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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】三次元測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/20 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
G01B5/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018228781
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020091208
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好弘
(72)【発明者】
【氏名】大山 良和
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 侑利
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-077905(JP,A)
【文献】特開2009-281533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの三次元形状を測定する三次元測定装置であって、
前記ワークの三次元形状を測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドと、
前記プローブが前記ガイドに沿って前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定する推定部と、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定する位置測定部と、
前記推定部が推定した前記変位状態に基づいて、前記位置測定部が測定した前記プローブの位置を補正する補正部と、
前記ガイドの面に対向するエアパッドの浮き量に基づいて、前記プローブの移動方向と前記ガイドの方向との差である方向差を検出する第1検出部と、
を有し、
前記推定部は、前記第1検出部が検出した前記方向差に基づいて前記変位状態を推定する、
三次元測定装置。
【請求項2】
ワークの三次元形状を測定する三次元測定装置であって、
前記ワークの三次元形状を測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドと、
前記プローブが前記ガイドに沿って前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定する推定部と、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定する位置測定部と、
前記推定部が推定した前記変位状態に基づいて、前記位置測定部が測定した前記プローブの位置を補正する補正部と、
前記ガイドの長手方向を回転軸とする回転加速度を検出する第2検出部と、
を有し、
前記推定部は、前記回転加速度に基づいて前記変位状態を推定する、
三次元測定装置。
【請求項3】
ワークの三次元形状を測定する三次元測定装置であって、
前記ワークの三次元形状を測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドと、
前記プローブの移動加速度、移動方向、及び位置の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより、前記プローブが前記ガイドに沿って前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定する推定部と、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定する位置測定部と、
前記推定部が推定した前記変位状態に基づいて、前記位置測定部が測定した前記プローブの位置を補正する補正部と、
を有する三次元測定装置。
【請求項4】
ワークの三次元形状を測定する三次元測定装置であって、
前記ワークの三次元形状を測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドと、
前記プローブの形状及び質量の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより、前記プローブが前記ガイドに沿って前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定する推定部と、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定する位置測定部と、
前記推定部が推定した前記変位状態に基づいて、前記位置測定部が測定した前記プローブの位置を補正する補正部と、
を有する三次元測定装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する、
ワークの三次元形状を測定するためのプローブが前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定することにより実行する測定方法であって、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドの面に対向するエアパッドの浮き量に基づいて、前記プローブの移動方向と前記ガイドの方向との差である方向差を検出するステップと、
検出した前記方向差に基づいて前記変位状態を推定するステップと、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定するステップと、
推定した前記変位状態に基づいて、測定した前記プローブの位置を補正するステップと、
を有する測定方法。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
ワークの三次元形状を測定するためのプローブが前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定することにより実行する測定方法であって、
前記プローブを移動させる方向を規定するガイドの長手方向を回転軸とする回転加速度を検出するステップと、
検出した前記回転加速度に基づいて前記変位状態を推定するステップと、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定するステップと、
推定した前記変位状態に基づいて、測定した前記プローブの位置を補正するステップと、
を有する測定方法。
【請求項7】
コンピュータが実行する、
ワークの三次元形状を測定するためのプローブの移動加速度、移動方向、及び位置の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより、前記プローブが前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定するステップと、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定するステップと、
推定した前記変位状態に基づいて、測定した前記プローブの位置を補正するステップと、
を有する測定方法。
【請求項8】
コンピュータが実行する、
ワークの三次元形状を測定するためのプローブの形状及び質量の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより、前記プローブが前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定するステップと、
前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定するステップと、
推定した前記変位状態に基づいて、測定した前記プローブの位置を補正するステップと、
を有する測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の形状を測定するための三次元測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブを移動させて被測定物に接触させることにより被測定物の位置を特定して被測定物の形状を測定することができる三次元測定装置が知られている。特許文献1においては、プローブに発生している振動を測定し、振動を打ち消すようにアクチュエータを振動させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-341608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元測定装置において、プローブの移動中に発生する振動が収束しないまま測定すると、測定値のばらつきが大きくなり、繰り返し精度が悪化してしまうため、振動が無い状態で測定することが望ましい。しかしながら、従来技術のように、プローブに発生している振動を測定してからアクチュエータを振動させる場合、測定してからアクチュエータの動作に反映されるまでに遅延時間が発生してしまうので、振動を十分に打ち消せない場合があるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、プローブの変位の影響を低減させることができる三次元測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の三次元測定装置は、ワークの三次元形状を測定する三次元測定装置であって、前記ワークの三次元形状を測定するためのプローブと、前記プローブを移動させる方向を規定するガイドと、前記プローブが前記ガイドに沿って前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定する推定部と、前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定する位置測定部と、前記推定部が推定した前記変位状態に基づいて、前記位置測定部が測定した前記プローブの位置を補正する補正部と、を有する。
【0007】
前記三次元測定装置は、前記プローブの移動方向と前記ガイドの方向との差である方向差を検出する第1検出部をさらに有し、前記推定部は、前記方向差に基づいて前記変位状態を推定してもよい。前記第1検出部は、前記ガイドの面に対向するエアパッドの浮き量に基づいて前記方向差を検出してもよい。
【0008】
前記三次元測定装置は、前記ガイドの長手方向を回転軸とする回転加速度を検出する第2検出部をさらに有し、前記推定部は、前記回転加速度に基づいて前記変位状態を推定してもよい。
【0009】
前記推定部は、前記プローブの移動加速度、移動方向、及び位置の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより前記変位状態を推定してもよい。また、前記推定部は、前記プローブの形状及び質量の少なくともいずれかに基づいて前記プローブの先端の振動量を推定することにより前記変位状態を推定してもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の測定方法は、コンピュータが実行する、ワークの三次元形状を測定するためのプローブが前記ワークに向かって移動する間の前記プローブの変位状態を推定するステップと、前記プローブを前記ワークに接触させたときの前記プローブの位置を測定するステップと、推定した前記変位状態に基づいて、測定した前記プローブの位置を補正するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プローブの変位の影響を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】測定装置の概要を説明するための図である。
図2】測定部の機能構成を示す図である。
図3】第1検出部が方向差を検出する方法の一例を説明するための図である。
図4】測定部の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[測定装置1の概要]
まず、実施形態に係る測定装置1の概要について説明する。測定装置1は、例えば、測定用のプローブ17を移動させながら、プローブ17の先端(すなわち、スタイラスの先端)を被測定物であるワーク2に接触させてワーク2の形状を測定する三次元測定装置である。
【0014】
図1は、測定装置1の概要を説明するための図である。測定装置1は、ワーク2が載置されるテーブル10と、コラム11と、サポータ12と、ビーム13と、Y軸方向駆動部14と、スライダ15と、Z軸スピンドル16とを備える。
【0015】
コラム11、サポータ12、及びビーム13は、テーブル10を跨ぐ門型の構造体である門部を構成する。コラム11及びサポータ12は、テーブル10の両端に一対に設けられている。ビーム13は、コラム11とサポータ12との間に掛け渡されており、X軸方向にプローブ17を移動させる際のプローブ17の移動方向を規定するX軸方向のガイドを有する。
【0016】
Y軸方向駆動部14は、コラム11、サポータ12及びビーム13を含む門部をY軸方向に移動させる。プローブ17は、後述するスライダ15及びZ軸スピンドル16を介してビーム13に結合しているので、Y軸方向駆動部14は、門部をY軸方向に移動させることにより、プローブ17をY軸方向に移動させることができる。
【0017】
スライダ15は、Z軸方向にプローブ17を移動させる際のプローブ17の移動方向を規定するZ軸方向のガイドを有しており、Z軸方向に移動するZ軸スピンドル16を支持する。スライダ15は、ビーム13が有するX軸方向のガイドに沿ってX軸方向に移動可能である。スライダ15は、ビーム13とスライダ15との間に設置されたX軸移動機構により、ビーム13に沿ってX軸方向に移動する。
【0018】
Z軸スピンドル16は、スライダ15に対してZ軸方向に移動する。Z軸スピンドル16の下端には、プローブ17が設けられている。
【0019】
プローブ17は、ワーク2に接触するスタイラスを有する。プローブ17は、X軸方向のガイドに沿ってスライダ15が移動し、Y軸方向のガイドに沿ってコラム11が移動し、Z軸方向のガイドに沿ってZ軸スピンドル16が移動することにより、テーブル10の上方の任意の位置に移動する。測定装置1は、上記の移動機構を適宜移動して、プローブ17の先端をテーブル10上に載置されたワーク2に対して接触させることにより、ワーク2の形状を測定することができる。
【0020】
Y軸方向駆動部14の下部には、測定装置1がワーク2の形状を測定するための制御を行う測定部20が収容されている。測定部20は例えばコンピュータであり、記憶媒体(不図示)に記憶されたプログラムを実行することにより、測定装置1の各部を制御するとともに、測定したプローブ17の位置(例えばスタイラスの先端の位置)を補正する。測定部20は、補正した位置に基づいてワーク2の形状を示す情報を生成する。以下、測定部20の機能について詳細に説明する。
【0021】
[測定部20の機能構成]
図2は、測定部20の機能構成を示す図である。測定部20は、第1検出部21と、第2検出部22と、推定部23と、X軸方向位置検出部242と、補正部25とを有する。
【0022】
第1検出部21は、プローブ17の移動方向とガイドの方向との差である方向差を検出する。第1検出部21は、プローブ17がX軸方向に移動する際のプローブ17の移動方向とビーム13が有するX軸方向のガイドとの角度の差をX軸方向差として検出する。第1検出部21は、プローブ17がY軸方向に移動する際のプローブ17の移動方向とY軸方向駆動部14が有するY軸方向のガイドとの角度の差をY軸方向差として検出する。第1検出部21は、プローブ17がZ軸方向に移動する際のプローブ17の移動方向とスライダ15が有するZ軸方向のガイドとの角度の差をZ軸方向差として検出する。
【0023】
第1検出部21は、例えば、ガイドの面に対向するエアパッドの浮き量に基づいて方向差を検出する。図3は、第1検出部21が方向差を検出する方法の一例を説明するための図である。
【0024】
図3においては、ガイドGと、ガイドGに沿って設けられているエアパッドP1及びエアパッドP2とが示されている。図3におけるc1は、プローブ17が停止した状態でのガイドGとエアパッドP1の浮き量とプローブ17が移動している状態でのガイドGとエアパッドP1の浮き量との差である。図3におけるc2は、プローブ17が停止した状態でのガイドGとエアパッドP2の浮き量とプローブ17が移動している状態でのガイドGとエアパッドP2の浮き量との差である。c1及びc2は、例えば光学センサによって検出される。
【0025】
図3におけるd1は、ガイドGの長手方向の基準位置AからエアパッドP1の中心までの距離である。図3におけるd2は、基準位置AからエアパッドP2の中心までの距離である。d1及びd2は、設計値又は予め測定された値であり、例えばメモリに記憶されている。
【0026】
この場合、プローブ17の移動方向とガイドの方向との差である方向差は、ガイドの方向に対するプローブ17の移動方向の傾きとして、以下の式により表される。
方向差=(c2-c1)/(d2-d1)
第1検出部21は、上記の式に基づいて方向差を算出し、算出した方向差を推定部23に入力する。
【0027】
第2検出部22は、ガイドの長手方向を回転軸とするガイドの回転加速度を検出する。第2検出部22は、例えば、X軸方向のガイド、Y軸方向のガイド、及びZ軸方向のガイドそれぞれが有する加速度センサから出力された信号に基づいて、それぞれのガイドの回転加速度を算出する。具体的には、第2検出部22は、門部のX軸周りの回転加速度、門部のZ軸周りの回転加速度、Z軸スピンドル16のX軸周りの回転加速度、及びZ軸スピンドル16のY軸周りの回転加速度を算出する。第2検出部22は、算出した回転加速度を推定部23に入力する。第2検出部22は、回転加速度を算出した時刻と回転加速度とを関連付けて推定部23に入力してもよい。
【0028】
第2検出部22は、第1検出部21が算出した方向差を取得し、方向差に基づいて補正した後のガイドの方向を回転軸とするプローブ17の回転加速度を算出してもよい。このようにすることで、第2検出部22は、算出する回転加速度の精度を向上させることができる。
【0029】
推定部23は、プローブ17がガイドに沿ってワーク2に向かって移動する間のプローブ17の変位状態を推定する。変位状態は、プローブ17の移動軌跡と、X軸方向のガイド、Y軸方向のガイド及びZ軸方向のガイドの長手方向の直線との差の大きさ、差の変動量、差の変動速度、及び差の変動周期等の状態である。推定部23は、推定した変位状態を示す数値を補正部25に通知する。
【0030】
推定部23は、例えば、第1検出部21から入力された方向差に基づいて変位状態を推定する。推定部23は、三次元座標(X、Y、Z)のそれぞれに対する変位量(ΔX1、ΔY1、ΔZ1)を方向差に基づいて」算出し、算出した変位量を補正部25に通知する。
【0031】
推定部23は、第2検出部22から入力された回転加速度に基づいて変位状態を推定してもよい。推定部23は、X軸方向のガイド、Y軸方向のガイド、及びZ軸方向のガイドのそれぞれを回転軸とする回転加速度に基づいて、三次元座標(X、Y、Z)のそれぞれの正規の位置からの変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)を算出し、算出した変位量を補正部25に通知する。
【0032】
推定部23は、例えば、プローブ17が移動を開始してからの経過時間と回転加速度とに基づいて、変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)を算出する。推定部23は、プローブ17が移動を開始してからの経過時間と変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)とを関連付けて補正部25に通知する。推定部23は、第2検出部22から入力された回転加速度を算出した時刻と変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)とを関連付けて補正部25に通知してもよい。
【0033】
推定部23は、プローブ17の移動加速度、移動方向、プローブ17の位置、プローブ17の形状、及びプローブ17の質量の少なくともいずれかに基づいてプローブ17の先端の振動量を推定することにより変位状態を推定してもよい。推定部23は、構造体の剛性、Z軸スピンドル16の突き出し量、又はスタイラスの先端質量等に基づいて推定した振動量に基づいて変位状態を推定してもよい。
【0034】
推定部23は、例えば、振動のモデルに基づく以下の計算式によって振動状態を推定する。
=G・sin(ω+φ)
ここで、Gは座標値及び加速度の関数により定められるゲイン、ωは角固有振動数、φは位相ずれ量であり、X軸方向及びY軸方向でそれぞれ異なる。
【0035】
推定部23は、推定した振動状態に基づいて、プローブ17が移動を開始してからの経過時間に関連付けてX軸方向の変位量ΔX3、及びY軸方向の変位量ΔY3を算出する。推定部23は、Z軸方向の変位量ΔZ3をさらに算出してもよい。推定部23は、算出した変位量(ΔX3、ΔY3、ΔZ3)を補正部25に通知する。
【0036】
位置測定部24は、ワーク2の形状を測定するためにプローブ17を移動させ、プローブ17がワーク2に接触したときのプローブ17の先端の位置を検出する。位置測定部24は、測定制御部241と、X軸方向位置検出部242と、Y軸方向位置検出部243と、Z軸方向位置検出部244とを有する。
【0037】
測定制御部241は、予め形状測定用プログラムにおいて設定されたパラメータに基づいてX軸移動機構、Y軸移動機構及びZ軸移動機構を制御する。測定制御部241は、プローブ17の位置を検出するタイミングをX軸方向位置検出部242、Y軸方向位置検出部243及びZ軸方向位置検出部244に通知する。
【0038】
X軸方向位置検出部242は、測定制御部241から通知されたタイミングにおけるX軸方向のガイドに設けられているスケーラの読取値に基づいて、X軸方向のプローブ17の位置を検出する。Y軸方向位置検出部243は、測定制御部241から通知されたタイミングにおけるY軸方向のガイドに設けられているスケーラの読取値に基づいて、Y軸方向のプローブ17の位置を検出する。Z軸方向位置検出部244は、測定制御部241から通知されたタイミングにおけるZ軸方向のガイドに設けられているスケーラの読取値に基づいて、Z軸方向のプローブ17の位置を検出する。X軸方向位置検出部242、Y軸方向位置検出部243及びZ軸方向位置検出部244は、それぞれ検出したX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置座標(X、Y、Z)を補正部25に通知する。
【0039】
補正部25は、推定部23が推定した変位状態に基づいて、位置測定部24が測定したプローブ17の位置(例えばスタイラスの先端の位置)を補正する。具体的には、補正部25は、X軸方向位置検出部242、Y軸方向位置検出部243及びZ軸方向位置検出部244から通知されたワーク2の位置座標(X、Y、Z)に、推定部23から通知される変位量を加算することにより、補正後の位置座標(X、Y、Z)を算出する。
【0040】
補正部25は、例えば、プローブ17の移動方向とガイドの方向との差である方向差に基づく変位量(ΔX1、ΔY1、ΔZ1)を(X、Y、Z)に加算して、以下のように(X、Y、Z)を算出する。
(X、Y、Z)=(X+ΔX1、Y+ΔY1、Z+ΔZ1)
【0041】
補正部25は、ガイドの回転による変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)を(X、Y、Z)に加算して、以下のように(X、Y、Z)を算出してもよい。
(X、Y、Z)=(X+ΔX2、Y+ΔY2、Z+ΔZ2)
なお、補正部25は、(X、Y、Z)を算出する際に、(X、Y、Z)が測定された時刻に対応する変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)を加算することで、高い精度で位置座標を補正することができる。
【0042】
補正部25は、プローブ17の先端の振動に起因する変位量(ΔX3、ΔY3、ΔZ3)を(X、Y、Z)に加算して、以下のように(X、Y、Z)を算出してもよい。
(X、Y、Z)=(X+ΔX3、Y+ΔY3、Z+ΔZ3)
なお、補正部25は、(X、Y、Z)を算出する際に、(X、Y、Z)が測定された時刻に対応する変位量(ΔX3、ΔY3、ΔZ3)を加算することで、高い精度で位置座標を補正することができる。
【0043】
補正部25は、複数の変位量に基づいて位置座標を補正してもよい。補正部25は、例えば、変位量(ΔX1、ΔY1、ΔZ1)、変位量(ΔX2、ΔY2、ΔZ2)、変位量(ΔX3、ΔY3、ΔZ3)を用いて、以下のように(X、Y、Z)を算出してもよい。
=X+ΔX1+ΔX2+ΔX3
=Y+ΔY1+ΔY2+ΔY3
=Z+ΔZ1+ΔZ2+ΔZ3
【0044】
[測定部20の動作フローチャート]
図4は、測定部20の動作の流れを示すフローチャートである。図4のフローチャートは、ワーク2の形状の測定を開始する操作が行われたことを契機として開始する。
【0045】
まず、第1検出部21は、各軸方向のガイドとプローブ17が移動する方向との方向差を検出する(S1)。続いて、第2検出部22は、プローブ17が移動している間の各軸方向のガイドの回転加速度を検出する(S2)。続いて、推定部23は、検出された方向差及び回転加速度に基づいて、プローブ17の変位量を推定する。ステップS1からS3と並行して、位置測定部24は、プローブ17を移動させながら、プローブ17の位置を検出する(S4)。
【0046】
続いて、補正部25は、推定部23が推定した変位量に基づいて、位置測定部24が測定したプローブ17の位置を補正する(S5)。補正部25は、補正後の位置を示す位置座標を出力する(S6)。
【0047】
[変形例]
以上の説明においては、補正部25が、位置測定部24が測定したプローブ17の位置を補正する場合を例示したが、測定装置1は、位置測定部24が測定したプローブ17の位置を補正するとともに、各部の位置を物理的に動かすことにより、補正が必要な量を低減させてもよい。例えば、測定部20は、予め定められた設定値、又は推定部23が推定した変位状態に基づいて、エアパッドに流入させる空気量を調整することで、ガイドの方向とプローブ17の移動方向との方向差を低減させてもよい。
【0048】
[測定装置1による効果]
以上説明したように、測定装置1においては、推定部23が、プローブ17がガイドに沿ってワーク2に向かって移動する間のプローブ17の変位状態を推定する。そして、補正部25が、推定部23が推定した変位状態に基づいて、位置測定部24が測定したプローブ17の位置を補正する。このようにすることで、プローブ17の振動をキャンセルする振動を加えることなく、プローブ17の位置の測定精度を向上させることができるので、ワーク2の形状の測定精度が向上する。
【0049】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0050】
1 測定装置
2 ワーク
10 テーブル
11 コラム
12 サポータ
13 ビーム
14 Y軸方向駆動部
15 スライダ
16 Z軸スピンドル
17 プローブ
20 測定部
21 第1検出部
22 第2検出部
23 推定部
24 位置測定部
25 補正部
241 測定制御部
242 X軸方向位置検出部
243 Y軸方向位置検出部
244 Z軸方向位置検出部
図1
図2
図3
図4