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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】MTF測定装置およびそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/02 20060101AFI20221208BHJP
   H04N 17/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01M11/02 A
H04N17/00 200
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018205786
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020071145
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】正岡 顕一郎
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197201(JP,A)
【文献】特開2004-134861(JP,A)
【文献】特開平9-98292(JP,A)
【文献】特開2001-324413(JP,A)
【文献】特開2018-136222(JP,A)
【文献】Kenichiro Masaoka,Accuracy and Precision of Edge-Based Modulation Transfer Function Measurement for Sampled Imaging Systems,IEEE Access,2018年07月,Vol.6
【文献】KENICHIRO MASAOKA,Practical edge-based modulation transfer function measurement,OPTICS EXPRESS ,2019年01月,Vol. 27, No. 2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00-G01M 11/08
H04N 5/222-H04N 5/257
H04N 13/00-H04N 17/06
H04N 1/40-H04N 1/409
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像系の空間周波数特性を示すMTFを測定するMTF測定装置であって、
前記撮像系によって撮像された、傾きを有するエッジを含んだエッジ画像において、前記エッジを含んだ領域であるROIを設定するROI設定手段と、
前記ROIにおいて前記MTFを算出するMTF算出手段と、を備え、
前記ROI設定手段は、
予め定めた大きさの長方形のROIを前記エッジ画像上に表示する初期ROI表示手段と、
測定者から指示された位置に前記ROIの位置を変更する位置調整手段と、
前記測定者から指示された傾きで前記ROIを傾け、前記ROIの短辺の長さと短辺同士を結ぶ垂線の距離である短辺間の距離とを一定とし、前記ROIの長辺の長さを変えた平行四辺形の形状でROIを変形する傾き調整手段と、を備え、
前記MTF算出手段は、
前記ROIにおいて、前記エッジを含むラインごとに離散フーリエ変換を行うことで、前記ラインごとのMTFであるラインMTFを算出するラインMTF算出手段と、
前記ラインMTFを予め定めた空間周波数ごとに前記ROIのライン数で平均化して平均MTFを算出するラインMTF平均化手段と、
前記平均MTFからエイリアシング成分を除去する補正を行うエイリアシング除去手段と、
を備えることを特徴とするMTF測定装置。
【請求項2】
前記傾き調整手段は、水平方向または垂直方向に対して、傾きが±45°を区切りとして、前記ROIの傾きが垂直方向に近い場合、前記ROIの短辺の向きを水平方向とし、前記ROIの傾きが水平方向に近い場合、前記ROIの短辺の向きを垂直方向とすることを特徴とする請求項1に記載のMTF測定装置。
【請求項3】
前記ラインMTF平均化手段は、空間周波数ξごとに、前記平均MTFに1/sinc(ξ)を乗算することで、前記平均MTFの減衰成分を補償することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMTF測定装置。
【請求項4】
前記エイリアシング除去手段は、空間周波数ξにおいて、前記ROIの本来のMTF特性|F(ξ)|を単調減少関数であるsinc(ξ)と仮定し、比r(ξ)=|F(1-ξ)|/|F(ξ)|=(ξ/(1-ξ))に基づいて、前記平均MTFの空間周波数ξごとのMTFの値を、((2/π)(r(ξ)+1)E(4r(ξ)/(r(ξ)+1)))(E()は第二種完全楕円積分)で除算して補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のMTF測定装置。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のMTF測定装置として機能させるためのMTF測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像系の空間周波数特性を示すMTF(Modulation Transfer Function)を測定するMTF測定装置およびそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高解像度テレビジョンの最大の特徴は、高い空間解像度であり、カメラの解像度特性が重要となる。カメラの解像度特性は、MTFで表すことができる。
現在、MTFを測定する方法として、カメラが撮像する測定用のチャートのサイズが比較的小さく、撮像画角を正確にチャートサイズにフレーミングする必要がないSlanted-edge法(傾斜エッジ法;以下、エッジ法という)が一般的に用いられている(特許文献1,2、非特許文献1~4参照)。
【0003】
ここで、図16を参照して、従来のエッジ法によるMTF測定について説明する。
まず、エッジ法は、図16(a)に示すように、エッジを含んだチャートを撮像した画像(エッジ画像I)において、MTFの測定対象となるROI(Region Of Interest:関心領域)を選定する。
次に、エッジ法は、図16(b)に示すように、ROIからエッジeを検出し、その傾きθeを求める。そして、エッジ法は、ROIの各画素を、エッジeに沿って、等間隔に区分されたビンが並ぶ投影軸(x軸)に投影する。このとき、ビンの幅は、ROIの1画素の幅の1/4、1/8といったサブピクセル幅とする。
【0004】
そして、エッジ法は、投影軸のビンに投影された画素の値を各ビンで平均化することで、図16(c)に示すようなオーバーサンプリングされたエッジ広がり関数(ESF:Edge Spread Function)を求める。
さらに、エッジ法は、エッジ広がり関数を微分することで、図16(d)に示すような線広がり関数(LSF:Line Spread Function)を求める。
最後に、エッジ法は、エッジ広がり関数をフーリエ変換して絶対値をとり、直流(空間周波数“0”)で正規化することで、図16(e)に示すように、MTFを求める。
【0005】
通常のエッジ法では、ROIを図17(a),(b)に示すように、垂直あるいは水平に近いエッジを囲むよう縦長または横長の長方形の両短辺とエッジとが交差するようにROIを指定する。
また、近年では、図17(c)に示すように、垂直方向あるいは水平方向から大きく傾いたエッジ(例えば、傾きが斜め約45°)でも、エッジ広がり関数のピクセル間隔をエッジの傾き角に応じてスケーリングしてMTFを算出する手法が開示されている(非特許文献5参照)。
また、放射状にエッジが存在するチャート上で、図18(a),(b)に示すように、斜め45°に近い傾きをもったエッジに限定して、固定的に平行四辺形でROIを特定することで、MTFを算出する手法が開示されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-237177号公報
【文献】特開2018-13416号公報
【文献】特開2010-197201号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】ISO 12233:2017,“Photography - Electronic still picture imaging - Resolution and spatial frequency responses”
【文献】K. Masaoka, K. Arai, and Y. Takiguchi, “Real-time measurement of ultra-high definition camera modulation transfer function,” SMPTE Motion Imaging Journal, 127(10), 2018, doi: 10.5594/JMI.2018.2868435. (in press)
【文献】K. Masaoka et. al., Modified slanted-edge method and multidirectional modulation transfer function estimation,” Optics Express 22(5):6040-6046, March 2014
【文献】「テレビジョンカメラシステムの解像度特性測定法 技術資料(ARIB TR-B41)」、1.0版、P3-7、一般社団法人電波産業会、平成28年9月29日策定
【文献】J. K. M. Roland,“A Study of Slanted-Edge MTF Stability and Repeatability,” Proc. SPIE, vol. 9396, p. 93960L, Feb. 2015.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の長方形でROIを指定する手法では、垂直方向あるいは水平方向から大きく傾いたエッジの場合、長方形の対応する両辺とエッジとを交差させるようにROIを設定すると、図17(c)に示すように、幅(あるいは高さ)の大きいROIとなってしまい、MTFを算出するための計算コストが大きくなってしまうという問題がある。
また、図19に示すように、例えば、放射状にエッジが存在するチャートを撮像したエッジ画像I上で、垂直に近いエッジを含む領域(ROI)は、画像中心付近において指定可能である。しかし、斜めに傾いたエッジを含む領域(ROI)は、ROIと同様のエッジの画素領域を確保するには、画像中心付近において他のエッジを含んでしまうため、指定することができない。このように、従来の長方形でROIを指定する手法では、ROIを指定することができない場合があるという問題がある。
【0009】
また、図18に示すように、従来の平行四辺形でROIを指定する手法では、斜め45°に近い傾きをもったエッジのみをMTFの測定対象とし、エッジを撮像した画像上で、予め定めた位置にエッジが存在していることが前提であった。
そのため、エッジを含んだ画像上で、任意の位置や傾きで存在するエッジからでもMTFを測定することが可能なように、ROIを指定する手法が求められていた。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、MTFを測定する対象となるROIを、エッジの傾きに応じて任意の位置や傾きで指定することが可能なMTF測定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係るMTF測定装置は、撮像系の空間周波数特性を示すMTFを測定するMTF測定装置であって、ROI設定手段と、MTF算出手段と、を備え、ROI設定手段が、初期ROI表示手段と、位置調整手段と、傾き調整手段と、を備え、MTF算出手段が、ラインMTF算出手段と、ラインMTF平均化手段と、エイリアシング除去手段と、を備える構成とした。
【0012】
かかる構成において、MTF測定装置は、ROI設定手段の初期ROI表示手段によって、予め定めた大きさの長方形のROIをエッジ画像上に表示する。
そして、MTF測定装置は、ROI設定手段の位置調整手段によって、測定者から指示された位置にROIの位置を変更する。これによって、測定者は、測定対象のエッジ上にROIを移動させることができる。
また、MTF測定装置は、ROI設定手段の傾き調整手段によって、測定者から指示された傾きでROIを傾け、ROIの短辺の長さと短辺同士を結ぶ垂線の距離である短辺間の距離とを一定とし、ROIの長辺の長さを変えた平行四辺形の形状でROIを変形する。これによって、エッジに沿った傾きをもった平行四辺形でROIを設定することができる。
そして、MTF測定装置は、MTF算出手段のラインMTF算出手段によって、ROIにおいて、エッジを含むラインごとに離散フーリエ変換を行うことで、ラインごとのMTFであるラインMTFを算出する。
また、MTF測定装置は、MTF算出手段のラインMTF平均化手段によって、ラインMTFを予め定めた空間周波数ごとにROIのライン数で平均化して平均MTFを算出する。
また、MTF測定装置は、MTF算出手段のエイリアシング除去手段によって、平均MTFからエイリアシング成分を除去する補正を行う。
【0013】
なお、MTF測定装置は、コンピュータを、前記した手段として機能させるためのMTF測定プログラムで動作させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、ROIをエッジに沿った平行四辺形の形状で設定することができる。これによって、本発明は、長方形のみでROIを指定する場合に比べて、任意方向のエッジに対して無駄な領域を減らすことができ、MTF測定の計算コストを抑えることができる。
また、本発明によれば、エッジに沿った形状でROIを設定できるため、他のエッジと重ならないようにROIを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の構成を示すブロック構成図である。
図2】エッジ画像上に初期のROIを表示する例を説明するための画面図である。
図3】エッジ画像上でのROIの位置調整を説明するための画面図である。
図4】エッジ画像上でのROIの傾き調整を説明するための画面図である。
図5】傾きに応じて変化するROIの形状を説明するための説明図である。
図6】ラインMTF算出手段で算出するラインごとのMTFを説明するための説明図である。
図7】本来のMTFとエイリアシングのMTFを示すグラフ図である。
図8】本来のMTFとエイリアシングを含んだ複数のラインごとのMTFおよびその平均とを説明するためのグラフ図である。
図9】本来のMTFとエイリアシングを含んだ平均MTFとを説明するためのグラフ図である。
図10】本来のMTFとエイリアシングのMTFとの合成ベクトルを説明するための説明図である。
図11】r(ξ)と〈|F(ξ)|〉CORR/|F(ξ)|との関係を示すグラフ図である。
図12】本発明の実施形態に係るMTF測定装置で測定したMTFの測定結果を示すグラフ図である。
図13】本発明の実施形態に係るMTF測定装置の全体動作を示すフローチャートである。
図14】本発明の実施形態に係るMTF測定装置のROI設定動作を示すフローチャートである。
図15】本発明の実施形態に係るMTF測定装置のMTF算出動作を示すフローチャートである。
図16】従来のエッジ法の測定手順を(a)~(e)で説明する説明図である。
図17】従来のROIの形状を説明するための図であって、(a)は縦長の長方形のROI、(b)は横長の長方形のROI、(c)は垂直あるいは水平に対して大きな傾きを有するエッジの領域を指定するROIの形状を示す。
図18】従来の斜め約45°傾いた平行四辺形のROIの例を示す図である。
図19】従来の長方形のROIの問題点を説明するための画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[MTF測定装置の構成]
最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の構成について説明する。
【0017】
MTF測定装置1は、撮像系2の空間周波数特性を表すMTFを測定するものである。ここで、MTF測定装置1は、撮像系2と表示装置3とを接続する。
撮像系2は、MTFの被測定対象であって、ビデオカメラまたはスチールカメラ、MTFの被測定対象となるレンズを含んだカメラ等である。
撮像系2は、エッジ(コントラストの異なる境界)を含んだチャートCHを撮像したエッジ画像(動画像または静止画像)を、MTF測定装置1に出力する。
チャートCHは、エッジの傾きが、撮像系2の撮像素子(不図示)に対して任意の方向に傾いたエッジパターンを含んだテストチャートである。
【0018】
表示装置3は、MTF測定装置1を操作するユーザインタフェースを提供するとともに、撮像系2が撮像したエッジ画像、測定結果となるグラフ等を表示するものである。例えば、表示装置3は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等である。
なお、表示装置3は、撮像系2が撮像したエッジ画像を表示する表示装置と、測定結果を表示する表示装置とをそれぞれ別に設けてもよい。
【0019】
以下、撮像系2で撮像されたエッジ画像によって、撮像系2のMTFを測定するMTF測定装置1の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、MTF測定装置1は、エッジ画像記憶手段10と、ROI設定手段11と、MTF算出手段12と、MTF出力手段13と、を備える。
【0020】
エッジ画像記憶手段10は、撮像系2でチャートCHを撮像した画像(エッジ画像)を記憶するものである。なお、撮像系2の出力が動画像であれば、エッジ画像記憶手段10は、図示を省略した映像入力手段を介して、エッジ画像が撮像系2からフレーム画像として順次時系列に入力される。このエッジ画像記憶手段10は、例えば、ハードディスク、メモリ等の一般的な記憶装置である。
なお、エッジ画像記憶手段10が記憶するエッジ画像は、図示を省略した映像出力手段を介して表示装置3に出力される。
【0021】
ROI設定手段11は、撮像系2で撮像したエッジ画像内で、傾きを有するエッジを含むMTFの測定対象の領域であるROI(関心領域)を設定するものである。このROI設定手段11は、初期ROI表示手段110と、ROI調整手段111と、を備える。
【0022】
初期ROI表示手段110は、起動時、あるいは、図示を省略したスイッチ等によって測定者からROIの表示を指示されたタイミングで、初期形状のROIをエッジ画像に重畳して、表示装置3の画面に表示するものである。
初期形状のROIは、予め定めた水平画素数、垂直画素数の長方形である。なお、初期形状のROIは、縦長の長方形であっても、横長の長方形であっても構わないが、本実施形態では、縦長の長方形を例として説明する。
例えば、初期ROI表示手段110は、図2に示すように、ROIを、表示装置3が表示しているエッジ画像Iの中心に表示する。
【0023】
ROI調整手段111は、画面上に表示したROIの位置、大きさおよび傾きを調整するものである。このROI調整手段111は、位置・大きさ調整手段111aと、傾き調整手段111b、とを備える。
【0024】
位置・大きさ調整手段111aは、測定者からROIの位置や大きさを指示されることで、ROIの位置および大きさを変更するものである。
この位置・大きさ調整手段111aは、例えば、測定者が操作する図示を省略した2つ(第1,第2)のプッシュ/プルスイッチ付きのつまみ(コントロールノブ)の調整によって、ROIの位置を移動させたり、ROIの大きさを変更したりする。
【0025】
例えば、位置・大きさ調整手段111aは、第1のプッシュ/プルスイッチ付きのつまみにおいて、プッシュ状態でつまみを時計回りまたは反時計回りに回転させることで、水平方向(x方向)にROIの位置を移動させ、プル状態でつまみを回転させることで、垂直方向(y方向)にROIの位置を移動させる。
また、位置・大きさ調整手段111aは、第2のプッシュ/プルスイッチ付きのつまみにおいて、プッシュ状態でつまみを回転させることで、ROIの高さを変更し、プル状態でつまみを回転させることで、ROIの幅を変更する。このとき、位置・大きさ調整手段111aは、中心位置を固定して、ROIの高さや幅を変更することとする。
【0026】
なお、位置・大きさ調整手段111aにおける位置および大きさの調整手法は、この手法に限定されるものではない。
例えば、位置・大きさ調整手段111aは、ROIの領域内、あるいは、辺にマウスポインタをあわせてマウス(不図示)をドラッグおよびドロップ操作されることで、ROIを移動させてもよい。
また、位置・大きさ調整手段111aは、ROIの1頂点、あるいは、ROIの1辺の中心にマウスポインタをあわせてマウス(不図示)をドラッグおよびドロップ操作されることで、ROIの大きさを変更してもよい。
【0027】
この位置・大きさ調整手段111aによって、測定者は、図3に示すように、エッジ画像Iにおいて、ROIの対向する2辺(両短辺または両長辺)とエッジとが交差し、ROIの中心がほぼエッジ上の存在するように、ROIの位置や大きさを調整する。
【0028】
傾き調整手段111bは、測定者からROIの傾きを指示されることで、ROIの傾きを変更するものである。
この傾き調整手段111bは、例えば、測定者が操作する図示を省略したつまみ(コントロールノブ)の調整によって、ROIの中心を回転中心として、ROIの傾きを変更する。
【0029】
このとき、傾き調整手段111bは、水平方向または垂直方向に対して、傾きが±45°を区切りとして、ROIの短辺の向きを水平方向または垂直方向に切り替える。
なお、ROIの短辺の長さと短辺間の距離(短辺同士を結ぶ垂線の距離)は、傾き角によらず一定とし、それに伴い、ROIの長辺の長さを変える。
この傾き調整手段111bによって、測定者は、図4に示すように、エッジ画像Iにおいて、ROIの対向する短辺とエッジとが交差するようにROIを傾ける。
【0030】
ここで、図5を参照して、傾き調整手段111bが、指定された傾きに応じて変形させるROIの形状について説明する。
図5(a)は、傾きがない状態(180°回転している場合も同様)のROIの形状を示す。ここで、図5(a)のROIの長辺の長さをL、短辺の長さをLとする。以下、垂直方向を傾きの角度の基準とし、傾きの角度を反時計回りを正としたθとする。
図5(b)は、傾きの角度θが0°<θ≦45°の場合のROIの形状を示す。このとき、ROIは、短辺の向きが水平方向で長さがL、短辺間の距離がLの平行四辺形となる。
【0031】
図5(c)は、傾きの角度θが45°<θ<90°の場合のROIの形状を示す。このとき、ROIは、短辺の向きが垂直方向で長さがL、短辺間の距離がLの平行四辺形となる。
図5(d)は、傾きの角度θが±90°の場合のROIの形状を示す。このとき、ROIは、短辺の向きが垂直方向で長さがL、長辺の向きが水平方向で長さがLの長方形となる。
【0032】
図5(e)は、傾きの角度θが-45°≦θ≦0°の場合のROIの形状を示す。このとき、ROIは、短辺の向きが水平方向で長さがL、短辺間の距離がLの平行四辺形となる。
図5(f)は、傾きの角度θが-90°<θ<-45°の場合のROIの形状を示す。このとき、ROIは、短辺の向きが垂直方向で長さがL、短辺間の距離がLの平行四辺形となる。
なお、傾きの角度θ=±45°の場合、図5(c)、(f)に示すように、ROIの形状を、短辺の向きが垂直方向で長さがL、短辺間の距離がLの平行四辺形としてもよい。
図1に戻って、MTF測定装置1の構成について説明を続ける。
【0033】
ROI設定手段11によるROIの設定は、順次入力される撮像画像において、ROIを変更する必要がなければ、一度の設定でよい。
ROI設定手段11は、スイッチ等の入力手段(不図示)を介して、ROIの設定が完了した旨、あるいは、MTFの算出を開始する旨の指示を測定者から指示された段階で、設定したROIの位置、大きさ、傾き等を示す情報をMTF算出手段12に出力する。
【0034】
MTF算出手段12は、ROI設定手段11で設定されたエッジ画像のROIで特定される画像(ROI画像)において、MTFを算出するものである。このMTF算出手段12は、ラインMTF算出手段120と、ラインMTF平均化手段121と、エイリアシング除去手段122と、を備える。
【0035】
ラインMTF算出手段120は、ROI設定手段11で設定されたエッジ画像のROIで特定される画像(ROI画像)において、ラインごとのMTF(以下、ラインMTFと呼ぶ)を算出するものである。なお、ラインMTF算出手段120は、図5(c),(d),(f)に示した短辺が垂直であるROI画像の場合、ROI画像を90°回転させることでROI画像の短辺を水平に変換する。ラインとは、エッジと交差するROIの対向する辺(短辺)の方向の1画素×辺の画素数分の画像データである。
【0036】
また、ラインMTF算出手段120は、測定者から指示されたROIの傾きを、エッジの傾きとし、エッジの傾き角に応じてエッジ広がり関数のピクセル間隔をエッジの傾き角に応じてスケーリングして、以下に示すラインごとのMTFを算出する。これによって、ラインMTF算出手段120は、傾きによるエッジの水平方向(または垂直方向)の幅の違いを吸収して、ほぼ同一条件で、ラインMTFを算出することができる。
【0037】
ラインMTF算出手段120は、図6に示すように、ROIで特定される画像のライン(L,L,L,…,L;RはROIのライン数)ごとに、1ライン分の画像データの濃度変化を微分した値に対して離散フーリエ変換(1次元離散フーリエ変換)を施すことで、ラインMTFを算出する。
具体的には、ラインMTF算出手段120は、ξを1画素あたりの明暗サイクルである空間周波数(cycles/pixel)、Nを1ラインの画素数、nを画素位置のインデックス(0以上N未満)、x(n)を画素位置nの画素値としたとき、以下の式(1)により、ξごとに、ラインMTF(|F(ξ)|)を算出する。
ここで、ξごととは、予め定めた空間周波数ごとである。この空間周波数はROIの1ラインの画素数Nで決まり、ξ=[0,1/N,…,(N-1)/N]である。
【0038】
【数1】
【0039】
ラインMTF算出手段120は、算出したROIのライン数分のラインMTF(|F(ξ)|~|F(ξ)|)を、ラインMTF平均化手段121に出力する。
なお、ラインMTF算出手段120は、ROIのライン数分のラインMTF(|F(ξ)|~|F(ξ)|)を算出する前に、前フレームまでのROI画像と加算平均し、ラインMTFを算出する。これによって、ROIにおけるノイズを除去することができる。
【0040】
ラインMTF平均化手段121は、ラインMTF算出手段120で算出されたROIのライン数分のラインMTFを平均化するものである。
すなわち、ラインMTF平均化手段121は、式(1)で算出されたライン数(R)分のラインMTF(|F(ξ)|)を、ξごとに平均化して平均MTFを算出する。以下、ξごとに平均化した平均MTFを〈|F(ξ)|〉と表記する。
【0041】
ここで、ROIの大きさを無限と仮定した場合の理想的なアンサンブル平均について説明する。以下、理想的なアンサンブル平均を〈|F(ξ)|〉と表記する。
ROIのエッジ位相がサンプリング位置に対して一様に分布していると仮定した場合、〈|F(ξ)|〉は、以下の式(2)で表すことができる。
【0042】
【数2】
【0043】
ξは、空間周波数(cycles/pixel)を示す。
step(x-s)は、位置sで値が0から1に遷移する理想的なエッジの濃度変化を表すステップ関数を示す。
f(x)は、サンプリングを櫛関数comb(x)で表したカメラシステム(ここでは撮像系2)の線広がり関数(LSF)を示す。
δ(x)は、デルタ関数で、{δ(x)-δ(x-1)}は、エッジ広がり関数(ESF)の1次元微分を近似する差分フィルタを示す。
F(ξ)は、f(x)のフーリエ変換で計算される光伝達関数(OTF:Optical Transfer Function)を示す。
sinc(ξ)はsinc関数である。
【0044】
この式(2)に示すように、〈|F(ξ)|〉は、減衰成分であるsinc(ξ)を含んでいるため、減衰成分を補償する必要がある。
ラインMTF平均化手段121は、有限の大きさのROIから算出した平均MTF〈|F(ξ)|〉を理想的な平均〈|F(ξ)|〉とみなし、式(3)に示した減衰補償を行う。
すなわち、ラインMTF平均化手段121は、以下の式(3)に示すように、〈|F(ξ)|〉に、sinc(ξ)の逆関数(1/sinc(ξ))を掛けることで減衰成分を補償する。ここで、補償後の平均を〈|F(ξ)|〉CORRと表記する。
【0045】
【数3】
【0046】
ラインMTF平均化手段121は、補償後の平均〈|F(ξ)|〉CORRを平均MTFとして、エイリアシング除去手段122に出力する。
【0047】
エイリアシング除去手段122は、ラインMTF平均化手段121で算出された平均MTFからエイリアシング成分を除去する補正を行うものである。
〈|F(ξ)|〉CORRは、撮像系2の撮像素子(不図示)のサンプリング位置(固定位相)に基づいて求められたもので、エッジ法(傾斜エッジ法)のように種々のエッジ位相により求められたMTFではない。そのため、〈|F(ξ)|〉CORRは、エイリアシング(折り返し)の影響を受け、誤りを含んでいる。
そこで、エイリアシング除去手段122は、ラインMTF平均化手段121で算出された平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRから、エイリアシング成分を除去する。
【0048】
ここで、図7図11および数式により、エイリアシング成分を含んだ平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRと、本来のMTFとの関係について説明する。
図7に示すように、線広がり関数(LSF)であるf(x)をフーリエ変換して求められる本来のMTF(|F(ξ)|)(図7中、実線で示すMTFtrue)は、式(2)に示したcomb(x)が畳み込まれ、エイリアシングのMTF(図7中、破線で示すMTFaliasing)と位相差e-2πsξ-jπξで重なる。
【0049】
具体的に、図8を参照して、図3で示したROIとして水平100画素、垂直200画素から求めたMTFで説明する。
図8において、MTFtrueは、従来のエッジ法により求めたMTF(本来のMTF)、MTFlineは、ラインMTF算出手段120で算出した複数のラインMTFを示す。
この場合、単純に、複数のラインMTF(MTFline)を平均化したMTFは、MTFaverage+aliasingとして求められることになる。
すなわち、ラインMTF算出手段120で算出されるMTFaverage+aliasingは、ナイキスト周波数ξ以下であっても、図9に示すように、MTFaverage+aliasingは、MTFaliasingの影響により、ナイキスト周波数ξに近づくほど大きく見積もられる。
【0050】
ただし、MTFaverage+aliasingは、本来のMTFとエイリアシングのMTFとの位相差によって、単純に本来のMTFにエイリアシングのMTFを加算したものにはならない。
そこで、本来のMTFとエイリアシングのMTFとの割合を予め定めた制約の下で特定する。
まず、制約として、本来のMTFである|F(ξ)|が、ξ≧1、ξ≦-1で“0”とする。ここで、0≦ξ≦1の範囲で|F(ξ)|を求めることとした場合、エイリアシングのMTFは|F(1-ξ)|となる。
【0051】
この場合、図10に示すように、0≦ξ≦1のξごと、すなわち、F(ξ)およびF(1-ξ)の2つのベクトルをそれぞれ反対方向に回転(位相π分)させたξごとの合成ベクトルvの長さの平均が、ラインMTF平均化手段121で算出される〈|F(ξ)|〉CORRと等しい。なお、この平均は、1回転分の平均であるため、F(ξ)とF(1-ξ)との位相差(-jπξ(式(2)参照))には依存しない。
ここで、|F(ξ)|と|F(1-ξ)|との比r(ξ)を、以下の式(4)で定義する。
【0052】
【数4】
【0053】
F(ξ)およびF(1-ξ)の位相差を2θとしたとき、合成ベクトルvの長さの総和は、(1+2r(ξ)cos(2θ)+r(ξ)1/2となり、合成ベクトルvの長さの平均となる平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRを求めることができる。この関係を以下の式(5)に示す。
【0054】
【数1】
【0055】
ここで、E()は、以下の式(6)に示す第二種完全楕円積分である。
【0056】
【数6】
【0057】
r(ξ)と〈|F(ξ)|〉CORR/|F(ξ)|との関係を図11に示す。
このように、ラインMTF平均化手段121で算出された平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRと本来のMTFである|F(ξ)|とは、|F(ξ)|とエイリアシングのMTF|F(1-ξ)|との比r(ξ)に応じて変化する。
なお、ξ=0.5の場合、前記式(4)よりr(ξ)=1となり、式(5)により|F(0.5)|は、〈|F(0.5)|〉CORRを4/π(=1.2732)で除算することで求めることができる。
すなわち、ξ=0.5においては、本来のMTF値は、〈|F(0.5)|〉CORRを4/πで除算した値として固定的に求めることができる。しかし、ξ≠0.5においては、式(4)のr(ξ)が未定であるため、本来のMTF値を求めることができない。
そこで、エイリアシング除去手段122は、平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRを予め定めた特定の点を通る単調減少の関数に近似するように補正して、MTF特性を求める。
【0058】
ここでは、計算を簡単にするため、平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRは、本来のMTF特性を矩形関数のフーリエ変換であるsinc関数をp乗して近似し、ラインMTF平均化手段121で算出された平均MTFを補正する。sinc関数は、sinc(0)=1、sinc(1)=0の特定の点を通る関数である。
ここで、本来のMTF特性である|F(ξ)|をsinc(ξ)(0≦ξ≦1)とする。sinc(ξ)のpは、ξ=0.5(r(0.5)=1)として、前記式(5)を変形した以下の式(7)により求めることができる。なお、ξ=0.5が存在しない場合は、近接する空間周波数に対応する値〈|F(ξ)|〉CORRから、内挿によって、〈|F(0.5)|〉CORRを求めればよい。
【0059】
【数7】
【0060】
エイリアシング除去手段122は、式(7)で算出したpを用いて、以下の式(8)により、|F(ξ)|と|F(1-ξ)|との比r(ξ)を、ξごとに算出する。ここで、ξごととは、ROIの1ラインの画素数で予め定めた空間周波数ごとである。
【0061】
【数8】
【0062】
エイリアシング除去手段122は、式(8)で算出したr(ξ)を用いて、前記式(5)を変形した以下の式(9)により、ラインMTF平均化手段121で算出された平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRを補正して|F(ξ)|を求める。
【0063】
【数2】
【0064】
これによって、エイリアシング除去手段122は、0≦ξ≦0.5の範囲で平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRのエイリアシング成分を除去して、本来のMTFを推定することができる。
エイリアシング除去手段122は、〈|F(ξ)|〉CORRを補正した|F(ξ)|をMTF出力手段13に出力する。
【0065】
MTF出力手段13は、測定結果となるMTFを外部(例えば、表示装置3)に出力するものである。
このMTF出力手段13は、空間周波数ごとのMTF値を出力してもよいし、グラフ化して出力してもよい。
これによって、MTF測定装置1は、図12に示すように、ラインごとの平均のMTFにエイリアシングを含んだMTFaverage+aliasingからエイリアシングを除去して、本来のMTFtrueを測定することができる。
【0066】
以上説明したようにMTF測定装置1を構成することで、MTF測定装置1は、MTFを測定する対象となる領域であるROIを、エッジの傾きに応じた平行四辺形で、任意の位置、大きさで指定することができる。これによって、ROIのエリアをエッジの傾きに沿って小さくすることができ、MTFを算出する計算コストを抑えることができる。
また、MTF測定装置1は、長方形のROIでは他のエッジを含んでしまうような場合でも、ROIを平行四辺形に変形して、他のエッジと重ならないようにROIを設定することができる。
【0067】
また、MTF測定装置1は、エッジの傾きを求めずに、MTFを測定することができ、従来のエッジ法よりも計算コストを抑えることができる。
また、MTF測定装置1は、ROIのラインごとにMTF(ラインMTF)を算出して平均化することで、必ずしもエッジが直線である必要がない。
なお、MTF測定装置1は、コンピュータを、前記した各手段として機能させるためのプログラム(MTF測定プログラム)により動作させることができる。
【0068】
[MTF測定装置の動作]
次に、図13図15を参照して、本発明の実施形態に係るMTF測定装置1の動作について説明する。
ここでは、MTF測定装置1は、撮像系2から入力される、チャートCHを撮像したエッジ画像を、エッジ画像記憶手段10に記憶するとともに、表示装置3にエッジ画像を表示する。以下、MTF測定装置1がエッジ画像からMTFを測定する動作について詳細に説明する。
【0069】
(全体動作)
まず、図13を参照(構成については適宜図1参照)して、MTF測定装置1の全体動作について説明する。
ステップS1において、ROI設定手段11は、ROIの位置、大きさおよび傾きを設定する。このステップS1の動作は、図14を参照して、後で詳細に説明する。
ステップS2において、MTF算出手段12は、エッジ画像記憶手段10に記憶されているエッジ画像から、ステップS1で設定されたROIを対象としてMTFを算出する。このステップS2の動作は、図15を参照して、後で詳細に説明する。
ステップS3において、MTF出力手段13は、ステップS2で算出されたMTFを、例えば、グラフ化して、表示装置3に出力する。
【0070】
ここで、外部から測定の終了を指示された場合(ステップS4でYes)、MTF測定装置1は、動作を終了する。
一方、測定動作を継続する場合(ステップS4でNo)、MTF測定装置1は、ステップS2に戻る。なお、ROIを再設定する場合は、ステップS1に戻る(不図示)。
【0071】
(ROI設定動作)
次に、図14を参照(構成については適宜図1参照)して、図13のステップS1のROI設定動作について説明する。なお、ROI設定動作は、ROI設定手段11が行う。
ステップS10において、初期ROI表示手段110は、予め定めた水平画素数、垂直画素数の長方形である初期形状のROIをエッジ画像に重畳して、表示装置3の画面に表示する。
ステップS11において、ROI調整手段111は、測定者から指示に応じて、ROIの位置、大きさおよび傾きを調整する。
ここで、測定者から、ROIの位置や大きさの調整を指示された場合(ステップS11で“位置・大きさ”)、位置・大きさ調整手段111aは、測定者のつまみ等の操作に応じて、ROIの位置を水平方向または垂直方向に移動させたり、ROIの大きさ(高さ、幅)を変更させたりする(ステップS12)。
【0072】
また、測定者から、ROIの傾きの調整を指示された場合(ステップS11で“傾き”)、傾き調整手段111bは、測定者のつまみ等の操作によって、ROIの中心を回転中心として、ROIの傾きを変更する(ステップS13)。
このとき、傾き調整手段111bは、図5で説明したように、ROIの短辺の長さと短辺同士を結ぶ垂線の距離である短辺間の距離とを一定とし、ROIの長辺の長さを変えた平行四辺形の形状で傾きを変更する。また、傾き調整手段111bは、水平方向または垂直方向に対して、傾きが±45°を区切りとして、ROIの短辺(平行四辺形の底辺)の向きを水平方向または垂直方向に切り替える。
これによって、ROI設定手段11は、任意の向きのエッジであっても、エッジに沿ってROIの形状を指定することができる。
また、測定者から、ROIの設定が完了した旨、あるいは、MTFの算出を開始する旨が指示された場合(ステップS11で“完了”)、MTF測定装置1は、図13のステップS2に動作を移す。
【0073】
(MTF算出動作)
次に、図15を参照(構成については適宜図1参照)して、図13のステップS2のMTF算出動作について説明する。なお、MTF算出動作は、MTF算出手段12が行う。
【0074】
ステップS30において、ラインMTF算出手段120は、エッジ画像記憶手段10に記憶されているエッジ画像から、ステップS1(図13参照)で設定されたROIで特定される画像(ROI画像)を読み出す。
ステップS31において、ラインMTF算出手段120は、ステップS30で読み出したROI画像を、前フレームまでのROI画像とで加算平均を行う。
ステップS32において、ラインMTF算出手段120は、ROI画像のラインごとに、1ライン分の画像データの濃度変化の微分した値に対して、前記式(1)の離散フーリエ変換を施すことで、ラインMTFを算出する。
【0075】
ステップS33において、ROI画像のすべてのラインについてラインMTFを算出したか否かを判定する。
ここで、まだ、ROI画像のすべてのラインについてラインMTFを算出していない場合(ステップS33でNo)、MTF測定装置1は、ステップS32に戻って、ラインMTF算出手段120において、次のラインを対象としてラインMTFを算出する。
一方、ROI画像のすべてのラインについてラインMTFを算出した場合(ステップS33でYes)、MTF測定装置1は、ステップS34に動作を進める。
【0076】
ステップS34において、ラインMTF平均化手段121は、ROIのライン数分のラインMTFを空間周波数ξ(0≦ξ≦0.5)ごとに平均化して、平均MTF〈|F(ξ)|〉を算出する。
ステップS35において、ラインMTF平均化手段121は、前記式(3)により、平均MTF〈|F(ξ)|〉の減衰成分を補償した〈|F(ξ)|〉CORRを算出する。
【0077】
ステップS36において、エイリアシング除去手段122は、補償後の平均MTF〈|F(ξ)|〉CORRを補正する関数として、特定の点を通り、〈|F(ξ)|〉CORRに近似する予め定めた単調減少関数の形状を特定するパラメータを決定する。ここでは、エイリアシング除去手段122は、前記式(7)により、ξ=1でMTF値が“0”、ξ=0.5で、MTF値が、ラインMTF平均化手段121で求めた〈|F(0.5)|〉CORR/(4/π))となる各点を通る関数(ここでは、sinc(ξ))のパラメータ(ここでは、p)を決定する。なお、ξ=0.5が存在しない場合、エイリアシング除去手段122は、内挿により求めた〈|F(0.5)|〉CORRを用いる。
【0078】
ステップS37において、エイリアシング除去手段122は、パラメータpにより特定される関数で、本来のMTFとなる未知の|F(ξ)|と|F(1-ξ)|との比r(ξ)を、前記式(8)により、空間周波数ξ(0≦ξ≦0.5)ごとに算出する。
ステップS38において、エイリアシング除去手段122は、ステップS37で算出した比r(ξ)と、ステップS35で算出した〈|F(ξ)|〉CORRとから、前記式(9)により、空間周波数ξごとのMTF値である|F(ξ)|を算出する。
【0079】
以上の動作によって、MTF測定装置1は、MTFを測定する対象となる領域であるROIを、エッジの傾きに応じた平行四辺形で、任意の位置、大きさで指定することができる。また、MTF測定装置1は、エッジの傾きを求めずに、ROIのラインごとのMTFから、ROI全体のMTFを測定することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0080】
(変形例1)
ここでは、MTF測定装置1は、MTF算出手段12において、エッジ画像上のエッジの傾きを求めずに、ROIのラインごとに求めたラインMTFを平均化して、エイリアシングを除去する手法で、MTFを算出した。
これによって、MTF測定装置1は、エッジの傾きを求める従来のエッジ法に比べて、計算コストを抑えることができる。
しかし、MTF算出手段12は、計算コストに余裕があれば、従来のエッジ法によって、MTFを算出してもよい。
また、MTF算出手段12は、測定者から指示されたROIの傾きではなく、ROI画像において、エッジの傾きを演算により求め、非特許文献5に記載されているように、エッジの傾き角に応じてエッジ広がり関数のピクセル間隔をスケーリングして、ラインごとのMTFを算出してもよい。
【0081】
(変形例2)
ここでは、MTF測定装置1は、位置・大きさ調整手段111aによって、ROIの位置および大きさを調整可能とした。
しかし、初期ROI表示手段110で表示する予め定めたROIの大きさを必ずしも変更する必要はない。
その場合、位置・大きさ調整手段111aは、ROIの位置のみを調整する位置調整手段として機能させればよい。
【0082】
(変形例3)
ここでは、MTF測定装置1は、エイリアシング除去手段122において、前記式(8)の比r(ξ)を逐次算出した。
しかし、この比r(ξ)の算出は、ROIを設定した後、予め定めた時間または回数だけROI画像を加算平均した場合、省略してもよい。
その場合、MTF測定装置1は、エイリアシング除去手段122によって、ROI設定後、予め定めた時間、あるいは、予め定めた回数だけROI画像の加算平均を行った後、図示を省略した記憶部に、空間周波数ξと比r(ξ)とを、1次元ルックアップテーブルとして保持する。そして、エイリアシング除去手段122は、ステップS8において、空間周波数ξごとに、1次元ルックアップテーブルから、比r(ξ)を読み出すこととする。これによって、MTF測定装置1は、演算量を減らすことができる。
【符号の説明】
【0083】
1 MTF測定装置
10 エッジ画像記憶手段
11 ROI設定手段
110 初期ROI表示手段
111 ROI調整手段
111a 位置・大きさ調整手段(位置調整手段)
111b 傾き調整手段
12 MTF算出手段
120 ラインMTF算出手段
121 ラインMTF平均化手段
122 エイリアシング除去手段
13 MTF出力手段
2 撮像系
3 表示装置
CH チャート画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19