(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】乳酸菌を含有する亜鉛プロトポルフィリンIX形成剤、並びにこれを用いた加工食品の色調改善方法及び製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20221209BHJP
A23L 13/60 20160101ALI20221209BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20221209BHJP
A23L 5/46 20160101ALI20221209BHJP
C12P 17/10 20060101ALI20221209BHJP
【FI】
A23L13/00 D
A23L13/60 A
C12N1/20 A
A23L5/46
C12P17/10
(21)【出願番号】P 2020131367
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2021-04-13
【微生物の受託番号】NITE NITE BP-03229
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002480
【氏名又は名称】弁理士法人IPアシスト
(72)【発明者】
【氏名】若松 純一
(72)【発明者】
【氏名】ムド カウサー ウル アラム
(72)【発明者】
【氏名】早川 徹
(72)【発明者】
【氏名】玖村 朗人
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-537427(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111597(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03318625(EP,A2)
【文献】System.Appl.Microbiol.,6,183-195(1985)
【文献】Meat Science,vol.165,p.108109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00
A23L 13/60
C12N 1/20
A23L 5/46
C12P 17/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス属乳酸菌を含む、食肉を含有する材料において好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させるための剤
であって、前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属する細菌又はラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)に属する細菌である、前記剤。
【請求項2】
乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)に属する細菌である、
請求項1に記載の剤。
【請求項3】
ラクトコッカス属乳酸菌を、食肉を含有する材料に添加することを含む、食肉を含有する材料において好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させる方法
であって、前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌又はラクトコッカス・ラフィノラクティスに属する細菌である、前記方法。
【請求項4】
乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ラクトコッカス属乳酸菌を含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善するための剤
であって、前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌又はラクトコッカス・ラフィノラクティスに属する細菌である、前記剤。
【請求項6】
乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、
請求項5に記載の剤。
【請求項7】
ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加することを含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善する方法
であって、前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌又はラクトコッカス・ラフィノラクティスに属する細菌である、前記方法。
【請求項8】
乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加すること、及び乳酸菌添加後の食肉製品原料から好気的条件下で食肉製品を製造することを含む、その全体において色調が改善された食肉製品を製造する方法
であって、前記乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌又はラクトコッカス・ラフィノラクティスに属する細菌である、前記方法。
【請求項10】
乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
受託番号NITE BP-03229として寄託されているラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を利用した、好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させるための剤及び方法、食肉製品の色調を改善するための剤及び方法、並びに食肉製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食肉の色調は、食肉内の主要色素タンパク質であるミオグロビンの状態に影響を受ける。ミオグロビンは、その分子内にプロトポルフィリンIXの鉄錯体であるヘムを1つ有し、このヘム鉄の第6配位子に配位結合する分子の種類と、鉄の電荷状態により大きく色調が変化する。
【0003】
新鮮な食肉で見られる鮮赤色の食肉の色調は、第6配位子に酸素分子が結合してヘム鉄の電荷が2価となっているオキシミオグロビンと呼ばれる誘導体に起因している。一方、古く劣化した食肉では色調が褐色化して見た目が悪くなるが、これはミオグロビン内のヘム鉄が酸化されて3価となり、第6配位子の酸素が外れて水分子に置き換わったメトミオグロビンと呼ばれる誘導体に変化することにより、光の吸収スペクトルが変化するためである。また、食肉を加熱すると灰褐色に変化するが、これは食肉内のミオグロビンのタンパク質部分(グロビン)が加熱変性されて変性グロビンヘミクロムとなるためである。変性グロビンへミクロム内のヘム鉄は全て酸化状態の3価となる。
【0004】
一方、食肉製品の多くは硝酸塩や亜硝酸塩などの発色剤が用いられ、これらの発色剤が塩漬中に分解されて生成される一酸化窒素が、ミオグロビン内のヘム鉄に配位して、安定な鮮赤色のニトロシルミオグロビンと呼ばれる誘導体が形成される。塩漬した食肉を加熱すると、食肉製品特有の桃赤色となるが、これは加熱によりミオグロビンのタンパク質部分であるグロビンが加熱変性され、変性グロビンニトロシルヘモクロムと呼ばれるミオグロビン誘導体へと変化するためである。ヘム鉄と一酸化窒素の結合は強固であるだけでなく、鉄を安定化させるため、変性グロビンニトロシルヘモクロムのヘムは加熱後も一酸化窒素が結合し、ヘム鉄の電荷は2価のままである。ヘム鉄が3価になると不安定であり、配位している鉄イオン(III)が遊離しやすくなる。酸化状態の鉄イオン(III)には他のものに対する酸化触媒作用があるため、発色剤を使用しない場合にはウォームドオーバーフレーバーなどの不快臭の発生が起こる。さらに、発色剤はボツリヌス菌の増殖を阻害するために、致死率の高いボツリヌス中毒を防ぐ重要な働きもあり、重要な添加物として古くから使用されてきた。
【0005】
しかし、発色剤由来の亜硝酸は酸性条件下でアミンやアミド類と反応すると、発がん性のN-ニトロソ化合物を産生する。また、国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)の発がん性リスクにおいても、ヒトに対する発がん性が認められる根拠の十全さが高いとされるグループ1に食肉加工品は分類されている。しかしながら、添加量は極微量であり、わが国を含む多くの国では科学的に一日摂取許容量(ADI)が算出されて使用基準が決められているが、危険性を危惧する消費者が存在し、色調だけでなく保存性や風味が劣る無塩漬食肉製品を求める声がある。
【0006】
ところで、イタリアの伝統的な生ハムであるプロシュット・ディ・パルマ(パルマハム)は発色剤の使用が禁止されているが、その色調は鮮やかな赤色を呈している。これは、肉色素であるミオグロビンがプロトポルフィリンIXに鉄が配位したヘムによるものであるのに対して、プロトポルフィリンIXに亜鉛が配位した亜鉛プロトポルフィリンIX(ZnPP)が多量に蓄積していることが明らかにされた(非特許文献1)。ZnPPは配位している金属の違いにより、ヘムよりも熱や光などに対して安定である。このため、形成メカニズムの解明や応用技術が研究され、ZnPPを利用した色調改善技術として特許出願されている(特許文献1、特許文献2)。ZnPPは食肉の内在成分により形成すると考えられているが、現在まで形成機構は完全には解明されていない。一方、食肉の外因性要因として、特定の種類の微生物によるZnPP形成促進も報告されてきた(非特許文献2、非特許文献3)。
【0007】
ZnPPは製造中に徐々に形成されて最終製品に蓄積するため、特に長期熟成型の食肉製品の色調改善に適していると考えられる。このような長期熟成型の食肉製品の一例である、ヨーロッパなどで製造される長期熟成型の生ハムや、サラミなどのドライソーセージ類は、高級食材として確固たる地位を築き現在でも広く生産され続けている。
【0008】
ZnPPの形成は、食肉を用いた試験管レベルでは酸素が阻害することが明らかにされている(非特許文献4)。これは、微生物の影響を排除した食肉内在因子のみによる系においても、微生物などの外的要因を考慮した実験系でも報告されてきた。発色剤を使用しないパルマハムなどのもも肉で作られた大型の皮付きの骨付きハムでは、大部分は皮と皮下脂肪で覆われており、内部の赤肉部分は酸素と触れないため、ZnPPが形成されて鮮やかな色調を呈する。一方、股関節付近の切除部については、表層から乾燥が著しく酸化の影響もあるため、一般には表面を切除して内部をスライスして食される。
【0009】
一方、サラミなどのドライソーセージ類は製品にもよるが、生ハムより小型のものが大部分である。発色剤を使用した製品では、全体が鮮やかな赤色をしているが、発色剤を使用しない場合、製品内部はZnPPが形成されて鮮赤色であるが、酸素の触れる部分ではZnPPが形成されず褐色となる。具体的には、表面や表面から数ミリメートルの表層部は著しく変色しており、生ハムとは違って表面を切り落とさないため、外観の好ましくない色調は見た目が悪いため消費者の消費行動を抑制し、断面においても周囲の変色は品質劣化と見なして、食行動が抑えられる可能性がある。
【0010】
酸素がZnPP形成を阻害するため、真空包装などにより酸素を遮断することも考えられる。しかし、長期熟成型食肉製品では、製造中の乾燥が重要な保蔵手段であるため、酸素の遮断は乾燥の抑制となり、本来の加工・保蔵の目的が達成できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第3949588号公報
【文献】特開2006-254818号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】J. Wakamatsuら, Meat Science, 2004, 67, 95-100
【文献】J. Wakamatsuら, Meat Science, 2020,161, 107966
【文献】M. Asaduzzamanら, Meat Science. 2020, 165, 108109
【文献】J. Wakamatsuら, Meat Science, 2004, 68, 313-317
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、好気的条件下で製造されるために酸素の影響を排除することができなかった食肉製品において、ZnPPを形成させることができる新たな手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する乳酸菌が、ZnPP形成阻害因子である酸素が存在する好気的条件下であってもZnPPを形成させる能力を有することを見出し、以下の発明を完成させた。
【0015】
(1) ラクトコッカス属乳酸菌を含む、食肉を含有する材料において好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させるための剤。
(2) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属する細菌である、(1)に記載の剤。
(3) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)に属する細菌である、(1)又は(2)に記載の剤。
(4) ラクトコッカス属乳酸菌を、食肉を含有する材料に添加することを含む、食肉を含有する材料において好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させる方法。
(5) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌である、(4)に記載の方法。
(6) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、(4)又は(5)に記載の方法。
(7) ラクトコッカス属乳酸菌を含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善するための剤。
(8) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌である、(7)に記載の剤。
(9) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、(7)又は(8)に記載の剤。
(10) ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加することを含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善する方法。
(11) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌である、(10)に記載の方法。
(12) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、(10)又は(11)に記載の方法。
(13) ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加すること、及び乳酸菌添加後の食肉製品原料から好気的条件下で食肉製品を製造することを含む、その全体において色調が改善された食肉製品を製造する方法。
(14) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティスに属する細菌である、(13)に記載の方法。
(15) 乳酸菌がラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である、(13)又は(14)に記載の方法。
(16) 受託番号NITE BP-03229として寄託されているラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、好気的条件下で製造される食肉製品において、特に、その中心部だけでなく、酸素の影響を受けやすいために従来はZnPPを形成させるのが困難であった表面や表層部においても、ZnPPを形成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】各種細菌を添加し、嫌気的条件下でインキュベートした加塩ひき肉の明視野観察画像(上段)及び励起波長420 nm、蛍光波長590 nmでの蛍光画像(下段)である。
【
図2】各種細菌を添加し、嫌気的条件下でインキュベートした加塩ひき肉の色調を数値化したグラフである。
【
図3】各種細菌を添加して製造したドライソーセージ断面の明視野観察画像(左列)及び励起波長420 nm、蛍光波長590 nmでの蛍光画像(右列)である。
【
図4】各種細菌を添加して製造したドライソーセージ断面の色調を数値化したグラフである。
【
図5】各種細菌を添加して製造したドライソーセージ表面の明視野観察画像である。
【
図6】各種細菌を添加して製造したドライソーセージ表面の色調を数値化したグラフである。
【
図7】各種細菌を添加し、好気的条件下又は嫌気条件下でインキュベートした豚肉ホモジネートの、励起波長420 nm、蛍光波長590 nmでの蛍光強度を示すグラフである。
【
図8】ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株を添加し、好気的条件下又は嫌気条件下でインキュベートした加熱又は非加熱の豚肉ホモジネートの、励起波長420 nm、蛍光波長590 nmでの蛍光強度を示すグラフである。
【
図9】ラクトコッカス属乳酸菌を添加し、好気的条件下でインキュベートした豚肉ホモジネートの、励起波長420 nm、蛍光波長590 nmでの蛍光強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ZnPP形成剤及びZnPP形成方法
本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を含む、食肉を含有する材料において好気的条件下でZnPPを形成させるための剤を提供する。また、本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を食肉を含有する材料に添加することを含む、食肉を含有する材料において好気的条件下で亜鉛プロトポルフィリンIXを形成させる方法を提供する。
【0019】
ZnPPは、Dihydrogen [3,8,13,17-tetramethyl-7,12-divinyl-21H,23H-porphine-2,18-dipropionato(4-)-N21,N22,N23,N24]zincate(4-)とも表される(CAS番号15442-64-5)、ポルフィン環に4つのメチル基、2つのビニル基、2つのプロピオン酸基が結合した構造を有するポルフィリン(プロトポルフィリンIX)に亜鉛(Zn)が配位した錯体化合物である。
【0020】
本発明において用いられる乳酸菌は、ラクトコッカス属に属する細菌であり、例えば、ラクトコッカス・アロミリナエ(Lactococcus allomyrinae)、ラクトコッカス・チューガンゲンシス(Lactococcus chungangensis)、ラクトコッカス・フォルモセンシス(Lactococcus formosensis)、ラクトコッカス・フジエンシス(Lactococcus fujiensis)、ラクトコッカス・ガルビエアエ(Lactococcus garvieae)、ラクトコッカス・ヒルシラクティス(Lactococcus hircilactis)、ラクトコッカス・キムチ(Lactococcus kimchi)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ローデンシス(Lactococcus laudensis)、ラクトコッカス・ナスチテルミティス(Lactococcus nasutitermitis)、ラクトコッカス・ペトウリ(Lactococcus petauri)、ラクトコッカス・ピスシウム(Lactococcus piscium)、ラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクティス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・レチクリテルミティス(Lactococcus reticulitermitis)、ラクトコッカス・タイワネンシス(Lactococcus taiwanensis)又はラクトコッカス・テルミチコラ(Lactococcus termiticola)に属する細菌であり得る。
【0021】
好ましい実施形態において、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス又はラクトコッカス・ラフィノラクティスに属する細菌である。ラクトコッカス・ラクティスに属する細菌は、例えば、ラクトコッカス・ラクティス亜種トゥルクタエ(Lactococcus lactis subsp. tructae)、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)又はラクトコッカス・ラクティス亜種ホルドニアエ(Lactococcus lactis subsp. hordniae)に属する細菌であり得る。
【0022】
さらに好ましい実施形態において、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス亜種トゥルクタエ、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティス又はラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である。特に好ましくは、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスに属する細菌である。
【0023】
本発明においては、様々な微生物株保存機関にて保管されている又は市販されているラクトコッカス属乳酸菌を使用することができる。そのような乳酸菌の例としては、例えば独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物資源センター(NBRC)に寄託されているラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスNBRC12007株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスNBRC100933株、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスNBRC100676株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ホルドニアエNBRC100931株、ラクトコッカス・ラクティス亜種トゥルクタエNBRC110453株;国立大学法人北海道大学大学院農学研究院 応用菌学研究室の菌株保存室(AHU)で保存されているラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスAHU1983株、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスAHU1987株等を挙げることができる。
【0024】
また、本発明者らが新たに分離した乳酸菌であるラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株、ラクトコッカス・ラフィノラクティスOM(A)-1株及びラクトコッカス・ラクティスCH-1株も、本発明において用いることができる。GB(A)-1株は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室 独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに2020年6月10日付で受託番号NITE BP-03229(識別の表示:GB(A)-1)として国際寄託されている。
【0025】
下記表1にGB(A)-1株の菌学的諸性質を示す。
【表1】
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスNBRC12007株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスNBRC100933株、ラクトコッカス・ラクティス亜種トゥルクタエNBRC110453株又はラクトコッカス・ラクティスCH-1株である。特に好ましくは、乳酸菌は、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株である。
【0027】
ラクトコッカス属乳酸菌は、通例的に用いられる培養条件の下で、例えば、MRS培地を用いて温度25~37℃で8~48時間、好気的又は嫌気的条件下で培養することで、調製することができる。
【0028】
ラクトコッカス属乳酸菌は、食肉を含有する材料において、好気的条件下でZnPPを産生することができる。ここで好気的条件下とは、食肉含有材料が、空気中に、あるいは空気中と同程度の濃度の酸素を含有する気体中に置かれることを意味する。ラクトコッカス属乳酸菌は、食肉含有材料と共存させ、好気的条件下、例えば温度4~37℃で数日~数週間程度置くことで、ZnPPを産生することができる。
【0029】
なお、ラクトコッカス属乳酸菌は、食肉を含有する材料において、嫌気的条件下においてもZnPPを産生することができる。ここで嫌気的条件下とは、一般に嫌気性細菌の培養に用いられるような、酸素がほとんど存在しない、例えば酸素濃度0.1 vol%未満の気体中に置かれることを意味する。
【0030】
食肉含有材料は、食肉を含有するものであるかぎり制限はなく、実験のための試験用試料、例えばJ. Wakamatsuら, Meat Science, 2020, 165, 107989に記載の豚肉ホモジネート又は豚ひき肉であってもよく、食肉製品の原料であってもよい。食肉としては、例えば牛肉、豚肉、羊肉、山羊肉、馬肉、鹿肉、鶏肉、兎肉、鯨肉その他の、鮮赤色、桃赤色又は赤みがかった色調を呈する哺乳動物の肉を挙げることができるが、これらには限定されない。食肉を含有する材料として食肉製品原料を用いる場合、食肉製品原料は、食肉に加えて、食肉製品の製造に必要な成分、例えば食塩及び任意選択で香辛料等を含有することができる。
【0031】
なお、後述の実施例にあるように、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株によるZnPP産生量は、共存させる食肉含有材料の加熱により低下することが確認されている。したがって、ラクトコッカス属乳酸菌としてGB(A)-1株を用いる場合、食肉含有材料は、非加熱のものを用いることが好ましく、加熱が求められる場合にもZnPP産生量を過度に低下させない程度の軽度の加熱処理に留めることが好ましい。
【0032】
ZnPPは、ラクトコッカス属乳酸菌と共存させた後の食肉含有材料から75%アセトン等を用いて抽出し、HPLCその他の方法により検出又は測定することができる。またJ. Wakamatsuら, Meat Science, 2007, 77, 580-586に記載の方法に従って、420 nmの励起蛍光を照射したときの590 nmの蛍光強度を測定することで、ZnPPの検出及び測定を行うこともできる。
【0033】
食肉製品の色調改善剤、色調改善方法
本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善するための剤を提供する。また、本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加することを含む、好気的条件下で製造される食肉製品の全体において色調を改善する方法を提供する。さらに本発明は、ラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に添加すること、及び乳酸菌添加後の食肉製品原料から好気的条件下で食肉製品を製造することを含む、その全体において色調が改善された食肉製品を製造する方法を提供する。
【0034】
本発明において、色調改善とは、通例的な方法によって製造及び保存した場合には酸素の影響を受けて褐色化又は退色が生じてしまう食肉製品の色調を、好ましい色調に、具体的には鮮赤色、桃赤色又は赤みがかった色等の嗜好性の高い色調にすることに変化させること又は当該色調を維持することをいう。
【0035】
色調改善は、食肉製品の色調を評価する公知の方法によって、例えば、肉眼観察によって、又は色彩色差計を用いて明度L*、色度a*及びb*を測定し、彩度C*及び色相角hを算出する方法等によって評価することができる。
【0036】
前述のとおり、ラクトコッカス属乳酸菌は、食肉含有材料において好気的条件下でZnPPを産生することができる。したがって、食肉製品原料にラクトコッカス属乳酸菌を加え、好気的条件下で熟成等の製造工程に供することにより、酸素と接触するその表面、及び酸素が浸透し得る表面から5 mm程度の深さまでの部位(表層部という)にZnPPが形成された食肉製品を製造することができる。さらに、ラクトコッカス属乳酸菌は嫌気的条件下であってもZnPPを産生可能であることから、ラクトコッカス属乳酸菌を用いて製造された上記の食肉製品は、その中心部、表面及び表層部のいずれにおいてもZnPPが形成されたものであり得る。
【0037】
鮮赤色色素であるZnPPの形成及び蓄積は食肉製品の色調改善をもたらす。したがって、ラクトコッカス属乳酸菌を用いて、色調改善に十分な量のZnPPを食肉製品の全体に形成させることで、その全体において色調が改善された食肉製品を製造することができる。色調改善に十分な量のZnPPの形成は、添加するラクトコッカス属乳酸菌のZnPP形成能に応じて添加量を調節することによって、あるいはラクトコッカス属乳酸菌と食肉製品原料との接触時間を長くすることによって達成することができる。
【0038】
本発明における食肉製品としては、骨付きハム、ボンレスハム、ロースハム、ショルダーハム、ベリーハム、ラックスハム、生ハム等のハム類;プレスハム、混合プレスハム等のプレスハム類;ボロニアソーセージ、フランクフルトソーセージ、ウィンナーソーセージ、リオナソーセージ、レバーソーセージ、セミドライソーセージ、ドライソーセージ、加圧加熱ソーセージ、混合ソーセージ、加圧加熱混合ソーセージ等のソーセージ類;ベーコン、ロースベーコン、ショルダーベーコン、ミドルベーコン、サイドベーコン等のベーコン類が挙げられるが、これらには限定されない。
【0039】
食肉製品は、酸素による色調劣化がより顕著にあらわれるもの、すなわちその製造工程において好気的条件下での長期熟成又は乾燥を必要とするもの、あるいは好気的条件下での長期保存が求められるものが好ましい。
【0040】
製造の際に加熱処理が行われる食肉製品の場合、食肉由来のヘムが加熱により灰褐色の変性グロビンヘミクロムとなるため、色調改善効果を得るためにより多くのZnPP形成が求められることがある。このようなヘムの加熱変性の影響の回避が望まれる場合、食肉製品は、非加熱食肉製品又は乾燥食肉製品であることが好ましい。このような食肉製品の例としては、ラックスハム、生ハム、セミドライソーセージ、ドライソーセージ等を挙げることができる。本発明において、特に好ましい食肉製品は、セミドライソーセージ又はドライソーセージである。
【0041】
食肉製品は、その製造工程のいずれかの時点で、加熱食肉製品の場合は加熱前の製造工程のいずれかの時点でラクトコッカス属乳酸菌を食肉製品原料に加えること以外は、一般的な製造方法によって製造することができ、そのような製造方法の実施は、当業者の通常の実施能力の範囲内である。ラクトコッカス属乳酸菌の添加は、例えば、ソーセージ類の場合は、肉挽き、塩漬、調味、ケーシングへの充填のいずれかの工程において、ハム類の場合は整形、塩漬、ケーシングへの充填のいずれかの工程において、ベーコン類の場合は整形、塩漬のいずれかの工程において行うことができる。なお、食肉製品の製造にあたり、真空包装や脱酸素剤といった酸素遮断手段は、特に使用の必要はないが、使用を排除するものではない。また、亜硝酸塩等の従来の発色剤も特に使用の必要はなく、むしろ発色剤から産生される一酸化窒素はZnPPの形成を阻害することから(J. Wakamatsuら, Meat Science, 2010, 84(1), 125-128)、本発明においては、食肉製品の製造にあたって発色剤は使用しない、又は使用する場合はZnPPの形成を阻害しない程度の量に留めることが好ましい。
【0042】
このようにして製造された食肉製品は、発色剤や酸素除去手段を使用しないにもかかわらず、その中心部だけでなく表面や表層部において優れた色調を有する。そのため、見た目の悪化による製品の廃棄を回避することができ、動物性蛋白質資源の節約や食品廃棄物の節減にもつながると期待される。さらに、発色剤を使用しないことにより、ニトロソアミンの生成のおそれがなく、安全性が高い。
【0043】
以下の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
実施例1 GB(A)-1株によるZnPP形成及び色調改善(加塩豚ひき肉モデル、嫌気的条件下)
下記表2に記載の細菌をそれぞれの培地で37℃で一晩嫌気的に培養した後、遠心分離で菌体を回収して滅菌生理食塩水に懸濁した。
【表2】
AHU:国立大学法人北海道大学大学院農学研究院応用菌学 菌株保存室
【0045】
市販の国産交雑豚ロースから得た胸腰最長筋のひき肉を真空包装した後、UV照射下で一晩滅菌して滅菌豚ひき肉を得た。滅菌豚ひき肉9 gにNaClを3質量%となるように加えて混合した後、上記細菌懸濁液1 mL(最終濃度2×106CFU/g)を加えて混合した。混合物を真空包装袋(Hiryu N-1、Asahi Kasei Pax Corp.)に充填して真空包装し、18℃で14日間インキュベートした。細菌懸濁液に代えて滅菌水又は亜硝酸ナトリウム(最終濃度200 ppm)を加えた混合物(それぞれ対照区及び亜硝酸区)を上記と同様に作製し、インキュベートした。
【0046】
インキュベート後の各試料の表面をデジタルカメラを用いて撮影して(
図1上段)、色調を観察した。また、420 nm付近を透過するシート型バンドパスフィルター(Fujifilm BPB42, Fuji Corporation)を搭載した2台の紫色LED照射装置を用いて波長420 nmの光でZnPPを励起させ、ZnPPの赤色蛍光(590nm)を、600 nm付近を透過するシート型バンドパスフィルター(Fujifilm BPB 60, Fuji Corporation)を備えたデジタルカメラを用いて暗条件で撮影した(
図1下段)。細菌接種区はいずれも、亜硝酸区ほどではないが肉眼観察で鮮やかな赤色を示した。また対照区及び亜硝酸区ではZnPPの赤色蛍光はほとんど認められなかったが、細菌接種区ではいずれも強いZnPPの赤色蛍光が確認された。
【0047】
各試料の明度L*、赤色度a*及び黄色度b*を色彩色差計(CM-700d、Konica Minolta)を用いて測定し、a*及びb*から彩度C*及び色相角hを算出した(
図2)。細菌接種区の赤色度は、対照区よりも高く、亜硝酸区に近い値を示した。また、細菌接種区は、亜硝酸区と比較して、黄色度は低いが色相角は同等であった。このことは、細菌接種区の色合いは亜硝酸区と概ね等しいことを意味する。また、細菌接種区は、明度が亜硝酸区よりやや高く、彩度がやや低いことから、細菌接種区の色調は、明るさと鮮やかさがやや劣るものの、亜硝酸区と同様の色合いになることが確認された。
【0048】
実施例2 GB(A)-1株によるZnPP形成及び色調改善(ドライソーセージ)
滅菌豚ひき肉にNaCl及びグルコースをそれぞれ3質量%及び1質量%となるように加えて混合した後、実施例1で調製したEF、LnL、LbP、LbC及びLLCの細菌懸濁液を最終濃度が1×106CFU/kgとなるように加えて混合した。混合物をケーシング(折径6cm)に充填した。吊るしながら1℃で7日間保持した後、23℃で8時間発酵させた。その後直ちに7℃まで温度を下げ、2日で1℃上昇させて、14℃まで2週間乾燥し、その後14℃で1週間乾燥・熟成を行い、ドライソーセージを製造した。乾燥・熟成期間中の相対湿度は80-90%とした。また、細菌懸濁液に代えて滅菌水又は亜硝酸ナトリウム(最終濃度200 ppm)を加えて、上記と同様にしてドライソーセージ(それぞれ対照区及び亜硝酸区)を製造した。
【0049】
実施例1と同様にして、各ドライソーセージ断面の色調を観察し、ZnPPの赤色蛍光を測定した(
図3)。亜硝酸区のドライソーセージは、内部、表層部共に鮮やかな赤色を呈したが、ZnPP由来の赤色蛍光は観察されなかった。LnL区は、色調は鮮やかな赤色ではなく、ZnPP由来の赤色蛍光も強く観察されなかった。また、EF区及びLbP区は、ZnPP由来の赤色蛍光が断面内部では強く観察されたものの表層部では観察されず、また色調も良好ではなかった。
【0050】
対照的に、LbC区及びLLC区は、色調は鮮やかな赤色を示し、亜硝酸区と同様に明るいものであった。またZnPP由来の強い赤色蛍光も観察された。特に、LLC区では断面の内部だけでなく表層部を含む全体で強い赤色蛍光が観察され、表層部を含む断面全体が好ましい鮮やかな色調であった。一方、LbC区では、表層部では赤色蛍光が認められず、表層部と内部の色は大きく異なっていた。
【0051】
実施例1と同様にして、ドライソーセージ中心部の色調を色彩色差計により数値化した(
図4)。LLC区では、赤色度が亜硝酸区と同程度であるだけでなく、彩度は最も高かった。
【0052】
ドライソーセージ表面の色調を
図5に示す。LLC区の色調は亜硝酸区と同等に鮮やかな赤色を示した。LnL区及びEF区は、対照区、LbC区又はLbP区と比べると赤色を示したが、LLC区及び亜硝酸区よりも鮮やかではなかった。
【0053】
ドライソーセージ表面の色調を色彩色差計により数値化したグラフを
図6に示す。LLC区は亜硝酸区と同程度の赤色度を示し、色相角も彩度も同程度であった。
【0054】
以上のように、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株は好気的条件下でのドライソーセージの製造において、表面及び表層部を含めたドライソーセージ全体においてZnPPを形成させ、ドライソーセージ全体の色調改善効果を有することが確認された。
【0055】
実施例3 GB(A)-1株によるZnPP形成(豚肉ホモジネート、好気的条件下及び嫌気的条件下)
生理食塩水に滅菌豚ひき肉を30質量%となるように加え、ホモジナイザー(CELL MASTER CM-100, AZ ONE Co.)を用いて10,000 rpmで90秒間ホモジナイズした。滅菌試験管に、ホモジネート、NaCl及び実施例1で調製したLnL、LnM、LbP、LbC及びLLCの細菌懸濁液を加えて混合した(豚ひき肉の最終濃度20質量%、NaClの最終濃度3質量%、細菌の最終濃度2.0×106 CFU/mL)。試験管に蓋をしてガス不透過性の袋に入れ、25℃で5日間、好気的条件下又は嫌気的条件下でインキュベートした。嫌気的条件は、酸素吸収剤(A-500HS, I. S. O. Inc.)を用いて維持した。また、細菌懸濁液に代えて滅菌水を加えた混合物(対照区)、又は細菌懸濁液に代えて抗生物質(ペニシリンGカリウム 最終濃度70μg/mL、ストレプトマイシン硫酸塩 最終濃度250μg/mL、ゲンタマイシン硫酸塩 最終濃度50μg/mL)を加えた混合物(抗生物質区)を上記と同様に作製し、インキュベートした。抗生物質区は、操作中にZnPP形成能を有する微生物の混入がなかったことを確認するために設けた。
【0056】
インキュベート後の混合物に3倍量の冷アセトンを加えて混合し、4℃の暗所で30分間静置してZnPPを抽出した。ろ紙でろ過した後、蛍光分光光度計(RF-5300PC、島津製作所)を用いて波長420 nmの励起光で励起したときの波長590 nmの蛍光強度を測定し、ZnPP形成量とした。
【0057】
ZnPP形成量を
図7に示す。LnL区、LnM区、LbP区及びLbC区では、嫌気的条件下ではZnPPが形成されるが、好気的条件下ではZnPPの形成はほぼ完全に抑制された。一方、LLC区では、好気的条件下でも嫌気的条件下と同程度にZnPPが形成された。
【0058】
実施例4 GB(A)-1株によるZnPP形成(加熱又は非加熱の豚肉ホモジネート、好気的条件下及び嫌気的条件下)
非加熱の加塩豚肉ホモジネート、短時間加熱(100℃、20秒間)して酵素を失活させた加塩豚肉ホモジネート、及びオートクレーブにより加圧加熱(121℃、15分間)した加塩豚肉ホモジネートを用いて、実施例3と同様にして、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株のZnPP形成を評価した。
【0059】
ZnPP形成量を
図8に示す。LLC区のZnPP形成量はホモジネートの加熱処理により低下し、特に加圧加熱処理を行うとZnPP形成は観察されなくなった。
【0060】
実施例5 ラクトコッカス属乳酸菌によるZnPP形成(豚肉ホモジネート、好気的条件下)
実施例3と同様にして、加塩豚肉ホモジネートに下記表3に記載のラクトコッカス属乳酸菌を加え、好気的条件下でのZnPP形成を評価した。
【表3】
NBRC:独立行政法人製品評価技術基盤機構 生物資源センター
【0061】
いずれのラクトコッカス属乳酸菌を用いた場合も、好気的条件下でのZnPP形成が確認され、特に、ラクトコッカス・ラクティス亜種クレモリスGB(A)-1株、ラクトコッカス・ラクティス亜種ラクティスNBRC12007株及びNBRC100933株、ラクトコッカス・ラクティス亜種トゥルクタエNBRC110453株、並びにラクトコッカス・ラクティスCH-1株は、高いZnPP形成能を示した(
図9)。