(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】MIMO復調方法および端末装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0413 20170101AFI20221208BHJP
H04B 7/024 20170101ALI20221208BHJP
【FI】
H04B7/0413 200
H04B7/024
(21)【出願番号】P 2020033648
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】アベセカラ ヒランタ
(72)【発明者】
【氏名】村田 英一
(72)【発明者】
【氏名】杜 豊寧
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/035827(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/030183(WO,A1)
【文献】特開2010-278715(JP,A)
【文献】千葉 竜樹,村田 英一,高周波数帯を活用した端末連携MIMO受信における端末間通信方式に関する伝送実験,第40回情報理論とその応用シンポジウム(SITA2017)予稿集 [USB] ,2017年12月01日,pp.482-486
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0413
H04B 7/024
H04W 84/00
H04W 4/08
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置が受信する複数の受信信号を用いて、MIMO伝送された複数の空間ストリームの復調を行うMIMO復調方法において、
前記空間ストリームの数より多い前記複数の受信信号の中から受信信号のプリアンブル部を元に、前記空間ストリームの数と同じ数の前記受信信号を選択する複数の組み合わせパタンを生成する組み合わせパタン生成処理と、
前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から選択した前記組み合わせパタンを用いて等化処理を行うように制御し、前記複数の空間ストリームを復調する制御処理と
を実行することを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項2】
請求項1に記載のMIMO復調方法において、
前記制御処理では、前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から、前記受信信号の推定受信SINRが最大となる前記組み合わせパタンを選択する
ことを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項3】
請求項1に記載のMIMO復調方法において、
前記制御処理では、FFTにより周波数領域に変換して等化処理を行う場合、前記組み合わせパタン毎に周波数領域の複数の周波数の受信信号の推定受信SINRの最小値を求め、前記最小値が最大となる前記組み合わせパタンを選択する
ことを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項4】
請求項1に記載のMIMO復調方法において、
前記制御処理では、FFTにより周波数領域に変換して等化処理を行う場合、前記組み合わせパタン毎に周波数領域の複数の周波数の受信信号の推定受信SINRの和を求め、前記和が最大となる前記組み合わせパタンを選択する
ことを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項5】
請求項1に記載のMIMO復調方法において、
前記制御処理では、FFTにより周波数領域に変換して等化処理を行う場合、前記組み合わせパタン毎に周波数領域の複数の周波数の受信信号の推定受信SINRの最小値と最大値とを求め、前記最大値/前記最小値が最小となる前記組み合わせパタンを選択する
ことを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のMIMO復調方法において、
宛先の前記端末装置は、空間ストリーム毎に復調処理を分散する他の前記端末装置に対し、受信信号のプリアンブル部と、復調対象の空間ストリームの情報とを伝送して、他の前記端末装置から受け取る空間ストリーム毎の復調結果を集約し、
他の前記端末装置は、復調処理に必要な受信信号と復調対象の空間ストリームの情報とを宛先の前記端末装置から受け取り、復調対象の空間ストリームの復調処理を行い、復調結果を宛先の前記端末装置に伝送する
ことを特徴とするMIMO復調方法。
【請求項7】
自装置および他の装置が受信する複数の受信信号を用いて、MIMO伝送された複数の空間ストリームの復調を行う端末装置において、
前記空間ストリームの数より多い前記複数の受信信号の中から受信信号のプリアンブル部を元に、前記空間ストリームの数と同じ数の前記受信信号を選択する複数の組み合わせパタンを生成する組み合わせパタン生成部と、
生成された前記複数の組み合わせパタンに対して並列に等化処理を行う等化部と、
前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から選択した前記組み合わせパタンを用いて等化処理を行うように制御し、前記複数の空間ストリームを復調する制御部と
を有することを特徴とする端末装置。
【請求項8】
請求項7に記載の端末装置において、
前記制御部は、前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から、前記受信信号のプリアンブル部を元に算出した推定受信SINRが最大となる前記組み合わせパタンを選択する
ことを特徴とする端末装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局装置と複数の端末装置との間でMIMO(Multi-Input Multi-Output)伝送を行う無線通信システムにおいて、端末装置同士が連携してMIMO復調処理を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける大容量化の技術として複数のアンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO伝送は、セルラ通信システムや無線LANシステムなどをはじめとして様々な無線通信システムに採用されている。一般に、MIMO伝送では、送受信装置が伝送したい空間ストリーム数以上のアンテナを備えることで、複数の空間ストリームが混在した状態で受信される信号に対して、適切なMIMO復調処理を行って所望の空間ストリームを受信できることが知られている。そのため、MIMO伝送の容量を拡大するには、送受信装置の双方でなるべく多数のアンテナを備える必要がある。しかしながら、実際には装置上の制約があり、特に端末装置が備えることができるアンテナ数が装置サイズや消費電力の観点から制約されるため、伝送可能な空間ストリーム数が低下してしまうという課題がある。
【0003】
そこで、端末装置同士が互いに連携し、自装置が受信した信号を、宛先の端末装置に対して中継伝送することで、宛先の端末装置において、あたかも自装置が保有するアンテナ数以上の受信信号を用いてMIMO復調処理を行うことで、MIMO伝送の容量を拡大できる「端末連携MIMO伝送方式」が検討されている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】D.Fengning and H.Murata,"Performance Study of Terminal Collaborated MIMO Reception Experimental Testbed in Actual Environment," 2019 IEEE VTS Asia Pacific Wireless Communications Symposium (APWCS), Singapore, 2019, pp.1-5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端末連携MIMO伝送方式においては、宛先の端末装置がMIMO復調可能な分だけ、周辺の他の端末装置から受信信号を集める必要がある。ところが、端末装置の移動などにより連携ができなくなる、または、受信品質が悪い受信信号はMIMO復調に利用できない、などのことを考慮すると、宛先の端末装置が復調したい空間ストリーム数を上回る数の受信信号の集約が必要である。この場合、集約した複数の受信信号のうち、どの受信信号を用いてMIMO復調処理を行うかを適切に選択することが課題となる。
【0006】
本発明は、復調対象となる空間ストリーム毎にそれぞれ異なる受信信号の組み合わせパタンを選択してMIMO復調処理を行うことにより、端末連携MIMO伝送方式における受信誤り率を改善することができるMIMO復調方法および端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の端末装置が受信する複数の受信信号を用いて、MIMO伝送された複数の空間ストリームの復調を行うMIMO復調方法において、前記空間ストリームの数より多い前記複数の受信信号の中から受信信号のプリアンブル部を元に、前記空間ストリームの数と同じ数の前記受信信号を選択する複数の組み合わせパタンを生成する組み合わせパタン生成処理と、前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から選択した前記組み合わせパタンを用いて等化処理を行うように制御し、前記複数の空間ストリームを復調する制御処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
本発明は、自装置および他の装置が受信する複数の受信信号を用いて、MIMO伝送された複数の空間ストリームの復調を行う端末装置において、前記空間ストリームの数より多い前記複数の受信信号の中から受信信号のプリアンブル部を元に、前記空間ストリームの数と同じ数の前記受信信号を選択する複数の組み合わせパタンを生成する組み合わせパタン生成部と、生成された前記複数の組み合わせパタンに対して並列に等化処理を行う等化部と、前記空間ストリーム毎に、前記複数の組み合わせパタンの中から選択した前記組み合わせパタンを用いて等化処理を行うように制御し、前記複数の空間ストリームを復調する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るMIMO復調方法および端末装置は、復調対象となる空間ストリーム毎にそれぞれ異なる受信信号の組み合わせパタンを選択してMIMO復調処理を行うことにより、端末連携MIMO伝送方式における受信誤り率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】端末連携MIMO伝送方式を用いる無線通信システムの一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る無線通信システムにおける端末連携MIMO伝送処理の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る無線通信システムにおける端末連携MIMO伝送処理の応用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係るMIMO復調方法および端末装置の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、端末連携MIMO伝送方式を用いる無線通信システム100の一例を示す。
図1において、無線通信システム100は、基地局装置BS、端末装置MS1、端末装置MS2、端末装置MS3、端末装置MS4、端末装置MS5および端末装置MS6を有する。なお、
図1では、一例として6台の端末装置MSが連携して基地局BSとの間でMIMO伝送を行うが、複数の端末装置MSであれば適用可能である。ここで、端末装置MS1から端末装置MS6までの6台に共通する説明を行う場合は符号末尾の番号を省略して端末装置MSと記載する。
【0013】
図1において、基地局装置BSは、宛先の端末装置MSとの間でMIMO方式により空間多重信号を送信する。
図1では、基地局装置BSは、一例として4つの空間ストリームが4つのアンテナからそれぞれ送信される。なお、本実施形態では、少なくとも1つのアンテナを有する6台の端末装置MSが連携して、あたかも自装置が保有するアンテナ数以上のMIMO端末装置として動作し、自装置を含む他装置の複数の受信信号を用いてMIMO復調処理を行う。このために、複数の端末装置MSは、互いに自装置の受信信号を他装置に中継する。ここで、中継伝送は、基地局装置BSとの通信とは異なる通信回線により端末装置MS間で直接行われる。なお、
図1において、端末装置MS間で行われる中継伝送は点線で示されている。
【0014】
図2は、端末装置MSの構成例を示す。
図2において、端末装置MSは、選択部101、CP(Cyclic Prefix)除去部102、S/P(Serial/Parallel)103、FFT(Fast Fourier Transform)104、MMSE(Minimum Mean Square Error)等化部105、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)106、P/S(Parallel/Serial)107、BP(Belief Propagation)復号部108、軟判定レプリカ生成部109、組み合わせパタン生成部110および制御部111を有する。
【0015】
なお、本実施形態に係る無線通信システム100では、基地局装置BSは、送信データ系列にLDPC(Low-Density Parity-Check)符号による符号化を施して送信し、端末装置MSは、繰り返し等化処理を行い、復号後の高信頼度のシンボルから生成される干渉信号のレプリカを受信信号から減算することにより干渉信号の抑圧を行う。
【0016】
図2において、選択部101は、6台の端末装置MSが基地局装置BSから受信する受信信号の中から4つの受信信号を選択する。なお、選択部101は、制御部111の指令に基づいて動作し、例えば制御部111から指定された4つの受信信号を信号(1)、信号(2)、信号(3)および信号(4)としてCP除去部102-1、CP除去部102-2、CP除去部102-3およびCP除去部102-4にそれぞれ出力する。ここで、CP除去部102-1、CP除去部102-2、CP除去部102-3およびCP除去部102-4に共通する説明を行う場合は、符号末尾の-番号を省略して、CP除去部102と記載する。同じ名称のブロックが複数ある場合の他のブロックについても同様に記載する。
【0017】
CP除去部102は、選択部101が選択した受信信号に付加されているCPを除去する。
【0018】
S/P103は、CP除去部102が出力する時間的に連続する信号を予め決められた時間単位で分割した並列の信号を出力する。
【0019】
FFT104は、S/P103から出力される並列の時間領域の信号にFFT処理を行い、周波数領域の信号に変換する。ここで、周波数領域に変換された信号は、時間領域の信号のサンプリング周波数に応じた複数の周波数ビンを有する。
【0020】
MMSE等化部105は、FFT104-1からFFT104-4が出力する4つの周波数領域の信号をMMSE方式により等化処理を行う。なお、ここでは一例として4つの周波数領域の信号としたが、1つ以上であれば同様に適用可能である。ここで、基地局装置BSの4つのアンテナからそれぞれ送信される4つの空間ストリームは、各端末装置MSで干渉した状態で受信されるが、MMSE等化部105の等化処理により空間ストリーム間干渉を除去するので、各空間ストリームを分離することができる。MMSE等化部105は、後述の軟判定レプリカ生成部109により生成された所望信号以外のすべての干渉信号のレプリカを受信信号から減算した後、ウェイトを掛け合わせることにより等化処理を行う。
【0021】
IFFT106は、MMSE等化部105が等化した周波数領域の信号にIFFT処理を行い、時間領域の信号に変換する。
【0022】
P/S107は、IFFT106が出力する複数の信号をS/P103が分割した順に合成して連続する時間領域の信号を出力する。
【0023】
BP復号部108は、P/S107が出力する信号に対して、LDPC(Low-Density Parity-Check)の復号法の1つとして周知のBP復号方式を用いた復号を行う。
【0024】
軟判定レプリカ生成部109は、BP復号後に更新された尤度から作成された軟判定シンボルをFFTにより周波数領域に変換し、周波数領域で干渉信号の軟判定レプリカを生成する。
【0025】
組み合わせパタン生成部110は、複数の端末装置MSの数に基づいて、選択部101で選択する受信信号の全ての組み合わせパタンを生成する(組み合わせパタン生成処理)。例えば、端末装置MSの数が6台で選択部101で選択する受信信号の数が4つの場合、組み合わせパタン生成部110は、6C4=15種類の組み合わせパタンを生成する。
【0026】
制御部111は、端末装置MSの各部の制御や組み合わせパタン生成部110が生成する受信信号の複数の組み合わせパタンから、後述する選択方法により、復調する空間ストリーム毎に最適な受信信号の組み合わせパタンを選択する処理を行う(制御処理)。そして、制御部111は、空間ストリーム毎に復調処理に使用する最適な受信信号の組み合わせパタンを選択部101に指示して、各空間ストリームに対するMIMO復調処理を実施する。
【0027】
(推定受信SINRに基づく最適な端末装置MSの選択方法)
基地局装置BSはL本のアンテナからL個の空間ストリームをN台の端末装置MSに送信する。
【0028】
i番目の空間ストリームの推定受信SINRは、送信電力が同じであるとして、式(1)で与えられる。
【0029】
【数1】
ここで、KはN台の端末装置MSからL台の端末装置MSを選択する組み合わせパタンの数、fは周波数ビンで周波数領域でのサンプル間隔に対応する周波数、
Hはエルミート行列、h
f,iは周波数ビンfにおける伝搬路行列H
Kfのi番目の列ベクトル、σ
2は雑音変数、IはL×Lの単位行列である。
【0030】
なお、組み合わせパタン毎に複数の周波数fのそれぞれの推定受信SINRを算出して、次の3つの方法のいずれかにより、空間ストリーム毎に最適な端末装置MS(受信信号)の組み合わせパタンを選択するようにしてもよい。
(a)各組み合わせパタンにおいて、複数の周波数fのうち推定受信SINRの最小値を求め、当該最小値が全ての組み合わせパタンの中で最大となる組み合わせパタンを選択する方法(式(2))。
【0031】
【数2】
(b)各組み合わせパタンにおいて、複数の周波数fの和が全ての組み合わせパタンの中で最大となる組み合わせパタンを選択する方法(式(3))。
【0032】
【数3】
(c)各組み合わせパタンにおいて、複数の周波数fのうち推定受信SINRの最小値と最大値とをそれぞれ求め、最大値÷最小値の値が全ての組み合わせパタンの中で最小となる組み合わせパタンを選択する方法(式(4))。
【0033】
【数4】
ここで、上記の説明では複数の周波数fをパラメータの1つとする例を示したが、周波数fが1つの場合は、式(5)により、最適な組み合わせパタンを選択することができる。
【0034】
【数5】
このようにして、空間ストリーム毎に最適な端末装置MS(受信信号)の組み合わせパタンを選択することができる。
【0035】
図3は、本実施形態に係る無線通信システム100における端末連携MIMO伝送処理の一例を示す。
【0036】
ステップS101において、基地局装置BSは、所望の信号の送信先である宛先の端末装置MS向けにMIMO方式により空間多重信号を送信する。
【0037】
ステップS102において、各端末装置MSは、自装置が宛先の端末装置ではない場合、自装置が受信した信号のプリアンブル部(パイロット部、トレーニング部とも言う)を宛先の端末装置MSに中継伝送する。なお、中継伝送は、基地局装置BSとの通信とは異なる通信回線により端末装置MS間で直接行われる。
【0038】
ステップS103において、宛先の端末装置MSは、自装置の受信信号および他の端末装置MSから中継伝送された受信信号のプリアンブル部を含む複数の受信信号の中から復調する空間ストリーム毎にそれぞれ復調処理を行う最適な受信信号の組み合わせパタンを選択する。ここで、組み合わせパタンは、例えば自装置をMS1、他の端末装置をMS2からMS6とした場合、パタン1:MS1、MS2、MS4、MS6、パタン2:MS1、MS3、MS4、MS5、パタン3:MS1、MS4、MS5、MS6、などのように生成される。なお、最適な受信信号の組み合わせパタンの選択は、上述の選択方法で説明した通り、各端末装置MSの受信信号のプリアンブル部を元に推定される推定受信SINRに基づいて行われる。
【0039】
ステップS104において、宛先MSは、ステップS103で選択された空間ストリーム毎に最適な受信信号の組み合わせパタンに基づいて、必要な受信信号を他の端末装置MSから取得する。
【0040】
ステップS105において、宛先MSは、ステップS103で選択された空間ストリーム毎に最適な受信信号の組み合わせパタンを用いて、各空間ストリームに対するMIMO復調処理を実施する。
【0041】
このようにして、本実施形態に係る無線通信システム100は、復調対象となる空間ストリーム毎にそれぞれ異なる受信信号の組み合わせパタンを選択して最適なMIMO復調処理を行うことにより、端末連携MIMO伝送方式における受信誤り率を改善することができる。
【0042】
(応用例)
図4は、本実施形態に係る無線通信システム100における端末連携MIMO伝送処理の応用例を示す。なお、
図4において、
図3と同符号のステップS101およびステップS102の処理は、
図3と同じ処理を行う。上述の実施形態では、宛先の端末装置MSが空間ストリーム毎に最適な受信信号の組み合わせパタンを用いてMIMO復調処理を実施したが、本応用例では、複数の端末装置MSに復調処理を分散して行うことが特徴である。
【0043】
ステップS201において、宛先の端末装置MSは、自装置の受信信号および他の端末装置MSから中継された受信信号に基づき、復調する空間ストリーム毎にそれぞれ復調処理を行う受信信号の組み合わせと、復調処理を実施する端末装置MSとを選択する。
【0044】
ステップS202において、宛先の端末装置MSは、復調処理を実施する端末装置MSに対し、復調対象とする空間ストリームの情報(ストリーム番号など)を伝送し、復調処理を実施する端末装置MSは、それぞれ必要な受信信号を他の端末装置MSから取得する。
【0045】
ステップS203において、分散して復調処理を行う各端末装置MSは、担当する空間ストリームのMIMO復調処理を実施し、復調結果を宛先の端末装置MSへ伝送する。例えば宛先の端末装置MSが端末装置MS1、1番目の空間ストリームの復調を行う端末装置MSが端末装置MS2、2番目の空間ストリームの復調を行う端末装置MSが端末装置MS4、3番目の空間ストリームの復調を行う端末装置MSが端末装置MS5、4番目の空間ストリームの復調を行う端末装置MSが端末装置MS6、である場合、端末装置MS2は1番目の空間ストリームの復調結果を宛先の端末装置MS1へ伝送し、端末装置MS4は2番目の空間ストリームの復調結果を宛先の端末装置MS1へ伝送し、端末装置MS5は3番目の空間ストリームの復調結果を宛先の端末装置MS1へ伝送し、端末装置MS6は4番目の空間ストリームの復調結果を宛先の端末装置MS1へ伝送する。
【0046】
このように、応用例の無線通信システム100では、先の実施形態で説明した処理に加えて、空間ストリーム毎に復調処理を複数の端末装置MSに分散して実行し、復調結果を宛先の端末装置MSに集約することにより、宛先の端末装置MSの処理負荷が軽減される。なお、どの端末装置MSに復調を行わせるかは予め決めておいてもよいし、端末装置MSの番号順に割り当ててもよいし、或いは乱数によりランダムに割り当ててもよい。
【0047】
以上、説明したように、本発明に係るMIMO復調方法および端末装置は、復調対象となる空間ストリーム毎にそれぞれ異なる受信信号の組み合わせパタンを選択してMIMO復調処理を行うことにより、端末連携MIMO伝送方式における受信誤り率を改善することができる。
【0048】
なお、前述した実施形態における基地局装置BSおよび端末装置MSは専用装置による実現に限らず、汎用コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0049】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明してきたが、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
100・・・無線通信システム;101・・・選択部;102・・・CP除去部;103・・・S/P;104・・・FFT;105・・・MMSE等化部;106・・・IFFT;107・・・P/S;108・・・BP復号部;109・・・軟判定レプリカ生成部;110・・・組み合わせパタン生成部;111・・・制御部;BS・・・基地局装置;MS・・・端末装置