(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】携帯ガス供給器及びガス吸入用マスク
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20221207BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20221207BHJP
A61M 16/10 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61M16/00 305B
A61M16/06 A
A61M16/10 A
(21)【出願番号】P 2018242089
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘次
(72)【発明者】
【氏名】小川 光博
(72)【発明者】
【氏名】古海 敏恵
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4811730(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 16/06
A61M 16/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入用ガスを圧縮充填した携帯用のガス容器と、前記ガス容器の開口部に装着され、前記ガス容器内の吸入用ガスを吐出ノズルから吐出するガス取出し部材と、マスク基部側に設けられて前記吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクとを備えた携帯ガス供給器において、前記ガス吸入用マスクは、
当該ガス吸入用マスクの全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れに対して抵抗を与える抵抗部材が設けられ、前記基部側接続部における前記抵抗部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させ
、前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とする携帯ガス供給器。
【請求項2】
前記抵抗部材は、焼結フィルタ
又はオリフィスであることを特徴とする請求項1記載の携帯ガス供給器。
【請求項3】
吸入用ガスを圧縮充填した携帯用のガス容器と、前記ガス容器の開口部に装着され、前記ガス容器内の吸入用ガスを吐出ノズルから吐出するガス取出し部材と、マスク基部側に設けられて前記吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクとを備えた携帯ガス供給器において、前記ガス吸入用マスクは、全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れを遮断する遮蔽部材が設けられ、前記基部側接続部における前記遮蔽部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させるとともに、前記周縁部ガス導入部及び前記ガスガイド流路の少なくともいずれか一方に、拡開部の内部に向かって吸入用ガスを吐出する吸入用ガス吐出部を設けたことを特徴とする携帯ガス供給器。
【請求項4】
前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とする請求項
3記載の携帯ガス供給器。
【請求項5】
マスク基部側に設けられて吸入用ガス供給源の吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクにおいて、該ガス吸入用マスクは、
当該ガス吸入用マスクの全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れに対して抵抗を与える抵抗部材が設けられ、前記基部側接続部における前記抵抗部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させ
、前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とするガス吸入用マスク。
【請求項6】
前記抵抗部材は、焼結フィルタ
又はオリフィスであることを特徴とする請求項
5記載のガス吸入用マスク。
【請求項7】
マスク基部側に設けられて吸入用ガス供給源の吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクにおいて、該ガス吸入用マスクは、全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れを遮断する遮蔽部材が設けられ、前記基部側接続部における前記遮蔽部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させるとともに、前記周縁部ガス導入部及び前記ガスガイド流路の少なくともいずれか一方に、拡開部の内部に向かって吸入用ガスを吐出する吸入用ガス吐出部を設けたことを特徴とするガス吸入用マスク。
【請求項8】
前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とする請求項
7記載のガス吸入用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯ガス供給器及びガス吸入用マスクに関し、詳しくは、酸素吸入用の携帯ガスカートリッジにガス吸入用マスクを装着した携帯ガス供給器及び携帯ガス供給器などのガス供給源に装着するガス吸入用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手軽に酸素吸入を行うための機器として、携帯ガス供給器が知られている。この携帯ガス供給器は、小型ガス容器(ガスカートリッジ)内に吸入用ガスとして酸素や酸素富化ガスを圧縮充填したもので、例えば、心臓病やぜんそくの発作、交通事故のような呼吸困難が生じたときの応急処置などの際に酸素を投与するために用いられており、近年では、運動などによる疲労を回復させるためにも広く用いられている。また、酸素の吸入、投与を効果的に行えるようにするため、吸入者の口及び鼻の周囲を覆う形状を有するガス吸入用マスクをガスカートリッジのガス吐出部に接続したり、ホースを介して接続したりすることも行われている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、収納性を考慮して、ガス吸入用マスクの形状を、ガスカートリッジのキャップを兼ねる形状としたものもあるが、ガス吸入用マスクの形状としては不適当であり、吸入効率が低くなって吸入用ガスの無駄を生じていた(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭58-174135号公報
【文献】特開2008-229308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ガス吸入用マスクを用いる場合、発作中の患者がガス吸入用マスクをガスカートリッジに接続することは大変であり、医療従事者ではない一般人がガス吸入用マスクを取り扱う際には、不慣れであることから、ガス吸入用マスクの接続に手間取って酸素の投与に時間がかかり、応急処置が遅れるおそれがある。一方、ガス吸入用マスクをガスカートリッジにあらかじめ接続した状態にすると、ガス吸入用マスクが嵩張るため、バッグなどに収納して携帯することが困難となる。
【0005】
そこで本発明は、ガスカートリッジにあらかじめ接続した状態で、使用前にはコンパクトになってバッグなどへの収納を容易に行うことができ、吸入用ガスを吸入、投与する使用時には、自動的に吸入者の口及び鼻の周囲を覆う形状になるガス吸入用マスクを装着した携帯ガス供給器及び携帯ガス供給器に適した構造を有するガス吸入用マスクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の携帯ガス供給器における第1の構成は、吸入用ガスを圧縮充填した携帯用のガス容器と、前記ガス容器の開口部に装着され、前記ガス容器内の吸入用ガスを吐出ノズルから吐出するガス取出し部材と、マスク基部側に設けられて前記吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクとを備えた携帯ガス供給器において、前記ガス吸入用マスクは、当該ガス吸入用マスクの全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れに対して抵抗を与える抵抗部材が設けられ、前記基部側接続部における前記抵抗部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させ、前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とし、さらに、前記抵抗部材が、焼結フィルタ又はオリフィスであることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の携帯ガス供給器における第2の構成は、吸入用ガスを圧縮充填した携帯用のガス容器と、前記ガス容器の開口部に装着され、前記ガス容器内の吸入用ガスを吐出ノズルから吐出するガス取出し部材と、マスク基部側に設けられて前記吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクとを備えた携帯ガス供給器において、前記ガス吸入用マスクは、全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れを遮断する遮蔽部材が設けられ、前記基部側接続部における前記遮蔽部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させるとともに、前記周縁部ガス導入部及び前記ガスガイド流路の少なくともいずれか一方に、拡開部の内部に向かって吸入用ガスを吐出する吸入用ガス吐出部を設けたことを特徴とし、前記ガスガイド流路が、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴としている。
【0008】
本発明のガス吸入用マスクの第1の構成は、マスク基部側に設けられて吸入用ガス供給源の吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者
の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクにおいて、該ガス吸入用マスクは、当該ガス吸入用マスクの全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れに対して抵抗を与える抵抗部材が設けられ、前記基部側接続部における前記抵抗部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させ、前記ガスガイド流路は、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴とし、さらに、前記抵抗部材が、焼結フィルタ又はオリフィスであることを特徴としている。
【0009】
また、本発明のガス吸入用マスクの第2の構成は、マスク基部側に設けられて吸入用ガス供給源の吐出ノズルに接続される基部側接続部と、マスク先端側に設けられて先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部と、前記基部側接続部と前記吸入形状部との間を連結する拡開部とを有するガス吸入用マスクにおいて、該ガス吸入用マスクは、全体が、ガスを透過しない柔軟材料によって形成され、前記吸入形状部の先端部周縁に、前記吐出ノズルから吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部の形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能な周縁部ガス導入部が設けられ、前記基部側接続部には、前記吐出ノズルから前記吸入形状部に向かう前記吸入用ガスの流れを遮断する遮蔽部材が設けられ、前記基部側接続部における前記遮蔽部材と前記吐出ノズルとの間から、該吐出ノズルから吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部に導入するガスガイド流路を分岐させるとともに、前記周縁部ガス導入部及び前記ガスガイド流路の少なくともいずれか一方に、拡開部の内部に向かって吸入用ガスを吐出する吸入用ガス吐出部を設けたことを特徴とし、前記ガスガイド流路が、前記拡開部と一体に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス吸入用マスクを携帯用のガス容器(ガスカートリッジ)にあらかじめ接続した状態となっているので、使用時にガス吸入用マスクをガスカートリッジに接続する必要がなく、吸入用ガスの供給(吐出)と同時にガス吸入用マスクが吸入者の口及び鼻の周囲を覆う吸入形状部になるので、吸入用ガスの吸入、投与を迅速かつ確実に行うことができる。また、ガス吸入用マスクが柔軟材料によって形成されているので、使用前や使用後には、収縮させて折り畳むことによって小さくなることから、ガス吸入用マスクをガスカートリッジに接続した状態でも、ガス吸入用マスクが邪魔になることがなくなり、ポーチやバッグなどの中にコンパクトに収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の携帯ガス供給器及びガス吸入用マスクの第1形態例を示す断面図である。
【
図2】本発明の携帯ガス供給器及びガス吸入用マスクの第2形態例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の携帯ガス供給器の第1形態例を示している。本形態例に示す携帯ガス供給器11は、吸入用ガスを圧縮充填した携帯用のガス容器(ガスカートリッジ)12と、前記ガスカートリッジ12の開口部に装着され、前記ガスカートリッジ12内の吸入用ガスを吐出ノズル13から吐出するガス取出し部材14と、該ガス取出し部材14の吐出ノズル13に接続されるガス吸入用マスク15とを備えている。
【0013】
ガスカートリッジ12は、内容積が10~100ml程度の携帯性に優れた小型のガス容器であり、内部に酸素ガス、窒素ガス、炭酸ガス、空気、これらの混合ガスなどの吸入用ガスが圧縮充填されている。また、使用前におけるガスカートリッジ12の容器首部12aの開口は、封板12bで密封されており、容器首部12aの外周には、雄ねじ部が設けられている。
【0014】
ガス取出し部材14は、容器首部12aの雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を下部内周に設けたものであって、ガス取出し部材14を容器首部12aにねじ込んだときに前記封板12bを穿孔してガスカートリッジ12の内部とガス取出し部材14の内部流路14aとを連通させるためのニードル14bと、減圧部14c及び流量調節部14dと、減圧されて流量調節された吸入用ガスを噴出する前記吐出ノズル13とを有している。
【0015】
ガス吸入用マスク15は、本発明のガス吸入用マスクの第1形態例を示すもので、全体が、柔軟性を有する材料、例えば、ポリ塩化ビニル、シリコン、ラテックスなどのガスをほとんど通さない材料で形成されている。このガス吸入用マスク15におけるマスク基部側には、前記吐出ノズル13に接続される筒状の基部側接続部16が設けられている。この基部側接続部16に前記吐出ノズル13を嵌め込んで接続することにより、ガス吸入用マスク15がガスカートリッジ12に装着された状態になる。また、ガス吸入用マスク15におけるマスク先端側には、先端縁が吸入者の口及び鼻の周囲を覆って顔面に当接する吸入形状部17が設けられるとともに、前記吸入形状部17と前記基部側接続部16とは、吸入形状部17に向かって漸次拡径する円錐形状の拡開部18で連結されている。
【0016】
さらに、ガス吸入用マスク15における先端側開口部15aの周縁には、小径中空状の周縁部ガス導入部19が設けられている。この周縁部ガス導入部19は、前記吐出ノズル13から吐出された吸入用ガスが導入されることにより膨張して前記吸入形状部17の周縁部形状となり、吸入用ガスが導入されないときには収縮可能で折り畳み可能な状態になるように形成されており、携帯ガス供給器11の使用前には、折り畳んだ状態、あるいは、ガスカートリッジ12の外周に巻き付けた状態にできるように形成されている。
【0017】
前記基部側接続部16の先端側には、吐出ノズル13から吐出されて前記拡開部18内から前記吸入形状部17に向かう前記吸入用ガスの流れに対して抵抗を与える抵抗部材20が設けられている。この抵抗部材20としては、適度なガス流れ抵抗が得られれば各種材料、物品を用いることが可能であり、例えば、焼結フィルタ、オリフィス、バルブなどを用いることができる。そして、前記基部側接続部16における前記抵抗部材20と前記吐出ノズル13との間からは、吐出ノズル13から吐出された吸入用ガスを前記周縁部ガス導入部19に導入するガスガイド流路21が分岐している。このガスガイド流路21は、別のパイプ材などで形成することもできるが、前記拡開部18と一体的に形成することにより、ガス吸入用マスク15の製造コストの削減を図れる。
【0018】
前記抵抗部材20は、吐出ノズル13から吐出されて吸入形状部17に向かう吸入用ガスの流れに抵抗を与えることで、吐出ノズル13から吐出された吸入用ガスを、前記ガスガイド流路21から前記周縁部ガス導入部19に優先的に導入するためのものであって、吸入者が前記吸入形状部17からの吸入用ガスの吸入を開始する前に、周縁部ガス導入部19を吸入用ガスで膨張させてマスク先端側を前記吸入形状部17の形状にするようにしている。また、ガスガイド流路21及び周縁部ガス導入部19が吸入用ガスの導入で満たされて圧力が上昇した後に、抵抗部材20を通して基部側接続部16から先端側開口部15aに向かって所定量の吸入用ガスが流れるようになり、前記吸入形状部17から吸入者の口や鼻に供給されることになる。
【0019】
このように形成した携帯ガス供給器11は、ガスカートリッジ12にガス吸入用マスク15を装着した状態で携行することができる。使用前の状態では、周縁部ガス導入部19に吸入用ガスが導入されておらず、周縁部ガス導入部19が収縮した状態になっているため、
図1に想像線で示すように、ガス吸入用マスク15がしぼんだ状態あるいは適当に折り畳まれた小さな状態になっており、ガスカートリッジ12と共に小さなポーチやバッグなどに納めておくことができ、収縮したガス吸入用マスク15が邪魔になることはない。
【0020】
そして、何らかの疾患の発作の治療や呼吸困難が生じたときの応急処置としてガスの吸入が必要になったときには、ポーチやバッグなどから携帯ガス供給器11を取り出してガス取出し部材14をガスカートリッジ12にねじ込んでいく。これにより、封板12bがニードル14bで穿孔され、ガスカートリッジ12内の吸入用ガスが内部流路14a、減圧部14c及び流量調節部14dを通って吐出ノズル13から吐出される。
【0021】
吐出ノズル13から吐出された吸入用ガスは、抵抗部材20の作用で略全量がガスガイド流路21を通って周縁部ガス導入部19に流入し、周縁部ガス導入部19を膨張させて先端側開口部15aの先端縁を所定の吸入形状部17とする。周縁部ガス導入部19が膨張した後は、吸入用ガスの略全量が抵抗部材20を通過し、吸入者の口及び鼻の周囲を覆う所定形状となったガス吸入用マスク15内に供給され、吸入者が所定濃度の酸素ガスを吸入する状態となる。
【0022】
したがって、使用前及び使用後には、ガス吸入用マスク15を装着したままの携帯ガス供給器11をポーチやバッグなどにコンパクトに収納することができ、使用時には、ガス吸入用マスク15が瞬時に吸入者の口及び鼻の周囲を覆う所定形状となるので、ガスカートリッジ12内の吸入用ガスを効果的に吸入、投与することができ、吸入用ガスが無駄になることがなくなる。
【0023】
図2は、本発明の携帯ガス供給器の第2形態例を示している。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した携帯ガス供給器の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。特に、ガスカートリッジ12及びガス取出し部材14は、第1形態例と同じ構成を採用することができるので、図示も省略する。
【0024】
本形態例に示す携帯ガス供給器51に用いられているガス吸入用マスク52は、本発明のガス吸入用マスクの第2形態例を示すもので、前記第1形態例で示したガス吸入用マスク15と同様に、全体が、柔軟性を有する材料で形成されており、マスク基部側に設けられた基部側接続部16の先端部には、前記抵抗部材20に代えて、前記吐出ノズル13から前記吸入形状部17に向かう前記吸入用ガスの流れを遮断する遮蔽部材53を設けるとともに、前記周縁部ガス導入部19の内周には、ガスガイド流路21から周縁部ガス導入部19内に導入された吸入用ガスを拡開部18の内部に向かって吐出する吸入用ガス吐出孔54を複数箇所に設けている。
【0025】
したがって、本形態例に示すガス吸入用マスク52は、ガス取出し部材をガスカートリッジにねじ込んで吐出ノズル13からの吸入用ガスの供給を開始すると、吸入用ガスは、遮蔽部材53の作用で全量がガスガイド流路21から周縁部ガス導入部19に導入され、吸入用ガス吐出孔54からガス吸入用マスク15内に噴出し、前記吸入形状部17から吸入者の口や鼻に供給される状態になる。
【0026】
吸入用ガス吐出孔54の口径や設置数は、ガスガイド流路21から流入する吸入用ガスで周縁部ガス導入部19を十分に膨張させることができ、ガス吸入用マスク15内に噴出する吸入用ガス量が吸入者が必要とするガス量になるように設定すればよく、ガスガイド流路21の内径を調節したり、ガスガイド流路21の数を調節したりすることにより、周縁部ガス導入部19に、膨張に十分な量、圧力の吸入用ガスを導入しながら、マスク内に供給されて吸入者が吸入する吸入用ガス量を最適量に調節することができる。
【0027】
また、第2形態例に示すガス吸入用マスク52では、周縁部ガス導入部19に吸入用ガス吐出孔54を設けて吸入用ガスをガス吸入用マスク15内に供給しているが、基部側接続部16の遮蔽部材に吸入用ガス吐出孔を設けて吸入用ガスの一部をガス吸入用マスク15内に供給してもよく、ガスガイド流路21に吸入用ガス吐出孔を設けて吸入用ガスの一部をガス吸入用マスク15内に供給してもよい。
【0028】
さらに、前記吸入用ガス吐出孔に代えてガス透過性の部材、例えば不織布やフィルム、メッシュ材、多孔体などを適宜な形状として使用することも可能であり、ガス吸入用マスク15の内側となる部分の全体をガス透過性とすることもでき、周縁部ガス導入部19やガスガイド流路を含めてガス吸入用マスク15の全体を中空状に形成することも可能である。
【0029】
ガス吸入用マスクは、前記ガスカートリッジに限らず、各種吸入用ガス供給源に用いることができ、基部側接続部は、吸入用ガス供給源に設けられている吐出ノズルの形状に対応した構造で形成することができる。また、ガス吸入用マスクにおける周縁部ガス導入部は、リング状に全周にわたって設けることができるが、膨張時に吸入形状部の形状を維持できれば、リング状にする必要はなく、複数に分割してそれぞれにガスガイド流路を設けるようにしてもよい。さらに、ガスカートリッジに充填するガスの種類、濃度、組成、圧力は、使用目的に応じて任意に設定することができ、また、ガス取出し部材に、流量調節機構を設けることもでき、封板及びニードルに代えて開閉弁を設けることもでき、吐出ノズルに延長チューブを介してガス吸入用マスクを接続することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
11…携帯ガス供給器、12…ガスカートリッジ、12a…容器首部、12b…封板、13…吐出ノズル、14…ガス取出し部材、14a…内部流路、14b…ニードル、14c…減圧部、14d…流量調節部、15…ガス吸入用マスク、15a…先端側開口部、16…基部側接続部、17…吸入形状部、18…拡開部、19…周縁部ガス導入部、20…抵抗部材、21…ガスガイド流路、51…携帯ガス供給器、52…ガス吸入用マスク、53…遮蔽部材、54…吸入用ガス吐出孔