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  • 特許-コアシェル型量子ドットの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コアシェル型量子ドットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/08 20060101AFI20221208BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20221208BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20221208BHJP
   C09K 11/08 20060101ALN20221208BHJP
   C09K 11/70 20060101ALN20221208BHJP
   C09K 11/56 20060101ALN20221208BHJP
   C09K 11/88 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
C01B25/08 A
B82Y20/00
B82Y40/00
C09K11/08 G
C09K11/08 A
C09K11/70
C09K11/56
C09K11/88
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019216307
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084839
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸司
(72)【発明者】
【氏名】野島 義弘
(72)【発明者】
【氏名】鳶島 一也
【審査官】田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0211262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288713(US,A1)
【文献】特開2018-065738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/08
C09K 11/00-11/89
B82Y 20/00,B82Y 40/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル型量子ドットの製造方法であって、
溶液中で、少なくともInを含む第III族元素前駆体と、少なくともPを含む第V族元素前駆体を反応させて、少なくともIn及びPを含み第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアを合成するステップと、
前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第V族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記半導体ナノ結晶コア上に第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を形成するステップと、
前記バッファー層が形成された前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第VI族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記バッファー層上に、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルを形成するステップとを含み、
前記半導体ナノ結晶コアを合成するステップでは、反応させる第III族元素前駆体と第V族元素前駆体の化学量論比において、前記半導体ナノ結晶コアにおける第III族元素とV族元素の化学量論比よりも、前記第III族元素前駆体が過剰に存在する条件とし、
前記バッファー層を形成するステップでは、過剰分の前記第III族元素前駆体と第II族元素前駆体を含む混合物に対して第V族元素前駆体を反応させることを特徴とするコアシェル型量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型量子ドット及びコアシェル型量子ドットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ粒子単結晶において、結晶のサイズが励起子のボーア半径以下になると強い量子閉じ込め効果が生じ、エネルギー準位が離散的になる。エネルギー準位は結晶のサイズに依存することになり、光吸収波長や発光波長は結晶サイズで調整が可能となる。また、半導体ナノ粒子単結晶の励起子再結合による発光が、量子閉じ込め効果により高効率となり、またその発光は基本的に輝線であることから、大きさの揃った粒度分布が実現できれば、高輝度狭帯域な発光が可能となることから、注目を集めている。このようなナノ粒子における強い量子閉じ込め効果による現象を量子サイズ効果と呼び、その性質を利用した半導体ナノ結晶を量子ドットとして広く応用展開するための検討が行われている。
【0003】
量子ドットの応用として、ディスプレイ用蛍光体材料への利用が検討されてきている。狭帯域高効率な発光を実現できれば、既存技術で再現できなかった色を表現できることになることから、次世代のディスプレイ材料として注目されてきている。しかし、最も発光特性の良い量子ドットとしてCdSeが検討されてきたが、その高い毒性により使用の制限があり、Cdフリーの材料を検討する必要があった。
【0004】
そこで、注目された材料が、InPをコアとした量子ドットである。CdSeがMITのグループから報告された3年後の1996年には、可視光の発光が確認され(非特許文献1)、その後、量子サイズ効果により、RGB(赤:λ=630nm 1.97eV、緑:λ=532nm、青:λ=465nm)をカバーできることが明らかとなり、精力的に検討がなされてきた。
【0005】
しかし、CdSeに比べてInPは光学特性が劣ることがわかっている。問題の一つが、InP量子ドットの量子効率の改善である。基本的にナノサイズの半導体結晶粒子である量子ドットの表面は非常に活性であり、バンドギャップの小さいコアは非常に反応性が高くなっているため、CdSeやInPなどのコアだけでは結晶表面にダングリングボンド等の欠陥が生じやすい。そのため、コアよりもバンドギャップが大きく、格子ミスマッチの小さい半導体ナノ結晶をシェルとした、コアシェル型の半導体結晶粒子の製造がなされており、CdSe系の量子ドットでは100%に近い量子効率が得られている。一方でInPをコアとした量子ドットにおいても同様にシェルを覆うことで量子効率が改善するが、60%~80%に留まっており、量子効率の改善が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Nozik et al, 「Highly efficient band-edge emission from InP quantum dots」, Appl. Phys. Lett. 68, 3150(1996)
【文献】J. P. Park, J. -J. Lee, S.-W.Kim, 「Highly luminescent InP/GaP/ZnSQDs emitting in the entire colorrange via a heating up process」, Sci. Rep. 6: 30094(2016)
【文献】Yang Li, Xiaoqi Hou, Xingliang Dai, Zhenlei Yao, Liulin Lv, Yizheng Jin,and Xiaogang Peng, 「Stoichiometry-controlled InP-based quantum dots: synthesis,photoluminescence, and electroluminescence」, J.Am.Chem.Soc.2019,141,6448-6452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
InPをコアとした量子ドットの量子効率が低い原因として、二つ挙げられている。原因の一つは、III-V族のコアに対してII-VI族のシェルを形成することによる、コアシェル界面の欠陥である。コアシェル界面の欠陥は価数の違いによるものであり、III価とII価のイオンが混在すると欠陥が生じるのは自明である。このコアシェル界面の欠陥に対して、InPコアをGaPからなるシェルで覆うことで量子効率の改善が可能となることが非特許文献2より明らかとなっており、緑色で85%の高い量子効率を得ている。これは、第III-V族半導体結晶であるInPのコアに、同族のGaPのシェルを形成することにより、コアに近いシェル間における欠陥の発生を防ぐことができるためである。しかしながら、GaPで覆うことにより、短波長シフトしやすく、赤色の発光は現在実現できていない。また、GaPはZnSに比べて耐酸化性が低く、実用に用いるためにはさらにZnSシェルを被覆する必要があるが、第III-V族/第II-VI族半導体界面が生じるため、量子効率の改善には限界があった。
【0008】
量子効率が低いもう一つの原因として、コア合成時に余ったIn3+イオンが、第II-VI族半導体シェルで被覆する際に取り込まれることにより、欠陥が生じて量子効率が下がってしまうことが考えられる。InPコアの合成の際に、化学量論組成になるようにIn前駆体とP前駆体を調整すると発光特性が悪く、In前駆体をP前駆体よりも多くすると、粒度分布が改善され半値幅が40nm程度のものができるため、コア合成後にIn前駆体が余ってしまう。この改善方法として、InPコアを合成し、次いでZnSeの薄いシェルで覆い、安定性を持たせた後に、精製を行うことで合成時に余ったIn3+イオンを取り除き、さらにZnSeシェルとZnSシェルを追加で被覆していくことで量子効率を90%以上まで向上させた方法が、非特許文献3で示された。しかしながらこの方法は、精製に伴い工程数が多くなるため実用化には不向きであり、連続的にワンポットで合成できないためスケールアップも難しいことから、より簡便な作製方法が求められている。
【0009】
以上のように、第III-V族半導体ナノ結晶をコアとして用いた量子ドットは、第II-VI族半導体ナノ結晶シェルとの間に欠陥が生じるため、量子効率が上がらないという問題があった。また、InP合成時において、In前駆体量が少ないと発光特性が悪化することから化学量論組成での合成はできず、In前駆体量を増やして合成した結果In3+イオンが余ってしまい、第II-VI族半導体ナノ結晶シェル内に取り込まれることによる欠陥が生じてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は上記のような問題に鑑みてなされたもので、蛍光発光効率が向上した量子ドット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、少なくともIn及びPを含み、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアと、前記半導体ナノ結晶コアを被覆する、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルとを含むコアシェル型量子ドットであって、前記半導体ナノ結晶コアと前記半導体ナノ結晶シェルとの間に、第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を有するコアシェル型量子ドットを提供する。
【0012】
このようなコアシェル型量子ドットによれば、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶をコアとして用いた場合でも、蛍光発光効率が向上した量子ドットとなる。
【0013】
このとき、前記半導体ナノ結晶コアは、InPを少なくとも含み、さらにGaP、AlPから選択される半導体ナノ結晶又はその混晶を含むものであるコアシェル型量子ドットとすることができる。
【0014】
これにより、発光の半値幅がより改善された量子ドットとなる。
【0015】
このとき、前記半導体ナノ結晶シェルが、ZnSe、ZnS又はその混晶から選択される1つ以上を含むものであるコアシェル型量子ドットとすることができる。
【0016】
これにより、蛍光発光効率がより向上した量子ドットとなる。
【0017】
このとき、前記バッファー層における前記第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶がZnであるコアシェル型量子ドットとすることができる。
【0018】
これにより、ZnのバンドギャップはInPよりも大きいため、シェルとしてより適したものである。
【0019】
このとき、コアシェル型量子ドットの製造方法であって、溶液中で、少なくともInを含む第III族元素前駆体と、少なくともPを含む第V族元素前駆体を反応させて、少なくともIn及びPを含み第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアを合成するステップと、前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第V族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記半導体ナノ結晶コア上に第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を形成するステップと、前記バッファー層が形成された前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第VI族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記バッファー層上に、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルを形成するステップとを含むコアシェル型量子ドットの製造方法を提供することができる。
【0020】
これにより、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶をコアとして用いた場合でも、蛍光発光効率が向上した量子ドットを製造することができる。
【0021】
このとき、前記半導体ナノ結晶コアを合成するステップでは、反応させる第III族元素前駆体と第V族元素前駆体の化学量論比において、前記半導体ナノ結晶コアにおける第III族元素とV族元素の化学量論比よりも、前記第III族元素前駆体が過剰に存在する条件とし、前記バッファー層を形成するステップでは、過剰分の前記第III族元素前駆体と第II族元素前駆体を含む混合物に対して第V族元素前駆体を反応させるコアシェル型量子ドットの製造方法とすることができる。
【0022】
これにより、蛍光発光効率がより向上した量子ドットを製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、コアシェル界面にバッファー層を形成することで、コア合成において余ったIn前駆体による欠陥と、第III-V族半導体ナノ粒子コアと第II-VI族半導体ナノ粒子シェル界面における欠陥を低減することが可能となり、その結果、蛍光発光効率(量子効率)が向上した量子ドット及びスケールアップが容易な製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るコアシェル型量子ドットの概念図(断面図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
上述のように、第III-V族半導体ナノ結晶をコアとして用いたコアシェル型量子ドットにおいて、蛍光発光効率を向上することが求められていた。
【0027】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、少なくともIn及びPを含み、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアと、前記半導体ナノ結晶コアを被覆する、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルとを含むコアシェル型量子ドットであって、前記半導体ナノ結晶コアと前記半導体ナノ結晶シェルとの間に、第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を有するコアシェル型量子ドットにより、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶をコアとした用いた場合でも、蛍光発光効率(量子効率)が向上した量子ドットとなることを見出し、本発明を完成した。
【0028】
また、溶液中で、少なくともInを含む第III族元素前駆体と、少なくともPを含む第V族元素前駆体を反応させて、少なくともIn及びPを含み第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアを合成するステップと、前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第V族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記半導体ナノ結晶コア上に第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を形成するステップと、前記バッファー層が形成された前記半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第VI族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、前記バッファー層上に、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルを形成するステップとを含むコアシェル型量子ドットの製造方法により、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶をコアとした用いた場合でも、蛍光発光効率(量子効率)が向上した量子ドットを製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
以下、図面を参照して説明する。
【0030】
まず、本発明に係るコアシェル型量子ドットについて説明する。
上述のように、第III-V族半導体ナノ粒子からなる量子ドットの蛍光発光効率(量子効率)を向上させるという課題について鋭意検討を重ねた結果、図1の断面図に記すような構造をもつ量子ドット100により、蛍光発光効率(量子効率)を改善できることを見出した。本発明者は、In、Pを含む第III-V族からなる半導体ナノ結晶コア101と、コアを被覆する第II-VI族からなる単一又は複数の半導体ナノ結晶シェル102から構成されるコアシェル型の量子ドットにおいて、前記コアシェル間に第II-V族半導体ナノ結晶を含むバッファー層103を形成することで、蛍光発光効率(量子効率)が向上することを見出した。
【0031】
本発明に係る半導体ナノ結晶コアにおいては、少なくともInPを含み、さらにGaP、AlPから選択される半導体ナノ結晶又はその混晶を含むことが好ましい。InPは有効質量が小さく、量子サイズ効果が大きいため、粒径が少し変わっただけで発光波長が大きくシフトしてしまう。しかし、GaやAlは有効質量が比較的大きく、ドープすることで発光の半値幅が改善する。なお、発光波長は短波長にシフトしやすいため、適宜最適な添加量を検討すればよい。
【0032】
本発明に係る半導体ナノ結晶シェルにおいては、ZnSe、ZnS又はその混晶から選択される少なくとも1つ以上を含むシェルを形成させることが好ましい。また、この場合、ZnSeとZnSの混晶を間に形成することがより好ましい。ZnSeのシェルにZnSのシェルを形成した場合の格子ミスマッチによる量子効率の低下を、より有効に抑制できるからである。また、ZnSは大気中でも安定となるため、最表面をZnSで被覆することが好ましい。
【0033】
本発明に係るバッファー層においては、第II-V族半導体ナノ結晶としてZnを用いることが好ましい。Znは正方晶アンチ蛍石構造を有する直接遷移型の半導体であり、バンドギャップは1.5eV程度と、1.28eVのInPよりも大きなバンドギャップを有しており、シェルとして好適に利用することができる。また、正方晶アンチ蛍石構造はInPやCdSeなどの閃亜鉛鉱型の構造と近く、第III-V族半導体ナノ粒子コアの合成時に余った第III族元素前駆体由来のIII-V族半導体ナノ結晶との相溶性が期待できる。また、コアシェル界面における価数の違いについても、コアに含まれるP原子とシェルに含まれるZn原子を含んでいることから、欠陥の生成をより有効に抑えることが可能となる。
【0034】
バッファー層形成の確認は、例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)により得られる粒子画像を計測し、粒子サイズの増大を測定し、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry:EDX)により元素分析を行うことができ、バッファー層形成後に、Zn、P等の元素の割合を算出することで確認可能である。
【0035】
また、本発明のコアシェル型量子ドットは、分散性を付与し、表面欠陥を低減するため、表面にリガンドと呼ばれる有機配位子が配位されたものとすることが望ましい。
【0036】
リガンドは、非極性溶媒への分散性向上の観点から、脂肪族炭化水素を含むことが好ましい。このようなリガンドとしては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリル酸、デカン酸、オクタン酸、オレイルアミン、ステアリル(オクタデシル)アミン、ドデシル(ラウリル)アミン、デシルアミン、オクチルアミン、オクタデカンチオール、ヘキサデカンチオール、テトラデカンチオール、ドデカンチオール、デカンチオール、オクタンチオール、トリオクチルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシド、トリブチルホスフィン、トリブチルホスフィンオキシド等が挙げられ、これらを1種単独で用いても複数組み合わせても良い。
【0037】
以下に、本発明に係るコアシェル型量子ドットの製造方法について詳細に示す。
本発明に係るコアシェル型量子ドットは、少なくともIn、Pを含み、第III-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶コアと、第II-VI族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶シェルの間に、第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を有するコアシェル型量子ドットである。
【0038】
(コア合成ステップ)
本発明に係る半導体ナノ結晶コアは、溶液中で、少なくともInを含む第III族元素前駆体と、少なくともPを含む第V族元素前駆体を反応させることで合成することができる。例えば、第III族元素前駆体を含む溶液に、第V族元素前駆体溶液を、150℃以上350℃以下の高温条件で添加することで第III-V族半導体ナノ結晶コアを合成できる。このような半導体ナノ結晶コアを合成するステップにおいては、高温条件下での前駆体の分解、コア合成後の凝集を抑える目的で、リガンドを溶解させた溶液に、第III族元素前駆体、第V族元素前駆体をそれぞれ添加して、溶解させることが望ましい。
【0039】
第III族元素前駆体としては、例えば、塩化インジウム、臭化インジウム、ヨウ化インジウム、酸化インジウム、硝酸インジウム、硫酸インジウム、酢酸インジウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、アセチルアセトナトアルミニウム、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化ガリウム、アセチルアセトナトガリウム、酸化ガリウム、硝酸ガリウム、硫酸ガリウムなどが挙げられる。
【0040】
これらのうち、反応させる第V族元素前駆体の反応性に合わせて原料を選択すればよく、例えば、反応性の低いトリスジメチルアミノホスフィンなどを用いる場合でも良好な結晶が得られることが知られている、ハロゲン化物を用いるなど適宜選択すると良い。
【0041】
また、第III族元素前駆体を溶媒に溶解させる方法については特に限定されず、例えば、100℃~180℃の温度に加熱して溶解させる方法が望ましい。特に、この際に減圧にすると、溶解させた溶液から溶存酸素や水分などが取り除けるため好ましい。
【0042】
溶媒については特に限定されず、合成温度や前駆体の溶解性により適宜選択してよく、例えば、1-オクタデセン、1-ヘキサデセン、1-ドデセンなどの脂肪族不飽和炭化水素、n-オクタデカン、n-ヘキサデカン、n-ドデカンなどの脂肪族飽和炭化水素、トリオクチルホスフィンなどのアルキルホスフィン、オレイルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミンなどの長鎖アルキル基を有するホスフィンやアミン等が好適に利用できる。
【0043】
第V族元素前駆体としては、所望の粒径、粒度分布が得られるように反応性を制御する観点から適宜選択すればよく、例えば、トリストリメチルシリルホスフィンやトリスジメチルアミノホスフィンなどから選択すると良い。また、反応性の高いトリストリメチルシリルホスフィンを使用する際には、反応性の制御のため溶媒により希釈し、適宜濃度を調整して反応させると良い。
【0044】
また、合成温度や保持時間についても同様に、所望の粒径、粒度分布が得られるように適宜調整できるため特に限定されないが、第III族元素前駆体と第V族元素前駆体の化学量論比について、反応させる第III族元素前駆体と第V族元素前駆体の化学量論比において、前記半導体ナノ結晶コアにおける第III族元素とV族元素の化学量論比よりも、第III族元素前駆体が過剰に存在する条件とすれば、発光特性が良化するため好ましい。具体的には、例えば、第III族元素前駆体と第V族元素前駆体のモル比が、3:2、2:1、3:1などとなるように調整すると良いが、最適な光学特性を得るための条件は、原料の反応性、濃度、温度などで変化するため、適宜調整することが望ましい。
【0045】
(バッファー層合成ステップ)
上記のようにして得た半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第V族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、半導体ナノ結晶コア上に第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層を形成する。このとき、製造の簡便化のため、前述したコア合成ステップ後の反応溶液を引き続き使用し、第II族元素前駆体が溶解した溶液を加え混合物とし、過剰分の第III族元素前駆体と第II族元素前駆体を含む混合物に対して、第V族元素前駆体を反応させてバッファー層を成長させることが好ましい。また、バッファー層合成後の凝集を抑える目的で、リガンドを溶解させた溶液に第II族元素前駆体、第V族元素前駆体をそれぞれ添加して溶解させることが望ましい。
【0046】
第V族元素前駆体については、コア合成ステップで示した方法と同様に、所望の粒径、粒度分布が得られるように反応性を制御する観点から適宜選択すればよく、例えば、トリストリメチルシリルホスフィンやトリスジメチルアミノホスフィンなどから選択すると良い。また、反応性の高いトリストリメチルシリルホスフィンを使用する際には、反応性の制御のため溶媒により希釈し、適宜濃度を調整して反応させると良い。
【0047】
第II族元素前駆体としては、例えば、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトナト亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛カルボキシル酸塩、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0048】
第II-V族半導体ナノ結晶を作製する方法は、複数公開されている。ステアリン酸亜鉛とトリストリメチルシリルホスフィンを反応させる方法、ジエチル亜鉛とトリストリメチルシリルホスフィンを反応させる方法、複数の亜鉛前駆体(ジエチル亜鉛と亜鉛カルボキシル酸塩)とトリストリメチルシリルホスフィンを反応させる方法、ジエチル亜鉛とPHを反応させる方法等があげられている。このうち、発光が観察可能なZnナノ粒子が合成できる方法は、いずれもジエチル亜鉛を使用した方法であり、ジエチル亜鉛を第II族元素前駆体として用いることが好ましい。複数の亜鉛前駆体(ジエチル亜鉛と亜鉛カルボキシル酸塩)とトリストリメチルシリルホスフィンを反応させる方法は、後のシェル合成の際に余った亜鉛カルボキシル酸塩を用いて成長させることが可能となるため、特に好ましい。しかし、後述するが、コア合成後の溶液中に第III族元素前駆体が残っている場合には、同時に第III-Vナノ結晶が成長するため、亜鉛カルボキシル酸塩やハロゲン化亜鉛を用いた場合にも良好なバッファー層が作製可能であることから、これらの原料も好適に利用でき、亜鉛前駆体に関しては特に限定されない。また、合成温度や保持時間については、所望の特性が得られるように適宜調整可能であることから、特に限定されない。
【0049】
また、固体の第II族元素前駆体原料を溶媒に溶解させる方法については特に限定されず、例えば、100℃~180℃の温度に加熱して溶解させる方法が望ましい。特に、この際に減圧にすることで、溶解させた溶液から溶存酸素や水分などが取り除けるため、好ましい。
【0050】
(シェル合成ステップ)
第II-V族元素を構成元素とする半導体ナノ結晶を含むバッファー層が形成された半導体ナノ結晶コアを含む溶液に、第II族元素前駆体が溶解した溶液と第VI族元素前駆体が溶解した溶液とを混合して反応させて、バッファー層上に、第II-VI族元素を構成元素とする単一又は複数の半導体ナノ結晶シェルを形成する。このとき、製造の簡便化のため、上述のバッファー層合成ステップ後の反応溶液を引き続き使用し、シェルを成長させることが好ましい。シェルの構造は、ZnSe、ZnS又はその混晶を含むシェル構造であることが好ましく、特に限定されないが、安定性の観点からZnSを用いることが好ましい。シェル合成後の凝集を抑える目的で、リガンドを溶解させた溶液に、第II族元素前駆体、第VI族元素前駆体をそれぞれ添加して溶解させることが望ましい。反応は、第II族元素前駆体溶液をバッファー層合成ステップ後の反応溶液に加えて混合溶液を作製した後、第VI族元素前駆体溶液を150℃以上350℃以下の高温条件で添加することで、第II-VI族半導体ナノ結晶シェルを合成できる。
【0051】
第II族元素前駆体としては、バッファー層合成ステップと同様、例えば、フッ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、アセチルアセトナト亜鉛、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、亜鉛カルボキシル酸塩、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。シェルの合成においては、高い反応性は必要ないため、取り扱いの容易さや溶媒への相溶性等から、亜鉛カルボキシル酸塩や酢酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛が好適に利用できる。また、固体の第II族元素前駆体原料を溶媒に溶解させる方法については特に限定されず、例えば、100℃~180℃の温度に加熱して溶解させる方法が望ましい。特に、この際に減圧にすることで、溶解させた溶液から溶存酸素や水分などが取り除けるため好ましい。
【0052】
第VI族元素前駆体としては、例えば、硫黄、アルキルチオール、トリアルキルホスフィンスルフィド、ビストリアルキルシリルスルフィド、セレン、トリアルキルホスフィンセレン、トリアルケニルホスフィンセレン、ビストリアルキルシリルセレン等が挙げられる。これらのうち、硫黄源については、得られるコアシェル粒子の分散安定性の観点から、ドデカンチオールなどの長鎖アルキル基をもつアルキルチオールが好ましい。固体の第VI族元素前駆体原料を溶媒に溶解させる方法については特に限定されず、例えば、100℃~180℃の温度に加熱して溶解させる方法が望ましい。
【0053】
また、シェル構造を多段化するとさらに量子効率が改善することから、ZnSeシェルを合成し、次いでZnSe、ZnSの混晶シェル、最後にZnSシェルを形成することが特に好ましい。ZnSeのシェルにZnSのシェルを形成した場合の格子ミスマッチによる量子効率の低下をより有効に抑制できるとともに、大気中でも安定なZnSにより、量子ドットの安定性がより高いものとなる。
【実施例
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0055】
[実施例1]
(コア合成ステップ)
フラスコ内にパルミチン酸を0.23g(0.9mmol)、酢酸インジウムを0.088g(0.3mmol)、1-オクタデセンを10mL加え、減圧下、100℃で加熱攪拌を行い、原料を溶解させながら1時間脱気を行った。その後、窒素をフラスコ内にパージし、300℃に加熱した。溶液の温度が安定したところで、トリストリメチルシリルホスフィンをトリオクチルホスフィンと混合して0.2Mに調整した溶液を0.75mL(0.15mmol)加えて、20分間反応させた。溶液が赤色に着色し、コア粒子が生成しているのを確認した。
【0056】
(バッファー層合成ステップ)
次いで、別のフラスコにステアリン酸亜鉛2.85g(4.5mmol)、1-オクタデセン15mLを加え、減圧下、100℃に加熱攪拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行ったステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液0.3Mを用意し、コア合成後の反応溶液に0.5mL(0.15mmol)添加して100℃まで冷却した。次いで、グローブボックス中でシュレンクチューブに、ジエチル亜鉛0.15mmol、トリストリメチルシリルホスフィン0.25mmol、トリオクチルホスフィンを2mL加えた溶液を作製し、グローブボックスから密閉して取り出し、反応溶液に全量加えた。その後、300℃まで1時間かけて昇温し、10分保持した後、200℃まで冷却した。
【0057】
(シェル合成ステップ)
別のフラスコにセレン0.474g(6mmol)、トリオクチルホスフィン4mLを加えて150℃に加熱して溶解させ、セレントリオクチルホスフィン溶液1.5Mを調整し、200℃に冷却しておいたバッファー層ステップ後の反応溶液に0.1mL加えて250℃まで30分かけて昇温し、10分保持した後に室温まで冷却した。酢酸亜鉛を0.44g(2.2mmol)加え、減圧下、100℃に加熱攪拌することで溶解させた。再びフラスコ内を窒素でパージして230℃まで昇温し、1-ドデカンチオールを0.98mL(4mmol)添加して1時間保持した。得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらにヘキサンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離し、上澄み液を除去してヘキサンに再分散させて、InP/InP:Zn/ZnSe/ZnSコアシェル型量子ドットのヘキサン溶液を調整した。
【0058】
[比較例1]
バッファー層合成ステップを行わなかった点を除き、実施例1の条件と同様に調整して、InP/ZnSe/ZnSコアシェル型量子ドットのヘキサン溶液を比較例1とした。
【0059】
[実施例2]
(コア合成ステップ)
フラスコ内にパルミチン酸を0.23g(0.9mmol)、酢酸インジウムを0.088g(0.3mmol)、1-オクタデセンを10mL加え、減圧下、100℃で加熱攪拌を行い、原料を溶解させながら1時間脱気を行った。その後、窒素をフラスコ内にパージし、300℃に加熱した。溶液の温度が安定したところで、トリストリメチルシリルホスフィンをトリオクチルホスフィンと混合して0.2Mに調整した溶液を0.75mL(0.15mmol)加えて20分間反応させた。溶液が赤色に着色し、コア粒子が生成しているのを確認した。反応溶液を100℃まで冷却した。
【0060】
(バッファー層合成ステップ)
次いで、別のフラスコ中に塩化亜鉛0.02g(0.15mmol)、オレイルアミン4mLを加え、減圧下100℃で加熱攪拌させ、溶解させながら1時間脱気した。100℃まで冷却しておいた反応溶液に全量加えた。その後、180℃に加熱し、トリスジエチルアミノホスフィンを0.25mmol加えて10分保持した後、300℃まで1時間かけて昇温した。
【0061】
(シェル合成ステップ)
次いで、別のフラスコにステアリン酸亜鉛2.85g(4.5mmol)、1-オクタデセン15mLを加え、減圧下、100℃に加熱攪拌を行い、溶解させながら1時間脱気を行ったステアリン酸亜鉛オクタデセン溶液0.3Mを用意し、バッファー層合成後の反応溶液に0.5mL(0.15mmol)添加して200℃まで冷却した。
【0062】
別のフラスコにセレン0.474g(6mmol)、トリオクチルホスフィン4mLを加えて150℃に加熱して溶解させ、セレントリオクチルホスフィン溶液1.5Mを調整し、200℃に冷却しておいたバッファー層ステップ後の反応溶液に0.1mL加えて250℃まで30分かけて昇温し、10分保持した後に室温まで冷却した。酢酸亜鉛を0.44g(2.2mmol)加え、減圧下、100℃に加熱攪拌することで溶解させた。再びフラスコ内を窒素でパージして230℃まで昇温し、1-ドデカンチオールを0.98mL(4mmol)添加して1時間保持した。得られた溶液を室温まで冷却し、エタノールを加え、遠心分離することにより、ナノ粒子を沈殿させて上澄み液を除去した。さらにヘキサンを加えて分散させ、エタノールを再度加えて遠心分離し、上澄み液を除去してヘキサンに再分散させて、InP/InP:Zn/ZnSe/ZnSコアシェル型量子ドットのヘキサン溶液を調整した。
【0063】
[評価]
(平均粒子径測定)
平均粒子径の測定は透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)で20個の粒子を直接観察し、粒子の投影面積と同一面積を有する円の直径を算出し、それらの平均の値を用いた。
【0064】
(元素分析)
コア合成後、バッファー層合成後、シェル合成後にそれぞれサンプルを採取し、エタノールを加えて粒子を沈殿させ、ヘキサンを加えて再分散させることで各ステップのサンプル溶液を調整し、エネルギー分散型X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry:EDX)により元素分析を行い、In、P、Zn、Se、S元素の割合を算出した。
【0065】
(発光波長、発光半値幅、発光効率測定)
実施例及び比較例において、量子ドットの蛍光発光特性評価として、大塚電子株式会社製:量子効率測定システム(QE-2100)用いて、励起波長450nmにおける量子ドットの発光波長、蛍光発光半値幅及び蛍光発光効率(内部量子効率)を測定した。実施例1、2、比較例1の測定結果について、以下の表1にまとめて示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記のように、実施例1、2はバッファー層合成後において、コア合成後より平均粒子径が1nm程度大きくなり、さらに元素分析から亜鉛元素が検出された。比率としてはInP/Znが形成されているものと少しずれがあるものの、添加した原料比と比較的よく対応しており、Znを含むバッファー層が形成されているものとみられる。シェルを合成した後の発光特性を比較してみると、比較例1よりも実施例1、2は発光波長が長波長シフトしており、コア合成後の余ったIn前駆体もバッファー層合成時に反応していくため、相対的にコア粒子径が大きくなったとみられる。半値幅は、バッファー層形成の有無にかかわらず変化がなかった。蛍光発光効率(内部量子効率)は、実施例1、2が比較例1よりも高いことが確認でき、バッファー層が量子効率の改善に効果があることが示された。また、バッファー層を形成しても凝集による半値幅の悪化を伴う長波長シフトが起きないことから、発光波長の調整が容易であることが示された。また、その合成方法についても、コア合成、バッファー層合成、シェル合成を連続的に行えることから、スケールアップも容易な製造方法であることが示された。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
100…コアシェル型量子ドット、 101…半導体ナノ結晶コア、
102…半導体ナノ結晶シェル、 103…バッファー層。
図1