(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法及び発光装置用の封止用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
H01L 33/56 20100101AFI20221207BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221207BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20221207BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221207BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221207BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L33/56
C08L83/05
C08L83/07
C08L83/04
H01L23/30 F
(21)【出願番号】P 2018248024
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】綱野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】仁木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076471(JP,A)
【文献】特開2016-108393(JP,A)
【文献】特開2013-049841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00- 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリードを、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する基体を準備する工程と、
凹部の底面に発光素子を配置する配置工程と、
凹部の側面及び基体の上面に金属酸化物
又はSiO
2
の膜を形成する膜形成工程と、
1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとを含む封止用樹脂組成物を凹部内に配置する工程と、
前記封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂パッケージを形成する樹脂パッケージ形成工程と、を含む、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記基体が、複数の凹部を有する集合基体であり、
前記樹脂パッケージ形成工程後に、少なくとも1つの凹部を含む単位領域ごとの樹脂パッケージに切断して個片化する切断工程を含む、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物が、屈折率1.47以上1.55以下の範囲内の硬化物が得られるものである、請求項1又は2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記有機変性シリコーンオイルの重量平均分子量が700以上10,000以下の範囲内である、請求項1から3のいずれ1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとを含み、基体に配置された発光素子を封止するための発光装置の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物が、屈折率1.47以上1.55以下の範囲内の硬化物が得られるものである、請求項5に記載の発光装置の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
前記有機変性シリコーンオイルの重量平均分子量が700以上10,000以下の範囲内である、請求項5又は6に記載の発光装置の封止用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置の製造方法及び発光装置用の封止用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子を用いた発光装置は、各種の光源として利用されている。発光ダイオード(Light Emitting Diode、「LED」ともいう。)やレーザーダイオード(Laser Diode、以下「LD」ともいう。)の発光素子を用いた発光装置は、変換効率が高い光源であり、消費電力が少なく、長寿命であり、サイズの小型化が可能であることから、白熱電球や蛍光灯に代わる光源として利用されている。中でも、表面実装型発光装置は、小型で、鮮やかな色を発光し、初期駆動特性に優れ、振動や、オン・オフ点灯の繰り返しに強いという特徴を有する。発光素子の高出力化も急速に進んでいる。LEDやLDを用いた発光装置は、車載用や室内照明用の発光装置、液晶表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置などの広範囲の分野で利用されている。
【0003】
このような発光装置は、例えば凹部を有する基体の底面に発光素子を配置し、発光素子を保護するために、発光素子を被覆する封止用の樹脂組成物を、基板の凹部内に配置してなる封止部材が用いられている。封止用樹脂組成物には、発光素子の高出力化に伴い、シリコーン樹脂を含む樹脂組成物も使用されている。例えば、特許文献1には、炭素-炭素二重結合基を含有するシリコーン樹脂と、ヒドロシリル基を含有するシリコーン樹脂とを含有する付加硬化型のシリコーン樹脂組成物を含む封止用樹脂組成物を用いた発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような発光装置において、基体の表面にアミド基、エステル基、エポキシ基又は水酸基などの極性基が存在していると、封止用樹脂組成物と、基体の表面との濡れ性が良くなり、封止用樹脂組成物が凹部内にとどまらず、基体の凹部の上面まで封止用樹脂組成物が意図しない濡れ広がりを生じるおそれがある。封止用樹脂組成物が意図しない部分に濡れ広がると、濡れ広がった樹脂組成物の硬化物がバリとなって残存し、後工程においてバリが飛散する等の不都合を生じる場合がある。
そこで本発明の一態様は、封止用樹脂組成物の意図しない濡れ広がりを抑制することができる発光装置の製造方法及び封止用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、複数のリードを、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を有する基体を準備する工程と、
凹部の底面に発光素子を配置する配置工程と、
凹部の側面及び基体の上面に金属酸化物又はSiO
2
の膜を形成する膜形成工程と、
1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとを含む封止用樹脂組成物を凹部内に配置する工程と、
前記封止用樹脂組成物を硬化させて樹脂パッケージを形成する樹脂パッケージ形成工程と、を含む、発光装置の製造方法である。
【0007】
本発明の第二の態様は、1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとを含み、基体に配置された発光素子を封止するための発光装置の封止用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、封止用樹脂組成物の意図しない濡れ広がりを抑制することができる発光装置の製造方法及び封止用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、1つの単位領域の発光装置の基体の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、複数の凹部を有する集合基体の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、基体の凹部に発光素子を配置した一例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、発光装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る発光装置の製造方法及び発光装置用の封止用樹脂組成物を実施形態に基づいて説明する。以下に示す実施の一形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下の発光装置の製造方法及び発光装置用の封止用樹脂組成物に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。また、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0011】
本発明の実施形態に係る発光装置の製造方法の一例を説明する。
図1は、本発明の実施形態の方法によって製造された発光装置100を示す概略断面図である。発光装置の製造方法は、基体準備工程と、発光素子配置工程と、膜形成工程と、封止用樹脂配置工程と、樹脂パッケージ形成工程とを含む。発光装置の製造方法において、複数の凹部を有する集合基体を用いる場合には、樹脂パッケージ形成工程後に、各単位領域の樹脂パッケージごとに個片化する個片化工程を含んでいてもよい。
【0012】
基体準備工程
基体準備工程では、複数のリードを熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて一体成形し、側面と底面とを有する凹部を形成する基体を準備する工程である。
【0013】
図1は、1つの単位領域の基体40の一例を示す概略断面図である。基体40は、第1リード20と、第2リード30と、を、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む成形樹脂部42によって一体的に成形される。例えば、第1リード20と、第2リード30と、に分離されたリードフレームを準備し、樹脂成型金型のキャビティ―内の所定の位置に第1リード20と第2リード30とが支持され、キャビティ―内に成形樹脂を注入して硬化させる。キャビティ内に成形樹脂を注入する方法としては、例えば、射出成形法、トランスファーモールド法などが挙げられる。成形樹脂部42は、第1リード20と第2リード30の上に凹部40rを形成するように成形された第1成形樹脂部42aと、第1リード20と第2リード30とを分離して絶縁した状態で支持する第2成形樹脂部42bと、を含む。このようにして、第1のリード20と、第2のリード30と、成形樹脂部42と、が一体的に成形され、側面と底面とを有する凹部40rと、上面40sと、を有する基体40を準備する。
【0014】
図2は、複数の凹部40rを有する集合基体100の一例を示す斜視図である。基体は、
図2に示すように複数の凹部40rを有する集合基体100であってもよい。集合基体100は、複数の凹部40rが一体成形された成形樹脂部100aと、第1リード20及び第2リード30とに分離されたリードフレーム100bとを含む集合基体100からなる。凹部40rと凹部40rとの間は、集合基体100の上面40sである。集合基体100の成形樹脂部100aは、各単位領域の成形樹脂部42が一体に形成されてなる。
【0015】
図3は、集合基体100の一部の上面図である。集合基体100の1つの単位領域は、第1リード20及び第2リード30と、少なくとも1つの凹部40rを形成するように成形された第1成形樹脂部42aと、第1リード20と第2リード30を分離して絶縁した状態で支持する第2成形樹脂部42bと、上面40sと、を含む。第1成形樹脂部42aと接触する第1リード20及び第2リード30に貫通孔を形成し、その貫通孔に第1成形樹脂部42aを形成する成形樹脂が入りこむようにして、第1リード20及び第2リード30を第1成形樹脂部42によってより強固に支持するように形成してもよい。
図3における符号40tは、樹脂漏れ試験を行う場合の試験領域の一例を示す。
【0016】
基体は、上述のように樹脂成型金型を用いて製造してもよく、予め第1リード20と第2リード30とを成形樹脂部42で一体成形してなる基体を購入して用いてもよい。
【0017】
発光素子配置工程
配置工程では、凹部40rの底面に発光素子10が配置される。
図4は、1つの凹部40rと、上面40sと、を有する基体40に発光素子10が配置された一例を示す概略断面図である。発光素子10は、発光面に正負の電極を有しており、凹部40rの底面に露出した第1リード20の上面にダイボンディングされ、正負の電極が第1リード20と第2リード30とにワイヤ60により接続される。複数の凹部40rを有する集合基体100の場合は、各単位領域における凹部40rの底面に露出した第1リード20の上面に発光素子10がダイボンディングされる。発光素子10をダイボンディングする際の接合部材13は、例えば、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂を含む接合部材13が使用されてもよい。
【0018】
膜形成工程
膜形成工程では、凹部40rの側面及び基体40の上面40sに金属酸化物又はSiO
2
の膜が形成される。金属酸化物又はSiO
2
の膜は、凹部40rの側面及び基体40の上面40sに形成されるとともに、凹部40rの底面に露出した第1リード20及び第2リード30の露出面、発光素子10の上面及び/又は側面、並びにワイヤ60の表面に形成されてもよい。基体40の凹部40rの側面及び基体40の上面40sに形成された金属酸化物又はSiO
2
の膜は、基体40の凹部40rの側面及び基体40の上面40sを保護する。また、金属酸化物又はSiO
2
の膜が第1リード20及び第2リード30の露出面、発光素子10の上面及び/又は側面、並びにワイヤ60の表面に形成されている場合には、金属酸化物又はSiO
2
の膜が形成された部分を保護する。金属酸化膜は、例えば、TiO2、Al2O3などの金属酸化物を用いることができる。金属酸化物やSiO
2
の膜は、例えばスパッタリング法や、CVD法(Chemical Vapor Deposition)、ALD法(Atomic Layer Deposition)等の方法により形成することができる。
【0019】
封止用樹脂組成物の配置工程
封止用樹脂組成物の配置工程では、凹部40rに封止用樹脂組成物が配置される。封止用樹脂組成物は、例えば、射出成形法、ポッティング成形法、印刷法、トランスファーモールド法、圧縮成形法により、凹部40rに配置される。
【0020】
封止用樹脂組成物は、1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンとは非反応性の有機変性シリコーンオイルと、を含む。封止用樹脂組成物に含まれる有機変性シリコーンオイルによって、封止用樹脂組成物が、凹部40rから基体40の上面40sの意図しない範囲まで濡れ広がるのを抑制することができる。基体40の凹部40rの側面及び基体40の上面40sに金属酸化物又はSiO
2
の膜が形成されている場合は、この金属酸化物又はSiO
2
の膜の表面に水酸基が存在しており、この水酸基と、オルガノポリシロキサンの加水分解により生成したシラノール基が脱水縮合しやすく、封止用樹脂組成物が、基体40の凹部40rの縁(へり)の部分にとどまらず、基体40の上面40sの意図しない範囲まで濡れ広がりやすい。
通常、シリコーンオイルの表面張力は、鉱油の表面張力や水の表面張力よりも小さく、鉱油等の一般的なオイルや溶媒よりも濡れ広がりやすい。
しかしながら、封止用樹脂用組成物中に、1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルと、を含有させることによって、基体40の凹部40rに配置した封止用樹脂組成物を凹部40rの縁(へり)の部分のとどまらせることができ、基体40の上面40sまで濡れ広がるのを抑制することができる。封止用樹脂組成物に含まれる有機変性シリコーンオイルは、有機変性シリコーンオイルに導入された有機基の影響により、封止用樹脂組成物の表面張力が大きくなり、凹部40rの縁(へり)でメニスカス端部が形成され、濡れ広がりが抑制されると推測される。
【0021】
樹脂パッケージ形成工程
樹脂パッケージ形成工程では、封止用樹脂組成物が基体40の凹部40rに配置され、硬化させて蛍光部材50が形成され、樹脂パッケージが形成される。封止用樹脂組成物中に含まれる付加硬化型シリコーン樹脂組成物を硬化させる方法としては、付加硬化型シリコーン樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンに適合した硬化手段を適用することが好ましく、例えば常温硬化、加熱硬化、紫外線による光硬化により、封止用樹脂組成物を硬化させてもよい。封止用樹脂用組成物には、付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、非反応性の有機変性シリコーンオイルの他に、発光素子10からの光の波長を変換する蛍光体70を含んでいてもよく、蛍光部材50には蛍光体70を含むことが好ましい。集合基体100は、封止用樹脂組成物を各単位領域の凹部40rに配置して硬化させ、集合した状態の樹脂パッケージを形成する。
【0022】
個片化工程
集合基体100を用いた場合には、個片化工程において、複数の凹部40rを有する集合基体100が各単位領域の樹脂パッケージごとに個片化され、個々の発光装置101を得られる。集合基体100の個片化の方法としては、リードカット金型又はダイシングソーによる切断、又は、レーザー光による切断等の方法を用いることができる。なお、集合基体を個片化する際に、例えば、複数の樹脂パッケージが一体成形されている場合は、リードと成形樹脂部とを同時に切断して個片化してもよい。封止用樹脂組成物の意図しない濡れ広がりを抑制されていると、例えば凹部40rと凹部40rの間の上面40sに濡れ広がった封止用樹脂組成物が硬化してバリが形成されることなく、集合基体100を個片化した場合であっても、バリが剥がれて飛散する等の不都合を回避することができる。
【0023】
図5は、樹脂パッケージ形成工程後又は個片化工程後に得られた発光装置の一例を示す概略断面図である。発光装置101は、上面40s及び凹部40rを構成する第1樹脂成形部42a及び第2成形樹脂部42bと、凹部40rの底部を構成する第1リード20及び第2リード30と、光源となる発光素子10と、発光素子10を被覆する蛍光部材50と、を備える。発光素子10は、第1リード20に配置され、2つのワイヤ60でそれぞれ第1リード20及び第2リード30に接続される。発光素子10は、蛍光部材50により被覆されて樹脂パッケージが構成されている。蛍光部材50は、発光素子10から放出されて光の波長を変換する蛍光体70を含んでいてもよい。
【0024】
次に、発光装置を構成する各部材について説明する。
【0025】
リード
リードは、第1リード20及び第2リード30を含む。リードを構成する母材は、銅、アルミニウム、金、銀、タングステン、鉄及びニッケルから選ばれる少なくとも1種の金属、又は、鉄-ニッケル合金、燐青銅などの合金からなる板状体を用いることができ、リードの表面には、発光素子10からの光を効率よく取り出すために、銀、アルミニウム、金及びこれらの合金、又は銀からなる金属の膜が形成されていてもよい。第1リード20及び第2リード30の表面に形成される膜は、単層膜でもよく、多層膜でもよい。リードの表面に形成される膜はメッキ処理により施されることが好ましい。
【0026】
基体
基体40の成形樹脂部42を構成する樹脂組成物に含まれる樹脂としては、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリシクロへキシレンジメチルテレフタレート、ポリシクロヘキサンテレフタレート、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートを用いることができる。成形樹脂部42を構成する樹脂組成物には、凹部40rの側面方向への光の透過を低減し、凹部40rの内部の側面の反射を高めるために、光反射率の高い白色顔料を含んでいてもよい。成形樹脂部42を構成する樹脂組成物は、白色顔料の他に、フィラー、拡散剤、反射性物質を含んでいてもよい。白色顔料、フィラー、拡散剤又は反射性物質の材料としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、ガラス粒子等が挙げられる。
【0027】
発光素子
発光素子10は、発光装置101の励起光源として用いられる。発光素子10は、ピーク波長が320nm以上である。発光素子10から発せられる光のピーク波長が320nm以上の紫外光領域及び可視光領域であると、導電部材に含まれる銀の反射率が高く、発光装置の光の取り出し効率を良くすることができる。発光素子10から発せられる光のピーク波長は、320nm以上550nm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは350nm以上500nm以下の範囲内であり、さらに好ましく400nm以上490nm以下の範囲内であり、よりさらに好ましくは420nm以上475nm以下の範囲内であり、特に好ましくは450nm以上475nm以下の範囲内である。発光素子10の発光スペクトルの半値幅は、例えば30nm以下でもよく、25nm以下でもよく、20nm以下でもよい。半値幅は、発光スペクトルにおける発光ピークの半値全幅(Full Width at Half Maximum:FWHM)をいい、各発光スペクトルにおける発光ピークの最大値の50%の値を示す発光ピークの波長幅をいう。発光素子10は、例えば、窒化物系半導体(InxAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子であることが好ましい。発光素子10として、半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対するリニアリティが高く機械的衝撃にも強い安定した発光装置101を得ることができる。
【0028】
封止用樹脂組成物
封止用樹脂組成物は、1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとを含む。
【0029】
付加硬化型シリコーン樹脂組成物
付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(A)1分子中に架橋反応可能な官能基及びアリール基を含有するオルガノポリシロキサン、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒を含むことが好ましい。
【0030】
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分として、オルガノポリシロキサンに含まれる架橋反応可能な官能基は、1分子中に少なくとも2個含有され、好ましくは2個以上100個以下の範囲内で含有され、より好ましくは2個以上50個以下の範囲内で含有されていることが好ましい。オルガノポリシロキサンに含まれる架橋反応可能な官能基は、ケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基であることが好ましい。脂肪族不飽和炭化水素基は、脂肪族不飽和結合を有する炭素数2~8の1価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくはアルケニル基である。Siに結合したアルケニル基であることが好ましい。例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、及びオクテニル基等のアルケニル基が挙げられる。特に好ましくはビニル基である。脂肪族不飽和炭化水素基は、分子鎖末端のケイ素原子、分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合していてもよく、両者に結合していてもよい。
【0031】
オルガノポリシロキサンに含まれるアリール基は、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
【0032】
オルガノポリシロキサンに含まれる官能基及びアリール基以外のケイ素原子に結合する有機基は、炭素数1~18、好ましくは炭素数1~10、さらに好ましくは炭素数1~8の、非置換又は置換の1価炭化水素基であることが好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、又は、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。特にはメチル基であることが好ましい。
【0033】
オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に制限されない。オルガノポリシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、1部分岐又は環状構造を有する直鎖状等が挙げられる。オルガノポリシロキサンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
オルガノポリシロキサンは、例えば、下記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサンであってもよい。
R1
a(R2)b(R3)cSiO(4-a-b-c)/2 (1)
(平均組成式(1)中、(式中、aは0.3≦a≦1.0、好ましくは0.4≦a≦0.8、bは0.05≦b≦1.5、好ましくは0.2≦b≦0.8、cは0.05≦c≦0.8、好ましくは0.05≦c≦0.3の数であり、但し0.5≦a+b+c≦2.0、より好ましくは0.5≦a+b+c≦1.6を満たす数である。)
【0035】
平均組成式(1)において、R1は炭素数6~14、好ましくは炭素数6~10のアリール基であり、特に好ましくはフェニル基である。R2は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の、アリール基、アルケニル基を除く、置換又は非置換の1価炭化水素基である。このようなR2としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、及びシアノエチル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。
【0036】
平均組成式(1)において、R3は炭素数2~8、好ましくは炭素数2~6のアルケニル基である。このようなR3としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられ、中でもビニル基又はアリル基が望ましい。
【0037】
オルガノシロキサンとしては、直鎖状のシリコーンオイル及び/又は分岐構造を有するシリコーンレジンが挙げられる。オルガノポリシロキサンに含まれる直鎖状のシリコーンオイルは、1分子中に架橋反応可能な官能基、好ましくはケイ素原子に結合した脂肪族不飽和炭化水素基を含むものであり、後述する付加反応型シリコーン樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルとは異なる。
【0038】
シリコーンオイルは、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R4)2SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R4)3SiO1/2単位)で封鎖された直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンであることが一般的である(前記式においてR4は上述のR1、R2又はR3を意味する)
【0039】
また、成分(A)のオルガノポリシロキサンとしてのシリコーンレジンは、分子内にSiO2単位(Q単位)及び/又はR4SiO1.5単位(T単位)で表される分岐構造を有するものである。シリコーンレジンの場合、ケイ素原子に結合した置換基(シロキサン結合を形成する酸素原子を除く)のアリール基含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上80モル%以下の範囲内であり、特に好ましくは20モル%以上70モル%以下の範囲内である。具体的にはSiO2単位、R4
3SiO0.5単位(M単位)からなるシリコーンレジン、R4SiO1.5単位からなるシリコーンレジン、R4SiO1.5単位、R4
2SiO単位(D単位)からなるシリコーンレジン、R4SiO1.5単位、R4
2SiO単位、R4
3SiO0.5単位からなるシリコーンレジン等が例示される。
【0040】
また、このオルガノポリシロキサンは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography:GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量が500以上100,000以下の範囲であるものが好適である。レジン構造のオルガノポリシロキサンは、対応する加水分解性基含有シランやシロキサンを公知の方法で単独又は共加水分解させることにより得ることができる。
【0041】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、シリコーンレジンとシリコーンオイルを併用することが好ましい。併用することにより、封止剤としての硬さ、弾性、耐クラック性等の特性がより優れたものとなると共に表面タック性も改善される。好ましい配合割合は、質量比でシリコーンレジン:シリコーンオイルが、好ましくは95:5以上30:70以下の範囲内であり、より好ましくは90:10以上40:60以下の範囲内であり、特に好ましくは90:10以上50:50以下の範囲内である。
【0042】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(B)成分として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個含有し、好ましくは3個以上含有し、より好ましくは3個以上200個以下の範囲内で含有し、さらに好ましくは3個以上100個以下の範囲内で含有し、よりさらに好ましくは3個以上20個以下の範囲内で含有する。(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSiH基が、前記(A)成分が含有する官能基の脂肪族不飽和炭化水素基とヒドロシリル化触媒の存在下で付加反応し、架橋構造を形成できるものであればよい。
【0043】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合した有機基としては、脂肪族不飽和炭化水素基以外の1価炭化水素基が挙げられる。特には、炭素数1~12、好ましくは炭素数1~10の、非置換又は置換の1価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、2-フェニルエチル基、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等、及び、2-グリシドキシエチル基、3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のエポキシ環含有有機基(グリシジル基又はグリシジルオキシ基置換アルキル基)が挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子に結合する有機基は、アリール基を含むことが好ましい。
【0044】
前記オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子構造は特に制限されない。オルガのハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状、分岐鎖状、環状、一部分岐又は環状構造を有する直鎖状等が挙げられる。
【0045】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中の架橋反応可能な官能基、好ましくは脂肪族不飽和炭化水素基の個数の合計に対する(B)成分中のSiH基の個数が0.5個以上5個以下の範囲内となる量であり、好ましくは0.8個以上3個以下の範囲内となる量であり、より好ましくは1個以上2.5個以下の範囲内となる量である。(A)成分中の架橋反応可能な官能基に対する(B)成分のSiH基が上記範囲となる量のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが含まれていれば、付加反応が進行し、架橋構造が不均一となったり、組成物の保存性が悪化したりすることなく、架橋が十分となる。
【0046】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(2)で表され、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を少なくとも2個(通常2個以上300個以下の範囲内)含有し、好ましくは3個以上(例えば3個以上200個以下の範囲内)含有するものが好ましい。
He(R)fSiO(4-e-f)/2 (2)
(平均組成式(2)中、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の一価炭化水素基であり、e及びfは、0.001≦e<2、0.7≦f≦2、かつ0.8≦e+f≦3を満たす数である。)
【0047】
前記平均組成式(2)において、Rは脂肪族不飽和結合を含有しない同一又は異種の炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~7の一価炭化水素基であることが好ましく、例えば、メチル基等の低級アルキル基、フェニル基等のアリール基等、前述の平均組成式(1)の置換基R2で例示したものが挙げられる。
【0048】
また、e及びfは、0.001≦e<2、0.7≦f≦2、かつ0.8≦e+f≦3を満たす数であり、好ましくは0.05≦e≦1、0.8≦f≦2、かつ1≦e+f≦2.7となる数である。ケイ素原子に結合した水素原子の位置は特に制約はなく、分子の末端でも非末端でもよい。
【0049】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CH3)2HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C6H5)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0050】
なお、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、ケイ素原子に直結する置換基(シロキサン結合を形成する酸素を除く)の5モル%以上70モル%以下の範囲内が、アリール基、特にはフェニル基であることが好ましい。このような付加硬化型シリコーン樹脂組成物はより透明性が高く、より光半導体装置に適したものとなる。
【0051】
(C)ヒドロシリル化触媒
付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、(C)成分として、ヒドロシリル化触媒を含むことが好ましい。ヒドロシリル化触媒としては、白金系、パラジウム系、ロジウム系等のものがあるが、白金、白金黒、塩化白金酸等の白金系のもの、例えば、H2PtCl6・mH2O、K2PtCl6、KHPtCl6・mH2O、K2PtCl4、K2PtCl4・mH2O、PtO2・mH2O(mは、正の整数であり、mは、好ましくは0以上6以下の整数であり、より好ましくは0又は6である。)等や、これらと、オレフィン等の炭化水素、アルコール又はビニル基含有オルガノポリシロキサンとの錯体等を挙げることができ、これらは単独でも、2種以上の組み合わせでも使用することができる。
【0052】
(C)成分である触媒成分の配合量は、硬化有効量であり所謂触媒量でよい。(C)成分である触媒成分の配合量は、通常、前記成分(A)の合計量100質量部当り、白金族金属の質量換算で0.1ppm以上1,000ppm以下の範囲内であり、特に0.5pp以上200ppm以下の範囲内である。
【0053】
封止用樹脂用組成物に含まれる付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、屈折率が1.47以上1.55以下の範囲内の硬化物が得られるものであることが好ましく、屈折率が1.50以上1.53以下の範囲内の硬化物が得られるものあることがより好ましい。付加硬化型シリコーン樹脂組成物が硬化して得られる硬化物の屈折率は、オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するケイ素原子に結合している有機基に影響を受ける。有機基がアリール基、特にフェニル基であり、フェニル基の含有量が増加すると、屈折率が高くなる。封止用樹脂用組成物に含まれる付加硬化型シリコーン樹脂組成物は、屈折率が1.47以上1.55以下の範囲内の硬化物が得られるものであれば、透明性に優れ、発光素子を封止する発光装置用の封止用樹脂組成物に好適に用いることができる。付加硬化型シリコーン樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の屈折率は、JIS K7142:2008に準拠して、通常波長589nmのナトリウムD線を用いて、25℃において、アッベ型屈折率計により測定することができる。また、付加硬化型シリコーン樹脂組成物が市販品である場合には、カタログ値を用いることができる。
【0054】
有機変性シリコーンオイル
封止用樹脂組成物は、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、前記付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと、非反応性の有機変性シリコーンオイルと、を含むものである。封止用樹脂用組成物中に、付加硬化型シリコーン樹脂組成物と、この付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルと、を含有させることによって、基体の凹部に配置した封止用樹脂組成物を凹部の縁(へり)の部分のとどまらせることができ、基体の上面まで濡れ広がるのを抑制することができる。例えば、複数の凹部を有する集合基体において、基体の上面まで封止用樹脂組成物が濡れ広がるのを抑制することができると、封止用樹脂組成物を硬化させた後の個片化工程において、各単位領域の樹脂パッケージに切断する際に、バリの発生を抑制することができる。有機変性シリコーンオイルは、付加硬化型シリコーン樹脂組成物中に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性であり、硬化反応時に脱水縮合により硬化物の骨格中に取り込まれることはない。
【0055】
有機変性シリコーンオイルとしては、側鎖変性型、両末端変性型、片末端変性型、側鎖及び両末端変性型の変性シリコーンオイルが挙げられる。付加硬化型シリコーン樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルに導入される有機基としては、アミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基、酸無水物、メルカプト基、カルビノール基、フェノール基、ポリーテル基、アラルキル基、フルオロアルキル基、長鎖アルキル基、長鎖アラルキル基、高級脂肪酸エステル基、高級脂肪酸アミド基等が挙げられる。
【0056】
有機変性シリコーンオイルの重量平均分子量は、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が700以上10,000以下の範囲内であるものが好ましく、重量平均分子量が800以上8,000以下の範囲内であるものがより好ましく、さらに好ましくは900以上5,000以下の範囲内のものである。重量平均分子量が700以上10,000以下の範囲内の有機変性シリコーンオイルは、付加硬化型シリコーン樹脂組成物との相溶性が良好であり、透明性を妨げることなく、封止用樹脂組成物の基体の上面までの濡れ広がりを抑制することができる。
【0057】
封止用樹脂組成物における有機変性シリコーンオイルの配合量は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部当たり、好ましくは10ppm以上1,000ppm以下の範囲内であり、より好ましくは20ppm以上以上900ppm以下の範囲内であり、さらに好ましくは30ppm以上800ppm以下の範囲内である。封止用樹脂組成物中の有機変性シリコーンオイルの配合量が、付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部当たり、10ppm以上1,000ppm以下の範囲内であれば、封止用樹脂用組成物中に、封止用樹脂組成物を、基体40の凹部40rに配置した封止用樹脂組成物を凹部の縁(へり)の部分のとどまらせることができ、基体40の上面40sまで濡れ広がるのを抑制することができる。また、封止用樹脂組成物における有機変性シリコーンオイルの配合量が10ppm以上1,000ppm以下の範囲内であれば、有機変性シリコーンオイルを含む封止用樹脂組成物を長期間保管した場合であっても、封止用樹脂組成物の表面に有機変性シリコーンオイルがブリードアウトすることを抑制することができる。
【0058】
封止用樹脂組成物には、付加硬化型シリコーン樹脂組成物、付加硬化型シリコーン樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルの他に、蛍光体を含んでいてもよい。
【0059】
蛍光体
封止用樹脂組成物には、発光素子10からの光を吸収し、異なる波長の光に波長変換する蛍光体70を含むことが好ましい。蛍光体70としては、例えば、Ce(セリウム)で賦活されたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、Ceで賦活されたLAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、Eu(ユウロピウム)及び/又はCr(クロム)で賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO-Al2O3-SiO2)系蛍光体、Euで賦活されたシリケート((Sr,Ba)2SiO4)系蛍光体、βサイアロン蛍光体、フッ化物(K2SiF6:Mn)系蛍光体、CaAlSiN3:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu、(Sr,Ca)2Si5N8:Eu等の窒化物蛍光体等を用いることができる。蛍光体を表す組成中、カンマ(,)で区切られて記載されている複数の元素は、カンマで区切られた複数の元素から選ばれる少なくとも一種の元素を含み、前記複数の元素のから2種以上を組み合わせて含んでいてもよいことを表す。蛍光体を表す組成中、コロン(:)の前は母体結晶を構成する元素及びそのモル比を表し、コロン(:)の後は賦活元素を表す。封止用樹脂組成物に含まれる蛍光体70は、1種の蛍光体を単独で用いてもよく、2種以上の蛍光体を併用してもよい。
【0060】
封止用樹脂組成物中の蛍光体の含有量は、蛍光体の種類又は目的とする発光色の色調によって変化する。封止用樹脂組成物中の蛍光体の含有量は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、例えば1質量部以上400質量部以下の範囲内であり、2質量部以上300質量部以下の範囲内であってもよく、5質量部以上250質量部以下の範囲内であってもよい。
【0061】
封止用樹脂組成物には、付加硬化型シリコーン樹脂組成物、付加硬化型シリコーン樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイル、蛍光体の他に、フィラー、光安定剤、着色剤等のその他の成分を含んでいてもよい。フィラーとしては、例えば酸化ケイ素、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等を挙げることができる。封止用樹脂組成物中の、付加硬化型シリコーン樹脂組成物及び有機変性シリコーンオイル及び蛍光体以外のその他の成分の含有量は、付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上100質量部以下の範囲内である。
【0062】
封止用樹脂組成物が、前述の樹脂パッケージ形成工程において、基体40の凹部40rに配置され硬化されて、発光素子10が被覆される蛍光部材50が構成される。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
発光素子の封止用樹脂組成物の調整
発光素子を封止するための樹脂組成物の調整を行う。使用する部材は以下の通りである。
付加硬化型シリコーン樹脂組成物A:オルガノポリシロキサン含有、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「OE-6630」、硬化物の屈折率1.53、比重1.17
付加硬化型シリコーン樹脂組成物B:オルガノポリシロキサン含有、東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名「OE-7850」、硬化物の屈折率1.50、比重1.1
シリカ微粒子A:株式会社龍森製、商品名「KYKLOS LER-11」、粒子径11μm、比重2.2
シリカ微粒子B:日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジルRX200」、粒子径12nm、比重2.0
有機変性シリコーンオイル:エポキシ変性オルガノポリシロキサン、信越化学工業株式会社製、屈折率1.44、比重1.03
蛍光体A:Y3Al5O12:Ce、日亜化学工業株式会社製
【0065】
実施例1
付加硬化型シリコーン樹脂組成物Aを100質量部に、蛍光体Aを20質量部、シリカ微粒子Aを60質量部、シリカ微粒子Bを0.4質量部、有機変性シリコーンオイルを0.0001質量部配合し、発光素子を封止するための実施例1の封止用樹脂組成物を調製した。
【0066】
実施例2
実施例2として、付加硬化型シリコーン樹脂組成物Aを付加硬化型シリコーン樹脂組成物Bに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の封止用樹脂組成物を調製した。
【0067】
比較例1
有機変性シリコーンオイルを配合しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の封止用樹脂組成物を調製した。
【0068】
比較例2
有機変性シリコーンオイルを配合しないこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の封止用樹脂組成物を調製した。
【0069】
樹脂漏れ試験
実施例1、2、及び比較例1、2の封止用樹脂組成物について樹脂漏れ試験を行った。表1は樹脂漏れ試験の結果を示す。表2は樹脂漏れ量と点数の基準を示す。
図1乃至5に示すように、凹部40rを有する樹脂パッケージ(日亜化学工業株式会社製、製品型番:NFSW157J)の底面に青色を発光する発光素子10を載置し、樹脂パッケージの凹部40rの上面40sまで各実施例及び比較例の封止用樹脂組成物をポッティングした。平面視において樹脂パッケージの上面40sに封止用樹脂組成物が樹脂漏れしているかどうかを目視にて確認した。樹脂漏れを確認する樹脂パッケージの上面40sの試験領域は、例えば、
図3に示す凹部40rと凹部40rの間の上面40sの試験領域40tの面積において、樹脂漏れしている面積の割合を確認することによって評価できる。評価方法は、封止用樹脂組成物をポッティング済みの樹脂パッケージの2つの凹部40rと凹部40rの間の上面40sを目視で確認し、樹脂漏れしていない面積の占める割合で、5段階で点数付けを行った。すなわち、点数の高い「5」に該当する樹脂パッケージは樹脂漏れしている面積の割合が少なく、点数の低い「1」に該当する樹脂パッケージは樹脂漏れしている面積の割合が多い。各実施例及び比較例について、2つの凹部40rと凹部40rの間の上面40sを確認した樹脂パッケージの総数(n数)は18個である。
【0070】
【0071】
【0072】
樹脂漏れ試験の結果から、実施例1及び2の樹脂パッケージは、試験対象となる樹脂パッケージの全てが点数5であり、封止用樹脂組成物の意図しない濡れ広がりが抑制されていた。一方、比較例1及び2は、18個中14個の樹脂パッケージが点数1から4であり、実施例1及び2の樹脂パッケージと比べて樹脂漏れが生じていた。この結果から、封止用樹脂組成物に、付加硬化型シリコーン樹脂組成物中のオルガノポリシロキサンと非反応性の有機変性シリコーンオイルを含むことによって、この有機変性シリコーンオイルが樹脂漏れの抑制大きく影響していることは顕著であることが確認できた。また、封止用樹脂組成物中に含まれる有機変性シリコーンオイルが、付加硬化型シリコーン樹脂組成物100質量部に対して、10ppm以上1,000ppm以下の範囲内であり、微量であるため、発光装置の光束に影響しない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の実施形態に係る製造方法によって製造される発光装置及び封止用樹脂組成物を用いた発光装置は、表面実装型発光装置として好適に用いることができ、車載用や室内照明用の発光装置、液晶表示装置のバックライト光源、イルミネーション、プロジェクター用の光源装置などに利用できる。
【符号の説明】
【0074】
10:発光素子、13:接合部材、20:第1のリード、30:第2のリード、40:基体、42:成形樹脂部、42a:第1成形樹脂物、42b:第2成形樹脂部、40r:凹部、40s:上面、50:蛍光部材、60:ワイヤ、70:蛍光体、100:集合基体、100a:成形樹脂部、100b:リードフレーム、101:発光装置。