(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】炭化ホウ素ハードマスクのドライストリッピング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
(21)【出願番号】P 2019564959
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 US2018035210
(87)【国際公開番号】W WO2018222771
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-27
(32)【優先日】2017-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】M/S 1269,3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マンナ, プラミット
(72)【発明者】
【氏名】チアン, シーシー
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
(72)【発明者】
【氏名】レシュキーズ, カーティス
【審査官】高柳 匡克
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516205(JP,A)
【文献】特開平10-032193(JP,A)
【文献】特表2009-515366(JP,A)
【文献】特表2018-511166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0216498(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に堆積した炭化ホウ素層をストリッピングする方法であって、
前記炭化ホウ素層が上部に堆積している前記基板を圧力容器の処理領域に装填することと、
500Torrか
ら60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスであって、プラズマを含まない処理ガスに前記基板を曝露することと、
前記処理ガスの凝結点を超える温度まで前記圧力容器の前記処理領域を加熱することと、
前記処理ガスと前記炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を前記圧力容器から除去することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記基板を
前記処理ガスに曝露することは、
前記基板
を10barを超える圧力で蒸気に曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化剤は、オゾン、酸素、水蒸気、重水、アンモニア、過酸化物、水酸化物含有化合物、酸素同位体及び水素同位体からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板は、前記基板上に堆積した炭化ホウ素の量と完全に反応するのに必要な量の酸化剤を超える量の酸化剤に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力容器の前記処理領域は
、300°Cから700°Cの温度まで加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理ガスは
、5%の乾燥蒸気から100%の乾燥蒸気を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の基板の上に堆積した炭化ホウ素層をストリッピングする方法であって、
上部に堆積した前記炭化ホウ素層をそれぞれ有する前記複数の基板を、圧力容器の処理領域に同時に装填することと、
500Torrか
ら60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスに前記複数の基板を曝露することと、
前記処理ガスの凝結点を超える温度まで前記圧力容器の前記処理領域を加熱することと、
前記処理ガスと前記炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を前記圧力容器から除去することと、
を含む方法。
【請求項8】
前記複数の基板を前記処理ガスに曝露することは、
前記複数の基板
を10barを超える圧力で蒸気に曝露することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記酸化剤は、オゾン、酸素、水蒸気、重水、アンモニア、過酸化物、水酸化物含有化合物、酸素同位体及び水素同位体からなる群から選択される、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の基板は、前記複数の基板上に堆積した炭化ホウ素の量と完全に反応するのに必要な量の酸化剤を超える量の酸化剤に曝露される、請求項
7に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力容器の前記処理領域は
、300°Cから700°Cの温度まで加熱される、請求項
7に記載の方法。
【請求項12】
前記処理ガスは
、5%の乾燥蒸気から100%の乾燥蒸気を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項13】
複数の基板の上に堆積した炭化ホウ素層をストリッピングする方法であって、
上部に堆積した前記炭化ホウ素層をそれぞれ有する前記複数の基板を、圧力容器の処理領域に
同時に装填することと、
10barか
ら60barの圧力で、蒸気を含む処理ガスに前記複数の基板を曝露することと、
前記処理ガスの凝結点を超える温度まで前記圧力容器の前記処理領域を加熱することと、
前記処理ガスと前記炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を前記圧力容器から除去することと、
を含む方法。
【請求項14】
前記処理ガスは
、5%の過熱蒸気から100%の過熱蒸気を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化剤は、過酸化水素である、請求項
3に記載の方法。
【請求項16】
前記一又は複数の反応生成物は、三酸化ホウ素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、ホウ酸及びメタホウ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化剤は、過酸化水素である、請求項
9に記載の方法。
【請求項18】
前記一又は複数の反応生成物は、三酸化ホウ素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、ホウ酸及びメタホウ酸を含む、請求項
7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示の実施形態は概して集積回路の製造に関し、具体的には、半導体基板上での炭化ホウ素層のドライストリッピングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
[0002] メモリデバイス、論理デバイス、マイクロプロセッサなどの半導体デバイスの形成は、ハードマスクの形成を含む。ハードマスクは、エッチングされる下位の基板上にブランケット層として形成される。フォトレジストのパターニングされた層は、パターンとしてフォトレジスト層を用いてハードマスクがエッチングされる前に、ハードマスクの上に形成される。ハードマスクが下位の基板をエッチングするためのソロパターンとして残るように、ハードマスクのパターニング後、フォトレジスト層は除去される。ハードマスクは下位の基板上に形成され、エッチングされ、次に基板から除去される別個の層であるが、エッチング処理に対する耐性が改善されていることに加えて、コストが安いため、ハードマスクを望ましいものにしている。ホウ素がドープされた炭素及び炭化ホウ素の膜は一般的に、パターニング性能が優れているため、高品質のハードマスクを生成することが知られている。
【0003】
[0003] しかしながら、炭化ホウ素層は従来の酸素プラズマを用いて灰化することができないため、炭化ホウ素層は、エッチング後に下位の基板から除去又はストリッピングすることが困難になる。炭化ホウ素層は、酸素と共にフッ素又は塩素を用いてドライストリッピングすることが可能であるが、フッ素及び塩素は、半導体基板上に一般的にみられる酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素などの誘電体材料を腐食する。湿式エッチングソリューションは、使用した場合、半導体基板上に一般的にみられる露出した金属表面又は埋め込まれた金属を損傷しうる。
【0004】
[0004] したがって、半導体基板から炭化ホウ素層をドライストリッピングする方法は改善の必要がある。
【発明の概要】
【0005】
[0005] 本開示の実施形態は概して、半導体基板上に堆積した炭化ホウ素層をドライストリッピングする方法に関する。一実施形態では、方法は、炭化ホウ素層を有する基板を圧力容器に装填することと、約500Torrから約60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスに基板を曝露することと、処理ガスの凝結点を超える温度まで圧力容器を加熱することと、処理ガスと炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を圧力容器から除去することと、を含む。
【0006】
[0006] 本開示の別の実施形態では、方法は、炭化ホウ素層を有する少なくとも第1の基板を含む一又は複数の基板を圧力容器に装填することと、約500Torrから60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスに第1の基板を曝露することと、処理ガスの凝結点を超える温度まで圧力容器を加熱することと、処理ガスと炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を圧力容器から除去することと、を含む。
【0007】
[0007] さらに別の実施形態では、方法は、炭化ホウ素層が上部に堆積している少なくとも第1の基板を含む一又は複数の基板を、圧力容器に装填することと、約500Torrから60barの圧力で、蒸気を含む処理ガスに第1の基板を曝露することと、処理ガスの凝結点を超える温度まで圧力容器を加熱することと、処理ガスと炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物を圧力容器から除去することと、を含む。
【0008】
[0008] 上述した本開示の特徴を詳細に理解できるように、上記に要約した本開示を、一部が添付の図面に例示されている実施形態を参照しながら、より具体的に説明する。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示しているに過ぎず、したがって、その範囲を限定するものとみなされるべきではなく、本開示は他の同等に有効な実施形態を許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】カセットに装填された複数の基板から、炭化ホウ素層をドライストリッピングするための、圧力容器の簡略正面断面図である。
【
図2A】半導体基板上のエッチング層の上にパターニングした炭化ホウ素層の簡略断面図である。
【
図2B】炭化ホウ素層を除去した後の、半導体基板上のエッチング層の簡略断面図である。
【
図3】炭化ホウ素層をドライストリッピングするための1つの基板処理チャンバの簡略正面断面図である。
【
図4】半導体基板上に堆積した炭化ホウ素層をドライストリッピングするための方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0014] 理解を容易にするために、可能な場合には、図に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号を使用した。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうると考えられている。
【0011】
[0015] 本開示の実施形態は概して、半導体基板上に堆積した炭化ホウ素層のドライストリッピングの方法に関する。酸化剤、例えば限定するものではないが、高圧下の蒸気などが、炭化ホウ素層を酸化して三酸化ホウ素にするために使用される。三酸化ホウ素は次に過剰な蒸気と反応して、ホウ酸やメタホウ酸などの気体生成物を産生する。半導体基板上の固体の炭化ホウ素層が気体生成物に変化すること、及び、気体生成物をその後除去することによって、炭化ホウ素層をドライストリッピングする効果的な方法がもたらされる。バッチ処理チャンバ、例えば限定するものではないが、
図1に示して本書に記載した圧力容器100は、複数の基板上の炭化ホウ素層をドライストリッピングする方法を実施するために利用される。本書に記載の方法は、1つの基板チャンバ、例えば、
図3に示した例示的な1つの基板処理チャンバ300、或いは他の好適な1つの基板処理チャンバ内に配置された1つの基板に等しく適用されうる。
【0012】
[0016]
図1は、炭化ホウ素層をドライストリッピングするためのバッチ処理圧力容器100の簡略正面断面図である。圧力容器100は、外面112と処理領域115を取り囲む内面113とを備えた本体110を有する。
図1などのいくつかの実施形態では、本体110は環状断面を有するが、他の実施形態では、本体110の断面は矩形又は任意の閉鎖形状になりうる。本体110の外面112は、例えば限定するものではないが、ステンレス鋼などの耐食性鋼(CRS)から作られうる。本体110の内面113は、例えば限定するものではないが、HASTELLOY(登録商標)などの、高耐食性を示すニッケルベース鋼合金から作られうる。
【0013】
[0017] 圧力容器100は、ドア120が開くと処理領域115にアクセス可能になり、本体110内に処理領域115を密閉可能に囲むように構成されたドア120を有する。密封材122は、処理のために処理領域115を密封するため、ドア120を本体110に密封するために利用される。密封材122は、例えば限定するものではないが、パーフルオロエラストマーなどのポリマーから作られうる。処理中に密封材122の最大安全動作温度未満に密封材122を維持するため、冷却チャネル124は、密封材122に隣接するドア120の上に配設される。冷却剤、例えば限定するものではないが、不活性物質、誘電体、及び/又は高性能な熱伝導流体などの冷却剤は、密封材122を約250°Cから約275°Cまでの温度に維持し、その一方で処理領域115が約800°Cになるように冷却チャネル124内で循環されうる。冷却チャネル124内の冷却剤の流れは、温度センサ116又は流れセンサ(図示せず)から受信したフィードバックを介して、コントローラ180によって制御される。
【0014】
[0018] 圧力容器100は、本体110を通るポート117を有する。ポート117は、それ自体を通過してヒータ119に連結されるパイプ118を有する。パイプ118の一端は処理領域115に接続される。パイプ118の他端は、注入導管157と排出導管161に分岐する。注入導管157は、遮断バルブ155を介してガスパネル150に流体接続されている。注入導管157はヒータ158に連結されている。排出導管161は、遮断バルブ165を介して液化装置(condenser)160に流体接続されている。排出導管161はヒータ162に連結されている。ヒータ119、158、及び162は、パイプ118、注入導管157、及び排出導管161をそれぞれ通って流れる処理ガスを、処理ガスの凝結点を超える温度に維持するように構成されている。ヒータ119、158、及び162は、電源145によって電力供給される。
【0015】
[0019] ガスパネル150は、圧力下にある酸化剤を含む処理ガスを、パイプ118を経由して処理領域115へ伝送するため、注入導管157へ提供するように構成されている。処理領域115へ導入される処理ガスの圧力は、本体110に連結された圧力センサ114によってモニタされている。液化装置160は冷却流体に流体連結され、パイプ118を経由して処理領域115から除去された後に、排出導管161を通って流れる気体生成物を凝結するように構成されている。液化装置160は、気体生成物を気相から液相に変える。ポンプ170は液化装置160に流体連結され、液化装置160から液化生成物を排出する。ガスパネル150、液化装置160及びポンプ170の動作はコントローラ180によって制御されている。
【0016】
[0020] 遮断バルブ155及び165は、一度に1つの流体のみがパイプ118を経由して処理領域115に流れるように構成されている。遮断バルブ155が開いているとき、注入導管157を通って流れる処理ガスが処理領域115に入り、処理ガスの流れが液化装置160に入るのを防止するように、遮断バルブ165は閉じられている。その一方で、遮断バルブ165が開いているときには、気体生成物が処理領域115から除去され、排出導管161を通って流れ、気体生成物の流れがガスパネル150に入るのを防止するように、遮断バルブ155は閉じられている。
【0017】
[0021] 一又は複数のヒータ140は、本体110の上に配置され、圧力容器100内の処理領域115を加熱するように構成されている。いくつかの実施形態では、
図1に示したように、ヒータ140は本体110の外面112の上に配置されるが、他の実施形態では、ヒータ140は本体110の内面113の上に配置されうる。ヒータ140の各々は、抵抗コイル、ランプ、セラミックヒータ、グラファイトベースの炭素繊維複合材(CFC)ヒータ、ステンレス鋼ヒータ、又はアルミニウムヒータなどになりうる。ヒータ140は、電源145によって電力供給される。ヒータ140への電力は、温度センサ116から受信したフィードバックを介してコントローラ180によって制御される。温度センサ116は本体110に連結され、処理領域115の温度をモニタする。
【0018】
[0022] アクチュエータ(図示せず)に連結されたカセット130は、処理領域115との間で出し入れされる。カセット130は、上面132、底面134、及び壁136を有する。カセット130の壁136は、複数の基板ストレージスロット138を有する。各基板ストレージスロット138は、カセット130の壁136に沿って均等に離間されている。各基板ストレージスロット138は、内部に基板135を保持するよう構成される。カセット130は、基板135を保持するための50個もの基板ストレージスロット138を有しうる。カセット130は、圧力容器100の内外へ複数の基板135を移送するための、また、処理領域115内で複数の基板135を処理するための、有効な容器を提供する。
【0019】
[0023] コントローラ180は圧力容器100の動作を制御する。コントローラ180は、ガスパネル150、液化装置160、ポンプ170、遮断バルブ155及び165、並びに電源145の動作を制御する。コントローラ180はまた、温度センサ116、圧力センサ114、及び冷却チャネル124に連通可能に接続されている。コントローラ180は、中央処理装置(CPU)182、メモリ184、及び補助回路186を含む。CPU182は、産業用設定で使用されうる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサでありうる。メモリ184は、ランダムアクセスメモリ、読取専用メモリ、フロッピー、又はハードディスクドライブ、又は他の形態のデジタルストレージになりうる。補助回路186は、通常、CPU182に接続され、キャッシュ、クロック回路、入力/出力システム、電源などを含みうる。
【0020】
[0024] 圧力容器100は、複数の基板135から炭化ホウ素層をドライストリッピングする方法を実行するのに便利なチャンバを提供する。ヒータ140は、圧力容器100を予加熱するため、電力供給される。同時に、ヒータ119、158、及び162は、パイプ118、注入導管157、及び排出導管161をそれぞれ予加熱するため、電力供給される。
【0021】
[0025] 複数の基板135は次に、カセット130に装填される。
図2Aは、半導体基板200上のエッチングされた層210の上にパターニングされた炭化ホウ素層220の簡略断面図を示す。基板135がカセット130に装填されると、基板135の各々は、
図2Aに半導体基板200として示されている。カセット130を処理領域115へ移動するため、圧力容器100のドア120は開放される。カセット130上の基板135の上部から炭化ホウ素層をストリッピングするため、ドア120はチャンバを取り囲むように密封される。ドア120が一旦閉じられると、処理領域115から圧力が漏れないことが密封材122によって保証される。
【0022】
[0026] 処理ガスは、ガスパネル150によって、圧力容器100内部の処理領域115に提供される。遮断バルブ155はコントローラ180によって開放され、処理ガスは注入導管157及びパイプ118を経由して処理領域115に流れ込むことができる。処理ガスは、約1分間から約2時間の間、約500sccmから約2000sccmの流量で導入される。遮断バルブ165はこの時点では閉じられたままになっている。処理ガスは処理領域115に流れ込んだ酸化剤である。いくつかの実施形態では、処理ガスは、約500Torrから約60barまでの圧力下において蒸気であり、乾燥蒸気又は過熱蒸気であってもよい。しかしながら、他の実施形態では、例えば限定するものではないが、オゾン、酸素、過酸化水素又はアンモニアなどの他の酸化剤が使用されうる。一実施形態では、処理ガスは、約5%の蒸気から100%の酸化剤、例えば、約10%の酸化剤から約80%の酸化剤を含む混合物である。一実施例では、処理ガスは約5%の蒸気から100%の蒸気までの混合物である。充分な処理ガスがガスパネル150によって放出されると、遮断バルブ155はコントローラ180によって閉じられる。ガスパネル150による処理ガスの量は、複数の基板135上に堆積した炭化ホウ素と完全に反応するのに必要な処理ガスの量を超える量になっている。例えば、ガスパネル150によって放出される蒸気の量は、基板上に堆積した炭化ホウ素の量の少なくとも10倍になりうる。
【0023】
[0027] 基板135の処理中、処理領域115、並びに注入導管157、排出導管161、及びパイプ118は、処理ガスが気相に留まる温度と圧力に維持される。このような圧力と温度は、処理ガスの組成に基づいて選択される。処理領域115、並びに注入導管157、排出導管161、及びパイプ118の温度は、印加された圧力で処理ガスの凝結点を超える温度に維持される。例えば、10barsから60barsの圧力下で蒸気が処理に使用されるときには、処理領域115、並びに注入導管157、排出導管161、及びパイプ118の温度は、約300°Cから700°Cの温度まで高められる。これにより、エッチングされた層210及び層220の下の基板200に対して有害な水へと、蒸気が凝結しないことが保証される。
【0024】
[0028] 炭化ホウ素層が処理ガスと反応して気体生成物を産生するように、処理ガスは基板135の上に流される。例えば、炭化ホウ素は、化学反応式(i)及び(ii)に示したように、蒸気と反応して、三酸化ホウ素(B2O3)、水素ガス(H2)、一酸化炭素(CO)、及び二酸化炭素(CO2)を産生する。
2BC + 5H2O → B2O3 + 2CO + 5H2 ………(i)
2BC + 7H2O → B2O3 + 2CO2 + 7H2 ……(ii)
三酸化ホウ素(B2O3)は次に過剰な蒸気と反応して、化学反応式(iii)及び(iv)に示したように、ホウ酸(H3BO3)及びメタホウ酸(HBO2)を産生する。
B2O3 + H2O → 2HBO2 …………………………… (iii)
B2O3 + 3H2O → 2H3BO3 ………………………… (iv)
ホウ酸及びメタホウ酸は揮発性の生成物である。ホウ酸及びメタホウ酸は水素ガス、一酸化炭素及び二酸化炭素と混合して、炭化ホウ素と水蒸気との間の反応生成物の気体混合物を形成する。
【0025】
[0029] 炭化ホウ素層が基板135から完全にストリッピングされたことが認められると、処理は完了する。次に、生成物の気体混合物を処理領域115から、パイプ118と排出導管161を経由して液化装置160へ流し込むため、遮断バルブ165が開放される。生成物の気体混合物は、液化装置160内で液相に凝結される。生成物の液化混合物は次に、ポンプ170によって除去される。生成物の液化混合物が完全に除去されると、遮断バルブ165は閉鎖される。次に、ヒータ140、119、158、及び162の電源がオフにされる。次に、処理領域115からカセット130を取り出すため、圧力容器100のドア120が開放される。
図2Bは、炭化ホウ素層を除去した後の、半導体基板200上のエッチング層210の簡略断面図である。炭化ホウ素層を除去した後、基板135がカセット130から取り出されると、基板135の各々は、
図2Bに半導体基板200として示されている。基板135は、パターニングされたエッチング層210のみを有する。
【0026】
[0030]
図3は、炭化ホウ素層をドライストリッピングするための1つの基板処理チャンバ300の簡略正面断面図である。1つの基板処理チャンバ300は、外面312と内部空間315を取り囲む内面313とを備える本体310を有する。
図3などのいくつかの実施形態では、本体310は環状断面を有するが、他の実施形態では、本体310の断面は矩形又は任意の閉鎖形状になりうる。本体310の外面312は、例えば限定するものではないが、ステンレス鋼などの耐食性鋼(CRS)から作られうる。1つの基板処理チャンバ300から外部環境への熱損失を防止する一又は複数の熱シールド325が、本体310の内面313上に配置される。本体310の内面313、並びに熱シールド325は、例えば限定するものではないが、HASTELLOY(登録商標)、INCONEL(登録商標)、及びMONEL(登録商標)など、高い耐食性を示すニッケルベースの鋼合金から作られうる。
【0027】
[0031] 基板支持体330が、内部空間315内に配置される。基板支持体330は、ステム334と、ステム334によって保持される基板支持部材332とを有する。ステム334は、チャンバ本体310を通って形成された通路322を通過する。アクチュエータ338に接続されたロッド339は、チャンバ本体310を通って形成された第2の通路323を通過する。ロッド339は、基板支持体330のステム334を収容する開口部336を有するプレート335に連結されている。リフトピン337は、基板支持部材332に接続されている。プレート335が上下に移動してリフトピン337との接続と分離を行うように、アクチュエータ338はロッド339を作動させる。リフトピン337が上げ下げされると、基板支持部材332は1つの基板処理チャンバ300の内部空間315内で上げ下げされる。基板支持部材332は、中心に埋め込まれた抵抗加熱素子331を有する。電源333は、抵抗加熱素子331に電力を供給するように構成されている。電源333並びにアクチュエータ338の操作はコントローラ380によって制御される。
【0028】
[0032] 1つの基板処理チャンバ300は本体310に開口部311を有し、基板320はその開口部を通り、内部空間315内に配置された基板支持体330との間で出し入れされる。開口部311は、本体310にトンネル321を形成する。スリットバルブ328が開放されているときにのみ、開口部311と内部空間315がアクセス可能になるように、スリットバルブ328はトンネル321を密封するように構成されている。密封材327は、処理のための内部空間315を密封するため、スリットバルブ328を本体310に密封するように利用される。密封材327はポリマーから、例えば限定するものではないが、パーフルオロエラストマーやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフルオロポリマーから作られうる。密封材327はさらに、密封性能を高めるため、密封材を付勢するためのばね部材を含みうる。処理中に密封材327の最大安全動作温度未満に密封材327を維持するため、冷却チャネル324は、密封材327に隣接するトンネル321の上に配設される。冷却流体源326からの冷却剤、例えば限定するものではないが、不活性物質、誘電体、及び/又は高性能な熱伝導流体などは、冷却チャネル324内で循環されうる。冷却流体源326からの冷却源の流れは、温度センサ316又は流れセンサ(図示せず)から受信したフィードバックを介して、コントローラ380によって制御される。スリットバルブ328が開放されているとき、内部空間315から開口部311を通る熱の流れを妨げるため、環状形状の熱チョーク329がトンネル321の周囲に形成される。
【0029】
[0033] 1つの基板処理チャンバ300は本体310を通るポート317を有し、これは、ガスパネル350、液化装置360、及びポート317を接続する流体回路390に流体接続されている。流体回路390は、ガス導管392、ソース導管357、注入遮断バルブ355、排気導管363、及び排出遮断バルブ365を有する。多数のヒータ396、358、352、354、364、366が流体回路390の様々な部分にインターフェースされている。温度測定を行い、その情報をコントローラ380に送るため、多数の温度センサ351、353、319、367、及び369がまた、流体回路390の様々な部分に配置されている。流体回路390の温度が、流体回路390及び内部空間315内に配置された処理流体の凝結点を超える温度に維持されるように、コントローラ380は、ヒータ352、354、358、396、364、及び366の動作を制御するため、温度測定情報を使用する。
【0030】
[0034] ガスパネル350及び圧力センサ314は、本質的にも機能的にも
図1のガスパネル150及び圧力センサ114とほぼ同様である。液化装置360は、本質的にも機能的にも
図1の液化装置160とほぼ同様である。ポンプ370は、本質的にも機能的にも
図1のポンプ170とほぼ同様である。一又は複数のヒータ340は本体310の上に配置され、1つの基板処理チャンバ300内の内部空間315を加熱するように構成されている。ヒータ340は、本質的にも機能的にもバッチ処理圧力容器100内で使用されるヒータ140とほぼ同様である。
【0031】
[0035] コントローラ380は、1つの基板処理チャンバ300の動作を制御する。コントローラ380は、ガスパネル350、液化装置360、ポンプ370、注入遮断バルブ355、排出遮断バルブ365、及び電源333、345の動作を制御する。コントローラ380はまた、温度センサ316、圧力センサ314、アクチュエータ338、冷却流体源326、及び温度読取デバイス356と362に通信可能に接続されている。コントローラ380は、本質的にも機能的にもバッチ処理圧力容器100内で使用されるコントローラ180とほぼ同様である。
【0032】
[0036]
図4は、本開示の一実施形態による、半導体基板上に堆積した炭化ホウ素層をドライストリッピングするための方法のブロック図である。方法400は、ブロック410で基板を圧力容器に装填することによって開始される。基板は上部に堆積した炭化ホウ素層を有する。いくつかの実施形態では、複数の基板はカセットの上に配置され、圧力容器内に装填されうる。さらなる実施形態では、一度に1つの基板を処理するように構成された圧力容器に1つの基板が装填される。
【0033】
[0037] ブロック420では、基板又は複数の基板は、圧力容器内で約500Torrから約60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスに曝露される。他の実施形態では、基板又は複数の基板は、圧力容器内で約0barを超える圧力で、例えば約1barから約60barの圧力で、酸化剤を含む処理ガスに曝露される。いくつかの実施形態では、処理ガスは、オゾン、酸素、水蒸気、重水、過酸化物、水酸化物含有化合物、酸素同位体(14、15、16、17、18など)及び水素同位体(1、2、3)、或いはこれらのいくつかの組み合わせからなる群から選択された酸化剤で、処理ガスは約10%の酸化剤から約80%の酸化剤の混合物である。過酸化物は気相にある過酸化水素であってもよい。いくつかの実施形態では、酸化剤は、例えば限定するものではないが、水蒸気又は蒸気の形態の重水など、水酸化物イオンを含む。いくつかの実施形態では、酸化剤の量は、基板上に堆積した炭化ホウ素の量と完全に反応するのに必要な酸化剤の量を超える。他の実施形態では、処理ガスは約500Torrから約60barまでの圧力の蒸気であってよく、蒸気は混合物の約5%から混合物の100%までを構成する。蒸気は乾燥蒸気又は過熱蒸気であってもよい。蒸気の量は、基板上に堆積した炭化ホウ素の量の少なくとも10倍になりうる。
【0034】
[0038] ブロック430では、圧力容器は、処理ガスの凝結点を超える温度まで加熱される。温度を上げることにより、炭化ホウ素層を処理ガスと反応させることができる。いくつかの実施形態では、蒸気が圧力容器内の処理ガスとして使用されるときには、圧力容器の温度は約300°Cから約700°Cに維持される。これらの実施形態では、炭化ホウ素層は蒸気と反応して、三酸化ホウ素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、ホウ酸及びメタホウ酸を含む気体混合物を生成する。
【0035】
[0039] ブロック440では、処理ガスと炭化ホウ素層との間の一又は複数の反応生成物が圧力容器から除去される。蒸気が使用される実施形態では、三酸化ホウ素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、ホウ酸、及びメタホウ酸を含む生成物の気体混合物は、圧力容器の外へ排出される。したがって、基板上の炭化ホウ素層はドライストリッピングされ、半導体基板上に好適なエッチング層が残される。
【0036】
[0040] 本書に記載の炭化ホウ素層をドライストリッピングするための方法は有利には、半導体基板から炭化ホウ素層を乾式除去することができる。湿式エッチングソリューションは要求されない。さらに、圧力下で蒸気が使用されるときには、約300°Cから約700°Cの処理温度範囲によって、炭化ホウ素の酸化速度は、最初に炭化ホウ素を三酸化ホウ素の粘性層に変換するのには十分に低く、三酸化ホウ素の粘性層を、その後除去しうるホウ酸やメタホウ酸のような揮発性ガスに変換するのには十分に高いことが保証される。処理温度が300°C未満、或いは処理圧力が500Torr未満の場合には、炭化ホウ素から三酸化ホウ素への最初の酸化と、三酸化ホウ素からホウ酸及びメタホウ酸へのその後の酸化とのバランスは失われ、その結果、層は完全にストリッピングすることができない。
【0037】
[0041] 本書に記載の方法は、複数の基板を同時に処理することによって、炭化ホウ素層の除去に関して基板のスループットを高める。しかも、他の層を除去しうる従来の酸素プラズマでは炭化ホウ素を灰化することができないため、本方法によって、炭化ホウ素のハードマスク材料としての実行可能性は維持される。炭化ホウ素の高いエッチング選択性、高い硬度及び高い透明性により、炭化ホウ素はハードマスク材料として優れた選択肢になっている。したがって、本書に記載の方法は、次世代のメモリデバイス、論理デバイス、マイクロプロセッサなどをパターニングするため、炭化ホウ素層をさらに開発する際に役立つ。加えて、本書に記載の方法は炭化ホウ素層に関するが、他の種類の炭化ホウ素層も本開示から利益を得ることができる。
【0038】
[0042] 以上の記述は本開示の特定の実施形態を対象としているが、これらの実施形態は本発明の原理及び用途の例示にすぎないことを、理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義されているように、本発明の基本的な主旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態に到達する例示的な実施形態になりうる多数の修正を行いうることを理解されたい。