(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ウェーハの搬送装置及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20221207BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20221207BHJP
B65G 49/07 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/302 101G
B65G49/07 H
(21)【出願番号】P 2018194154
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 智広
(72)【発明者】
【氏名】飯田 英一
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-171292(JP,A)
【文献】特開2016-201490(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052631(WO,A1)
【文献】特開平06-077304(JP,A)
【文献】特開2014-170923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358475(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/3065
B65G 49/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触でウェーハを吸引保持し、静電チャックの吸着面にウェーハを搬入する、又は該静電チャックの吸着面が保持するウェーハを搬出する搬送装置であって、
ウェーハの上面にエアを噴射させ生成された負圧でウェーハを吸引保持する吸引保持手段と、
該吸引保持手段が保持したウェーハを該静電チャックに搬送する移動手段と、を備え、
該吸引保持手段は、該移動手段に連結される基台と、該基台に配設しウェーハにエアを噴射させ負圧を生成し非接触でウェーハを吸引保持する非接触保持部と、該基台の中心を中心として等角度で該基台に配設する少なくとも3つのセンタリングピンと、該センタリングピンを該吸着面に対し上方向に移動可能に支持し該センタリングピンを下方向に付勢する板バネと、ウェーハのデバイスに影響しない領域に接触させアースに導通され
該静電チャックの吸着面に対して上下方向に移動可能なアースピンと、該アースピンをアースに導通させる導通手段と、備え、
該センタリングピンの下面は、該基台の中心側より外周側が下がった傾斜面を形成する搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置を用いて静電チャックにウェーハを搬入する搬送方法であって、
前記非接触保持部からエアを噴射させウェーハを非接触で保持し前記センタリングピン
の下面にウェーハの外周縁を接触させてウェーハをセンタリングして前記吸引保持手段がウェーハを保持
したことにより上昇したウェーハのデバイスに影響しない領域に前記アースピンを接触させる保持工程と、
該吸引保持手段が保持したウェーハの下面と該静電チャックの吸着面とを接触させ、該アースピンをアースに導通させ、該静電チャックの電極に直流電圧を印加させ、該吸着面でウェーハを吸着する吸着工程と、
該吸引保持手段を該吸着面から離間させる離間工程と、を備える搬送方法。
【請求項3】
請求項1記載の搬送装置を用いて静電チャックからウェーハを搬出する搬送方法であって、
該静電チャックの吸着面が保持するウェーハのデバイスに影響しない領域にアースに導通する前記アースピンを接触させウェーハの電荷を除去する電荷除去工程と、
該電荷除去工程後、前記非接触保持部からエアを噴射させウェーハを吸引保持する保持工程と、
該静電チャックの吸着面から該吸引保持手段を離間する方向に移動させ、ウェーハの外周縁に前記センタリングピンを接触させウェーハをセンタリングするセンタリング工程と、を備える搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを搬送する搬送装置及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマエッチング装置のような被加工物(例えば、半導体ウェーハ)を収容するチャンバ(減圧室)内を減圧した状態で加工を行う装置では、ウェーハを保持するチャックテーブルがウェーハを真空吸引保持するタイプのチャックテーブルであると、加工中の減圧されたチャンバ内でウェーハをチャックテーブル上に確実に吸引保持することが困難である。したがって、減圧されたチャンバ内でウェーハを吸着保持するために、例えば、チャンバ内には下部電極を備える単極型静電チャックが配設される。単極型静電チャックは、
下部電極に高周波電圧を印加させ、チャック吸着面とウェーハとの間に発生した静電気力によってウェーハを吸着面上に吸着することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
プラズマエッチング装置では、チャンバ上方から内部に供給した反応ガスをプラズマ化してプラズマエッチングを行っている。プラズマエッチング中は、プラズマを介してウェーハがアースに接続されるため、静電チャックによる静電吸着が維持される。
静電チャックにウェーハを搬入する時は、プラズマが発生していないためウェーハをアースに接続させるために搬送手段をアースに接続させて、ウェーハを静電チャックに吸着させている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4938352号公報
【文献】特開2016-171292号公報
【文献】特許6308165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献2に開示されている発明においては、搬送手段の面状の吸引保持面がウェーハのデバイスが形成されている面の反対面(上面)に接触している状態で搬送が行われるため、吸引保持面をウェーハの上面に接触させるとき、また、吸引保持面をウェーハの上面から離間させるときに、ウェーハの上面を傷つけてしまうことがあり上面に付いたキズがデバイスに影響を与え問題となっている。
よって、ウェーハを吸引保持し、静電チャックの吸着面に搬入する搬送装置においては、デバイスに影響が無いようにウェーハの上面を吸引保持しつつウェーハをアースに接続させ、静電チャックに搬送して吸着させる、又は、静電チャックの吸着面が保持するウェーハをデバイスに影響が無いようにして吸引保持して搬出という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、非接触でウェーハを吸引保持し、静電チャックの吸着面にウェーハを搬入する、又は該静電チャックの吸着面が保持するウェーハを搬出する搬送装置であって、ウェーハの上面にエアを噴射させ生成された負圧でウェーハを吸引保持する吸引保持手段と、該吸引保持手段が保持したウェーハを該静電チャックに搬送する移動手段と、を備え、該吸引保持手段は、該移動手段に連結される基台と、該基台に配設しウェーハにエアを噴射させ負圧を生成し非接触でウェーハを吸引保持する非接触保持部と、該基台の中心を中心として等角度で該基台に配設する少なくとも3つのセンタリングピンと、該センタリングピンを該吸着面に対し上方向に移動可能に支持し該センタリングピンを下方向に付勢する板バネと、ウェーハのデバイスに影響しない領域に接触させアースに導通され該静電チャックの吸着面に対して上下方向に移動可能なアースピンと、該アースピンをアースに導通させる導通手段と、備え、該センタリングピンの下面は、該基台の中心側より外周側が下がった傾斜面を形成する搬送装置である。
【0007】
また、上記課題を解決するための本発明は、前記搬送装置を用いて静電チャックにウェーハを搬入する搬送方法であって、前記非接触保持部からエアを噴射させウェーハを非接触で保持し前記センタリングピンの下面にウェーハの外周縁を接触させてウェーハをセンタリングして前記吸引保持手段がウェーハを保持したことにより上昇したウェーハのデバイスに影響しない領域に前記アースピンを接触させる保持工程と、該吸引保持手段が保持したウェーハの下面と該静電チャックの吸着面とを接触させ、ウェーハのデバイスに影響しない領域に前記アースピンを接触さ
せ、該アースピンをアースに導通させ、該静電チャックの電極に直流電圧を印加させ、該吸着面でウェーハを吸着する吸着工程と、該吸引保持手段を該吸着面から離間させる離間工程と、を備える搬送方法である。
【0008】
また、本発明は、前記搬送装置を用いて静電チャックからウェーハを搬出する搬送方法であって、該静電チャックの吸着面が保持するウェーハのデバイスに影響しない領域にアースに導通する前記アースピンを接触させウェーハの電荷を除去する電荷除去工程と、該電荷除去工程後、前記非接触保持部からエアを噴射させウェーハを吸引保持する保持工程と、該静電チャックの吸着面から該吸引保持手段を離間する方向に移動させ、ウェーハの外周縁に前記センタリングピンを接触させウェーハをセンタリングするセンタリング工程と、を備える搬送方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る搬送装置は、ウェーハの上面にエアを噴射させ生成された負圧でウェーハを吸引保持する吸引保持手段と、吸引保持手段が保持したウェーハを静電チャックに搬送する移動手段と、を備え、吸引保持手段は、移動手段に連結される基台と、基台に配設しウェーハにエアを噴射させ負圧を生成し非接触でウェーハを吸引保持する非接触保持部と、基台の中心を中心として等角度で基台に配設する少なくとも3つのセンタリングピンと、センタリングピンを吸着面に対し上方向に移動可能に支持しセンタリングピンを下方向に付勢する板バネと、ウェーハのデバイスに影響しない領域に接触させアースに導通されるアースピンと、アースピンをアースに導通させる導通手段と、備え、センタリングピンの下面は、基台の中心側より外周側が下がった傾斜面を形成するため、非接触保持部がウェーハをデバイスに影響が無いように吸引保持したとき、センタリングピンの傾斜面にウェーハの外周縁が接触してセンタリングが行われる。そして、ウェーハを例えばチャンバ内の静電チャックに搬送する際、吸引保持手段の振動を受けて傾斜面をウェーハが滑り高精度にセンタリングが実施される。その後、吸引保持手段を静電チャックの上方から下降させ、静電チャックの吸着面にウェーハを保持させるときに、ウェーハをアースに接続させセンタリングされた状態で静電チャックがウェーハを吸着保持するので、静電チャックの中心とウェーハの中心とを一致させることができる。
【0010】
アースピンを、静電チャックの吸着面に対して上下方向に移動可能とすることで、静電チャックの吸着面にウェーハの下面を接触させる際等において、アースピンがウェーハの上面を傷付けてしまったり、逆にアースピンがウェーハによって折られてしまったりすることが防がれる。
【0011】
搬送装置を用いて静電チャックにウェーハを搬入する本発明に係る搬送方法は、非接触保持部からエアを噴射させウェーハを非接触で保持しセンタリングピンでウェーハをセンタリングして吸引保持手段がウェーハを保持する保持工程と、吸引保持手段が保持したウェーハの下面と静電チャックの吸着面とを接触させ、ウェーハのデバイスに影響しない領域にアースピンを接触させ、アースピンをアースに導通させ、静電チャックの電極に直流電圧を印加させ、吸着面でウェーハを吸着する吸着工程と、吸引保持手段を吸着面から離間させる離間工程と、を備えることで、非接触保持部がウェーハをデバイスに影響が無いように吸引保持したとき、センタリングピンの傾斜面にウェーハの外周縁が接触してセンタリングが行われる。そして、ウェーハを例えばチャンバ内の静電チャックに搬送する際、吸引保持手段の振動を受けて傾斜面をウェーハが滑り高精度にセンタリングが実施される。その後、吸引保持手段を静電チャックの上方から下降させ、静電チャックの吸着面にウェーハを保持させるときに、ウェーハをアースに接続させセンタリングされた状態で静電チャックがウェーハを吸着保持するので、静電チャックの中心とウェーハの中心とを一致させることができる。
【0012】
搬送装置を用いて静電チャックからウェーハを搬出する本発明に係る搬送方法は、静電チャックの吸着面が保持するウェーハのデバイスに影響しない領域にアースに導通するアースピンを接触させウェーハの電荷を除去する電荷除去工程と、電荷除去工程後、非接触保持部からエアを噴射させウェーハを吸引保持する保持工程と、静電チャックの吸着面から吸引保持手段を離間する方向に移動させ、ウェーハの外周縁にセンタリングピンを接触させウェーハをセンタリングするセンタリング工程とを備えることで、ウェーハの電荷をデバイスに影響が無いように除去し、次いで、非接触保持部がウェーハをデバイスに影響が無いように吸引保持して、センタリングピンの傾斜面にウェーハの外周縁を接触させてセンタリングを行いつつウェーハを静電チャックから搬出できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】載置テーブル上に載置されているウェーハを非接触保持部が非接触で吸引保持すると共にセンタリングピンの傾斜面がウェーハの外周縁に接触しウェーハをセンタリングする状態を説明する断面図である。
【
図3】静電チャックを備えるプラズマエッチング装置の一例を示す縦断面図である。
【
図4】静電チャックの吸着面の中心と各非接触保持部が非接触で吸引保持したウェーハの中心とが略合致するように位置合わせが行われている状態を説明する断面図である。
【
図5】静電チャックの吸着面に向かってウェーハを吸引保持する吸引保持手段を降下させている状態を説明する断面図である。
【
図6】ウェーハの下面と静電チャックの吸着面とを接触させ、ウェーハのデバイスに影響しない領域に接触したアースピンをアースに導通させ、静電チャックの電極に直流電圧を印加させ、吸着面でウェーハを吸着した状態を説明する断面図である。
【
図7】吸引保持手段が保持するウェーハの厚みがより厚いウェーハである場合における吸着工程を説明する断面図である。
【
図8】静電チャックに吸着保持されている状態のウェーハを示す断面図である。
【
図9】静電チャックの吸着面が保持しているウェーハの上面に吸引保持手段を接近させている状態を説明する断面図である。
【
図10】静電チャックの吸着面が保持するウェーハのデバイスに影響しない領域にアースに導通するアースピンを接触させウェーハの電荷を除去後、非接触保持部からエアを噴射させウェーハを吸引保持する状態を説明する断面図である。
【
図11】静電チャックの吸着面から吸引保持手段を離間する方向に移動させ、ウェーハの外周にセンタリングピンを接触させウェーハをセンタリングする状態を説明する断面図である。
【
図12】吸引保持手段が保持するウェーハが直径の僅かに大きなウェーハである場合における保持工程とセンタリング工程とを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すウェーハWは、例えば、シリコンを母材とする外形が円形の半導体ウェーハであり、その下面Wbには、デバイス領域と、デバイス領域を囲繞する外周余剰領域とが設けられている。デバイス領域は、直交差する複数の分割予定ラインSで格子状に区画されており、格子状に区画された各領域にはIC等のデバイスDがそれぞれ形成されている。ウェーハWの下面Wbは、後のプラズマエッチングで使用されるエッチングガス(例えば、SF6ガスやC4F8ガス)に対する耐性を備えるポリオレフィン等からなる図示しない保護テープが貼着されて保護されている。ウェーハWの上面Waは、例えば、既に研削加工が施された面となっており、上面Waは、下面Wbのデバイス領域に対応する領域Wa1と、デバイスDに影響しない領域Wa2(下面Wbの外周余剰領域に対応する領域)とを備えている。
なお、ウェーハWはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0015】
以下に、
図2に示す搬送装置2を用いて
図3に示す静電チャック3の吸着面31aにウェーハWを搬入する搬送方法を実施する場合の各工程について説明する。
図2において、ウェーハWは、既に研削加工が施された上面Waを上側に向けた状態で載置テーブル10に載置された状態になっている。なお、
図2以降の各図においては、ウェーハWのデバイスD及び分割予定ラインSを省略して示している。
【0016】
(1)保持工程
図2に示す搬送装置2は、ウェーハWの上面Waにエアを噴射させ生成された負圧でウェーハWを吸引保持する吸引保持手段20と、吸引保持手段20が保持したウェーハWを
図3に示す静電チャックに搬送する移動手段21と、を備えている。
【0017】
吸引保持手段20は、連結部材220を介して水平に延在するアーム部221の一端の下面側に固定されている。アーム部221には移動手段21が接続されており、移動手段21は、アーム部221を水平面(X軸Y軸平面)上において水平移動可能又は旋回移動可能にし、かつ、鉛直方向(Z軸方向)に上下動可能にしている。移動手段21は、例えば、アーム部221を空気圧によりZ軸方向に上下動させるエアシリンダや、モータによりボールネジを回動させることでアーム部221を水平移動させるボールネジ機構等から構成されている。
【0018】
吸引保持手段20は、移動手段21に連結される基台200と、基台200に配設しウェーハWにエアを噴射させ負圧を生成し非接触でウェーハWを吸引保持する非接触保持部201と、基台200の中心を中心として等角度で基台200に配設する少なくとも3つのセンタリングピン202と、センタリングピン202を静電チャック3の吸着面31aに対し上方向に移動可能に支持しセンタリングピン202を下方向に付勢する板バネ24と、ウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2に接触させアースに導通されるアースピン25と、アースピン25をアースに導通させる導通手段26と、備えている。
【0019】
基台200は、例えば、円形板状に形成されており、その上面中央部に連結部材220が接続されている。なお、基台200の形状は、本実施形態における形状に限定されるものではない。例えば、基台200は、その外形が円環状に形成されていてもよく、また、円環状部材や直線部材等の複数の部材から構成されていてもよい。
【0020】
非接触保持部201は、ベルヌーイの原理を利用するものであり、例えば、基台200の下面に周方向及び径方向に均等間隔を空けて複数配設されている。例えば、外形が円盤状の非接触保持部201の内部には、エア供給路201aが形成されており、エア供給路201aは、非接触保持部201の底面に形成された円環状のエア噴出口201bに連通している。また、エア供給路201aには、基台200の内部に形成された連通路200cを介して、コンプレッサー等からなるエア供給源28が連通している。なお、例えば、エア供給路201aには、エア供給源28から非接触保持部201に供給されたエアを加速させる環状オリフィス等が形成されていてもよい。
【0021】
各センタリングピン202は、基台200の上面外周領域に固定された各板バネ24によって静電チャック3の吸着面31a(
図3参照)に対して上方向に移動可能に支持されている。板バネ24は、ステンレス板バネやゴム板バネであり、基台200の外周縁から径方向外側に所定長さ飛び出しており、該飛び出した部分の下面にセンタリングピン202の上端面がねじ止め又は接着固定されている。センタリングピン202は、本実施形態においては、基台200に周方向に120度離間して3つ配設されているが、4つ以上配設されていてもよい。
【0022】
センタリングピン202は、板バネ24から-Z方向に向かって少なくとも非接触保持部201の下面よりも所定距離下方の高さ位置まで延在している。センタリングピン202の下面は、基台200の中心側より外周側が下がった傾斜面202bを形成している。傾斜面202bの傾斜角度は、ウェーハWの直径及び厚みに応じて、適宜の角度(例えば、36度~55度)が設定される。即ち、非接触保持部201が傾斜面202bに当接したウェーハWを吸引保持するための負圧を維持できるように、非接触保持部201の下面とウェーハWの上面Waとの間の隙間が所定の距離になるように設定される。
【0023】
アースピン25は、例えば、導電性の材料で構成され、棒状に形成されている。アースピン25は、本実施形態においては、基台200の下面の外周側の領域に周方向に180度離間して2本配設されているが、少なくとも1本又は3本以上配設されていてもよい。また、本実施形態において、アースピン25は、静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向(例えば、Z軸方向)に移動可能となっている。即ち、例えば、基台200の下面の外周側の領域にはスプリングをはめ込むことが可能な収容孔が形成されており、該収容孔に収容されたスプリングの下端にアースピン25の上端が固定されている。そして、アースピン25がウェーハWに接触して+Z方向に押されると、該スプリングが縮みアースピン25が+Z方向に移動できる。
なお、アースピン25を可撓性及び導電性を有する給電ケーブルや伸縮性及び導電性を有するバネ状の給電コイルとすることで、ウェーハWと接触したアースピン25自体が変形して静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向に移動可能となっていてもよい。
【0024】
アースピン25をアースに導通させる導通手段26は、各アースピン25に一端が接続され他端が接地されている配線260と、配線260上に配設されたスイッチ261とを備えている。スイッチ261がオン状態になることで、アースピン25がアースに導通される。
【0025】
保持工程においては、まず、
図2に示す移動手段21によって吸引保持手段20が基台200の中心がウェーハWの中心と略合致するように水平移動し、吸引保持手段20がウェーハWの上方に位置づけられる。さらに、非接触保持部201とウェーハWの上面Waとが接触しない程度の高さ位置まで吸引保持手段20が-Z方向へ降下する。
【0026】
吸引保持手段20がZ軸方向の所定の高さ位置まで降下した後、エア供給源28が、高圧エアを基台200の連通路200cを介して非接触保持部201内部のエア供給路201aに供給する。非接触保持部201に供給されたエアは、エア供給路201a内で例えば図示しない環状オリフィスを通って加速され、エア噴出口201bからウェーハWの上面Wa上に高速で噴射される。
【0027】
エア噴出口201bから噴射された高圧のエアは拡径しつつ減速していき大気圧となるため、非接触保持部201の下面とウェーハWの上面Waとの隙間でベルヌーイ効果が働き、非接触保持部201の下面の中央部分に圧力降下が発生する(負圧が生成される)。即ち、ベルヌーイ効果により、ウェーハWの上面Wa上で非接触保持部201の下面の中央部分に対応する領域に太矢印R1で示すように吸引力が発生する。この太矢印R1で示す吸引力が、非接触保持部201が非接触状態でウェーハWを吸引保持するための吸引力となる。
【0028】
複数の非接触保持部201がウェーハWを非接触で吸引保持すると共に、センタリングピン202の傾斜面202bが吸引力により浮き上がったウェーハWの外周縁Wdに接触することで、基台200の中心とウェーハWの中心とが正確に合致するようにウェーハWがセンタリングピン202によってガイドされつつ水平移動する(センタリングされる)。
その後、移動手段21が吸引保持手段20を+Z方向へと上昇させることで、搬送装置2によってウェーハWが載置テーブル10から搬出される。
なお、本実施形態のように、アースピン25が静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向に移動可能となっている場合には、吸引保持手段20がセンタリングされたウェーハWを吸引保持している状態において、アースピン25はウェーハWに接触していてもよい。一方、アースピン25が静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向に移動可能となっていない場合には、アースピン25の最下端とウェーハWの上面Waとの間には所定の隙間が形成される。
【0029】
(2)吸着工程
図3に示す減圧環境でウェーハWにプラズマエッチング処理を施すプラズマエッチング装置1は、例えば、ウェーハWを静電吸着保持する吸着面31aを有する静電チャック3と、静電チャック3が配設された室内を減圧する減圧手段64を備える減圧室6と、を備えている。
ウェーハWは、搬送装置2によってプラズマエッチング装置1の静電チャック3に搬入される。なお、静電チャック3を備えるプラズマエッチング装置1は、本実施形態のような容量結合型プラズマ方式(CCP)の例に限定されるものではなく、誘電コイルにプラズマ発生用の高周波電力を印加し、誘電コイルに形成された磁場との相互作用により真空雰囲気とした減圧室内の処理ガスをプラズマ化する誘導結合型プラズマ方式(ICP)、又は所定波長のマイクロ波の組み合わせで電子がサイクロトロン共振することを利用してプラズマを発生させる電子サイクロトロン共振プラズマ方式(ECR)のものであってもよい。
【0030】
静電チャック3は、例えば、減圧室6の下部に軸受け30aを介して上下動可能に挿通されている基軸部30と、アルミナ等のセラミック又は酸化チタン等の誘電体で形成されるウェーハ吸着部31とを備えており、その縦断面が略T字状になる。例えば円板状に形成されたウェーハ吸着部31は、基軸部30の上端側に基軸部30と一体的に形成されており、ウェーハ吸着部31の上面が誘電体からなりウェーハWを保持する吸着面31aとなる。なお、ウェーハ吸着部31は、セラミック等から構成された誘電体膜が別の基台上に配置されて構成されているものでもよい。
【0031】
基軸部30及びウェーハ吸着部31の内部には、冷却水が通水する破線で示す冷却水通水路39aが形成されており、冷却水通水路39aには、冷却水供給手段39が連通している。冷却水供給手段39は冷却水通水路39aへ冷却水を流入させ、この冷却水が、静電チャック3を内部から冷却する。例えば、プラズマエッチング処理中に、冷却水供給手段39によって、静電チャック3の吸着面31aの温度をウェーハWの下面Wbに貼着されている図示しない保護テープからガスが発生しない温度以下に保つことができる。
【0032】
静電チャック3の内部には、電圧が印加されることにより電荷を誘起する電極34として金属板が埋設されている。電極34は、円形板状に形成されており、吸着面31aと平行に配設されており、直流電源36のプラス端子側にスイッチ360及び配線37を介して接続されている。直流電源36のマイナス端子側は接地されている。
【0033】
基軸部30には、
図3に示すように連通路38aが形成されており、連通路38aの下端側は、エジェクター等の真空発生装置である吸引源381にエア流路389を介して連通しており、エア流路389上には第一の開閉バルブ389aが配設されている。連通路38aは、ウェーハ吸着部31まで延び、ウェーハ吸着部31の内部で複数の分岐路38bに分岐している。連通路38aから分岐した各分岐路38bは、電極34を厚み方向(Z軸方向)に向かって貫通しており、その上端は、静電チャック3の吸着面31aで開口している。そして、第一の開閉バルブ389aが開かれた状態で吸引源381が作動する
ことで、吸引源381が生み出す吸引力が静電チャック3の吸着面31aに伝達される。
【0034】
例えば、エア流路389には、圧縮エアを供給可能なエア源382が第二の開閉バルブ389bを介して接続されている。エア源382は、静電チャック3により吸着保持されているウェーハWを吸着面31aから離脱させる際に用いられる。
【0035】
減圧室6の上部には、反応ガスを噴出するガス噴出ヘッド4が、軸受け40を介して昇降自在に配設されている。ガス噴出ヘッド4の内部には、ガス拡散空間41が設けられており、ガス拡散空間41の上部にはガス導入路41aが連通し、ガス拡散空間41の下部にはガス吐出路41bが連通している。ガス吐出路41bの下端は、ガス噴出ヘッド4の下面において静電チャック3側に向かって開口している。
【0036】
ガス噴出ヘッド4には、ガス噴出ヘッド4を上下動させるエアシリンダ43が接続されている。エアシリンダ43は、例えば、内部に図示しないピストンを備え基端側(-Z方向側)に底があり減圧室6の上面に固定されたシリンダチューブ43aと、シリンダチューブ43aに挿入され下端がピストンに取り付けられたピストンロッド43bと、ピストンロッド43bの上端に固定されガス噴出ヘッド4を支持する連結部材43cとを備える。シリンダチューブ43aにエアが供給(または、排出)されシリンダチューブ43aの内部の圧力が変化することで、ピストンロッド43bがZ軸方向に上下動することに伴って、ガス噴出ヘッド4が上下動する。
【0037】
ガス噴出ヘッド4の内部に形成されたガス導入路41aには、反応ガス供給源45が連通している。反応ガス供給源45は、例えば、反応ガスであるSF6、CF4、C2F6、C2F4等のフッ素系ガスを蓄えている。なお、ガス導入路41aには、反応ガス供給源45の他に、プラズマエッチング反応を支援するガスが蓄えられた図示しない支援ガス供給源が連通していてもよい。この場合、支援ガス供給源には、支援ガスとして、Ar、He等の希ガスが蓄えられている。
【0038】
ガス噴出ヘッド4には、整合器47を介して高周波電源48が接続されており、更に、接地がなされている。高周波電源48から整合器47を介してガス噴出ヘッド4に高周波電力を供給することにより、ガス吐出路41bから吐出されたガスをプラズマ化することができる。
【0039】
減圧室6の側部には、ウェーハWの搬入出を行うための搬入出口62と、この搬入出口62を開閉するシャッター62aとが設けられている。例えば、シャッター62aは、エアシリンダ等のシャッター可動手段62bによって上下動可能になっている。
【0040】
減圧室6の下部には排気口64aが形成されており、この排気口64aには減圧手段64が接続されている。この減圧手段64を作動させることにより、減圧室6の内部を所定の真空度まで減圧することができる。
【0041】
プラズマエッチング装置1は、CPU及びメモリ等の記憶素子等から構成される図示しない制御部を備えており、制御部による制御の下で、エッチングガスの吐出量や時間、高周波電力等の条件、スイッチ360のオンオフ、及び吸引源381やエア源382の駆動等がコントロールされる。
【0042】
吸着工程においては、まず、
図3に示すように、減圧室6のシャッター62aが開かれ、移動手段21により、ウェーハWを吸引保持している吸引保持手段20が、搬入出口62を通り静電チャック3上へと移動される。そして、
図4に示すように、静電チャック3の吸着面31aの中心と各非接触保持部201が非接触で吸引保持したウェーハWの中心
とが略合致するように位置合わせが行われる。なお、例えば、搬送装置2によりウェーハWが静電チャック3上に搬送されるまでの間において、吸引保持手段20の移動による振動をウェーハWが受けることで、センタリングピン202の傾斜面202bをウェーハWの外周縁Wdが滑るため、より高精度にウェーハWが吸引保持手段20においてセンタリングされる。
【0043】
図5に示すように、移動手段21により、例えば、ウェーハWの下面Wbと静電チャック3の吸着面31aとが接触せず、かつ、センタリングピン202の最下端と静電チャック3の吸着面31aとが接触する程度の位置まで吸引保持手段20が-Z方向へ降下する。
また、第一の開閉バルブ389aが開かれて吸着面31aが吸引源381に連通されてから、吸引源381が作動することで、吸引源381が生み出す吸引力が吸着面31aに伝達される。
なお、本実施形態のように、アースピン25が静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向に移動可能となっている場合には、
図5に示すように、アースピン25はウェーハWの上面WaのデバイスDに影響しない領域Wa2に既に接触していてもよい。
【0044】
移動手段21によりさらに吸引保持手段20が降下することで、
図6に示すように、ウェーハWの下面Wbと静電チャック3の吸着面31aとが接触せしめられる。また、センタリングピン202が吸着面31aによって上方(略垂直方向)に押されて移動し、各センタリングピン202の傾斜面202b間の水平方向における距離が広げられる。さらに、板バネ24が、湾曲することでセンタリングピン202を下側に押し戻そうとする付勢力を蓄える。
【0045】
センタリングピン202によりセンタリングされていたウェーハWは、その中心が静電チャック3の吸着面31aの中心と合致した状態で吸着面31aに吸引保持される。また、吸引源381により生み出された吸引力によって、ウェーハWの下面Wbと静電チャック3の吸着面31aとの間に残留している空気が吸引されて除去される。
【0046】
なお、基本的に、吸引源381により生み出され静電チャック3がウェーハWを-Z方向に引き寄せる吸引力は、ベルヌーイ効果により生じる吸引保持手段20がウェーハWを吸引保持する吸引力よりも大きいため、
図5に示す状態において、ウェーハWが静電チャック3の吸着面31a上に垂直落下すると共に、吸着面31a上で吸引保持されてもよい。ここで、ウェーハWには±Z方向に吸引力が加わっているため、ウェーハWが垂直落下する際に、ウェーハWが水平方向に横滑りしてしまうことは防がれる。したがって、静電チャック3に吸引保持されたウェーハWの中心は吸着面31aの中心と合致した状態になる。
また、センタリングピン202の下面は、基台200の中心側より外周側が下がった傾斜面202bを形成しているため、ウェーハWが垂直落下する際に、ウェーハWの外周縁Wdが傾斜面202bを擦ることがないため、ゴミが発生しない。
【0047】
例えば、本実施形態においては、ウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2にアースピン25が接触しつつ、アースピン25が+Z方向に押され基台200内部に引っ込むように移動していく。なお、アースピン25が給電ケーブルやバネ状の給電コイルである場合には、ウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2にアースピン25が接触しつつアースピン25自体が変形しながら移動する。
【0048】
このように、本発明に係る搬送装置2において、アースピン25が静電チャック3の吸着面31aに対して上下方向に移動可能であることで、静電チャック3の吸着面31aにウェーハWの下面Wbを接触させる際等において、アースピン25がウェーハWの上面W
aを傷付けてしまったり、逆にアースピン25がウェーハWによって折られてしまったりすることが防がれる。
【0049】
図6に示すように、ウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2にアースピン25が接触した状態で、導通手段26のスイッチ261が入れられて、アースピン25がアースに導通される。また、直流電源36のスイッチ360をオン状態とし、直流電源36から配線37を介して静電チャック3に電力を供給する。即ち、電極34に所定の直流電圧が印加されることで、電極34上のウェーハ吸着部31の誘電体層とウェーハWとの間に誘電分極現象が発生し、ウェーハ吸着部31の吸着面31a近傍には正(+)電荷が集中する。また、ウェーハWを介して静電チャック3と接地されたアースピン25とが接続された状態になっているため、アースピン25を介してウェーハWに負(-)電荷が供給されることで、ウェーハWは吸着面31aとは逆極性のマイナスに帯電する。そのため、ウェーハWと吸着面31aとの間に働く静電気力によって、ウェーハWは吸着面31a上に静電吸着保持される。
【0050】
(3)離間工程
上記のように静電チャック3がウェーハWを静電吸着保持した後、エア供給源28が、高圧エアの非接触保持部201に対する供給を停止することで、吸引保持手段20からウェーハWに作用していた吸引力が無くなる。その後、移動手段21により吸引保持手段20が吸着面31aで吸着保持されたウェーハWの上方から離間し、センタリングピン202が板バネ24が蓄えていた付勢力により元の状態に戻る。
【0051】
吸引保持手段20は、
図3に示す減圧室6内から退避する。そして、減圧室6の搬入出口62をシャッター62aで閉め、減圧手段64によって減圧室6内を減圧排気し真空雰囲気とする。吸引保持手段20が退避することでウェーハWはアースピン25を介したアースが取られていない状態になるが、ウェーハ吸着部31の吸着面31a近傍の電荷は直ちにはなくならず、また、ウェーハWの帯電状態は直ちには解除されない。そのため、吸着面31aとウェーハWとの間には静電気力による吸着力が十分に残る。
なお、減圧室6が真空雰囲気となることで、静電チャック3によるウェーハWの吸引保持は不可となるため、第一の開閉バルブ389aが閉じられて、吸着面31aの吸引力が無くなる。
【0052】
次いで、ガス噴出ヘッド4を下降させた後、反応ガス供給源45からエッチングガスをガス噴出ヘッド4内のガス導入路41aへ供給して、各ガス吐出路41bの開口から、静電チャック3に吸着保持されているウェーハWの上面Wa全面に向かって均一に噴出させる。
【0053】
減圧室6内にエッチングガスを導入するとともに、高周波電源48からガス噴出ヘッド4に高周波電力を印加して、ガス噴出ヘッド4と静電チャック3との間に高周波電界を生じさせ、エッチングガスをプラズマ化させる。プラズマ化したエッチングガスは、ウェーハWの上面Waをエッチングしていく。また、プラズマの発生により、再びウェーハWはアースが取られている状態になるため、静電チャック3がウェーハWを充分に静電吸着する状態が維持される。
【0054】
本発明に係る搬送装置2において、センタリングピン202は、板バネ24によって静電チャック3の吸着面31aに対し上方向に移動可能に支持されているため、吸着面31aに接触したセンタリングピン202は上方に退避することができる。即ち、例えば特許文献3に記載されている静電チャックのように、静電チャックの吸着面上にセンタリングピンを収容させるための収容孔を形成する必要がない。したがって、静電チャック3の吸着面31aを平面で形成することができるため、ウェーハWにプラズマエッチングを行う
際に、静電チャック3の吸着面31a上で反応ガスの気流の乱れが発生しないため、ウェーハWにエッチング班等を生じさせないようにすることが可能となる。
【0055】
なお、本発明に係る搬送装置2を用いて静電チャック3にウェーハWを搬入する搬送方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、添付図面に図示されている搬送装置2及び静電チャック3等の構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0056】
例えば、
図7は、静電チャック3にウェーハWを搬入する搬送方法における吸着工程を説明する断面図である。
図7に示すウェーハW2は、
図1~
図6に示すウェーハWよりも厚みが大きいワークである。ウェーハW2は、例えば、キャリアプレートがウェーハに貼り合わされたウェーハ等であってもよい。
【0057】
このように吸引保持手段20が保持するウェーハの厚みがウェーハW2のように厚くなった場合においても、非接触保持部201の下面とウェーハW2の上面W2aとの隙間でベルヌーイ効果が働き、ウェーハW2を吸引保持するための吸引力を発生させるためには、該隙間を吸引保持手段20がウェーハWが吸引保持した際と同様の距離に保つ必要がある。よって、静電チャック3の吸着面31aの中心と非接触保持部201が吸引保持したウェーハW2の中心とを同軸上に位置づけてから、移動手段21により吸引保持手段20を吸着面31aに接触させて停止させる際の停止高さ位置、即ち、ウェーハW2の下面W2bの高さ位置が変わる。
ここで、搬送装置2は予めウェーハW2の厚みについての情報(設定値)を認識しているので、該設定値から吸引保持手段20の停止させる適切な高さ位置が定められることで、過度に吸引保持手段20が降下してウェーハW2のデバイスDに非接触保持部201が接触してしまいデバイスDが破損するといった事態が生じないようになる。
【0058】
ウェーハWの上面Waのプラズマエッチングを適宜行った後、
図3に示すガス噴出ヘッド4に対する高周波電力の印加を止めて、減圧室6内のエッチングガスを排気口64aから減圧手段64により排気し、減圧室6の内部にエッチングガスが存在しない状態とする。次いで、搬入出口62のシャッター62aを開いて減圧室6内の真空雰囲気を解除してから、搬送装置2によりウェーハWを静電チャック3から搬出する。
以下に、
図3に示す搬送装置2を用いて、
図8に示すウェーハWを静電吸着している静電チャック3からウェーハWを搬出する搬送方法を実施する場合の各工程について説明する。
【0059】
(4)電荷除去工程
図9に示すように、移動手段21により吸引保持手段20が減圧室6(
図9においては不図示)内の静電チャック3に吸着保持されているウェーハW上へと移動され、基台200の中心が静電チャック3で吸着保持されたウェーハWの中心と略合致するように位置合わせが行われる。
【0060】
さらに、非接触保持部201とウェーハWの上面Waとが接触しない程度の高さ位置まで吸引保持手段20が-Z方向へ降下する。この状態において、ウェーハWの外周縁Wdは、センタリングピン202の傾斜面202bによって囲繞された状態になる。また、例えば、アースピン25がウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2に接触する。
なお、
図9に示すように、センタリングピン202の最下端が静電チャック3の吸着面31aに接触した状態で、ウェーハWの外周縁Wdとセンタリングピン202の傾斜面202bとが接触しないように傾斜面202bが形成されているとよい。
【0061】
図10に示すように、移動手段21によりさらに吸引保持手段20が降下することで、
センタリングピン202が吸着面31aによって上方(略垂直方向)に押されて移動し、各センタリングピン202の傾斜面202b間の水平方向における距離が広げられる。板バネ24は、湾曲することでセンタリングピン202を下側に押し戻そうとする付勢力を蓄える。
吸引保持手段20のセンタリングピン202は、板バネ24によって基台200の下面に対して上方向に移動可能であるため、非接触保持部201がウェーハWを適切に非接触で吸引保持できる所定の高さ位置まで、吸引保持手段20を静電チャック3によって妨げられることなくウェーハWに対して近づけることができる。
【0062】
図10に示すように、直流電源36のスイッチ360をオフ状態として、直流電源36からの配線37を介した静電チャック3への電力の供給を停止する。静電チャック3の電極34に対する電圧の印加を止めても、ウェーハ吸着部31の吸着面31a近傍の正(+)電荷は直ちにはなくならず、また、ウェーハWの負電位の帯電状態は直ちには解除されない。この状態で、吸着面31aからウェーハWを離脱させようとすると、離脱されにくく、また、剥離帯電等の下面Wbに形成されたデバイスDに悪影響を及ぼす現象も発生する。
そこで、ウェーハWのデバイスDに影響しない領域Wa2にアースピン25が接触した状態で、導通手段26のスイッチ261が入れられて、アースピン25がアースに導通される。その結果、ウェーハWから負(-)電荷が除去されていく。そして、ウェーハWに対する除電が充分に行われることで、電荷除去工程が完了する。
【0063】
(5)保持工程
電荷除去工程を実施した後、
図10に示すように、第二の開閉バルブ389bが開かれた状態でエア源382からエア流路389にエアが供給される。該エアは、静電チャック3の吸着面31aから上方に向かって噴出し、このエアの噴出圧力でウェーハWを吸着面31aから押し上げ、吸着面31aとウェーハWとの間に残存する真空吸着力を排除し、ウェーハWを静電チャック3から確実に離脱可能とする。
【0064】
例えば、上記静電チャック3に対するエアの供給と並行して、エア供給源28が、各非接触保持部201にエアを供給することで、ウェーハWの上面Wa上で非接触保持部201の下面の中央部分に対応する領域に上方へ向かう吸引力が発生する(負圧が生成する)。その結果、複数の非接触保持部201がウェーハWを非接触で吸引保持する。
【0065】
(6)センタリング工程
図11に示すように、移動手段21が吸引保持手段20を+Z方向へと上昇させて静電チャック3の吸着面31aから離間させることで、搬送装置2によって、ウェーハWが静電チャック3から搬出される。また、センタリングピン202が、板バネ24が蓄えていた付勢力により元の状態に戻ろうとし、各センタリングピン202の傾斜面202b間の水平方向における距離が元の距離まで縮まろうとするため、センタリングピン202の傾斜面202bが吸着面31aから浮き上がったウェーハWの外周縁Wdに接触することで、基台200の中心とウェーハWの中心とが正確に合致するようにウェーハWがセンタリングピン202によってガイドされる(センタリングされる)。
そして、移動手段21により、ウェーハWを吸引保持する吸引保持手段20が減圧室6(
図11においては不図示)外へと移動される。
【0066】
なお、本発明に係る搬送装置2を用いて静電チャック3からウェーハWを搬出する搬送方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、添付図面に図示されている搬送装置2及び静電チャック3等の構成についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0067】
例えば、
図12は、静電チャック3の吸着面31aが吸着保持しているウェーハW1を静電チャック3から搬出する搬送方法における保持工程及びセンタリング工程を説明する断面図である。
図12に示すウェーハW1は、
図8~
図11に示すウェーハWよりも僅かに直径が大きいウェーハである。このように吸引保持手段20が保持するウェーハの直径がウェーハW1のように僅かに大きくなった場合であっても、非接触保持部201が非接触でウェーハW1を吸引保持すると共にセンタリングピン202の傾斜面202bをウェーハW1の外周縁W1dに接触させウェーハW1をセンタリングさせることができる。
【0068】
即ち、非接触保持部201の下面とウェーハW1の上面W1aとの隙間でベルヌーイ効果が働き、ウェーハW1を吸引保持するための吸引力を発生させるためには、該隙間を所定の距離に保つ必要がある。ここで、搬送装置2は、静電チャック3の吸着面31aに対し上方向に移動可能にセンタリングピン202を支持しセンタリングピン202を下方向に付勢する板バネ24を備えている。そのため、保持工程において、ウェーハW1の外周縁W1dにセンタリングピン202の傾斜面202bが接触した後も、各センタリングピン202の傾斜面202b間の水平方向における距離が、傾斜面202bがウェーハW1の外周縁W1dに接触した状態を維持しつつ広がることで、該隙間が所定の距離になるようにウェーハW1の上面W1aを非接触保持部201の下面に近づけることができる。
【0069】
さらに、
図12に示すように、吸引保持手段20を静電チャック3の吸着面31aから離間させ吸着面31aからウェーハW1を搬出する際においても、板バネ24によってセンタリングピン202は下方向に付勢される、即ち、各センタリングピン202の傾斜面202b間の水平方向における距離が元の距離まで縮まろうとするため、傾斜面202bがウェーハW1の外周縁W1dに接触した状態が維持されて、吸引保持手段20においてウェーハW1がセンタリングされる。
【符号の説明】
【0070】
W:ウェーハ Wa:ウェーハの上面 Wa1:デバイス領域 S:分割予定ライン D:デバイス Wa2:デバイスに影響しない領域
2:搬送装置 20:吸引保持手段 200:基台 200c:連通路
201:非接触保持部 201a:エア供給路 201b:エア噴出口
202:センタリングピン 202b:センタリングピンの傾斜面
21:移動手段 220:連結部材 221:アーム部
24:板バネ 25:アースピン 26: 導通手段 28:エア供給源
1:プラズマエッチング装置
4:ガス噴出ヘッド 40:軸受け 41:ガス拡散空間 41a:ガス導入路 41b:ガス吐出路 43:エアシリンダ 45:反応ガス供給源 47:整合器 48:高周波電源
3:静電チャック 30:基軸部 30a:軸受け 31:ウェーハ吸着部 31a:吸着面 34:電極 36:直流電源 360:スイッチ 37:配線
38a:連通路 381:吸引源 389:エア流路 389a:第一の開閉バルブ
382:エア源 389b:第二の開閉バルブ
39:冷却水供給手段 39a:冷却水通水路
6:減圧室 62:搬入出口 62a:シャッター 62b:シャッター可動手段
64:減圧手段 64a:排気口