(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】光アイソレータ
(51)【国際特許分類】
G02B 27/28 20060101AFI20221207BHJP
G02F 1/09 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G02B27/28 A
G02F1/09 505
(21)【出願番号】P 2021005930
(22)【出願日】2021-01-18
(62)【分割の表示】P 2016087688の分割
【原出願日】2016-04-26
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 聡明
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-242347(JP,A)
【文献】特開2001-215354(JP,A)
【文献】特開2008-242423(JP,A)
【文献】特開2004-325606(JP,A)
【文献】特開平07-261121(JP,A)
【文献】特開2003-329974(JP,A)
【文献】特開2009-075577(JP,A)
【文献】特開2009-031589(JP,A)
【文献】特開2015-064407(JP,A)
【文献】米国特許第06631220(US,B1)
【文献】特許第6863683(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/28
G02F 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一偏光子、強磁性体から成るファラデー回転子、第二偏光子の順に接合固定した光アイソレータチップと、該光アイソレータチップに磁界を印加するための磁石とを含む光アイソレータであって、
前記光アイソレータチップの入射端面又は出射端面が、レセプタクルの凹部内に接合固定されており、
前記光アイソレータの光軸上における、前記磁石の形成する磁束の中心が、前記ファラデー回転子の前記光軸上の中心位置よりも、前記レセプタクルに接合固定された端面側に位置しているものであり、
前記磁石は、前記レセプタクルに接合固定された光アイソレータチップの端面側と同じ側の端部が、前記レセプタクルに接合固定されているものであり、
前記光アイソレータの光軸上における前記磁石の端部と前記レセプタクルとの接着点の位置が、前記光アイソレータの光軸上における前記光アイソレータチップと前記レセプタクルとの接着点の位置と、前記光アイソレータの光軸上における前記磁石の形成する磁束の中心位置との間にあることを特徴とする光アイソレータ。
【請求項2】
前記光アイソレータチップが前記レセプタクルのスタブに接合固定されたものであることを特徴とする請求項
1に記載の光アイソレータ。
【請求項3】
前記磁石が前記レセプタクルの筐体に接合固定されたものであることを特徴とする請求項1
又は2に記載の光アイソレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信や光計測で用いられる、ファイバ端やレンズ端からの反射光を光源となるレーザへ戻さないようにする為の光学部品である光アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光計測において、半導体レーザから出た光が、伝送路途中に設けられた部材表面で反射し、半導体レーザに戻ってくると、レーザ発振が不安定になる。この反射戻り光を遮断する為に、偏光面を非相反で回転させるファラデー回転子を用いた光アイソレータが用いられる(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
光アイソレータは、例えば、スタブの端面に接合固定され、レセプタクルと一体となる場合もある。このような構成の光アイソレータは、半導体レーザモジュール等に組み込まれて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体レーザモジュールには、コスト低減、省スペース化、軽量化等の要求があり、モジュールを構成する各部品についても同様にコスト低減、省スペース化、軽量化等が要求される。
【0006】
また、半導体レーザモジュールの作製時には、YAG溶接による温度上昇や衝撃、AuSn半田接合による温度上昇等の影響があり、光アイソレータとスタブ等の部材との接合界面が、剥離、破断することもある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、従来に比べ、コストが低減され、省スペース化され、軽量で、かつ、熱膨張等の影響があっても部材との接合信頼性の高い光アイソレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、第一偏光子、強磁性体から成るファラデー回転子、第二偏光子の順に接合固定した光アイソレータチップと、該光アイソレータチップに磁界を印加するための磁石とを含む光アイソレータであって、
前記光アイソレータチップの入射端面又は出射端面が、部材に接合固定されており、
前記光アイソレータの光軸上における、前記磁石の形成する磁束の中心が、前記ファラデー回転子の前記光軸上の中心位置よりも、前記部材に接合固定された端面側に位置しているものであることを特徴とする光アイソレータを提供する。
【0009】
このように、磁石の形成する磁束の中心を、ファラデー回転子の光軸上の中心位置よりも、光アイソレータチップの部材に接合固定された端面側に位置させる構造とすることにより、光アイソレータチップを部材に押し付ける力がはたらくため、部材への接合信頼性の高い光アイソレータとすることができる。また、磁石が小型化されるので、その分、光アイソレータのコストが低減され、省スペース化され、かつ軽量とすることができる。
【0010】
このとき、前記磁石は、前記部材に接合固定された光アイソレータチップの端面側と同じ側の端部が、前記部材に接合固定されているものとすることができる。
【0011】
このように、光アイソレータチップと磁石の同じ側の端部を部材に接合固定することにより、光アイソレータを取り付ける部材を簡易な構造とし、光アイソレータの接合信頼性をより高めることができる。
【0012】
このとき、前記光アイソレータチップが接合固定される部材と前記磁石が接合固定される部材は、一体となって同一部品を構成する部材であることが好ましい。
【0013】
このように、一体となって同一部品を構成する部材に光アイソレータチップと磁石を接合固定することにより、それらから構成される部品を容易に製造することができ、それらの部品を幅広い用途に適用することができる。
【0014】
このとき、前記光アイソレータチップが接合固定される部材を、レセプタクルのスタブとすることができる。
【0015】
このように、光アイソレータチップとレセプタクルのスタブを接合固定すれば、レセプタクルを簡易な構造とすることができ、光アイソレータを接合信頼性のより高いものとすることができる。
【0016】
このとき、前記磁石が接合固定される部材を、レセプタクルの筐体とすることができる。
【0017】
このように、光アイソレータチップとレセプタクルの筐体を接合固定すれば、レセプタクルを簡易な構造とすることができ、光アイソレータを接合信頼性のより高いものとすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来に比べ、接合信頼性が高く、かつ、コストが低減され、省スペース化され、さらには、軽量化された光アイソレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の光アイソレータの一例を示す概略図(
図1(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図1(b))である(実施例1)。
【
図2】本発明の光アイソレータの別の例を示す概略図(
図2(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図2(b))である(実施例2)。
【
図3】本発明の光アイソレータのさらに別の例を示す概略図(
図3(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図3(b))である(実施例3)。
【
図4】本発明の光アイソレータのさらに別の例を示す概略図(
図4(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図4(b))である(実施例4)。
【
図5】従来の光アイソレータの一例を示す概略図(
図5(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図5(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
図5(a)は、従来の光アイソレータを示す概略図である。この光アイソレータ200は、第一偏光子3、強磁性体からなるファラデー回転子4、第二偏光子5をこの順に接合固定した光アイソレータチップ7と、この光アイソレータチップ7に磁界を印加する磁石62を有している。この磁石62は、光アイソレータチップ7を取り囲む円筒形の形状である。光アイソレータ200の光アイソレータチップ7の左端(入射端面又は出射端面)と磁石62の左端がそれぞれ、金属ホルダ11に接合固定されている。
【0022】
光アイソレータ200の光軸は、円筒形の磁石62の中心軸と一致している。磁石62の左右端部の間には磁束が形成され、光軸上における磁束の中心を、磁石中心と定義する。
図5(b)には、部材(金属ホルダ11)に接合固定された従来の光アイソレータ200における、磁束の中心(磁石中心)とファラデー回転子4の光軸上の中心位置(以下、図ではFR中心と表記する)の関係が示されている。従来の光アイソレータ200では、磁束の中心(磁石中心)はファラデー回転子4の光軸上の中心位置よりも右側、すなわち、金属ホルダ11との接合端面側とは反対側に位置していた。また、
図5(b)では、磁石62の金属ホルダ11への接着点(図では磁石接着点と表記する)及び光アイソレータチップ7の金属ホルダ11への接着点(図ではチップ接着点と表記する)も併せて示してある。
【0023】
磁石62が形成する磁界内に置かれたファラデー回転子4には、磁石62から磁力が作用する。ファラデー回転子4の光軸上の中心位置では磁束の中心(磁石中心)に向かう力がはたらく。すなわち、
図5(a)に示された構造では、金属ホルダ11と光アイソレータチップ7を引き離す力がはたらく(
図5(b)の太線矢印を参照)。このため、金属ホルダ11と光アイソレータチップ7の間で剥離や破断が発生しやすくなる。また、光アイソレータ200が高温環境に置かれると、光アイソレータチップ7を金属ホルダ11に接着している接着剤が軟化して固定が不安定になったり、材質による熱膨張率の差により接合部分で応力が発生するなどして、特に剥離や破断が発生しやすい。
【0024】
次に、本発明の光アイソレータの一例を示す概略図(
図1(a))、及びファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図(
図1(b))を参照して、本発明の光アイソレータの構成について以下で説明する。
【0025】
図1(a)に示す本発明の光アイソレータ110は、第一偏光子3、強磁性体から成るファラデー回転子4、第二偏光子5の順に接合固定した光アイソレータチップ7と、この光アイソレータチップ7に磁界を印加するための磁石12とを有している。光アイソレータチップ7の入射端面又は出射端面が、金属ホルダ11に接合固定されている。そして、
図1(b)に示すように、光アイソレータ110の光軸上における、磁石12の形成する磁束の中心(磁石中心)が、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置(FR中心)よりも、金属ホルダ11に接合固定された端面側に位置している。
【0026】
このように、磁束の中心(磁石中心)を、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置よりも、光アイソレータチップ7の接合固定された端面側に位置させる構造とすることにより、光アイソレータチップ7を金属ホルダ11に常に押し付ける力がはたらくため(
図1(b)の太線矢印参照)、光アイソレータ110の部材(金属ホルダ11)への接合信頼性を極めて高くすることができる。また、磁石寸法を短尺化することができるため、コスト低減、省スペース化、軽量化することが可能となる。
【0027】
ファラデー回転子4の中心にはたらく力は、
図1(a)において、ファラデー回転子4に対して左右方向に作用する力のバランスにより決まる。そして、磁束の中心(磁石中心)とファラデー回転子4の光軸上の中心位置が一致する場合には、左右方向に作用する力はほぼ等しくなり、左右のいずれの方向にもほとんど力がはたらかない。換言すれば、磁束の中心(磁石中心)とファラデー回転子4の光軸上の中心位置が一致していない場合には、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置を磁束の中心(磁石中心)に近づけようとする力がはたらくことになる。上述した光アイソレータチップ7を金属ホルダ11に押し付ける力は、このような力である。
【0028】
また、磁石12は、金属ホルダ11に接合固定された光アイソレータチップ7の端面側と同じ側の端部が、金属ホルダ11に接合固定されているものとすることができる。このように、光アイソレータチップ7と磁石12の同じ側の端部を金属ホルダ11に接合固定することにより、光アイソレータ110を取り付ける部材を簡易な構造とし、光アイソレータの接合信頼性(接合安定性)をより高めることができる。
【0029】
図1を参照して説明した本発明の光アイソレータ110では、光アイソレータチップ7と磁石12は、同一部材に接合固定されるが、本発明はこれに限定されず、
図3(a)に示すように、一体となって同一部品を構成する部材に接合固定することもできる。例えば、光アイソレータチップが接合固定される部材を、レセプタクルのスタブとし、磁石が接合固定される部材を、レセプタクルの筐体とすることができる。
【0030】
具体的には、
図3(a)のように、本発明の光アイソレータの上述したのとは別の例の概略図が示され、
図3(b)はファラデー回転子の中心と磁束の中心(磁石中心)の関係を示す模式図である。
図3(a)に示す態様では、光アイソレータチップ7が接合固定される部材を、レセプタクルのスタブ31とすることができる。また、磁石32が接合固定される部材を、レセプタクルの筐体33とすることができる。このような構造とすることにより、レセプタクルを簡易な構造とすることができ、光アイソレータ130の接合信頼性をより高めることができる。
【0031】
また、
図3(a)においても、磁束の中心(磁石中心)は、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置よりも、光アイソレータチップ7の接合固定された端面側に位置している。このため、
図3(b)に示すように、光アイソレータチップ7(ファラデー回転子4)をレセプタクルのスタブ31に押し付ける力がはたらき、光アイソレータの接合信頼性が向上する。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
図1(a)に示す光アイソレータを以下のようにして作製した。まず、ファラデー回転子4として、(TbEu)
2Bi
1Fe
4.8Ga
0.2O
12を用いて、波長1550nmの光に対して、25℃でファラデー回転角度が45degになるように研磨加工し(長さ0.60mm)、さらに両端面に対エポキシのARコート膜を施した。
【0034】
次に、入射面側および出射面側に対空気のARコート膜を施した偏光ガラス(第二偏光子5、第一偏光子3)を準備し、ファラデー回転子4にエポキシ接着剤で接合固定した。これを、0.8mm□(一辺0.8mmの正方形断面を有する)に切断加工して、光アイソレータチップ7とした。
【0035】
そして、金属ホルダ(第1の部材)11に、光アイソレータチップ7の出射端面とSmCo磁石12(外径2mm、内径1.3mm、長さ0.4mm)を接着固定して光アイソレータ110を作製した。このとき、
図1(b)に示すように、磁石12の形成する光軸上の磁束の中心(磁石中心)は、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置(FR中心)よりも、出射端面側(左側)に位置している。また、作製した光アイソレータ110の順方向挿入損失は0.14dB、アイソレーションは43dBであった。
【0036】
実施例1の光アイソレータ110では、比較例1の(後述する)光アイソレータと比較して、磁石の重量、体積、コストを、それぞれ約4/15に低減できた。
【0037】
また、この光アイソレータ110をレーザモジュールに組み込む工程において、温度260℃で1時間経過した際も、光アイソレータチップ7と金属ホルダ11の接着部に異常は見られなかった。
【0038】
(実施例2)
図2(a)に示す光アイソレータを以下のようにして作製した。まず、光アイソレータチップ7を実施例1と同様にして作製した。そして、円盤状の金属ホルダ(第2の部材)21に、光アイソレータチップ7の出射端面とSmCo磁石22(外径2mm、内径1.3mm、長さ0.6mm)を接着固定して、実施例1と同様にして光アイソレータ120を作製した。実施例2では、金属ホルダの形状及びSmCo磁石の大きさが、実施例1とは異なっている。
【0039】
このとき、
図2(b)に示すように、磁石22の形成する光軸上の磁束の中心は、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置(FR中心)よりも、出射端面側(左側)に位置している。また、作製した光アイソレータ120の順方向挿入損失は0.16dB、アイソレーションは42dBであった。
【0040】
実施例2の光アイソレータ120では、後述の比較例1の光アイソレータと比較して、磁石の重量、体積、コストを、それぞれ約6/15に低減できた。
【0041】
また、この光アイソレータ120をレーザモジュールに組み込む工程において、温度260℃で1時間経過した際も、光アイソレータチップ7と円盤状の金属ホルダ21の接着端部に異常は見られなかった。
【0042】
(実施例3)
図3(a)に示す光アイソレータを以下のようにして作製した。まず、光アイソレータチップ7を実施例1と同様にして作製した。そして、レセプタクルのスタブ(第3の部材)31に光アイソレータチップ7の出射端面を接着固定し、また、レセプタクル筐体(第4の部材)33にSmCo磁石32(外径2mm、内径1.3mm、長さ0.8mm)を接着固定して、光アイソレータ130を作製した。実施例3では、光アイソレータチップ7が接合固定される部材と磁石32が接合固定される部材とが一体となって同一部品を構成する部材であり、光アイソレータチップ7が接合固定される部材(スタブ31)の端面が光軸に対して傾斜している点において、実施例1及び2とは異なっている。
【0043】
このとき、
図3(b)に示すように、磁石32の形成する光軸上の磁束の中心は、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置(FR中心)よりも、出射端面側(左側)に位置している。また、作製した光アイソレータ130の順方向挿入損失は0.15dB、アイソレーションは43dBであった。
【0044】
実施例3の光アイソレータ130では、比較例1の光アイソレータと比較して、磁石の重量、体積、コストを、それぞれ約8/15に低減できた。
【0045】
また、この光アイソレータ130をレーザモジュールに組み込む工程において、温度150℃で10時間経過した際も、光アイソレータチップ7とスタブ31の接着部に異常は見られなかった。
【0046】
(実施例4)
図4(a)に示すように、本実施例では、
図3(a)に示す実施例3の光アイソレータ130と比べて、光アイソレータチップ7の入射端面が磁石や部材の端面の位置から外側に突出しないように、レセプタクルの筐体43の一端を延伸させている。SmCo磁石42はSmCo磁石32と同様のものであり、レセプタクルのスタブ41はレセプタクルのスタブ31と同様のものである。
【0047】
これによって、レーザモジュールに組み込み時に、光アイソレータチップ7の端面が、レンズ筐体等に当たって欠け等を発生させる可能性を回避することができる。
【0048】
(比較例1)
図5(a)に示す光アイソレータを以下のようにして作製した。まず、ファラデー回転子4として、(TbEu)
2Bi
1Fe
4.8Ga
0.2O
12を用いて、波長1550nmの光に対して、25℃でファラデー回転角度が45degになるように研磨加工し(長さ0.60mm)、さらに両端面に対エポキシのARコート膜を施した。
【0049】
次に、入射面側および出射面側に対空気のARコート膜を施した偏光ガラス(第二偏光子5、第一偏光子3)を準備し、ファラデー回転子4にエポキシ接着剤で接合固定した。これを、0.8mm□に切断加工して、光アイソレータチップ7とした。
【0050】
そして、金属ホルダ11に、光アイソレータチップ7の出射端面とSmCo磁石62(外径2mm、内径1.3mm、長さ1.5mm)を接着固定して光アイソレータ200を作製した。このとき、光アイソレータチップ7の入射端面は、磁石62の金属ホルダ11に接合固定されていない端部から突出しない構造であることが一般的である。また、磁石62の形成する光軸上の磁束の中心(磁石中心)は、ファラデー回転子4の光軸上の中心位置(FR中心)よりも、入射端面側(右側)に位置している。また、作製した光アイソレータ200の順方向挿入損失は0.15dBであり、アイソレーションは42dBであった。
【0051】
この光アイソレータ200をレーザモジュールに組み込む工程において、温度150℃で10時間経過した際に、光アイソレータチップ7と金属ホルダ11の接着部が破断、剥離した。
【0052】
これは、光アイソレータ200が高温になりエポキシ接着剤が軟化した際に、磁性体であるファラデー回転子4に対して、磁束の中心(磁石中心)方向に力がはたらいたためであると考えられる(
図5(b)を参照)。
【0053】
また、比較例1では、実施例1~4と比較して磁石の重量及び体積が大きいため光アイソレータの小型化(省スペース化、軽量化)と低コスト化が困難であった。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
3…第一偏光子、 4…ファラデー回転子、 5…第二偏光子、
7…光アイソレータチップ、 11…金属ホルダ、
12、22、32、42、62…磁石、
21…円盤状の金属ホルダ、
31、41…レセプタクルのスタブ、 33、43…レセプタクルの筐体、
110、120、130…本発明の光アイソレータ、
200…従来の光アイソレータ。