極低温冷却装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷却装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導送電ケーブルは、過冷却(サブクール)状態の液化冷媒によって冷却する必要がある。一般に、液化冷媒をサブクール温度まで冷却するには、液化冷媒を冷却する冷凍機を有する極低温冷却装置が用いられる。
【0003】
ところで、超電導送電ケーブルでは、電力需要の関係で昼間と夜間とで送電量が大きく異なる。超電導送電ケーブルに流れる電流が増加すると、超電導送電ケーブルの熱負荷が増大するため、極低温冷却装置に用いる冷凍機は、年間を通して昼間の最大送電量に応じた冷凍能力となるように選定される。
【0004】
このような極低温に冷却可能な冷凍機としては、ヘリウム液化機/冷凍機が知られている。しかしながら、ヘリウム液化機/冷凍機は、冷凍能力が低いため、安定して超電導送電ケーブル等の超電導電力機器を冷却することができないという課題があった。
【0005】
そこで、真空断熱の液体窒素貯槽を付帯させて、液体窒素をヘリウム液化機/冷凍機の熱交換器に導入してヘリウムの液化能力を増加させる極低温冷凍装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、ヘリウム液化機/冷凍機に、ネオンガスを冷媒とするネオン冷凍機を組み合わせて、ネオン冷凍機で発生させた低温のネオンガスでヘリウムガスを予冷することでヘリウム液化機/冷凍機の能力を増加させるカスケードターボヘリウム冷凍液化装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、超電導ケーブルの予冷処理時に発生する低温の気化冷媒を有効活用することで、冷凍機の冷媒ガスをサブクール温度まで短時間で冷却することが可能な超電導ケーブル冷却装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平05-079716号公報
【文献】特開昭59-122868号公報
【文献】特開2016-169880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の極低温冷凍装置及びカスケードターボヘリウム冷凍液化装置では、ヘリウム液化機/冷凍機の能力を増加させるため、付帯させた液体窒素貯槽から液体窒素を常に供給する必要があり、液体窒素の消費量が増大するという課題があった。また、従来の超電導ケーブル冷却装置では、超電導ケーブル等の超電導電力機器の予冷処理時以外において冷却能力を補うことができないという課題があった。
【0008】
本発明は、上述のような事情から為されたものであり、補助的な液化冷媒の消費量を抑制しつつ、予冷処理時以外においても冷凍機の冷却能力を増大させることが可能な極低温冷却装置及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
[1] 第1液化冷媒を貯留する第1貯槽と、
前記第1貯槽と被冷却体との間にわたり、前記第1液化冷媒が循環する第1閉流路と、
前記第1閉流路に位置し、前記第1流路に前記第1液化冷媒を循環させる循環ポンプと、
第2液化冷媒を貯留する第2貯槽と、
前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記第2液化冷媒が流通する第1供給経路と、
冷媒ガスが循環する第2閉流路と、前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを圧縮して循環させる圧縮機と、前記圧縮機の二次側の前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを断熱膨張させる膨張タービンと、前記膨張タービンの二次側の前記第2閉流路と前記第1閉流路とに位置する第1熱交換器と、前記圧縮機の二次側かつ前記膨張タービンの一次側の前記第2閉流路、前記第1熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路、及び前記第1供給経路に位置する第2熱交換器と、を有する冷凍機と、
前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路に位置する第1温度測定手段と、
前記第2熱交換器の一次側の前記第1供給経路に位置する第1開閉バルブと、
前記圧縮機、前記第1温度測定手段、及び前記第1開閉バルブとの間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う制御手段と、を備える極低温冷却装置。
[2] 前記第2熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2温度測定手段をさらに備える、[1]に記載の極低温冷却装置。
[3] 第1液化冷媒を貯留する第1貯槽と、
前記第1貯槽と被冷却体との間にわたり、前記第1液化冷媒が循環する第1閉流路と、
前記第1閉流路に位置し、前記第1流路に前記第1液化冷媒を循環させる循環ポンプと、
第2液化冷媒を貯留する第2貯槽と、
前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記第2液化冷媒が流通する第1供給経路と、
冷媒ガスが循環する第2閉流路と、前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを圧縮して循環させる圧縮機と、前記圧縮機の二次側の前記第2閉流路に位置し、前記冷媒ガスを断熱膨張させる膨張タービンと、前記膨張タービンの二次側の前記第2閉流路と前記第1閉流路とに位置する第1熱交換器と、前記圧縮機の二次側かつ前記膨張タービンの一次側の前記第2閉流路、前記第1熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路、及び前記第1供給経路に位置する第2熱交換器と、を有する冷凍機と、
前記第1熱交換器の二次側かつ前記第2熱交換器の一次側の前記第2閉流路に位置する第3温度測定手段と、
前記第2熱交換器の一次側の前記第1供給経路に位置する第1開閉バルブと、
前記圧縮機、前記第3温度測定手段、及び前記第1開閉バルブとの間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う制御手段と、を備える極低温冷却装置。
[4] 前記第2貯槽の気相側に一端が接続し、前記第2熱交換器の二次側の前記第1供給経路に他端が接続する第2供給経路と、
前記第2供給経路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第2開閉バルブと、をさらに備える、[1]乃至[3]のいずれかに記載の極低温冷却装置。
[5] 前記第2貯槽の液相側に一端が接続し、前記被冷却体の二次側かつ前記第1貯槽の一次側の前記第1閉流路に他端が接続する第3供給経路と、
前記第3供給経路に位置し、前記制御手段との間で電気信号の送信及び受信の少なくとも一方を行う第3開閉バルブと、をさらに備える、[1]乃至[4]のいずれかに記載の極低温冷却装置。
[6] 前記第1液化冷媒と前記第2液化冷媒とが、液体窒素である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の極低温冷却装置。
[7] [1]乃至[3]のいずれかに記載の極低温冷却装置の運転方法であって、
前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、少なくとも1以上の情報と、
前記第1温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路内の前記第1液化冷媒の温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する、極低温冷却装置の運転方法。
[8] 前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、1以上の情報と、
前記第1温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側の前記第1閉流路内の前記第1液化冷媒の温度情報と、
前記第2温度測定手段による、前記第2熱交換器の二次側かつ前記圧縮機の一次側の前記第2閉流路内の前記冷媒ガスの温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する、[7]に記載の極低温冷却装置の運転方法。
[9] [3]に記載の極低温冷却装置の運転方法であって、
前記圧縮機の、回転数、電力値及び電流値のうち、1以上の情報と、
前記第3温度測定手段による、前記第1熱交換器の二次側かつ前記第2熱交換器の一次側の前記第2閉流路内の前記冷媒ガスの温度情報と、を電気信号として連続的又は間欠的に前記制御手段に送信し、
前記制御手段から、前記第1開閉バルブの開度の制御信号を連続的又は間欠的に前記第1開閉バルブに送信して、
前記第1供給経路内の前記第2液化冷媒の導入量を制御する、極低温冷却装置の運転方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の極低温冷却装置及びその運転方法によれば、補助的な液化冷媒の消費量を抑制しつつ、予冷処理時以外においても冷凍機の冷却能力を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した第1実施形態である極低温冷却装置の構成を模式的に示す系統図である。
【
図2】本発明を適用した第2実施形態である極低温冷却装置の構成を模式的に示す系統図である。
【
図3】本発明を適用した第3実施形態である極低温冷却装置の構成を模式的に示す系統図である。
【
図4】本発明を適用した第4実施形態である極低温冷却装置の構成を模式的に示す系統図である。
【
図5】本発明の極低温冷却装置の効果を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した一実施形態である極低温冷却装置について、その運転方法とともに図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
本明細書において、「サブクール温度」とは、サブクール状態(液体がその飽和温度(沸騰が起きる温度)より低い状態)となる温度帯のことをいう。大気圧下における液体窒素を液化冷媒として用いる場合、サブクール温度とは、沸点(約77K)から凝固点(約63K)までの温度帯のことをいう。なお、飽和温度とは、ある圧力の下で液体が沸騰する、または蒸気が凝縮する温度のことをいう。
【0014】
<第1実施形態>
先ず、本発明を適用した第1の実施形態である極低温冷却装置の構成について、説明する。
図1は、本発明を適用した第1の実施形態である極低温冷却装置の構成の一例を示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の極低温冷却装置1は、第1貯槽2と、第1閉流路CL1と、循環ポンプ3と、冷凍機4の第1熱交換器10と、第2貯槽5と、第1供給経路L1と、第1開閉バルブV1と、第2供給経路L2と、第2開閉バルブV2と、第1温度測定装置(第1温度測定手段)T1と、第2温度測定装置(第2温度測定手段)T2と、第3温度測定装置(第3温度測定手段)T3と、制御装置(制御手段)6と、を備える。
【0015】
本実施形態の極低温冷却装置1は、液化冷媒(第1液化冷媒)をサブクール温度まで冷却し、冷却した液化冷媒を循環ポンプで循環させることにより超電導電力機器(被冷却体S)を構成する超電導体(例えば、コイルやケーブル等)を、その臨界温度以下に冷却する装置である。
【0016】
被冷却体Sとしては、超電導送電ケーブル、超電導変圧器、超電導モーター、超電導限流器、超電導電力貯蔵器等の超電導電力機器が挙げられる。
【0017】
第1貯槽2は、第1液化冷媒を貯留する。第1貯槽2の構造としては、外気の環境温度の影響の観点から、例えば、真空二重構造や断熱材を用いた断熱構造が好ましい。これにより、第1液化冷媒の気化を防ぐことができる。なお、第1貯槽2は、気相部分に接続する図示略の排ガス経路を有していてもよい。これにより、第1貯槽2内の圧力に応じて、気相部分の気化した第1液化冷媒を系外に排出できる。
【0018】
第1液化冷媒としては、被冷却体Sの超電導状態を維持可能な温度領域で液体状態となる物質が好ましく、かつサブクール状態で電気絶縁性の高いものが好ましい。このような第1液化冷媒としては、安全面やコスト面から、例えば、液化窒素(液体窒素)が挙げられる。
【0019】
第1閉流路CL1は、第1貯槽2と被冷却体Sとの間にわたって設けられた閉ループ状の供給経路である。第1閉流路CL1内には、第1液化冷媒が循環する。第1閉流路CL1には、第1液化冷媒の流れ方向に沿って、第1貯槽2と、循環ポンプ3と、後述する第1熱交換器10と、第1温度測定装置T1と、被冷却体Sと、がこの順で配置される。第1閉流路CL1の分岐点aにおいて、排気ラインL3が分岐する。
【0020】
循環ポンプ3は、第1貯槽2の二次側の第1閉流路CL1に位置する。循環ポンプ3は、第1貯槽2内の第1液化冷媒を圧送し、冷凍機4の第1熱交換器10で冷却された第1液化冷媒を被冷却体Sに供給する。循環ポンプ3は、第1流路CL1内に第1液化冷媒を循環させる。
第1液化冷媒として液化窒素を用いる場合、循環ポンプ3としては、30L/min~100L/minの範囲で液化窒素を圧送可能なものを用いるとよい。
【0021】
排気ラインL3は、一端が第1閉流路CL1の分岐点aに接続し、他端が大気中に開放している。排気ラインL3は、第3開閉バルブV3を有する。被冷却体Sの予冷処理(液化冷媒を供給して大気温度から液化冷媒の飽和温度付近まで冷却する)において、被冷却体Sとの熱交換によって第1閉流路CL1内の第1液化冷媒が気化した際、第3開閉バルブV3を開放して、排気ラインL3から気化した第1液化冷媒を大気中に放出できる。
【0022】
なお、第1閉流路CL1は、排気経路L3以外に他の排気経路を有する構成でもよい。これにより、第1閉流路CL1内の圧力上昇を未然に防ぎ、安全に運転できる。また、被冷却体Sが超電導送電ケーブルの場合はケーブル長さが数kmと長く、比較的大容量の第1貯槽2が必要となるため、第1閉流路CL1は、第1貯槽2と循環ポンプ3との間に、第1貯槽2よりも小さい容量のリザーバータンク13を有する構成でもよい。
【0023】
冷凍機4は、第2閉流路CL2と、圧縮機7と、膨張タービン9と、第1熱交換器10と、第2熱交換器11と、を有し、水冷装置8を有することが好ましい。なお、圧縮機7及び水冷装置8を除く、冷凍機4の構成要素は、外部からの熱の侵入を抑制するため、図示しない真空断熱容器(コールドボックス)内に収容することが好ましい。
【0024】
第2閉流路CL2は、冷媒ガスが循環する閉ループ状の供給経路である。第2閉流路CL2には、冷媒ガスの流れ方向に沿って、圧縮機7と、水冷装置8と、第2熱交換器11と、膨張タービン9と、第1熱交換器10と、第2熱交換器11と、がこの順で配置される。なお、圧縮機7の二次側から第1熱交換器10までの第2閉流路CL2を「行き側の第2閉流路CL2」ということもある。また、第1熱交換器10の二次側から圧縮機7までの第2閉流路CL2を「戻り側の第2閉流路CL2」ということもある。
【0025】
冷媒ガスは、第1貯槽2に貯留される第1液化冷媒の液化温度よりも十分に低い液化温度を有するものであれば、特に限定されない。第1液化冷媒として液化窒素を用いる場合、冷媒ガスとしては、ヘリウムガス、水素ガス、ネオンガス、あるいはこれらの混合ガスを用いることが可能であり、ネオンガスを用いることが好ましい。冷媒ガスとして、水素ガスあるいはヘリウムガスよりも分子量の大きいネオンガスを用いることで、音速が小さくなり、圧縮機7や膨張タービン9の回転数を低く抑えることができる。これにより、冷凍機4の設計が容易になり、冷凍機4の稼働信頼性が向上する。
【0026】
圧縮機7は、第2閉流路CL2に位置する。圧縮機7は、冷媒ガスを第2閉流路CL2内に循環させる。圧縮機7は、冷媒ガスを圧縮して、高温かつ高圧の冷媒ガスを生成する。圧縮機7は、高温かつ高圧の冷媒ガスを水冷装置8に供給する。
【0027】
水冷装置8は、圧縮機7の二次側の第2閉流路CL2に位置する。水冷装置8は、高温かつ高圧の冷媒ガスを冷却する。水冷後の冷媒ガスの温度は、大気温度(10~35℃)付近となる。水冷装置8は、圧縮機7から供給される高温かつ高圧の冷媒ガスを大気温度付近まで冷却できるものであれば、特に限定されない。水冷装置8としては、水冷式クーラーと空冷式クーラーが利用可能であるが、水冷式が好ましい。冷却された冷媒ガスは、第2熱交換器11を通過した後、膨張タービン9に供給される。
【0028】
第2熱交換器11は、第1の熱交換ブロック11A、第2の熱交換ブロック11B、及び第3の熱交換ブロック11Cを有する。圧縮機7の二次側(下流側)かつ膨張タービン9の一次側(上流側)の第2閉流路(行き側)CL2には、冷媒ガスの流れ方向に沿って、第1の熱交換ブロック11A、第2の熱交換ブロック11B、第3の熱交換ブロック11Cがこの順で配置される。また、第1熱交換器10の二次側かつ圧縮機7の一次側の第2閉流路(戻り側)CL2には、冷媒ガスの流れ方向に沿って、第3の熱交換ブロック11C、第2の熱交換ブロック11B、第1の熱交換ブロック11Aがこの順で配置される。さらに、後述する第1供給経路L1の第1開閉バルブV1の二次側には、第2液化冷媒の流れ方向に沿って、第2の熱交換ブロック11B、第1の熱交換ブロック11Aがこの順で配置される。第1~第3の熱交換ブロック11A~11Cは、隣接する他の熱交換ブロックと所定の間隔を空けて配置され、第2閉流路(行き側と戻り側)CL2及び第1供給経路L1がそれぞれ接続されている。
【0029】
第1の熱交換ブロック11Aは、水冷装置8の二次側の第2閉流路(行き側)CL2と、第2の熱交換ブロック11Bの二次側の第2閉流路(戻り側)CL2と、第2の熱交換ブロック11Bの二次側の第1供給経路L1との間で互いに熱交換する。第1の熱交換ブロック11Aは、例えば、220K以上300K未満の温度範囲で熱交換可能である。
【0030】
第2の熱交換ブロック11Bは、第1の熱交換ブロック11Aの二次側の第2閉流路(行き側)CL2と、第3の熱交換ブロック11Cの二次側の第2閉流路(戻り側)CL2と、第1供給経路L1との間で互いに熱交換する。第2の熱交換ブロック11Bは、例えば、150K以上230K未満の温度範囲で熱交換可能である。
【0031】
第3の熱交換ブロック11Cは、第2の熱交換ブロック11Bの二次側の第2閉流路(行き側)CL2と、第1熱交換器10の二次側の第2閉流路(戻り側)CL2との間で互いに熱交換する。第3の熱交換ブロック11Cは、例えば、70K以上160K未満の温度範囲で熱交換可能である。
【0032】
膨張タービン9は、圧縮機7の二次側の、第2熱交換器11と第1熱交換器10との間の第2閉流路CL2に位置する。膨張タービン9は、第2熱交換器11で冷却された高圧の冷媒ガスを断熱膨張させることにより、前述した第1液化冷媒のサブクール温度まで冷媒ガスの温度を降下させる。
【0033】
第1熱交換器10は、膨張タービン9の二次側の第2閉流路CL2と、循環ポンプ3の二次側の第1閉流路CL1とにわたって位置する。第1熱交換器10は、循環ポンプ3の二次側の第1閉流路CL1内を流れる第1液化冷媒と、膨張タービン9による断熱膨張によってサブクール温度まで冷却された冷媒ガスとを熱交換し、第1液化冷媒をサブクール温度まで冷却する。サブクール温度まで冷却された第1液化冷媒は、被冷却体Sに供給される。一方、第1液化冷媒の冷却に寄与した冷媒ガスは、第2熱交換器11を通過した後、圧縮機7に供給される。
【0034】
第1熱交換器10及び第2熱交換器11としては、小型化及び高性能化の観点から、例えば、アルミプレートフィン熱交換器を用いることができる。
【0035】
第2貯槽5は、第2液化冷媒を貯留する。第2貯槽5の構造としては、第1貯槽2と同様に、真空二重構造や断熱材を用いた断熱構造が好ましい。これにより、第2液化冷媒の気化を防ぎ、損失を少なくすることができる。
【0036】
第2液化冷媒としては、第1液化冷媒の冷却に寄与する冷媒ガスを冷却可能なものが好ましい。このような第2液化冷媒としては、例えば、液化天然ガス(LNG)や液化窒素(液体窒素)が挙げられるが、安全面やコスト面から、液化窒素(液体窒素)が好ましい。また、第1液化冷媒が液化窒素である場合、第2液化冷媒も液化窒素を用いることが好ましい。
【0037】
第1供給経路L1は、第2貯槽5内の第2液化冷媒が流通する流路である。第1供給経路L1は、一端が第2貯槽5の液相側に接続し、他端が大気中に開放している。第1供給経路L1には、第2液化冷媒の流れ方向に沿って、第1開閉バルブV1、第2の熱交換ブロック11B、第1の熱交換ブロック11A、逆止弁12が、この順で配置される。第2の熱交換ブロック11Bの一次側の第1供給経路L1には、一部気化しているが、そのほとんどが液体の第2液化冷媒が流通する。第1の熱交換ブロック11Aの一次側の第1供給経路L1には、気化した第2液化冷媒が流通する。
【0038】
第1開閉バルブV1は、第2貯槽5と、第2の熱交換ブロック11Bの間の第1供給経路L1に位置する。第1開閉バルブV1としては、バルブの開度を連続的又は段階的に調節できるものであれば、特に限定されない。第1開閉バルブV1は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第1開閉バルブV1は、制御装置6から送信される開度信号に基づいてバルブの開度を逐次変更可能である。また、第1開閉バルブV1は、バルブの開度の情報を電気信号として制御装置6に送信可能であってもよい。
【0039】
第2供給経路L2は、第2貯槽5内の上部空間に存在するガス状の第2液化冷媒が流通する流路である。第2供給経路L2は、一端が第2貯槽5の気相側に接続し、他端が第1供給経路L1の合流点bに接続する。なお、合流点bは、第2熱交換器11の二次側の第1供給経路L1に位置する。第2供給経路L2には、第2開閉バルブV2が配置される。第2供給経路L2には、第2貯槽5内の気化した第2液化冷媒が流通する。
【0040】
第2開閉バルブV2は、第2供給経路L2に位置する。第2開閉バルブV2としては、バルブの開度を連続的又は段階的に調節できるものであれば、特に限定されない。第2開閉バルブV2は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第2開閉バルブV2は、制御装置6から連続的あるいは間欠的に送信される開度信号に基づいてバルブの開度を逐次変更可能である。なお、第2開閉バルブV2は、バルブの開度の情報を電気信号として制御装置6に送信可能であってもよい。
【0041】
第1温度測定装置T1は、第1熱交換器10の二次側の第1閉流路CL1に位置する。第1温度測定装置T1は、第1熱交換器10を通過した後の第1閉流路CL1内の第1液化冷媒の温度を連続的あるいは間欠的に検出する。第1温度測定装置T1は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第1温度測定装置T1は、検出した温度情報を電気信号として制御装置6に連続的あるいは間欠的に送信する。
【0042】
第2温度測定装置T2は、第2熱交換器11の二次側かつ圧縮機7の一次側の第2閉流路(戻り側)CL2に位置する。第2温度測定装置T2は、第2熱交換器11を通過した後の、戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度を連続的あるいは間欠的に検出する。第2温度測定装置T2は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第2温度測定装置T2は、検出した温度情報を電気信号として制御装置6に連続的あるいは間欠的に送信する。
【0043】
第3温度測定装置T3は、第1熱交換器10の二次側かつ第2熱交換器11の一次側の第2閉流路(戻り側)CL2に位置する。第3温度測定装置T3は、第1熱交換器10を通過した後の、戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度を連続的あるいは間欠的に検出する。第3温度測定装置T3は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第3温度測定装置T3は、検出した温度情報を電気信号として制御装置6に連続的あるいは間欠的に送信する。
【0044】
制御装置6は、圧縮機7、第1温度測定装置T1、第2温度測定装置T2、第3温度測定装置T3、第1開閉バルブV1及び第2開閉バルブV2のそれぞれと、有線又は無線回線によって電気的に接続されている。なお、
図1中に示す点線は、有線又は無線回線を示す。
【0045】
制御装置6は、図示略の記憶部、演算部、及びバルブ制御部を有する。
記憶部は、少なくとも第1開閉バルブV1及び第2開閉バルブV2を含む開閉バルブの制御全般に関するプログラムを格納する。
また、記憶部は、圧縮機7の最大回転数、最大電力値及び最大電流値のうち、冷凍機4の最大冷凍能力の指標となる1以上の情報と、第1温度測定装置T1で検出する、第1熱交換器10を通過した後の第1閉流路CL1内の第1液化冷媒の温度の上下限の閾値を含む温度範囲の情報と、第2温度測定装置T2で検出する、第2熱交換器11を通過した後の、戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度の上下限の閾値を含む温度範囲の情報と、第3温度測定装置T3で検出する、第1熱交換器10を通過した後の、戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度の上下限の閾値を含む温度範囲の情報と、を記憶する。
さらに、記憶部は、圧縮機7、第1温度測定装置T1、第2温度測定装置T2、第3温度測定装置T3を識別する識別情報と、これらから送信される実測値を連続的あるいは間欠的に記憶する。
【0046】
演算部は、圧縮機7、第1温度測定装置T1、第2温度測定装置T2、及び第3温度測定装置T3が出力した検出結果を取得し、取得した検出結果に基づいて、第1供給経路L1への第2液化冷媒の供給量を決定する。
また、演算部は、圧縮機7、第1温度測定装置T1、第2温度測定装置T2、及び第3温度測定装置T3が出力した検出結果を取得し、取得した検出結果に基づいて、第2供給経路L2への第2液化冷媒の供給量を決定する。
演算部は、第1供給経路L1への第2液化冷媒の供給量、及び第2供給経路L2への第2液化冷媒の供給量に基づいて、第1開閉バルブV1及び第2開閉バルブV2の開度指示を生成し、生成した開度指示をバルブ制御部に出力する。
【0047】
バルブ制御部は、演算部が出力する開度指示に応じて、第1開閉バルブV1及び第2開閉バルブV2の開度をそれぞれ制御する。
【0048】
次に、上述した本実施形態の極低温冷却装置1の運転方法について、説明する。
【0049】
(極低温冷却装置1の運転開始時)
初めに、被冷却体Sを本冷却する前の段階として、被冷却体Sを予冷処理する。具体的には、冷凍機4を介することなく、第1貯槽2からリザーバータンクと被冷却体Sの間の経路に、所定流量の第1液化冷媒を被冷却体Sに供給して、ゆっくりと被冷却体Sの冷却を開始する。
【0050】
常温の被冷却体Sに接触した第2液化冷媒は、温度上昇により気化する。気化した第2液化冷媒は、第43開閉バルブV3を開いて排気ラインL3を介して大気放出する。被冷却体Sの予冷処理に要する時間は、被冷却体Sの熱容量によって変化し、例えば、超電導送電ケーブルでは被冷却体Sが数kmの長さとなるため、予冷には数日を要することがある。また、被冷却体Sが超電導変圧器、超電導モーターまたは超電導限流器の場合は、予冷時間は数時間で済む場合もある。
【0051】
被冷却体Sの予冷がほぼ終了する時点で、冷凍機4を起動して、冷凍機4の予冷を行う。ところで、冷凍機4の起動では、冷凍機4を比較的長い時間放置してから起動する場合や、冷凍機4の運転を停止して比較的短時間で再起動させる場合がある。冷凍機4を長時間放置した状態から起動する場合は、真空断熱容器(コールドボックス)内に収納された第1熱交換器10及び第2熱交換器11の温度は150~300Kとなっており、冷凍機4を起動して第1熱交換器10の出口の冷媒ガスの温度が所定の冷却温度(例えば、65~77K)となるまでの所要時間(クールダウン時間)は比較的長くなる。一方、冷凍機4の運転を停止して比較的短時間で再起動させる場合は、真空断熱容器(コールドボックス)内に収納された第1熱交換器10及び第2熱交換器11の温度は100~150Kのままで、冷凍機4を起動して第1熱交換器10の出口の冷媒ガスの温度がサブクール温度となるまでの所要時間(クールダウン時間)は比較的短い。
ここでは、冷凍機4を比較的長い時間放置してから起動する場合(第1熱交換器10及び第2熱交換器11の温度が150~300K)について、以下の説明を行う。
【0052】
具体的には、第3温度測定装置T3により検出する第1熱交換器10の出口側の冷媒ガスの温度が、常温あるいは低温(例えば、150~300K)の状態から冷凍機4を起動する。同時に、制御装置6により、第1開閉バルブV1が所定の開度に制御されて、第2貯槽5内の液相の第2液化冷媒が第1供給経路L1を介して第2熱交換器11を構成する第2の熱交換ブロック11Bと第2の熱交換ブロック11Aとに導入される。これにより、第1熱交換器10の出口側の冷媒ガスの温度が、所定の冷却温度(例えば、65~77K)までクールダウンするまでの時間を従来よりも大幅に短縮できる。
【0053】
また、第3温度測定装置T3により検出する第1熱交換器10の出口側の冷媒ガスの温度が、所定の冷却温度となった場合、制御装置6により第1開閉バルブV1が閉塞される。このため、第2貯槽5内の第2液化冷媒を無駄に(または過剰に)消費することがない。
【0054】
本実施形態の極低温冷却装置1の運転方法によれば、第3温度測定装置T3によって第1熱交換器10の出口側の冷媒ガスの温度を監視することで、冷凍機4の起動時に冷媒ガスのクールダウンに必要な補助冷却を過不足なく行うことができる。したがって、極低温冷却装置1の運転開始時において、第2液化冷媒を過剰に消費することなく、冷凍機4のクールダウン時間の短縮が可能となる。
なお、冷凍機4のクールダウン時間を短縮する際、圧縮機7の回転数は最大回転数(最大冷凍能力)の場合に限らず、それ以下であってもよい。
【0055】
(極低温冷却装置1の冷凍能力不足時)
冷凍機4を起動し、冷媒ガスのクールダウンが完了した後、極低温冷却装置1は通常運転を行う。
具体的には、圧縮機7は冷媒ガスを断熱圧縮する。断熱圧縮後の冷媒ガスの圧力は、例えば、1~2MPa程度である。断熱圧縮により高温になった冷媒ガスは、水冷装置8によって常温まで冷却された後、第2熱交換器11を通過する。第2熱交換器11では、圧縮機7により圧縮された冷媒ガス(行き側)と、第1熱交換器10を通過後の低温の冷媒ガス(戻り側)とが熱交換することで、圧縮された冷媒ガスが冷却される。
【0056】
次いで、膨張タービン9では、冷却された冷媒ガスを断熱膨張させる。これにより、冷媒ガスの温度がさらに降下する。膨張タービン9の出口温度は、タービン入口温度に対して10~15K程度降下する。このとき、断熱膨張後の冷媒ガスの圧力は、例えば、0.5~1MPa程度となる。
【0057】
第1熱交換器10では、第2閉流路CL2内の断熱膨張後の冷媒ガスと、第1閉流路CL1内の第1貯槽2から供給された第1液化冷媒とが熱交換することで、第1液化冷媒はサブクール温度まで冷却される。そして、サブクール温度まで冷却された第1液化冷媒は被冷却体Sに供給されて被冷却体Sを、その臨界温度以下に冷却する。
【0058】
ところで、被冷却体Sにおいて電力需要が増加して熱負荷が増大すると、圧縮機7を最大回転数で運転したとしても第1熱交換器10において冷媒ガスの供給が追いつかなくなり、冷凍機4の最大冷凍能力を超えてしまい、被冷却体Sを十分冷却することができない。
【0059】
本実施形態の極低温冷却装置1の運転方法によれば、制御装置6により、圧縮機7の回転数や電力値等の運転情報と、第1温度測定装置T1により測定される第1液化冷媒の温度情報とを監視し、圧縮機7が最大冷凍能力を発揮しており、かつ、第1温度測定装置T1で検出する温度が設定値を上回っている場合、制御装置6は冷凍機4の冷凍能力不足と判定する。
【0060】
この判定がなされると、制御装置6により、第1開閉バルブV1が所定の開度に制御されて、第2貯槽5内の液相の第2液化冷媒が第1供給経路L1を介して第2熱交換器11を構成する第2の熱交換ブロック11Bと第2の熱交換ブロック11Aとに導入される。これにより、冷凍機4の冷凍能力を増加させることができる。一方、第1温度測定装置T1で検出する温度が設定値よりも低くなった場合、制御装置6は第1開閉バルブV1を閉じる方向に制御し、第2液化冷媒の導入量を減少させ、最終的に第1開閉バルブV1は全閉となる。これにより、冷凍機4が冷凍能力不足となった場合でも、補助的な冷凍能力を過不足なく付与することができる。
【0061】
また、制御装置6が冷凍機4の冷凍能力不足と判定し、第2貯槽5から第2液化冷媒を供給して冷凍機4の冷凍能力を増加させた場合、第2温度測定装置T2によって冷媒ガスの温度を監視することで、冷却状況を把握することができる。第2温度測定装置T2によって測定される戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度が、設定値よりも低くなった場合、制御装置6により第1開閉バルブV1を閉じることによっても、冷凍機4の冷凍能力を制御することができる。
【0062】
具体的には、第2熱交換器11の低圧側の冷媒ガスの出口温度、すなわち第2温度測定装置T2で検出された温度があらかじめ設定された下限値以下(例えば、0~10℃の範囲内)になった場合、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を絞る方向に制御する。これにより、第2液化冷媒が過剰に第2熱交換器11(第2の熱交換ブロック11B及び第1の熱交換ブロック11A)に導入されない。
【0063】
(極低温冷却装置1の復旧時)
極低温冷却装置1の運転中に何らかの要因で停電が発生し、冷凍機4が短時間(例えば、1~6時間)停止した場合、あるいは何らかの異常を検知してインターロックによって冷凍機4が停止した後に冷凍機4を再起動した場合、冷凍機4の真空断熱容器(コールドボックス)内に収納された第1熱交換器10及び第2熱交換器11の温度は100~150Kまで温度が上昇する。
本実施形態の極低温冷却装置1の運転方法によれば、上述した極低温冷却装置1の運転開始時と同様の制御を行うことで、第2液化冷媒を過剰に消費することなく、冷凍機4のクールダウン時間を短縮できる。
【0064】
(その他)
第2貯槽5内の第2液化冷媒を冷凍機4の第2熱交換器11に導入しないとき、あるいは冷凍機4の運転停止中にあっては、第2貯槽5内の上部空間に存在するガス状の第2液化冷媒(以下、第2液化冷媒ガスという)を第2供給経路L2を介して第1供給経路L1に供給する。具体的には、制御装置6により第2開閉バルブV2を開き、第2貯槽5の気相部分から第2液化冷媒ガスを第2供給経路L2に導入し、合流点bから第1供給経路L1に供給する。これにより、第1供給経路L1の第1開閉バルブV1と逆止弁12との間の流路内が第2液化冷媒ガスによってパージされ、外部からの水分の侵入を防止できる。
【0065】
なお、第2液化冷媒ガスによって第1供給経路L1内をパージする際、第2液化冷媒ガスの導入量は、外部から第1供給経路L1内に水分が入らないような最小流量であればよい。例えば、第1供給経路L1において、逆止弁12の上流側に圧力計を設置し、この圧力計による圧力値が大気圧よりも数kPaだけ高く維持できる程度の流量とすればよい。
【0066】
以上説明したように、本実施形態の極低温冷却装置1及びその運転方法によれば、第1温度測定装置T1が検出する第1熱交換器10を通過した後の第1液化冷媒の温度に応じて、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を制御操作する。これにより、冷凍機4の第2熱交換器11への第2液化冷媒の導入量を調整できる。すなわち、冷凍機4の冷凍能力を調整できる。
【0067】
また、被冷却体Sの熱負荷が増大して被冷却体Sを冷却するために必要な寒冷が冷凍機4の最大冷凍能力を上回った場合、第1温度測定装置T1が検出する第1液化冷媒の温度が所定の冷却温度よりも高くなる。この場合、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を開くように制御操作して、第2熱交換器11に所定の流量で第2液化冷媒を導入する。これにより、冷凍機4において冷媒ガスを冷却するための寒冷が補われて冷凍機4の冷凍能力を増加させることができる。
【0068】
一方、冷凍機4の冷凍能力を増加させて運転した結果、第1温度測定装置T1が検出する第1液化冷媒の温度が所定の冷却温度よりも低くなる。この場合、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を閉じるように制御操作して、第2熱交換器11への第2液化冷媒の導入を停止する。これにより、補助的な第2液化冷媒が過剰に消費されることを防止できる。
【0069】
また、本実施形態の極低温冷却装置1及びその運転方法によれば、第2温度測定装置T2が検出する戻り側の第2閉流路CL2内の冷媒ガスの温度に応じて、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を制御操作する。これにより、第2熱交換器11への第2液化冷媒の導入量を調整できる。すなわち、第1温度測定装置T1と第2温度測定装置T2を併用して監視することにより、補助的な第2液化冷媒の過剰な消費を防止し、冷凍機4の冷凍能力をより精密に調整できる。
【0070】
さらに、本実施形態の極低温冷却装置1及びその運転方法によれば、第3温度測定装置T3が検出する第1熱交換器10を通過した後の冷媒ガスの温度に応じて、制御装置6が第1開閉バルブV1の開度を制御操作する。これにより、第2熱交換器11への第2液化冷媒の導入量を調整できる。したがって、極低温冷却装置1を常温状態から起動する場合、あるいは停電や何らかの要因によってインターロックが発生したりして冷凍機4が低温の中間温度域にある状態で冷凍機4を再起動させた場合、冷凍機4のクールダウン時間を短縮できる。また、冷凍機4のクールダウン中あるいはクールダウンした後に、補助的な第2液化冷媒が過剰に消費されることを防止できる。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した第2の実施形態である極低温冷却装置およびその運転方法について、説明する。
図2は、本発明を適用した第2の実施形態である極低温冷却装置の構成の一例を示す系統図である。
図2に示すように、本実施形態の極低温冷却装置21は、第3温度測定装置(第3温度測定手段)T3を有しない点で、上述した第1実施形態の極低温冷却装置1とは構成が異なる。したがって、第2実施形態の極低温冷却装置21の構成については、上述した第1実施形態の極低温冷却装置1と同一の構成部分について同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0072】
本実施形態の極低温冷却装置21の運転方法によれば、極低温冷却装置21の冷凍能力不足時に、上述した極低温冷却装置1の運転方法と同様の制御を行うことで、補助的な第2液化冷媒が過剰に消費されることを抑制しつつ、冷凍機4の冷凍能力を増加させることができる。
【0073】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した第3の実施形態である極低温冷却装置およびその運転方法について、説明する。
図3は、本発明を適用した第3の実施形態である極低温冷却装置の構成の一例を示す系統図である。
図3に示すように、本実施形態の極低温冷却装置31は、第1温度測定装置(第1温度測定手段)T1及び第2温度測定装置(第2温度測定手段)T2を有しない点で、上述した第1実施形態の極低温冷却装置1とは構成が異なる。したがって、第3実施形態の極低温冷却装置31の構成については、上述した第1実施形態の極低温冷却装置1と同一の構成部分について同じ符号を付すると共に説明を省略する。
【0074】
本実施形態の極低温冷却装置31の運転方法によれば、極低温冷却装置31の運転開始時や復旧時に、上述した極低温冷却装置1の運転方法と同様の制御を行うことで、第2液化冷媒を過剰に消費することなく、冷凍機4のクールダウン時間を短縮できる。
【0075】
<第4実施形態>
次に、本発明を適用した第4の実施形態である極低温冷却装置およびその運転方法について、説明する。
図4は、本発明を適用した第4の実施形態である極低温冷却装置の構成の一例に示す系統図である。
図4に示すように、本実施形態の極低温冷却装置41は、上述した第1実施形態の極低温冷却装置1の構成に加えて、さらに、第1閉流路CL1に液化冷媒を供給するための貯槽を第2貯槽5と共通化し、第2貯槽5から第1閉流路CL1に液化冷媒を供給するためのバイパス経路(第3供給経路)L4および第4開閉バルブV4を備える。第1貯槽2を第2貯槽5と共通にすることにより、装置のコンパクト化、及びコスト削減することができる。
なお、本実施形態の極低温冷却装置41は、第1貯槽2内の第1液化冷媒と、第2貯槽5内の第2液化冷媒とが、同一の場合(例えば、いずれも液化窒素の場合)に適用できる。
【0076】
バイパス経路L4は、第2貯槽5内の第2液化冷媒を第1閉流路CL1内に供給する流路である。バイパス経路L4は、一端が第1供給経路L1の分岐点cに接続し、他端が第1閉流路CL1の合流点dに接続する。なお、分岐点cは、第1開閉バルブV1の一次側の第1供給経路L1に位置する。また、合流点dは、被冷却体Sの二次側かつリザーバータンク13の一次側の第1閉流路CL1に位置する。さらに、バイパス経路L4には、第4開閉バルブV4が配置される。これにより、バイパス経路L4は、第4開閉バルブV4が開いた際に、第1供給経路L1を介して第2貯槽5内の第2液化冷媒を第1閉流路CL1内に供給できる。
【0077】
第4開閉バルブV4は、バイパス経路L4に位置する。第4開閉バルブV4としては、バルブの開度を連続的又は段階的に調節できるものであれば、特に限定されない。第34開閉バルブV4は、有線又は無線回線によって制御装置6と電気的に接続されている。第4開閉バルブV4は、制御装置6から連続的あるいは間欠的に送信される開度信号に基づいてバルブの開度を逐次変更可能である。なお、第4開閉バルブV4は、バルブの開度の情報を電気信号として制御装置6に送信可能であってもよい。
【0078】
ところで、上述したように、被冷却体Sを予冷処理する際、常温の被冷却体Sに接触した第1液化冷媒は、温度上昇により気化する。例えば、被冷却体Sが1kmから数kmといった長尺の超電導ケーブルであった場合、常温から本冷却まで予冷する際、超電導ケーブルを含む第1閉流路CL1内に第1液化冷媒を充満するには、第1閉流路CL1の外部から第1液化冷媒を大量に供給する必要がある。そのため、第1閉流路CL1の外部に、大容量の貯槽が不可欠である。
【0079】
本実施形態の極低温冷却装置41によれば、第1液化冷媒と第2液化冷媒とが同じ場合(例えば、液化窒素)、第1閉流路CL1内に第1液化冷媒を供給するための大容量の貯槽として、第2貯槽5を利用できる。したがって、第1閉流路CL1の外部に、大容量の貯槽を新たに設ける必要がない。
【0080】
ここで、
図5は、本発明を適用した第1~第4の実施形態における極低温冷却装置1,21,31,41の最大冷凍能力を説明するグラフである。
図5において、横軸は冷凍機4の冷却温度(例えば、
図1の第1温度測定装置T1または第3温度測定装置T3の温度)であり、縦軸は冷凍機4の冷凍能力である。
図5では、冷凍機4の圧縮機7の回転数(100%は圧縮機の最大回転数)をパラメータとして回転数毎の冷凍能力の変化を示している。
図5に示すように、圧縮機7の回転数が一定の場合、冷却温度と冷凍能力は比例し、ほぼ直線関係にある。また、冷却温度が同じ場合、圧縮機7の回転数が増加すると冷凍能力は増加し、回転数が減少すると冷凍能力は減少する。最大回転数100%で冷凍機を運転する場合、各冷却温度に応じて最大冷凍能力が決まることが示されている。
【0081】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した第1~第4の実施形態の極低温冷却装置1,21,31,41では、第2熱交換器11が第1の熱交換ブロック11A、第2の熱交換ブロック11B及び第3の熱交換ブロック11Cの3つのブロックからなる構成を一例として説明したが、これに限定されない。例えば、第2熱交換器11は1つのブロック構造であってもよい。第2熱交換器11が1つのブロック構造の場合、第1供給経路L1をブロックの途中から導入する経路を設ければよい。
【0082】
また、上述した第1~第4の実施形態の極低温冷却装置1,21,31,41では、冷凍機4が第2閉流路CL2に圧縮機7と水冷装置8とを1台ずつ有する構成を一例として説明したが、これに限定されない。第2閉流路CL2に位置する圧縮機7及び水冷装置8は、それぞれ2以上でもよい。また、圧縮機7として、多段圧縮機を用いてもよい。
【0083】
また、圧縮機7と膨張タービン9とを同軸に配置して、一体化させてもよい。これにより、膨張タービン7で発生した動力を圧縮機7の駆動に利用できるため、冷凍機4を小型化でき、動力の省力化を図れる。
【0084】
また、上述した第1~第4の実施形態の極低温冷却装置1,21,31,41では、圧縮機7がターボ圧縮機であり、冷凍機4の最大冷凍能力の指標として圧縮機7の最大回転数を用いる例と説明したが、これに限定されない。ターボ圧縮機では、同じ回転数であっても冷媒ガスの温度、圧力によって圧縮機の動力が変化するため、最大回転数ではなく、圧縮機モーターの電力値、または電流値を最大冷凍能力の指標としてもよい。
【0085】
また、圧縮機7は、ターボ圧縮機に限定されない。圧縮機7として、往復動式の圧縮機、スクリュー式の圧縮機を用いてもよい。いずれの形式の圧縮機であっても、圧縮機モーターの電力値、または電流値を最大冷凍能力の指標として適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の極低温冷却装置及びその運転方法は、超電導ケーブル等の超電導電力機器を冷却する場合や、超電導電力機器を予冷する場合に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0087】
1,21,31,41…極低温冷却装置
2…第1貯槽
3…循環ポンプ
4…冷凍機
5…第2貯槽
6…制御装置(制御手段)
7…圧縮機
8…水冷装置
9…膨張タービン
10…第1熱交換器
11…第2熱交換器
12…逆止弁
13…リザーバータンク
CL1…第1閉流路
CL2…第2閉流路
L1…第1供給経路
L2…第2供給経路
L3…排気ライン
L4…バイパス経路(第3供給経路)
S…超電導電力機器(被冷却体)
T1…第1温度測定装置(第1温度測定手段)
T2…第2温度測定装置(第2温度測定手段)
T3…第3温度測定装置(第3温度測定手段)
V1…第1開閉バルブ
V2…第2開閉バルブ
V3…第3開閉バルブ
V4…第4開閉バルブ