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特許7189911基板洗浄装置、基板処理装置、基板洗浄方法およびノズル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、基板処理装置、基板洗浄方法およびノズル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221207BHJP
   B05B 7/08 20060101ALI20221207BHJP
   B05B 7/04 20060101ALI20221207BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/304 643A
H01L21/304 648G
B05B7/08
B05B7/04
B08B3/02 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020121115
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018192
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】及川 文利
(72)【発明者】
【氏名】深谷 孝一
(72)【発明者】
【氏名】中野 央二郎
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-179341(JP,A)
【文献】特開2018-113354(JP,A)
【文献】特開平10-335298(JP,A)
【文献】特開2002-058986(JP,A)
【文献】特開2010-060244(JP,A)
【文献】特開2008-034428(JP,A)
【文献】特開2015-103647(JP,A)
【文献】特開2017-135284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B05B 7/08
B05B 7/04
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液を供給する処理液供給部と接続された第1供給口と、
ガスを供給するガス供給部と接続された第2供給口と、
前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3供給口と、
前記処理液を吐出する第1吐出口と、
第1混合位置において、前記ガスと前記第1吐出口より吐出された前記処理液とを混合して第1混合流体を生成するよう、前記ガスを吐出する第2吐出口と、
前記第1吐出口からの距離が前記第1混合位置よりも離れた第2混合位置において、前記第1混合流体と前記表面張力抑制ガスとを混合して第2混合流体を生成するよう、前記表面張力抑制ガスを吐出する第3吐出口と、を有するノズルを備え、
前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する基板洗浄装置。
【請求項2】
処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、
ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、
前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、が内部に設けられたノズルを備え、
前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路は、前記第1流路から出た処理液と、前記第2流路から出たガスとが第1混合位置において混合されて第1混合流体が生成され、前記第1混合流体と前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが前記第1混合流体の流れにおける前記第1混合位置より下流の第2混合位置において混合されて第2混合流体が生成されるように構成され、
前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置。
【請求項3】
処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、
ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、
前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、
前記第1流路および前記第2流路と連結されて、前記処理液と前記ガスとが混合された第1混合流体が流れる第4流路と、が内部に設けられたノズルを備え、
前記第3流路および前記第4流路は、前記第4流路から出た第1混合液体と、前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが混合されて第2混合流体が生成されるように構成され、
前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置。
【請求項4】
処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、
ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、
前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、
前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路と連結された第4流路と、が内部に設けられたノズルを備え、
前記第1乃至第4流路は、前記第1流路から出た処理液と、前記第2流路から出たガスとが第1混合位置において混合されて前記第4流路内で第1混合流体が生成され、前記第1混合流体と前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが前記第1混合流体の流れにおける前記第1混合位置より下流の第2混合位置において混合されて前記第4流路内で第2混合流体が生成されるように構成され、
前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置。
【請求項5】
液体状態の表面張力抑制剤を気化させて前記表面張力抑制ガスを生成する気化装置を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項6】
前記気化装置は、インジェクション方式で、前記液体状態の表面張力抑制剤を気化させて前記表面張力抑制ガスを生成する、請求項5に記載の基板洗浄装置。
【請求項7】
前記気化装置は、ベーキング方式、バブリング方式、または、ベーパライザである、請求項5に記載の基板洗浄装置。
【請求項8】
前記表面張力抑制ガスが通過するフィルタを備え、
前記フィルタを通過した表面張力抑制ガスが前記第1混合流体と混合される、請求項1乃至7のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項9】
前記処理液を200~400ml/分でノズルに供給する洗浄流体供給部を備える、請求項1乃至8のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項10】
前記ガスを100~200SLMでノズルに供給する洗浄流体供給部を備える、請求項1乃至8のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項11】
前記処理液は、超純水または二酸化炭素含有水であり、
前記ガスは、不活性ガスまたは乾燥空気であり、
前記表面張力抑制ガスは、IPAガスである、請求項1乃至10のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項12】
前記不活性ガスは窒素ガスである、請求項11に記載の基板洗浄装置。
【請求項13】
前記第2混合流体における前記IPAガスの濃度、または、前記第2混合流体における前記IPAガスおよび前記窒素ガスの合計濃度は、10~30%である、請求項12に記載の基板洗浄装置。
【請求項14】
基板を研磨する基板研磨装置と、
研磨後の基板を洗浄する、請求項1乃至13のいずれかに記載の基板洗浄装置と、を備える基板処理装置。
【請求項15】
処理液と、ガスとを混合して第1混合流体を生成する第1混合工程と、
前記第1混合流体が生成された後に、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスと、前記第1混合流体とを混合して第2混合流体を生成する第2混合工程と、
前記第2混合流体の噴流を基板に噴射して前記基板を洗浄する洗浄工程と、を備える基板洗浄方法。
【請求項16】
基板洗浄装置に用いられるノズルであって、
前記ノズルの外面に向かって開放された第1入口と、前記ノズルの内部に設けられた第1出口と、を有する第1流路と、
前記ノズルの外面に向かって開放された第2入口と、前記ノズルの内部に設けられた第2出口と、を有する第2流路と、
前記ノズルの外面に向かって開放された第3入口と、前記ノズルの底面に向かって開放された第3出口と、を有する第3流路と、
前記ノズルの内部において前記第1出口および前記第2出口と連結された第4入口と、前記ノズルの底面に向かって開放された第4出口と、を有する第4流路と、が前記ノズルの内部に設けられ、
前記第4流路は、前記ノズルのほぼ中央にあり、少なくとも前記第4出口の近傍は、前記ノズルの底面に近づくほど径が大きく、
前記第3流路は、前記第流路より前記ノズルの径方向外側にあり、前記第3流路からの流体と前記第4流路からの流体との混合流体が形成されるよう、少なくとも前記第3出口の近傍は、前記ノズルの底面に近づくほど前記ノズルの中央に近づくよう傾斜している、ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板洗浄装置、基板処理装置、基板洗浄方法およびノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
超純水(DIW)および窒素ガスの2流体の噴流(ジェット)で基板を洗浄(2流体ジェット洗浄)する2流体ジェット洗浄装置が広く知られている。2流体ジェット洗浄装置では、2流体ジェットを基板に供給した際に、基板表面に沿う放射流と、基板表面に沿わないスプラッシュとが発生するが、基板洗浄に主に寄与するのは前者とされている。よって、洗浄力を高くするためには、基板表面に沿う放射流を増やすことと、基板表面に沿わないスプラッシュを減らすことが考えられる。
【0003】
基板上に付着したパーティクルを除去する能力を高めるためには、液滴の基板への衝突速度を高くすればよい。しかし、衝突速度が高すぎると、基板にダメージを与えてしまうおそれがある。特に、近年では基板上に形成されるデバイスの微小化が進んでおり、小さな欠陥も許容されなくなってきている。また、衝突速度を上げるには2流体ジェット洗浄装置が必要とする気体や液体の供給元圧や供給流量の要求値も高くなり、省エネルギーの観点で効率的ではない。
【0004】
そこで、基板表面に沿わないスプラッシュを減らすのが有効である。スプラッシュが発生する要因は超純水の表面張力である。そのため、超純水の表面張力を低減させる作用を有するIPA(イソプロピルアルコール)を加えた流体で基板を洗浄することが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1は、まず窒素ガスとIPAとを混合し、次いで超純水を混合した流体で基板洗浄を行う技術を開示している。また、特許文献1は、まず超純水とIPAとを混合し、次いで窒素ガスを混合した流体で基板洗浄を行う技術も開示している。
【0006】
特許文献2は、処理液、窒素ガスおよび液体状態のIPAから構成される流体で基板を洗浄する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4011900号公報
【文献】特許第4349606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、より洗浄力が高い基板洗浄装置、および、そのような基板洗浄装置を備える基板処理装置、ならびに、より洗浄力が高い基板洗浄方法を提供することである。また、本発明の別の課題は、そのような基板洗浄装置に用いられるノズルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、処理液を供給する処理液供給部と接続された第1供給口と、ガスを供給するガス供給部と接続された第2供給口と、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3供給口と、前記処理液を吐出する第1吐出口と、第1混合位置において、前記ガスと前記第1吐出口より吐出された前記処理液とを混合して第1混合流体を生成するよう、前記ガスを吐出する第2吐出口と、前記第1吐出口からの距離が前記第1混合位置よりも離れた第2混合位置において、前記第1混合流体と前記表面張力抑制ガスとを混合して第2混合流体を生成するよう、前記表面張力抑制ガスを吐出する第3吐出口と、を有するノズルを備え、前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する基板洗浄装置が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、が内部に設けられたノズルを備え、前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路は、前記第1流路から出た処理液と、前記第2流路から出たガスとが第1混合位置において混合されて第1混合流体が生成され、前記第1混合流体と前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが前記第1混合流体の流れにおける前記第1混合位置より下流の第2混合位置において混合されて第2混合流体が生成されるように構成され、前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、前記第1流路および前記第2流路と連結されて、前記処理液と前記ガスとが混合された第1混合流体が流れる第4流路と、が内部に設けられたノズルを備え、前記第3流路および前記第4流路は、前記第4流路から出た第1混合液体と、前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが混合されて第2混合流体が生成されるように構成され、前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置が提供される。
【0012】
本発明の別の態様によれば、処理液を供給する処理液供給部と接続された第1流路と、ガスを供給するガス供給部と接続された第2流路と、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスを供給する表面張力抑制ガス供給部と接続された第3流路と、前記第1流路、前記第2流路および前記第3流路と連結された第4流路と、が内部に設けられたノズルを備え、前記第1乃至第4流路は、前記第1流路から出た処理液と、前記第2流路から出たガスとが第1混合位置において混合されて前記第4流路内で第1混合流体が生成され、前記第1混合流体と前記第3流路から出た表面張力抑制ガスとが前記第1混合流体の流れにおける前記第1混合位置より下流の第2混合位置において混合されて前記第4流路内で第2混合流体が生成されるように構成され、前記第2混合流体の噴流で基板を洗浄する、基板洗浄装置が提供される。
【0013】
液体状態の表面張力抑制剤を気化させて前記表面張力抑制ガスを生成する気化装置を備えるのが望ましい。
【0014】
前記気化装置は、インジェクション方式で、前記液体状態の表面張力抑制剤を気化させて前記表面張力抑制ガスを生成してもよい。
【0015】
前記気化装置は、ベーキング方式、バブリング方式、または、ベーパライザであってもよい。
【0016】
前記表面張力抑制ガスが通過するフィルタを備え、前記フィルタを通過した表面張力抑制ガスが前記第1混合流体と混合されるのが望ましい。
【0017】
前記処理液を200~400ml/分でノズルに供給する洗浄流体供給部を備えるのが望ましい。
【0018】
前記ガスを100~200SLMでノズルに供給する洗浄流体供給部を備えるのが望ましい。
【0019】
前記処理液は、超純水または二酸化炭素含有水であり、前記ガスは、不活性ガスまたは圧縮乾燥空気であり、前記表面張力抑制ガスは、IPAガスであるのが望ましい。
【0020】
前記不活性ガスは窒素ガスであるのが望ましい。
【0021】
前記第2混合流体における前記IPAガスの濃度、または、前記第2混合流体における前記IPAガスおよび前記窒素ガスの合計濃度は、10~30%であるのが望ましい。
【0022】
本発明の別の態様によれば、基板を研磨する基板研磨装置と、研磨後の基板を洗浄する、上記基板洗浄装置と、を備える基板処理装置が提供される。
【0023】
本発明の別の態様によれば、
処理液と、ガスとを混合して第1混合流体を生成する第1混合工程と、前記第1混合流体が生成された後に、前記処理液の表面張力を低下させるための表面張力抑制ガスと、前記第1混合流体とを混合して第2混合流体を生成する第2混合工程と、前記第2混合流体の噴流を基板に噴射して前記基板を洗浄する洗浄工程と、を備える基板洗浄方法が提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、基板洗浄装置に用いられるノズルであって、前記ノズルの外面に向かって開放された第1入口と、前記ノズルの内部に設けられた第1出口と、を有する第1流路と、前記ノズルの外面に向かって開放された第2入口と、前記ノズルの内部に設けられた第2出口と、を有する第2流路と、前記ノズルの外面に向かって開放された第3入口と、前記ノズルの底面に向かって開放された第3出口と、を有する第3流路と、前記ノズルの内部において前記第1出口および前記第2出口と連結された第4入口と、前記ノズルの底面に向かって開放された第4出口と、を有する第4流路と、が前記ノズルの内部に設けられ、前記第4流路は、前記ノズルのほぼ中央にあり、少なくとも前記第4出口の近傍は、前記ノズルの底面に近づくほど径が大きく、前記第3流路は、前記第3流路より前記ノズルの径方向外側にあり、少なくとも前記第3出口の近傍は、前記ノズルの底面に近づくほど前記ノズルの中央に近づくよう傾斜している、ノズルが提供される。
【発明の効果】
【0025】
洗浄力を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態に係る基板洗浄装置10を備える基板処理装置の概略構成図。
図2A】一実施形態に係る基板洗浄装置10の概略構成図。
図2B】基板洗浄装置10の主要部の上面図。
図3】洗浄流体供給装置30の概略構成図。
図4A】ノズル15の概略断面図。
図4B図4Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図。
図4C図4Aの変形例であるノズル15の概略断面図
図5A図4Aの変形例であるノズル15の概略断面図。
図5B図5Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図。
図6A図4Aの変形例であるノズル15の概略断面図。
図6B図6Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図。
図7】一実施形態に係る基板洗浄工程図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、IPAを含む流体で基板を洗浄する際、以下の理由により、液体状態のIPAでなく気体状態のIPAを用いるのが好適であることに本願発明者らは想到した。
【0028】
通常、防爆対策や静電気対策の観点から、SUS製の容器に充填された状態で液体状態のIPAが製造メーカーから供給される。SUS製の容器の内面からFe系微粒子が溶け出すため、IPAにはそのような微粒子が含まれている。洗浄時に微粒子が基板に付着することで基板を逆汚染させてしまうことがあり、洗浄力を十分に向上させることが困難な一因となってしまう。
【0029】
液体状態のIPAをフィルタに通すことで微粒子を除去できる。しかし、除去できるのはフィルタの孔径と同程度以上の粒子に限られ、フィルタの孔径より小さな微粒子はほとんど除去されない。
【0030】
一方、液体状態のIPAを気化させた気体状態のIPAをフィルタに通すことで、フィルタの孔径よりも十分に小さな微粒子も除去できる。液体状態のIPAと気体状態のIPAとを比較すると、後者の方が微粒子のブラウン運動や慣性運動が活発であり、かつ、微粒子とフィルタ材との付着力も大きいためである。
【0031】
以上から、本願発明では、気体状態のIPA(以下、「IPAガス」という)を基板洗浄に用いることとした。なお、IPAガスはIPA蒸気とも呼ばれる。
【0032】
次に、超純水、窒素ガスおよびIPAから構成される流体で基板を洗浄する際、まず超純水と窒素ガスとを混合し、次いでIPAガスを混合するのが好適であることに本願発明者らは想到した。予め超純水と窒素ガスとを混合することにより、超純水が微粒化される。そのため、超純水の総表面積が大きくなり、IPAガスが超純水に溶解しやすいためである。
【0033】
これに対し、まず窒素ガスとIPAガスとを混合し、次いで超純水を混合することも考えられる。しかし、この混合順の場合、窒素ガスとIPAガスの混合によってIPA気体濃度が希釈されてしまい、その後に超純水を微粒化するため、IPAガスが超純水に十分には溶解しない。
【0034】
また、まず超純水とIPAとを混合し、次いで窒素ガスを混合することも考えられる。しかし、この混合順の場合、超純水が微粒化されておらず、総表面積が大きくない状態で気体ガスと混合されるので、IPAガスが超純水に十分には溶解しない。
【0035】
以上から、本願発明では、まず超純水と窒素ガスとを混合し、次いでIPAガスを混合した流体を洗浄に用いることとした。
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0036】
図1は、一実施形態に係る基板洗浄装置10を備える基板処理装置の概略構成図である。本基板処理装置は、直径300mmあるいは450mmの半導体ウエハ、フラットパネル、イメージセンサなど、種々の基板を処理する。
【0037】
基板処理装置は、略矩形状のハウジング1と、多数の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート2と、1または複数(図1に示す態様では4つ)の基板研磨装置3と、複数(図1に示す態様では2つ)の基板洗浄装置10と、基板乾燥装置4と、搬送機構5a~5dと、制御部6とを備えている。
【0038】
基板研磨装置3はロードポート2から投入される基板を研磨する。例示的な一実施態様においては、基板研磨装置3における研磨処理は、化学的機械的研磨処理(CMP処理)であってもよい。例示的な別の一実施態様においては、基板研磨装置3における研磨処理は、ベベル研磨処理や全面裏面研磨処理であってもよく、あるいは、基板表面の状態を乾燥させたままで研削処理を行う処理であってもよい。基板洗浄装置10は研磨された基板を洗浄する。例示的な一実施態様においては、基板洗浄装置10に導入される基板は、基板研磨装置3で研磨され基板表面が湿った状態を維持したまま基板研磨装置3から搬出されて、基板洗浄装置10に導入される。基板乾燥装置4は洗浄された基板を乾燥させる。搬送機構5a~5dは各装置間で基板を搬送する。制御部6は基板処理装置の各機器の動きを制御する。制御部6は、所定のプログラムを格納したメモリと、メモリのプログラムを実行するCPU(Central processing Unit)と、CPUがプログラムを実行することで実現される制御モジュールとを有してもよい。
【0039】
図2Aは、一実施形態に係る基板洗浄装置10の概略構成図である。図2Bは、基板洗浄装置10の主要部の上面図である。この基板洗浄装置10は、2流体ジェット洗浄、すなわち、超純水と窒素ガスの噴流を基板に噴射することで基板洗浄を行うものである。
【0040】
図2Aに示すように、基板洗浄装置10は、スピンチャック11(基板保持部)と、ステージ回転軸12と、ステージ昇降・回転駆動機構13と、制御部14とを備えている。なお、この制御部14は図1の制御部6であってもよいし、これとは別個に設けられてもよい。
【0041】
スピンチャック11は洗浄対象の基板Wを水平方向に保持する。スピンチャック11は鉛直方向に延びるステージ回転軸12に取り付けられている。よって、ステージ回転軸12の回転に伴ってスピンチャック11に保持された基板Wが水平面内で回転する。ステージ回転軸12はステージ昇降・回転駆動機構13によって昇降したり、回転したりする。ステージ昇降・回転駆動機構13は制御部14によって制御される。
【0042】
また、基板洗浄装置10は、洗浄流体供給装置30と、ノズル15と、洗浄アーム16と、洗浄アーム揺動軸17と、洗浄アーム昇降・揺動機構18と、薬液供給機構19と、超純水供給機構20とを備えている。
【0043】
洗浄流体供給装置30はノズル15に洗浄流体を供給する。より具体的には、洗浄流体供給装置30の超純水供給管31、窒素ガス供給管32およびIPAガス供給管33から、それぞれ超純水、窒素ガスおよびIPAガスがノズル15に供給される。ノズル15は、回転する基板Wの上面に、超純水、窒素ガスおよびIPAガスを含む洗浄流体を供給する。洗浄流体供給装置30およびノズル15の構成例については後述する。
【0044】
ノズル15の上端は洗浄アーム16の先端近傍に取り付けられている。洗浄アーム16の他端側は鉛直方向に延びる洗浄アーム揺動軸17に取り付けられている。よって、洗浄アーム揺動軸17の回転に伴って、洗浄アーム揺動軸17を中心として洗浄アーム16が揺動し、これによってノズル15が揺動する。洗浄アーム揺動軸17は洗浄アーム昇降・揺動機構18によって昇降したり、揺動したりする。洗浄アーム昇降・揺動機構18は制御部14によって制御される。
【0045】
薬液供給機構19および超純水供給機構20は、回転する基板Wの上面に、薬液および超純水をそれぞれ供給する。
【0046】
図2Bに示すように、洗浄を行わない時はノズル15は退避位置P1にある。洗浄時、ノズル15は洗浄流体を噴射しながら基板Wの中心付近P2と端付近P3との間(あるいは端付近と反対側の端付近との間)を揺動する。
【0047】
図2Aに戻り、基板洗浄装置10は、プロセスカップ21と、排液パイプ22と、フィルタファンユニット23と、排気ダクト24とを備えている。
【0048】
プロセスカップ21はスピンチャック11に保持された基板Wの側方を覆う。洗浄に用いられる薬液や超純水といった液体は、プロセスカップ21の外側に飛散することなく排液パイプ22に導かれ、排液ユーティリティに流れる。
【0049】
また、基板洗浄装置10の上部にフィルタファンユニット23が設置され、清浄な空気がフィルタファンユニット23を介して基板洗浄装置10内に導かれる。そして、空気は排気ダクト24から排液ユーティリティへ流れる。
【0050】
図3は、洗浄流体供給装置30の概略構成図である。
【0051】
洗浄流体供給装置30は、超純水供給部34と、フィルタ35と、電磁弁36と、超純水供給管31とを有する。フィルタ35および電磁弁36を介して、超純水供給部34からの超純水が超純水供給管31からノズル15に供給される。超純水がフィルタ35を通ることにより超純水中の微粒子が除去される。ノズル15への超純水の供給量や供給のオン・オフが電磁弁36によって制御される。
【0052】
また、洗浄流体供給装置30は、窒素ガス供給部37と、フィルタ38と、電磁弁39と、窒素ガス供給管32とを有する。フィルタ38および電磁弁39を介して、窒素ガス供給部37からの窒素ガスが窒素ガス供給管32からノズル15に供給される。窒素ガスがフィルタ38を通ることにより窒素ガス中の微粒子が除去される。ノズル15への窒素ガスの供給量や供給のオン・オフが電磁弁39によって制御される。
【0053】
さらに、洗浄流体供給装置30は、液体IPA供給部3Aと、フィルタ3Bと、窒素ガス供給部3Cと、フィルタ3Dと、気化装置3Eと、フィルタ3Fと、ヒーターまたは保温材3Gと、IPAガス供給管33とを有する。
【0054】
液体IPA供給部3Aからの液体IPAはフィルタ3Bを介して気化装置3Eに流入する。液体IPAガスがフィルタ3Dを通ることにより、液体IPA中の比較的大きな微粒子が除去される。より具体的には、液体IPAには上述したSUS製の容器に由来するFe系微粒子などが含まれている。そのような微粒子のうち、フィルタ3Bの孔径と同程度の微粒子がフィルタ3Bによって除去される。一方、フィルタ3Bの孔径より小さな微粒子はフィルタ3Bを通過するため、液体IPAに含まれたまま気化装置3Eに流入する。
【0055】
また、窒素ガス供給部3Cからの窒素ガスはフィルタ3Dを介して気化装置3Eに流入する。窒素ガスがフィルタ38を通ることにより窒素ガス中の微粒子が除去される。
【0056】
そして、気化装置3Eは、窒素ガスをキャリアガスとして、液体IPAを気化して気体IPAを生成する。
【0057】
気体IPAはフィルタ3Fを介してIPAガス供給管33からノズル15に供給される。気体IPAガスがフィルタ3Fを通ることにより、気体IPA中の含まれていた小さな微粒子も除去される。なお、気体IPAが小さな微粒子を含まない場合、フィルタ3Fを省略することもできる。
【0058】
気体IPAが通る部分、すなわち気化装置3E、フィルタ3F、気化装置3Eとフィルタ3Fの間の配管、および、IPAガス供給管33の少なくとも一部は、気化したIPAが液体に戻るのを抑制すべく、ヒーターまたは保温材3Gが設けられるのが望ましい。
【0059】
なお、気化装置3Eの構成に特に制限はない。例えば、気化装置3Eは、液体IPAが充填された容器の液層内にキャリアガスとしての窒素ガスを通過させ、窒素ガス中に気体IPAを混合させるバブリング方式で液体IPAを気化させてもよい。バブリング方式によれば、混合後の気体における気体IPAの濃度は飽和蒸気圧によって決まり、室温では約4%である。
【0060】
また、気化装置3Eは、予め液体IPAを加熱し、その後に圧力を下げるインジェクション方式で液体IPAを気化させてもよい。例えば、株式会社堀場エステック (HORIBA STEC, Co., Ltd.)製の液体材料気化システムMV-2000シリーズを気化装置3Eとして適用できる。なお、インジェクション方式として、キャリアガスを使用しないタイプ(例えば、同社製ダイレクトインジェクションVCシリーズ)もあり、その場合、窒素ガス供給部3Cおよびフィルタ3Dは不要である。インジェクション方式の場合、混合後の気体における気体IPAの濃度を室温で約20%まで高くすることができる。
【0061】
その他、気化装置3Eとして、ベーキング方式(例えば、コンパクトベーキングシステ ムLSCシリーズ)、ベーパライザ(例えば、同社製大流量ベーパライザLEシリーズ )を適用してもよい。
【0062】
図4Aは、ノズル15の概略断面図である。また、図4Bは、図4Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図である。このノズル15は、超純水と窒素ガスとの混合をノズル15の外側(下流)で行い、これらの混合流体とIPAガスとの混合もノズル15の外側(下流)で行うものである。
【0063】
ノズル15には、超純水が通る流路41と、窒素ガスが通る流路42と、IPAガスが通る流路43とが内部に設けられている。また、ノズル15内の側壁44によって流路41と流路42とが隔てられ、側壁45によって流路42と流路43とが隔てられる。
【0064】
流路41はノズル15のほぼ中心に位置する。流路41の水平方向(基板Wと平行な方向)の断面は概略円形である。流路41は鉛直方向に延びており、ノズル15の上面から下面に達している。
【0065】
流路41の上端である入口41Iはノズル15の外面上方に向かって開放されており、流路41の下端である出口41Oはノズル15の底面に向かって開放されている。そして、流路41の入口41Iには超純水供給管31が接続され、例えば200~400ml/分で超純水が流路41に供給される。そして、超純水は流路41の出口41Oから出る。なお、入口41Iは供給口とも言える。他の入口も同様である。
【0066】
流路42は流路41の外側において、流路41と同心状に位置する。流路42の水平方向の断面は概略環状である。流路42は、ノズル15の上面から下面近傍まで延びる上部分42aと、当該下面近傍部分からノズル15の下面まで達する下部分42bとを有する。下部分42bの内面(側壁44側)は鉛直方向に延びている。一方、下部分42bの外面(側壁45側)は先細であり、下方がノズル15の中心に向かうよう傾斜している。
【0067】
流路42の上端である入口42Iはノズル15の外面上方に向かって開放されており、流路42の下端である出口42Oはノズル15の底面に向かって開放されている。そして、流路42の入口42Iには窒素ガス供給管32が接続され、例えば100~200SLM(Standard Litter per Minute)で窒素ガスが流路42に供給される。そして、窒素ガスは流路42の出口42Oから出る。なお、出口42Oは吐出口とも言える。他の出口も同様である。
【0068】
流路43は流路42の外側において、流路42および流路41と同心状に位置する。流路43の水平方向の断面は概略環状である。流路43は、ノズル15の上面から下面近傍まで延びる上部分43aと、当該下面近傍部分からノズル15の下面まで達する下部分43bとを有する。下部分43bは下方がノズル15の中心に向かうよう傾斜している。流路43の下端と流路42の下端は同一平面上にあってよい。
【0069】
流路43の上端である入口43Iはノズル15の外面上方に向かって開放されており、流路43の下端である出口43Oはノズル15の底面に向かって開放されている。そして、流路43の入口43IにはIPAガス供給管33が接続され、IPAガスが流路43に供給される。そして、IPAガスは43Iの出口43Oから出る。
【0070】
以上の構成のノズル15において、流路41の出口41Oから出た超純水と、流路42の出口42Oから出た窒素ガスは、ノズル15の直下(第1混合位置)で混合される(図4B参照)。これにより、超純水と窒素ガスの混合流体、より具体的には窒素ガスによって超純水が微粒化された流体が生成される。この流体はまだIPAガスを含んでいない。
【0071】
その後、この混合流体と、流路43の出口43Oから出たIPAガスとが、基板Wの上方(第2混合位置)にて混合される。この混合流体の噴流が基板W上に到達し、洗浄に用いられる。混合流体におけるIPAガスの濃度(あるいは窒素ガスとIPAガスの合計濃度)は10~30%程度であるのが望ましい。なお、第2混合位置は出口410からの距離が第1混合位置よりも離れている。
【0072】
なお、ノズル15や流路41~43の形状などは図4Aに示すものに限られない。すなわち、流路41から出た超純水と、流路42から出た窒素ガスとが混合されて混合流体が生成され、その混合流体と流路43から出たIPAガスとが混合されて洗浄用の混合流体が生成されるよう、流路41~43が構成されればよい。
【0073】
また、図4Aでは、流路41の出口41Oが流路42の出口42Oより下方に位置する。言い換えると、流路41はノズル15の下面から突出している。この場合、窒素ガスは側壁44に沿って流れるので、窒素ガスが超純水に直角に近い方向で当たる成分が少ない。そのため、混合流体の直進性がよく、速度があまり低下することなく基板Wに到達する。よって、付着力が強い異物を基板Wから除去できる。
【0074】
一方、図4Cに示すように、流路41の出口41Oと流路42の出口42Oが同一平面上にあってもよい。この場合、窒素ガスは開放空間に吐出されるので、超純水に対して直角に近い(水平方向)方向で当たる成分がある。そのため、超純水の液滴(ミスト)が拡散し、基板Wの広い範囲に洗浄液を供給できる。よって、付着力がそれほど強くない異物を基板Wから効率よく除去できる。
【0075】
図5Aは、図4Aの変形例であるノズル15の概略断面図である。また、図5Bは、図5Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図である。このノズル15は、超純水と窒素ガスとの混合をノズル15内で行い、これらの混合流体とIPAガスとの混合をノズル15の外側(下流)で行うものである。
【0076】
ノズル15には、超純水が通る流路51と、窒素ガスが通る流路52と、超純水と窒素ガスとの混合流体が流れる流路53と、IPAガスが通る流路54とが内部に設けられている。また、ノズル15内の側壁55によって流路51と流路52とが隔てられ、側壁56によって流路53と流路54とが隔てられる。
【0077】
流路51はノズル15のほぼ中心に位置する。流路51の水平方向の断面は概略円形である。流路51はノズル15の上面から鉛直方向に延びているが、ノズル15の下面には達していない。
【0078】
流路51の上端である入口51Iはノズル15の外面上方に向かって開放されているが、流路51の下端である出口51Oはノズル15の内部に設けられる。そして、流路51の入口51Iには超純水供給管31が接続され、例えば200~400ml/分で超純水が流路51に供給される。そして、超純水は流路51の出口51Oから出る。
【0079】
流路52は、水平部分52a、上部分52b、中部分52cおよび下部分52dから構成される。水平部分52aはノズル15の側面から水平方向に延びて、上部分52bの側面に達している。流路52の上部分52b、中部分52cおよび下部分52dは、流路51の外側において流路51と同心状に位置しており、これらの水平方向の断面は概略環状である。上部分52bは鉛直方向に延びる。中部分52cは先細であり、下方がノズル15の中心に向かうよう傾斜している。下部分52dは鉛直方向に延びているが、ノズル15の下面には達していない。流路52の下面(すなわち、出口52O)は流路51の下面(すなわち、出口51O)とほぼ同一平面上にあってよい。
【0080】
流路52の一端である入口52Iはノズル15の外面側方に向かって開放されているが、流路52の下端である出口52Oはノズル15の内部に設けられる。そして、水平部分52aの入口52Iには窒素ガス供給管32が接続され、例えば100~200SLMで窒素ガスが流路52に供給される。そして、窒素ガスは流路52の出口52Oから出る。
【0081】
流路53は流路51および流路52の下方に位置する。そして、流路53の上端は流路51および流路52と連結される。流路53は鉛直方向に延びて、下端はノズル15の下面に達している。流路53の水平方向の断面は概略円形である。また、流路53は全体あるいは少なくとも下端の近傍が末広がりとなっており、下面ほど径が大きくなっている。このような形状により、流路53内で、流路31から供給される超純水と、流路52から供給される窒素ガスとが十分に混合されて混合流体が形成される。
【0082】
流路53の上端である入口53Iはノズル15の内部に設けられるが、流路53の下端である出口53Oはノズル15の底面に向かって開放されている。そして、流路53の上端において、流路51から超純水が流れ込み、流路52から窒素ガスが流れ込む。そして、超純水と窒素ガスの混合流体は、流路53の出口53Oから出る。
【0083】
流路54は、水平部分54a、上部分54bおよび下部分54cから構成される。水平部分54aはノズル15の側面から水平方向に延びて、上部分54bの側面に達している。流路54の上部分54bおよび下部分54cは、流路53の外側において流路53と同心状に位置しており、これらの水平方向の断面は概略環状である。上部分54bは鉛直方向に延びる。下部分54cは下方がノズル15の中心に向かうよう傾斜している。このような形状により、IPAガスと、超純水および窒素ガスの混合流体と、の混合流体が速やかに形成され、下方に噴射される。流路54の下端と流路53の下端は同一平面上にあってよい。
【0084】
流路54の入口54Iはノズル15の外面側方に向かって開放されているが、流路54の下端である出口54Oはノズル15の底面に向かって開放されている。そして、水平部分54aの一端である入口54IにはIPAガス供給管33が接続され、IPAガスが流路54に供給される。そして、IPAガスは54の出口54Oから出る。
【0085】
以上の構成のノズル15において、流路51の出口51Oから出た超純水と、流路52の出口52Oから出た窒素ガスは、流路53内の所定の位置(第1混合位置)で混合される(図5B参照)。これにより、超純水と窒素ガスの混合流体、より具体的には窒素ガスによって超純水が微粒化された流体が生成される。流路53内の流体はまだIPAガスを含んでいない。
【0086】
その後、流路53の出口53Oから出たこの混合流体と、流路54の出口54Oから出たIPAガスと、がノズル15の下方かつ基板Wの上方(第2混合位置)で混合される。この混合流体の噴流が基板W上に到達し、洗浄に用いられる。なお、第2混合位置は出口510からの距離が第1混合位置よりも離れている。
【0087】
なお、ノズル15や流路51~54の形状などは図5Aに示すものに限られない。すなわち、流路51から出た超純水と流路52から出た窒素ガスとがノズル15内の流路53で混合され、かつ、流路53から出たこの混合流体と、流路54から出たIPAガスとがノズル15の下方で混合されて洗浄用の混合流体が生成されるよう、流路51~54が構成されればよい。
また、流路54を設けずに、IPAガスを吐出するノズルをノズル15とは別に設けて、流路53から出たこの混合流体と、IPAガスとがノズル15の下方で混合されるようにしてもよい。
【0088】
このような構成のノズル15によれば、窒素ガスの圧力および流量の影響をあまり受けることなく、超純水と窒素ガスとの混合流体にIPAガスを混合させることができる。
【0089】
図6Aは、図4Aの変形例であるノズル15の概略断面図である。また、図6Bは、図6Aのノズル15に流体が流れる様子を模式的に示した図である。このノズル15は、超純水と窒素ガスとの混合をノズル15内で行い、これらの混合流体とIPAガスとの混合もノズル15内で行うものである。
【0090】
ノズル15には、超純水が通る流路61と、窒素ガスが通る流路62と、IPAガスが通る流路63と、超純水と窒素ガスとIPAガスとの混合流体が流れる流路64とが内部に設けられている。また、ノズル15内の側壁65によって流路61と流路62とが隔てられる。流路61,62の構成は図5Aの流路51,52と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0091】
流路63は、水平部分63a、上部分63bおよび下部分63cから構成される。水平部分63aはノズル15の側面から水平方向に延びて、上部分63bの側面に達している。流路63の上部分63bよび下部分63cは、流路64の外側において流路64と同心状に位置しており、これらの水平方向の断面は概略環状である。上部分63bは鉛直方向に延びる。下部分63cは下方が流路64に向かうよう傾斜している。そして、下部分63cの出口63Oは流路64に連結されている。
【0092】
流路63の入口63Iはノズル15の外面側方に向かって開放され、流路63の出口63Oはノズル15の内部に設けられる。そして、水平部分63aの一端である入口63IにはIPAガス供給管33が接続され、IPAガスが流路63に供給される。そして、IPAガスは流路63の出口63Oから出る。
【0093】
流路64は流路61および流路62の下方に位置する。そして、流路63の上端は流路61および流路62と連結される。また、流路64は、上端と下端との間の位置において、流路63と連結される。流路64は鉛直方向に延びて、下端はノズル15の下面に達している。流路64の水平方向の断面は概略円形である。また、流路64は末広がりとなっており、下面ほど径が大きくなっている。
【0094】
流路64の上端において、流路61から超純水が流れ込み、流路62から窒素ガスが流れ込む。さらに、流路64には流路63からIPAガスが流れ込み、超純水と窒素ガスとの混合流体に対して、さらにIPAガスが混合される。そして、超純水と窒素ガスとIPAガスの混合流体は、流路64の下端である出口64Oから出る。
【0095】
以上の構成のノズル15において、流路61の出口61Oから出た超純水と、流路62の出口62Oから出た窒素ガスは、流路63の上部(第1混合位置)で混合される。これにより、超純水と窒素ガスの混合流体、より具体的には窒素ガスによって超純水が微粒化された流体が生成される。この時点の流体はまだIPAガスを含んでいない。
【0096】
その後、さらに流路63の出口63Oから出たIPAガスが流路64に流れ込み、流路64内の所定位置(第2混合位置)において、超純水と窒素ガスとの混合流体に、IPAガスが混合される。この混合流体の噴流が流路64の下端である出口64Oから出て基板W上に到達し、洗浄に用いられる。なお、第2混合位置は出口610からの距離が第1混合位置よりも離れている。
【0097】
なお、ノズル15や流路61~64の形状などは図6Aに示すものに限られない。すなわち、まず、流路61から出た超純水と、流路62から出た窒素ガスとが混合されて流路64内で混合流体が生成され、その後、この混合流体と流路63から出たIPAガスとが混合されて流路64内で洗浄用の混合流体が生成されるよう、流路61~64が構成されればよい。言い換えると、流路64には、ある位置において流路61,62が連結され、その下流の位置において流路63が連結されればよい。
【0098】
以上、3つのノズル15を例示したが、洗浄流体供給の態様はこれらに限られるものではない。例えば、ノズル15の上流において、超純水と窒素ガスとが混合された混合流体がノズル15に供給され、ノズル15の内部(あるいはノズル15の下流)でさらに気体IPAが混合されるような構成であってもよい。あるいは、ノズル15の上流において、超純水と窒素ガスとが混合された混合流体がノズル15に供給され、さらに気体IPAが混合された混合流体がノズル15に供給されるような構成であってもよい。ただし、十分な勢いで基板Wに洗浄流体を供給するためには、ノズル15内あるいはノズル15の下流で混合が行われるのが望ましい。
【0099】
図7は、一実施形態に係る基板洗浄工程図である。まず、超純水と窒素ガスとを混合する(ステップS1)。基板洗浄装置10は超純水と窒素ガスとを混合する第1混合手段を備えているとも言える。この混合は、ノズル15に入る前に行われてもよいし、ノズル15内で行われてもよいし(例えば、図5Bおよび図6B)、ノズル15から出た後で行われてもよい(例えば、図4B)。
【0100】
その後、ステップS1で生成された流体(第1混合流体)に、IPAガスを混合する(ステップS2)。基板洗浄装置10は第1混合流体とIPAガスとを混合する第2混合手段を備えているとも言える。この混合はステップS1での混合より下流側で行われればよく、ノズル15に入る前に行われてもよいし、ノズル15内で行われてもよいし(例えば、図6B)、ノズル15から出た後で行われてもよい(例えば、図4Bおよび図5B)。
【0101】
そして、ステップS2で生成された流体(第2混合流体)の噴流が基板Wの表面に供給され、基板Wが洗浄される(ステップS3)。
【0102】
このように、本実施形態では、液体状態のIPAでなく、IPAガスを用いる。IPAを気体状態にしてフィルタ3F(図3)を通すことで、SUS製の容器から溶け出したFe系微粒子などを除去できるため、逆汚染が抑制されて洗浄力が向上する。
【0103】
また、本実施形態では、まず超純水と窒素ガスとを混合し、その後にIPAを混合する。予め超純水と窒素ガスとを混合することにより、超純水が微粒化される。そのため、超純水の総表面積が大きくなり、より多くのIPAガスが均一に超純水に溶解する。これにより、超純水の表面張力を抑えることができる。したがって、洗浄流体を基板Wに供給した際に、基板表面に沿わないスプラッシュを減らし、基板表面に沿う放射流を増やすことができ、洗浄力が向上する。
【0104】
なお、以上説明した実施形態において、超純水は処理液の一例にすぎず、例えば二酸化炭素ガスを含有する液体(例えば、純水に二酸化炭素ガスを含有させたもの)を処理液として用いることもできる。二酸化炭素ガスを含有する液体を用いることで、基板Wの帯電を抑制できる。ただし、IPAも帯電抑制作用を有するため、二酸化炭素ガスの量は少なくてよい。また、二酸化炭素ガスを含有する液体はある種の配線材料を腐食させる例があることが知られており、その代わりに、同様に帯電抑制作用を有する希釈アンモニア水(例えば、純水にアンモニアガスを含有させたもの)を処理液として用いることもできる。希釈アンモニア水を用いることで、基板Wの帯電を抑制できる。ただし、IPAも帯電抑制作用を有するため、アンモニアガスの量は少なくてよい。
【0105】
また、窒素ガスは不活性ガスの一例にすぎず、他の不活性ガスを用いてもよい。あるいは、例えば基板表面に露出した材料が空気中の酸素により酸化されるなどの懸念が少ない場合は、CDA(圧縮乾燥空気)などを不活性ガスの代替として用いることもできる。さらに、IPAガスは表面張力抑制ガスの一例にすぎず、例えばメタノールなどの各種のアルコール類など、処理液の表面張力を抑制させる任意の気体を表面張力抑制ガスとして用いることができる。
【0106】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0107】
1 ハウジング
2 ロードポート
3 基板研磨装置
4 基板乾燥装置
5a~5d 搬送機構
6 制御部
10 基板洗浄装置
11 スピンチャック
12 ステージ回転軸
13 ステージ昇降・回転駆動機構13
14 制御部
15 ノズル
16 洗浄アーム
17 洗浄アーム揺動軸
18 洗浄アーム昇降・揺動機構
19 薬液供給機構
20 超純水供給機構
21 プロセスカップ
22 排液パイプ
23 フィルタファンユニット
24 排気ダクト
30 洗浄流体供給装置
31 超純水供給管
32 窒素ガス供給管
33 IPAガス供給管
34 純水供給部
35,38,3B,3D,3F フィルタ
36,39 電磁弁
37,3C 窒素ガス供給部
3A 液体IPA供給部
3E 気化装置
3G ヒーターまたは保温材
41~43,51~54,61~64 流路
44,45,55,56,65 側壁
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7