IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人産業技術総合研究所の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-08
(45)【発行日】2022-12-16
(54)【発明の名称】シロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20221209BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20221209BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20221209BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20221209BHJP
【FI】
C07F7/08 X
B01J31/22 Z
C07F7/18 X
C07B61/00 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021182669
(22)【出願日】2021-11-09
(62)【分割の表示】P 2017232345の分割
【原出願日】2017-12-04
(65)【公開番号】P2022025139
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2021-11-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 和弘
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008176(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141796(WO,A1)
【文献】特表2007-527932(JP,A)
【文献】特表2006-500432(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154848(WO,A1)
【文献】ACS Catal.,2017年,7,1836-1840
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリジウム錯体の存在下、下記式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールと下記式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランを脱水素縮合させてSi-H基を有するシロキサンを生成する脱水素縮合工程を含み、
前記イリジウム錯体が、クロロビス(シクロオクテン)イリジウム(I)ダイマーである、シロキサンの製造方法。
【化1】

(式(A-1)~(A-3)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子総数0~30のシリルオキシ基を表す。)
【化2】

(式(B-1)~(B-2)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基を表す。)
【請求項2】
前記Si-H基を有するシロキサンが、下記式(C-1)~(C-8)の何れかで表される、請求項に記載のシロキサンの製造方法。
【化3】

(式(C-1)~(C-8)中、Rは式(A-1)~(A-3)中のRと同義であり、Rは式(B-1)~(B-2)中のRと同義である。)
【請求項3】
前記Si-H基を有するシロキサンが、前記式(C-1)、(C-3)、(C-4)、(C-5)、(C-7)、及び(C-8)の何れかで表される、請求項2に記載のシロキサンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシロキサンの製造方法に関し、より詳しくはイリジウム触媒を用いたシラノールとヒドロシランの脱水素縮合反応によるシロキサンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンポリマーやシルセスキオキサンなどの産業上有用なシロキサン材料の主骨格は、シロキサン結合(Si-O-Si結合)からなる。シロキサン結合の形成反応には、クロロシランやアルコキシシランの加水分解/脱水縮合反応やシラノールとクロロシランの縮合反応などの触媒を必要としない旧来型の縮合反応や、触媒存在下でアルコキシシランとクロロシランを縮合させる手法やアルコキシシランとヒドロシランを縮合させる手法などが知られている(特許文献1、非特許文献1~3参照)。中でも、シラノールとヒドロシランの脱水素縮合反応はシロキサン結合形成後に生じる副生成物が除去の容易な気体の水素であることから、実験操作上および原子効率の観点から魅力的な手法である(特許文献2~4、非特許文献4~5参照)。
【0003】
一方で、Si-H基を有する有機ケイ素化合物、すなわちヒドロシランは、アルケンやアルキンのヒドロシリル化反応などによって、そのヒドリドを様々な有機基へと容易に変換できることから、有機ケイ素化学工業の重要な原料の1つに数えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2004/0127668号明細書
【文献】特開2016-8176号公報
【文献】特開2015-196672号公報
【文献】米国特許出願公開第2013/0079539号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】R.Wakabayashi,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2010,49,5273.
【文献】M.Igarashi,et al.,RSC Adv.2014,4,19099.
【文献】J.Chojnowski,et al.,Organometallics 2005,24,6077.
【文献】Z.M.Michalska,Transition Met.Chem.1980,5,125.
【文献】D.Zhou,et al.,Macromolecules 2005,38,6902.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シロキサンを効率良く製造することができるシロキサンの製造方法、特にSi-H基を有するシロキサンを効率良く製造することができるシロキサンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、イリジウム錯体の存在下で特定のシラノールと特定のヒドロシランの脱水素縮合反応が進行して、シロキサンが効
率良く生成することを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下の通りである。
【0008】
<1> イリジウム錯体の存在下、下記式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールと下記式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランを脱水素縮合させてシロキサンを生成する脱水素縮合工程を含むことを特徴とするシロキサンの製造方法。
【化1】

(式(A-1)~(A-3)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子総数0~30のシリルオキシ基を表す。)
【化2】

(式(B-1)~(B-2)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基を表す。)
<2> 前記イリジウム錯体の使用量が、前記シラノールに対して0.005~1mol%である、<1>に記載のシロキサンの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シロキサン、特にSi-H基を有するシロキサンを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の詳細を説明するに当たり、具体例を挙げて説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる。
【0011】
<シロキサンの製造方法>
本発明の一態様であるシロキサンの製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略す場合がある。)は、イリジウム錯体の存在下、下記式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールと下記式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランを脱水素縮合させてシロキサンを生成する脱水素縮合工程(以下、「脱水素縮合工程」と略す場
合がある。)を含むことを特徴とする。
【化3】

(式(A-1)~(A-3)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子総数0~30のシリルオキシ基を表す。)
【化4】

(式(B-1)~(B-2)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基を表す。)
本発明者らは、イリジウム錯体の存在下で式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールと式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランの脱水素縮合反応が進行して、シロキサンが効率良く生成することを見出したのである。特に式(B-1)で表されるヒドロシランが式(A-1)~(A-3)で表されるシラノールと1回のみ選択的に脱水素縮合する、又は式(B-2)で表されるヒドロシランが式(A-1)~(A-3)で表されるシラノールと1回若しくは2回選択的に脱水素縮合するため、Si-H基を有するシロキサンを効率良く製造することができるのである。また、脱水素縮合工程におけるイリジウム錯体の触媒活性は、極めて優れており、一般的な触媒量に対して少ない量で効率的に反応が進行するため、短時間で反応を終了させることができる。
以下、「式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノール」、「式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシラン」、「イリジウム錯体」、「脱水素縮合工程」の条件等について詳細に説明する。
【0012】
式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールの具体的種類は、特に限定されず、製造目的であるシロキサンに応じて適宜選択すべきである。
【化5】

(式(A-1)~(A-3)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子総数0~30のシリルオキシ基を表す。)
式(A-1)~(A-3)中のRは、それぞれ独立して「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」、「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基」、又は「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子総数0~30のシリルオキシ基」を表しているが、「炭化水素基」と「アルコキシ基」、「シリルオキシ基」内の炭化水素基は、分岐構造、環状構造、及び炭素-炭素不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)のそれぞれを有していてもよく、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基等の何れであってもよいものとする。また、「ハロゲン原子を含んでいてもよい」とは、炭化水素基の水素原子が、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)等のハロゲン原子からなる1価の官能基で置換されていてもよいことを意味する。
また、「シリルオキシ基」とは、-OSiR(Rはそれぞれ独立して水素原子、又は炭素原子数1~10の炭化水素基を表す。)で表される基を意味する。
の炭化水素基とアルコキシ基、シリルオキシ基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、Rが芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルコキシ基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
としては、水素原子、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、フェニル基(-C,-Ph)、メトキシ基(-OCH,-OMe)、エトキシ基(-OC,-OEt)、n-プロポキシ基(-O,-OPr)、i-プロポキシ基(-O,-OPr)、n-ブトキシ基(-O,-OBu)、t-ブトキシ基(-O,-OBu)、フェノキシ基(-OC,-OPh)、トリメチルシロキシ基(-OSi(CH)等が挙げられる。
【0013】
式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノールとしては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【化6】
【0014】
式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランの具体的種類は、特に限定されず、製造目的であるシロキサンに応じて適宜選択すべきである。
【化7】

(式(B-1)~(B-2)中、Rはそれぞれ独立してハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基を表す。)
式(B-1)~(B-2)中のRは、それぞれ独立して「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基」、又は「ハロゲン原子を含んでいてもよい炭素原子数1~20のアルコキシ基」を表しているが、「炭化水素基」と「ハロゲン原子を含んでいてもよい」は、Rの場合と同義である。
の炭化水素基とアルコキシ基の炭素原子数は、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下であり、Rが芳香族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を有するアルコキシ基の場合の炭素原子数は、通常6以上である。
に含まれる官能基や連結基としては、フルオロ基(フッ素原子,-F)、クロロ基(塩素原子,-Cl)、ブロモ基(臭素原子,-Br)、ヨード基(ヨウ素原子,-I)等が挙げられる。
としては、水素原子、メチル基(-CH,-Me)、エチル基(-C,-Et)、n-プロピル基(-,-Pr)、i-プロピル基(-,-Pr)、n-ブチル基(-,-Bu)、t-ブチル基(-,-Bu)、n-ペンチル基(-11)、n-ヘキシル基(-13,-Hex)、シクロヘキシル基(-11,-Cy)、フェニル基(-C,-Ph)、メトキシ基(-OCH,-OMe)、エトキシ基(-OC,-OEt)、n-プロポキシ基(-O,-OPr)、i-プロポキシ基(-O,-OPr)、n-ブトキシ基(-O,-OBu)、t-ブトキシ基(-O,-OBu)、フェノキシ基(-OC,-OPh)等が挙げら
れる。
【0015】
式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシランとしては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【化8】
【0016】
脱水素縮合工程における「式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシラン」の使用量(仕込量)は、「式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノール」に対して、それぞれSi-H結合及びSi-OH結合の物質量換算で、通常0.5当量以上、好ましくは0.8当量以上、より好ましくは1当量以上であり、通常2当量以下、好ましくは1.5当量以下、より好ましくは1.2当量以下である。前記範囲内であると、目的のシロキサンをより効率良く生成することができる。
【0017】
イリジウム錯体におけるイリジウムの酸化数、配位子若しくは対イオンの具体的種類等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
イリジウムの酸化数は、通常0、+1、+2、+3、+4、+5、+6であるが、+1であることが好ましい。
配位子若しくは対イオン、又はこれらになり得る化合物としては、1,5-シクロオクタジエン、シクロオクテン、エチレン、水素化物アニオン(H)、トリメチルシリルアニオン(MeSi)、トリエチルシリルアニオン(EtSi)、塩化物アニオン(Cl)、臭化物アニオン(Br)、アセトキシアニオン等が挙げられる。
イリジウム錯体としては、クロロ(1,5-シクロオクタジエン)イリジウム(I)ダイマー([Ir(cod)Cl])、クロロビス(シクロオクテン)イリジウム(I)ダイマー([Ir(coe)Cl])等が挙げられる。前記範囲内であると、目的のシロキサンをより効率良く生成することができる。
【0018】
脱水素縮合工程における「イリジウム錯体」の使用量(仕込量)は、「式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノール」に対して物質量換算で、通常0.00005mol%以上、好ましくは0.0001mol%以上、より好ましくは0.0005mol%以上、さらに好ましくは0.001mol%以上、特に好ましくは0.005mol%以上であり、通常1mol%以下、好ましくは0.5mol%以下、より好ましくは0.1mol%以下、さらに好ましくは0.05mol%以下、特に好ましくは0.01mol%以下である。前記範囲内であると、目的のシロキサンをより効率良く生成することができる。
【0019】
脱水素縮合工程は、溶媒を使用しても、無溶媒であってもよい。溶媒を使用する場合の溶媒の種類は、特に限定されないが、原料や触媒が反応しない化合物であるヘキサン、ト
ルエン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒等が挙げられる。
【0020】
脱水素縮合工程の反応温度は、通常-40℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常80℃以下、好ましくは60℃以下、より好ましくは40℃以下である。
脱水素縮合工程の反応時間は、通常12時間以下、好ましくは6時間以下、より好ましくは2時間以下、特に好ましくは1時間以下である。
脱水素縮合工程は、通常窒素、アルゴン等の不活性雰囲気下で行う。
前記範囲内であると、目的のシロキサンをより効率良く生成することができる。
【0021】
脱水素縮合工程によって生成するシロキサンの具体的種類は、特に限定されず、製造目的に応じて適宜選択することができるが、下記式(C-1)~(C-8)の何れかで表されるシロキサンが挙げられる。
【化9】

なお、R、Rは、「式(A-1)~(A-3)の何れかで表されるシラノール」、「式(B-1)~(B-2)の何れかで表されるヒドロシラン」のものと同義である。
【実施例
【0022】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0023】
<実施例1>
窒素雰囲気下、トルエン(0.9mL)に[Ir(cod)Cl]の0.5μmolL-1トルエン溶液(0.1mL,0.005mol%)を加えた。ここにtert-ブチルジメチルシラノール(157.4μL,1.0mmol)、さらにジエチルシラン(130μL,1.0mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン)を通したのち、リサイクル分取GPC(溶出液:ヘキサン)により精製することで、目的とする1-(tert-ブチル)-3,3-ジエチル-1,1-ジメチルジシロキサンを収率87%で得た。
H NMR(C):4.76(quintet、J=2.3Hz、1H)、1.00(t、J=8.0Hz、6H)、0.94(s、9H)、0.64-0.54(m、4H)、0.08(s、6H)ppm.29Si NMR(C):12.3,-0.1ppm.
【0024】
【化10】
【0025】
<実施例2~6>
ヒドロシラン及び触媒量を下記の表1に記載のものに変更した以外、実施例1と同様の方法により反応を行った。生成物の収率の結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
<実施例7~8>
シラノール及び触媒量を下記の表2に記載のものに変更した以外、実施例1と同様の方法により反応を行った。生成物の収率の結果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
<実施例9>
窒素雰囲気下、ジフェニルシランジオール(216.3mg,1.0mmol)と[Ir(cod)Cl](6.7mg,1mol%)をジクロロメタン(2.0mL)に加えた。ここに、ジ-tert-ブチルシラン(390μL,2.0mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン)を通したのち、リサイクル分取GPC(溶出液:ヘキサン)により精製することで、目的とする1,1,5,5-テトラ-tert-ブチル-3,3-ジフェニルトリシロキサンを収率85%で得た。
H NMR(C):7.91-7.89(m、4H),7.24-7.17(m、6H),4.48(s、2H),1.05(s、36H)ppm.29Si NMR(C):7.1,-45.2ppm.
【0030】
【化11】
【0031】
<実施例10>
窒素雰囲気下、[Ir(coe)Cl](4.5mg,1mol%)をジクロロメタン(1.0mL)に溶解させた。ここに、tert-ブチルジメチルシラノール(157.4μL,1.0mmol)、ついでフェニルシラン(61.5μL,0.50mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液をシリカゲルカラム(溶出液:ヘキサン)を通したのち、リサイクル分取GPC(溶出液:ヘキサン)により精製することで、目的とする1,5-ジ-tert-ブチル-1,1,5,5-テトラメチル-3-フェニルトリシロキサンを収率69%で得た。
H NMR(C):7.74-7.72(m、2H),7.23-7.17(m、3H),5.40(s、1H),0.96(s、18H), 0.13(s、6H),0.12(s、6H)ppm.29Si NMR(C):13.7,-48.0ppm.
【0032】
【化12】
【0033】
<実施例11>
窒素雰囲気下、[Ir(coe)Cl](1.8mg,1mol%)をトルエン(1.0mL)に溶解させた。ここに、トリメチルシラノール(45μL,0.4mmol)とメシチレン(NMR用内標準物質)を加えたのち、さらにジフェニルシラン(37μL,0.2mmol)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応溶液の一部をH NMR(C)で測定することにより、目的とする1,1,1-トリメチル-3,3-ジフェニルジシロキサンが収率94%で生成していることを確認した。このとき、1,1,1,5,5,5-ヘキサメチル-3,3-ジフェニルトリシロキサンの生成は確認できなかった。
【0034】
【化13】
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の製造方法によって製造されたシロキサンは、電子機器、電気機械、自動車、化粧品等に利用されるリコーンオイル、シリコーンゴム等の原料として利用することができる。