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  • 特許-ヒートパイプ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ヒートパイプ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20221207BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F28D15/04 D
F28D15/02 102G
F28D15/02 101A
F28D15/02 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018205693
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070979
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵人
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-122024(JP,A)
【文献】特開2018-111629(JP,A)
【文献】特開2017-083074(JP,A)
【文献】特開2002-372387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/04
F28D 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部を有し、内部にウィック構造が配置されるコンテナ基材と、前記空洞部に封入された作動流体と、を備えるヒートパイプであって、
前記ウィック構造は、SiOを主成分とし、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が0.01質量%以上、Li、Na、K、Ca、Baの含有量の合計が1質量%以下、Mgの含有量が10質量%以下のガラス素材であり、
前記作動流体は、水を含むことを特徴とするヒートパイプ。
【請求項2】
前記ウィック構造は、ガラス繊維であることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記ウィック構造は、複数本のガラス繊維が束ねられたヤーンであることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記ウィック構造は、ガラス繊維がクロス状に織られたガラス繊維クロスであることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記ウィック構造は、ガラス繊維の不織布であることを特徴とする請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記ガラス繊維の径は、2~10μmであることを特徴とする請求項2~5のいずれか一つに記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記ウィック構造の厚さは、0.01~0.2mmであることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記コンテナ基材を構成する材料は、アルミ、マグネシウム、チタン、銅、ステンレス、またはアルミ、マグネシウム、チタン、銅のいずれか一つを主として含む合金であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一つに記載のヒートパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量で信頼性に優れるヒートパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気、電子機器の小型化、および大電流化に伴い発熱量が増大し、その冷却が重要な課題となっておる。電気、電子機器の冷却方法の一つとして、ヒートパイプが使用されている。
【0003】
ヒートパイプは、コンテナ基材およびウィック構造を有している。また、ヒートパイプは、主に伝熱性能に優れる銅が使用されている。ここで、モバイル機器や車両に内装される製品に対して、ヒートパイプの軽量化の要求が高まっている。これに対し、ヒートパイプの軽量化の観点から、ウィック構造にガラス素材を適用することが検討され、種々の技術が提案されている。
【0004】
ガラス素材のウィック構造体を使用する技術として、例えば、チャンバー内の蒸発部に付着させた網構造の第1の毛細管構造と、蒸発部から凝縮部まで軸方向に配置され、編んで織おり上げた組み紐からなる第2の毛細管構造と、によりウィック構造を構成したヒートパイプであって、前記第1の毛細管構造および前記第2の毛細管構造がガラス等からなるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、両端の閉じた減圧細管の内部に、作動液体及び毛細管又は線条が、適当な空間を残して自由状態又は拘束状態で充填されているマイクロヒートパイプであって、作動流体として水を使用し、毛細管または線条として、石英ガラス、ホウ酸系ガラス等の無機ガラスを使用するものが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
さらに、中空ガラスの外壁側を緻密なガラスによる緻密ガラス層として形成し、中空ガラスの内壁側は中空ガラスの両端部分を細孔で連通した多孔質ガラス層としたヒートパイプであって、作動流体として水を使用するものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実用新案登録第3194101号公報
【文献】特開昭63-226595号公報
【文献】特開2008-122024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ウィック構造体としてガラスを使用した場合、ヒートパイプの長期使用により、作動流体として使用する水に、ウィック構造体のガラスからアルカリが溶出するという問題を有している。ヒートパイプのような密閉環境下では、作動流体中でアルカリ成分が濃化し、pHが上昇してしまう。このpHの上昇により、ガラス母相がエッチングされ、ウィック構造の形状が損なわれ、ウィック性能の低下、すなわち、ヒートパイプの熱性能が低下し、長期信頼性が得られないおそれがある。また溶解したガラス成分が他の場所で再晶出して、ウィック性能を低下させるおそれもある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低コスト、軽量かつ長期信頼性に優れたヒートパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るヒートパイプは、空洞部を有し、内部にウィック構造が配置されるコンテナ基材と、前記空洞部に封入された作動流体と、を備えるヒートパイプであって、前記ウィック構造は、SiOを主成分とし、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が0.01質量%以上であり、Li、Na、K、Ca、Baの含有量の合計が1.0質量%以下であり、Mgの含有量が10質量%以下のガラス素材であり、前記作動流体は、水を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ウィック構造は、ガラス繊維であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ウィック構造は、複数本のガラス繊維が束ねられたヤーンであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ウィック構造は、ガラス繊維がクロス状に織られたガラス繊維クロスであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ウィック構造は、ガラス繊維の不織布であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ガラス繊維の径は、2~10μmであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記ウィック構造の厚さは、0.01~0.2mmであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係るヒートパイプは、上記発明において、前記コンテナ基材を構成する材料は、アルミ、マグネシウム、チタン、銅、ステンレス、またはアルミ、マグネシウム、チタン、銅のいずれか一つを主として含む合金であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、低コストに、軽量かつ長期信頼性に優れたヒートパイプを得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るヒートパイプの軸方向と垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。
【0021】
(実施の形態)
図1は、発明の実施の形態に係るヒートパイプ10の軸方向と垂直な断面図である。ヒートパイプ10は、空洞部4を有し、内部にウィック構造2が配置されるコンテナ基材1と、コンテナ基材1の空洞部4に封入された作動流体3と、を備える。
【0022】
コンテナ基材1は、軸方向と垂直な断面が円状の細管である。断面形状は円状に限定されるものではなく、矩形状、楕円状等であってもよい。また、細管は直線状のほか、L字状等であってもよい。さらに、ヒートパイプの形状は、管材のほか、板材、箔材を張り合わせたものであってもよい。コンテナ基材1を構成する材料は、アルミ、マグネシウム、チタン、銅、ステンレス、またはアルミ、マグネシウム、チタン、銅のいずれか一つを主として含む合金である。軽量化の観点からは、アルミ、マグネシウム、チタン、またはアルミ、マグネシウム、チタンのいずれか一つを主として含む合金が好ましい。ここで、「主として含む」とは、アルミ、マグネシウム、チタンのいずれか一つの割合が50質量%以上であることを意味する。
【0023】
ウィック構造2は、コンテナ基材1の内部に配置される。ウィック構造2は、コンテナ基材1の軸方向の長さ、例えば、作動流体が気化する蒸発部である一端部から、作動流体が液化する凝縮部である他端部にわたり配置される。図1では、ウィック構造2は、コンテナ基材1の内壁面の全体に配置されるが、内壁面の一部を覆うように配置されていてもよい。
【0024】
ウィック構造2は、SiOを主成分とし、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が0.01質量%以上、Li、Na、K、Ca、Baの含有量の合計が1質量%以下、Mgの含有量が10質量%以下であるガラス素材からなる。SiOを主成分としたガラス素材は、一般的に水との濡れ性が良好であり、ウィック構造2として好的である。また、ガラス素材中のアルカリ成分であるLi、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が0.01質量%以上であることにより、ガラス素材の融点が低下するため、製造が容易となり、製造コストの上昇を抑制することができる。
【0025】
また、Li、Na、K、Ca、Baの含有量の合計が1質量%以下のガラス素材をヒートパイプ10のウィック構造2として使用した場合、作動流体3である水へのLi、Na、K、Ca、Baの溶出量が少ないため、作動流体のpHの上昇およびウィック構造2の質量低減を防止することができる。Li、Na、K、Ca、Baの含有量の合計は、0.5質量%以下が好ましく、0.2質量%以下が特に好ましい。
【0026】
さらに、Mgの含有量が10質量%以下のガラス素材をヒートパイプ10のウィック構造2として使用した場合、作動流体3である水へのMgの溶出量が少ないため、作動流体のpHの上昇およびウィック構造2の質量低減を防止することができる。Mgは、水への溶解度が小さいため、ガラス素材中の含入量が10質量%以下であればよいが、5質量%以下が好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0027】
Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が上記の範囲となるガラス素材は、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が上記の範囲であるガラス素材をウィック構造2として使用する。また、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が上記範囲の上限を超えるガラス素材を、酸処理することによりLi、Na、Mg、K、Ca、Baを除去することにより、Li、Na、Mg、K、Ca、Baの含有量の合計が上記の範囲となった酸処理ガラスを使用することもできる。酸処理ガラスをウィック構造2として使用する場合、酸処理後、高温で熱処理して、ガラス母相を緻密化したものを使用することが好ましい。
【0028】
なお、ガラス素材からアルカリ溶出を抑制する技術として、硫酸アンモニウム、亜硫酸ガス、無水亜硫酸、濃硫酸等を用いるブルーム処理(サルファー処理)もある。ブルーム処理では、ガラス表層付近のアルカリ成分を除去するのみに留まり、アルカリが残存する内層から徐々にアルカリが溶出するため、ガラス基材全体に含まれるアルカリ成分量を制御することが必要となる。
【0029】
また、ウィック構造2に使用されるガラス素材は、Al、Cu、Ni、Ti、Zr等を含むものであってもよい。Al、Cu、Ni、Ti、Zr等を含むガラス素材は、ガラス母相の耐水性を高めることができる。
【0030】
ウィック構造2の形状は特に限定されるものではないが、ウィック性能とハンドリングの観点から、ガラス繊維を使用することが好ましい。ウィック構造2は、複数本のガラス繊維が束ねられたヤーン、ガラス繊維がクロス状に織られたガラス繊維クロス、ガラス繊維の不織布を好適に使用することができ、これらを組み合わせて使用することもできる。
【0031】
ウィック構造2に使用されるガラス繊維の線径は特に限定されるものではないが、細すぎると製造時にちぎれ等の原因となるほか、ハンドリング性が低下し、太すぎると柔軟性の低下により、ハンドリング性が悪くなる。したがって、ガラス繊維の線径は、2~10μmが好ましく、4~8μmが特に好ましい。
【0032】
ウィック構造2として、ガラス繊維クロスや不織布を使用する場合の厚さは、特に限定されるものではないが、薄すぎると製造時にちぎれ等の原因となり、厚すぎるとヒートパイプ10の軽量小型化に不利となるほか、ウィック構造2内に大気の一部が残存し、ヒートパイプ性能を低下させるおそれがある。ウィック構造2の厚さは、0.01mm~0.2mmであることが好ましく、0.02mm~0.1mmが特に好ましい。
【0033】
ウィック構造2は、少なくとも上記に記載のガラス素材を一部に使用するものであれば、他の部分が従来の金属素材を使用するものであってもよい。少なくとも一部が、アルカリの溶出のないガラス素材を使用するものであれば、軽量かつ長期信頼性にぐれるヒートパイプ10とすることができる。
【0034】
作動流体3は、水を含む流体である。水は、蒸発潜熱が大きく、熱輸送に有利であり、環境負荷がなく、管理も容易であるという利点を有しているため、作動流体3として好適に使用することができる。使用環境に応じて、pH調整剤を添加したり、作動流体3の凍結を防止する目的でアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等を添加してもよいが、少なくとも水を50質量%以上含むことが好ましい。
【0035】
上記の構成を採用することにより、低コストに生産可能であって、軽量かつ長期信頼性に優れるヒートパイプ10を得ることができる。なお、上記の実施の形態では、コンテナ基材1として金属材料を使用しているが、ウィック構造2に使用するアルカリ溶出の無いガラス素材を使用することもできる。
【0036】
ヒートパイプ10は、汚れを洗浄したコンテナ基材1の一端部を封止した後、ウィック構造2をコンテナ基材1に配置し、作動流体3を注入した後、コンテナ基材内部を脱気し、コンテナ基材1の他端部を封止することにより製造することができる。封止の前に、絞り加工等により封止部(コンテナ機材11の両端部)の形状を適宜調整しても良い。また板材や箔材を張り合わせてコンテナとする場合は、作動流体3を注入する前に注入口以外の部分を封止し、作動流体3を注入し、脱気後に注入口の部分を封止する。また各工程の間で扁平加工や曲げ加工を施し、ヒートパイプを所望の形状に調整しても良い。
【0037】
コンテナ基材1の表面に付着した汚れ等は、ヒートパイプ化した後に熱伝達能の低下に繋がる恐れがあるため、洗浄することが好ましい。洗浄は一般的な方法で実施すれば良く、例えば溶剤脱脂、電解脱脂、エッチング、酸化処理等を行えば良い。
【0038】
コンテナ基材1の封止方法は特に制限は無いが、TIG溶接、抵抗溶接、厚接、はんだ等、一般的な方法を用いれば良い。ウィック構造2のコンテナ基材1の内部への設置方法に特に限定は無く、コンテナ基材1の内面にクロス状のウィック構造2を沿わせる、コンテナ基材1内部にヤーンを設置する等、一般的な方法で設置すれば良い。必要に応じて、コンテナ基材1で固定しても良い。
【実施例
【0039】
<試験サンプルの製造>
外径8mm×厚さ0.3mm×長さ220mmの無酸素銅管の直管の片端をTIG溶接で封止し、下記表1に示した成分を有するガラスクロスを内面に沿わせて設置した。その後純水を注液し、加熱脱気により脱気後、TIG溶接により脱気口を封止し、ヒートパイプの試験サンプルとした。ガラスクロスは、厚さ0.01~0.2mmのものを適宜選択して用いた。ヒートパイプ内の作動流体は、1.8g程度になるよう調整した。
【0040】
<評価方法>
(1)作動流体のpH
ヒートパイプを長期で使用した際のガラス製ウィック構造からのアルカリ溶出を模擬するため、作製した試験サンプルを150℃×185hの条件で加速試験し、熱処理後の作動流体のpHを測定した。熱処理後のpHが8以下の場合を◎、8.5以下の場合を○、9以下の場合を△、9より大きい場合を×として判定した。
(2)ウィック構造の質量変化
ヒートパイプを長期で使用した際のガラス製ウィック構造の作動流体への溶解を模擬するため、作製した試験サンプルを150℃×185hの条件で加速試験し、熱処理前後のウィック構造の質量変化を測定した。ウィック構造の質量変化は下記式で計算される。耐久試験後の質量変化率が5%以下の場合を◎、10%以下の場合を○、15%以下の場合を△、15%より大きい場合を×として判定した。
質量変化=(耐久試験前の質量-耐久試験後の質量)/(耐久試験前の質量)
(3)コスト
ガラス素材の製造の難易度により、製造コストを評価した。製造コストが低い場合は○、製造コストが高い場合を×とした。
【0041】
製造したヒートパイプの試験サンプルについて、上記(1)~(3)の評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例1~7、および比較例5は、酸処理後に熱処理し、アルカリ成分を低減したガラス素材をウィック構造として用いた。表1に示すように、ガラス素材中のアルカリ成分が濃くなるに連れ、耐久後のpHが上昇し、質量変化が大きくなった。
【0044】
実施例8~11および比較例1は、アルカリ添加量を抑えたガラス素材をウィック構造として用いた。表1に示すように、アルカリ成分が濃くなるに連れ、耐久後のpHが上昇し、質量変化が大きくなった。
【0045】
比較例2は、Eガラスをウィック構造として用いた。Eガラスは無アルカリガラスとして知られているものの、Ca含有量が13質量%と高い。Eガラスを使用したウィック構造は、耐久後のpHが上昇し、質量変化も大きくなった。従来用途では耐水性が期待されるEガラスでも、ヒートパイプ環境では長期信頼性が得られない。
【0046】
比較例3は、比較例2のEガラスをブルーム処理し、表層のアルカリ成分を除去したガラスをウィック構造として用いた。ブルーム処理によっても、耐久後のpHが上昇し、質量変化も大きくなった。従来用途ではブルーム処理によりアルカリ溶出を抑制できることが知られているが、ヒートパイプ環境では長期信頼性が得られない。ヒートパイプ環境で長期信頼性を得るためには、ガラス表層のアルカリ成分を除去するだけでは不十分であり、母相全体のアルカリ成分を低減する必要がある。
【0047】
比較例4は、一般的な耐水用途で使用されるパイレックス(登録商標)ガラスをウィック構造として用いた。耐久後のpHが上昇し、重量変化も大きくなった。従来用途では耐水性が期待されるパイレックスガラスでも、ヒートパイプ環境では長期信頼性が得られない。
【0048】
参考例1は、石英ガラスをウィック構造として用いた。石英ガラスはアルカリ成分をほとんど含まず、アルカリ溶出の懸念は無いが、アルカリ成分を含まないゆえに融点が高く、製造の難易度が上がり高コストとなる。
【0049】
本発明では、ガラス素材が0.01質量%以上アルカリ成分を含むことで、比較的低いコストで製造でき、耐久後のpH及び質量変化において、石英ガラスと同等の結果が得られている。
【符号の説明】
【0050】
1 コンテナ基材
2 ウィック構造
3 作動流体
4 空洞部
10 ヒートパイプ
図1