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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】D級増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/217 20060101AFI20221207BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H03F3/217
H03K17/16 J
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018057984
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019169912
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 淳一
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-223554(JP,A)
【文献】特開平03-116967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0086038(US,A1)
【文献】特開2007-228572(JP,A)
【文献】特開昭62-038617(JP,A)
【文献】特開2017-118249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/217
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
VSS1<VDD1、VSS2<VDD2、VDD2<VDD1、VSS2<VSS1の関係にある電圧VDD1、VSS1、VDD2、VSS2を電源電圧として使用するD級増幅器であって、
前記電圧VDD1の端子にソースが接続されるハイサイドパワーP型トランジスタ及び前記電圧VSS2の端子にソースが接続されドレインが前記ハイサイドパワーP型トランジスタのドレインと共通に出力端子に接続されるロウサイドパワーN型トランジスタと、
入力信号が“L”になると前記ハイサイドパワーP型トランジスタのゲートに前記電圧VDD1を入力し、前記入力信号が“H”になると前記ハイサイドパワーP型トランジスタのゲートに前記電圧VSS1を入力するハイサイド駆動回路と、
入力信号が“H”になると前記ロウサイドパワーN型トランジスタのゲートに前記電圧VSS2を入力し、前記入力信号が“L”になると前記ロウサイドパワーN型トランジスタのゲートに前記電圧VDD2を入力するロウサイド駆動回路と、
ソースが前記電圧VDD1の端子に接続されドレインが第13抵抗を介して前記電圧VSS1の端子に接続され、前記ハイサイド駆動回路の出力電圧が所定値に上昇するとドレイン電圧を前記電圧VSS1に低下させる第17P型トランジスタ、及び、ソースが前記電圧VDD1の端子に接続されドレインが前記ハイサイド駆動回路の出力側に接続され、前記第17P型トランジスタのドレイン電圧が前記電圧VSS1に低下するとONし、前記入力信号が“H”になるとOFFする第18P型トランジスタ、を有するハイサイドセルフターンオン防止回路と、
ソースが前記電圧VSS2の端子に接続されドレインが第23抵抗を介して前記電圧VDD2の端子に接続され、前記ロウサイド駆動回路の出力電圧が所定値に低下するとドレイン電圧を前記電圧VDD2に上昇させる第27N型トランジスタ、及び、ソースが前記電圧VSS2の端子に接続されドレインが前記ロウサイド駆動回路の出力側に接続され、前記第27N型トランジスタのドレイン電圧が前記電圧VDD2に上昇するとONし、前記入力信号が“L”になるとOFFする第28N型トランジスタ、を有するロウサイドセルフターンオン防止回路と、
前記入力信号が“L”から“H”に変化するとき前記ロウサイド駆動回路から出力している前記電圧VDD2が前記電圧VSS2に変化したことを検知してから前記ハイサイド駆動回路の出力電圧を前記電圧VDD1から前記電圧VSS1に変化させるハイサイドデッドタイム生成回路と、
前記入力信号が“H”から“L”に変化するとき前記ハイサイド駆動回路から出力している前記電圧VSS1が前記電圧VDD1に変化したことを検知してから前記ロウサイド駆動回路の出力電圧を前記電圧VSS2から前記電圧VDD2に変化させるロウサイドデッドタイム生成回路と、
を備え、前記第17P型トランジスタは前記ハイサイド駆動回路の出力段を構成するトランジスタより大きな面積に設定され、前記第27N型トランジスタは前記ロウサイド駆動回路の出力段を構成するトランジスタより大きな面積に設定されていることを特徴とするD級増幅器。
【請求項2】
請求項1に記載のD級増幅器において、
前記ハイサイド駆動回路は、第3インバータと該第3インバータの出力側に接続される第4インバータで構成され、
前記ロウサイド駆動回路は、第5インバータと該第5インバータの出力側に接続される第6インバータで構成され、
前記第18P型トランジスタのゲートに論理和回路の出力が接続され、該論理和回路の一方の入力が前記第17P型トランジスタのドレインに接続され、前記論理和回路の他方の入力が前記第4インバータの入力に接続され、
前記第28N型トランジスタのゲートに論理積回路の出力が接続され、該論理積回路の一方の入力が前記第27N型トランジスタのドレインに接続され、前記論理積回路の他方の入力が前記第6インバータの入力に接続されている、
ことを特徴とするD級増幅器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のD級増幅器において、
前記ゲートをベースに、前記ソースをコレクタに、前記ドレインをエミッタにそれぞれ置き換えたことを特徴とするD級増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はD級増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
図5に従来のD級増幅器の回路を示す(特許文献1)。ハイサイドの電源電圧はVSS1<VDD1、ロウサイドの電源電圧はVSS2<VDD2の関係にある、また、VDD2<VDD1、VSS2<VSS1の関係にある。11はハイサイドレベルシフト回路、12はハイサイド駆動回路、21はロウサイドレベルシフト回路、22はロウサイド駆動回路、INV1,INV2はインバータ、MP11~MP14,MP21はPMOSトランジスタ、MN11,MN21~MN24はNMOSトランジスタである。そのうち、MP14,M24はパワートランジスタである。R11,R12はプルアップ抵抗、R21,R22はプルダウン抵抗である。トランジスタMP11,MP12,MN11,MN23はハイサイドデッドタイム生成回路を構成し、トランジスタMN21、MN22,MP21,MP13はロウサイドデッドタイム生成回路を構成する。
【0003】
さて、入力電圧VINが“L”のときは、ハイサイドレベルシフト回路11の出力電圧V10はVSS1となり、ロウサイドレベルシフト回路21の出力電圧V20はVSS2となっている。また、トランジスタMP12、MN22は常時ONしている。
【0004】
このため、ハイサイドでは、トランジスタMP11がON、トランジスタMN11がOFFしてトランジスタMP11,MN11の共通ドレインの電圧V11とハイサイド駆動回路12出力電圧V12がVDD1となるので、パワートランジスタMP14はOFFとなる。また、インバータINV1の出力電圧がVSS1となるので、トランジスタMP13がONしている。一方、ロウサイドでは、トランジスタMP21がON、トランジスタMN21がOFFしているので、ロウサイド駆動回路22の入力電圧V21はトランジスタMP13,MN22,MP21を経由してハイサイドの電圧VDD1となり、ロウサイド駆動回路22の出力電圧V2がVDD1となる。よって、トランジスタMN23はOFFし、パワートランジスタMN24がONしている。以上により、出力電圧VOUTはVSS2となっている。
【0005】
次に、入力電圧VINが“L”→“H”に変化したときは、ハイサイドレベルシフト回路11の出力電圧V10はVDD1となり、ロウサイドレベルシフト回路21の出力電圧V20はVDD2となる。
【0006】
このため、ハイサイドでは、トランジスタMP11がOFFし、MN11がONする。このときトランジスタMP12もONしているが、トランジスタMN23がOFFしているので、ハイサイド駆動回路12の入力電圧V11は抵抗R11によって電圧VDD1にプルアップされ、出力電圧も同様となり、パワートランジスタMP14はまだOFFを維持する。トランジスタMP13はON状態のままである。一方、ロウサイドでは、トランジスタMP21がOFFしトランジスタMN21がONするので、ロウサイド駆動回路22の入力電圧V21がVSS2となり、出力電圧V22も同様となって、トランジスタMN23がOFF→ONとなり、パワートランジスタMN24がON→OFFとなる。このため、ハイサイド駆動回路12の入力電圧V11がONしているトランジスタMN11,MP12,MN23を経由してVSS2になり、その駆動回路12の出力電圧V12がVSS1になる。これによって、トランジスタMP13がOFFし、パワートランジスタMP14がONし、出力電圧VOUTがVSS2→VDD1に切り替わる。
【0007】
このように、入力電圧VINが“L”→“H”に変化したときは、ロウサイドのパワートランジスタMN24がON→OFFに切り替わったことがトランジスタMN23のONで確認されてから、ハイサイドのパワートランジスタMP14がONするので、その遷移期間にデッドタイムが作成される。
【0008】
次に、入力電圧VINが“H”→“L”に変化したときは、ハイサイドレベルシフト回路11の出力電圧V10はVSS1となり、ロウサイドレベルシフト回路21の出力電圧V20はVSS2となる。
【0009】
このため、ロウサイドでは、トランジスタMN21がOFFし、MP21がONする。このときトランジスタMN22もONしているが、トランジスタMP13がOFFしているので、ロウサイド駆動回路22の入力電圧V21は抵抗R21によって電圧VSS2にプルダウンされ、出力電圧V22も同様となり、パワートランジスタMN24はまだOFFを維持する。トランジスタMN23はON状態のままである。一方、ハイサイドでは、トランジスタMN11がOFFしトランジスタMP11がONするので、ハイサイド駆動回路12の入力電圧V11が電圧VDD2となり、出力電圧V12も同様となって、トランジスタMP13がOFF→ONとなり、パワートランジスタMP14がON→OFFとなる。このため、ロウサイド駆動回路22の入力電圧V21がONしているトランジスタMP21,MN22,MP13を経由してVDD1になり、そのロウサイド駆動回路22の出力電圧V22がVDD2になる。これによって、トランジスタMN23がOFFし、パワートランジスタMN24がONし、出力電圧VOUTがVDD1→VSS2に切り替わる。
【0010】
このように、入力電圧VINが“H”→“L”に変化したときは、ハイサイドのパワートランジスタMP14がON→OFFに切り替わったことがトランジスタMP13のONで確認されてから、ロウサイドのパワートランジスタMN24がONするので、その遷移期間にデッドタイムが作成される。
【0011】
ところで、以上のように、出力用のパワートランジスタMP14,MN24が同時にONして貫通電流が流れないように両パワートランジスタMP14,MN24を同時にOFF状態にするデッドタイムを設ける場合、そのデッドタイムの期間ではスイッチングが行われないので効率の低下につながる。したがって、このデッドタイムは短いほど好ましいが、急峻すぎるスイッチングでは放射ノイズが増大する問題が発生する。
【0012】
放射ノイズの問題を回避するためには、先にOFFする側のトランジスタをゆっくりOFFさせるか、あるいはONする側のトランジスタをゆっくりONさせて、電流の変化を緩やかにすればよい。しかし、D級増幅器では、出力電圧の緩やかな波形は出力信号の歪率に悪影響を与える。
【0013】
そこで、NMOSのパワートランジスタをOFFさせる際にOFF開始時は当該のゲート電圧を急速に低下させて、その後は緩慢にパワートランジスタの閾値まで低下させることで、スイッチング速度を大きく損なうことなく放射ノイズの発生を抑制する伝搬遅延削減回路が提案されている(特許文献2)。
【0014】
この伝搬遅延削減回路を図5で説明したD級増幅器のロウサイドに適用させた回路を図6に示す。ロウサイド駆動回路22は、PMOSトランジスタMP25とNMOSトランジスタMN25からなる前段インバータINV5と、PMOSトランジスタMP26とNMOSトランジスタMN26からなる後段インバータINV6で構成されている。さらに、このロウサイド駆動回路22の出力側と電源VSS2のラインとの間に、NMOSトランジスタMN31,MN32の直列回路からなるセルフバイアス回路24を挿入している。トランジスタMP26,MM26はトランジスタMN31,MN32に比べて面積が小さく設定されている。
【0015】
インバータINV6の入力電圧V23がVSS2からVDD2に向けて立ち上がると、トランジスタMP26がOFFを開始し、トランジスタMN26がONを開始する。このとき、電圧V23を直接ゲートに入力しているトランジスタMN31は早期にONを開始する。また、インバータINV6の出力電圧V22の立上りが遅いので、トランジスタMN32はまだON状態にある。
【0016】
したがって、トランジスタMP26のOFFが完了しトランジスタMN26のONが完了する前に、先にONしているトランジスタMN31,MN32によってパワートランジスタMN24のゲート電圧V22の低下が促進される。つまり、パワートランジスタMN24がON状態からOFF状態への遷移の前半部分が高速化される。そして、この後は、トランジスタMN31,MN32がOFFするので、パワートランジスタMN24のゲート電圧はトランジスタMN26のONによって低下を続けるが、そのトランジスタMN26は面積が小さいので、その変化は緩慢となる。
【0017】
以上から、パワートランジスタMN24がONからOFFに変化するときは、そのゲート電圧V22は当初は急速に低下するがその後は緩慢に低下する。これによって、そのパワートランジスタMN24のONからOFFへの遷移を、スイッチング速度が低下するほど遅くはなく、放射ノイズが発生することほど速くもないようにすることができる。なお、ハイサイドにも同様なセルフバイアス回路(ただし、使用するトランジスタはMPトランジスタ)が装備することで、同様にパワートランジスタMP14を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特許第5596582号公報
【文献】米国特許第8188769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
ところが、図6の伝搬遅延削減回路では、パワートランジスタMN24がOFFしてドレイン・ソース間の電圧が急激に増大すると、ドレイン・ゲート間の帰還容量を介して電荷がそのゲートに注入され、パワートランジスタMN24のゲート電圧が閾値以上に上昇してONする現象が発生する。これは、セルフターンオン現象と呼ばれ、効率低下のみならず貫通電流が発生してパワートランジスタの破損や発火をまねくおそれがある。
【0020】
本発明の目的は、デッドタイムをできるだけ短くしたときであっても、放射ノイズの発生を抑制し、さらにセルフターンオン現象の発生も防止したD級増幅器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、D級増幅器において、VSS1<VDD1、VSS2<VDD2、VDD2<VDD1、VSS2<VSS1の関係にある電圧VDD1、VSS1、VDD2、VSS2を電源電圧として使用するD級増幅器であって、前記電圧VDD1の端子にソースが接続されるハイサイドパワーP型トランジスタ及び前記電圧VSS2の端子にソースが接続されドレインが前記ハイサイドパワーP型トランジスタのドレインと共通に出力端子に接続されるロウサイドパワーN型トランジスタと、入力信号が“L”になると前記ハイサイドパワーP型トランジスタのゲートに前記電圧VDD1を入力し、前記入力信号が“H”になると前記ハイサイドパワーP型トランジスタのゲートに前記電圧VSS1を入力するハイサイド駆動回路と、入力信号が“H”になると前記ロウサイドパワーN型トランジスタのゲートに前記電圧VSS2を入力し、前記入力信号が“L”になると前記ロウサイドパワーN型トランジスタのゲートに前記電圧VDD2を入力するロウサイド駆動回路と、ソースが前記電圧VDD1の端子に接続されドレインが第13抵抗を介して前記電圧VSS1の端子に接続され、前記ハイサイド駆動回路の出力電圧が所定値に上昇するとドレイン電圧を前記電圧VSS1に低下させる第17P型トランジスタ、及び、ソースが前記電圧VDD1の端子に接続されドレインが前記ハイサイド駆動回路の出力側に接続され、前記第17P型トランジスタのドレイン電圧が前記電圧VSS1に低下するとONし、前記入力信号が“H”になるとOFFする第18P型トランジスタ、を有するハイサイドセルフターンオン防止回路と、ソースが前記電圧VSS2の端子に接続されドレインが第23抵抗を介して前記電圧VDD2の端子に接続され、前記ロウサイド駆動回路の出力電圧が所定値に低下するとドレイン電圧を前記電圧VDD2に上昇させる第27N型トランジスタ、及び、ソースが前記電圧VSS2の端子に接続されドレインが前記ロウサイド駆動回路の出力側に接続され、前記第27N型トランジスタのドレイン電圧が前記電圧VDD2に上昇するとONし、前記入力信号が“L”になるとOFFする第28N型トランジスタ、を有するロウサイドセルフターンオン防止回路と、前記入力信号が“L”から“H”に変化するとき前記ロウサイド駆動回路から出力している前記電圧VDD2が前記電圧VSS2に変化したことを検知してから前記ハイサイド駆動回路の出力電圧を前記電圧VDD1から前記電圧VSS1に変化させるハイサイドデッドタイム生成回路と、前記入力信号が“H”から“L”に変化するとき前記ハイサイド駆動回路から出力している前記電圧VSS1が前記電圧VDD1に変化したことを検知してから前記ロウサイド駆動回路の出力電圧を前記電圧VSS2から前記電圧VDD2に変化させるロウサイドデッドタイム生成回路と、を備え、前記第17P型トランジスタは前記ハイサイド駆動回路の出力段を構成するトランジスタより大きな面積に設定され、前記第27N型トランジスタは前記ロウサイド駆動回路の出力段を構成するトランジスタより大きな面積に設定されていることを特徴とする。
【0023】
請求項にかかる発明は、請求項に記載のD級増幅器において、前記ハイサイド駆動回路は、第3インバータと該第3インバータの出力側に接続される第4インバータで構成され、前記ロウサイド駆動回路は、第5インバータと該第5インバータの出力側に接続される第6インバータで構成され、前記第18P型トランジスタのゲートに論理和回路の出力が接続され、該論理和回路の一方の入力が前記第17P型トランジスタのドレインに接続され、前記論理和回路の他方の入力が前記第4インバータの入力に接続され、前記第28N型トランジスタのゲートに論理積回路の出力が接続され、該論理積回路の一方の入力が前記第27N型トランジスタのドレインに接続され、前記論理積回路の他方の入力が前記第6インバータの入力に接続されている、ことを特徴とする。
【0025】
請求項にかかる発明は、請求項1又は2に記載のD級増幅器において、前記ゲートをベースに、前記ソースをコレクタに、前記ドレインをエミッタにそれぞれ置き換えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、パワーP型トランジスタ及びパワーN型トランジスタはOFFする際の遷移の前半が緩慢となるので、デッドタイム生成回路を設けそのデッドタイムを短くしたときであっても、放射ノイズの発生を抑制できる。また、パワーP型トランジスタがOFFするときは第18P型トランジスタによってそのゲートに電圧VDD1が追加的に印加し、パワーN型トランジスタがOFFするときは第28N型トランジスタによってそのゲートに電圧VSS2が追加的に印加するので、パワーP型トランジスタ及びパワーN型トランジスタのセルフターンオン現象の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施例のD級増幅器のハイサイドセルフターンオン防止回路の部分の回路図である。
図2】本発明の実施例のD級増幅器のロウサイドセルフターンオン防止回路の部分の回路図である。
図3図1のハイサイドセルフターンオン防止回路の動作波形図である。
図4図2のロウサイドセルフターンオン防止回路の動作波形図である。
図5】従来のD級増幅器の回路図である。
図6】従来の伝搬遅延削減回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1図5のD級増幅器のハイサイド駆動回路12の出力側に設けられるハイサイドセルフターンオン防止回路13を示す。このハイサイドセルフターンオン防止回路13は、ハイサイド駆動回路12の出力電圧V12をゲートに入力しソースが電圧VDD1の端子に接続されるPMOSトランジスタMP17と、そのトランジスタMP17のドレインと電圧VSS1の端子に接続される抵抗R13と、ハイサイド駆動回路12を構成する後段のインバータINV4の入力電圧V13とトランジスタMP17のドレインの電圧V14の論理和をとる論理和回路OR1と、インバータINV4の出力端子と電圧VDD1の端子の間に接続され論理和回路OR1の出力電圧V15がゲートに入力するPMOSトランジスタMP18とを備える。トランジスタMP17の面積はトランジスタMP16,MN16の面積よりも大きく設定されている。
【0029】
入力電圧VINが“H”から“L”に切り替わると、インバータINV3の入力電圧V11がVSS1→VDD1に切り替わるので、インバータINV4の入力電圧V13がVDD1からVSS1に切り替わり、ハイサイド駆動回路12の出力電圧V12がVSS1からVDD1に立ち上がる。しかし、インバータINV4のトランジスタMP16,MN16の面積がトランジスタMP17の面積よりも小さく設定されているので、電圧V12の立上りは緩やかとなる。そして、その電圧V12がトランジスタMP17の閾値電圧Vth(MP17)に到達すると、そのトランジスタMP17がOFFして電圧V14が電圧VSS1に急速に向けて下降する。このとき、論理和回路OR1の一方の入力の電圧V13はすでにVSS1になっているので、その論理和回路OR1の出力電圧V1がVSS1になり、トランジスタMP18がONする。この後、入力電圧VINが“L”から“H”に切り替わると、電圧V13がVDD1に上昇するので、論理和回路OR1の出力電圧V1はVDD1となり、トランジスタMP18はOFFして回路から外れる。
【0030】
このようにして、パワートランジスタMP14のゲート電圧V12は、ゆっくり上昇していき、トランジスタMP17の閾値Vth(MP17)を上回ると急激に電圧VDD1にまで上昇する。パワートランジスタMP14のゲート電圧V12が閾値Vth(MP17)に立ち上がるまでの遷移においては緩慢となるため、電源VDD1のラインの電流変化は大きくはなく、パッケージにおける誘導成分による逆起電力は大きくならない。その後、ロウサイドのパワートランジスタMN24がONして出力電圧VOUTが低下していく時点では、トランジスタMP18がONしてパワートランジスタMP14のゲート電圧V12をVDD1に押し上げているため、パワートランジスタMP14のドレイン・ゲート間の帰還容量を介して電荷がゲートに注入されてONするセルフターンオン現象を防止することができる。
【0031】
図2図5のD級増幅器のロウサイド駆動回路22の出力側に設けられるロウサイドセルフターンオン防止回路23を示す。このロウサイドセルフターンオン防止回路23は、ロウサイド駆動回路22の出力電圧V22をゲートに入力しソースが電圧VSS2の端子に接続されるNMOSトランジスタMN27と、そのトランジスタMN27のドレインと電圧VDD2の端子に接続される抵抗R23と、ロウサイド駆動回路22を構成する後段のインバータINV6の入力電圧V23とトランジスタMN27のドレイン電圧V24の論理積をとる論理積回路AND1と、ロウサイド駆動回路22の出力と電圧VSS2の端子の間に接続され論理積回路AND1の出力電圧V2がゲートに入力するNMOSトランジスタMN28とを備える。トランジスタMN27の面積はトランジスタMP26,MN26の面積よりも大きく設定されている。
【0032】
入力電圧VINが“L”から“H”に切り替わると、インバータINV5の入力電圧V21がVDD2→VSS2に切り替わるので、インバータINV6の入力電圧V23がVSS2からVDD2に切り替わり、ロウサイド駆動回路22の出力電圧V22がVDD2からVSS2に立ちがる。しかし、インバータINV6のトランジスタMP26,MN26の面積がトランジスタMN27の面積よりも小さく設定されているので、電圧V22の立下りは緩やかとなる。そして、その電圧V22がトランジスタMN27の閾値電圧Vth(MN27)に到達すると、そのトランジスタMN27がOFFして電圧V24が電圧VDD2に急速に上昇する。このとき、論理積回路AND1の一方の入力の電圧V23はすでにVDD2になっているので、その論理積回路AND1の出力電圧V25がVDD2になり、トランジスタMN28がONする。この後、入力電圧VINが“H”から“L”に切り替わると、電圧V23がVSS2に下降するので、論理積回路AND1の出力電圧V25はVSS2となり、トランジスタMN28はOFFして回路から外れる。
【0033】
このようにして、パワートランジスタMN24のゲート電圧V22は、ゆっくり低下していき、トランジスタMN27の閾値Vth(MN27)を下回ると急激に電圧VSS2にまで低下する。パワートランジスタMN24のゲート電圧V22が閾値Vth(MN27)に立ち下がるまでの遷移においては緩慢となるため、電源VSS1の電流変化は大きくはなく、パッケージにおける誘導成分による逆起電力は大きくならない。その後、ハイサイドのパワートランジスタMP14がONして出力電圧VOUTが上昇していく時点では、トランジスタMN28がONしてパワートランジスタMN24のゲート電圧V22をVSS2に押し込んでいるため、パワートランジスタMN24のドレイン・ゲート間の帰還容量を介して電荷がゲートに注入されてONするセルフターンオン現象を防止することができる。
【0034】
以上のように、本実施例によれば、デッドタイムをできるだけ短くするためにパワートランジスタMP14,MN24のONからOFFに至る時間を短くした場合であっても、そのOFF動作がゆっくり行われるので、放射ノイズの発生を防止することができ、しかもセルフターンオン現象の発生も防止することができる。
【0035】
なお、以上説明したPMOSトランジスタはPNPトランジスタに、NMOSトランジスタはNPNトランジスタに、それぞれ置き換えることができる。また、窒化ガリウム(GaN)トランジスタ、砒化ガリウム(GaAs)トランジスタ、あるいは炭化珪素(SiC)トランジスタに置き換えることもできる。
【符号の説明】
【0036】
11:ハイサイドレベルシフト回路
12:ハイサイド駆動回路
13:ハイサイドセルフターンオン防止回路
21:ロウサイドレベルシフト回路
22:ロウサイド駆動回路
23:ロウサイドセルフターンオン防止回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6