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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】スライドドア給電装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20221207BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022563989
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001726
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021019840
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】奥村 政宏
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-128137(JP,A)
【文献】特開2019-10950(JP,A)
【文献】特開2011-235752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置であって、
前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、
前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、
前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有し、
前記スライドドア側保持部には、前記スライドドアのインナーパネルに固定されるケーブルホルダーと、前記ケーブルホルダーに固定された状態で前記インナーパネルに設けられた開口を介して車外側に挿入されるホルダーカバーとが備えられており、
前記ケーブルホルダーに設けられた前記電気ケーブルの配索経路を規制する部分が前記ホルダーカバーに収容された
スライドドア給電装置。
【請求項2】
前記ホルダーカバーには、前記ケーブルホルダー側に向かって突出するケーブル当接部が設けられており、
前記ケーブル当接部が前記電気ケーブルの外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制された
請求項1に記載のスライドドア給電装置。
【請求項3】
前記ケーブルホルダーには、前後方向の一方側に曲げ返した前記電気ケーブルの曲げ形状を規制する曲げ形状規制部が設けられており、
前記ケーブル当接部が前記曲げ形状規制部に沿って曲がる前記電気ケーブルの湾曲した部分の外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制された
請求項2に記載のスライドドア給電装置。
【請求項4】
前記ケーブルホルダーには、前後方向の他方側に向かって伸びた前記電気ケーブルの伸び形状を規制する伸び形状規制部が設けられており、
前記伸び形状規制部が前記開口を通過する前記電気ケーブルの開口端縁に近接する部分の外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制された
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項5】
前記スライドドア側保持部には、前記電気ケーブルと前記スライドドアに配索された電装ケーブルにつながる中継ケーブルとを接続するコネクタユニットが備えられており、
前記コネクタユニットが前記電気ケーブルの配索経路に対して車内側に配置された
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項6】
前記コネクタユニットには、前記電気ケーブルと前記中継ケーブルとを電気的に接続する接続端子が収容されており、
前記接続端子が車外側にて前記電気ケーブルと接続されるとともに車内側にて前記中継ケーブルと接続されるように配置された
請求項5に記載のスライドドア給電装置。
【請求項7】
前記ケーブルホルダーには、前記コネクタユニットから所定の間隔を隔てた位置にコネクタユニット遮蔽部が設けられており、
前記コネクタユニット遮蔽部が前記コネクタユニット及び当該コネクタユニットから延出される前記中継ケーブルの車内側に配置された
請求項5又は請求項6に記載のスライドドア給電装置。
【請求項8】
前記スライドドア側保持部には、中継ケーブル用クランプが備えられており、
前記中継ケーブル用クランプが前記ケーブルホルダーと前記コネクタユニットから延出される前記中継ケーブルとを固定した
請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項9】
前記ケーブルホルダーには、前記コネクタユニットよりも前後方向の少なくとも一方側に位置する壁板に前記コネクタユニット側に向かって突出して当該コネクタユニットを固定するコネクタユニット固定部が設けられた
請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項10】
前記ホルダーカバーには、前記コネクタユニットよりも上下方向の少なくとも一方側に位置する壁板に前記コネクタユニット側に向かって突出して当該コネクタユニットの位置を規制するコネクタユニット位置規制部が設けられた
請求項5乃至請求項9のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項11】
前記ケーブルホルダーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの上方側端部に沿って当接するケーブル位置規制部が設けられた
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項12】
前記ケーブルホルダーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの凹部分に引っ掛かるホルダー側係止部が設けられた
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【請求項13】
前記ホルダーカバーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの凹部分に引っ掛かるカバー側係止部が設けられた
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載のスライドドア給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のスライドドアには、パワーウインドウ用モーターやオーディオ用スピーカー等の電装部品が組み込まれている。そのため、これらの電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置が存在している(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このようなスライドドア給電装置は、車体とスライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、車体に固定されて電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、スライドドアに固定されて電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有している。
【0004】
ところで、スライドドアは、衝突安全性等の諸性能を満たしつつも、車内空間を広く確保する観点から可能な限り薄く設計される。そのため、スライドドアのインナーパネルにスライドドア側保持部を取り付けた場合、スライドドア側保持部が車内側に突出してしまうという問題があった。そこで、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮できるスライドドア給電装置が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-158065号公報
【文献】特開2020-137396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮できるスライドドア給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車体からスライドドアに組み込まれた電装部品に対して給電を行うスライドドア給電装置であって、前記車体と前記スライドドアの間に架け渡される電気ケーブルと、前記車体に固定されて前記電気ケーブルの一端側を保持する車体側保持部と、前記スライドドアに固定されて前記電気ケーブルの他端側を保持するスライドドア側保持部とを有し、前記スライドドア側保持部には、前記スライドドアのインナーパネルに固定されるケーブルホルダーと、前記ケーブルホルダーに固定された状態で前記インナーパネルに設けられた開口を介して車外側に挿入されるホルダーカバーとが備えられており、前記ケーブルホルダーに設けられた前記電気ケーブルの配索経路を規制する部分が前記ホルダーカバーに収容されたことを特徴としている。
【0008】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
詳述すると、本願発明に係るスライドドア給電装置においては、ケーブルホルダーに固定されるホルダーカバーを有しており、このホルダーカバーがインナーパネルに設けられた開口を介して車外側に挿入される。また、ケーブルホルダーに設けられた電気ケーブルの配索経路を規制する部分がホルダーカバーに収容される。したがって、電気ケーブルの配索経路を規制する部分(例えば後述する曲げ形状規制部や伸び形状規制部)の少なくとも一部がスライドドアを構成するインナーパネルよりも車外側に配置されることとなり、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さが短くなる。ひいてはインナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0009】
この発明の態様として、前記ホルダーカバーには、前記ケーブルホルダー側に向かって突出するケーブル当接部が設けられており、前記ケーブル当接部が前記電気ケーブルの外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制されてもよい。
【0010】
この発明により、電気ケーブルの配索経路における一部分をホルダーカバーに設けられたケーブル当接部によって規制することができる。そのため、ケーブルホルダー側に電気ケーブルの配索経路を全体にわたって規制するような構造を設ける必要がなくなり、ケーブルホルダーの車内外方向の長さを短縮することができる。ひいてはインナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前後方向の一方側に曲げ返した前記電気ケーブルの曲げ形状を規制する曲げ形状規制部が設けられており、前記ケーブル当接部が前記曲げ形状規制部に沿って曲がる前記電気ケーブルの湾曲した部分の外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制されてもよい。
【0012】
この発明により、電気ケーブルの湾曲した部分をホルダーカバーに設けられたケーブル当接部によって規制することができる。そのため、ケーブルホルダー側に曲げ形状規制部の周面に対向する壁板を設ける必要がなくなり、ケーブルホルダーの車内外方向の長さを短縮することができる。ひいてはインナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前方側に向かって伸びた前記電気ケーブルの伸び形状を規制する伸び形状規制部が設けられており、前記伸び形状規制部が前記開口を通過する前記電気ケーブルの開口端縁に近接する部分の外周面に当接することにより、前記電気ケーブルの配索経路が規制されてもよい。なお、本発明における開口端縁とは、インナーパネルに設けられた開口のエッジ部分を指す。
【0014】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、スライドドアの開閉動作によって電気ケーブルが前後方向の一方側に曲げ返した状態から他方側に向かって伸びた状態に変化した状況において、電気ケーブルの開口端縁に近接する部分をケーブルホルダーに設けられた伸び形状規制部によって規制することができる。そのため、電気ケーブルと開口端縁の接触を防止することができる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記スライドドア側保持部には、前記電気ケーブルと前記スライドドアに配索された電装ケーブルにつながる中継ケーブルとを接続するコネクタユニットが備えられており、前記コネクタユニットが前記電気ケーブルの配索経路に対して車内側に配置されてもよい。
【0016】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブルの配索経路の出口孔を構成する壁板とコネクタユニットの間に電気ケーブルが配索されず、この壁板に対してコネクタユニットを隣接(当接及びほぼ当接した状態を含む)して配置できる。そのため、スライドドア側保持部を前後方向にもコンパクト化することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記コネクタユニットには、前記電気ケーブルと前記中継ケーブルとを電気的に接続する接続端子が収容されており、前記接続端子が車外側にて前記電気ケーブルと接続されるとともに車内側にて前記中継ケーブルと接続されるように配置されてもよい。
【0018】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、コネクタユニットの車外側で各接続端子に向けて電気ケーブルを振り分けることができ、コネクタユニットの車内側で各接続端子から延びる中継ケーブルを集合させて纏めることができる。そのため、スライドドア側保持部を前後方向にもコンパクト化することができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前記コネクタユニットから所定の間隔を隔てた位置にコネクタユニット遮蔽部が設けられており、前記コネクタユニット遮蔽部が前記コネクタユニット及び当該コネクタユニットから延出される前記中継ケーブルの車内側に配置されてもよい。
【0020】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、コネクタユニット及びコネクタユニットから延出される中継ケーブルを保護することができる。また、これらの露出を防いで美感を確保することもできる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記スライドドア側保持部には、中継ケーブル用クランプが備えられており、前記中継ケーブル用クランプが前記ケーブルホルダーと前記コネクタユニットから延出される前記中継ケーブルとを固定してもよい。
【0022】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、簡素な構成でありながら確実にケーブルホルダーと中継ケーブルとを固定することができる。ひいては信頼性を確保しながらも組立性を向上できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前記コネクタユニットよりも前後方向の少なくとも一方側に位置する壁板に前記コネクタユニット側に向かって突出して当該コネクタユニットを固定するコネクタユニット固定部が設けられてもよい。
【0024】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダーとコネクタユニットとを固定することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記ホルダーカバーには、前記コネクタユニットよりも上下方向の少なくとも一方側に位置する壁板に前記コネクタユニット側に向かって突出して当該コネクタユニットの位置を規制するコネクタユニット位置規制部が設けられてもよい。
【0026】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダー及びホルダーカバーに対するコネクタユニットの上下方向へのズレを抑制することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの上方側端部に沿って当接するケーブル位置規制部が設けられてもよい。
【0028】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダー及びホルダーカバーに対する電気ケーブルの上下方向へのズレを抑制することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記ケーブルホルダーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの凹部分に引っ掛かるホルダー側係止部が設けられてもよい。
【0030】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブルの長手方向へのズレを防止できる。ひいては電気ケーブルの接続部分(正確にはフレキシブルフラットケーブルと接続端子との接続部分)に負荷がかかることを防止できる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記ホルダーカバーには、前記電気ケーブル側に向かって突出して当該電気ケーブルの凹部分に引っ掛かるカバー側係止部が設けられてもよい。
【0032】
この発明により、インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブルの長手方向へのズレを防止できる。ひいては電気ケーブルの接続部分(正確にはフレキシブルフラットケーブルと接続端子との接続部分)に負荷がかかることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】スライドドア給電装置の斜視図。
図2】スライドドア側保持部を前方斜め上方側から視た斜視図。
図3】スライドドア側保持部を後方斜め上方側から視た斜視図。
図4】ケーブルホルダーを前方斜め上方側から視た斜視図。
図5図4における矢印Aの方向から視た側面図。
図6図4における矢印Bの方向から視た平面図。
図7】ホルダーカバーを前方斜め上方側から視た斜視図。
図8図7におけるC-C矢視断面図。
図9図7におけるD-D矢視断面図。
図10図2におけるE-E矢視断面図。
図11】スライドドア側保持部の分解斜視図。
図12】コネクタユニットの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
この発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。
【0035】
本願においては、全ての図面で車体100に対する方向を示している。詳しくは矢印Fが前方側を示し、矢印Rが後方側を示し、矢印Iが車内側を示し、矢印Oが車外側を示している。そして、矢印Uが上方側を示し、矢印Lが下方側を示している。
【0036】
図1はスライドドア給電装置1の斜視図である。図1においては、電気ケーブル2を構成するフレキシブルフラットケーブル21が見えるようにケーブル外装部材22の一部を切り欠いた状態としている。図2はスライドドア側保持部4を前方斜め上方側から視た斜視図であり、図3はスライドドア側保持部4を後方斜め上方側から視た斜視図である。図3においては、スライドドア側保持部4を構成するコネクタユニット6が見えるようにホルダーカバー50を想像線(二点鎖線)にて表している。
【0037】
また、図4はケーブルホルダー40を前方斜め上方側から視た斜視図であり、図5図4における矢印Aの方向から視た側面図であり、図6図4における矢印Bの方向から視た平面図である。図7はホルダーカバー50を前方斜め上方側から視た斜視図であり、図8図7におけるC-C矢視断面図であり、図9図7におけるD-D矢視断面図である。そして、図10は、図2におけるE-E矢視断面図であり、図11はスライドドア側保持部4の分解斜視図であり、図12はコネクタユニット6の分解斜視図である。
【0038】
図1に示すように、本願発明に係るスライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、電気ケーブル2と、車体側保持部3と、スライドドア側保持部4とを有している。また、車体側保持部3とスライドドア側保持部4には、それぞれ同じ仕様のコネクタユニット6が備えられている。
【0039】
電気ケーブル2は、車体100とスライドドア200の間に架け渡される。電気ケーブル2は、複数枚のフレキシブルフラットケーブル(以下ではFFCという)21を重ね合わせたものであり、各FFC21は、平行に並べた帯状の導電体をシート状の絶縁体で挟み込んだ構造となっている。かかるFFC21の束は、可撓性を有するケーブル外装部材22によって覆われている。
【0040】
車体側保持部3は、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持するものである。車体側保持部3は、車体100のフロアパネル101に固定されるケーブルホルダー30を有している。ケーブルホルダー30には、電気ケーブル2と車体100に配索された電源ケーブルにつながる中継ケーブル71とを接続するコネクタユニット6が取り付けられている。コネクタユニット6については、後に詳しく説明する。
【0041】
スライドドア側保持部4は、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持するものである。スライドドア側保持部4は、スライドドア200のインナーパネル201に固定されるケーブルホルダー40と、ケーブルホルダー40に固定された状態でインナーパネル201に設けられた開口20hを介して車外側に挿入されるホルダーカバー50とを有している。ケーブルホルダー40には、電気ケーブル2とスライドドア200に配索された電装ケーブルにつながる中継ケーブル72とを接続するコネクタユニット6(図3参照)が取り付けられており、ホルダーカバー50に収容されている。以下に、ケーブルホルダー40及びホルダーカバー50について詳しく説明する。
【0042】
まず、ケーブルホルダー40について説明する。図2及び図3に示すように、ケーブルホルダー40は、支持板部41と、曲げ形状規制部42と、伸び形状規制部43と、コネクタユニット固定部44と、コネクタユニット遮蔽部45と、ケーブルホルダー固定部46,47とを有している。本願においては、支持板部41上に形成された曲げ形状規制部42と伸び形状規制部43の間を通ってコネクタユニット6に至る通路をケーブル挿通路4Pとする。ケーブル挿通路4Pは、電気ケーブル2の配索経路と同義である。
【0043】
支持板部41は、電気ケーブル2が垂れ下がらないように支持する部位である。図4から図6に示すように、支持板部41は、ケーブルホルダー40の底板部分として形成されている。支持板部41は、車体100の前後方向及び車内外方向に広がる板状に形成されており、主に上板411と下板412とで構成されている。上板411は、その上面41sが電気ケーブル2の下方側端部に当接することで電気ケーブル2を支持しており(図2及び図3参照)、下板412は、上板411を補強することで上板411の剛性を確保している。
【0044】
なお、支持板部41を構成する上板411には、前方側端部に傾斜部分(ケーブル案内部413とする)が設けられている。ケーブル案内部413は、車体100の前方側に向かうにつれて徐々に上方側に高くなっており、車体100の前方側に向かって伸びた電気ケーブル2を前方斜め上方側に案内する機能を果たす。
【0045】
曲げ形状規制部42は、車体100の後方側に曲げ返された電気ケーブル2の曲げ形状を規制する部位である。図4から図6に示すように、曲げ形状規制部42は、支持板部41における前後方向の中央部よりも後方側に形成されている。曲げ形状規制部42は、車体100の上下方向に沿う中心軸Cに対して一定半径となる半円筒状に形成されており、主に横板421と縦板422とで構成されている。横板421は、その周面42sが電気ケーブル2の内周面に当接することで電気ケーブル2の曲げ形状を規制しており(図10参照)、縦板422は、横板421を補強することで横板421の剛性を確保している。
【0046】
なお、曲げ形状規制部42の最も上方側に位置する横板421には、車外側に向かって突出する板状部分(ケーブル位置規制部423とする)が設けられている。ケーブル位置規制部423は、前述した上板411に対向しており、ケーブル挿通路4Pに挿通された電気ケーブル2の上方側端部に沿って当接して上下方向へのズレを抑制する機能を果たしている。
【0047】
伸び形状規制部43は、車体100の前方側に向かって伸びた電気ケーブル2の伸び形状を規制する部位である。図4から図6に示すように、伸び形状規制部43は、支持板部41における前後方向の中央部よりも前方側に形成されている。伸び形状規制部43は、車体100の前後方向及び車内外方向に対して傾斜した平面を有する三角柱状に形成されており、主に斜板431と横板432とで構成されている。斜板431は、その側面43sが電気ケーブル2の外周面に当接することで電気ケーブル2の伸び形状を規制しており(図10参照)、横板432は、斜板431を補強することで斜板431の剛性を確保している。
【0048】
なお、伸び形状規制部43から前方側に延出された上板には、上方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。また、伸び形状規制部43から前方側に延出された下板には、下方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。これらの係止爪40fは、後述する係止板部523の係止孔52hに引っ掛かることにより、ホルダーカバー50を固定することができる(図11参照)。
【0049】
コネクタユニット固定部44は、ケーブルホルダー40に対してコネクタユニット6を固定する部位である。図4から図6に示すように、コネクタユニット固定部44は、曲げ形状規制部42における後方側端部から後方側に向かって形成されている。コネクタユニット固定部44は、車体100の上下方向に対して垂直な板部を有する棚形状に形成されており、主に上板441と下板442で構成されている。上板441は、その上面側に車体100の車内外方向に対して平行に延びる係止溝を有しており、下板442は、その下面側に車体100の車内外方向に対して平行に延びる係止溝を有している。これらの係止溝には、後述する係止片622,632が引っ掛かることとなる。
【0050】
なお、コネクタユニット固定部44を構成する上板441と下板442は、曲げ形状規制部42の後方側端部に設けられた壁板424に一体的に形成されている。このため、壁板424は、コネクタユニット6よりも前方側に位置することとなる。また、壁板424は、ケーブル挿通路4Pを構成する壁板425から車外側に向かって延びておらず、ケーブル挿通路4Pの出口孔4eを構成している(図10参照)。
【0051】
さらに、ケーブル挿通路4Pを構成する壁板425には、車外側に向かって突出する台形部分(ホルダー側係止部443とする)が設けられている。換言すると、ケーブル挿通路4Pに挿通された電気ケーブル2側に向かって突出するホルダー側係止部443が設けられている。ホルダー側係止部443は、ケーブル外装部材22における内周面側に設けられた凹部分22aに嵌合して引っ掛かる(図10参照)。
【0052】
コネクタユニット遮蔽部45は、コネクタユニット6及びコネクタユニット6から延出される中継ケーブル72を遮蔽する部位である。図4から図6に示すように、コネクタユニット遮蔽部45は、支持板部41及び曲げ形状規制部42における後方側端部から後方側に向かって形成されている。コネクタユニット遮蔽部45は、車体100の車外側が開放された箱形状に形成されており、主に側板451と囲板452とで構成されている。側板451は、コネクタユニット6及びコネクタユニット6から延出される中継ケーブル72に沿って配置されることでこれらを遮蔽しており、囲板452は、側板451を補強することで側板451の剛性を確保している。また、コネクタユニット6等を囲むことで遮蔽機能の向上を実現している。
【0053】
なお、コネクタユニット遮蔽部45から前方側に延出された上板には、上方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。また、コネクタユニット遮蔽部45から前方側に延出された下板には、下方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。これらの係止爪40fは、後述する係止板部523の係止孔52hに引っ掛かることにより、ホルダーカバー50を固定することができる(図11参照)。
【0054】
さらに、コネクタユニット遮蔽部45の上方側端部における上方側に延出された中継ケーブル72の案内板には、車内側に向かって突出する鍔板部分(バンドクランプ係止部453とする)が設けられている。バンドクランプ係止部453は、案内板とともに中継ケーブル72に巻き付けられた中継ケーブル用クランプ91に沿うことで、この中継ケーブル用クランプ91が上方側に抜けてしまうことを防いでいる。
【0055】
ケーブルホルダー固定部46,47は、インナーパネル201に対してケーブルホルダー40を固定する部位である。図4から図6に示すように、ケーブルホルダー固定部46は、伸び形状規制部43における前方側端部から前方側に向かって形成されている。ケーブルホルダー固定部46は、車体100の車内外方向に対して垂直な板形状に形成されており、その中央部分に固定用のボルトが挿通されるボルト挿通孔46hが設けられている。また、ケーブルホルダー固定部47は、コネクタユニット遮蔽部45における後方側端部から後方側に向かって形成されている。ケーブルホルダー固定部47も、車体100の車内外方向に対して垂直な板形状に形成されており、その中央部分に固定用のボルトが挿通されるボルト挿通孔47hが設けられている。
【0056】
なお、ケーブルホルダー固定部47の上面におけるコネクタユニット遮蔽部45に近接した箇所には、上方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。また、ケーブルホルダー固定部47の下面におけるコネクタユニット遮蔽部45に近接した箇所には、下方側に向かって突出する係止爪40fが設けられている。これらの係止爪40fは、後述する係止板部523の係止孔52hに引っ掛かることにより、ホルダーカバー50を固定することができる(図11参照)。
【0057】
さらに、ケーブルホルダー固定部46は、ケーブルホルダー40における前方側かつ車内側端部に配置されており、ケーブルホルダー固定部47は、ケーブルホルダー40における後方側かつ車内側端部に配置されている。そのため、これらのケーブルホルダー固定部46,47をインナーパネル201に当接させた状態においては、支持板部41や曲げ形状規制部42、伸び形状規制部43、コネクタユニット固定部44等の一部がインナーパネル201に設けられた開口20hを介して車外側(詳しくはスライドドア200を構成するインナーパネル201よりも車外側の空間)に配置されることとなる(図10参照)。
【0058】
次に、ホルダーカバー50について説明する。図2及び図3に示すように、ホルダーカバー50は、ドームカバー部51と、シールプレート部52とを有している。なお、本実施形態に係るスライドドア給電装置1においては、ケーブルホルダー40に設けられた電気ケーブル2の配索経路を規制する部分である支持板部41や曲げ形状規制部42、伸び形状規制部43、コネクタユニット固定部44等の一部がホルダーカバー50に収容される。
【0059】
ドームカバー部51は、ケーブルホルダー40を構成する支持板部41や曲げ形状規制部42、伸び形状規制部43、コネクタユニット固定部44等の一部を覆う部位である。図7から図9に示すように、ドームカバー部51は、車体100の車内側が開放された箱形状に形成されており、主に側板511と囲板512とで構成されている。側板511は、曲げ形状規制部42からコネクタユニット6へ至るケーブル挿通路4Pの車外側の壁面を構成する。また、囲板512は、側板511とともに水や埃から電気ケーブル2や電気ケーブル2に接続されるコネクタユニット6を保護する機能を果たしている。
【0060】
なお、ドームカバー部51を構成する側板511の裏面側の所定の箇所には、車内側に向かって突出する台状部分(ケーブル当接部513とする)が設けられている。換言すると、ケーブルホルダー40側に向かって突出するケーブル当接部513が設けられている。ケーブル当接部513は、前述した上板411とケーブル位置規制部423との間に嵌め合わされ、ケーブル挿通路4Pに挿通された電気ケーブル2の外周面に当接する(図10参照)。
【0061】
さらに、ケーブル当接部513における前方側端部は、前方側に向かうにつれて徐々に車内側に高くなっている。このようにしたのは、曲げ形状規制部42の車外側端部において、曲げ形状規制部42に沿って曲がる電気ケーブル2の配索経路を規制するためである。このような構成により、ケーブル当接部513は、曲げ形状規制部42に沿って曲がる電気ケーブル2の湾曲した部分の外周面にも当接することとなる(図10参照)。
【0062】
加えて、ケーブル当接部513における前後方向の中央部には、同じくケーブルホルダー40側に向かって突出する台形部分(カバー側係止部514とする)が設けられている。換言すると、ケーブル挿通路4Pに挿通された電気ケーブル2側に向かって突出するカバー側係止部514が設けられている。カバー側係止部514は、ケーブル外装部材22における外周面側に設けられた凹部分22bに嵌合して引っ掛かる(図11参照)。
【0063】
さらに加えて、ドームカバー部51を構成する囲板512における上方側の壁板512aには、下方側に向かって突出する板状部分(コネクタユニット位置規制部515とする)が設けられている。換言すると、収容されたコネクタユニット6側に向かって突出するコネクタユニット位置規制部515が設けられている。コネクタユニット位置規制部515は、その内面がコネクタユニット6の上面に対して近接しており、かつコネクタユニット6の上面に対して平行となっている。このため、コネクタユニット6の上方側へのズレを抑制することができる。
【0064】
さらに加えて、ドームカバー部51を構成する囲板512における下方側の壁板512bには、上方側に向かって突出する板状部分(コネクタユニット位置規制部516とする)が設けられている。換言すると、収容されたコネクタユニット6側に向かって突出するコネクタユニット位置規制部516が設けられている。コネクタユニット位置規制部516は、その内面がコネクタユニット6の下面に対して近接しており、かつコネクタユニット6の下面に対して平行となっている。このため、コネクタユニット6の下方側へのズレを抑制することができる。
【0065】
シールプレート部52は、ドームカバー部51の内側に入り込もうとする水を止水する部位である。図7から図9に示すように、シールプレート部52は、前述した囲板512の車内側端部から外周側に広がった四角形状に形成されており、主に鍔板521と止水体522とで構成されている。そして、インナーパネル201にケーブルホルダー40が固定された状態において、鍔板521は、インナーパネル201の表面から僅かな隙間をあけて配置されることとなる。また、止水体522は、インナーパネル201と鍔板521との間に挟まれて圧縮されることにより、かかる隙間において止水する機能を果たしている。
【0066】
なお、シールプレート部52を構成する鍔板521の前述した係止爪40fに対応する箇所には、車内側に向かって突出する係止板部523が設けられている。係止板部523の中央部には、上下方向に貫通した係止孔52hが設けられており、この係止孔52hにケーブルホルダー40側の係止爪40fが引っ掛かる。このような構成により、ケーブルホルダー40にホルダーカバー50を固定することが可能となる。
【0067】
次に、コネクタユニット6について詳しく説明する。コネクタユニット6は、複数個のコネクタケース60を積層して構成されている。コネクタケース60の個数については、スライドドア200の仕様に応じて自由に変更することができる。具体的には、必要とされるFFC21の枚数に応じて自由に変更することができる。
【0068】
図12に示すように、コネクタケース60は、主板部61と、上方側板部62と、下方側板部63とを有している。本願に開示するコネクタケース60においては、主板部61と上方側板部62と下方側板部63によって囲まれる空間を端子収容部6Cとする。端子収容部6Cには、接続端子64が収容される。
【0069】
主板部61は、車体100の前後方向に対して垂直な略板状に形成されている。主板部61の内壁面には、上下方向に対して所定間隔を隔てて配置された三枚の仕切板611が設けられている。各仕切板611は、車内外方向における中途部が最も高く形成されており、その先端縁に車内側に向かって延びる係合片612が設けられている。また、主板部61の外壁面には、車内外方向における中途部よりもやや車内側に上下方向に延びる縦板613が設けられている(図10参照)。縦板613は、その高さが一定に形成されており、その先端縁に車外側に向かって延びる係合片614が設けられている(図10参照)。
【0070】
上方側板部62は、車体100の上下方向に対して垂直な略板状に形成されており、主板部61の上方側縁部につながっている。上方側板部62には、車内側縁部から中途部まで上方側板部62を延長するように横板621が設けられている。横板621は、その高さが一定に形成されており、その先端縁に下方側に向かって延びる係止片622が設けられている。また、上方側板部62の外壁面には、車内側縁部から中途部までの所定範囲を掘り下げた段差部分623が設けられている。そして、この段差部分623の底面に車内側縁部から車外側に向かって延びる係止溝624が設けられている。
【0071】
下方側板部63は、車体100の上下方向に対して垂直な略板状に形成されており、主板部61の下方側縁部につながっている。下方側板部63には、車内側縁部から中途部まで下方側板部63を延長するように横板631が設けられている。横板631は、その高さが一定に形成されており、その先端縁に上方側に向かって延びる係止片632が設けられている。また、下方側板部63の外壁面には、車内側縁部から中途部までの所定範囲を掘り下げた段差部分(図示せず)が設けられている。そして、この段差部分の底面に車内側縁部から車外側に向かって延びる係止溝(図示せず)が設けられている。
【0072】
このような構成により、車体100の最も前方側に配置されるコネクタケース60は、上方側板部62の係止片622と下方側板部63の係止片632が、前述した上板441と下板442のそれぞれに設けられた係止溝に引っ掛かった状態で固定される。そして、以降のコネクタケース60は、上方側板部62の係止片622と下方側板部63の係止片632が、隣接するコネクタケース60における係止溝624に引っ掛かった状態で固定される。このとき、係合片612と係合片614が互いに係合し合うこととなる(図10参照)。
【0073】
ところで、主板部61に設けられた仕切板611と仕切板611の間には、接続端子64が固定される。一のコネクタケース60に一つの接続端子64を収容する場合は、いずれかの仕切板611と仕切板611の間に接続端子64が固定され、一のコネクタケース60に二つ以上の接続端子64を収容する場合は、仕切板611と上方側板部62の間や仕切板611と下方側板部63の間にも接続端子64が固定される。
【0074】
接続端子64は、車外側端部に設けられたピアス部641でFFC21を打留めることにより、このFFC21と電気的に接続される。また、接続端子64は、車内側端部に設けられたバレル部642で中継ケーブル72を加締めることにより、この中継ケーブル72と電気的に接続される。このため、コネクタユニット6の車外側で各接続端子64に向けてFFC21を振り分けることができ、コネクタユニット6の車内側で各接続端子64から延びる中継ケーブル72を集合させて纏めることができる。
【0075】
以上のように、スライドドア給電装置1は、車体100からスライドドア200に組み込まれた電装部品に対して給電を行うものである。スライドドア給電装置1は、車体100とスライドドア200の間に架け渡される電気ケーブル2と、車体100に固定されて電気ケーブル2の一端側を保持する車体側保持部3と、スライドドア200に固定されて電気ケーブル2の他端側を保持するスライドドア側保持部4とを有している。そして、スライドドア側保持部4には、スライドドア200のインナーパネル201に固定されるケーブルホルダー40と、ケーブルホルダー40に固定された状態でインナーパネル201に設けられた開口20hを介して車外側に挿入されるホルダーカバー50とが備えられており、ケーブルホルダー40に設けられた電気ケーブル2の配索経路を規制する部分がホルダーカバー50に収容されている。
【0076】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
詳述すると、本願発明に係るスライドドア給電装置1においては、ケーブルホルダー40に固定されるホルダーカバー50を有しており、このホルダーカバー50がインナーパネル201に設けられた開口20hを介して車外側に挿入される。また、ケーブルホルダー40に設けられた電気ケーブル2の配索経路を規制する部分がホルダーカバー50に収容される。したがって、電気ケーブル2の配索経路を規制する部分(例えば後述する曲げ形状規制部42や伸び形状規制部43)の少なくとも一部がスライドドア200を構成するインナーパネル201よりも車外側に配置されることとなり、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さが短くなる。ひいてはインナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0077】
また、スライドドア給電装置1において、ホルダーカバー50には、ケーブルホルダー40側に向かって突出するケーブル当接部513が設けられており、ケーブル当接部513が電気ケーブル2の外周面に当接することにより、電気ケーブル2の配索経路が規制されている。
【0078】
このようなスライドドア給電装置1によれば、電気ケーブル2の配索経路における一部分をホルダーカバー50に設けられたケーブル当接部513によって規制することができる。そのため、ケーブルホルダー40側に電気ケーブル2の配索経路を全体にわたって規制するような構造を設ける必要がなくなり、ケーブルホルダー40の車内外方向の長さを短縮することができる。ひいてはインナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0079】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、後方側に曲げ返した電気ケーブル2の曲げ形状を規制する曲げ形状規制部42が設けられており、ケーブル当接部513が曲げ形状規制部42に沿って曲がる電気ケーブル2の湾曲した部分の外周面に当接することにより、電気ケーブル2の配索経路が規制されている。
【0080】
このようなスライドドア給電装置1によれば、電気ケーブル2の湾曲した部分をホルダーカバー50に設けられたケーブル当接部513によって規制することができる。そのため、ケーブルホルダー40側に曲げ形状規制部42の周面42sに対向する壁板を設ける必要がなくなり、ケーブルホルダー40の車内外方向の長さを短縮することができる。ひいてはインナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができる。
【0081】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、前方側に向かって伸びた電気ケーブル2の伸び形状を規制する伸び形状規制部43が設けられており、伸び形状規制部43が開口20hを通過する電気ケーブル2の開口端縁に近接する部分の外周面に当接することにより、電気ケーブル2の配索経路が規制されている。なお、本発明における開口端縁とは、インナーパネル201に設けられた開口20hのエッジ部分を指す。
【0082】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、スライドドア200の開閉動作によって電気ケーブル2が後方側に曲げ返した状態から前方側に向かって伸びた状態に変化した状況において、電気ケーブル2の開口端縁に近接する部分をケーブルホルダー40に設けられた伸び形状規制部43によって規制することができる。そのため、電気ケーブル2と開口端縁の接触を防止することができる。
【0083】
また、スライドドア給電装置1において、スライドドア側保持部4には、電気ケーブル2とスライドドア200に配索された電装ケーブルにつながる中継ケーブル72とを接続するコネクタユニット6が備えられており、コネクタユニット6が電気ケーブル2の配索経路に対して車内側に配置されている。
【0084】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブル2の配索経路の出口孔4eを構成する壁板424とコネクタユニット6の間に電気ケーブル2が配索されず、この壁板424に対してコネクタユニット6を隣接(当接及びほぼ当接した状態を含む)して配置できる。そのため、スライドドア側保持部4を前後方向にもコンパクト化することができる。
【0085】
また、スライドドア給電装置1において、コネクタユニット6には、電気ケーブル2と中継ケーブル72とを電気的に接続する接続端子64が収容されており、接続端子64が車外側にて電気ケーブル2と接続されるとともに車内側にて中継ケーブル72と接続されるように配置されている。
【0086】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、コネクタユニット6の車外側で各接続端子64に向けて電気ケーブル2を振り分けることができ、コネクタユニット6の車内側で各接続端子64から延びる中継ケーブル72を集合させて纏めることができる。そのため、スライドドア側保持部4を前後方向にもコンパクト化することができる。
【0087】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、コネクタユニット6から所定の間隔を隔てた位置にコネクタユニット遮蔽部45が設けられており、コネクタユニット遮蔽部45がコネクタユニット6及びコネクタユニット6から延出される中継ケーブル72の車内側に配置されている。
【0088】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、コネクタユニット6及びコネクタユニット6から延出される中継ケーブル72を保護することができる。また、これらの露出を防いで美感を確保することもできる。
【0089】
また、スライドドア給電装置1において、スライドドア側保持部4には、中継ケーブル用クランプ91が備えられており、中継ケーブル用クランプ91がケーブルホルダー40とコネクタユニット6から延出される中継ケーブル72とを固定している。
【0090】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、簡素な構成でありながら確実にケーブルホルダー40と中継ケーブル72とを固定することができる。ひいては信頼性を確保しながらも組立性を向上できる。
【0091】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、コネクタユニット6よりも前方側に位置する壁板424にコネクタユニット6側に向かって突出してコネクタユニット6を固定するコネクタユニット固定部44が設けられている。
【0092】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダー40とコネクタユニット6とを固定することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0093】
また、スライドドア給電装置1において、ホルダーカバー50には、コネクタユニット6よりも上方側及び下方側に位置する壁板512a,512bにコネクタユニット6側に向かって突出してコネクタユニット6の位置を規制するコネクタユニット位置規制部515,516が設けられている。
【0094】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダー40及びホルダーカバー50に対するコネクタユニット6の上下方向へのズレを抑制することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0095】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、電気ケーブル2側に向かって突出して電気ケーブル2の上方側端部に沿って当接するケーブル位置規制部423が設けられている。
【0096】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、部品点数の増加を招くことなくケーブルホルダー40及びホルダーカバー50に対する電気ケーブル2の上下方向へのズレを抑制することができる。ひいては組立性を向上でき、かつコストも低減できる。
【0097】
また、スライドドア給電装置1において、ケーブルホルダー40には、電気ケーブル2側に向かって突出して電気ケーブル2の凹部分22aに引っ掛かるホルダー側係止部443が設けられている。
【0098】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブル2の長手方向へのズレを防止できる。ひいては電気ケーブル2の接続部分(正確にはFFC21と接続端子64との接続部分)に負荷がかかることを防止できる。
【0099】
また、スライドドア給電装置1において、ホルダーカバー50には、電気ケーブル2側に向かって突出して電気ケーブル2の凹部分22bに引っ掛かるカバー側係止部514が設けられている。
【0100】
このようなスライドドア給電装置1によれば、インナーパネル201から車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮することができるという前述の効果に加え、電気ケーブル2の長手方向へのズレを防止できる。ひいては電気ケーブル2の接続部分(正確にはFFC21と接続端子64との接続部分)に負荷がかかることを防止できる。
【0101】
この発明の構成と前述の実施形態との対応において、この発明のスライドドア給電装置はスライドドア給電装置1に対応し、
以下同様に、
電気ケーブルは電気ケーブル2に対応し、
車体側保持部は車体側保持部3に対応し、
スライドドア側保持部はスライドドア側保持部4に対応し、
コネクタユニットはコネクタユニット6に対応し、
フレキシブルフラットケーブルはフレキシブルフラットケーブル21に対応し、
ケーブル外装部材はケーブル外装部材22に対応し、
ケーブルホルダーはケーブルホルダー40に対応し、
曲げ形状規制部は曲げ形状規制部42に対応し、
伸び形状規制部は伸び形状規制部43に対応し、
コネクタユニット固定部はコネクタユニット固定部44に対応し、
コネクタユニット遮蔽部はコネクタユニット遮蔽部45に対応し、
ケーブル位置規制部はケーブル位置規制部423に対応し、
ホルダー側係止部はホルダー側係止部443に対応し、
ホルダーカバーはホルダーカバー50に対応し、
ケーブル当接部はケーブル当接部513に対応し、
カバー側係止部はカバー側係止部514に対応し、
コネクタユニット位置規制部はコネクタユニット位置規制部515に対応し、
コネクタユニット位置規制部はコネクタユニット位置規制部516に対応し、
接続端子は接続端子64に対応し、
中継ケーブルは中継ケーブル72に対応し、
中継ケーブル用クランプは中継ケーブル用クランプ91に対応し、
車体は車体100に対応し、
スライドドアはスライドドア200に対応し、
インナーパネルはインナーパネル201に対応し、
インナーパネルの開口は開口20hに対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0102】
例えば本願に開示するスライドドア給電装置1においては、電気ケーブル2が複数枚のフレキシブルフラットケーブル21を重ね合わせたものとしている。しかし、丸断面形状の被覆ケーブルを束ねたものであってもよい。また、例えば本願に開示するスライドドア給電装置1においては、複数個のコネクタケース60を積層できるコネクタユニット6を備えているが、他のコネクタユニットを備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…スライドドア給電装置
2…電気ケーブル
3…車体側保持部
4…スライドドア側保持部
6…コネクタユニット
21…フレキシブルフラットケーブル
22…ケーブル外装部材
40…ケーブルホルダー
42…曲げ形状規制部
43…伸び形状規制部
44…コネクタユニット固定部
45…コネクタユニット遮蔽部
423…ケーブル位置規制部
443…ホルダー側係止部
50…ホルダーカバー
513…ケーブル当接部
514…カバー側係止部
515…コネクタユニット位置規制部
516…コネクタユニット位置規制部
64…接続端子
72…中継ケーブル
91…中継ケーブル用クランプ
100…車体
200…スライドドア
201…インナーパネル
20h…開口
【要約】
【課題】インナーパネルから車内側に突出している部分の突出長さを従来品よりも短縮できるスライドドア給電装置を提供する。
【解決手段】スライドドア給電装置1は、電気ケーブル2と、車体側保持部3と、スライドドア側保持部4とを有している。スライドドア側保持部4には、スライドドア200のインナーパネル201に固定されるケーブルホルダー40と、ケーブルホルダー40に固定された状態でインナーパネル201に設けられた開口20hを介して車外側に挿入されるホルダーカバー50とが備えられており、ケーブルホルダー40に設けられた電気ケーブル2の配索経路を規制する部分がホルダーカバー50に収容されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12