(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/22 20060101AFI20221206BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20221206BHJP
G01N 23/2251 20180101ALI20221206BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
H01J37/22 502H
H01J37/28 A
H01J37/28 B
G01N23/2251
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019158502
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白崎 保宏
(72)【発明者】
【氏名】津野 夏規
(72)【発明者】
【氏名】庄子 美南
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
(72)【発明者】
【氏名】福田 宗行
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-024921(JP,A)
【文献】特開2003-151483(JP,A)
【文献】特開2000-357483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047195(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/22
H01J 37/28
G01N 23/2251
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の回路状態を推定するために照射される荷電粒子線に関わる荷電粒子線条件と、前記試料の回路状態を推定するために照射される光に関わる光条件と、前記試料の回路を規定する電子デバイス回路情報とが入力される入出力器と、
前記荷電粒子線条件に基づき前記試料に照射する前記荷電粒子線を制御する荷電粒子線制御系と、
前記光条件に基づき前記試料に照射する前記光を制御する光制御系と、
前記荷電粒子線及び前記光の照射により前記試料から放出される二次電子を検出し、前記二次電子に基づく検出信号を出力する検出器と、
前記電子デバイス回路情報に基づき演算用ネットリストを生成し、前記演算用ネットリスト及び前記光条件に基づき
光照射時の電気特性変化量を考慮した光照射時ネットリストを生成し、前記光照射時ネットリスト及び前記荷電粒子線条件に基づき前記荷電粒子線及び前記光が前記試料に照射されたときの第1の照射結果を推定し、前記第1の照射結果と前記荷電粒子線条件に基づき実際に前記試料に前記荷電粒子線及び前記光が照射されたときの第2の照射結果とを比較する演算器と、
を備える、
荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記演算器は、前記第1の照射結果と前記第2の照射結果とが異なる場合、前記光照射時ネットリストの更新を行い、前記第1の照射結果と前記第2の照射結果とが一致する場合、前記光照射時ネットリストが前記試料の回路状態を記述するネットリストであると同定する、
荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項2に記載の荷電粒子線装置において、
前記演算器は、前記光照射時ネットリストに含まれるパラメータを変更することで前記光照射時ネットリストの更新を行う、
荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記第2の照射結果は、前記検出信号、前記検出信号に基づく検査画像、前記検査画像の明るさ、前記検査画像におけるピクセルごとの明るさのいずれかを含む、
荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記演算器は、複数の前記第1の照射結果を推定し、複数の前記第1の照射結果から実際に測定された前記第2の照射結果と一致する前記第1の照射結果を選択する、
荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記電子デバイス回路情報は、前記試料の回路構成を示すネットリストと、前記試料の表面に配置されたプラグ電極の位置を示す座標と、前記座標と前記ネットリストとの対応付けを行う対応表とを含む、
荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の荷電粒子線装置において、
前記ネットリストは、前記回路構成の欠陥を示すモデルを含む、
荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記荷電粒子線条件は、前記荷電粒子線のパルス化条件を含み、
前記荷電粒子線の前記パルス化条件に基づき前記試料に荷電粒子線パルスを照射する、
荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記光条件は、前記光のパルス化条件を含み、
前記光の前記パルス化条件に基づき前記試料に光パルスを照射する、
荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記光条件は、前記光の波長を規定する波長条件を含み、
前記波長が異なる前記光を前記試料に照射する、
荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記光は、前記荷電粒子線の照射領域の外側の領域に配置された電極に照射される、
荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記演算器は、前記第1の照射結果と前記第2の照射結果とが異なる場合、前記荷電粒子線条件及び/又は前記光条件を修正する、
荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項1に記載の荷電粒子線装置において、
前記演算器は、前記演算用ネットリストに基づき前記光条件を生成する、
荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子顕微鏡やイオン顕微鏡等の荷電粒子線装置は、微細な構造を持つ様々な試料の観察に用いられている。例えば、半導体デバイスの製造工程におけるプロセス管理を目的として、荷電粒子線装置の一つである走査電子顕微鏡が、試料である半導体ウェーハ上に形成された半導体デバイスパターンの寸法計測や欠陥検査等の測定に応用されている。
【0003】
電子顕微鏡を用いた試料解析法の1つに、電子ビームを試料に照射することで得られる二次電子等に基づいて電位コントラスト像を形成し、電位コントラスト像の解析に基づいて、試料上に形成された素子の電気抵抗を評価する手法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電位コントラストから電気抵抗値を算出し、欠陥を判別する方法が開示されている。特許文献2には、電位コントラストから回路素子の電気的特性及び接続情報を含む情報を記述するネットリストを等価回路として作成することで、電気抵抗値等の欠陥の特性を予測する方法が開示されている。特許文献3には、試料に光を照射することで電位コントラストを変化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-100823号公報
【文献】特開2008-130582号公報
【文献】特開2003-151483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの検査計測においては、製造工程におけるデバイスの電気特性の不良を検出することが求められる。複数デバイス間の相互作用における電気特性の検出は、特許文献2のネットリストを用いることで実現可能である。しかし、回路構成によっては、複数デバイス間の相互作用が原因で電気特性の検出ができない場合がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、従来の手法では測定できなかったデバイスの電気特性を測定することが可能な荷電粒子線装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0009】
本発明の代表的な実施の形態による荷電粒子線装置は、試料の回路状態を推定するために照射される荷電粒子線に関わる荷電粒子線条件と、試料の回路状態を推定するために照射される光に関わる光条件と、試料の回路を規定する電子デバイス回路情報が入力される入出力器と、電子線条件に基づき試料に照射する荷電粒子線を制御する荷電粒子線制御系と、光条件に基づき試料に照射する光を制御する光制御系と、荷電粒子線及び光の照射により試料から放出される二次電子を検出し、二次電子に基づく検出信号を出力する検出器と、電子デバイス回路情報に基づき演算用ネットリストを生成し、演算用ネットリスト及び光条件に基づき光照射時ネットリストを生成し、光照射時ネットリスト及び荷電粒子線条件に基づき荷電粒子線及び光が試料に照射されたときの第1の照射結果を推定し、第1の照射結果と電子線条件に基づき実際に試料に荷電粒子線及び光が照射されたときの第2の照射結果とを比較する演算器と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0011】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、複数デバイス間の相互作用を考慮した電気特性の従来の手法では測定できなかったデバイスの電気特性を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】回路状態推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】電子線条件の選択画面の一例を示す図である。
【
図6】電子デバイス回路情報の選択画面を含む表示画面の一例を示す図である。
【
図7】電子デバイス回路情報の具体例を示す図である。
【
図8】演算用ネットリストと光照射時ネットリストとを対比して例示する図である。
【
図10】変形例に係る回路状態推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図11】本発明の実施の形態2に係る回路状態推定方法の説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態3に係る回路状態推定方法の説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態4に係る回路状態推定方法の説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態5に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】本発明の実施の形態6に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する各実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明の技術範囲を限定するものではない。なお、実施例において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は、特に必要な場合を除き省略する。
【0014】
(実施の形態1)
<荷電粒子線装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態1に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示す概略図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1及び
図2に示すように、荷電粒子線装置1は、荷電粒子線装置本体10、計算機30、入出力器50を備えている。
【0015】
〈荷電粒子線装置本体〉
荷電粒子線装置本体10は、検査用の試料23が収容される試料室10Bに、鏡筒10Aが載置され、鏡筒10A及び試料室10Bの外側に制御部11が配置された構成となっている。鏡筒10Aには、電子線(荷電粒子線)を照射する電子源(荷電粒子源)12、電子線のパルス化を行うパルス電子発生器19、照射された電子線の照射電流の調整を行う絞り13、電子線の照射方向を制御する偏向器14、電子線を集光する対物レンズ18等が収容される。また、図示は省略しているが、鏡筒10Aには、コンデンサレンズが設けられる。なお、電子線のパルス化を行わないのであれば、パルス電子発生器19はなくてもよい。
【0016】
また、鏡筒10Aには、電子線の照射により試料23から放出される二次電子を検出し、二次電子に基づく検出信号を出力する検出器25等が収容される。検出信号は、SEM(Scanning Electron Microscopy)画像の生成、試料23のサイズの測定、電気特性の計測等に利用される。
【0017】
試料室10Bには、ステージ21、試料23等が収容される。試料23は、ステージ21上に載置される。試料23は、例えば複数の半導体デバイスを含む半導体ウェーハや、個別の半導体デバイス等である。ステージ21には、図示しないステージ駆動機構が設けられ、制御部11の制御により試料室10B内を移動可能である。
【0018】
試料室10Bの外側には、光源27、光調整器29等が配置される。光源27は、試料23に照射される光を供給する。光源27は、例えば、LED(Light Emitting Diode)やLD(Laser Diode)等の半導体素子を有する。光源27は、波長が異なる複数種類の光源から構成されてもよい。光調整器29は、光源27から照射される光が試料23の所定の領域に照射されるよう光の光路や偏光を調整する機能ブロックである。制御部11、光源27、光調整器29等は、光源27から照射される光を制御する光制御系を構成する。なお、光源27、光調整器29等は、試料室10Bの内部に配置されてもよい。
【0019】
制御部11は、荷電粒子線装置本体10の構成要素の制御を行う機能ブロックである。制御部11は、例えば、計算機30から入力される観察条件に基づき、電子源12、パルス電子発生器19、絞り13、偏向器14、対物レンズ18等の動作制御を行う。具体的に述べると、制御部11は、観察条件に含まれる電子線条件(荷電粒子線条件)に基づき、電子源12、パルス電子発生器19、絞り13、偏向器14、対物レンズ18等の動作制御を行う。制御部11、電子源12、パルス電子発生器19、絞り13、偏向器14、対物レンズ18等は、電子線を制御する荷電粒子線制御系を構成する。
【0020】
また、制御部11は、例えば計算機30から入力される電子線条件に基づき、ステージ駆動機構の制御を行い、試料23を所定の位置へ移動させる。また、制御部11は、検出器25に対する電力供給や制御信号の供給等の制御を行うことで、検出器25による二次電子の検出処理に関わる制御を行う。
【0021】
また、制御部11は、観察条件に基づき、光源27、光調整器29等の動作制御を行う。具体的に述べると、制御部11は、観察条件に含まれる光条件に基づき、光源27、光調整器29等の制御を行う。詳しく述べると、例えば、制御部11は、光源27から照射される光の光量や波長等を制御する。また、制御部は、光調整器29に対し、光源27から照射される光の進行方向や偏光を調整させる。
【0022】
制御部11は、例えばCPU等のプロセッサで実行されるプロクラムにより実現される。また、制御部11は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0023】
〈計算機〉
計算機30は、
図1に示すように、演算器31及び記憶装置41を備えている。演算器31は、試料23の回路(あるいは等価回路)の推定を行う機能ブロックである。演算器31は、例えば
図2に示すように、演算用ネットリスト生成部32、光照射時ネットリスト生成部35、推定結果演算器33、比較器34を有する。
【0024】
演算用ネットリスト生成部32は、後述する電子デバイス回路情報及び電子線条件に基づいて、試料23に対応する演算用ネットリストの生成を行う。また、演算用ネットリスト生成部32は、比較器34における比較結果に基づく演算用ネットリストの更新も行う。
【0025】
光照射時ネットリスト生成部35は、演算用ネットリスト生成部で生成される演算用ネットリスト、及び観察条件記憶部43に格納された光条件に基づいて、試料23に対応する光照射時ネットリストの生成を行う。光照射時ネットリストとは、演算用ネットリストで規定される回路において、光条件に基づく光が照射されたときの試料23の電気特性の変化を考慮したネットリストのことをいう。
【0026】
推定結果演算器33は、光照射時ネットリスト生成部35で生成された光照射時ネットリストに基づく電子線及び光の照射結果の推定を行う。比較器34は、推定結果演算器33で推定された推定照射結果(第1の照射結果)と、同条件で実際に測定した実測照射結果(第2の照射結果)との比較を行う。
【0027】
演算器31は、これらの処理のほか、推定照射結果、実測照射結果、及び試料23に対し同定したネットリスト(以下、「推定ネットリスト」とも呼ぶ)の表示に関わる処理、検出信号に基づく試料23の検査画像(SEM画像等)の生成、試料23のサイズの測定、試料23の電気特性の計測等に関わる処理等を行う。
【0028】
演算器31は、制御部11と同様に、CPU等のプロセッサで実行されるプロクラムにより実現されてもよいし、FPGAやASIC等で構成されてもよい。
【0029】
記憶装置41は、観察条件記憶部43、光照射時ネットリスト記憶部44、実測結果記憶部45、推定結果記憶部46、推定ネットリスト記憶部47を含む。
【0030】
観察条件記憶部43は、ユーザにより選択された電子線照射に関わる電子線条件を格納する。また、観察条件記憶部43は、ユーザにより選択された光照射に関わる光条件を格納する。すなわち、観察条件には、電子線条件及び光条件が含まれる。なお、光を照射せずに観察を行う場合には、観察条件に光条件が含まれなくてもよい。選択用の電子線条件及び光条件は、例えば図示しないデータベースに格納されている。データベースには、複数の電子線条件及び複数の光条件が登録されており、ユーザは、データベースから試料23の電気特性等の推定に最適な電子線条件及び光条件を選択する。なお、データベースは、荷電粒子線装置1内に設けられてもよいし、荷電粒子線装置1の外部に設けられてもよい。
【0031】
光照射時ネットリスト記憶部44は、光照射時ネットリスト生成部35で生成された光照射時ネットリストを格納する。実測結果記憶部45は、検出器25から出力される検出信号に基づき、観察条件に基づき実際に測定した試料23に対する実測照射結果を格納する。実測結果記憶部45に格納される実測照射結果は、検出器25から出力される検出信号でもよいし、検出信号に基づくSEM画像等でもよい。推定結果記憶部46は、推定結果演算器33で推定された試料23に対する推定照射結果を格納する。
【0032】
記憶装置41は、例えば、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。また、記憶装置41に含まれる各記憶部の一部は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成されてもよい。記憶装置41に含まれる各記憶部は、それぞれ別個のデバイスとして設けられてもよいし、1つの記憶装置の中にそれぞれの記憶領域が設けられた構成でもよい。
【0033】
〈入出力器〉
入出力器50は、荷電粒子線装置1に対する操作、電子デバイス回路情報、光条件、電子線条件等の選択、推定ネットリストに基づく試料23における電子デバイス回路状態、試料23に対する推定照射結果、実測照射結果の表示等を行う機能ブロックである。入出力器50は、例えばタッチパネル方式のディスプレイ60を備えている。ディスプレイ60には、例えば、荷電粒子線装置1の操作パネル、電子デバイス回路情報、電子線条件、及び光条件の選択を行う選択部51、電子デバイス回路状態52、推定照射結果53、実測照射結果54等が表示される。
【0034】
<試料に対する回路状態推定方法>
次に、試料23に対する回路状態推定方法について説明する。本実施の形態では、入力された電子デバイス回路情報から演算用ネットリストが生成され、演算用ネットリスト及び入力された光条件から光照射時ネットリストが生成される。そして、光照射時ネットリスト及び電子線条件を用いて推定した推定照射結果と、実際に測定された実測照射結果とを比較することにより、試料に対するネットリストの推定が行われる。
図3は、回路状態推定方法の一例を示すフロー図である。
図3では、ステップS10-S130により試料に対する回路の推定が行われる。なお、回路状態と試料の電気特性が含まれる。
【0035】
回路状態推定処理が開始されると、電子線条件、光条件、電子デバイス回路情報の入力が行われれる(ステップS10)。
図4は、光条件の選択画面の一例を示す図である。
図4の光条件選択画面61には、例えば、図示しないデータベース等に登録されている光条件の一覧表61aと、選択決定ボタン61eが示される。一覧表61aには、登録されている光条件のID表示欄61b、光条件の選択欄61c、各光条件の詳細表示欄61dが示される。光条件には、例えば、照射される光の強度、波長、偏光(s偏光、p偏光等)、照射位置の座標、周期、遅延時間等、光源27や光調整器29の制御情報等が含まれる。
【0036】
ユーザは、ディスプレイ60に表示される光条件選択画面61から、測定対象の試料23へ光を照射するための光条件を選択する。本実施の形態では、1つの光条件が選択される。具体的に述べると、ユーザは、任意の光条件を選択する。選択する光条件のチェックボックスにチェックを入れた後、選択決定ボタン61eをタッチすることにより、光条件の選択が完了する。
図4では、IDがHC1の光条件が選択された場合が示されている。選択された光条件は、
図2の観察条件記憶部43に送信され、格納される。
【0037】
図5は、電子線条件の選択画面の一例を示す図である。
図5の電子線条件選択画面62には、例えば、図示しないデータベース等に登録されている電子線条件の一覧表62aと、選択決定ボタン62eが示される。一覧表62aには、登録されている電子線条件のID表示欄62b、電子線条件の選択欄62c、各電子線条件の詳細表示欄62dが示される。電子線条件には、例えば、加速電圧、倍率、スキャン条件等の情報が含まれる。
【0038】
ユーザは、ディスプレイ60に表示される電子線条件選択画面62から、任意の電子線条件を選択する。具体的に述べると、ユーザは、選択する電子線条件のチェックボックスにチェックを入れた後、選択決定ボタン62eをタッチすることにより、電子線条件の選択が完了する。
図5では、IDがEC2の電子線条件が選択された場合が示されている。選択された電子線条件は、
図2の観察条件記憶部43に送信され、格納される。
【0039】
電子線条件の設定においては、必要に応じて電子線パルス化条件(変調条件)も併せて用いられる場合がある。電子線パルス化条件は、電子線条件と併用されてもよいし、電子線パルス化条件単独で電子線条件として設定されてもよい。
【0040】
図6は、電子デバイス回路情報の選択画面を含む表示画面の一例を示す図である。表示画面70には、電子デバイス回路情報選択画面63が表示される。電子デバイス回路情報選択画面63には、前述した電子線条件や光条件等も表示される。
【0041】
電子デバイス回路情報には、例えば、座標、ネットリスト、対応表が含まれる。座標とは、例えば試料の表面に配置されたプラグ電極の位置を示す情報である。ネットリストとは、試料の回路構成を示す情報である。対応表とは、プラグ電極の座標とネットリストとの対応付けを行う情報である。
図7は、電子デバイス回路情報の具体例を示す図である。
図7(A)は、座標の例を示している。
図7(B)は、ネットリストの例を示している。
図7(C)は、対応表の例を示している。また、これらの情報に加え、電子デバイス回路情報には、デバイスの形状や材料に関する情報が含まれてもよい。
【0042】
ユーザは、表示画面70の電子デバイス回路情報選択画面63から、試料23に対応する電子デバイス回路情報を選択する。具体的に述べると、ユーザは、各項目の「開く」ボタンをタッチすることにより、図示しないデータベース等に登録されている各項目の一覧表を表示させる。そして、ユーザは、表示された一覧表から試料23に対応する電子デバイス回路情報の項目を選択する。選択された各項目の情報(例えばID等)は、電子デバイス回路情報選択画面63に表示される。また、参照ボタンをタッチすると、選択された情報の詳細が表示される。選択された電子デバイス回路情報は、
図2の演算用ネットリスト生成部32に送信される。なお、ネットリストは、試料23の回路構成の欠陥を示すモデルを含んでもよい。
【0043】
なお、ステップS10において、選択決定ボタン61eがタッチされ、光条件の選択が完了すると、光条件選択画面61が消去され、電子線条件選択画面62が表示されるようにしてもよい。また、光条件の選択が完了すると、光条件選択画面61に重畳して電子線条件選択画面62が表示されてもよい。電子線条件選択画面62に光条件選択画面61を再表示させるボタンが設けられてもよい。
【0044】
ステップS20では、演算用ネットリスト生成部32は、ユーザが選択した電子デバイス回路情報に基づき演算用ネットリストの生成を行う。例えば、演算用ネットリスト生成部32は、選択された電子デバイス回路情報の各項目(座標、ネットリスト、対応表)に含まれる情報(パラメータを含む)を組み合わせて演算用ネットリストの生成を行う。
【0045】
ステップS30では、ステップS10で選択された光条件、電子線条件が観察条件として観察条件記憶部に格納される。なお、ステップS30の処理は、ステップS10において行われてもよい。この場合、ステップS30は適宜省略可能である。
【0046】
ステップS40では、光照射時ネットリストの生成が行われる。光照射時ネットリスト生成部35は、演算用ネットリスト生成部32で生成された演算用ネットリスト及び観察条件記憶部43に格納された光条件に基づいて光照射時ネットリストの生成を行う。生成された光照射時ネットリストは、光照射時ネットリスト記憶部44に格納される。
【0047】
具体的に述べると、光照射時ネットリスト生成部35は、光照射時ネットリストの光依存性(光照射時に変化する電気特性の変化量等)を含めた光照射時ネットリストの生成を行う。すなわち、光照射時ネットリストには、光量や光の照射範囲等の条件を異ならせた場合の電気特性の変化量等の情報が含まれる。光依存性を考慮した光照射時ネットリストの生成には、例えば、光依存性情報が用いられる。光依存性情報には、それぞれの回路構成について、例えば、光を照射したとき(光ON)のネットリスト、光を照射しないとき(光OFF)の時のネットリスト等が含まれる。また、光を照射したときのネットリストには、光量等の値を示す光照射NLの値を異ならせたときの各ネットリストが含まれる。また、光依存性情報には、複数のデバイス間における光依存性情報が含まれてもよい。
【0048】
光照射時ネットリストの光依存性は、デバイスの大きさや形状等に依存する。このため、光照射時ネットリスト生成部35は、電子デバイス回路情報に含まれるデバイスの形状や材料等の情報、光依存性データベース等を用いて光照射時ネットリストの生成を行う。ユーザは、電子デバイス回路情報の選択時、デバイスの形状や材料等の情報の選択も行う。また、ユーザは、例えば、光条件の選択とともに、光依存性情報の選択も行う。
【0049】
そして、光照射時ネットリスト生成部35は、演算用ネットリスト、選択された光条件、選択されたデバイスの形状や材料等の情報、選択された光依存性情報等の情報を用いて、光照射時の電気特性変化量を考慮した光照射時ネットリストの生成を行う。なお、デバイスの形状や材料等の情報は、演算用ネットリストにすでに含まれる場合もある。また、光依存性情報は、光条件に含まれる場合もある。光依存性情報は、ユーザにより電子デバイス回路情報と一緒に入力されてもよいし、入力された電子デバイス回路情報に基づいて、演算器31により計算されてもよいし、装置側のデータベースに格納されていてもよい。このように、光依存性を考慮した光照射時ネットリストを生成することで、電気特性等の推定精度を向上させることが可能となる。
【0050】
なお、光依存性情報は、電子線条件や光条件を格納するデータベースに格納されてもよいし、これとは別のデータベースに格納されてもよい。
【0051】
図8は、演算用ネットリストと光照射時ネットリストとを対比して例示する図である。
図8は、前述した光依存性情報の一例である。
図8(A)は、ダイオードについてネットリストを比較して示す図である。
図8(A)の左側には、演算用ネットリスト(すなわち光が照射されないときの回路構成を示すネットリスト)が示されている。一方、図示右側には、光照射時ネットリストが示されている。
図8(A)の例では、光照射時ネットリストでは、ダイオードの両端子間に接続される抵抗素子と、両端子間に流れる電流のネットリストが新たに追加される。
【0052】
図8(B)は、抵抗素子についてネットリストを比較して示す図である。
図8(B)の左側には、演算用ネットリストが示され、図示右側には、光照射時ネットリストが示されている。
図8(B)の例では、光照射時ネットリストにおける抵抗素子の抵抗値が変更されている。
【0053】
図8(C)は、コンデンサについてネットリストを比較して示す図である。
図8(C)の左側には、演算用ネットリストが示され、図示右側には、光照射時ネットリストが示されている。
図8(C)の例では、光照射時ネットリストでは、コンデンサの両端子間に接続される抵抗素が新たに追加され、コンデンサの容量が変更されている。なお、光を照射することにより回路素子の電気特性が変化するのは、これらの例に限定されるものではない。また、光照射NLの値(例えば光量)は、光条件に依存する。
【0054】
ステップS50では、試料23に電子線及び光の照射が行われる。観察条件記憶部43に記憶された光条件及び電子線条件は、荷電粒子線装置本体10の制御部11へ送信される。制御部11は、受信した電子線条件に基づき、荷電粒子線制御系を構成する各部を制御し、試料23に対し電子線を照射させる。また、制御部11は、受信した光条件に基づき、光源27、光調整器29を制御し、試料23に対し光を照射させる。
【0055】
ステップS60では、試料23に光及び電子線が照射されたときの試料23の観察が行われる。例えば、電子線及び光が照射されると、試料23から二次電子が放出される。検出器25は、試料23から放出された二次電子を検出すると、二次電子の個数や照射エネルギ等に応じた所定の検出信号を計算機30(演算器31)へ出力する。
【0056】
ステップS70では、試料23に対する実際に測定した電子線や光を照射したときの実測照射結果が格納される。演算器31は、例えば、検出器25から出力された検出信号(信号波形)を電子線照射結果として実測結果記憶部45に格納してもよい。また、演算器31は、検出信号に基づき検査画像(SEM画像等)を生成し、検査画像を実測照射結果として実測結果記憶部45に格納してもよい。また、検出信号の減衰速度や、検出信号に変化をもたらす光量等が実測照射結果として格納されてもよい。また、演算器31は、検出信号に基づく試料23の帯電量を測定し、測定した帯電量を実測結果記憶部45に格納してもよい。また、演算器31は、検査画像の明るさ、あるいはピクセルごとの明るさを検出し、検出した明るさを実測結果記憶部45に格納してもよい。
【0057】
ステップS80では、設定されたすべての観察条件での観察が終了したか否かが判定される。すべての観察条件での観察が終了していない場合(NO)、異なる観察条件でステップS50-S70の処理が再度行われる。一方、すべての観察条件での観察が終了した場合(YES)、ステップS90の処理が行われる。
【0058】
ステップS90では、電子線及び光の照射結果の推定が行われる。推定結果演算器33は、光照射時ネットリスト記憶部44に格納された光照射時ネットリスト、及び観察条件記憶部43に格納された電子線条件に基づき、試料23に対する電子線及び光の照射結果の推定を回路シミュレーション等を用いて行う。推定照射結果の項目は、例えば、検出器25から出力された検出信号(信号波形)、帯電量、検査画像、検査画像の明るさ、検査画像におけるピクセルごとの明るさ等である。推定照射結果は、推定結果記憶部46に格納される。
【0059】
ステップS100では、実測照射結果と推定照射結果とが比較される。比較器34は、電子線照射結果の項目ごとに、実測照射結果と推定照射結果とを比較する。比較器34は、例えば、電子線の照射領域ごと、あるいは検出画像のピクセルごとに検出信号の比較を行う。また、比較器34は、例えば、帯電量、検査画像、検査画像の明るさ、検査画像におけるピクセルごとの明るさ等の比較を行う。比較器34は、例えば、これらの照射結果を数値化し、項目ごとに実際の電子線照射結果と推定された電子線照射結果との差分の大きさを算出することで比較結果を生成する。なお、比較器34は、これらすべての項目についての比較を行ってもよいし、一部の項目に対する比較のみを行ってもよい。
【0060】
ステップS110では、ステップS100で算出した比較結果に基づき、実測照射結果と推定照射結果とが一致するか否かが判定される。例えば、比較結果の値が「0」であれば、比較器34は、これらの照射結果は一致すると判断する。一方、比較結果の値が「0」でなければ、比較器34は、これらの比較結果は一致しないと判断する。ただし、実際には、これらの照射結果が完全に一致することはほとんどないため、所定の範囲内での測定誤差を考慮する必要がある。
【0061】
そこで、比較器34は、比較結果の値が所定の閾値以下であれば、これらの照射結果は一致すると判断してもよい。所定の閾値は、項目ごとにそれぞれ設定される。なお、複数項目について比較を行う場合、比較器34は、比較したすべての項目について比較結果が閾値以下となる場合のみ、これらの照射結果が一致すると判断してもよい。また、比較器34は、所定の割合以上の項目において比較結果が閾値以下となる場合には、これらの照射結果が一致すると判断してもよい。
【0062】
ステップS110において、比較器34がこれらの電子線照射結果は一致しないと判断した場合(NO)、ステップS90-S100の処理が再度行われる。演算器31は、再度のステップS90において、光照射時ネットリスト記憶部44に格納された光照射時ネットリストに含まれるパラメータの変更を行うことで光照射時ネットリストの更新を行う。そして、推定結果演算器33は、パラメータが変更された光照射時ネットリストを用いて、照射結果の推定を再度行う。
【0063】
なお、このとき、演算器31は、パラメータの更新等により演算用ネットリストの更新を行ってもよい。この場合、比較器34は、例えば、比較結果を演算用ネットリスト生成部32へ送信し、演算用ネットリスト生成部32において演算用ネットリストの更新が行われる。演算用ネットリスト生成部32は、例えば、比較結果に基づき、直前の演算用ネットリストの生成に用いられたパラメータ値を変更し、変更後のパラメータ値を用いて演算用ネットリストを生成する。その際、演算用ネットリスト生成部32は、複数項目の比較結果に基づきパラメータ値の変更を行ってもよい。また、演算用ネットリスト生成部32は、パラメータ値の変更が可能なパラメータを予め設定しておき、変更可能なパラメータのみパラメータ値を変更しながら演算用ネットリストを更新してもよい。パラメータの具体例として、抵抗素子の抵抗値やコンデンサーの容量等の各値が挙げられる。また、パラメータの具体例として、設計上は存在しないが光の照射により見える追加抵抗の抵抗値が挙げられる。
【0064】
ステップS90~S110の処理は、推定照射結果と、実測照射結果とが一致するまで繰り返し実行される。
【0065】
一方、ステップS110において、比較器34がこれらの電子線照射結果は一致すると判断した場合(YES)、ステップS120の処理が行われる。ステップS120では、演算器31(比較器34)は、光照射時ネットリスト記憶部44に格納されている光照射時ネットリストが、光照射時における試料23の回路を記述するネットリストであると同定できると判断し、この光照射時ネットリストを推定ネットリストとして推定ネットリスト記憶部47へ格納する。また、推定ネットリストと併せて、検査画像におけるプラグ電極の座標と推定ネットリストの各ノードとを対応させた対応表も推定ネットリスト記憶部47に格納されてもよい。
【0066】
ステップS130では、推定照射結果及び実測照射結果が入出力器50へ出力される。例えば、推定ネットリスト記憶部47に格納された推定ネットリスト、推定結果記憶部46に格納されている推定照射結果、実測結果記憶部45に格納されている実測照射結果は入出力器50へ出力され、ディスプレイ60に表示される。
図6では、表示画面70には、例えば、SEM画像、所定のプラグ電極における光応答結果、回路の欠陥箇所の検出結果等が表示される。また、表示画面70には、検出信号の波形等や、パラメータの変更履歴等が表示されてもよい。
【0067】
なお、ステップS50-S80の処理、及びステップS90の処理は並行して行われてもよい。
【0068】
ステップS90における電子線照射結果の推定、光照射時ネットリストのパラメータ更新等の処理には、機械学習やディープラーニング等の手法によるAI(Artificial Intelligence)が用いられてもよい。
【0069】
[実施例]
図9は、回路状態推定方法の具体例を示す図である。
図9は、コンタクトAと接続される回路、及びコンタクトBと接続される回路の回路状態を推定する場合が示されている。
図9の(A)-(C)では、左側にSEM画像が示され、右側に演算用ネットリストの等価回路が示されている。
図9(A)は、コンタクトA、Bに光を照射しない場合が示されている。この場合、回路上のダイオードが障壁となり、電子線照射による電流が流れず、コンタクトA、BのSEM画像は暗くなっている。この状態では、両回路の状態を推定することは難しい。
【0070】
図9(B)は、コンタクトA、Bに強い光がそれぞれ照射された場合が示されている。この場合、光起因でダイオードに流れる電流が大きく、コンデンサC2、C4の両端は、実質的にショートした状態となる。この時のSEM画像はコンタクトA、Bともに明るくなってしまい、差が分からない状態となっている。この場合も、両回路の状態を推定することが難しい。
【0071】
図9(C)は、コンタクトA、Bに適度な光がそれぞれ照射された場合が示されている。この場合、コンタクトの蓄電量はコンデンサC2とC4の容量に応じて変わるため、SEM画像では、コンタクトAは明るく、コンタクトBは暗くなっている。この状態であれば、両回路の差異が明確であり、回路状態を推定することが可能である。このように、回路状態の推定には、光量の調整等が必要である。
【0072】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、電子デバイス回路情報に基づき演算用ネットリストが生成され、演算用ネットリスト及び光条件に基づき光照射時ネットリストが生成され、光照射時ネットリスト及び電子線条件に基づき電子線が試料に照射されたときの電子線照射結果が推定される。また、推定された照射結果と、電子線条件及び光条件に基づき試料23に電子線及び光が照射されたときの照射結果とが比較される。
【0073】
この構成によれば、光を照射して回路を活性化させつつ、従来の手法では測定できなかったデバイスの電気特性を測定することが可能となる。すなわち、この構成によれば、光の照射なしでは測定できないデバイスの電気特性を測定することが可能となる。また、回路を活性化させることができるので、複数回路間における相互作用等を考慮した電気特性の推定が可能となる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、推定した照射結果と実際に測定された照射結果とが異なる場合、光照射時ネットリストの更新が行われる。具体的には、演算器31は、光照射時ネットリストに含まれるパラメータを変更することで光照射時ネットリストの更新を行う。この構成によれば、演算量を抑えることができ、演算器31の負荷が抑えられる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、電子線照射結果は、検出信号、検出信号に基づく検査画像、検査画像の明るさ、検査画像におけるピクセルごとの明るさのいずれかを含む。この構成によれば、検出信号を基にした様々な形態により照射結果を照合することが可能である。
【0076】
また、本実施の形態によれば、電子デバイス回路情報のネットリストは、試料23の欠陥を示すモデルが含まれる。この構成によれば、試料23の欠陥(製造不良)を容易に検出することが可能であり、回路状態推定の精度を向上させることが可能となる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、電子デバイス回路情報は、ネットリストと、座標と、対応表とを含む。この構成によれば、電極の位置が明確になり、演算用ネットリストの生成が容易になる。
【0078】
[変型例]
次に、変形例について説明する。
図10は、変形例に係る回路状態推定方法の一例を示すフロー図である。
図10は、
図3と類似しているので、
図3と差異を中止に説明する。
図10では、ステップS40とステップS50との間にステップS210が設けられ、ステップS80とステップS120との間にステップS220が設けられている。したがって、
図3のステップS90-S110が削除されている。
【0079】
ステップS210では、推定結果演算器33は、光照射時ネットリストから複数の照射結果の推定を行う。例えば、推定結果演算器33は、光照射時ネットリストのパラメータを変更しながら複数の照射結果を推定する。それぞれの光照射時ネットワークは、光照射時ネットリスト記憶部44に格納される。また、それぞれの推定照射結果は、推定結果記憶部46に格納される。
【0080】
ステップS220では、複数の推定照射結果から実測照射結果と一致する推定照射結果の選択が行われる。ステップS120では、選択された推定照射結果に対応する光照射時ネットリストが推定ネットリストとして格納される。これら以外の処理は、
図3と同様である。
【0081】
この構成によれば、電子線及び光の照射回数が抑えられ、試料23に対する回路状態の推定に要する時間を短縮することが可能となる。
【0082】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、過渡現象を観察することにより回路状態を推定する方法を説明する。本実施の形態では、電子線及び光の少なくともいずれかがパルス化される。
【0083】
図11は、本発明の実施の形態2に係る回路状態推定方法の説明図である。
図11(A)は、試料の観察領域に電子線及び光が照射された状態を模式的に示している。
図11(B)、(C)、(D)には、電子線、光、検出信号、サンプリングクロックの波形がそれぞれ示されている。
【0084】
まず、
図11(B)では、電子線のみがパルス化された場合が示されている。電子線をパルス化する場合、電子線条件には電子線のパルス化条件が含まれる。この場合、検出信号は、電子線が照射された期間のみ出力される。サンプリングクロックは、電子線パルス(荷電粒子線パルス)の照射期間中、検出信号を複数回サンプリングできるように設定される。
【0085】
次に、
図11(C)では、光のみがパルス化された場合が示されている。光をパルス化する場合、光条件には光のパルス化条件が含まれる。この場合、電子線は常に照射されるので、検出信号は常に出力される。検出信号の強度は、光が照射される期間と光が照射されない期間とで異なる。サンプリングクロックは、例えば、光パルスの照射期間中、複数回サンプリングできるように設定される。光パルスの生成は、光源のオンオフの切り換えにより行われてもよいし、光調整器29により行われてもよい。この場合、光調整器29は、光路調整、偏光、光パルス生成の各機能を備える。
【0086】
次に、
図11(D)では、電子線及び光がパルス化された場合が示されている。例えば、
図11(D)では、電子線及び光が交互に照射される場合が示されている。この場合、検出信号は、電子線が照射された期間のみ出力される。サンプリングクロックは、電子線パルスの照射期間中及び光パルスの照射期間中にサンプリングできるように設定される。
【0087】
本実施の形態によれば、過渡現象の観察を必要とする回路状態の推定を行うことが可能となる。
【0088】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。試料には、複数の階層にわたって回路が形成されているものもある。そして、階層ごとに電気特性等を含む回路状態を推定したい場合もある。そこで、本実施の形態では、階層ごとに回路状態を推定する方法について説明する。
【0089】
図12は、本発明の実施の形態3に係る回路状態推定方法の説明図である。
図12には、上層の回路及び下層の回路がそれぞれ示されている。ここでは、それぞれの回路は、
図9と同様の構成となっている。コンタクトA側の回路は、いずれも上層に形成されている。一方、コンタクトB側の回路では、コンタクトBと直接接続されたコンデンサC1及び抵抗素子R1の並列回路が上層に形成され、コンデンサC2及びダイオードの並列回路が下層に形成されている。
【0090】
まず、
図12(A)は、上層の回路状態の推定方法を説明する図である。上層の回路状態を推定する場合には短波長の光が照射される。これにより、下層までは光が届かず、下層の回路の活性化が抑えられる。
【0091】
次に、
図12(B)は、下層の回路状態の推定方法を説明する図である。下層の回路状態を推定する場合には長波長の光が照射される。これにより、下層まで光が届き、下層の回路が活性化される。
【0092】
このように、本実施の形態では、光の波長を切り換えることにより、各層の回路状態の推定が行われる。光条件には、光の波長を規定する波長条件が含まれる。波長条件により光の波長が設定される。
図12では、上層及び下層の2層の場合について示されているが、もちろん、3層以上の構造を有する場合にも本実施の形態は適用可能である。
【0093】
本実施の形態によれば、試料23に対し波長が異なる光を用いて回路状態の推定が行われる。この構成によれば、層ごとに回路状態の推定を行うことが可能となる。
【0094】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。回路を駆動しながら状態を測定したいが、回路を駆動するプラグ電極が電子線照射領域(荷電粒子線照射領域)に設けられていない場合もあり得る。例えば、電子線照射領域にプラグ電極は存在するが、このプラグ電極が出力用の電極の場合には、このプラグ電極に光を照射しても回路は活性化されない。そこで、本実施の形態では、回路を活性化させるプラグ電極が電子線照射領域に設けられていない場合の対応について説明する。
【0095】
図13は、本発明の実施の形態4に係る回路状態推定方法の説明図である。
図13では、左側に試料の平面図、右側に試料の断面図がそれぞれ示されている。電子線照射領域ARには電極P1が設けられている。また、電子線照射領域ARの外側には電極P2、P3がそれぞれ設けられている。これらの電極P1、P2、P3は、試料23中のデバイスDVとそれぞれ接続されている。ただし、電極P1は、光が照射されてもデバイスDVを活性化させることはできない。そこで、電子線照射領域ARの外側の領域に配置された電極に光を照射することで、デバイスDVを活性化させる。
【0096】
例えば、演算器31は、
図3のステップS10において選択したネットリスト及び座標からデバイスDVを活性化させる電極に対する光照射座標を算出する。この光照射座標を光条件に含めることで、この電極に光が照射される。
【0097】
図13(A)は、電極P2に光を照射する場合を示している。例えば、電極P2に光が照射されると、電極P2において光電子が励起され、電極P2がプラスに帯電する。電極P2から電気が供給されると、デバイスDVが活性化される。
【0098】
図13(B)は、電極P2、P3に光を照射する場合を示している。このように、複数の電極に光を照射することでデバイスDVを活性化させてもよい。
【0099】
本実施の形態によれば、電子線照射領域ARにデバイスDVを活性化させる電極が存在しない場合においても、電子線照射領域外に光を照射してデバイスDVを活性化させることが可能となる。これにより、回路状態を推定することが可能となる。
【0100】
(実施の形態5)
次に、実施の形態5について説明する。試料に対する回路状態の推定処理では、光照射時ネットリストの更新のみでは実測照射結果と推定照射結果とを一致させることができない場合もあり得る。そこで、本実施の形態では、実測照射結果と推定照射結果との比較結果に基づき、観察条件を修正する場合について説明する。
【0101】
図14は、本発明の実施の形態5に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
図14は、
図2と類似しているが、比較結果に基づき観察条件記憶部43に格納された観察条件を修正できるようになっている点が異なる。
【0102】
例えば、
図3のステップS110において、電子線照射結果は一致しないと判断された場合(NO)、比較器34は、ステップS30において観察条件の修正を行う。その際、比較器34は、光条件又は電子線条件の修正のみを行ってもよいし、光条件及び電子線条件の双方を修正してもよい。そして、再度のステップS40において、光照射時ネットリスト生成部35は、修正された光条件を用いて光照射時ネットリストの生成を行う。再度のステップS90において、推定結果演算器33は、修正された光照射時ネットリスト及び修正された電子線条件を用いて電子線照射結果を推定する。
【0103】
なお、観察条件の修正は、例えば、比較結果の値、光照射時ネットリストの修正回数、観察時間等について、所定の値を超えた場合のみ行われるようにしてもよい。
【0104】
なお、観察条件の修正等の処理には、機械学習やディープラーニング等の手法によるAIが用いられてもよい。
【0105】
本実施の形態によれば、試料の観察中に観察条件を修正することができる。この構成によれば、推定照射結果を実測照射結果により正確に一致させることが可能となる。これにより、回路状態の推定をより正確に行うことが可能となる。
【0106】
(実施の形態6)
次に、実施の形態6について説明する。本実施の形態では、演算用ネットリストに基づき、計算機30において光条件の生成が行われる。
図15は、本発明の実施の形態6に係る荷電粒子線装置の構成の一例を示すブロック図である。
図14は、
図2と類似しているが、光条件生成部36が追加されている点が異なる。
【0107】
光条件生成部36は、例えばCPU等のプロセッサで実行されるプロクラムにより実現される。また、光条件生成部36は、例えば、FPGAやASIC等で構成されてもよい
本実施の形態では、
図3のステップS10において、光条件の入力は行われない。ステップS20において生成される演算用ネットリストは、光条件生成部36へも送信される。光条件生成部36は、受信した演算用ネットリストに基づき光条件を生成する。光条件生成部36は、例えば、演算用ネットリストから回路を活性化させる電極の位置を検出し、この電極に光を照射させるよう、光条件を設定する。あるいは、光条件生成部36は、過渡現象を観察すべき領域を検出し、この領域に光を照射させたり、光パルスを照射するような光条件を生成する。光条件生成部36は、生成した光条件を観察条件記憶部43へ格納する。
【0108】
なお、光条件生成部36における光条件の生成には、機械学習やディープラーニング等の手法によるAIが用いられてもよい。
【0109】
本実施の形態によれば、計算機30の演算器31において、光条件が生成される。この構成によれば、光条件の入力、設定の手間を省くことが可能となる。また、これにより、装置の操作性を向上させることが可能となる。
【0110】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0111】
1…荷電粒子線装置、10…荷電粒子線装置本体、23…試料、25…検出器、27…光源、29…光調整器、30…計算機、31…演算器、41…記憶装置、42…データベース、50…入出力器、60…ディスプレイ