(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ヒプロメロースフタル酸エステル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08B 13/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
C08B13/00
(21)【出願番号】P 2019089903
(22)【出願日】2019-05-10
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2018092116
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】松原 純一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光弘
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101225115(CN,A)
【文献】特開2018-035216(JP,A)
【文献】特開平08-333401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
氷酢酸溶液中のヒプロメロースを、酢酸ナトリウム存在下、75~100℃にて無水フタル酸と反応させて反応生成物溶液を得るエステル化工程と、
前記反応生成物溶液を70℃以下に冷却する冷却工程と、
前記冷却された反応生成物溶液と、0~40℃の水を混合してヒプロメロースフタル酸エステルを析出させヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程と
を少なくとも含むヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
【請求項2】
前記冷却工程が、前記反応生成物溶液の温度を40℃以上70℃以下にすることを含む請求項1に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記析出工程において、前記水を混合後の前記反応生成物溶液の温度が、55℃以下である請求項1又は請求項2に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記冷却工程と前記析出工程の間に、前記冷却された反応生成物溶液を、前記ヒプロメロースフタル酸エステルを析出させない量の0~40℃の水と混合する工程を更に含む請求項1~3のいずれか
一項に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
【請求項5】
前記エステル化工程で得られた反応生成物溶液が、前記70℃以下に冷却されるまでは水を添加されることがない請求項1~4のいずれか一項に記載のヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒプロメロースフタル酸エステル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腸溶性ポリマーとして、セルロース骨格にメチル基(-CH3)とヒドロキシプロピル基(-C3H6OH)の2つの置換基を導入してエーテル構造とするほか、カルボキシベンゾイル基(-COC6H4COOH)の置換基を導入してエステル構造として、計3種類の置換基を導入した高分子であるヒプロメロースフタル酸エステルが広く知られている。腸溶性ポリマーであるヒプロメロースフタル酸エステル(別名ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートとも称され、以下、「HPMCP」ともいう。)は、腸溶性コーティング剤として広く使用されている。
【0003】
腸溶性コーティング製剤は、酸に対して不安定な薬物を投与する場合や、胃粘膜の保護等を目的として広く用いられる重要な製剤の一つである。従来、腸溶性コーティング製剤を製造するには、腸溶性ポリマーを有機溶媒に溶解し、これをスプレーして、腸溶性フィルムを薬物表面に形成する方法が一般的であった。しかし、有機溶媒を用いた場合の環境保全や安全性を考慮して、腸溶性ポリマーを微粉砕して水分散液として用いる、いわゆる水系腸溶性コーティング法が開発されている(特許文献1)。
【0004】
また、HPMCPは、コーティング用途や薬物の放出制御用途の他、水難溶性薬物と共に用いて加熱溶融押出法(ホットメルトエクストルージョン)又はスプレードライ法により固体分散体を調製する用途等、幅広く使用されている。その中で、加熱溶融押出法は溶媒の使用を回避することができるため、水に不安定な薬物に対して適用でき、溶剤回収不要なことによる安全性及び環境への配慮の軽減や溶剤回収工程にかかるエネルギーの節約、作業員への安全面での改善といった面から注目されている。
【0005】
HPMCPは、アルカリ性水溶液や有機溶剤に対する溶解性に優れているという特長がある反面、水分に対する安定性が悪く、使用中あるいは保存中に加水分解されて、フタル酸を発生するという不利な欠点がある。特許文献2では、その安定性をさらに向上させるべく、一旦合成したHPMCPを部分的に加水分解すると、水分に対する安定性が向上されたHPMCPを得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-109219号公報
【文献】特開昭49-034582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、安定性に優れたHPMCPを合成するために、加水分解を考慮し、無水フタル酸の量を最終製品における置換度を達成するのに必要とする量よりも多く使用することは、生産性や経済性を考慮すると好ましくない。
また、加水分解が起こるとHPMCPからカルボキシベンゾイル基が脱離し、置換度が低下するため、溶媒への溶解性が低下する。通常コーティングする前には、HPMCP単独又は薬物及びHPMCPの両者を溶解させた組成物中の未溶解物について、フィルターを用いて除去する。しかし、未溶解物の量が多いとフィルターの目詰まりが発生して、作業性が低下する。また、フィルターを用いない場合においても、コーティングのときに用いるノズルで閉塞を起こす可能性がある。更に、カルボキシベンゾイル基の置換度低下によりコーティング被膜量が低下して、目標の耐酸性が得られない。このように、従来のHPMCPについて、更なる溶解性の向上が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、溶媒に溶解させた際に優れた溶解性を有し、未溶解物の発生を抑えることができるHPMCP及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記の目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、HPMCPを製造する反応工程において、得られた反応生成物溶液を冷却することにより、加水分解の反応速度を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の一つの態様では、氷酢酸溶液中のヒプロメロースを、酢酸ナトリウム存在下、75~100℃にて無水フタル酸と反応させて反応生成物溶液を得るエステル化工程と、前記反応生成物溶液を70℃以下に冷却する冷却工程と、前記冷却された反応生成物溶液と、0~40℃の水を混合してヒプロメロースフタル酸エステルを析出させヒプロメロースフタル酸エステル懸濁液を得る析出工程とを少なくとも含むヒプロメロースフタル酸エステルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、HPMCPの加水分解によるカルボキシベンゾイル基の脱離を抑制することができ、HPMCPを溶媒に溶解させた際の溶解性が向上し、未溶解物の発生を抑えることができる。このため、HPMCPの未溶解物をフィルターで除去する際にフィルターの目詰まりも改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、HPMCPの製造方法について説明する。
原料となるヒプロメロース(別名ヒドロキシプロピルメチルセルロースとも称され、以下、「HPMC」ともいう。)は、公知の方法、例えばシート状、チップ状又は粉末状のパルプに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを接触させてアルカリセルロースとした後に、塩化メチル、酸化プロピレンのエーテル化剤を加えて反応することにより得られる。
【0011】
使用されるアルカリ金属水酸化物溶液は、アルカリセルロースが得られれば特に限定されないが、経済的観点から水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液が好ましい。また、その濃度は、アルカリセルロースの組成を安定させ、セルロースエーテルの透明性を確保する観点から、好ましくは23~60質量%、より好ましくは35~55質量%である。
アルカリセルロースの製造後は、通常の方法で塩化メチル、酸化プロピレン等のエーテル化剤を加えてエーテル化反応させHPMCを得る。
【0012】
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)は、好ましくは0.73~2.83、より好ましくは1.25~2.37である。ヒドロキシプロポキシ基の置換度(MS)は、好ましくは0.10~1.90、より好ましくは0.12~0.95である。メトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の置換度は、例えば、第17改正日本薬局方のヒプロメロースに関する分析方法よって得られた値から換算することができる。
また、20℃におけるHPMC2質量%の水溶液の粘度は、第17改正日本薬局方の毛細管粘度計法に準じて測定され、好ましくは2.2~18.0mPa・s、より好ましくは5.0~16.5mPa・sである。
【0013】
このようにして得られたHPMC又は市販のHPMCを用いて、エステル化工程、冷却工程、析出工程、必要に応じて行う洗浄工程、脱液工程及び乾燥工程を経て、HPMCPを製造することができる。
【0014】
エステル化工程では、触媒存在下、HPMCとエステル化剤である無水フタル酸を反応させて反応生成物溶液を得る。
エステル化反応に用いる溶媒は、HPMCとエステル化剤と触媒を溶解できるものが好ましく、水ではなく、氷酢酸等が挙げられる。溶媒の使用量は、反応速度の観点から、当該HPMCに対して、質量比で、好ましくは1.0~3.0倍、より好ましくは1.2~2.0倍、更に好ましくは1.5~1.8倍とするとよい。
【0015】
エステル化工程の触媒は、安定性及び経済性等の観点から、塩素酸ナトリウム等のアルカリ金属塩素酸塩及び酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。塩素酸ナトリウムの仕込量は、漂白及び解重合度の観点から、原料HPMCに対して、質量比で、好ましくは0.004~0.060倍、より好ましくは0.01~0.03倍である。酢酸ナトリウムの仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCに対して、モル比で、好ましくは0.1~1.6倍、より好ましくは0.6~1.1倍である。
【0016】
エステル化剤である無水フタル酸の仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCに対して、モル比で、好ましくは0.4~1.8倍、より好ましくは0.6~1.2倍である。
【0017】
エステル化工程にあたっては、高粘性の流体で均一な混合物を形成して混練を行うのに適する双軸撹拌機を用いる。具体的には、ニーダー、インターナルミキサー等の名称で一般に市販されている。
エステル化工程の反応温度は、反応速度又は粘度の観点から、好ましくは75~100℃、より好ましくは80~95℃である。また、エステル化工程の反応時間は、好ましくは2~8時間、より好ましくは3~6時間である。
【0018】
エステル化反応後、HPMCPの加水分解速度を下げる目的で、得られた反応生成物溶液を冷却する。冷却は、好ましくは、エステル化反応を行った双軸撹拌機内で撹拌機のジャケットを冷却することにより行う。冷却工程での反応生成物溶液の温度は、HPMCPの加水分解速度の観点から、好ましくは70℃以下、より好ましくは65℃以下、更に好ましくは60℃以下である。反応生成物溶液の温度の下限は、特に制限されないが、反応生成物溶液を移送する時の粘度の観点から好ましくは40℃以上とする。
【0019】
反応生成物溶液を冷却後、必要に応じて、未反応の無水フタル酸の処理及び粘度の観点から、反応生成物溶液に好ましくは0~40℃、より好ましくは0~30℃の水を加えることができる。水の添加量は、HPMCPが析出しない範囲であり、原料HPMCに対して、好ましくは0.7~2.3倍(質量比)、より好ましくは1.3~2.3倍(質量比)、更に好ましくは1.5~2.0倍(質量比)である。冷却された反応生成物溶液と水とを混合した析出前の反応生成物溶液の温度は、HPMCPの加水分解の観点から、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下である。ここで、水と混合後の反応生成物溶液の温度とは、必要に応じて水を混合した後の温度であり、HPMCPが析出していない温度である。水と混合した反応生成物溶液の温度を制御することにより、気温上昇に伴い水温が上昇した水を用いた場合でも、生成されたHPMCPの加水分解によるフタル酸の発生を抑えることができる。
【0020】
析出工程では、得られた反応生成物溶液と水を混合してHPMCPの析出によるHPMCP懸濁液を得る。水の量は、未反応の無水フタル酸の処理及び粘度調整の目的で、反応生成物溶液の質量に対して質量比で、好ましくは2.2~6.0倍、より好ましくは3.0~5.0倍である。なお、上述したように冷却後の反応生成物溶液に必要に応じて水を加えた場合には、析出工程において加える水の量は、反応生成物溶液の質量に対して、質量比で、好ましくは0.7~5.7倍、より好ましく1.5~4.0倍である。
析出工程において、接触(混合)させる水の温度は、好ましくは0~40℃、より好ましくは0~30℃である。また、水と混合した反応生成物溶液の温度は、HPMCPの加水分解の観点から、好ましくは55℃以下、より好ましくは50℃以下である。ここで、水と混合後の反応生成物溶液の温度は、水を加えてHPMCPの析出が開始する温度であり、好ましくは析出を完了するまで維持される。
【0021】
必要に応じて、析出されたHPMCPを洗浄し乾燥する洗浄、乾燥工程を行ってもよい。
洗浄工程では、残存酢酸、遊離フタル酸を除去するため、水で十分洗浄する。洗浄に使用する水の温度は、HPMCPの加水分解抑制の観点から、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~40℃、更に好ましくは10~30℃である。
浄工程後で乾燥工程前に、必要に応じて脱液工程を行ってもよい。
乾燥工程では、乾燥機としてトレイ乾燥機や流動層乾燥機を用いて乾燥を行うことができ、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~80℃で、好ましくは1~5時間、より好ましくは2~3時間乾燥することにより高純度のHPMCPを得ることができる。
【0022】
このようにして得られたHPMCPにおけるメトキシ基の置換度(DS)は、好ましくは0.73~2.83、より好ましくは1.25~2.37であり、ヒドロキシプロポキシ基の置換度(MS)は、好ましくは0.10~1.90、より好ましくは0.12~0.95であり、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度(DS)は、好ましくは0.370~0.740、より好ましくは0.620~0.710、更に好ましくは0.654~0.684である。HPMCPのカルボキシベンゾイルオキシ基の置換度(DS)は、第17改正日本薬局方の医薬品各条「ヒプロメロースフタル酸エステル」に記載されている方法による測定後、換算して得ることができる。メトキシ基の置換度(DS)及びヒドロキシプロポキシ基の置換度(MS)は、HPMCのそれらと同様にして得ることができる。
【0023】
また、HPMCP10質量部をアセトン90質量部に溶解させた場合の20℃における透光度は、85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは91%以上である。透光度が85%未満だとコーティングの際のフィルターやスプレーノズルの目詰まりする場合があり、作業性が低下する。
透光度は、光電比色計PC―50型を用いて測定したアセトンの光透過率を100%としたときの、同一条件下でのHPMCPのアセトン溶液の透過率をいう。HPMCPがどの程度溶解しているかを示す指標であり、例えば透光度が高いということは、アセトンに溶解する部分が多いということを意味する。アセトンの透光度の測定は、第17改正日本薬局方の一般試験法の「紫外可視吸光度測定法」に記載の透過率測定方法によって測定できる。
なお、HPMCPのアセトンへの溶解性は、コーティング用組成物や固体分散体用組成物における溶媒であるメタノール、エタノール等の有機溶媒の他、アンモニア水溶液への溶解性と相関関係があるため、溶媒への溶解性の指標となり得る。
【実施例】
【0024】
以下に、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例及び実施例に限定されるものではない。
実施例1
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた反応生成物溶液を50.8℃になるまで冷却した。次に14.8℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は39.2℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は27.9℃であった。
その後、HPMCP懸濁液に含まれるHPMCPを23.7℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.675のHPMCP粉末を得た。
得られたHPMCPのアセトンへの溶解性は、以下の方法により測定した。
アセトン198.0gを八オンス瓶に測り、撹拌羽根を用いて200rpmの速度で5分間撹拌した。そこに、得られたHPMCP22gを添加し、更に同じ速度で60分間撹拌した後に撹拌羽根を停止し、得られた溶液を測定用溶液とした。この測定用溶液を20℃にて光電比色計PC―50型を用いて測定したところ、透光度は91.0%であった。
冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
【0025】
実施例2
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた反応生成物溶液を61.1℃になるまで冷却した。次に14.9℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は46.2℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は29.2℃であった。
その後、析出物を22.4℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.660のHPMCP粉末を得た。
実施例1に示した方法により、透光度を測定し、冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
【0026】
比較例1
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機に、氷酢酸1120g、20℃における2質量%水溶液粘度が5.87mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース(DS;1.89、MS;0.25)700gを溶解させた。次いで、無水フタル酸579.7g、塩素酸ナトリウム10.9gを溶解した後、酢酸ナトリウム295.3gを溶解し、85℃で4.5時間反応させた。
その後、得られた84.8℃の反応生成物溶液を冷却することなく、16.8℃の純水を1287.3g加え、撹拌した。反応生成物溶液と純水が均一に混合したときの温度は62.9℃であった。HPMCPが析出せず、反応生成物溶液と純水が均一に混合したことを確認した後に、反応生成物溶液に対して4倍質量の25.0℃の水を反応生成物溶液に徐々に加えて反応生成物(HPMCP)が析出したHPMCP懸濁液を得た。得られたHPMCP懸濁液の温度は32.6℃であった。
その後、析出物を23.7℃の水で十分に水洗後、流動層乾燥機で80℃、2時間乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、カルボキシベンゾイルオキシ基の置換度が0.619のHPMCP粉末を得た。
実施例1に示した方法により、透光度を測定し、冷却工程後の反応生成物溶液の温度、反応生成物溶液と水の混合温度及び透光度の結果を表1に示す。
【0027】