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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】リンク作動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 21/46 20060101AFI20221207BHJP
   B25J 11/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F16H21/46
B25J11/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018230100
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020091026
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 朗弘
(72)【発明者】
【氏名】福丸 浩史
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 賢蔵
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-112638(JP,A)
【文献】特開2016-147351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 21/46
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部材と、
3つ以上のリンク機構とを備え、
前記3つ以上のリンク機構は、前記基端部材と先端部材とを接続するように構成され、
前記3つ以上のリンク機構は、前記先端部材の前記基端部材に対する姿勢を変更可能であり、
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれは、
前記基端部材に第1回転対偶部において回転可能に接続された第1リンク部材と、
前記第1リンク部材に第2回転対偶部において回転可能に接続された第2リンク部材と、
前記第2リンク部材に第3回転対偶部において回転可能に接続された第3リンク部材と、
前記第3リンク部材に第4回転対偶部において回転可能に接続された第4リンク部材とを含み、
前記第4リンク部材は、前記先端部材に第5回転対偶部において回転可能に接続されるように構成され、
前記3つ以上のリンク機構において、前記第1回転対偶部の第1中心軸と、前記第2回転対偶部の第2中心軸とは球面リンク中心点で交わり、
前記3つ以上のリンク機構のそれぞれにおける前記第5回転対偶部の第5中心軸は重なるとともに、前記球面リンク中心点と交わり、
前記3つ以上のリンク機構のうち少なくとも3つのリンク機構に設置され、前記基端部材に対する前記先端部材の姿勢を任意に変更する姿勢制御用駆動源と、
前記3つ以上の前記第4リンク部材のいずれかに固定された作業体取り付け部材とをさらに備える、リンク作動装置。
【請求項2】
前記作業体取り付け部材には、作業を行なう作業体が取り付け可能であり、
前記作業体の重心が前記先端部材よりも前記基端部材側に配置されるように、前記作業体が前記作業体取り付け部材に取り付けられる、請求項1に記載のリンク作動装置。
【請求項3】
前記作業体取り付け部材は前記先端部材の前記基端部材側に面するように固定され、
前記作業体により作業がなされる被作業体を前記先端部材よりも前記基端部材側に配置可能な、請求項2に記載のリンク作動装置。
【請求項4】
前記被作業体は、前記先端部材と前記基端部材との間に配置可能である、請求項3に記載のリンク作動装置。
【請求項5】
前記基端部材には基端部材貫通孔が形成され、
前記被作業体は、前記基端部材に対して前記先端部材と反対側に配置可能であり、
前記作業体は、前記基端部材貫通孔を挟んで前記先端部材と反対側に配置される前記被作業体に対して作業可能である、請求項3に記載のリンク作動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リンク作動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器や産業機器などの各種装置に用いられるパラレルリンク機構が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-94245号公報
【文献】米国特許第5,893,296号明細書
【文献】特開2015-102125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のパラレルリンク機構は、構成が比較的簡単であるが、各リンクの作動角が小さい。このため、トラベリングプレートの作動範囲を大きく設定すると、リンク長が長くなることにより、機構全体の寸法が大きくなって装置の大型化を招くという問題がある。
【0005】
特許文献2のパラレルリンク機構は、基端部材としての基端側のリンクハブと先端部材としての先端側のリンクハブとを、4節連鎖の3組以上のリンク機構を介して連結した構成としている。特許文献2のパラレルリンク機構では、基端部材に対し先端部材の姿勢が変更可能になっている。特許文献2のパラレルリンク機構は、コンパクトでありながら、高速、高精度で、広範な作動範囲の動作が可能である。
【0006】
しかし、特許文献2のパラレルリンク機構は、先端部材の位置により当該先端部材の移動経路の回転半径が変化するとともに、当該先端部材の回転移動における回転中心の位置を固定できない。すなわち、基端部材から見て、先端部材は固定された回転中心から一定の半径を有する球面上を移動できないため、先端部材の動作をイメージしにくいという課題があった。さらに、先端部材は基端部材に対して回転2自由度で動作するため、先端部材の回転移動と独立して当該先端部材の回転半径を制御することができないという課題もあった。
【0007】
また特許文献3では、先端部材内の貫通孔を貫通するように、作業体が配置される。このため貫通孔よりも幅の広い作業体を先端部材に搭載することができない。すなわち特許文献3で用いられる作業体は比較的サイズが小さいものであり、重量の大きい作業体を取り付けることは想定されていない。このため重量の大きい作業体を取り付けてこれを高速および高精度条件下で被作業体に対し位置決めすることが困難である。
【0008】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものである。その目的は、重量の大きい作業体を取り付けて高速で高精度な動作を実現できるとともに、先端部材の回転移動と独立して当該先端部材の回転半径を制御できるリンク作動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に従ったリンク作動装置は、基端部材と、3つ以上のリンク機構とを備える。3つ以上のリンク機構は、基端部材と先端部材とを接続するように構成される。3つ以上のリンク機構は、先端部材の基端部材に対する姿勢を変更可能である。3つ以上のリンク機構のそれぞれは、第1~第4リンク部材を含む。第1リンク部材は、基端部材に第1回転対偶部において回転可能に接続される。第2リンク部材は、第1リンク部材に第2回転対偶部において回転可能に接続される。第3リンク部材は、第2リンク部材に第3回転対偶部において回転可能に接続される。第4リンク部材は、第3リンク部材に第4回転対偶部において回転可能に接続される。第4リンク部材は、さらに、先端部材に第5回転対偶部において回転可能に接続されるように構成される。3つ以上のリンク機構において、第1回転対偶部の第1中心軸と、第2回転対偶部の第2中心軸とは球面リンク中心点で交わる。3つ以上のリンク機構のそれぞれにおける第5回転対偶部の第5中心軸は重なるとともに、球面リンク中心点と交わる。当該リンク作動装置は、姿勢制御用駆動源と、作業体取り付け部材とをさらに備える。姿勢制御用駆動源は、3つ以上のリンク機構のうち少なくとも3つのリンク機構に設置され、基端部材に対する先端部材の姿勢を任意に変更する。作業体取り付け部材は3つ以上の第4リンク部材のいずれかに固定されている。
【発明の効果】
【0010】
上記によれば、重量の大きい作業体を取り付けて高速で高精度な動作を実現できるとともに、当該先端部材の回転半径を回転移動とは独立して制御可能なリンク作動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着される前の状態を示す斜視模式図である。
図2】実施の形態1に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。
図3図2に示したリンク作動装置の正面模式図である。
図4図3の線分IV-IVにおける断面模式図である。
図5図4の線分V-Vにおける断面模式図である。
図6図5中の点線で囲まれた領域VIの構成をより詳細に示す拡大断面模式図である。
図7図1に示したリンク作動装置において先端部材の姿勢を変更した状態を示す斜視模式図である。
図8図2のリンク作動装置の作業体取り付け部材に、作業体が取り付けられた態様を示す斜視模式図である。
図9図8に示す実施の形態1のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。
図10】実施の形態2に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。
図11図10に示す実施の形態2のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。
図12】実施の形態3に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。
図13図12に示す実施の形態3のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0013】
(実施の形態1)
<リンク作動装置の構成>
図1は、実施の形態1に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着される前の状態を示す斜視模式図である。図2は、実施の形態1に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。図3は、図2に示したリンク作動装置の正面模式図である。図4は、図3の線分IV-IVにおける断面模式図である。図5は、図4の線分V-Vにおける断面模式図である。図6は、図5中の点線で囲まれた領域VIの構成をより詳細に示す拡大断面模式図である。
【0014】
図1図6に示したリンク作動装置10Aは、基端部材1と、先端部材8と、3つのリンク機構11とを備える。基端部材1は平面形状が円形状の板状体である。なお、基端部材1の形状は任意の形状とすることができる。たとえば基端部材1の平面形状を四角形状、三角形状などの多角形状、あるいは楕円形状、半円形状などとしてもよい。また、リンク機構11の数は3以上であればよく、たとえば4または5としてもよい。
【0015】
3つのリンク機構11は、先端部材8の基端部材1に対する姿勢を変更可能な状態で、基端部材1と先端部材8とを接続する。3つのリンク機構11のそれぞれは、第1リンク部材4a、4b、4c、第2リンク部材6a、6b、6c、第3リンク部材7a、7b、7cおよび第4リンク部材8a、8b、8cを含む。第1リンク部材4a、4b、4cは、基端部材1に第1回転対偶部R1において姿勢制御用駆動源35a,35b,35cにより回転可能に接続される。なお、第1回転対偶部R1および姿勢制御用駆動源35a,35b,35cについては後述する。
【0016】
第1リンク部材4a、4b、4cは円弧状にのびる棒状の部材である。第1リンク部材4a、4b、4cの一方端部に上記貫通孔43が形成されている。図4に示すように、基端部材1の表面に垂直な方向から見た平面視において、第1リンク部材4a、4b、4cの内周側表面は曲面状になっている。上記平面視における当該内周側表面の曲率半径は、基端部材1の外周の曲率半径より小さい。なお、上記内周側表面の曲率半径は、基端部材1の外周の曲率半径と同じでもよく、当該外周の曲率半径より大きくてもよい。また、第1リンク部材4a、4b、4cの形状は円弧状以外の形状でもよい。たとえば、第1リンク部材4a、4b、4cの形状は直線状に延びる棒状であってもよいし、屈曲部を含む棒状であってもよい。図4に示すように、第1リンク部材4a、4b、4cは基端部材1の外周より内側に配置されている。しかし第1リンク部材4a、4b、4cは基端部材1の外周より外側に配置されてもよい。
【0017】
第1リンク部材4a、4b、4cにおいて貫通孔43が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部41には、軸部42が形成されている。軸部42は基端部材1の外周から外側に向けて延びるように形成されている。軸部42は第1リンク部材4a,4b,4cの基端部材1に面する内周側側面と反対側の外周側側面に形成されている。軸部42は第2リンク部材6a、6b、6cの貫通孔63に挿入されている。第2リンク部材6a、6b、6cの貫通孔63から突出した軸部42の先端部には固定部材の一例であるナット5a、5b、5cが固定されている。第2リンク部材6a、6b、6cは軸部42を中心に回転可能になっている。軸部42と当該軸部42が挿入された貫通孔63が形成されている第2リンク部材6a、6b、6cの部分とにより第2回転対偶部R2が構成される。つまり、第2リンク部材6a、6b、6cは、第1リンク部材4a、4b、4cに第2回転対偶部R2において回転可能に接続される。
【0018】
中心軸15a、15b、15cは第1回転対偶部R1の中心軸に相当する。第1リンク部材4a、4b、4cの他方端部41における軸部42の中心軸16a、16b、16cは第2回転対偶部R2の中心軸に相当する。図1および図4に示すように、後述する回転軸37の中心軸15a、15b、15cと軸部42の中心軸16a、16b、16cとは球面リンク中心点30において交差する。この交差は必要条件であり、球面リンク中心点30に、上記第1回転対偶部R1の中心軸15a、15b、15cと第2回転対偶部R2の中心軸16a、16b、16cが交差するならば、第1回転対偶部R1および第2回転対偶部R2の配置は任意に変更可能である。
【0019】
第2リンク部材6a、6b、6cは直線状に延びる棒状の部材である。第2リンク部材6a、6b、6cの一方端部に上記貫通孔63が形成されている。第2リンク部材6a、6b、6cの形状は直線状に延びる棒状以外の任意の形状としてもよい。たとえば、第2リンク部材6a、6b、6cを円弧状に延びる棒状体などとしてもよい。図1および図4に示すように、第1リンク部材4a、4b、4cが基端部材1の表面に沿って延びるように配置された状態で、先端部材8側から見たときに第2リンク部材6a、6b、6cは基端部材1の外周と重なる位置に配置される。なお、第2リンク部材6a、6b、6cは基端部材1の外周より内側のみに配置されてもよい。また第2リンク部材6a、6b、6cは基端部材1の外周より外側のみに配置されてもよい。
【0020】
第2リンク部材6a、6b、6cにおいて貫通孔63が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部には、第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部を受け入れる凹部が形成されている。第2リンク部材6a、6b、6cの他方端部には、凹部に面する位置に貫通孔が形成されている。第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部にも貫通孔が形成されている。第2リンク部材6a、6b、6cの他方端部における貫通孔と、第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部における貫通孔73とは直線状に並ぶように配置される。第2リンク部材6a、6b、6cの他方端部における貫通孔と、第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部における貫通孔73とには連結部材13a、13b、13cが挿入されている。連結部材13a、13b、13cは第2リンク部材6a、6b、6cと第3リンク部材7a、7b、7cとを相対的に回転可能な状態で連結する。連結部材13a、13b、13cはたとえばボルトおよびナットである。連結部材13a、13b、13cと第2リンク部材6a、6b、6cの他方端部と第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部とにより第3回転対偶部R3が構成される。つまり、第2リンク部材6a、6b、6cと第3リンク部材7a、7b、7cとは第3回転対偶部R3において回転可能に接続される。
【0021】
連結部材13a、13b、13cの中心軸17a、17b、17cは第3回転対偶部R3における中心軸に相当する。中心軸17a、17b、17cはそれぞれ中心軸16a、16b、16cと直交する方向に延びる。
【0022】
なお中心軸17a,17b,17cと中心軸16a,16b,16cとが交差するように第2リンク部材6a,6b,6cを構成する形態もある。その場合、第1リンク部材4a~4cの構造と第2リンク部材6a~6cの構造とが上記とは若干異なるものとなる。具体的には、当該形態においては、第1リンク部材4a~4cの端部(回転対偶部R2の場所)に貫通孔が形成され、第2リンク部材6a~6cの回転対偶部R2に対応する場所は軸状に形成されている。回転対偶部R2では第2リンク部材6a~6cの軸状の部分が第1リンク部材4a~4cの貫通孔に挿入される。第2リンク部材6a~6cは回転対偶部R2での軸状の部分が棒状に延び、その端部が第3リンク部材7a~7cを接続する凹部となる。つまり、たとえば球面リンク中心点30と、回転対偶部R3と、回転対偶部R4との3点により形成される三角形は、回転対偶部R2で回転する幾何学的構造となる。そのようになるように、3つの回転対偶部R2、R3,R4が配置される。
【0023】
第3リンク部材7a、7b、7cは直線状に延びる棒状の部材である。第3リンク部材7a、7b、7cの一方端部に上記貫通孔73が形成されている。第3リンク部材7a、7b、7cの形状は直線状に延びる棒状以外の任意の形状としてもよい。たとえば、第3リンク部材7a、7b、7cを円弧状に延びる棒状体などとしてもよい。
【0024】
第3リンク部材7a、7b、7cにおいて貫通孔73が形成された一方端部と反対側に位置する他方端部には、貫通孔74が形成されている。第4リンク部材8a、8b、8cには、第3リンク部材7a、7b、7cの他方端部を受け入れる凹部が形成されている。第4リンク部材8a、8b、8cの上記凹部に面する壁部83には、凹部に繋がる貫通孔が形成されている。第3リンク部材7a、7b、7cの他方端部における貫通孔74と、第4リンク部材8a、8b、8cの壁部83に形成された貫通孔とは直線状に並ぶように配置される。第3リンク部材7a、7b、7cの他方端部における貫通孔74と、第4リンク部材8a、8b、8cの壁部83における貫通孔とには連結部材14a、14b、14cが挿入されている。連結部材14a、14b、14cは第3リンク部材7a、7b、7cと第4リンク部材8a、8b、8cとを相対的に回転可能な状態で連結する。連結部材14a、14b、14cはたとえばボルトおよびナットである。連結部材14a、14b、14cと第3リンク部材7a、7b、7cの他方端部と第4リンク部材8a、8b、8cの壁部83とにより第4回転対偶部R4が構成される。つまり、第3リンク部材7a、7b、7cと第4リンク部材8a、8b、8cとは第4回転対偶部R4において回転可能に接続される。
【0025】
連結部材14a、14b、14cの中心軸18a、18b、18cは第4回転対偶部R4における中心軸に相当する。中心軸18a、18b、18cはそれぞれ中心軸17a、17b、17cと平行な方向に延びる。
【0026】
第4リンク部材8a、8b、8cは、それぞれ壁部83に接続されたベース部材81a~81cを含む。したがって第4リンク部材8aは、ベース部材81aと、第3リンク部材7aに連結される壁部83とを含む。第4リンク部材8bは、ベース部材81bと、第3リンク部材7bに連結される壁部83とにより形成されている。第4リンク部材8cは、ベース部材81cと、第3リンク部材7cに連結される壁部83とにより形成されている。
【0027】
ベース部材81a~81cの平面形状は円形状である。ベース部材81aの中央には図5に示すように中心軸82が設けられている。このため第4リンク部材8aは、ベース部材81aと壁部83とに加え、中心軸82を含んでいる。第4リンク部材8bのベース部材81bはベース部材81aに重なるように配置される。ベース部材81bの中央には貫通孔が形成されている。第4リンク部材8cのベース部材81cはベース部材81b上に重なるように配置されている。ベース部材81cの中央には貫通孔が形成されている。ベース部材81b、81cは、それぞれの貫通孔に中心軸82が挿入された状態で、ベース部材81a上に積層されている。中心軸82の先端部には固定部材としてのナット9が設置されている。第4リンク部材8a、8b、8cは、中心軸82を中心とした互いに独立に回転可能になっている。図1図6に示したパラレルリンク機構では、積層配置された第4リンク部材8a、8b、8cの中心軸82またはベース部材81a~81cを先端部材8とみることができる。なお、先端部材として、別の部材を中心軸82またはベース部材81a~81cのいずれかと接続してもよい。上記のような構成において、ベース部材81a~81cと中心軸82とナット9とから第5回転対偶部R5が構成される。図5からわかるように、3つのリンク機構11の第5回転対偶部R5の第5中心軸19は重なるように配置される。つまり、複数のリンク機構11の第5回転対偶部R5は1カ所に重なるように配置されている。なお、中心軸82としてはベース部材81aと別部材であるボルトなどを用いてもよい。この場合、ベース部材81aの中央部に当該ボルトを挿入する貫通孔が形成される。
【0028】
第4リンク部材8a、8b、8cにおいては、第4回転対偶部R4の第4中心軸18a、18b、18cと、第5回転対偶部R5の第5中心軸19とがねじれた配置になっている。より具体的には、第4回転対偶部R4の第4中心軸18a、18b、18cと、第5回転対偶部R5の第5中心軸19とは互いに直交する方向に延びている。
【0029】
図1および図4に示すように、第1回転対偶部R1の第1中心軸15a、15b、15cと、第2回転対偶部R2の第2中心軸16a、16b、16cとは球面リンク中心点30で交わる。また、図5に示すように、リンク機構11のそれぞれにおける第5回転対偶部R5の第5中心軸19は重なるとともに、球面リンク中心点30と交わる。なお、上記の関係を満たせば各対偶部R1~R5の配置は任意に設定できる。
【0030】
図1図4を参照して、リンク作動装置10Aは、以上の構成を有するパラレルリンク機構と、姿勢制御用駆動源35a、35b、35cとを備える。姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは、3つのリンク機構11のすべてに設置されている。姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは、第1リンク部材4a、4b、4cの第1中心軸15a、15b、15cまわりの回転角度を変更することにより、基端部材1に対する先端部材8の姿勢を任意に変更する。なお図5においては、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cの図示が省略されている。
【0031】
図1および図4に示すように、姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは、それぞれ固定部36a、36b、36cに固定されることで基端部材1に接続されている。固定部36a、36b、36cは基端部材1の表面における外周部に設置されている。固定部36a、36b、36cの形状は任意の形状とできるが、たとえば板状である。
【0032】
姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは電動モータなど回転駆動力を発生させることができれば任意の構成を採用できる。姿勢制御用駆動源35a、35b、35cはそれぞれ回転可能な回転軸37を含む。回転軸37が第1リンク部材4a、4b、4cの貫通孔43に挿入されナット3a、3b、3cにより固定されている。つまり回転軸37に第1リンク部材4a、4b、4cが固定されている。回転軸37の回転により第1リンク部材4a、4b、4cは第1中心軸15a、15b、15c周りに回転する。ここで、第1中心軸15a、15b、15cは、図4に示すように回転軸37の中心軸である。回転軸37と当該回転軸37が挿入された貫通孔43が形成された第1リンク部材4a、4b、4cの部分とにより第1回転対偶部R1が構成される。
【0033】
姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは、第1中心軸15a、15b、15cと重なる位置に配置している。また、姿勢制御用駆動源35a、35b、35cは、基端部材1の先端部材8側の表面側であって、基端部材1の外周より外側に突出した状態で配置されている。
【0034】
このような構成により、先端部材8の基端部材1に対する姿勢を各リンク機構11(図1参照)の状態によって一意に決定できる。すなわち、第1リンク部材4a、4b、4cの基端部材1に対する姿勢、あるいは第1中心軸15a、15b、15cまわりの第1リンク部材4a、4b、4cの回転角度、を制御することで、先端部材8の姿勢を制御することができる。
【0035】
なお、リンク作動装置においてリンク機構11(図1参照)が3つ以上設置されている場合、当該3つ以上のリンク機構11のうち少なくとも3つのリンク機構に姿勢制御用駆動源35a、35b、35cを設置すればよい。
【0036】
図2,3,5,6に示すように、リンク作動装置10Aには、作業体取り付け部材121が固定されている。作業体取り付け部材121には、後述する作業体が取り付け可能である。作業体はリンク作動装置10Aが行なうべき作業を行なう部材である。作業体取り付け部材121は、たとえば平面視において円形状を有し、図3の上下方向に沿う厚みを有する円盤形状である。作業体取り付け部材121の平面視における中心を含む中央部には、厚み方向に延びる貫通孔122が形成されている。貫通孔122内には第4リンク部材8aの中心軸82およびナット9が収納される。作業体取り付け部材121には、ボルト収納用孔部123が形成されている。ボルト収納用孔部123は固定部材としてのボルト124を収納することにより、ボルト124が作業体取り付け部材121を、先端部材8に固定している。
【0037】
作業体取り付け部材121は、3つの第4リンク部材8a,8b,8cのいずれかに固定されている。図6に示すように、ここでは一例として、積層されたベース部材81a,81b,81cのうち最上層であるベース部材81cの上面上にボルト124により、作業体取り付け部材121が固定されている。ボルト収納用孔部123は作業体取り付け部材121の厚み方向に延びこれを貫通している。ボルト収納用孔部123はボルト124を貫通可能な貫通孔であってもよいが、図6のようにいわゆるザグリ加工がなされた形状であってもよい。あるいはボルト収納用孔部123の代わりに、作業体取り付け部材121の表面には作業体を接着剤により固定するための平面部が設けられてもよい。
【0038】
ベース部材81cには、ボルト124のネジ部が挿入され締結可能な雌ねじを有する孔部125が形成されていてもよい。ボルト収納用孔部123およびこれに隣接する上記孔部125に挿入されるように、ボルト124が配置され締結される。これにより作業体取り付け部材121は、ベース部材81cすなわち第4リンク部材8cに固定されている。
【0039】
また貫通孔122よりも平面視での外側には、後述する作業体を取り付けるための孔部として厚み方向に延びる取り付け部126が形成されている。取り付け部126は、貫通孔122と間隔をあけて形成されている。取り付け部126はボルトを貫通可能な貫通孔であってもよいが、図6のようにいわゆるザグリ加工がなされた形状であってもよい。また取り付け部126は取り付け部126の外周に近い位置に形成されてもよい。あるいは取り付け部126の代わりに、作業体取り付け部材121の表面には作業体を接着剤により固定するスペースとしての平面部が設けられてもよい。
【0040】
<リンク作動装置の動作>
図7は、図1に示したリンク作動装置において先端部材の姿勢を変更した状態を示す斜視模式図である。図7に示すように、第1リンク部材4a、4b、4cの第1回転対偶部R1における第1中心軸15a、15b、15cまわりの回転角度をそれぞれ変更することにより、先端部材8の位置を任意に変更することができる。図7では、第1リンク部材4bの第1中心軸15bまわりの回転角度を相対的に大きくすることで、先端部材8において第4リンク部材8b側が上方に持上げられるとともに、先端部材中心31から見て第4リンク部材8bが位置する側と反対側に先端部材8全体が移動している。
【0041】
図1図7に示したリンク作動装置10Aでは、上述のような構成とすることにより、球面リンク中心点30を中心とした球面上を先端部材8が動作する。すなわち、先端部材8の姿勢は、図7に示すように球面リンク中心点30を原点とした3次元の極座標(r,θ,φ)で表すことができる。ここでいう折れ角θとは、先端部材中心31から垂直方向に降ろした線が、基端部材1と第1リンク部材4a、4b、4cとの接続部である第1回転対偶部R1の第1中心軸15a、15b、15cを含む平面と交わる点と球面リンク中心点30とを通る直線と、先端部材中心軸である第5中心軸19とが成す角度である。旋回角φとは、先端部材中心31から垂直方向に降ろした線が、第1中心軸15a、15b、15cを含む平面と交わる点と球面リンク中心点30とを通る直線と、第1のリンク機構11に第1回転対偶部R1の第1中心軸15aとが成す角度である。また、中心間距離rとは、球面リンク中心点30と先端部材中心31との距離である。
【0042】
なお図7においては、説明の便宜のため、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cを有さないパラレルリンク機構が図示されている。図7では基端部材1に接続された、上記の回転軸37に相当する軸部22に第1リンク部材4a,4b,4cが回転可能に接続されている。軸部22の先端にはナット3a,3b,3cが固定されている。
【0043】
<作業体の取り付け例>
図8は、図2のリンク作動装置の作業体取り付け部材に、作業体が取り付けられた態様を示す斜視模式図である。図8に示すように、本実施の形態に係るリンク作動装置10Aの作業体取り付け部材121の上に、エンドエフェクタとも呼ばれる作業体127が取り付けられている。作業体127は、上記の取り付け部126に収納された図示されないボルトなどにより取り付けられている。なお図8では作業体127の直方体状の本体部分から上方に軸が突出している。この軸はたとえば作業体127に作業体部品としてのたとえばドリルを取り付ける場合の回転中心軸であり、取り付けられたドリルに回転動力を伝えるための軸である。ただし作業体127にはこのような軸が含まれていなくてもよい。
【0044】
図9は、図8に示す実施の形態1のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。図9に示すように、図8のリンク作動装置は、図8の状態に対して上下反転させた状態で、基端部材1が天井CLGの下側を向く面に固定される。これにより、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cおよび固定部36a,36b,36cが天井CLGの下側を向く面に隣接するように配置される。
【0045】
図9において、図6のようにベース部材81c上に作業体取り付け部材121が取り付けられ、その基端部材1と反対側すなわち図9の下側の面上に作業体127が取り付けられる。作業体127は図9においては物体を把持するハンドであるがこれに限られない。作業体127であるハンドは、その下側の先端部が2つの部分に分かれている。この2つの部分の間に被作業体128を挟み把持することが可能となっている。図9においては作業体127であるハンドは、被作業体128であるコネクタを把持している。ただし被作業体128はコネクタに限られない。このように作業体127を設置することで、被作業体128に対して任意の作業がなされる。作業体127が把持する被作業体128は、作業台129であるたとえばコネクタ挿入口に対向している。作業体127はリンク作動装置10Aにより上下方向に移動される。このため作業体127は、被作業体128を作業台129に挿入したり、作業台129から被作業体128を抜き取ったりすることができる。図9において、球面リンク中心点30と先端部材8との距離を変更することにより、リンク作動装置10Aは任意の方向を向いた作業台129に対して被作業体128を取り付けおよび取り外しできる。
【0046】
<作用効果>
本開示に従ったリンク作動装置10Aは、基端部材1と、3つ以上のリンク機構11とを備える。3つ以上のリンク機構11は、基端部材1と先端部材8とを接続するように構成される。3つ以上のリンク機構11は、先端部材8の基端部材1に対する姿勢を変更可能である。3つ以上のリンク機構11のそれぞれは、第1~第4リンク部材を含む。第1リンク部材4a、4b、4cは、基端部材1に第1回転対偶部R1において回転可能に接続される。第2リンク部材6a、6b、6cは、第1リンク部材4a、4b、4cに第2回転対偶部R2において回転可能に接続される。第3リンク部材7a、7b、7cは、第2リンク部材6a、6b、6cに第3回転対偶部R3において回転可能に接続される。第4リンク部材8a、8b、8cは、第3リンク部材7a、7b、7cに第4回転対偶部R4において回転可能に接続される。第4リンク部材8a、8b、8cは、さらに、先端部材8に第5回転対偶部R5において回転可能に接続されるように構成される。3つ以上のリンク機構11において、第1回転対偶部R1の第1中心軸15a、15b、15cと、第2回転対偶部R2の第2中心軸16a、16b、16cとは球面リンク中心点30で交わる。3つ以上のリンク機構11のそれぞれにおける第5回転対偶部R5の第5中心軸19は重なるとともに、球面リンク中心点30と交わる。リンク作動装置10Aは、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cと、作業体取り付け部材121とをさらに備える。姿勢制御用駆動源35a,35b,35cは、3つ以上のリンク機構11のうち少なくとも3つのリンク機構11に設置され、基端部材1に対する先端部材8の姿勢を任意に変更する。作業体取り付け部材121は3つ以上の第4リンク部材8a,8b,8cのいずれかに固定されている。
【0047】
このようにすれば、3つ以上のリンク機構11のそれぞれが第1回転対偶部R1~第5回転対偶部R5を有する5節連鎖構造となっているので、基端部材1に対して先端部材8を、球面リンク中心点30を中心とした回転2自由度と、第5中心軸19に沿った方向の1自由度という合計3自由度で移動させることができる。このため、基端部材1に対して先端部材8を、上記球面リンク中心点30を中心とした球面に沿って移動させることができるとともに、当該球面に沿った移動とは独立して第5中心軸19に沿った方向にも移動させることができる。この結果、先端部材8を上記球面に沿って移動させるとともに、先端部材8が沿って移動する球面の半径を調整できるので、先端部材8が一定半径の球面に沿ってしか移動できない場合よりも先端部材8の可動範囲を大きくできる。なお、ここで第4リンク部材8a、8b、8cが、先端部材8に第5回転対偶部R5において回転可能に接続されるように構成される、とは、第4リンク部材8a、8b、8cにおいて別部材としての先端部材を接続可能な部分が存在していることを意味し、第4リンク部材8a、8b、8cの一部が先端部材として機能する場合も含む。第5中心軸19に沿った方向の先端部材8の移動を利用して、図9のようにコネクタを所望の箇所に抜き差しするなどの動作が容易になされる。
【0048】
本開示に従ったリンク作動装置10Aは、少なくとも3つの姿勢制御用駆動源35a、35b、35cがリンク機構11を個別に制御することで、先端部材8を広範囲かつ精密に動作させることができる。また、上記の構成を用いることで、軽量かつコンパクトなリンク作動装置を実現できる。
【0049】
リンク作動装置10Aには、作業体取り付け部材121が固定される。これによりリンク作動装置10Aは、作業体取り付け部材121に作業体127を取り付けて、当該作業体を安定に動作させることができる。したがってリンク作動装置10Aは、作業対象物となる被作業体128すなわちワークに対して作業を行なうことが可能な作業装置として機能できる。また作業体取り付け部材121を有すれば、これを有さない場合に比べて、重量の大きい作業体127であっても、作業体取り付け部材121の表面に固定することにより容易に取り付けできる。このため重量の大きい作業体127を取り付けてこれを高速および高精度に安定して動作させることができる。また被作業体に対し加工等を行なうための位置決めが精密に行なえる。
【0050】
(実施の形態2)
<リンク作動装置の構成>
図10は、実施の形態2に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。図11は、図10に示す実施の形態2のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。図10および図11に示すように、本実施の形態のリンク作動装置10Bは、リンク作動装置10Aと比較して、作業体取り付け部材121および作業体127の配置される位置において異なっている。なお図10および図11におけるリンク作動装置10Bは図1と同様に基端部材1が下側に、先端部材8が上側に配置されており、図9のように上下逆転されてはいない。
【0051】
図11に示すように、作業体取り付け部材121は、先端部材8の基端部材1側に、すなわち図11の先端部材8の下側に、固定されている。作業体127は、作業体取り付け部材121の図11の下側の表面に取り付けられている。このため作業体127は、その重心が先端部材8よりも基端部材1側すなわち図の下側に配置されるように、作業体取り付け部材121に取り付けられている。作業体127は、その高さ方向の位置が第3リンク部材7a~7cとほぼ同じとなるように配置されている。
【0052】
作業体127により作業がなされる被作業体128は、先端部材8よりも基端部材1側に配置可能である。本実施の形態においては、被作業体128は、図10および図11の上下方向に関して、先端部材8よりも基端部材1側に配置可能である。つまり被作業体128は、作業体127の図11の下側の領域にてたとえば把持され、先端部材8と基端部材1との間に配置されている。被作業体128は、その高さ方向の位置が第1リンク部材4a~4cとほぼ同じとなるように配置されている。また基端部材1上には作業台129が図示されている。
【0053】
つまり図10および図11において、作業体取り付け部材121、作業体127、被作業体128および作業台129は、平面視において3つ以上のリンク機構11に囲まれる位置に配置されている。言い換えれば作業体取り付け部材121、作業体127、被作業体128および作業台129は、先端部材8と平面視において重なる領域であり、基端部材1と平面視において重なる領域の中央部に配置される。
【0054】
なお図11は動作の説明の便宜のため、図10に示す本実施の形態の本来のリンク作動装置10Bとは構成の異なるリンク作動装置を示している。具体的には、図11に示すリンク作動装置には、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが描かれていない。また図11に示すリンク作動装置には、内部の作業を見やすくするために省略している部材がある。当該部材は、たとえば第1のリンク部材4cおよび第2のリンク部材6cなどである。また図11に示すリンク作動装置においては、第1リンク部材4a,4bが基端部材1を先端部材8側から見たときの外側に配置されている。このため図11の第1リンク部材4a~4cは、図10の第1リンク部材4a~4cよりも基端部材1よりも下側すなわち先端部材8と反対側へ下げやすくなる。すなわち図11では図10よりも、作業体127を図11の下側へ移動させやすくなる。
【0055】
<作業体の取り付け例>
図11において、作業体127は物体を把持するハンドであるがこれに限られない。作業体127である把持部としてのハンドは、その下側の先端部が2つの部分に分かれている。この2つの部分の間に被作業体128を挟み把持することが可能となっている。図11においては作業体127であるハンドは、被作業体128であるピンを把持している。ただし被作業体128はピンに限られない。基端部材1の中央部の上には、作業台129が載置されている。作業体127が把持する被作業体128は、たとえば作業台129に形成されたピン挿入口に対向している。作業体127はリンク作動装置10Aにより第5中心軸19に沿う上下方向に移動される。このため作業体127は、被作業体128を作業台129のピン挿入口に挿入したり、作業台129から被作業体128を抜き取ったりすることができる。図示されない荷重センサ等を適切に配置し、当該荷重センサの出力を参照しながら作業体127の位置決め制御がされることが好ましい。このようにすれば、図11に示す状態で作業体127を微小に動作させ、作業台129のピン挿入口にピンを位置ずれせず抜き差しするなどの細かい動作ができる。なお図10に示すように球面リンク中心点30に重なる位置に作業体127の平面視での中心が配置されることがより好ましい。このようにすれば、作業がより容易に行なえる。
【0056】
<作用効果>
本実施の形態では、実施の形態1のリンク作動装置10Aの作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。本開示に従ったリンク作動装置10Bにおいて、作業体取り付け部材121には、作業を行なう作業体127が取り付け可能である。作業体127の重心が先端部材8よりも基端部材1側に配置されるように、作業体127が作業体取り付け部材121に取り付けられる。
【0057】
このようにすれば、たとえばベース部材81cの上面上に固定された作業体取り付け部材121の上に作業体127が取り付けられた実施の形態1に比べ、作業体127の重心と球面リンク中心点30との距離が小さくなる。このため、実施の形態1のリンク作動装置10Aに比べて、作業体127の球面リンク中心点30まわりの慣性モーメントを小さくできる。そのため本実施の形態では、実施の形態1に比べて、位置決め動作中の作業体127の振動を低減できる。その結果、本実施の形態の作業体127は、高速で高精度な動作を実現できる。
【0058】
仮に実施の形態1のように作業体127が3つ以上のリンク機構11に囲まれた領域の外側である先端部材8の上側に配置されれば、作業体127の重心と球面リンク中心点30との距離が図10に示した構成における当該距離より大きくなる。このため実施の形態1では作業体127の位置決め動作時の慣性モーメントが大きくなる。本実施の形態によれば、このような不具合が解消できる。
【0059】
本開示に従ったリンク作動装置10Bは、姿勢制御用駆動源35a~35cを低出力化すなわち省エネルギ化できる。その結果、リンク作動装置10Bをコンパクト化できる。このような効果は、特にたとえば第5中心軸19の方向に長い作業体127、またはより先端部材8側に重心を有する作業体127を図11にて用いる場合に有効となる。これらの作業体127を用いる場合に特に作業体127の慣性モーメントが大きくなるためである。
【0060】
なお本実施の形態では作業体127の重心が先端部材8よりも基端部材1側に配置されるように作業体127が作業体取り付け部材121に取り付けられれば十分である。つまり図10および図11のように作業体127の基端部材1側に被作業体128および作業台129が配置されてもよい。しかし図示されないが、作業体127の重心が先端部材8よりも基端部材1側に配置される限り、被作業体128および作業台129の配置は任意に選択できる。
【0061】
リンク作動装置10Bにおいては、作業体取り付け部材121は先端部材8の基端部材1側に面するように固定される。作業体127により作業がなされる被作業体128は、先端部材8よりも基端部材1側に配置可能である。特に被作業体128は、先端部材8と基端部材1との間に配置可能であることが好ましい。
【0062】
上記のように作業体127の重心が先端部材8よりも基端部材1側に配置される。このため被作業体128が先端部材8よりも基端部材1側に配置されても、作業体127は3つ以上のリンク機構11に囲まれた領域内で、被作業体128との距離が近い態様とすることができる。被作業体128が先端部材8と基端部材1との間に配置可能であれば、特に作業体127と被作業体128との距離を近くし、たとえば被作業体128の受け渡しなどの動作をより確実に行なうことができる。
【0063】
(実施の形態3)
<リンク作動装置の構成>
図12は、実施の形態3に係るリンク作動装置の、作業体取り付け部材が装着された状態を示す斜視模式図である。図13は、図12に示す実施の形態3のリンク作動装置の使用例を示す正面模式図である。図12および図13に示すように、本実施の形態のリンク作動装置10Cは、リンク作動装置10Bと比較して、基端部材1の態様において異なっている。なお図12および図13のリンク作動装置10Cは図10および図11のリンク作動装置10Bと同様に、基端部材1が下側に、先端部材8が上側に配置されており、図9のように上下逆転されてはいない。
【0064】
具体的には、図12に示すように、基端部材1には基端部材貫通孔130が形成されている。基端部材貫通孔130はたとえば基端部材1の平面視における中央であり球面リンク中心点30と重なる位置を中心とする円形状を有するよう、基端部材1の中央部に形成されている。ただしこれに限らず、基端部材貫通孔130は基端部材1の中央部に形成されている限り、たとえば矩形状など他の平面形状であってもよい。
【0065】
図13に示すように、本実施の形態では、被作業体128は、基端部材1に対して先端部材8と反対側に配置可能である。すなわち被作業体128は、基端部材1よりも下側に配置されている。これにより図13の上側から下側へ、作業体127、基端部材1(基端部材貫通孔130)、被作業体128の順に並んでいる。作業体127は、基端部材貫通孔130を挟んで先端部材8と反対側に配置される被作業体128に対して作業可能である。すなわち本実施の形態においては、被作業体128は第1リンク部材4a~4cよりも図13の下側に配置されている。被作業体128は基端部材1と、第5中心軸19に沿う方向について間隔をあけて配置されている。被作業体128は作業台129に搭載されていることが好ましい。
【0066】
なお図10および図11と同様に、図13は動作の説明の便宜のため、図12に示す本実施の形態の本来のリンク作動装置10Bとは構成の異なるリンク作動装置を示している。具体的には、図13に示すリンク作動装置には、姿勢制御用駆動源35a,35b,35cが描かれていない。また図13に示すリンク作動装置には、内部の作業を見やすくするために省略している部材がある。当該部材は、たとえば第1のリンク部材4cおよび第2のリンク部材6cなどである。また図13に示すリンク作動装置においては、第1リンク部材4a,4bが基端部材1を先端部材8側から見たときの外側に配置されている。このため図13の第1リンク部材4a~4cは、図12の第1リンク部材4a~4cよりも基端部材1よりも下側すなわち先端部材8と反対側へ下げやすくなる。すなわち図13では図12よりも、作業体127を図13の下側へ移動させやすくなる。
【0067】
<作業体の取り付け例>
図13において、作業体127は塗布用の液体を供給するディスペンサである。作業体127の最下部に設けられた軸状の突起は当該液体を放出するノズルである。ノズルは作業体127の最下面の平面視における中央部から、たとえば第5中心軸19に沿う方向に延びており、その最下部から液体が放出可能な態様であることが好ましい。被作業体128は作業体127のディスペンサが放出する塗布用の液体を塗布される加工部材である。被作業体128はたとえば作業台129としてのベルトコンベア上に載置されている。つまり被作業体128はベルトコンベアで搬送されることにより、たとえば基端部材貫通孔130の真下に配置可能な構成となっている。
【0068】
作業台129としてのベルトコンベアで基端部材貫通孔130の真下に被作業体128が搬送され、作業体127のノズルと、被作業体128の表面の液体を塗布したい領域とが、基端部材貫通孔130の内部の空間部分を挟んで一直線上に並ぶ。このときにたとえばリンク作動装置10Cにより作業体127が第5中心軸19に沿う上下方向に移動されてもよい。これにより作業体127のノズルはたとえば基端部材貫通孔130を通り抜けてその下側に移動することもできる。その状態で作業体127が液体を放出することにより、被作業体128の所望の箇所に当該液体が塗布される。なお球面リンク中心点30に重なる位置に基端部材1の中心でありかつ基端部材貫通孔130の中心が配置されることがより好ましい。このようにすれば、作業がより容易に行なえる。
【0069】
<作用効果>
本実施の形態では、実施の形態1のリンク作動装置10A、および実施の形態2のリンク作動装置10Bの作用効果に加え、以下の作用効果を奏する。本開示に従ったリンク作動装置10Cは、基端部材1には基端部材貫通孔130が形成される。被作業体128は、基端部材1に対して先端部材8と反対側に配置可能である。作業体127は、基端部材貫通孔130を挟んで先端部材8と反対側に配置される被作業体128に対して作業可能である。
【0070】
これにより、図13のように基端部材1よりも下側にある被作業体128に対しても、基端部材貫通孔130を形成することにより、作業体127が被作業体128に対して作業を行なうことができる。たとえばリンク作動装置10Cで作業体127を上下方向に移動させることで、作業体127を被作業体128と至近距離になるよう配置することができる。これにより作業体127は、被作業体128に対して所望の動作ができる。
【0071】
上記の他、たとえば図示しないが、軸方向に長い作業体127を搭載した場合には、作業体127を基端部材貫通孔130に通し、作業体127の一部を基端部材1よりも下側に突出させて、被作業体128に対して作業を行なうこともできる。
【0072】
また本実施の形態では、実施の形態2と同様に作業体127の慣性モーメントを小さくしながら、リンク作動装置10Cの3つ以上のリンク機構11に囲まれた領域の外側に配置される被作業体128に対して作業を行なうことができる。
【0073】
なお、各実施の形態においてリンク機構11の数が3の場合を示しているが、リンク機構11の数は4以上の任意の数、たとえば5、6、8などであってもよい。
【0074】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0075】
1 基端部材、2a,2b,2c 基端接続部、3a,3b,3c,5a,5b,5c,9 ナット、4a,4b,4c 第1リンク部材、6a,6b,6c 第2リンク部材、7a,7b,7c 第3リンク部材、8 先端部材、8a,8b,8c 第4リンク部材、10A,10B,10C リンク作動装置、11 リンク機構、13a,13b,13c,14a,14b,14c 連結部材、15a,15b,15c 第1中心軸、16a,16b,16c 第2中心軸、17a,17b,17c 第3中心軸、18a,18b,18c 第4中心軸、19 第5中心軸、22,42 軸部、25,26,27,28,29 軸受、30 球面リンク中心点、31 先端部材中心、35a,35b,35c 姿勢制御用駆動源、36a,36b,36c 固定部、37 回転軸、38,39 歯車、41 他方端部、43,63,73,74 貫通孔、45 開口部、81a,81b,81c ベース部材、82 中心軸、83 壁部、121 作業体取り付け部材、122 貫通孔、123 ボルト収納用孔部、124 ボルト、125 孔部、126 取り付け部、127 作業体、128 被作業体、129 作業台、130 基端部材貫通孔。
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