(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】揚げ物の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 5/10 20160101AFI20221208BHJP
A23L 7/157 20160101ALN20221208BHJP
【FI】
A23L5/10 D
A23L7/157
(21)【出願番号】P 2018192343
(22)【出願日】2018-10-11
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大次郎
(72)【発明者】
【氏名】間平 由梨佳
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-173059(JP,A)
【文献】特開昭62-061547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00-5/49
A23L 7/157
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材に衣材料を付着させて衣層を有する揚げ種を調製する工程、
前記揚げ種を、170℃以上の温度のフライ油中で、前記衣層は加熱着色し、且つ前記具材の中心部は実質的に加熱変性しないような条件で加熱して一次加熱品を得る一次加熱工程、及び
前記一次加熱品を過熱水蒸気で、前記具材の中心部まで加熱変性するような条件で加熱する二次加熱工程、
を含
み、
前記衣材料を付着させる前、又は前記衣材料と同時に、食用油脂を含む油脂組成物を前記具材に付着させる
ことを特徴とする揚げ物の製造方法。
【請求項2】
前記油脂組成物が、乳化剤を含有する請求項
1に記載の揚げ物の製造方法。
【請求項3】
前記乳化剤が、HLB8以下の乳化剤である請求項2項に記載の揚げ物の製造方法。
【請求項4】
前記フライ油の温度が、
190~220℃である請求項1
~3のいずれか1項に記載の揚げ物の製造方法。
【請求項5】
前記衣材料がブレッダーである請求項1~
4のいずれか1項に記載の揚げ物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚げ物を製造する方法に関し、特に、過熱水蒸気による加熱手段を用いて、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を製造することができる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、揚げ物は、魚介類、畜肉類、野菜類等の具材に、小麦粉等を含むバッター、若しくはブレッダーを付着させたものを油ちょうした天ぷら、フリッター、から揚げ、竜田揚げ、パン粉付けフライ等のことをいう。近年、油ちょう以外にも、ジェットオーブンや過熱水蒸気調理機を利用した調理方法を用いて揚げ物や揚げ物様食品を製造する方法も開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1では揚げ物が高カロリーとなるといった問題を無くし、揚げ物類の低カロリー化を図ることのできる揚げ物類食品の製造方法を提供することを目的とし、揚げ物素材に揚げ物用の粉材をまぶし、粉材をまぶした揚げ物素材に過熱水蒸気を噴射して直接加熱し、揚げ物類食品を製造することを特徴とする揚げ物類食品の製造方法が開示されている。また、特許文献2では、空揚げ、衣揚げ、フライなどの食品素材を、過熱蒸気を用いて食品の調理・脱油・省油処理を連続的に行なう方法とそのための装置を提供することを目的とし、空揚げ、衣揚げ、フライなどの素材の表面に、澱粉や小麦粉またはパン粉をつけた食品素材を、低圧高温過熱蒸気装置の中で、最適圧力と200~600℃程度の低圧高温過熱蒸気の雰囲気下でフライングし、空揚げ、衣揚げ、フライなどの食品素材としたことを特徴とする過熱蒸気を用いた食品の調理・脱油・省油方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-149207号公報
【文献】特開平8-173059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの方法は、揚げ物に含まれる油を低減することが目的になるため、油ちょう調理特有の油の風味や外観が劣る場合や、衣材料に含まれる澱粉がα化しないことで、得られた揚げ物の衣が粉っぽくなる場合がある。揚げ物の衣の外観及び食感において、一般的な油ちょう調理によって得られる揚げ物よりも品質が劣ったものになっていた。
【0006】
一方、本発明者らの検討によると、過熱水蒸気による加熱手段を用いて調理した揚げ物様食品は、一般的な油ちょう調理によって得られる揚げ物よりも具材がジューシーに仕上がることが見出されている。したがって、本発明の目的は、過熱水蒸気による加熱手段を用いて、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を製造することができる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、揚げ物の製造条件について、種々検討を行なった結果、過熱水蒸気による加熱の前に、所定の条件で油ちょうすることで上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、具材に衣材料を付着させて衣層を有する揚げ種を調製する工程、前記揚げ種を、170℃以上の温度のフライ油中で、前記衣層は加熱着色し、且つ前記具材の中心部は実質的に加熱変性しないような条件で加熱して一次加熱品を得る一次加熱工程、及び前記一次加熱品を過熱水蒸気で、前記具材の中心部まで加熱変性するような条件で加熱する二次加熱工程、を含み、前記衣材料を付着させる前、又は前記衣材料と同時に、食用油脂を含む油脂組成物を前記具材に付着させることを特徴とする揚げ物の製造方法によって達成される。なお、本発明において「揚げ物」は、上述の通り、魚介類及び水産加工品類、畜肉類及び畜肉加工品類、野菜類及び野菜加工品類等の具材に、衣材料としてバッター及び/又はブレッダーを付着させて油ちょう等の加熱処理により可食化したものを意味する。ここで、「バッター」は穀粉、澱粉等の原料粉、及びその他の副資材を含むバッター材料に水を加えて均一にした食品の製造に用いる流体を意味し、「ブレッダー」は、穀粉、澱粉、パン粉、クラッカー粉等の原料粉、及びその他の副資材を混合した粉粒体を意味する。具体的な揚げ物としては、から揚げ、竜田揚げ、天ぷら、フリッター、パン粉付けフライ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の揚げ物の製造方法によれば、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の揚げ物の製造方法は、具材に衣材料を付着させて衣層を有する揚げ種を調製する工程、前記揚げ種を170℃以上の温度のフライ油中で、前記衣層は加熱着色し、且つ前記具材の中心部は実質的に加熱変性しないような条件で加熱して一次加熱品を得る一次加熱工程、及び前記一次加熱品を過熱水蒸気で、前記具材の中心部まで加熱変性するような条件で加熱する二次加熱工程、を含むことを特徴とする。前記揚げ種を、まず比較的高温のフライ油による一次加熱で、衣層を加熱着色するとともに、衣層に含まれる澱粉を十分にα化し、具材については中心部まで実質的に加熱変性しないように短時間で加熱した後、過熱水蒸気による二次加熱で、具材の中心部まで加熱変性するように加熱することで、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を製造することができる。本発明において、「中心部まで実質的に加熱変性しない」とは、油ちょう直後の具材の中心部が可食化まで加熱変性していないことを意味し、例えば、具材の中心部の温度が60℃に達していない、好ましくは50℃に達していない、より好ましくは40℃に達していない、さらに好ましくは30℃に達していないことを意味する。後述する実施例に示す通り、一次加熱工程におけるフライ油の温度が上記より低い場合は、上記の効果が得られない。これは、フライ油の温度が上記より低い場合に衣層が加熱着色するまで加熱すると、具材の中心部の加熱変性が進んでしまい、過熱水蒸気による二次加熱の効果が得られないためと考えられる。
【0011】
本発明において、一次加熱工程では、揚げ種の衣層は良好に加熱着色し、上述のように具材の内部はできるだけ加熱変性しないように加熱することが好ましいため、一次加熱工程におけるフライ油の温度は揚げ種の衣層が焦げない範囲で高温であることが好ましい。したがって、前記フライ油の温度は、180℃以上であることが好ましく、185℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましく、200℃以上が特に好ましい。また、前記フライ油の温度は、220℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。一次加熱工程における加熱時間は、具材の大きさ、フライ油の温度等によって適宜調節することができ、通常10秒間~3分間、好ましくは30秒間~2分間、より好ましくは35秒間~1分30秒間、さらに好ましくは40秒間~1分30秒間である。
【0012】
本発明において、二次加熱工程の過熱水蒸気の温度は、前記一次加熱品の具材の中心部まで加熱変性させることができれば特に制限はない。過熱水蒸気の温度は、120~400℃であることが好ましく、150~300℃がより好ましく、170~250℃がさらに好ましい。二次加熱工程における加熱時間は、具材の大きさ、過熱水蒸気の温度等によって適宜調節することができ、通常3~10分間、好ましくは4~9分間、より好ましくは5~8分間である。なお、過熱水蒸気による加熱は、市販の過熱水蒸気を利用したオーブンを適宜選択して用いることができる。また、本発明において、一次加熱工程及び二次加熱工程は連続して行なう必要はない。例えば、一次加熱工程後、必要に応じて冷蔵又は冷凍保存する工程、別の場所に搬送する工程、調味料等をかける工程等の1工程以上のさらなる工程を行なった後、二次加熱工程を行なってもよい。
【0013】
本発明において、揚げ種を調製する工程は、特に制限はなく、常法に従って行なうことができる。例えば、畜肉類及び畜肉加工品類、魚介類及び水産加工品類、野菜類及び野菜加工品類等の具材に直接、又は調味液、浸漬液等の下処理液に漬け込む等により具材に下処理液を付着させた後、衣材料としてバッターに浸漬したり、ブレッダーをまぶしたりして、バッター及び/又はブレッダーを付着させて衣層を有する揚げ種を調製することができる。具材にバッターを付着させた後、ブレッダーを付着させてもよい。特に衣材料としてブレッダーを用いた場合に、一般的な油ちょう調理によって得られる揚げ物よりも具材のジューシー感が大きく向上する点で、前記衣材料は、ブレッダーであることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記衣材料を付着させる前に、又は前記衣材料と同時に、食用油脂を含む油脂組成物を具材に付着させることが好ましい。これにより、後述する実施例に示す通り、さらに具材のジューシー感が向上した揚げ物を製造することができる。前記油脂組成物を具材に付着させる手段は、特に制限はなく、常法に従って、例えば、浸漬法、スプレー法、練り込み法等によって行なうことができる。具体的には、前記油脂組成物を具材に直接付着させたり、又は上述のように具材に下処理液を付着させる場合は、前記油脂組成物を下処理液と同時に具材に付着させたり、具材に下処理液を付着させた後、前記油脂組成物を付着させることができる。具材に下処理液を付着させた後、前記油脂組成物を付着させることが好ましい。また、衣材料としてバッターを用いる場合は、前記油脂組成物をバッターの中に混合して、衣材料と同時に具材に付着させることができ、衣材料としてブレッダーを用いる場合は、前記油脂組成物をブレッダーと同時に具材に付着させることができる。前記食用油脂は、特に制限はなく、例えば、菜種油、ハイオレイック菜種油、大豆油、コーン油、米油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、綿実油、ゴマ油、落花生油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂等の植物油脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物油脂、及びこれらに分別、水素添加、エステル交換等の加工処理を行った加工油脂、並びにこれらの油脂の2種以上を組み合わせた混合油脂を用いることができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記油脂組成物は、乳化剤を含有することが好ましい。これにより、揚げ物の衣層のはがれを抑制することができる。前記油脂組成物における乳化剤の含有量は、特に制限はないが、油脂組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.05~8質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに0.2~3質量%である。乳化剤については、特に制限はなく、通常食品に使用される乳化剤を適宜使用することができる。例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含む)、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン類等が挙げられる。本発明において、乳化剤は、HLB8以下のものが好ましい。乳化剤は、1種を単独で、又は複数種を混合して使用してもよい。なお、前記乳化剤を含有する油脂組成物を用いる場合は、予め食用油脂及び乳化剤を混合した油脂組成物を用いてもよく、本発明の製造方法を行なう際に、それぞれ用意した食用油脂及び乳化剤を混合したものを用いてもよい。
【0016】
本発明において、衣材料の組成は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、通常の揚げ物に用いられる衣材料を適宜配合することができる。例えば、原料粉として、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉、トウモロコシ粉、及びこれらの穀粉を加熱処理した加熱処理穀粉等の穀粉類;コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の澱粉、及びこれらの澱粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉等の澱粉類;パン粉;クラッカー粉等が挙げられる。また、副資材としては、例えば、デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、ショ糖、マルトース等の糖質類;植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂等の油脂類;卵白粉、卵黄粉、全卵粉、小麦たん白、乳たん白、大豆たん白等のたん白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;カードラン、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びカラギーナン等の増粘剤;食塩、グルタミン酸ナトリウム、たん白加水分解物、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜肉又は魚介由来エキス等のエキス類;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、香辛料、酵素、塩類、種々の品質改良剤等が挙げられる。本発明における衣材料は、これらの材料を適宜選択して混合し、ブレッダーとしてそのまま使用することができ、バッターとしては水等の液体材料と混合して使用することができる。
【0017】
本発明の揚げ物の製造方法において、揚げ物には特に制限はなく、から揚げ、パン粉付けフライ、天ぷら、フリッター等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.ブレッダーを使用した揚げ物(から揚げ)の製造
衣材料としてブレッダーを使用した揚げ物として、から揚げを選定し、鶏もも肉約350g(10切れ)に対して、から揚げ粉(「から揚げ粉塩味」、昭和産業株式会社)を約46gまぶして付着させた。その後、表1に示した各実施例、比較例の加熱方法、加熱温度、加熱時間で加熱調理して、から揚げを得た。なお、油ちょうは、大豆油(昭和産業株式会社)を用いて行ない、過熱水蒸気による加熱は、過熱水蒸気調理機(「350スチームDCオーブン(小型コンベアタイプ)」直本工業株式会社)を用いて行なった。また、実施例8及び実施例9については、表1に示した通り、前記ブレッダーをまぶす前に、前記鶏もも肉に、前処理用油脂組成物として食用油脂及び乳化剤を含有する油脂組成物A及びBを4gと水4gを揉み込んで付着させた。その後、ブレッダーをまぶして付着させ加熱調理した。
2.バッターを使用した揚げ物(から揚げ、えびフライ、天ぷら)の製造
衣材料としてバッターを使用した揚げ物として、から揚げ、えびフライ、天ぷらを選定した。
から揚げについては、鶏もも肉約350g(10切れ)に対して、衣材料として、 から揚げ粉(「から揚げ粉塩味」、昭和産業株式会社)55gと水50gを混合したバッター105gを揉み込んで付着させた。その後、表2に示した各実施例、比較例の加熱方法、加熱温度、加熱時間で調理して、から揚げを得た。また、実施例12については、バッターを揉み込む前に、前記鶏もも肉に、前処理用油脂組成物として菜種油(昭和産業株式会社)4gを揉み込んで付着させた。その後、バッターを揉み込んで付着させ加熱調理した。
えびフライについては、えび(規格サイズ:13/15)10匹を、小麦粉で打ち粉をした後、バッターミックス(「バッターミックスT-51」、昭和産業株式会社)100gと水300gを混合したバッターに浸漬して、前記えびにバッターを付着させ、その上にパン粉を付着させた。その後、表2に示した各実施例、比較例の加熱方法、加熱温度、加熱時間で調理して、えびフライを得た。
天ぷらについては、えび(規格サイズ:21/25)10匹に、打ち粉として天ぷら粉(「昭和 天ぷら粉」、昭和産業株式会社)をまぶしたものを、前記天ぷら粉100gと水160gと混合したバッターに浸漬して、前記えびにバッターを付着させた。その後、表2に示した各実施例、比較例の加熱方法、加熱温度、加熱時間で調理して、天ぷらを得た。
【0019】
3.揚げ物の評価
1.及び2.で製造した各揚げ物を、以下の基準で、外観、衣の食感、及びジューシー感について評価した。評価は、専門パネル10名で行い、評価結果は、評価点の平均値で示した。
(1)外観
5:非常に色付きが良く、揚げ物としての外観が極めて良好
4:色付きが良く揚げ物としての外観が良好
3:やや色付きに欠けるが、許容範囲
2:やや色付きが悪く、揚げ物としての外観が劣る
1:色付きが悪く、揚げ物としての外観が極めて劣る
(2)衣の食感
5:極めて良好
4:良好
3:許容範囲
2:やや粉っぽさが感じられ、悪い
1:粉っぽさが感じられ、極めて悪い
(3)ジューシー感
5:具材が非常にジューシーに仕上がり、極めて良好
4:具材がジューシーに仕上がり、良好
3:具材のジューシー感が感じられる
2:具材のジューシー感がやや足りない
1:具材のジューシー感がなく、劣る
評価結果を表1及び表2に示した。
【0020】
【0021】
【0022】
表1に示した通り、一次加熱工程において、衣層を有する揚げ種を170~200℃の温度のフライ油中で短時間油ちょうし、その後二次加熱工程において、過熱水蒸気調理により120~300℃の温度で十分に加熱処理して得られた参考例1~7及び実施例8~9のから揚げ(衣材料としてブレッダーを使用)は、良好な外観、及び衣の食感を有し、且つ具材がジューシーに仕上がり良好であった。一方、油ちょうのみの一段階で加熱した比較例1、及び二段階で加熱した比較例3は、外観及び衣の食感の評価は良好であったが、具材のジューシー感は劣っており、過熱水蒸気調理のみの一段階で加熱した比較例2では、具材のジューシー感は良好であったが、外観及び衣の食感の評価は非常に悪かった。また、一次加熱において、油ちょうのフライ油温度を160℃で実施した比較例4では、衣の食感及び具材のジューシー感の評価は許容範囲であったが、外観が劣っていた。したがって、170℃以上のフライ油による一次加熱工程、及び過熱水蒸気による二次加熱工程を行なうことで、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を製造することができることが示唆された。さらに、参考例4と、食用油脂を含む油脂組成物(乳化剤含有)で具材を前処理した実施例8及び実施例9とを比較すると、実施例8及び実施例9の方が具材のジューシー感の評価が高かった。したがって、本発明の揚げ物の製造方法において、衣材料を具材に付着させる前、又は衣材料と同時に食用油脂を含む油脂組成物を付着させることにより、さらに具材のジューシー感を向上させることができることが示唆された。なお、乳化剤を含有する油脂組成物を用いることで、食用油脂のみを用いるより、揚げ物の衣層のはがれが抑制されていた。
【0023】
また、表2に示した通り、一次加熱工程において、衣層を有する揚げ種を170~200℃の温度のフライ油中で短時間油ちょうし、その後二次加熱工程において、200℃の温度の過熱水蒸気で十分に加熱処理して得られた参考例10~11及び実施例12のから揚げ、参考例13及び14のえびフライ、参考例15及び16の天ぷら(いずれも衣材料としてバッターを使用)は、良好な外観、及び衣の食感を有し、且つ具材がジューシーに仕上がり良好であった。一方、油ちょうのみの一段階で加熱した比較例5のから揚げ、比較例6のえびフライ、比較例7の天ぷらは、いずれも外観及び衣の食感の評価は良好であったが、具材のジューシー感は劣っていた。したがって、本発明の揚げ物の製造方法において、衣材料としてバッターを用いた場合も、ブレッダーを用いた場合と同様な効果が得られることが示唆された。また、参考例11と、菜種油で具材を前処理した実施例12とを比較すると、実施例12の方が具材のジューシー感の評価が高かった。したがって、本発明の揚げ物の製造方法において、衣材料としてバッターを用いた場合も、衣材料を具材に付着させる前、又は衣材料と同時に食用油脂を含む油脂組成物を付着させることにより、さらに具材のジューシー感を向上させることができることが示唆された。なお、実施例12の結果から、前記油脂組成物は食用油脂のみで用いても効果が得られることが示唆された。
【0024】
以上により、本発明の揚げ物の製造方法により、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を製造することができることが示唆された。
【0025】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明により、衣の外観及び食感に優れ、且つ具材がジューシーな揚げ物を容易に製造することができる。