(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】型焼き菓子類用ミックス粉
(51)【国際特許分類】
A21D 2/36 20060101AFI20221207BHJP
A21D 13/043 20170101ALI20221207BHJP
A21D 13/047 20170101ALI20221207BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20221207BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20221207BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D13/043
A21D13/047
A23G3/34 102
A21D10/00
A23G3/42
(21)【出願番号】P 2018201749
(22)【出願日】2018-10-26
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】高峰 裕行
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-039936(JP,A)
【文献】特開平08-242752(JP,A)
【文献】特開2013-165648(JP,A)
【文献】特開2018-121554(JP,A)
【文献】特開2014-018136(JP,A)
【文献】特開2002-051688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D,A23G,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米粉を雰囲気温度100~163℃で乾熱処理してなる乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を含む型焼き菓子類用プレミックス粉であって、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲である、前記型焼き菓子類用プレミックス粉
(ただし、タピオカ澱粉が焙煎処理されたタピオカ澱粉である場合を除く)。
【請求項2】
前記タピオカ澱粉が、未処理澱粉及び/又はエーテル化澱粉、エステル化澱粉及び架橋澱粉から選択される1以上の加工澱粉である、請求項1に記載の型焼き菓子類用プレミックス粉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の型焼き菓子類用プレミックス粉を含む型焼き菓子類用生地。
【請求項4】
請求項3に記載の型焼き菓子類用生地を焼成してなる、型焼き菓子。
【請求項5】
型焼き菓子類の製造方法であって、
(1)米粉を雰囲気温度100~163℃で乾熱処理する工程、及び
(2)工程(1)で得られた乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を、乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が、澱粉性原料の全量に対して20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲となるように配合して生地を得る工程を含む、前記製造方法
(ただし、タピオカ澱粉が焙煎処理されたタピオカ澱粉である場合を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型焼き菓子類用ミックス粉に関する。
【背景技術】
【0002】
たい焼きは焼き立て(表面のパリっとした、サクサクとした崩壊感のある食感)が一番おいしいとされており、多くの老舗店でも焼き立ての食感を高く評価する背景がある。
しかしながら、たい焼きは焼成後、時間がたつと餡やフィリングからの水分移行がおこり、皮が柔らかく、歯切れが悪くなるという問題があった。
このような問題を解決するため、従来、米粉と小麦粉と澱粉を混合し熱処理したものを使用すること、馬鈴薯澱粉を使用すること又は乳蛋白を使用することにより、焼き立てでサクッとした品質を出す方法が知られていた。
例えば特許文献1には所定量の澱粉と所定量の乳蛋白と乳化剤とを含有する鯛焼き、ホットケーキまたはワッフル等のベーカリー食品用ミックスにより、サクサクした食感のベーカリー食品を得ることができ、焼き立て時の食感および風味を長時間保持することができることが記載されている。
また特許文献2には、α化米粉と、米粉および/または澱粉との配合比(重量基準)が、0.2~40:60~99.8である菓子類用ミックスを鯛焼きに使用することで、よりぱりぱり、さくさくとした食感を有する鯛焼きが得られることが記載されている。
さらに特許文献3には、澱粉、米粉と小麦粉を、それぞれの比率が澱粉30~80質量部、米粉10~60質量部、小麦粉10~60質量部となるように混合し、該混合物を焙煎することを特徴とする焼き物用穀粉組成物により、食感がサクサクとして非常にクリスピーで歯切れ感がよく経時的に劣化の少ない焼き物を得ることができることが記載されている。
上記のような技術により、サクサクした食感の焼き饅類(例えば、たい焼き、どら焼き、ホットケーキ、今川焼、ワッフルなど)が得られるものの、餡やフィリングからの水分移行を低減しサクサク感を維持するためのさらなる改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-132907号公報
【文献】特開2013-99294号公報
【文献】特開2012-39936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、焼成直後は歯切れの良いサクサクした食感を有し、時間が経ってもサクサクした食感を維持することができる型焼き菓子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、米粉を雰囲気温度100~163℃で乾熱処理してなる乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を含む型焼き菓子類用プレミックス粉であって、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲である、前記型焼き菓子類用プレミックス粉を使用することで焼成直後は歯切れの良いサクサクした食感を有し、時間が経ってもサクサクした食感を維持することができる型焼き菓子を提供することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1]米粉を雰囲気温度100~163℃で乾熱処理してなる乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を含む型焼き菓子類用プレミックス粉であって、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲である、前記型焼き菓子類用プレミックス粉。
[2]前記タピオカ澱粉が、未処理澱粉及び/又はエーテル化澱粉、エステル化澱粉及び架橋澱粉から選択される1以上の加工澱粉から選択される1以上の加工澱粉である、前記[1]に記載の型焼き菓子類用プレミックス粉。
[3]前記[1]又は[2]に記載の型焼き菓子類用プレミックス粉を含む型焼き菓子類用生地。
[4]前記[3]記載の型焼き菓子類用生地を焼成してなる、型焼き菓子。
[5]型焼き菓子類の製造方法であって、
(1)米粉を雰囲気温度100~163℃で乾熱処理する工程、及び
(2)工程(1)で得られた乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を、乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が、澱粉性原料の全量に対して20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲となるように配合して生地を得る工程を含む、前記製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の型焼き菓子類用プレミックス粉を使用すれば、焼成直後は歯切れの良いサクサクした食感を有し、時間が経ってもサクサクした食感を維持することができる型焼き菓子類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<焼き菓子類用プレミックス粉>
本発明において「型焼き菓子類」とは穀粉を含有するバッター生地を、焼成型を用いて焼成したもの、またさらに焼成したものの中に餡等の具材を含む菓子をいい、例えば、大判焼き、たい焼き、今川焼き、回転焼き、人形焼き、ワッフル等が挙げられる。
【0009】
本発明の焼き菓子類用プレミックス粉は、米粉を雰囲気温度が100~163℃で乾熱処理してなる乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を含む。
本発明のプレミックス粉は、その使用用途に応じて、乾熱処理米粉とタピオカ澱粉に、乾熱処理米粉以外の米粉あるいは米粉以外の穀粉、タピオカ澱粉以外の澱粉類、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、任意に油脂類などを混合したものをいう。
【0010】
本発明において使用する米粉の調製方法や入手法等は特に制限されないが、例えば原料である米を気流粉砕法、胴搗粉砕法、高速粉砕法、衝撃式粉砕法、ロール粉砕法、旋回流粉砕法などを単独又は組み合わせることにより得ることができる。原料米も特に限定されず、粳米、糯米の区別無く使用できる。
【0011】
本発明において、「乾熱処理」とは水分や水蒸気を加えずに対象物(米粉)を加熱する方法であり、米粉中の水分の蒸発を積極的に行う熱処理である。例えば、米粉を気体又は固体媒介の伝導熱、放射熱、反射熱、熱風、電磁波(マイクロ波)などに曝して加熱する熱処理法が挙げられる。
【0012】
乾熱処理を行う装置や機械については上記に限る必要はなく、例えば、製菓製パン用オーブン、リールオーブン、焙焼釜、高温乾燥機、送熱風乾燥機、加熱攪拌機、間接加熱型乾燥機、マイクロ波発生器などを用いて高温低湿度環境で保持することにより達成できる。この際、米粉が均一に乾熱処理されるようにするために、適時気流やミキサー等での混合、あるいは、熱伝導にムラが生じない程度に米粉を薄く広げることが好ましい。
【0013】
乾熱処理の処理温度は雰囲気温度が100~163℃であり、好ましくは雰囲気温度が110~160℃、さらに好ましくは110~150℃である。乾熱処理の処理時間は、適宜調節することが可能であるが、雰囲気温度が所定の温度に達してから、好ましくは10分間以上、さらに好ましくは20~80分間処理する。
【0014】
乾熱処理後の冷却方法に特に限定はなく、自然放熱、通風や間接水流による強制急速冷却などが使用でき、その冷却に時間についても製品品温が室温程度に下がるまで、適宜調節することが可能である。
【0015】
本発明において使用するタピオカ澱粉は、天然澱粉(未処理澱粉)でも加工澱粉でも処理方法を問わず使用出来る。好ましくは未処理澱粉及び/又はエーテル化澱粉、エステル化澱粉及び架橋澱粉から選択される1以上の加工澱粉である。加工澱粉の例としては、酢酸化、リン酸化、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋、アセチル化等の処理をしたものを挙げることが出来る。
【0016】
本発明において、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20~75質量%であり、好ましくは25~60質量%、さらに好ましくは30~40質量%である。また本発明において型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比は、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲であり、好ましくは7:3~6:4である。乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲の中で、乾熱処理した米粉の比率が高い方が、好ましい食感となる傾向にある。
なおここで、澱粉性原材料は、澱粉を主成分とする原材料を意味し、小麦粉、大麦粉、とうもろこし粉、はと麦粉、ライ麦粉、カラス麦粉末、米粉等の穀粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の澱粉類、およびこれらを原料とする加工澱粉類を意味する。
【0017】
本発明の焼き菓子類用プレミックス粉は、上記乾熱処理米粉及びタピオカ澱粉以外に、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉など)、大麦粉、蕎麦粉、コーンフラワー、大豆粉、乾熱処理米粉以外の米粉などの穀粉(より好ましい食感を得る為には粒度の粗いコーンフラワーを含むことが好ましい);タピオカ澱粉以外の、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉などの澱粉類及びこれらにα化、エーテル化、エステル化、アセチル化、架橋処理等を行った加工澱粉類;砂糖(上白糖、三温糖、グラニュー糖、黒糖など)、ショ糖、麦芽糖、ブドウ糖、トレハロース等などの糖類(皮の甘さを抑えつつ、皮のサクみを上げる効果がある観点から粉末水飴が好ましい);サラダ油、パーム油、コーン油等の油脂類(好ましくは融点が高く、固化した際に硬化しやすい固形油);ベーキングパウダー、重曹、炭酸水素アンモニウム等の膨張剤;グアーガム、キサンタンガム、カラギナン、ペクチン等の増粘剤等を含むことができる。
【0018】
<型焼き菓子類用生地>
型焼き菓子類用生地は、上記型焼き菓子類用プレミックス粉を含む。本発明の型焼き菓子類用生地は、型焼き菓子類の種類によって常法に従って調製することができる。例えば、たい焼き用生地(バッター)は、たい焼き用ミックス粉100質量部に対して、80~120質量部程度の水を加え、手混ぜで1~2分間攪拌することにより調製することができる。攪拌はミキサーを使用して、30秒~1分間行ってもよい。
本発明の型焼き菓子類用生地は、上記型焼き菓子類用プレミックス粉に加え、さらに他の原料として、澱粉性原料以外の通常型焼き菓子類用生地の製造に使用される原料であればいずれも配合することができる。例えば、ブドウ糖、果糖、乳糖、砂糖、イソマルトースなどの糖類;卵黄、卵白、全卵及びそれらを粉末化したものやその他の卵に由来する成分である卵成分;牛乳、粉乳、脱脂粉乳、大豆粉乳等の乳成分;小麦蛋白、大豆蛋白、乳蛋白、緑豆蛋白等の蛋白類;ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等の油脂類;ベーキングパウダー等の発泡剤;乳化剤;食塩等の無機塩類;保存料;香料;香辛料;ビタミン;カルシウム等の強化剤、水などを配合することができる。
【0019】
<型焼き菓子類>
本発明の型焼き菓子類は、上記型焼き菓子類用生地を焼成してなるものである。
本発明の型焼き菓子は、所定量の乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を含む上記型焼き菓子類用プレミックス粉を使用する以外は常法に従って製造することが出来る。
本発明において「型焼き菓子類」とは穀粉を含有するバッター生地を、焼成型を用いて焼成したもの、またさらに焼成したものの中に餡等の具材を含む菓子をいい、例えば、大判焼き、たい焼き、今川焼き、回転焼き、人形焼き、ワッフル等が挙げられる。
型焼き菓子類の具材としては、小豆餡、栗餡、芋餡等の餡類、カスタードクリーム、チョコレートクリーム、キャラメルクリーム等のクリーム類を挙げることが出来る。
【0020】
<型焼き菓子類の製造方法>
本発明の型焼き菓子類の製造方法は、上記米粉を所定の条件下で乾熱処理する工程、及び得られた乾熱処理米粉とタピオカ澱粉を、澱粉性原料の全量に対して所定量、所定の質量比で使用して生地を得る工程を含む以外は常法に従って製造することが出来る。
例えば前記型焼き菓子類用小麦粉組成物を含む前記型焼き菓子用生地を調製し、必要により具材を加え、鉄板や焼き型を用いて焼成して製造することができる。
具材を加える場合は、例えば生地を一対の型に流しいれて焼成して皮部を形成し、片側の皮部に餡類のような具材を載せて型を合わせて更に焼成することにより、製造することができる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0022】
<製造例1:乾熱処理米粉の製造>
(1)米粉1kgを金属製のバットに入れ、厚さが約5mmになるように薄く広げた。
(2)乾熱器(アズワン社製、KM-300B)にバットを入れ、130℃に加熱した。(3)乾熱器内の雰囲気温度が130℃に達した後、米粉をヘラで軽く攪拌し再度5mmに薄く広げ130℃で30分間加熱した。
(4)バットを取り出して、室温まで自然冷却し乾熱処理米粉を得た。
【0023】
<製造例2:たい焼きの製造>
(1)下記の配合のたい焼き用ミックス粉100質量部に対して、水100質量部を加え、ホイッパーで2分間攪拌し、バッターを得た。
(2)たい焼き機を180℃に加温し、下生地としてバッター15gを焼き型の凹部に落としヘラを用いて生地を薄く延ばした。
(3)下生地の上に餡子60gを落とし、上生地としてバッター35gを餡子が隠れる様に落とした。
(4)焼き型を合わせ、上生地の方に型を倒し、2分30秒間焼成した。
(5)反転して2分30秒間焼成した。合計5分間挟み焼きをし、たい焼きを得た。
【0024】
(たい焼き用ミックス粉の配合)
小麦粉 53質量部
乾熱処理(130℃、30分)した米粉 21質量部
澱粉(酢酸タピオカ澱粉) 9質量部
糖類(グラニュー糖) 10質量部
油脂(ショートニング) 3質量部
ベーキングパウダー 3質量部
食塩 1質量部
合計 100質量部
小麦粉は日本製粉社製薄力粉「ダイヤ」、米粉は松屋製粉社製「高砂117」、澱粉は松谷化学工業社製「松谷さくら」を使用した。
【0025】
<試験例1 乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の適当な配合量の検討>
乾熱処理米粉及び酢酸タピオカ澱粉の配合量を表2のとおりに変えた以外は製造例2に従い、たい焼きを製造した。乾熱処理米粉やタピオカ澱粉の増減量に合わせて小麦粉の配合量を変更して全体が100質量部になるように調整した
加水量は、バッターの物性(粘度)を合わせるため粘度計(リオン社製、Viscotester VT-06)のローターNo.1にて測定した粘度が15~30dPa・sになるように調整した。
得られたたい焼きについて、熟練パネラー10名により表1の評価基準に従って食感評価した。評価結果を表2に示した。なお、従来の配合(小麦粉62質量部、乾熱処理していない米粉21質量部、グラニュー糖10質量部、ショートニング3質量部、ベーキングパウダー3質量部、食塩1質量部)で製造したたい焼きの焼成直後の食感を3点、1時間後の食感を1点とした。
【0026】
【0027】
表2 使用する乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の適当な配合量の検討
【0028】
その結果、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20~75質量%であり、かつ乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が、乾熱処理米粉:タピオカ澱粉=8:2~5:5の範囲である実施例1~5ではいずれも焼成直後、焼成1時間後ともに好ましい食感であった。これに対し型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が20質量%未満である比較例5及び6では焼成直後、焼成1時間後ともに劣る食感となった、型焼き菓子類用プレミックス粉に含まれる澱粉性原料の全量に対して乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の合計が75質量%を超える比較例7及び8では焼成直後の食感は良好であるものの焼成1時間後の食感が劣る結果となった。乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が9:1である比較例1及び3は焼成直後の食感は良好であるものの焼成1時間後の食感が劣る結果となった。乾熱処理米粉とタピオカ澱粉の質量比が4:6である比較例 は焼成直後、焼成1時間後ともに劣る食感となった。
【0029】
<試験例2 乾熱処理米粉、未処理米粉及びその他の処理を行った米粉との比較>
乾熱処理米粉を、表3に記載の通りに処理方法の異なる米粉に変えた以外は製造例2に従い、たい焼きを製造した。
加水量は、粘度計(リオン社製、Viscotester VT-06)のローターNo.1にて測定した粘度が15~30dPa・sになるように調整した。
得られたたい焼きについて、熟練パネラー10名により表1の評価基準に従って食感評価した。評価結果を表3に示した。なお、加水を120質量部にしても、粘度が30dPa・sを超えている場合は、下生地を延ばす工程で支障が出て、品質が大きく振れる結果となったので、評価できなかった。
【0030】
表3
α化米粉:キッコーマン社製、「パフゲン」
湿熱処理米粉:特開2013-179908に準じて作製した。加熱水蒸気が米粉全体に万遍なく当たるように、米粉をバットの上に厚さ1cmに広げ、スチームオーブン(ラショナル社製)内で、常圧下、処理温度100℃、処理時間20分間で湿熱処理し、湿熱処理米粉を得た。
【0031】
その結果、乾熱処理米粉を使用した実施例1では焼成直後、焼成1時間後ともに好ましい食感であった。これに対し、未処理米粉を使用した比較例9、湿熱処理米粉を使用した比較例10では、いずれも焼成直後、焼成1時間後ともに食感が劣る結果となり、α化米粉を使用した比較例11では高粘度のため試験不可という結果となった。
【0032】
<試験例3 タピオカ澱粉の加工処理方法の検討>
澱粉の種類を表4に記載の通りに変えた以外は製造例2に従い、たい焼きを製造した。
加水量は、粘度計(リオン社製、Viscotester VT-06)のローターNo.1にて測定した粘度が15~30dPa・sになるように調整した。
得られたたい焼きについて、熟練パネラー10名により表1の評価基準に従って食感評価した。評価結果を表4に示した。なお、加水を120質量部にしても、粘度が30dPa・sを超えている場合は、下生地を延ばす工程で支障が出て、品質が大きく振れる結果となったので、評価できなかった。
【0033】
表4
酢酸タピオカ澱粉:松谷化学工業社製、「松谷さくら」
リン酸架橋タピオカ澱粉:松谷化学工業社製、「パインベークCC」
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉:松谷化学工業社製、「松谷ゆり」
α化ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉:松谷化学工業社製、「プリジェル」
【0034】
その結果、酢酸タピオカ澱粉を使用した実施例1、リン酸架橋タピオカ澱粉を使用した実施例6、ヒドロキシプロピル化澱粉を使用した実施例7ではいずれも焼成直後、焼成1時間後ともに好ましい食感であった。これに対しα化ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を使用した比較例12では高粘度のため試験不可という結果となった。
【0035】
<試験例4 米粉の乾熱処理温度の検討>
米粉の乾熱処理温度(雰囲気温度)を表5のとおりに変えた以外は製造例1及び製造例2に従い、たい焼きを製造した。
加水量は、粘度計(リオン社製、Viscotester VT-06)のローターNo.1にて測定した粘度が15~30dPa・sになるように調整した。
得られたたい焼きについて、食感を表1の評価基準により10名の熟練パネラーが評価した。評価結果を表5に示した。
表5 乾熱処理の処理方法の検討
【0036】
その結果、乾熱処理の処理温度(雰囲気温度)が100~163℃である実施例1、8及び9ではいずれも焼成直後、焼成1時間後ともに好ましい食感であった。これに対し雰囲気温度が90℃で乾熱処理した比較例13では焼成直後、焼成1時間後のいずれの食感も劣る結果となり、雰囲気温度が165℃で乾熱処理した比較例14では焼成直後、焼成1時間後のいずれの食感も劣り、さらに焦げ臭が強い結果となった。