(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-07
(45)【発行日】2022-12-15
(54)【発明の名称】試料ホルダ、試料ホルダの使用方法、突出量調整治具、突出量の調整方法および荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/20 20060101AFI20221208BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20221208BHJP
H01J 37/30 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01J37/20 A
H01J37/28 B
H01J37/20 Z
H01J37/30 Z
H01J37/20 E
H01J37/20 D
(21)【出願番号】P 2021548049
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037631
(87)【国際公開番号】W WO2021059401
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 恵
(72)【発明者】
【氏名】高須 久幸
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 健人
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-154846(JP,A)
【文献】特開2019-3732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子線装置に用いられる試料ホルダであって、
第1表面および前記第1表面と反対側の第1裏面を有する遮蔽板と、
前記遮蔽板の前記第1裏面に連結された試料台と、
前記試料台に取り付けられた状態で、前記遮蔽板の前記第1裏面と垂直な第1方向へ移動可能であり、且つ、棒形状を成す押圧部材と、
前記遮蔽板の前記第1裏面に対向する位置に設けられ、且つ、前記押圧部材に接続された試料支持部材と、
前記押圧部材の外周に沿って設けられ、且つ、前記試料支持部材および前記試料台に接続された弾性体と、
を有する、試料ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記試料支持部材の中央部に対して線対称となるように、前記押圧部材は、2つ設けられ、
2つの前記押圧部材の外周に、それぞれ前記弾性体が設けられている、試料ホルダ。
【請求項3】
請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記試料台は、前記第1方向に延在する第1接続部と、前記第1方向と交差する第2方向へ延在する第2接続部とを含み、
前記第1接続部は、前記遮蔽板に接続され、
前記第2接続部は、前記押圧部材および前記弾性体に接続されている、試料ホルダ。
【請求項4】
請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記遮蔽板および前記試料台は、第1ネジによって固定されている、試料ホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載の試料ホルダにおいて、
前記試料台には、2つの第1ネジ穴が形成され、
前記遮蔽板の前記第1裏面を構成する4辺の各々の中央部に、第2ネジ穴が形成され、
前記遮蔽板の前記第1裏面の中央部に対して点対称に設けられた2つの前記第2ネジ穴は、それぞれ2つの前記第1ネジ穴に連通し、
前記第1ネジは、連通している前記第1ネジ穴および前記第2ネジ穴に差し込まれている、試料ホルダ。
【請求項6】
請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記押圧部材の一方の端部は、前記試料支持部材に接続され、
前記押圧部材の他方の端部は、前記試料台を貫通し、且つ、つまみを有する板に接続され、
前記つまみを前記第1方向へ移動させることで、前記試料支持部材、前記押圧部材、前記弾性体および前記板が前記第1方向へ移動する、試料ホルダ。
【請求項7】
請求項6に記載の試料ホルダにおいて、
前記つまみには、前記板および前記試料台を貫通し、且つ、前記試料支持部材に接触できる長さを備えた第2ネジが設けられている、試料ホルダ。
【請求項8】
請求項1に記載の試料ホルダにおいて、
前記遮蔽板、前記試料台、前記押圧部材、前記試料支持部材および前記弾性体は、それぞれ非磁性材料から成る、試料ホルダ。
【請求項9】
請求項1に記載の試料ホルダを搭載可能な突出量調整治具であって、
第2表面および前記第2表面と反対側の第2裏面を有する遮蔽板設置台と、
前記遮蔽板設置台の前記第2表面上に設けられたスライダーと、
前記遮蔽板設置台に接続され、且つ、前記スライダーを移動させるための移動機構と、
を有する、突出量調整治具。
【請求項10】
請求項9に記載の突出量調整治具を用いて行われる試料の突出量の調整方法であって、
(a)前記遮蔽板の前記第1表面が前記遮蔽板設置台の前記第2表面に接触するように、前記遮蔽板設置台の前記第2表面上に前記試料ホルダを搭載するステップ、
(b)前記移動機構を用いて前記スライダーを移動させることで、前記遮蔽板とスライダーとの間の距離を調整するステップ、
(c)前記遮蔽板から離れるように、前記試料支持部材を前記第1方向へ移動させ、前記試料支持部材が前記遮蔽板から離れた状態で、前記試料を前記試料支持部材と前記遮蔽板との間に設置するステップ、
(d)前記試料の端面を前記スライダーの端面に接触させることで、前記試料の一部を前記遮蔽板から突出させるステップ、
(e)前記試料支持部材が前記試料に接触するように前記試料支持部材を移動させ、前記試料支持部材と前記遮蔽板との間に前記試料を保持するステップ、
を有する、突出量の調整方法。
【請求項11】
請求項1に記載の試料ホルダを備える荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項11に記載の荷電粒子線装置において、
イオン銃と、
前記試料ホルダを保持する加工用ホルダと、
前記加工用ホルダに設けられ、且つ、前記遮蔽板の前記第1表面に直接接する冷却板と、
前記冷却板に接続された冷却機構と、
を有する、荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項11に記載の荷電粒子線装置において、
電子銃と、
ステージと、
前記ステージから前記電子銃側へ突出するように、前記ステージに取り付けられた調整ネジと、
検出器と、
前記試料ホルダを保持するアタッチメントと、
を有し、
前記アタッチメントは、第3表面および前記第3表面と反対側の第3裏面を有する遮蔽板設置台を備え、
前記遮蔽板設置台には、前記第3表面から突起した遮蔽板固定部、前記第3表面から前記第3裏面へ貫通する固定穴、および、前記第3表面から窪み、且つ、前記遮蔽板固定部と前記固定穴との間に位置する溝が設けられ、
前記遮蔽板固定部には、切り欠きが設けられ、
前記遮蔽板の前記第1表面が前記遮蔽板固定部に接触し、前記遮蔽板の一部が前記溝に挿入され、且つ、前記切り欠きに第3ネジが差し込まれていることで、前記試料ホルダが前記遮蔽板設置台に固定され、
前記固定穴に前記調整ネジが差し込まれていることで、前記アタッチメントが前記ステージ上に設置されている、荷電粒子線装置。
【請求項14】
試料ホルダの使用方法であって、
前記試料ホルダは、
第1表面および前記第1表面と反対側の第1裏面を有する遮蔽板と、
前記遮蔽板の前記第1裏面に連結された試料台と、
前記試料台に取り付けられた状態で、前記遮蔽板の前記第1裏面と垂直な第1方向へ移動可能であり、且つ、棒形状を成す押圧部材と、
前記遮蔽板の前記第1裏面に対向する位置に設けられ、且つ、前記押圧部材に接続された試料支持部材と、
前記押圧部材の外周に沿って設けられ、且つ、前記試料支持部材および前記試料台に接続された弾性体と、
を有し、
(a)前記遮蔽板と前記試料支持部材との間で試料を保持するステップ、
(b)イオンミリング装置を用いて前記試料を加工するステップ、
(c)加工された前記試料を前記試料ホルダから離脱させることなく、前記試料ホルダを前記イオンミリング装置から走査型電子顕微鏡へ移送するステップ、
(d)前記走査型電子顕微鏡を用いて、加工された前記試料の断面を観察するステップ、
を備える、試料ホルダの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダ、試料ホルダの使用方法、試料ホルダに搭載される試料の突出量を調整するための突出量調整治具、突出量調整治具を用いた突出量の調整方法、および、試料ホルダを搭載可能な荷電粒子線装置に関し、特に遮蔽板を備える試料ホルダに好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、無応力で試料作製を行える方法として、イオンビームを用いた断面試料作製方法(イオンミリング)が一般的に用いられている。この方法では、まず、スパッタリング収率が小さい材料からなる遮蔽板(マスク部材)を試料の上面に配置する。次に、遮蔽板の端面から50~200μm程度離れた試料の一部を露出させ、真空排気した試料室内で、試料の上面側(遮蔽板側)からイオンビームを照射する。物理スパッタリング現象を利用して試料の上面から原子を弾き飛ばすことで、無応力で遮蔽板の端面に沿った形状のミリング面が得られる。
【0003】
このように得られた試料は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いた観察対象となる。一般的に、SEM用の試料を作製するためのイオンミリングの加工条件は、加速電圧を10kV程度以下とし、イオンビーム電流を200μA程度以下として行われる場合が多い。このとき、イオンビーム照射による試料への熱量は、2J/s程度以下となる。
【0004】
しかし、試料のイオンミリング面の半値幅が300μm程度であり、加工時間が数時間を超える場合があるので、高分子材料などからなる低融点の試料に対してイオンミリングを適用した場合、試料の温度上昇が無視できなくなる。温度上昇を抑制するためには、遮蔽板および試料の冷却が必要となる。そして、遮蔽板を介して試料の冷却および放熱を行う場合には、遮蔽板と試料との密着性が求められる。
【0005】
例えば、特許文献1には、試料台に搭載された試料と遮蔽板との接触面を、試料の変形に追従して移動させる移動機構を備えたイオンミリング装置が開示されている。また、特許文献1には、遮蔽板と試料との間に配置され、且つ、イオンビームの照射中において試料の変形に追従して変形する試料保持部材を用いる方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱に敏感なソフトマテリアル材料から成る試料を、イオンミリング装置を用いて冷却加工する場合、遮蔽板と試料との密着性の確保が必須となる。従来技術において、遮蔽板は、試料を保持するための試料ホルダの付属品であり、遮蔽板をネジによって試料側に押し付けることで、遮蔽板と試料との密着を図っていた。
【0008】
図14は、本願発明者らが検討した検討例の試料ホルダの要部を示す側面図である。検討例でも、遮蔽板102と試料SAMとを密着させている。そして、試料ホルダの一部には、遮蔽板102を保持するためのマスク押さえ103が設けられている。マスク押さえ103は、チャンバ外にあるデュワー内の液体窒素の冷たさを遮蔽板102に伝達する銅線が装着される部分であり、リン青銅からなる。このマスク押さえ103は、熱伝導率が高い一方で、冷却による収縮が大きい。
図14に示されるように、冷却後において、マスク押さえ103は、収縮し、マスク押さえ固定部を支点として反る。そのため、試料SAMと遮蔽板102との密着性が確保できないという問題がある。
【0009】
上記密着性の不足によって引き起こされる断面試料の作製への影響として、熱ダメージ、リデポジション、および、試料の突出量の変化が挙げられる。遮蔽板を冷却することで試料も冷却させる機構を備えたイオンミリング装置では、遮蔽板と試料との密着性の不足が発生すると、冷却効率が低下する。試料が十分に冷却されないので、イオンビーム照射による熱が試料に蓄積し、試料は熱ダメージを受ける。そのようなダメージとして、例えば試料の溶融が挙げられる。
【0010】
リデポジションとは、遮蔽板と試料との密着性が確保できない場合、アルゴンイオンが試料に照射されることで弾き飛ばされた微粒子が、遮蔽板と試料との隙間に付着することで発生する問題である。
【0011】
突出量の変化とは、遮蔽板側からの冷却と、イオンビーム照射による温度上昇とによって、遮蔽板および試料の各々の温度が定常となるまで、試料の形状が変化する問題である。そのため、特に温度膨張率の高い試料の場合には、試料の加工面に段差が生じる。なお、本願で表記される「突出量」とは、イオンビームが照射される試料の暴露範囲を意味する。
【0012】
以上のような問題点を解決するためには、遮蔽板に試料を直接貼り付け、遮蔽板と試料との密着性を十分に確保することが重要である。従って、上記密着性が確保されるような、性能の良い試料ホルダが望まれる。更に、例えば、冷却時において試料の形状変化が発生した場合でも、上記密着性が確保されるような、性能の良い試料ホルダが望まれる。
【0013】
本願の課題の一つは、試料ホルダの性能を向上させることである。また、本願の他の課題は、試料ホルダに搭載される試料の突出量の調整を簡潔に行うことである。また、本願の他の課題は、上記試料ホルダを備えることで、荷電粒子線装置に求められる精度を向上させることである。例えば、荷電粒子線装置がイオンミリング装置である場合、精度良く試料の加工を行うことを目的とする。また、荷電粒子線装置が走査型電子顕微鏡である場合、より正確な観察像を取得することを目的とする。
【0014】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0016】
一実施の形態における試料ホルダは、第1表面および前記第1表面と反対側の第1裏面を有する遮蔽板と、前記遮蔽板の前記第1裏面に連結された試料台と、前記試料台に取り付けられた状態で、前記遮蔽板の前記第1裏面と垂直な第1方向へ移動可能であり、且つ、棒形状を成す押圧部材とを有する。また、試料ホルダは、前記遮蔽板の前記第1裏面に対向する位置に設けられ、且つ、前記押圧部材に接続された試料支持部材と、前記押圧部材の外周に沿って設けられ、且つ、前記試料支持部材および前記試料台に接続された弾性体とを有する。
【発明の効果】
【0017】
一実施の形態によれば、試料ホルダの性能を向上させることができる。また、試料ホルダに搭載される試料の突出量の調整を簡潔に行うことができる。また、上記試料ホルダを備えることで、荷電粒子線装置に求められる精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1における試料ホルダを示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1における試料ホルダを示す平面図である。
【
図3】実施の形態1における試料ホルダを示す側面図である。
【
図4】実施の形態1における遮蔽板を示す斜視図である。
【
図5】実施の形態1における突出量調整治具を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1における突出量調整治具を示す平面図および側面図である。
【
図7】試料ホルダが突出量調整治具に搭載された様子を示す側面図である。
【
図8】試料の突出量の調整方法を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態1におけるイオンミリング装置を示す模式図である。
【
図10】実施の形態1におけるアタッチメントを示す斜視図である。
【
図11】実施の形態1におけるアタッチメントを示す平面図および側面図である。
【
図12】試料ホルダがアタッチメントに搭載された様子を示す側面図である。
【
図13】実施の形態1における走査型電子顕微鏡を示す模式図である。
【
図14】検討例における試料ホルダの要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0020】
(実施の形態1)
<試料ホルダ1の構造>
以下に
図1~
図4を用いて、実施の形態1における試料ホルダ1について説明する。試料ホルダ1は、例えばイオンミリング装置または走査型電子顕微鏡のような荷電粒子線装置に好適に用いられる。
図1~
図3は、それぞれ試料ホルダ1を示す斜視図、側面図および平面図である。
図4は、遮蔽板2のネジ穴12を説明するための斜視図である。
【0021】
図1~
図3に示されるように、試料ホルダ1は、遮蔽板(マスク部材)2と、固定ネジ3と、試料支持部材4と、押圧部材5と、バネ(弾性体)6と、押圧部材5などの支持部材である試料台7と、板8と、つまみ9と、固定ネジ10と、固定ネジ13と、を有する。これらは、それぞれ非磁性材料によって構成されている。
【0022】
遮蔽板2は、その4辺に50μm程度のテーパーがつけられた板である。遮蔽板2は、相対的に小さい表面積を有する表面2fと、表面2fの反対側の面であり、且つ、表面2fよりも大きい表面積を有する裏面2bとを有する。また、4つの側面は、それぞれ台形状を成す。遮蔽板2の中央部には、固定ネジ3を取り付けるためのネジ穴が形成され、固定ネジ3は、表面2f側において遮蔽板2にネジ止めされている。
【0023】
試料支持部材4は、遮蔽板2の裏面2bに対向する位置に設けられ、押圧部材5に接続されている。試料支持部材4は、表面4fと、表面4fの反対側の面である裏面4bとを有し、表面4fは、遮蔽板2の裏面2bに対向している。試料支持部材4の幅は、遮蔽板2の幅(裏面2bの辺の長さ)と同程度である。試料SAMは、試料支持部材4と遮蔽板2との間に固定される。すなわち、試料SAMは、試料支持部材4の表面4fおよび遮蔽板2の裏面2bに接するように、試料支持部材4と遮蔽板2との間に挟まれる。
【0024】
棒形状を成す押圧部材5は、試料台7に取り付けられた状態で、遮蔽板2の裏面2bと垂直な方向へ移動可能である。具体的には、押圧部材5は、試料台7の押圧部材接続部7bを貫通し、試料支持部材4および板8に接続されている。押圧部材5の一方の端部は、試料支持部材4に接続され、押圧部材5の他方の端部は、試料台7を貫通し、板8に接続されている。なお、
図1では棒形状の押圧部材5は円柱体であるが、押圧部材5は、円柱体に限られず、多角柱体であってもよい。
【0025】
また、
図3に示されるように、押圧部材5は2つ設けられ、試料支持部材4の中央部に対して線対称または点対称となる位置に設けられている。言い換えれば、2つの押圧部材5は、遮蔽板2の中央部(固定ネジ3の中央部)に対して線対称となる位置に設けられている。2つの押圧部材5が上述のように位置することで、試料支持部材4へ加わる圧力が平衡となり、試料支持部材4と試料SAMとの接触面において、試料SAMを保持するための圧力が均一化される。
【0026】
なお、試料台7は、押圧部材5が延在している方向に延在する遮蔽板接続部7aと、遮蔽板接続部7aと交差する方向へ延在する押圧部材接続部7bとを含む。言い換えれば、遮蔽板接続部7aは、遮蔽板2の裏面2bと垂直な方向に延在し、遮蔽板2に接続される。押圧部材接続部7bは、遮蔽板2の裏面2bと平行な方向に延在し、押圧部材5およびバネ6に接続される。
【0027】
バネ6は、外部からの応力によって伸縮が可能な弾性体の一種であり、押圧部材5の外周に沿って設けられ、試料支持部材4および試料台7に接続されている。言い換えれば、バネ6は、押圧部材5に巻き付くように螺旋状に設けられ、押圧部材5は、バネ6の内径を通過している。また、バネ6の一方の端部は、試料支持部材4に接続され、バネ6の他方の端部は、試料台7の押圧部材接続部7bに接続されている。ここでは、2つの押圧部材5の外周にそれぞれバネ6が設けられ、2つのバネ6は、2つの押圧部材5と同様に、試料支持部材4の中央部に対して線対称または点対称となる位置に設けられている。
【0028】
板8の一部は、板8の中央部に位置する筒状のつまみ9を成す。つまみ9を引く、または、つまみ9を押すことで、試料支持部材4の位置を変動させることができる。すなわち、遮蔽板2の裏面2bと垂直な方向へつまみ9を移動させることで、試料支持部材4、押圧部材5、バネ6および板8が、つまみ9の移動方向へ纏めて移動する。
【0029】
固定ネジ13は、つまみ9の中央部に設けられ、板8および試料台7(押圧部材接続部7b)を貫通し、試料支持部材4に接触できる長さを備える。試料支持部材4は、押圧部材5だけでなく、固定ネジ13によっても固定される。試料支持部材4を固定ネジ13によって固定できるので、衝撃などで試料支持部材4の位置がずれてしまう恐れを抑制できる。
【0030】
図4に示されるように、遮蔽板2の裏面2bを構成する4辺の各々の中央部に、固定ネジ10用のネジ穴12が形成されている。遮蔽板2および試料台7の連結には、遮蔽板2の裏面2bの中央部に対して点対称に設けられた2つのネジ穴12が使用される。また、
図1および
図2から判るように、試料台7の遮蔽板接続部7aには2つのネジ穴11が形成され、2つのネジ穴11の位置は、点対称に設けられた2つのネジ穴12に連通するように調整される。連通しているネジ穴11およびネジ穴12に、固定ネジ10が差し込まれることで、試料台7は遮蔽板2に連結され、試料台7および遮蔽板2が一体化される。
【0031】
また、遮蔽板2を90度回転させ、他の2つのネジ穴12を用いて、試料台7を遮蔽板2に固定させることもできる。このように、遮蔽板2を所定の位置まで回転させることで、試料SAMが突出される辺を適宜変更することができる。このため、遮蔽板2の4辺全てをイオンミリング加工に活用できる。イオンミリング加工によって、遮蔽板2のある辺の損傷が目立つようであれば、他の辺に変更すればよい。各辺は、それぞれ数回のイオンミリング加工に使用できるので、新しい遮蔽板2に交換するためのコストを抑制することができる。
【0032】
以上のように、実施の形態1によれば、試料SAMを保持可能な試料ホルダ1を提供でき、このような試料ホルダ1を様々な荷電粒子線装置に好適に利用できる。
【0033】
例えば、上述のように、イオンミリング加工に試料ホルダ1を用いる場合、イオンビーム照射による試料SAMの温度上昇を防ぐために、試料SAMに接触する遮蔽板2の冷却が必須となる。
図14に示されるような検討例の場合、マスク押さえが収縮すると、マスク押さえ固定部を支点として、遮蔽板2が試料SAMから離れる方向に反るので、密着性が確保できないという問題があった。これにより、試料SAMの冷却効率が低下し、熱ダメージ、リデポジションおよび突出量の変化が発生する恐れがあった。
【0034】
これに対して、実施の形態1では、遮蔽板2および試料台7が連結され、一体となっていることで、遮蔽板2が試料SAMから離れるという不具合が抑制され、試料SAMと遮蔽板2との密着性を確保することができる。従って、上記の各問題を解決できるような、性能の良い試料ホルダ1を提供することができる。
【0035】
また、試料SAMは、試料支持部材4を介した静的応力および動的応力によって、遮蔽板2に押し付けられている。実施の形態1では、静的応力は、押圧部材5および固定ネジ13による応力であり、動的応力は、バネ6による応力である。例えば、試料SAMに収縮または膨張による形状変化があったとしても、バネ6によって、上記形状変化による微動を追従することができ、試料SAMを遮蔽板2に押し付けた状態を維持することができる。従って、試料SAMと遮蔽板2との密着性を更に確保することができる。
【0036】
また、試料ホルダ1を構成する各部材は、それぞれ非磁性材料から成る。遮蔽板2は、例えばチタン(Ti)またはタングステンカーバイド(WC)から成る。固定ネジ3、試料支持部材4、押圧部材5、試料台7、つまみ9を含む板8、固定ネジ10および固定ネジ13は、例えばステンレス鋼から成り、例えばSUS316またはSUS316Lから成る。バネ6は、例えばリン青銅からなる。
【0037】
例えば、走査型電子顕微鏡に試料ホルダ1を用いる場合、試料ホルダ1の各部材に磁性材料が含まれていると、観察時に磁場が発生するので、正確な観察像の取得が阻害される。各部材が非磁性材料から成ることで、観察時に磁場による影響が抑制されるので、より正確な観察像を取得できる。
【0038】
<突出量調整治具の構造および突出量の調整方法>
図5は、突出量調整治具21を示す斜視図であり、
図6は、突出量調整治具21を示す平面図および側面図であり、
図7は、試料ホルダ1が突出量調整治具21に設置された様子を示す側面図である。突出量調整治具21は、試料ホルダ1を搭載可能であり、試料SAMの突出量の調整に用いられる。
【0039】
図5~
図7に示されるように、突出量調整治具21は、遮蔽板設置台22と、スライダー23と、マイクロメータ(移動機構)24とを有し、これらの部品は一体化されている。
【0040】
遮蔽板設置台22は、表面22fおよび表面22fと反対側の裏面22bを有する。遮蔽板設置台22には、表面22fから裏面22bに亘って貫通する切り欠き25、および、切り欠き25が形成されている表面22fから若干突出した2つの縁26が設けられている。切り欠き25は、固定ネジ3を用いて遮蔽板2を固定するために用いられ、2つの縁26の幅は、遮蔽板2の幅に合わされている。なお、遮蔽板設置台22は、固定ネジ3を固定できる厚さを有する。
【0041】
スライダー23は板であり、遮蔽板設置台22の表面22f上に設けられ、遮蔽板設置台22に取り付けられている。スライダー23の端面は、遮蔽板2および試料支持部材4の各々の端面と対向し、遮蔽板2の端面に密着可能である。また、試料SAMの搭載時には、スライダー23の端面は試料SAMの端面に密着する。スライダー23の厚さは、試料SAMの厚さよりも厚く、試料SAMおよび遮蔽板2に密着できる厚さである。
【0042】
遮蔽板設置台22には、スライダー23の移動機構として、マイクロメータ24が接続されている。マイクロメータ24を回転させることによって、スライダー23の位置を水平方向に移動させることができる。例えば、マイクロメータ24を時計回りに回すと、遮蔽板2に近づく方向にスライダー23が移動し、マイクロメータ24を反時計回りに回すと、遮蔽板2から離れる方向にスライダー23が移動する。
【0043】
図8は、試料SAMの突出量の調整方法を示すフローチャートであり、突出量の調整方法には、以下で説明する各ステップS1~S4が含まれる。
【0044】
<<ステップS1>>
まず、調整開始の準備として、突出量調整治具21に設けられたマイクロメータ24を回し、マイクロメータ24の目盛をゼロ(0)に合わせる。
【0045】
<<ステップS2>>
試料ホルダ1を遮蔽板設置台22に固定する。例えば、遮蔽板2の表面2fが遮蔽板設置台22の表面22fに接触し、且つ、スライダー23側に試料支持部材4が位置するように、縁26に沿って遮蔽板設置台22の表面22f上に試料ホルダ1を搭載する。遮蔽板設置台22の裏面22b側から切り欠き25に固定ネジ3を差し込むことで、遮蔽板2が遮蔽板設置台22に固定される。また、遮蔽板2の端面は、スライダー23の端面に密着している。
【0046】
<<ステップS3>>
試料SAMの突出量を設定する。マイクロメータ24を反時計回りに回すことで、遮蔽板2から離れる方向にスライダー23が移動するので、遮蔽板2からスライダー23までの距離を調整する。すなわち、マイクロメータ24を用いてスライダー23を移動させることで、遮蔽板2とスライダー23との間の距離を調整する。この距離が試料SAMの突出量となる。言い換えれば、遮蔽板2に覆われず、遮蔽板2から露出している試料SAMの露出量が、上記突出量となる。
【0047】
<<ステップS4>>
試料ホルダ1が搭載された遮蔽板設置台22に、試料SAMをセットする。まず、つまみ9を持ち上げ、試料支持部材4などを遮蔽板2から離れる方向へ移動させる。次に、試料支持部材4が遮蔽板2から離れた状態で、試料SAMを試料支持部材4と遮蔽板2との間に設置する。次に、試料SAMの端面をスライダー23の端面に接触させることで、試料SAMの一部が遮蔽板2から露出する(突出する)。次に、つまみ9を静かに下ろし、試料支持部材4が試料SAMに接触するように試料支持部材4を移動させ、試料支持部材4と遮蔽板2との間で試料SAMを保持する。その後、固定ネジ13を回し、固定ネジ13を試料支持部材4に接触させることで、試料支持部材4を固定する。
【0048】
例えば、
図14のような検討例では、試料SAMおよび遮蔽板2をそれぞれ試料ホルダ1に固定した状態で、マイクロメータによって相対位置を調整する必要がある。従って、試料SAMおよび遮蔽板2に関する平行位置の調整および密着度の調整と、突出量の調整とは、光学顕微鏡を用いた観察下で行われる。このため、試料SAMを搭載するための工程が複雑となる。
【0049】
これに対して実施の形態1では、突出量調整治具21の利用によって、光学顕微鏡を使用せずに各調整を行うことができる。また、図示はしないが、試料ホルダ1および突出量調整治具21をグローブボックス(密閉容器)の内部に設置し、グローブボックスの内部において、上記ステップS1~S4を行うこともできる。すなわち、グローブボックスの内部において、試料SAMの突出量を調整し、試料ホルダ1に試料SAMを搭載させることも可能となる。従って、実施の形態1における突出量調整治具21を用いれば、検討例と比較して、突出量の調整を簡潔に行うことができる。すなわち、試料SAMを搭載するための工程が容易となり、工程数も削減することができる。
【0050】
<イオンミリング装置への適用>
図9は、試料ホルダ1を備えるイオンミリング装置(荷電粒子線装置)31を示す模式図である。
【0051】
図9に示されるように、イオンミリング装置31は、チャンバ(試料室)32の内部にイオン銃IG、加工用ホルダ33および冷却板34を備え、チャンバ32の外部に冷却機構36および制御部37を備える。
【0052】
加工用ホルダ33は、試料ホルダ1を保持可能であり、固定ネジ3などによって遮蔽板2が加工用ホルダ33に固定される。試料ホルダ1には、
図8で説明したように、突出量調整治具21を用いて突出量が調整された試料SAMが搭載されている。試料SAMの突出量は、例えば10μm~100μmの範囲内に調整されている。
【0053】
加工用ホルダ33には、遮蔽板2の表面2fに直接接する冷却板34が設けられている。冷却板34は、編組線35を介して、冷却機構36および制御部37に接続されている。編組線35は、例えば複数の銅線を含み、複数の銅線は、それぞれリン青銅から成る。冷却機構36は、例えばデュワーの内部に投入された液体窒素である。遮蔽板2が冷却板34および編組線35を介して冷却機構36に接続されていることで、遮蔽板2に密着している試料SAMが冷却される。
【0054】
なお、ここでは図示はしないが、冷却板34と制御部37との間には、冷却板34を加熱可能なヒータが設けられている。制御部37において、冷却機構36によって冷却される冷却板34の温度をモニタし、上記ヒータの温度を適宜調整することで、冷却板34の温度は、所望の温度へ設定される。従って、試料SAMを所定の温度へ設定できる。
【0055】
実施の形態1におけるイオンミリング装置31では、試料ホルダ1を用いて断面ミリングを行うことができる。断面ミリングでは、金属、金属化合物、無機絶縁膜または高分子材料を含む有機絶縁膜などのような各種材料から成る試料SAMの断面作製が行われる。イオンミリング加工時には、真空排気したチャンバ32の内部において、加工用ホルダ33を例えば±15~40度の範囲内でスイングさせた状態で、イオン銃IGから例えばアルゴンイオンのようなイオンビームIBを出射し、イオンビームIBを遮蔽板2側から試料SAMへ照射する。遮蔽板2から突出(露出)している試料SAMの一部が加工され、無応力で遮蔽板2の端面に沿った形状のミリング面が得られる。
【0056】
実施の形態1では、イオンミリング加工中に発生する熱ダメージ、リデポジションおよび突出量の変化などの問題が、試料ホルダ1を用いることで抑制されている。従って、試料SAMにおいて、形状変化が発生する、または、加工面に段差が発生するなどの不具合が抑制される。すなわち、試料ホルダ1が搭載されたイオンミリング装置31において、精度良く試料SAMの加工を行うことができる。
【0057】
<走査型電子顕微鏡への適用>
図10は、アタッチメント41を示す斜視図であり、
図11は、アタッチメント41を示す平面図および側面図であり、
図12は、試料ホルダ1がアタッチメント41に設置された様子を示す側面図である。アタッチメント41は、試料ホルダ1を保持するための治具であり、走査型電子顕微鏡に用いられる。
【0058】
図11および
図12に示されるように、アタッチメント41は、非磁性材料からなる遮蔽板設置台42によって構成され、遮蔽板設置台42は、表面42fおよび表面42fと反対側の裏面42bを有する。また、遮蔽板設置台42には、表面42fから突起した遮蔽板固定部(突起部)43と、表面42fから窪んだ溝45と、表面42fから裏面42bへ貫通するステージ固定穴46とが設けられている。
【0059】
遮蔽板固定部43の一部には切り欠き44が設けられている。また、ステージ固定穴46は、アタッチメント41の回転中心の付近に設けられている。また、溝45は、遮蔽板固定部43とステージ固定穴46との間に位置している。なお、アタッチメント41の高さ(遮蔽板固定部43の高さ)は、走査型電子顕微鏡の試料交換室に挿入できる高さであり、溝45の幅は、遮蔽板2の幅と同じか、遮蔽板2の幅よりも若干広い。
【0060】
図12に示されるように、試料ホルダ1をアタッチメント41に設置する際には、遮蔽板2の表面2fを遮蔽板固定部43に接触させ、遮蔽板2の一部を溝45に挿入する。そして、切り欠き44に固定ネジ3を差し込むことで、遮蔽板2が遮蔽板固定部43に固定され、試料ホルダ1が遮蔽板設置台42に固定される。
【0061】
試料ホルダ1が遮蔽板設置台42に設置された場合、試料SAMはステージ固定穴46の中心付近に位置する。走査型電子顕微鏡の内部にアタッチメント41を設置する際には、ステージ固定穴46に走査型電子顕微鏡の調整ネジを差し込むことで、アタッチメント41が固定される。その後、走査型電子顕微鏡の内部において、試料SAMの観察を行うことができる。
【0062】
図13は、試料ホルダ1およびアタッチメント41を備える走査型電子顕微鏡(荷電粒子線装置)51を示す模式図である。
【0063】
図13に示されるように、走査型電子顕微鏡51は、電子銃52、コンデンサレンズ(電子レンズ)53、偏向コイル(走査コイル)54、対物レンズ(電子レンズ)55、ステージ56、調整ネジ57および検出器58を備える。これらは1つの鏡体59に内包され、この鏡体59には各構成を制御する制御回路なども含まれるが、ここではそれらの図示を省略している。なお、コンデンサレンズ53および対物レンズ55は、コイルを有する電磁石であり、各々から発生する電磁場が、電子線EBに集束作用を与えるレンズとして機能する。また、調整ネジ57は、ステージ56から電子銃52側へ突出するように、ステージ56に取り付けられている。
【0064】
観察対象となる試料SAMを観察する場合には、まず、遮蔽板設置台42の裏面42b側から調整ネジ57をステージ固定穴46に差し込むことで、試料ホルダ1が搭載されたアタッチメント41をステージ56上に設置する。次に、鏡体59の内部を真空状態とし、電子銃52から荷電粒子である電子線EBを放出する。放出された電子線EBは、コンデンサレンズ53によって特定の倍率に縮小され、偏向コイル54によって試料SAMのうち所望の位置へ走査され、対物レンズ55によって試料SAMに電子スポットとして集束される。
【0065】
走査型電子顕微鏡51には、例えば二次電子検出器のような検出器58が設けられており、電子線EBが試料SAMに衝突した際に、試料SAMから発生した二次電子(粒子)は、検出器58によって検出される。この検出された二次電子(粒子)の量を明るさとして、検出器58に電気的に接続された画像処理機器などに表示することで、観察像(SEM像、二次電子像)が得られる。得られた観察像は、走査型電子顕微鏡51に備えられているハードディスクまたはフラッシュメモリなどのような記録機器に記録される。
【0066】
なお、走査型電子顕微鏡51には、このような検出器58の他に、反射電子を検出するための反射電子検出器、または、試料SAMから発生するX線のスペクトルを検出し、試料SAMの元素解析を行うためのX線検出器などが設けられていてもよい。
【0067】
上述のイオンミリング装置31を用いて試料SAMを加工した場合、試料SAMは精度良く加工されているので、走査型電子顕微鏡51において、より正確な観察像を取得することができる。
【0068】
その場合の試料ホルダ1の使用方法を大まかに纏めると、以下のようになる。まず、上述の突出量調整治具21を用いて、遮蔽板2と試料支持部材4との間で試料SAMを保持するステップが行われる。次に、上述のイオンミリング装置31を用いて試料SAMを加工するステップが行われる。次に、試料SAMを試料ホルダ1から離脱させることなく、試料ホルダ1をイオンミリング装置31から走査型電子顕微鏡51へ移送するステップが行われる。次に、走査型電子顕微鏡51を用いて、加工された試料SAMを観察するステップが行われる。
【0069】
従来では、試料SAMを試料ホルダ1から取り外し、走査型電子顕微鏡51用の試料ホルダに試料SAMを再び貼り付け直す必要があった。実施の形態1では、試料SAMを試料ホルダ1から取り外す必要が無く、そのような手間を省けるので、より迅速かつ簡単に、走査型電子顕微鏡51による観察を行うことができる。
【0070】
また、試料ホルダ1およびアタッチメント41は、イオンミリング装置31を用いて加工された試料SAM以外にも適用可能である。例えば、他の手法によって加工された試料を試料ホルダ1に搭載し、その試料ホルダ1をアタッチメント41に設置し、そのアタッチメント41を走査型電子顕微鏡51の内部に設置し、上記試料の観察を行ってもよい。
【0071】
すなわち、試料ホルダ1を、走査型電子顕微鏡51における観察用の試料を単に保持するための部材として使用することもできる。また、観察対象によっては、冷却された試料を観察する場合、または、試料を冷却しながら観察する場合もある。何れの場合においても、試料ホルダ1では、試料SAMと遮蔽板2との密着性が高く、押圧部材5およびバネ6による静的応力および動的応力によって試料SAMが保持される。このため、実施の形態1における試料ホルダ1が保持部材としても優れていることは、明らかである。従って、試料ホルダ1は、走査型電子顕微鏡51において、より正確な観察像を取得することに貢献できる。
【0072】
以上、本発明を実施するための形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 試料ホルダ
2 遮蔽板(マスク部材)
2b 裏面
2f 表面
3 固定ネジ
4 試料支持部材
4b 裏面
4f 表面
5 押圧部材
6 バネ(弾性体)
7 試料台
7a 遮蔽板接続部
7b 押圧部材接続部
8 板
9 つまみ
10 固定ネジ
11 ネジ穴
12 ネジ穴
13 固定ネジ
21 突出量調整治具
22 遮蔽板設置台
22b 裏面
22f 表面
23 スライダー
24 マイクロメータ(移動機構)
25 切り欠き
26 縁
31 イオンミリング装置
32 チャンバ(試料室)
33 加工用ホルダ
34 冷却板
35 編組線
36 冷却機構(液体窒素)
37 制御部
41 アタッチメント
42 遮蔽板設置台
42b 裏面
42f 表面
43 遮蔽板固定部
44 切り欠き
45 溝
46 ステージ固定穴
51 走査型電子顕微鏡
52 電子銃
53 コンデンサレンズ
54 偏向コイル
55 対物レンズ
56 ステージ
57 調整ネジ
58 検出器
59 鏡体
102 遮蔽板
103 マスク押さえ
EB 電子線
IB イオンビーム
IG イオン銃
S1~S4 ステップ
SAM 試料