(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】アルミニウム箔
(51)【国際特許分類】
H01M 4/70 20060101AFI20221208BHJP
H01G 9/045 20060101ALI20221208BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20221208BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01M4/70 A
H01G9/045
H01G11/70
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2021540711
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029872
(87)【国際公開番号】W WO2021033537
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019151932
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】澤田 宏和
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/052122(WO,A1)
【文献】特開2010-40370(JP,A)
【文献】特開2008-269890(JP,A)
【文献】特開2013-175370(JP,A)
【文献】特開2003-317723(JP,A)
【文献】特開昭62-47963(JP,A)
【文献】中国実用新案第203787294(CN,U)
【文献】特開2019-21495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 4/66
H01G 9/045
H01G 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なアルミニウム箔であって、
長手方向と直交する幅方向に、孔有り部、孔無し部、および、前記孔有り部と前記孔無し部との間の孔漸減部を有し、
前記孔有り部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
前記孔無し部は、貫通孔を有さず、
前記孔漸減部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔、および、複数の非貫通孔を有し、
前記孔漸減部において、前記貫通孔による開口率が、前記孔有り部側から前記孔無し部側に向かって漸減しているアルミニウム箔。
【請求項2】
前記孔有り部は、さらに複数の非貫通孔を有する請求項1に記載のアルミニウム箔。
【請求項3】
前記孔有り部における前記非貫通孔の面積占有率が1%以上20%以下である請求項2に記載のアルミニウム箔。
【請求項4】
前記孔有り部の表面における比表面積ΔS
1が5%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項5】
前記孔漸減部の表面における比表面積ΔS
2が2.5%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項6】
前記孔漸減部における前記非貫通孔の面積占有率が1%以上15%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項7】
幅方向において、前記孔漸減部における前記貫通孔の数密度が、前記孔有り部側から前記孔無し部側に向かって漸減しており、
かつ、前記孔漸減部における前記貫通孔の平均数密度が、前記孔有り部における前記貫通孔の平均数密度の10%以上90%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項8】
前記孔漸減部における前記貫通孔の平均開口径が0.1μm~100μmである請求項1~7のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項9】
幅方向における前記孔漸減部の幅が3mm以上である請求項1~8のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項10】
前記孔無し部が幅方向の両端に設けられている請求項1~9のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項11】
幅方向において、前記孔漸減部が2か所以上に設けられている請求項1~10のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【請求項12】
前記長尺なアルミニウム箔がロール状である請求項1~11のいずれか一項に記載のアルミニウム箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム箔に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器や、ハイブリッド自動車、電気自動車等の開発に伴い、その電源としての蓄電デバイス、特に、リチウムイオンキャパシタ、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタの需要が増大している。
【0003】
このような蓄電デバイスの正極または負極に用いられる電極用集電体(以下、単に「集電体」という。)としては、アルミニウム板を用いることが知られている。また、このアルミニウム板からなる集電体の表面に、電極材料として活物質や活性炭などを塗布され、正極または負極の電極として用いることが知られている。
【0004】
大容量の次世代二次電池、および、リチウムイオンキャパシタでは、電極材料の材質に応じて、容量確保を目的に、予め多量にLi(リチウム)イオンを電極にドーピングすることが行われる。Liイオンのドーピング方法は、電池セル内にLi金属を入れ、電池セル内での溶解を促すことで、過剰なLiイオンを電極に行きわたらせる方法が公知である。電極材料は元々Liイオンを透過するポーラスな材料である。一方、電極材料の支持体となり、かつ充放電時の電気の出し入れ用の導電板の役目を持つ集電体は通常、金属箔が使用され、電気は通すがイオンは通さない。そのため、電池セル内の電極材料の隅々までLiイオンを行きわたらせるためには、金属箔にLiイオンを通過させるための多数の貫通孔を設けた貫通箔が用いられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、厚み方向に複数の貫通孔を有するアルミニウム板であって、厚みが40μm以下であり、貫通孔の平均開口径が0.1~100μmであり、貫通孔による平均開口率が2~30%であり、Feの含有量が0.03質量%以上であり、かつ、Siの含有量に対するFeの含有量の比率が1.0以上である、アルミニウム板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
集電体として用いられるアルミニウム箔は、小型軽量化、および、エネルギー密度等の観点から、厚みをより薄くする必要がある。一方で、アルミニウム箔に多数の貫通孔を形成すると機械的強度が低下してしまう。そのため、アルミニウム箔の製造中、あるいは、アルミニウム箔に活物質の塗布を行う際などに、アルミニウム箔の破断が生じるという問題があった。
【0008】
これに対して、特許文献1では、アルミニウム箔の対向する2辺の辺縁部に、貫通孔の平均開口率が小さい(0~5%)領域を設けることで、破断を抑制して工程適性を向上することが記載されている。
【0009】
ところで、製造効率等の観点から、長尺なアルミニウム箔を長手方向に搬送しつつ、貫通孔の形成、あるいは、活物質の塗布等の各種工程を行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、本発明者の検討によれば、以下のような問題が生じることがわかった。
長尺なアルミニウム箔に対して、張力を連続的に付加しながら各種工程を実施する場合、上記のような、辺縁部に貫通孔を有さない(あるいは、開口率が小さい)領域を有するアルミニウム箔に張力を連続的に付加しながら製造すると、貫通孔を形成する領域(以下、孔有り部ともいう)は、貫通孔を形成しない領域(以下、孔無し部ともいう)に比べ機械的な強度が低いため、張力を付加した方向の変形、すなわち伸びが、孔無し部に比べて大きくなる。孔有り部と孔無し部における伸びの差は、特に孔有り部と孔無し部との境界部分で顕著となり、境界部分に波打ちのような永久ひずみが形成されるという問題が生じることがわかった。
このような現象は、特に貫通孔を有するアルミニウム箔を連続的に巻き取る場合に顕著に発生し、巻取った表面上で凹凸となって現れ、その上に巻かれるアルミニウム箔の変形を助長してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、長尺なアルミニウム箔において、貫通孔を形成しない領域を設けた場合に、貫通孔の形成する領域と形成しない領域との境界部分に変形が生じることを抑制できるアルミニウム箔を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の構成によって課題を解決する。
【0013】
[1] 長尺なアルミニウム箔であって、
長手方向と直交する幅方向に、孔有り部、孔無し部、および、孔有り部と孔無し部との間の孔漸減部を有し、
孔有り部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
孔無し部は、貫通孔を有さず、
孔漸減部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔、および、複数の非貫通孔を有し、
孔漸減部において、貫通孔による開口率が、孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減しているアルミニウム箔。
[2] 孔有り部は、さらに複数の非貫通孔を有する[1]に記載のアルミニウム箔。
[3] 孔有り部における非貫通孔の面積占有率が1%以上20%以下である[2]に記載のアルミニウム箔。
[4] 孔有り部の表面における比表面積ΔS1が5%以上である[1]~[3]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[5] 孔漸減部の表面における比表面積ΔS2が2.5%以上である[1]~[4]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[6] 孔漸減部における非貫通孔の面積占有率が1%以上15%以下である[1]~[5]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[7] 幅方向において、孔漸減部における貫通孔の数密度が、孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減しており、
かつ、孔漸減部における貫通孔の平均数密度が、孔有り部における貫通孔の平均数密度の10%以上90%以下である[1]~[6]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[8] 孔漸減部における貫通孔の平均開口径が0.1μm~100μmである[1]~[7]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[9] 幅方向における孔漸減部の幅が3mm以上である[1]~[8]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[10] 孔無し部が幅方向の両端に設けられている[1]~[9]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[11] 幅方向において、孔漸減部が2か所以上に設けられている[1]~[10]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
[12] 長尺なアルミニウム箔がロール状である[1]~[11]のいずれかに記載のアルミニウム箔。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貫通孔を形成しない領域を設けた場合に、貫通孔の形成する領域と形成しない領域との境界部分に変形が生じることを抑制できるアルミニウム箔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のアルミニウム箔の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示すアルミニウム箔の部分拡大図である。
【
図4】本発明のアルミニウム箔をロール状に巻き取った状態を模式的に表す斜視図である。
【
図5】本発明のアルミニウム箔の他の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図7】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図8】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図9】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図10】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の他の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図12】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の他の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図13】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の他の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図14】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の他の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図15】本発明のアルミニウム箔の好適な製造方法の他の一例を説明するための模式的な断面図である。
【
図16】貫通孔形成工程における電極と電流遮蔽板の配置の一例を説明するための図である。
【
図17】貫通孔形成工程における電極と電流遮蔽板の配置の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
[アルミニウム箔]
本発明のアルミニウム箔は、
長尺なアルミニウム箔であって、
長手方向と直交する幅方向に、孔有り部、孔無し部、および、孔有り部と孔無し部との間の孔漸減部を有し、
孔有り部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
孔無し部は、貫通孔を有さず、
孔漸減部は、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔、および、複数の非貫通孔を有し、
孔漸減部において、貫通孔による開口率が、孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減しているアルミニウム箔である。
【0018】
本発明のアルミニウム箔の構成について、
図1~
図4を用いて説明する。
図1は、本発明のアルミニウム箔の好適な実施態様の一例を示す模式的な上面図である。
図2は、
図1に示すアルミニウム箔の部分拡大図である。
図3は、
図2に示すアルミニウム箔のB-B線断面図である。
図4は、本発明のアルミニウム箔をロール状に巻き取った状態を模式的に示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、アルミニウム箔10は、長尺なアルミニウム基材3からなり、アルミニウム基材3には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔5が設けられている。アルミニウム箔10の長手方向と直交する幅方向において、アルミニウム箔10は、中央部に設けられた孔有り部3a、両端部にそれぞれ設けられた孔無し部3b、および、孔有り部3aと孔無し部3bとの間の孔漸減部3cとを有する。すなわち、
図1に示す例では、アルミニウム箔10は、幅方向の一方の端部から、他方の端部に向かって、孔無し部3b、孔漸減部3c、孔有り部3a、孔漸減部3c、および、孔無し部3bの順に有する。
なお、
図1において、図中左右方向がアルミニウム箔10の長手方向であり、図中上下方向が幅方向である。この点は、
図2、
図5も同様である。また、
図1においては非貫通孔の図示は省略している。
【0020】
図4に示すように、長尺なアルミニウム箔10は、ロール状に巻き取られた形態とすることができる。例えば、長尺なアルミニウム箔10は、ロール形態で各種工程に提供され、ロールからアルミニウム箔10を引き出して各種工程を施される。
【0021】
図2および
図3に示すように、孔有り部3aは、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔5が形成されている領域である。また、好適な態様として、孔有り部3aには、厚さ方向に貫通していない複数の非貫通孔6(凹部)も形成されている。
なお、
図2において、貫通孔5を白丸で示し、非貫通孔6を塗りつぶしの丸で示す。
【0022】
孔無し部3bは、貫通孔が形成されていない領域である。また、孔無し部3bには非貫通孔も形成されていないのが好ましい。
【0023】
孔漸減部3cは、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔5、および、厚さ方向に貫通していない非貫通孔6が形成されている領域である。
ここで、孔漸減部3cにおいて、貫通孔5による開口率(以下、単に開口率ともいう)が孔有り部3a側から孔無し部3c側に向かって漸減している。すなわち、孔漸減部3c中において、孔有り部3a近傍の領域における開口率が、孔無し部3b近傍の領域における開口率よりも大きく、孔有り部3a側に近い領域ほど開口率が大きくなっている。
【0024】
前述のとおり、集電体として用いられるアルミニウム箔は薄く、貫通孔を有するため機械的な強度が低く各種工程を実施する際に破断が生じるという問題があった。
これに対して、アルミニウム箔の辺縁部に貫通孔を有さない領域を設けることで、破断を抑制して工程適性を向上することが提案されている。
【0025】
しかしながら、本発明者の検討によれば、以下のような問題が生じることがわかった。
アルミニウム箔を長尺な形態として、長尺なアルミニウム箔に対して、張力を連続的に付加しながら各種工程を実施する場合、辺縁部に貫通孔を有さない領域を有するアルミニウム箔に張力を連続的に付加しながら製造すると、貫通孔を形成する領域(孔有り部)は、貫通孔を形成しない領域(孔無し部)に比べ機械的な強度が低いため、張力を付加した方向の変形、すなわち伸びが、孔無し部に比べて大きくなる。孔有り部と孔無し部における伸びの差は、特に孔有り部と孔無し部との境界部分で顕著となり、境界部分に波打ちのような永久ひずみによる変形が形成されるという問題が生じることがわかった。
このような現象は、特に貫通孔を有するアルミニウム箔を連続的に巻き取る場合に顕著に発生し、巻取った表面上で凹凸となって現れ、その上に巻かれるアルミニウム箔の変形を助長してしまう。
【0026】
これに対して、本発明のアルミニウム箔は、孔有り部と孔無し部との間に、貫通孔と非貫通孔を有し、貫通孔による開口率が孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減している孔漸減部を有する。孔漸減部は開口率が孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減しているため、孔有り部近傍では伸びやすく、孔無し部近傍では伸びにくく、その間で変形のしやすさ(伸びやすさ)が徐々に変化している。これにより、孔漸減部の孔有り部近傍の領域は、孔有り部の伸び量に近い伸び量となり、また、孔無し部近傍の領域では、孔無し部の伸び量に近い伸び量となり、その間の領域では孔有り部側から孔無し部側に向かって伸び量が漸次小さくなる。孔有り部と孔無し部との間にこのような孔漸減部を有することで、孔有り部と孔無し部との境界部分に応力集中が生じることを抑制して、孔有り部と孔無し部とにおける伸びの差に起因する変形が生じることを抑制できる。
また、孔漸減部が非貫通孔を有することで、アルミニウム箔に張力が加わった際の応力分布を不均一にすることができる。応力分布を不均一にすることで、特定の個所に応力集中しにくくすることができ、これによって、孔有り部と孔無し部とにおける伸びの差に起因する永久歪みが特定位置で蓄積されることを緩和して、変形が生じることを抑制できる。
【0027】
なお、孔有り部、孔漸減部、および、孔無し部は以下のようにして判断する。
【0028】
孔無し部は、アルミニウム箔の幅方向に、3mm×3mmの領域を1mm間隔でずらしながら、貫通孔の有無を下記方法で確認したときに、3mm×3mm四方内に貫通孔が存在しない部分と定義する。確認方法は、シャウカステンなどの面発光板上に試料を置いたとき、その領域内では孔からの透過光が見えない時に孔無し部と判断する。
従って、孔無し部以外の領域は、孔有り部および孔漸減部と判断する。
【0029】
孔有り部と孔漸減部との境界は、以下のようにして判断する。
まず、シャウカステン等の面発光板上にアルミニウム箔を置き、目視で透過光が漸減する部分を仮の孔漸減部とする。幅方向において、仮の孔漸減部と孔有り部の境界から、10mm以上孔有り部側を孔有り部とし、孔有り部内での平均開口率を求める。
【0030】
孔有り部における貫通孔の平均開口率は、以下のようにして測定する。
光学顕微鏡を使い、平行光の下面光源でアルミニウム箔の表面側から写真撮影することで、各貫通孔を透過光でとらえる。倍率は100倍で撮影し、1mm×0.7mmの範囲の画像について画像解析ソフトで2値化することで、貫通孔の開口面積の合計と、視野の面積(幾何学的面積)の比率から開口率(開口面積/幾何学的面積)を求める。同様に、各開口部の円相当径を平均することで平均開口径、また、各開口部の個数を求め単位面積(1mm2)当たりの孔密度を求める。この操作を、観察位置を変えて通常N=5カ所について行い、該当部の開口率、平均開口径、孔密度の平均を求める。
【0031】
次に、孔有り部と孔漸減部の境界を確定し、孔漸減部の開口率などを求める方法を説明する。観察は、孔有り部の開口率測定と同じく、光学顕微鏡を使い、平行光の下面光源でアルミニウム箔の表面側から写真撮影することで、各貫通孔を透過光でとらえる。倍率は100倍で撮影し、1mm×0.7mmの範囲の画像について画像解析ソフトで2値化することで、貫通孔の開口面積の合計と、視野の面積(幾何学的面積)の比率から開口率(開口面積/幾何学的面積)を求める。同様に、各開口部の円相当径を平均することで平均開口径、また、各開口部の個数を求め単位面積(1mm2)当たりの孔密度を求める。
先に述べた、孔有り部と孔漸減部の仮の境界を中心に、幅方向に1mm単位で位置を変えて1mm(幅方向)×0.7mm(長さ方向)の視野を100倍で観察する。ここで、孔有り部の開口率の値をXとしたとき、開口率が0.7X以下になる領域が連続して2カ所以上続いたときに、最初に開口率が孔有り部の開口率の0.7倍以下になった領域を、孔有り部と孔漸減部の境界と判断する。
【0032】
次に孔漸減部の開口率は、前述の、境界を含む領域の隣で、孔無し部に近い領域から、孔無し部までの間の領域の平均値とする。例えば、孔有り部の平均開口率が5%の時、最初に開口率が3.5%まで低下した領域を境界部としたとき、その隣の領域から孔無し部までの間に孔漸減部が1mm×0,7mmの領域にして5つ存在した場合、その5つの領域の開口率の平均値を孔漸減部の開口率とする。孔密度、平均開口径も同様に算出する。
以上のようにして、孔有り部、孔漸減部、および、孔無し部を判断する。
【0033】
ここで、孔有り部において、貫通孔による平均開口率は、0.15%~30%であるのが好ましく、0.5%~30%がより好ましく、1%~20%がさらに好ましく、2%~10%が特に好ましい。
貫通孔の平均開口率を上記範囲とすることで、アルミニウム箔に活物質を塗布する際に抜け等が発生するのを防止でき、また、塗布した活物質との密着性を向上できる。また、アルミニウム箔が多数の貫通孔を有するものとした場合でも、十分な引張強度を有するものとすることができる。
【0034】
孔有り部において、貫通孔の平均開口径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm超80μm以下がより好ましく、3μm超40μm以下がさらに好ましく、5μm以上30μm以下が特に好ましい。
孔有り部における貫通孔の平均開口径を上記範囲とすることで、アルミニウム箔に活物質等を塗布する際に抜け等が発生するのを防止でき、また、塗布した活物質との密着性を向上できる。また、アルミニウム箔が多数の貫通孔を有するものとした場合でも、十分な引張強度を有するものとすることができる。
【0035】
同様に、孔漸減部において、貫通孔の平均開口径は、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、1μm超80μm以下がより好ましく、3μm超40μm以下がさらに好ましく、5μm以上30μm以下が特に好ましい。
活物質を塗布する際、孔無し部は、集電体に、端子用のタブを取り付けるために未塗布にすることが一般的であり、孔漸減部はその際、塗布部と未塗布部との境界になることが多い。そのため、孔漸減部において、塗布時に活物質などの材料が孔を通過して裏面に抜けることが発生するのを抑制するため、孔漸減部における貫通孔の平均開口径を上記範囲とすることが好ましいである。
【0036】
また、変形を好適に抑制できる等の観点から、幅方向における孔漸減部の幅は、3mm以上であるのが好ましく、5mm以上であるのがより好ましく、7mm以上であるのがさらに好ましい。
【0037】
また、孔漸減部における開口率の漸減傾向は、長手方向において一定であってもよいが、長手方向に変化していることが好ましい。孔漸減部における開口率の漸減傾向が長手方向に変化している構成とすることで、長尺なアルミニウム箔を巻き取る際などに、張力に起因する幅方向での微小な伸びの差が蓄積されて、歪の発生につながる可能性をより低くすることができる。
【0038】
孔漸減部における開口率の漸減傾向を変動させる方法としては、孔漸減部の幅を変動させることが好ましい。具体的には、長手方向に50mm間隔の5か所以上の位置で孔漸減部の幅を測定したときに孔漸減部の幅の最大値と最小値との差が1mm以上であるのが好ましく、2mm以上6mm以下であるのがより好ましく、2mm以上4mm以下であるのがさらに好ましい。
【0039】
なお、孔漸減部の幅が変動している場合、孔漸減部と孔有り部との境界は一定で、孔漸減部と孔無し部との境界が変動している構成であってもよいし、孔漸減部と孔有り部との境界が変動し、孔漸減部と孔無し部との境界が一定である構成であってもよいし、孔漸減部と孔有り部との境界が変動し、孔漸減部と孔無し部との境界が変動している構成であってもよい。
【0040】
図2に示す例では、孔有り部は、非貫通孔を有する構成としたが、非貫通孔を有さない構成であってもよい。
孔有り部が非貫通孔を有することにより、表面積が増加し、活物質層と密着する面積が増加することで、密着性がより向上する。
【0041】
活物質との密着性の観点から、孔有り部における非貫通孔の平均開口径は、0.1μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましく、2μm~30μmがさらに好ましい。
なお、非貫通孔の平均開口径は、アルミニウム箔の一方の面から、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム箔の表面を真上から倍率200倍で撮影し、得られたSEM写真において、周囲が環状に連なっている凹凸構造の凹部(ピット)を少なくとも20個抽出し、その最大径を読み取って開口径とし、これらの平均値を平均開口径として算出した。最大径とは、非貫通孔の開口部を構成する一の縁部間の直線距離のうち最大の値とする。例えば、非貫通孔が円形である場合は直径をいい、非貫通孔が楕円形である場合は長径をいい、非貫通孔が複数の円が重なりあった形状である場合は、一の円の縁部と他の円の縁部との直線距離のうち最大値をいう。
【0042】
また、活物質との密着性の観点から、孔有り部における非貫通孔の占有率は、1%~20%であるのが好ましく、2%~15%であるのがより好ましく、5%~10%であるのがより好ましい。
なお、非貫通孔の占有率は、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてアルミニウム箔の表面を真上から倍率200倍で撮影し、得られたSEM写真の30mm×30mmの視野(5箇所)について、画像解析ソフト等で2値化して凹部部分と非凹部部分を観察し、凹部の開口面積の合計と視野の面積(幾何学的面積)との比率(開口面積/幾何学的面積)を算出し、各視野(5箇所)における平均値を占有率として算出した。
【0043】
孔有り部と孔無し部とにおける伸びの差に起因する変形を好適に抑制できる観点から、孔漸減部における非貫通孔の平均開口径は、0.1μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましく、2μm~30μmがさらに好ましい。
【0044】
また、変形を好適に抑制できる観点から、孔漸減部における非貫通孔の占有率は、1%~15%であるのが好ましく、2%~15%であるのがより好ましく、5%~10%であるのがより好ましい。
【0045】
また、活物質との密着性の観点から、孔有り部における比表面積ΔS1は、5%以上であるのが好ましく、6%以上40%以下であるのがより好ましく、7%以上30%以下であるのがさらに好ましい。
ここで、比表面積Sは、原子間力顕微鏡を用いて、アルミニウム箔の表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定して得られる3次元データから近似三点法により得られる実面積Sxと、幾何学的測定面積S0とから、下記式(i)により求められる。
ΔS=(Sx-S0)/S0×100(%)・・・(i)
【0046】
具体的には、比表面積ΔSを求めるために、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。
すなわち、アルミニウム箔を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の表面形状(波構造)をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120~150kHz、バネ定数12~20N/mのもの(SI-DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。計測の際は、表面の25μm×25μmの範囲を512×512点測定する。XY方向の分解能は0.1μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
上記で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとする。比表面積ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積(投影面積)S0とから、上記式(i)により求められる。
なお、3次元データの計測の際には、25μm×25μmの範囲に貫通孔が含まれないようにして計測を行う。
【0047】
また、変形を好適に抑制できる観点から、孔漸減部における比表面積ΔS2は、2.5%以上であるのが好ましく、3%以上20%以下であるのがより好ましく、4%以上15%以下であるのがさらに好ましい。
【0048】
ここで、孔漸減部において、幅方向で孔無し部に向かって貫通孔の開口率が漸減する構成は、幅方向で孔無し部に向かって貫通孔の開口径が小さくなることで開口率が漸減する構成であってもよいし、幅方向で孔無し部に向かって貫通孔の数密度が小さくなることで開口率が漸減する構成であってもよいし、貫通孔の開口径と数密度の組み合わせで開口率が漸減する構成であってもよい。
【0049】
孔漸減部における貫通孔の数密度は、幅方向の孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減していることが好ましい。
また、孔漸減部における貫通孔の平均数密度は、孔有り部にける貫通孔の平均数密度の10%以上90%以下であるのが好ましく、20%以上80%以下であるのがより好ましく、25%以上70%以下であるのがさらに好ましい。
【0050】
ここで、
図1に示す例では、孔無し部が、アルミニウム箔の幅方向の2か所に設けられる構成としたが、これに限定はされず、孔無し部が、アルミニウム箔の幅方向の1か所に設けられる構成であってもよいし、3か所以上に設けられる構成であってもよい。
また、
図1に示す例では、孔無し部が、アルミニウム箔の幅方向の両端部に設けられる構成としたが、これに限定はされず、端部以外の部分に設けられる構成であってもよい。
【0051】
例えば、
図5に示すアルミニウム箔10bは、幅方向の両端部および中央部に孔無し部3bを有している。すなわち、アルミニウム箔10bは、孔無し部3bが幅方向の3か所に設けられた構成である。従って、孔有り部3aは、2つの孔無し部3bに挟まれる領域の計2か所に設けられている。また、孔漸減部3cは、孔有り部3aと孔無し部3bとの間の領域の計4か所に設けられている。
すなわち、アルミニウム箔10bは、幅方向(図中上下方向)において、一方の端部から他方の端部に向かって、孔無し部3b、孔漸減部3c、孔有り部3a、孔漸減部3c、孔無し部3b、孔漸減部3c、孔有り部3a、孔漸減部3c、および、孔無し部3bの順に有している。
【0052】
図5に示すアルミニウム箔10bのように、幅方向の両端部および中央部に孔無し部3bを有する構成の場合には、中央部の孔無し部3bの位置でアルミニウム箔10bを切断することで、
図1に示すようなアルミニウム箔10を2つ作製することができる。
【0053】
<アルミニウム基材>
アルミニウム箔の母材となるアルミニウム基材は、特に限定はされず、例えば、JIS規格H4000に記載されている合金番号1085、1N30、3003、8021、1100等の公知のアルミニウム基材を用いることができる。なお、アルミニウム基材は、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。
【0054】
アルミニウム基材(アルミニウム箔)の厚みとしては、限定はないが、5μm~100μmが好ましく、10μm~30μmがより好ましい。
ここで、アルミニウム基材の平均厚みは、接触式膜厚測定計(デジタル電子マイクロメータ)を用いて、任意の5点を測定した厚みの平均値をいう。
【0055】
[アルミニウム箔の製造方法]
次に、本発明のアルミニウム箔を作製する製造方法の一例について説明する。なお、本発明のアルミニウム箔を作製する製造方法はこれに限定はされない。
アルミニウム箔を作製する製造方法は、例えば、アルミニウム基材の表面に水酸化アルミニウムを主成分とする皮膜を形成する皮膜形成工程と、皮膜形成工程の後に、貫通孔形成処理を行って貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、貫通孔形成工程の後に、水酸化アルミニウム皮膜を除去する皮膜除去工程と、を有する。
【0056】
次に、アルミニウム箔の製造方法の各工程を
図6~
図10および
図11~
図15を用いて説明した後に、各工程の詳細について詳述する。
【0057】
図6~
図10および
図11~
図15は、アルミニウム箔の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
アルミニウム箔の製造方法は、
図6~
図10および
図11~
図15に示すように、アルミニウム基材1の一方の主面(
図11に示す態様においては両方の主面)に対して皮膜形成処理を施し、水酸化アルミニウム皮膜2を形成する皮膜形成工程(
図6および
図7,
図11および
図12)と、皮膜形成工程の後に電解溶解処理を施して貫通孔5を形成し、貫通孔を有するアルミニウム基材3および貫通孔を有する水酸化アルミニウム皮膜4を有するアルミニウム箔を作製する貫通孔形成工程(
図7および
図8,
図12および
図13)と、貫通孔形成工程の後に、貫通孔を有する水酸化アルミニウム皮膜4を除去し、貫通孔を有するアルミニウム基材3からなるアルミニウム箔10を作製する皮膜除去工程(
図8および
図9,
図13および
図14)と、を有する製造方法である。
【0058】
ここで、本発明のアルミニウム箔のように孔無し部および孔漸減部を有する構成とするために、貫通孔形成工程において、
図16に示すように、電解溶解処理を施す際の電極20とアルミニウム基材3との間に電流遮蔽板22aを配置する。なお、
図16および後述する
図17において、図中左右方向がアルミニウム箔の幅方向である。
後述するように、貫通孔形成工程において電界溶解処理を施して貫通孔を形成する。その際、アルミニウム基材3に電極20を対向して配置して、電極20とアルミニウム基材3を電極対として電圧を印加することで、電解液を介して電流が流れて、表面の皮膜の電気抵抗が低い部分から選択的に溶解が始まり、貫通孔が形成される。アルミニウム基材3と電極20の間で電解液を介して電流が流れ電気化学的溶解反応が進むことで貫通孔が形成されるため、アルミニウム基材3と電極20との間の任意の位置に電流を遮蔽する電流遮蔽板22aを配置することで電流が流れず溶解反応が進行しなくなるため、電流遮蔽板22aを配置した位置に孔無し部を形成できる。
従って、
図16に示すように、幅方向の両端部に電流遮蔽板22aを配置することで、アルミニウム箔の両端部に孔無し部を形成することができる。
【0059】
さらに、孔漸減部を形成するため、
図16示すように、電流遮蔽板22aは、幅方向の中央側の端部において、厚さが漸次薄くなる形状を有している。
図16に示す例では、中央側の端部のアルミニウム箔側の角部がR形状である。
このような構成とすることで、電流遮蔽板22aとアルミニウム基材3との隙間が幅方向の中央側に向かって漸次大きくなる。これによって、電極20とアルミニウム基材3との間に電圧を印加した際に、この領域の電気力線の密度が、中央側から端部側に向かって漸減する。そのため、端部側でより貫通孔が形成されにくくなり、貫通孔による開口率が、孔有り部側から孔無し部側に向かって漸減している孔漸減部を形成することができる。
【0060】
なお、
図16に示す例では、電流遮蔽板22aは中央側の端部のアルミニウム箔側の角部がR形状である構成としたが、これに限定はされない。例えば、
図17に示す電流遮蔽板22bのように、中央側の端部のアルミニウム箔側の角部がC面取りされた構成であってもよい。
【0061】
また、上記例では、アルミニウム基材と電極との間に電流遮蔽板を配置して、孔漸減部および孔無し部を形成する構成としたがこれに限定はされず、孔漸減部および孔無し部を形成できればその方法に制限はない。
例えば、電極を幅方向で分割し、各電極に流れる電流を制御して、幅方向において電流値に分布を持たせる方法が考えられる。
【0062】
アルミニウム箔の製造方法は、皮膜除去工程の後に、貫通孔を有するアルミニウム基材3に電気化学的粗面化処理を施し、表面を粗面化したアルミニウム箔10を作製する粗面化処理工程(
図11および
図12,
図16および
図17)を有してもよい。
【0063】
また、皮膜形成工程、貫通孔形成工程、および、皮膜除去工程それぞれの工程終了後には水洗処理を行う水洗工程を有するのが好ましい。
また、各工程後の水洗処理の後には、乾燥処理を行う乾燥工程を有するのが好ましい。
【0064】
〔皮膜形成工程〕
皮膜形成工程は、アルミニウム基材の表面に皮膜形成処理を施し、水酸化アルミニウム皮膜を形成する工程である。
【0065】
<皮膜形成処理>
上記皮膜形成処理は特に限定されず、例えば、従来公知の水酸化アルミニウム皮膜の形成処理と同様の処理を施すことができる。
皮膜形成処理としては、例えば、特開2011-201123号公報の[0013]~[0026]段落に記載された条件や装置を適宜採用することができる。
【0066】
本発明においては、皮膜形成処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1~80質量%、液温5~70℃、電流密度0.5~60A/dm2、電圧1~100V、電解時間1秒~20分であるのが適当であり、所望の皮膜量となるように調整される。
【0067】
本発明においては、電解液として、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸、あるいは、これらの酸の2以上の混酸を用いて電気化学的処理を行うのが好ましい。
硝酸、塩酸を含む電解液中で電気化学的処理を行う場合には、アルミニウム基材と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム基材に直流を印加する場合においては、電流密度は、1~60A/dm2であるのが好ましく、5~50A/dm2であるのがより好ましい。連続的に電気化学的処理を行う場合には、アルミニウム基材に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
【0068】
本発明においては、皮膜形成処理により形成される水酸化アルミニウム皮膜の量は0.05~50g/m2であるのが好ましく、0.1~10g/m2であるのがより好ましい。
【0069】
〔貫通孔形成工程〕
貫通孔形成工程は、皮膜形成工程の後に電解溶解処理を施し、貫通孔を形成する工程である。
【0070】
<電解溶解処理>
上記電解溶解処理は特に限定されず、直流または交流を用い、酸性溶液を電解液に用いることができる。中でも、硝酸、塩酸の少なくとも1以上の酸を用いて電気化学処理を行うのが好ましく、これらの酸に加えて硫酸、燐酸、シュウ酸の少なくとも1以上の混酸を用いて電気化学的処理を行うのが更に好ましい。
【0071】
本発明においては、電解液である酸性溶液としては、上記酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
【0072】
酸性溶液の濃度は0.1~2.5質量%であるのが好ましく、0.2~2.0質量%であるのが特に好ましい。また、酸性溶液の液温は20~80℃であるのが好ましく、30~60℃であるのがより好ましい。
【0073】
また、上記酸を主体とする水溶液は、濃度1~100g/Lの酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物、硫酸アルミニウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の硫酸イオンを有する硫酸化合物少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。
また、上記酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、酸の濃度0.1~2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが1~100g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
【0074】
電気化学的溶解処理には、主に直流電流が用いられるが、交流電流を使用する場合にはその交流電源波は特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられ、中でも、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。
【0075】
(硝酸電解)
本発明においては、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的溶解処理(以下、「硝酸溶解処理」とも略す。)により、容易に、平均開口径が0.1μm以上100μm以下の貫通孔を形成することができる。
ここで、硝酸溶解処理は、貫通孔形成の溶解ポイントを制御しやすい理由から、直流電流を用い、平均電流密度を5A/dm2以上とし、かつ、電気量を50C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるであるのが好ましい。なお、平均電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は10000C/dm2以下であるのが好ましい。
また、硝酸電解における電解液の濃度や温度は特に限定されず、高濃度、例えば、硝酸濃度15~35質量%の硝酸電解液を用いて30~60℃で電解を行ったり、硝酸濃度0.7~2質量%の硝酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行ったりすることができる。
また、上記硝酸電解液に濃度0.1~50質量%の硫酸、シュウ酸、燐酸の少なくとも1つを混ぜた電解液を用いて電解を行うことができる。
【0076】
(塩酸電解)
本発明においては、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的溶解処理(以下、「塩酸溶解処理」とも略す。)によっても、容易に、平均開口径が1μm以上100μm以下の貫通孔を形成することができる。
ここで、塩酸溶解処理は、貫通孔形成の溶解ポイントを制御しやすい理由から、直流電流を用い、平均電流密度を5A/dm2以上とし、かつ、電気量を50C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるであるのが好ましい。なお、平均電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は10000C/dm2以下であるのが好ましい。
また、塩酸電解における電解液の濃度や温度は特に限定されず、高濃度、例えば、塩酸濃度10~35質量%の塩酸電解液を用いて30~60℃で電解を行ったり、塩酸濃度0.7~2質量%の塩酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行ったりすることができる。
また、上記塩酸電解液に濃度0.1~50質量%の硫酸、シュウ酸、燐酸の少なくとも1つを混ぜた電解液を用いて電解を行うことができる。
【0077】
〔皮膜膜除去工程〕
皮膜除去工程は、化学的溶解処理を行って水酸化アルミニウム皮膜を除去する工程である。
上記皮膜除去工程は、例えば、後述する酸エッチング処理やアルカリエッチング処理を施すことにより水酸化アルミニウム皮膜を除去することができる。
【0078】
<酸エッチング処理>
上記溶解処理は、アルミニウムよりも水酸化アルミニウムを優先的に溶解させる溶液(以下、「水酸化アルミニウム溶解液」という。)を用いて水酸化アルミニウム皮膜を溶解させる処理である。
【0079】
ここで、水酸化アルミニウム溶解液としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸、クロム化合物、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選択される少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
【0080】
具体的には、クロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。
上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
【0081】
中でも、上記水酸化アルミニウム溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硝酸、塩酸、硫酸、燐酸、シュウ酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。中でも、酸として硝酸を用いるのが好ましい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。
【0082】
溶解処理は、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材を上述した溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、スプレー法が好ましい。
【0083】
スプレー法は、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材を搬送しながら、スプレーで溶解液をかける処理で、両面から溶解液を掛けることが好ましい。スプレー処理時間は、搬送速度によって異なるが、5秒以上が好ましく、15秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましい。
【0084】
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記水酸化アルミニウム皮膜をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解させる処理である。
【0085】
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム(カセイソーダ)、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、メタケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、水酸化ナトリウムの水溶液が好ましい。
【0086】
アルカリ溶液の濃度は、0.1~50質量%であるのが好ましく、0.2~10質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01~10質量%であるのが好ましく、0.1~3質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は10~90℃であるのが好ましい。処理時間は1~120秒であるのが好ましい。
【0087】
水酸化アルミニウム皮膜をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液を水酸化アルミニウム皮膜が形成されたアルミニウム基材の表面(水酸化アルミニウム皮膜)に噴きかける方法が挙げられる。
【0088】
〔粗面化処理工程〕
粗面化処理工程は、水酸化アルミニウム皮膜を除去したアルミニウム基材に対して電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」とも略す。)を施し、アルミニウム基材の表面ないし裏面を粗面化する工程であり、必要に応じて用いられる。
電解粗面化処理を施し、アルミニウム箔の表面を粗面化することにより、活物質を含む層との密着性が向上するとともに、表面積が増えることによって接触面積が増えるため、得られるアルミニウム箔を用いた蓄電デバイスの容量維持率が高くなる。
上記電解粗面化処理としては、例えば、特開2012-216513号公報の[0041]~[0050]段落に記載された条件や装置を適宜採用することができる。
【0089】
上述した製造方法においては、水酸化アルミニウム皮膜を形成した後、貫通孔を形成する際に非貫通孔も形成されるが、さらに、粗面化処理を施すことで、密に非貫通孔を形成することができる。
また、上記実施形態では、貫通孔を形成した後に粗面化処理を行う構成としたが、これに限定はされず、粗面化処理の後に貫通孔を形成する構成としてもよい。
【0090】
<硝酸電解>
粗面化処理としては、硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理(以下、「硝酸電解」とも略す。)を採用することができる。
ここで、硝酸電解は、交流電流を用い、ピーク電流密度を30A/dm2以上とし、平均電流密度を13A/dm2以上とし、かつ、電気量を150C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるのが好ましい。なお、ピーク電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、平均電流密度は40A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は400C/dm2以下であるのが好ましい。
また、硝酸電解における電解液の濃度や温度は特に限定されず、高濃度、例えば、硝酸濃度15~35質量%の硝酸電解液を用いて30~60℃で電解を行ったり、硝酸濃度0.7~2質量%の硝酸電解液を用いて高温、例えば、80℃以上で電解を行ったりすることができる。
【0091】
<塩酸電解>
粗面化処理としては、塩酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理(以下、「塩酸電解」とも略す。)を採用することができる。
ここで、塩酸電解においては、交流電流を用い、ピーク電流密度を30A/dm2以上とし、平均電流密度を13A/dm2以上とし、かつ、電気量を10C/dm2以上とする条件で施す電解処理であるであるのが好ましい。なお、ピーク電流密度は100A/dm2以下であるのが好ましく、平均電流密度は40A/dm2以下であるのが好ましく、電気量は400C/dm2以下であるのが好ましい。
【0092】
〔水洗工程〕
前述のとおり、本発明においては、上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
【0093】
〔乾燥工程〕
前述のとおり、各工程後の水洗工程の後には、乾燥処理を行う乾燥工程を有するのが好ましい。
乾燥の方法には限定はなく、エアナイフ等により水分を吹き飛ばす方法、加熱による方法等の公知の乾燥方法が適宜利用可能である。また、複数の乾燥方法を行なってもよい。
【0094】
[集電体]
上述のとおり、本発明のアルミニウム箔は、蓄電デバイス用集電体(以下、「集電体」ともいう)として利用可能である。
集電体は、アルミニウム箔が厚み方向に複数の貫通孔を有していることにより、例えば、リチウムイオンキャパシタに用いた場合においては短時間でのリチウムのプレドープが可能となり、リチウムをより均一に分散させることが可能となる。また、活物質層や活性炭との密着性が良好となり、サイクル特性や出力特性、塗布適性等の生産性に優れる蓄電デバイスを作製することができる。
【0095】
<活物質層>
活物質層としては特に限定はなく、従来の蓄電デバイスにおいて用いられる公知の活物質層が利用可能である。
具体的には、アルミニウム箔を正極の集電体として用いる場合の、活物質および活物質層に含有していてもよい導電材、結着剤、溶媒等については、特開2012-216513号公報の[0077]~[0088]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
また、アルミニウム箔を負極の集電体として用いる場合の、活物質については、特開2012-216513号公報の[0089]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0096】
[蓄電デバイス]
本発明のアルミニウム箔を集電体として利用する電極は、リチウムイオンバッテリー、リチウムイオンキャパシタ等の蓄電デバイスの正極あるいは負極として用いることができる。
ここで、蓄電デバイス(特に、二次電池)の具体的な構成や適用される用途については、特開2012-216513号公報の[0090]~[0123]段落に記載された材料や用途を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0097】
[正極]
本発明のアルミニウム箔を集電体として用いた正極は、アルミニウム箔を正極に用いた正極集電体と、正極集電体の表面に形成される正極活物質を含む層(正極活物質層)とを有する正極である。
ここで、上記正極活物質や、上記正極活物質層に含有していてもよい導電材、結着剤、溶媒等については、特開2012-216513号公報の[0077]~[0088]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0098】
[負極]
本発明のアルミニウム箔を集電体として用いた負極は、アルミニウム箔を負極に用いた負極集電体と、負極集電体の表面に形成される負極活物質を含む層とを有する負極である。
ここで、上記負極活物質については、特開2012-216513号公報の[0089]段落に記載された材料を適宜採用することができ、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0099】
[その他の用途]
本発明のアルミニウム箔は、電解コンデンサ用の集電体としても用いることができる。
【実施例】
【0100】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0101】
[実施例1]
幅350mm、厚み20μm、長さ1000mのアルミニウム基材ロール(1085材)を準備し、このアルミニウム基材ロールからアルミニウム基材を引き出して長手方向に搬送しつつ、連続的に以下の工程を実施して本発明のアルミニウム箔を作製し、巻き取った。巻取り軸は内径3インチの樹脂製の軸とした。
【0102】
<皮膜形成工程>
50℃に保温した電解液(硝酸濃度1%、硫酸濃度0.2%、アルミニウム濃度0.5%)を用いて、上記アルミニウム基材を陰極として、電気量総和が1000C/dm2の条件下で電解処理を施し、アルミニウム基材に水酸化アルミニウム皮膜を形成した。なお、電解処理は、直流電源で行った。なお、電流密度は、50A/dm2とした。
水酸化アルミニウム皮膜形成後、スプレーによる水洗を行った。
【0103】
<貫通孔形成工程>
次いで、50℃に保温した電解液(硝酸濃度1%、硫酸濃度0.2%、アルミニウム濃度0.5%)を用いて、アルミニウム基材を陽極として、電気量総和が500C/dm2の条件下で電解処理を施し、アルミニウム基材及び水酸化アルミニウム皮膜に貫通孔を形成した。なお、電解処理は、直流電源で行った。電流密度は、25A/dm2とした。
【0104】
この時、
図16に示すように、アルミニウム基材と電極との間の、幅方向の両端部の位置に電流遮蔽板を配置した。
電極はカーボン電極を用いた。アルミニウム基材と電極との距離は20mmとした。
電流遮蔽板としては、厚さ20mm、材質:塩ビの板を用いた。電流遮蔽板は、アルミニウム基材の幅方向の両端側それぞれに、端辺から幅20mmの間の領域を覆うように配置した。また、電流遮蔽板の幅方向の中央側の端部のアルミニウム箔側の角部をR10mmとした。
貫通孔の形成後、スプレーによる水洗を行い、引き続き皮膜除去工程を行った。
【0105】
<皮膜除去工程>
次いで、電解溶解処理後のアルミニウム基材を、水酸化ナトリウム濃度5質量%、アルミニウムイオン濃度0.5質量%の水溶液(液温35℃)をスプレーで両面から30秒間かけた後、硝酸濃度1%、アルミイオン濃度0.5質量%の水溶液(液温50℃)をスプレーで両面から30秒間かけることにより、水酸化アルミニウム皮膜を溶解し、除去した。
その後、スプレーによる水洗を行い、乾燥させることにより、貫通孔を有するアルミニウム箔を作製した。
【0106】
上記アルミニウム箔の作製を300m以上連続して行い、50mまで巻き取った時点、100mまで巻き取った時点、および、300mまで巻き取った時点で歪みの発生の有無を巻取り軸上で観察した。その結果、いずれも歪みは観察されなかった。
【0107】
なお、作製開始直後に、サンプルを採取した後に、改めて巻取りを行って上記観察を行った。また、採取したサンプルの長手方向に50mm間隔の5か所で、下記のようにして、孔有り部、孔漸減部、および、孔無し部を判断した。
【0108】
まず、下面発光光源上にアルミニウム箔を置き、幅方向端部から幅方向に1mm間隔で3mm×3mmの領域を観察し透過光が見えない領域を孔無し部と判断した。
【0109】
次に、シャウカステン等の面発光板上にアルミニウム箔を置き、目視で透過光が漸減する部分を仮の孔漸減部とし、幅方向において、仮の孔漸減部と孔有り部の境界から、10mm以上孔有り部側を孔有り部とし、上記の方法で孔有り部内での平均開口率を求めた。その結果、平均開口率は5%であった。
【0110】
次に、孔有り部と孔漸減部の仮の境界を中心に、幅方向に1mm単位で位置を変えて1mm(幅方向)×0.7mm(長さ方向)の視野を100倍で観察した。孔有り部の開口率の値をXとしたとき、開口率が0.7X以下になる領域が連続して2カ所以上続いた際の、最初に開口率が0.7X以下になった領域を、孔有り部と孔漸減部の境界とした。
【0111】
これによって、孔有り部、孔漸減部、孔無し部を判定した。また、孔漸減部においては、貫通孔による開口率が孔有り部側から孔無し部側に向かって3.5%から0%近傍まで漸減していることを確認した。
また、孔漸減部の幅は、長手方向の位置によって8mm~13mmの間で変動していた。また、孔有り部は、貫通孔形成工程において電流遮蔽板が配置されなかった領域とほぼ一致しており、幅は310mmであった。
【0112】
孔有り部における貫通孔の平均開口径、数密度、非貫通孔の有無、面積占有率、比表面積を上述の方法で測定した。平均開口径は20μmであった。数密度は140個/mm2であった。非貫通孔を有していることを確認した。非貫通孔の面積占有率は、2%であった。比表面積は5%であった。
【0113】
孔漸減部における貫通孔の数密度、非貫通孔の有無、面積占有率、比表面積を上述の方法で測定した。数密度は、孔有り部側から孔無し部側に向かって、140個/mm2から0個/mm2近傍まで漸減していた。非貫通孔を有していることを確認した。非貫通孔の面積占有率は、1%であった。比表面積は2.5%であった。
【0114】
[実施例2]
貫通孔形成工程における電気量総和を350Cdm2とした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0115】
[実施例3]
貫通孔形成工程における電気量総和を1000Cdm2とした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0116】
[実施例4]
貫通孔形成工程において、電流遮蔽板の形状を
図17に示す例のように、幅方向の中央側の端部のアルミニウム箔側の角部をC5mm面取り加工したものとした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0117】
[実施例5]
貫通孔形成工程において、電流遮蔽板の幅方向の中央側の端部のアルミニウム箔側の角部をR5mmのR加工したものとした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0118】
[実施例6]
貫通孔形成工程において、電流遮蔽板の幅方向の中央側の端部のアルミニウム箔側の角部をC1mmの面取り加工したものとした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0119】
[比較例1]
貫通孔形成工程において、電流遮蔽板の幅方向の中央側の端部のアルミニウム箔側の角部を加工しないものとした以外は実施例1と同様にしてアルミニウム箔を作製した。
【0120】
[評価]
<巻取り時の歪みの有無>
各実施例および比較例で作製したアルミニウム箔について、実施例1と同様に50mまで巻き取った時点、100mまで巻き取った時点、および、300mまで巻き取った時点で歪みの発生の有無を巻取り軸上で観察した。
【0121】
<活性炭密着性>
実施例1~3で作製したアルミニウム箔について、両面にそれぞれ厚み50μmになるように活性炭を塗布し乾燥した。その際、塗布幅は、孔有り部および孔漸減部の一部を含む幅とし、孔漸減部の一部と孔無し部には活性炭が塗布されないものとした。塗布乾燥後に、ロール式のプレス加工を行い、更に所定の長さに切断する作業を行った。プレス後、および、切断後に、塗布した活性炭の層の剥離の有無を調べた。
結果を表1および表2に示す。
【0122】
【0123】
【0124】
表1から、孔漸減部を有さない比較例は、巻取り時に長く巻き取ると歪みが発生することがわかる。これに対して、本発明の実施例は、孔漸減部を有するため300m巻き取っても巻取り時の歪みの発生を抑制できることがわかる。
また、実施例1、4~6の対比から、孔漸減部の幅は3mm以上であるのが好ましいことがわかる。
【0125】
表2から、実施例1,2,3は貫通孔形成電流を大きくしていくことで、貫通孔が増えるとともに、非貫通孔も増加し、非貫通孔の面積占有率が、孔有り部、孔漸減部ともに増加したことがわかる。それに伴い、比表面積の値も増加したことがわかる。
また、活性炭の密着性に関して、実施例1,2,3は、プレス後、および、切断加工後いずれの場合も、剥離の発生がないことがわかる。これらの結果は、アルミニウム箔の孔有り部および孔漸減部に非貫通孔を有し、比表面積が所定の値以上あるため孔有り部、孔漸減部いずれにおいても優れた密着性を示したものと考えられる。
以上より本発明の効果は明らかである。
【符号の説明】
【0126】
1 アルミニウム基材
2 水酸化アルミニウム皮膜
3 貫通孔を有するアルミニウム基材
3a 孔有り部
3b 孔無し部
3c 境界部
4 貫通孔を有する水酸化アルミニウム皮膜
5 貫通孔
10 アルミニウム箔
20 電極
22a、22b 電流遮蔽板
W1 境界部の幅
W2 孔無し部の幅