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特許7189217アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物、並びに基板上に金属膜パターンを製造する方法
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  • 特許-アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物、並びに基板上に金属膜パターンを製造する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-05
(45)【発行日】2022-12-13
(54)【発明の名称】アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物、並びに基板上に金属膜パターンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20221206BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20221206BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20221206BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
G03F7/26 513
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020532962
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086082
(87)【国際公開番号】W WO2019129613
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】17210931.6
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】片山 朋英
(72)【発明者】
【氏名】矢野 友嗣
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅彦
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第01/061410(WO,A1)
【文献】特表2004-503830(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014576(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/122623(WO,A1)
【文献】特開2010-169944(JP,A)
【文献】特開2006-350039(JP,A)
【文献】特開2019-082639(JP,A)
【文献】特開平05-241342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00ー7/42
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)下記式(1)で表される架橋剤、および(C)下記式(2)で表される架橋剤を含んでなる、ネガ型リフトオフレジスト組成物。
ここで、
【化1】

は、C2-8アルコキシルアルキルであり、Rは、C2-8アルコキシルアルキルであり、
、-NRであり、R、-NRであり、
【化2】

は、非置換1-20アルキルであり、lは1、2、3または4であり、mは0、1または2であり、nは0、1または2であり、かつl+m+n≦6である。
【請求項2】
アルカリ可溶性樹脂(A)が、下記式(3)で表される単位Aおよび式(4)で表される単位Bを含んでなる、請求項1に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
ここで、
【化3】

は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノであり、Rは、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、フッ素またはシアノであり、pは0、1、2、3または4であり、qは1、2または3であり、p+q≦5であり、
【化4】

は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノであり、Rは、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノであり、かつrは0、1、2、3、4または5である。
【請求項3】
アルカリ可溶性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が、2,000~100,000である、請求項1または2に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項4】
ネガ型リフトオフレジスト組成物の全質量に対するアルカリ可溶性樹脂(A)の質量比が、5~50質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項5】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する架橋剤(B)の質量比が、0.10~8質量%であり、かつ、
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する架橋剤(C)の質量比が、0.50~40質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項6】
溶媒をさらに含んでなり、ここで、前記溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、モノアルコール溶媒、ポリオール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、窒素含有溶媒、硫黄含有溶媒、およびこれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項7】
光酸発生剤をさらに含んでなり、ここで、アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する前記光酸発生剤の質量比が1~20質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項8】
光酸発生剤を含んでなり、ここで、前記光酸発生剤が、スルホン酸誘導体、ジアゾメタン化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ジスルホン化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体、およびシアノ含有オキシムスルホネートからなる群から選択される少なくとも1つを含んでなる、請求項1~7のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項9】
クエンチャー、界面活性剤、染料、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物。
【請求項10】
基板の上方に請求項1~9のいずれか一項に記載のネガ型リフトオフレジスト組成物の塗膜を形成すること;
前記レジスト組成物を硬化させてレジスト層を形成すること;
前記レジスト層を露光すること;
前記レジスト層を現像してレジストパターンを形成すること;
前記レジストパターン上に金属膜を形成すること;および
残ったレジストパターンおよびその上の金属膜を除去すること
を含んでなる、基板上に金属膜パターンを製造する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の基板上に金属膜パターンを製造する方法を含んでなる、素子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物に関する。また、本発明は、基板上に金属膜パターンを製造する方法に関する。また、本発明は、素子の金属膜パターンを製造する方法を含んでなる、素子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一層微細化された高性能な機器が求められる傾向にあるため、素子(例えば、半導体素子やFPD素子)における一層微細なパターニングが要求されている。微細加工には、一般にフォトレジスト(以下、単に「レジスト」という)を用いたリソグラフィー技術が採用されている。図1に例示されるように、電極を作成するためのリフトオフ工程が知られているが、これは、パターン化されたレジスト層上の不要な電極部分を除去することを特徴とする。対照的に、典型的な電極エッチング工程では、レジストパターンをマスクとして使用して、レジストパターンの下の電極を(典型的にはドライエッチングによって)除去して、設計された電極パターンを得る。
【0003】
このような状況下、リフトオフパターンを形成するための特定のネガ型フォトレジスト組成物が研究されているが、これは下層膜上に塗布され、その下層膜と一緒に現像される(特許文献1)。
【0004】
また、ネガ型の化学増幅型フォトレジスト組成物が研究されているが(特許文献2)、そこではリフトオフパターニング工程は試みられていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-37414号公報
【文献】特許第4799800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、より微細なレジストパターン(例えば、アスペクト比が高い)であるほど、形成するための、そして、後の工程でパターン形状を維持するための条件が厳しくなると考えた。本発明者らは、欠陥(例えば、パターン倒れ)を減少させることは、ネガ型リフトオフレジスト層として有利であると考えた。また、本発明者らは、より微細なパターンの良好な剥離性は、リフトオフ工程において有利であると考えた。
【0007】
本発明者らによって徹底的研究が行われた。そして、本発明者らは、アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物を見出したが、これは、上記の特性を示すことができるネガ型リフトオフレジスト層を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ネガ型リフトオフレジスト組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)下記式(1)で表される架橋剤、および(C)下記式(2)で表される架橋剤を含んでなる。
ここで、
【化1】
は、C2-8アルコキシルアルキルであり、Rは、C2-8アルコキシルアルキルであり、
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC6-10アリール、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-8アルキル、または-NRであり、
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC6-10アリール、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-8アルキル、または-NRであり、
【化2】
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-20アルキルであり、
lは1、2、3または4であり、mは0、1または2であり、nは0、1または2であり、かつl+m+n≦6である。
【0009】
基板上に金属膜パターンを製造する方法は以下を含んでなる:基板の上方に前記のネガ型リフトオフレジスト組成物の塗膜を形成すること;レジスト組成物を硬化させてレジスト層を形成すること;レジスト層を露光すること;レジスト層を現像してレジストパターンを形成すること;レジストパターン上に金属膜を形成すること;および残ったレジストパターンとその上の金属膜を除去すること。ここで、「基板の上方に」とは、ネガ型リフトオフレジスト層が基板に直接接して形成されてもよいこと、また、下層膜が基板とネガ型リフトオフレジスト層との間に介在していてもよいことを示す。
【0010】
素子を製造する方法は、基板上に金属膜パターンを製造する方法を含んでなる。
【本発明の効果】
【0011】
本発明によるネガ型リフトオフレジスト組成物は、良好な塗布性を有する。また、組成物中の溶質は、溶媒への良好な溶解性を示す。パターンサイズが小さくても、組成物により作成された現像レジストパターンの良好な形状が得られ、欠陥(例えば、パターン倒れ)を低減できる。また、パターンサイズが小さくても、組成物により作成されたレジストパターンの明確な剥離性が得られる。これらは、リフトオフ工程用の一層微細な設計パターンで金属膜パターンを作成するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、リフトオフ工程の模式断面図である。
図2図2は、エッチング工程の模式断面図である。
図3図3は、レジストパターニングに用いるマスク設計の説明図である。
【実施形態の説明】
【0013】
上記の概要および以下の詳細は、本発明の説明のために提供されており、請求される発明を限定することを意図していない。
【0014】
定義
以下、本明細書において、明示的に限定または記載されない限り、以下に定義される記号、単位、略号および用語は、以下の意味を有する。
【0015】
本明細書において、「-」、「to」または「~」を用いて数値範囲が示した場合、その数値範囲は、「-」または「~」の前後に示される数値の両方を含み、また単位は2つの数値について同じである。例えば、「5~25モル%」は「5モル%以上25モル%以下」を意味する。
【0016】
本明細書で使用される「Cx-y」、「C-C」および「C」等の表現は、分子または置換基中の炭素原子の数を表す。例えば、「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシル等)を意味する。
【0017】
本明細書に記載のポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これらの共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、およびこれらの任意の組み合わせから選択されるいずれであってもよい。ポリマーや樹脂が化学構造や化学式で表される場合、括弧の横に添えられるn、m等は繰り返し数を意味する。
【0018】
本明細書に示されている温度の単位は摂氏である。例えば、「20度」は「摂氏20度」を意味する。
【0019】
ネガ型リフトオフレジスト組成物
本発明は、アルカリ可溶性樹脂および架橋剤を含んでなるネガ型リフトオフレジスト組成物を提供する。このネガ型レジスト組成物は、リフトオフ工程に有用であり、これは、現像されたレジスト層(レジストパターン壁)の上に形成された金属膜部分が後工程で除去されて金属膜パターンが得られることを意味する。この組成物はネガ型レジストであるため、この組成物で形成されたレジスト層は、層の露光部が現像液による溶解耐性を高め、未露光部が現像液により溶解する性質を有する。
【0020】
アルカリ可溶性樹脂
本発明による組成物は、アルカリ可溶性樹脂(A)を含んでなる。この樹脂は、好ましくはアルカリ可溶性バインダー樹脂である。そして、この樹脂は、好ましくは、ノボラック系ポリマーまたはポリヒドロキシスチレン系ポリマーを含んでなる。
【0021】
アルカリ可溶性樹脂は、好ましくは、下記式(3)で表される単位Aと、下記式(4)で表される単位Bとを含んでなる。
【0022】
【化3】
は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノである。Rは、好ましくは水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、フッ素またはシアノ、より好ましくは水素、メチルまたはフッ素、さらに好ましくは水素である。-OHがフェニルのパラ位に結合するのが好ましい形態である。
は、C1-6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、またはシアノである。Rは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、フッ素またはシアノ、より好ましくはメチルまたはフッ素、さらに好ましくはメチルである。
pは、0、1、2、3または4である。pは、好ましくは0、1または2、より好ましくは0である。
qは、1、2または3である。qは、好ましくは1または2、より好ましくは1である。
p+q≦5である。
【0023】
【化4】
は、水素、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノである。Rは、好ましくは水素、メチル、エチル、イソプロピル、ブチル、フッ素またはシアノ、より好ましくは水素、メチルまたはフッ素、さらに好ましくは水素である。
は、C1-6アルキル、ハロゲン、またはシアノである。Rは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、ブチル、フッ素またはシアノ、より好ましくはメチルまたはフッ素、さらに好ましくはメチルである。
rは、0、1、2、3、4または5である。rは、好ましくは0、1または2、より好ましくは0である。
【0024】
本発明による組成物のアルカリ可溶性樹脂は、繰り返し単位Aおよび単位B以外の繰り返し単位を含んでも含まなくてもよい。組成物のアルカリ可溶性樹脂が繰り返し単位Aと単位B以外の繰り返し単位を含まないことが好ましい態様である。
【0025】
好ましくは、アルカリ可溶性樹脂中の全ての繰り返し単位中で、繰り返し単位Aの濃度は、70~98モル%であり、かつ、繰り返し単位Bの濃度は2~30モル%である。より好ましくは、アルカリ可溶性樹脂の全繰り返し単位中で、繰り返し単位Aの濃度は85~95モル%であり、かつ、繰り返し単位Bの濃度は5~15モル%である。単位Bをアルカリ可溶性樹脂に組み込むことは、レジストパターン形成および/またはパターン倒れの抑制に有利であると考えられている。
【0026】
本出願では、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。この測定の適切な例では、GPCカラムは摂氏40度に設定され;0.6mL/minのテトラヒドロフランが溶出溶媒として使用され;そして、標準として単分散ポリスチレンが使用される。
【0027】
本発明の1つの態様として、組成物のアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~100,000、より好ましくは5,000~50,000、さらに好ましくは5,000~20,000、さらにより好ましくは8,000~10,000である。
【0028】
ネガ型リフトオフ用レジスト組成物の全質量に対するアルカリ可溶性樹脂(A)の質量比は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは8~40質量%、さらに好ましくは10~25質量%である。より多くの固体成分(主にアルカリ可溶性樹脂によって占めることができる)を組成物に加えることによって形成されるレジスト層の厚さを増すことができる。
【0029】
式(1)で表される架橋剤
ネガ型レジストにおいて、レジンおよび架橋剤は、例えば、露光後ベークの加熱によって架橋反応を引き起こす。そして、レジスト層の露光部分の溶解性が変化する。本発明による組成物は、下記式(1)で表される架橋剤(B)と下記式(2)で表される架橋剤(C)を含んでなる。本発明者らは、これらの架橋剤を組成物に組み込むことにより、パターン形状形成および剥離性の良好な特性を示すレジストパターンが得られることを見出した。本発明の1つの態様として、組成物は、下記式(1)で表される架橋剤(B)と下記式(2)で表される架橋剤(C)以外の架橋剤を含んでも含まなくてもよい。
【0030】
組成物の架橋剤(B)は、下記式(1)で表される。
【化5】
は、C2-8アルコキシルアルキルである。Rは、好ましくはC2-4メトキシルアルキル、より好ましくは-CH-O-CHである。
は、C2-8アルコキシルアルキルである。Rは、好ましくはC2-4メトキシルアルキル、より好ましくは-CH-O-CHである。
【0031】
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC6-10アリール、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-8アルキル、または-NRである。RのC6-10アリールは、好ましくはフェニルまたはナフチル、より好ましくはフェニルである。RのC1-8アルキルは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル、より好ましくはメチルまたはブチルである。Rの、C6-10アリールおよびC1-8アルキルを置換するC1-6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、またはブチルであり、より好ましくはメチルである。Rの、非置換の、C6-10アリールおよびC1-8アルキルがさらに好ましい。
さらにより好ましくは、Rは、-NRである。RとRの定義と好ましい実施形態は、それぞれ独立に、上記と同じである。
【0032】
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC6-10アリール、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-8アルキル、または-NRである。RのC6-10アリールは、好ましくはフェニルまたはナフチル、より好ましくはフェニルである。RのC1-8アルキルは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシル、より好ましくはメチルまたはブチルである。Rの、C6-10アリールおよびC1-8アルキルを置換するC1-6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、またはブチルであり、より好ましくはメチルである。Rの、非置換の、C6-10アリールおよびC1-8アルキルがさらに好ましい。
さらにより好ましくは、Rは、-NRである。RとRの定義と好ましい形態は、それぞれ独立に、上記と同じである。
【0033】
式(1)で表される架橋剤(B)の具体例を以下に説明するが、説明のみを目的とするものである。
【化6】
【0034】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する架橋剤(B)の質量比が、好ましくは0.10~8質量%、より好ましくは0.30~5質量%、さらに好ましくは0.50~2質量%、さらにより好ましくは0.65~1.31質量%であることが本発明の組成物の1つの形態である。
【0035】
式(2)で表される架橋剤
本発明による組成物の架橋剤(C)は、以下の式(2)で表される。
【化7】
は、非置換もしくはC1-6アルキルで置換されたC1-20アルキルである。RのC1-20アルキルは、直鎖アルキルまたは分岐アルキルであり得る。RのC1-20アルキルは、好ましくはC1-10アルキル、より好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、または-C(CH-CH-C(CH、さらに好ましくは-C(CH-CH-C(CHである。RのC1-20アルキルを置換するC1-6アルキルは、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、またはブチル、より好ましくはメチルである。Rの、非置換のC1-20アルキルがさらに好ましい。
lは1、2、3または4である。lは、好ましくは2または3、より好ましくは2である。
mは0、1または2である。mは、好ましくは0または1、より好ましくは1である。
nは0、1または2であり、l+m+n≦6である。nは、好ましくは1である。
【0036】
式(2)で表される架橋剤(C)の具体例を以下に説明するが、説明のみを目的とするものである。
【化8】
【0037】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する架橋剤(C)の質量比が、好ましくは0.50~40質量%、より好ましくは1.0~30質量%、さらに好ましくは4.0~15質量%、さらに好ましくは5.5~8.5質量%であることが本発明による組成物の1つの形態である。本発明の1つの態様として、上記の量の架橋剤(C)のいずれか1つを含む本発明による組成物によって作成されたレジスト層は、パターン形状および除膜性に優れている。
【0038】
溶媒
本発明による組成物は、溶媒を含んでなることができる。本発明で使用される溶媒が、例えば水と有機溶媒を含んでなることができることは、1つの形態である。そして、組成物中の有機溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、モノアルコール溶媒、ポリオール溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、窒素含有溶媒、および硫黄含有溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含んでなることができる。これらのいずれかの任意の組み合わせが使用できる。
【0039】
有機溶剤としては、例えば、n-ペンタン、i-ペンタン、n-ヘキサン、i-ヘキサン、n-ヘプタン、i-ヘプタン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、i-プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、およびi-ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、2-メチルブタノール、2-エチルヘキサノール、n-ノニルアルコール、2,6-ジメチルヘプタノール-4、n-デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェニルメチルカルビノール、ジアセトンアルコール、およびクレゾール等のモノアルコール溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、およびグリセリン等のポリオール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルn-プロピルケトン、メチルn-ブチルケトン、ジエチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、およびフェンコン等のケトン系溶剤;エチルエーテル、i-プロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、および2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;炭酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸n-ブチル、乳酸メチル、エチル乳酸(EL)、γ-ブチロラクトン、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等のエステル溶剤;N-メチルホルムアミド等の窒素含有溶媒;並びに、硫化ジメチル等の硫黄含有溶剤が挙げられる。これらのいずれかの溶媒の任意の混合物も使用できる。
【0040】
特に、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、およびこれらのいずれかの任意の混合物が、溶液の保存安定性の観点から好ましい。
【0041】
溶質の溶解性の点で、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、乳酸エチル、およびそれらから選択される任意の2つの溶媒の混合物が好ましい。この目的のために、溶媒として、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテートがより好ましい。
【0042】
有機溶剤の量(または複数の有機溶剤の合計量)は、組成物の総量に対して、好ましくは60~95質量%、より好ましくは70~90質量%、そして、さらに好ましくは70~80質量%である。溶媒は、好ましくは有機溶媒を含んでなり、そして、組成物中の水の量は、好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。別の層または塗膜との関係を考慮すると、溶媒は水を含まないことが好ましい。本発明の1つの態様として、組成物中の水の量は、好ましくは0.00質量%である。
【0043】
光酸発生剤
ネガ型レジスト組成物の放射線に曝された部分で、光酸発生剤(PAG)が放射線を受けて酸を発生させて、これが樹脂と架橋剤の架橋反応を触媒する。
【0044】
本発明による組成物に含まれるPAGは、スルホン酸誘導体、ジアゾメタン化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ジスルホン化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体化合物、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体、シアノ含有オキシムスルホネート、およびこれらのいずれかの任意の組み合わせからなる群から選択することができる。組成物中のPAGの好ましい形態は、スルホン酸またはオニウム塩である。
【0045】
スルホン酸誘導体の1つの形態は、以下の化合物である。
【化9】
【0046】
オニウム塩は、好ましくはスルホニウム塩である。スルホン酸塩の1つの形態は、以下の化合物である。
【化10】
【0047】
PAGの具体例を以下に説明するが、説明のみを目的とするものである。
【化11】
【0048】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対するPAGの質量比は、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%、さらにより好ましくは7~12質量%である。
【0049】
クエンチャー
本発明による組成物は、単一または複数の添加剤をさらに含んでなることができる。本発明の1つの態様として、添加剤はクエンチャーであり、これは、レジストパターン形状および長期安定性(レジスト層のパターン状露光により形成される潜像の露光後安定性)等の特性を改善するのに有用である。クエンチャーとしては、アミンが好ましく、より具体的には、第2級脂肪族アミンまたは第3級脂肪族アミンを用いることができる。ここで、脂肪族アミンとは、C2-9アルキルまたはC2-9アルキルアルコールアミンをいう。そして、これらの第2級および第3級脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリオクチルアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンが挙げられる。そして、これらのうち、C3-6アルキルアルコールを有する第3級脂肪族アミンがより好ましい。
【0050】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対するクエンチャーの質量比が、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.01~8質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%であることは組成物の1つの形態である。
【0051】
界面活性剤
本発明による組成物は、界面活性剤を含んでなることができ、これは、塗膜中のピンホールまたは条痕を減少させるため、および組成物の塗布性および/または溶解性を増加させるために有用である。アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する界面活性剤の量(または複数の界面活性剤の合計量)は、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。組成物が界面活性剤を全く含まないこと(0質量%)も本発明の1つの好ましい形態である。
【0052】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、およびポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル化合物;ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、およびポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル化合物;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー化合物;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレエート、およびソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル化合物;そして、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、およびポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル化合物が挙げられる。界面活性剤の他の例としては、エフトップ(商品名)EF301、EF303およびEF352(トーケムプロダクト(株)製)、メガフェイス(商品名)F171、F173、R-08、R-30およびR-2011(DIC(株)製)、フロラードFC430およびFC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード(商品名)AG710(旭硝子(株)製)、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105およびSC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤;およびKP341(信越化学工業(株)製)等のオルガノシロキサンポリマーが挙げられる。
【0053】
その他の成分
本発明による組成物には、染料(好ましくは、モノマー性染料)、重合開始剤、コントラスト増強剤、酸、ラジカル発生剤、基板密着増強剤、滑剤、低級アルコール(C1-6アルコール)、表面レベリング剤、消泡剤、防腐剤、およびこれらのいずれかの任意の組み合わせ等の、他の成分をさらに添加することができる。上記のものとして既知の成分を組成物に使用することができ、米国公開、国際公開2001/61410に開示されたものを含め、例えば、既知の染料(例えば、アゾ染料、多環式芳香族炭化水素染料、芳香族炭化水素誘導体染料、アルコール誘導体染料、またはメチロール誘導体染料)を組成物に使用することができる。
【0054】
アルカリ可溶性樹脂(A)の質量に対する、組成物中の他の成分の量(または複数の他の成分の合計量)は、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%である。本発明の1つの態様として、組成物は、これらの成分を全く含まない(0質量%)。
【0055】
リフトオフ工程
リフトオフパターニング工程の1つの例示的な工程の形態を、図1の模式断面図に示す。(a)に示されるように、基板を用意し、次いで、基板上にレジスト組成物を塗布し、((b)に示される)レジスト層として得る。次に、(c)に示されるように、設計されたマスクを介する光放射線による露光。その後、レジスト層を現像し、(d)に示されるようにレジストパターンを形成する。レジストパターンは壁とトレンチを有する。
【0056】
後の剥離工程に対しては、逆テーパー形状のレジストパターンが好ましい。例えば、レジストパターンは、基板とレジストパターンの壁の側面が好ましくは90度未満(より好ましくは55度以上90度未満、さらに好ましくは55~80度)の角度を形成するような良好な逆テーパー形状を有する。角度はSEMを用いて断面写真で測定できる。
【0057】
次いで、(e)に示されるように、レジストパターン上に金属を適用して(好ましくは、蒸着させて)金属膜を形成する。金属膜は、好ましくは電極である。金属膜は、レジストパターンの壁とトレンチの上に形成される。レジスト層が、壁上の金属膜とトレンチとの間に隙間を作るのに十分な厚さを有し、それにより、レジスト層剥離液がその隙間を通して侵入できることが好ましい。
【0058】
そして、(f)に示されるように、レジストパターンとその上の金属膜を除去し(好ましくは、レジスト層剥離液で除去し)、基板上に金属膜パターンを得る。ここでは、レジストパターンの壁の上に形成された金属膜を除去することにより、レジストパターンのトレンチ上に形成された、設計された金属膜パターンが残る。
【0059】
比較のために、図2の模式断面図でのレジストエッチング工程を以下に簡単に説明する。(a’)は基板の用意を示す。(b’)は金属膜(例えば、電極)の形成を示し、(c’)は金属膜上へのレジスト層の形成を示す。(d’)はマスクを介した露光を示し、(e’)はレジストパターンを形成するための現像を示す。(f’)は露出した金属膜部分を除去するためのドライエッチングを示し、(g’)は金属膜の残された部分の上の、残されたレジストパターンの除去を示す。
【0060】
レジスト層の形成
ネガ型リフトオフレジスト組成物を基板の上方に塗布する。この塗布の前に、基板表面を、例えば、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン溶液で前処理することができる。ネガ型レジスト組成物は、照射下で反応を行ない、その照射部分は、現像液による溶解に対する耐性が増大する。塗布には、既知の方法、例えばスピンコート法を用いることができる。そして、塗布されたレジスト組成物をベークして組成物中の溶剤を除去し、レジスト層を形成する。ベーキングの温度は、使用する組成物により異なるが、好ましくは70~150℃(より好ましくは90~150℃、さらに好ましくは100~140℃)である。それは、10~180秒間、好ましくは、ホットプレート上での場合は30~90秒間、あるいは熱ガス雰囲気中(例えば、クリーンオーブン中)の場合は1~30分間行うことができる。
【0061】
形成されたレジスト層の厚さは、好ましくは0.40~5.00μm(より好ましくは0.40~3.00μm、さらに好ましくは0.50~2.00μm)である。
【0062】
本発明のレジストパターンを製造する方法においては、基板とレジスト膜が互いに直接接触しないように、基板とレジスト膜の間に下層膜を介在させることができる。下層膜としては、例えば、下層反射防止膜(BARC層)、無機ハードマスク下層膜(酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、または酸窒化ケイ素膜等)、および密着膜が挙げられる。下層膜は、単層または複数の層からなっていてもよい。本発明によるレジスト層は良好な剥離性を有するので、レジスト層が下層膜なしで基板上に形成されることが好ましい形態であり、そして、プロセス制御を難しくすることのあるレジスト現像中に下層膜(例えば、BARC)が溶解するという、意図しないリスクを低減することができる。
【0063】
他の層(例えば、上層反射防止膜、TARC)をレジスト膜上に形成してもよい。
【0064】
レジストのパターニング
レジスト膜に、所定のマスクを通して露光する。露光に使用する光の波長は特に限定されない。露光は、好ましくは、13.5~248nmの波長を有する光で行われる。特に、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、または極端紫外光(波長:13.5nm)を用いることができ、KrFエキシマレーザーがより好ましい。これらの波長は、±1%以内の変化が許容される。本発明による組成物によって作成されたレジストパターンは、良好な形状を形成することができ、良好な剥離性を示し得るため、一層微細な、設計されたマスクが使用できる。例えば、好ましくは1.0μm以下のライン-スペース幅、より好ましくは1.0μm未満のライン-スペース幅を有するマスクが使用できる。
【0065】
必要に応じて、露光の後に露光後ベークを行うことができる。露光後ベークの温度は、80~150℃、好ましくは100~140℃の範囲から選択され、露光後ベークの加熱時間は、0.3~5分、好ましくは0.5~2分の範囲から選択される。
【0066】
次に、現像液を用いて現像を行う。ネガ型リフトオフレジスト層の未露光部分は、現像により除去され、レジストパターンが形成される。レジストパターン形成における現像に使用される現像液としては、2.38質量%(±1%の濃度変化を許容)のTMAH水溶液が好ましい。界面活性剤等の添加剤を現像液に加えることができる。現像液の温度は一般に、5~50℃、好ましくは25~40℃の範囲から選択され、現像時間は一般に、10~300秒、好ましくは30~90秒の範囲から選択される。現像方法としては、パドル現像などの公知の方法を用いることができる。レジスト層が効果的に除去され、レジストパターンのトレンチ部分には残らないことが好ましい。
【0067】
現像後、現像液を水および/または洗浄液に置き換えるようにレジストパターンを水または洗浄液で洗浄することができる。次に、基板を、例えば、スピンドライ法により乾燥させることができる。
【0068】
基板上への金属膜パターンの製造
レジストパターンに金属を適用し、金属膜を形成する。既知の方法を使用できる。蒸着および塗布が好ましい(気相蒸着がより好ましい)。金属には金属酸化物が含まれる。金属膜は、良好な導電性を有することが好ましい。単一のおよび複数混合した金属を使用することができる。形成された金属膜の厚さは、レジストパターン壁の厚さよりも効果的に小さいこと(好ましくは、厚さの-80~-20%、より好ましくは厚さの-70~-30%)が、レジスト層剥離液が侵入してレジストパターンの壁に到達できる隙間を作るために好ましい。
【0069】
レジストパターンとその上の金属膜を除去して、基板上に金属膜パターンを得る(狭義には、この工程をリフトオフと呼ぶことができる)。レジストパターンの壁の上に形成された金属膜が除去され、レジストパターンのトレンチ上に形成された、設計された金属膜パターンが残る。この除去には、既知の方法、例えばレジスト層剥離液を使用することができる。レジスト層剥離液の1つの形態は、AZリムーバー700(メルクパフォーマンスマテリアルズ(株))である。パターン化された金属膜は、好ましくは、基板上の電極であり、これは後の工程で素子を作成するために使用することができる。
【0070】
素子の製造
その後、必要に応じて、基板をさらに加工して素子を形成する。そのようなさらなる加工は、既知の方法を使用することによって行うことができる。素子の形成後、基板を必要に応じてチップに切断し、リードフレームに接続して樹脂でパッケージングする。好ましくは、素子は、半導体素子、高周波モジュール、太陽電池チップ、有機発光ダイオードおよび無機発光ダイオードである。本発明の素子の1つの好ましい形態は、半導体素子である。本発明の素子の他の好ましい形態は、送信機(ICチップを含む)と受信機で作ることができる、高周波モジュールである。
【0071】
実施例
以下、実施例により本発明を説明する。これらの実施例は、説明のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図しない。なお、以下の説明において「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0072】
調整例1:実施組成物1
以下に記載する各成分を用意し、溶媒(プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、PGMEA)に添加した。ポリマーA(21.0867g)、架橋剤A(1.1826g)、架橋剤B(0.1376g)、PAG-A(1.527g)および界面活性剤(0.0211g、メガファックR2011、DIC(株))。各溶液を撹拌し、各溶質が溶解したことを確認した。すべての溶液を混合し、PGMEAを、全組成物の重量として100.0gになるまで添加した。得られた組成物を下記表1において実施組成物1とした。
【化12】
【表1】
上記の表1中の「比較(Comp.)」は、「比較」を意味する。以下、本明細書において同じ。
上記の表1中の「Xリンカー」は、「架橋剤」を意味する。
【0073】
調整例2~9:実施組成物2~9、比較調整例1~2:比較組成物1~2
上記表1に記載したように成分および量を変更した以外は、調整例1と同様に製造した。そして、実施組成物2~10と比較組成物1~2を得た。
【0074】
実施組成物1の評価用基板の調整例
以下の評価に用いた評価用基板を次に示すように調整した。シリコン基板((株)SUMCO、8インチ)の表面を、90℃で60秒間、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン溶液で処理した。実施組成物1をその上にスピンコートし、130℃で60秒間ソフトベークを行い、基板上に厚さ1.55μmのレジスト層を形成した。これに、FPA-3000EX5(キャノン(株))を用いて、マスクを通して露光した。使用されたマスクは、複数の1.0μmのラインとライン:スペース=1:1の領域が設けられていた。そして、マスクは徐々に狭まったラインアンドスペースの領域を有していた。これらのラインの幅は、1.0μm、0.9μm、0.8μm、0.7μm、0.6μm、0.5μm、0.45μm、0.40μm、0.38μm、0.36μm、0.34μm、0.32μm、0.30μm、0.28μm、0.26μm、0.24μm、0.22μm、0.20μm、0.18μm、0.16μm、0.14μm、0.12μm、および0.10μmであった。マスクには複数の同じ幅のラインがあり、各ライン:スペースの比は1:1であった。よりよい理解のために、マスク設計を図3に記載するが、これは本発明の範囲を限定するためではなく、説明の目的のためのものである。図3では、見やすいように不正確な縮尺が使用されている。
【0075】
この基板を110℃で60秒間露光後ベーク(PEB)した。その後、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、レジスト層を60秒間パドル現像した。パドル現像液が基板上に液盛りされている状態で、基板上に純水を流し始めた。そして、基板を回転させながら、パドル現像液を純水に置き換えた。その後、基板を2,000rpmで回転させ、スピン乾燥させた。
【0076】
実施組成物2~9および比較組成物1~2の評価用基板の調整例
実施組成物1を、実施組成物2~9および比較組成物1~2に変更することを除いて、上記と同じ方法で各基板の調製を行なった。
【0077】
レジストパターン形状の評価例
各々上記基板上の、0.7μmのスペースを通して露光されたレジストパターンの形状を、走査型電子顕微鏡装置SU8230((株)日立ハイテクノロジー)で評価した。評価基準は以下の通りとした。
A:レジストパターン倒れが見られなかった
B:レジストパターン倒れが見られた
評価結果を下記表2に示した。
【表2】
【0078】
レジストパターン形状でAと評価された基板を次の剥離性評価で評価した。
【0079】
剥離性の評価例
各基板から切り出した20mm×20mmの切片を用意した。これらの切片を110℃で90秒間ベークした。各切片をシャーレ上に、皿の中心から十分離して置いた。レジスト層剥離液(AZリムーバー700、メルクパフォーマンスマテリアルズ(株))をシャーレ中にゆっくりと加えた。攪拌機で混合しながら、溶液を70℃まで加熱した。溶液を10分間混合した後、切片を取り出した。そして、レジスト層剥離液を十分な純水で洗い流した。そして、切片をNガススプレーによって乾燥させた。
【0080】
ラインアンドスペース1.0μmの、露光したものから次第に狭くなるものまで、レジストパターンが剥離される前に置かれた位置を光学顕微鏡で観察した。評価基準は以下の通りとした。
A:ラインアンドスペースが0.4μm以下の、露光されたレジストパターンが明確に剥離された
B:ラインアンドスペースが0.4μmより大きく1.0μm未満の、露光されたレジストパターンが明確に剥離された
C:ラインアンドスペースが1.0μm未満の、露光されたレジストパターンが明確には剥離されなかった
【0081】
評価結果を上記表2に示した。実施例組成物から作成したレジストパターンは、比較組成物1から作成したものよりも明確に剥離することができた。
【0082】
調整例10:実施組成物10
下記の各成分を用意し、溶媒(PGMEA)に添加した。ポリマーA(12.158g)、架橋剤A(1.36g)、架橋剤B(0.157g)、PAG-B(1.313g)および界面活性剤(0.012g、メガファックR2011)。溶液を攪拌し、各溶質が溶解したことを確認した。溶液を混合し、PGMEAを、全組成物重量として10.0gになるまで添加した。このようにして、実施組成物10を得た。
【化13】
【0083】
実施組成物10の評価用基板の調整例、およびその上のレジストパターン形状の評価
以下の評価に用いた評価用基板を次に示すように調整した。シリコン基板((株)SUMCO、8インチ)の表面を、90℃で60秒間、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン溶液で処理した。実施組成物10をその上にスピンコートし、130℃で60秒間ソフトベークを行い、基板上に厚さ0.515μmのレジスト層を形成した。これに、FPA-3000EX5を用いて、マスクを通して露光した。使用されたマスクは、ライン:スペース=1:1であり、ライン幅は0.7μmであった。
【0084】
この基板を110℃で60秒間露光後ベーク(PEB)した。その後、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液を用いて、レジスト層を60秒間パドル現像した。パドル現像液が基板上に液盛りされている状態で、基板上に純水を流し始めた。そして、基板を回転させながら、パドル現像液を純水に置き換えた。その後、基板を2,000rpmで回転させ、スピン乾燥させた。
【0085】
上記基板上のレジストパターン形状を走査型電子顕微鏡装置SU8230で評価した。評価基準は上記の通りとした。その上には、レジストパターン倒れは見られなかった(上記基準のA)。
【符号一覧】
【0086】
1.基板
2.レジスト層
3.マスク
4.放射線
5.金属膜
6.基板
7.金属膜
8.レジスト層
9.マスク
10.放射線
11.1.0μm幅のライン
12.1.0μm幅のスペース
13.1.0μm幅のラインとライン:スペース=1:1を有する領域
14.0.9μm幅のライン
15.0.9μm幅のスペース
16.0.9μm幅のラインとライン:スペース=1:1を有する領域
図1
図2
図3